説明

石膏ベース建材およびそれを含む成形品ならびにこれらの製造方法

【課題】石膏ベース建材及びこれから製造される、例えば石膏カードボード等の、成形品の熱伝導性及び電磁遮蔽減衰を増大させるために、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料を、石膏ベース建材に添加することを提案する。
【解決手段】石膏ベース建材の乾燥質量に基づき5〜50%、好ましくは25%以下の含量で、0.12−0.25g/cmの嵩密度を有し、1〜5mmの直径を有する板状粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性及び電磁線に対する遮蔽が増大した石膏ベース建材からなる、成形組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装仕上げのため、石膏ボード、具体的には石膏複合ボード、石膏カードボード、石膏繊維板及び石膏不織板は、主に床、壁及び天井ライニングとして使用される。石膏は、また、プラスタ床において、並びに、石膏プラスタ及び石膏充填材において使用される。
【0003】
石膏は、その微細構造によって非常に低い熱伝導性を有するので、石膏ボード及び石膏ベース建材は、ほとんど、断熱の目的のためのみに建設工学で使用される。先行技術によれば、石膏カードボードの熱伝導率は、例えば、約0.18〜0.22W/m・Kである。
【0004】
しかしながら、断熱目的での使用に加えて、高い熱伝導性が望ましい、建設工学における他の用途もある。従来の石膏建材及び石膏ボードは、その低い熱伝導性のために、かかる用途には適さない。
【0005】
更に、多くの用途で、例えばEDP設備を含む部屋又はモバイル通信又はその他の送信所に近接する建物用に、使用される建材の電磁遮蔽を増大することが望ましい。先行技術によれば、この目的のために、石膏カードボードは、鉛箔で裏打ちされる(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、2つの目的とも、使用される建材に炭素を添加することによって、原則として達成できることも公知である。
【0007】
例えば、特許文献1は、石膏コアを包み、かつセルロース繊維に加えて、4〜10μmの直径及び2〜10mmの長さを有する、乾燥質量換算含量で好ましくは8〜15%の炭素繊維を含む、30〜80μmの厚さの層を有する石膏カードボードを開示している。このものは、電磁線に対する遮蔽減衰を改善する。
【0008】
しかしながら、炭素繊維は、比較的高価である。その上、炭素繊維は、ほぼ線形構造である。すなわち、炭素繊維は、非常に小さな表面積を有する。従って、ボードの当接縁部は、熱又は電磁信号を前方に伝導するための接触面積をほとんど提供しない:当接縁部に垂直に又は勾配を付けて配向される繊維は、一方のボードの端面上の繊維端部が、次のボードの端面上の繊維端部に正確に当接する場合にのみ接触し、かつボードの当接端面上に位置する繊維は、繊維が互いに交わるか交差する場合にのみ接触する。
【0009】
特許文献2は、電磁線を遮蔽する導電性石膏ベース建材を開示している。導電性及び遮蔽効果は、12μm以下の寸法を有する黒鉛及び非晶質炭素の粒子の混合物を添加することによって達成される。黒鉛及び非晶質炭素の混合物の含量は、建材の全質量の25〜75%である。次に非晶質炭素の含量は、黒鉛及び非晶質炭素の混合物の全質量の10〜95%である。非晶質炭素は、有機成分を燃焼させることによって製造される非晶質炭素を含む焼成コークス及び/又は灰を含む。
【0010】
これらの建材は、25%を超える又は少なくとも25%の比較的高い黒鉛/炭素含量、及び材料の調製において、極めて細粒の構造を有し、それ故に大量の粉塵を形成する物質を取り扱うことの必要性を始めとする欠点を有する。微細な黒鉛粒子、特に非晶質炭素を、水相に配合することは、困難である。比較的大きな表面積でありながら比較的低い質量、及びその低い水湿潤性のために、これらの粒子は、浮遊するという、際立った傾向を有する。前記特許出願は、材料の調製において、水が添加される前に、石膏と添加剤とを混合することのみしか提案していないが、石膏−黒鉛/炭素混合物が、水と混合されるときに、炭素及び/又は黒鉛粒子が浮遊し、それ故に建材が少なくとも部分的に分離する問題が、なお、存在する。
【0011】
特許文献3は、熱伝導性を改善するために、乾燥質量換算で、50%以下の、好ましくは5〜35%の含量の黒鉛を、セメント又は石膏のような床仕上げ材に添加することを提案している。黒鉛の粒径は、0.001〜1mm、好ましくは0.5mm以下の範囲でなければならない。膨張性黒鉛の使用は、次の理由で特に推奨される:膨張性黒鉛は、その開放気孔発泡体状構造のために、固体黒鉛細粒よりも低い熱伝導性を有するが、その弾性及び表面構造の結果、周囲の結合剤と、より密接に結合する。結合剤は、膨張性黒鉛粒子に部分的に浸透する。膨張性黒鉛の弾性は、結合剤及び黒鉛粒子が異なる膨張係数を有する問題を相殺し、それ故に、粒界での接触熱抵抗の効果を減少させる。
【0012】
膨張性黒鉛の製造及び特性は、Graphit Kropfmuhl AGの技術情報文献に、次のように記載されている:黒鉛の層状格子構造のために、原子又は小分子は、炭素層の間に埋め込まれる(挿入される)ようになる。これにより、膨潤塩又はGIC(黒鉛層間化合物)として知られているものが製造される。高級膨張性黒鉛は、高い含量で挿入された層を有する。埋め込まれた分子は、大部分が、硫黄化合物又は窒素化合物である。熱の作用により、層は、熱分解によって手風琴のように離れて広がり、黒鉛フレークは、膨張する。膨張黒鉛のタイプに応じて、膨張は、約150℃程度の低い温度から開始することもあり、かつ比較的急激に起きることもある。自由膨張の場合、最終体積は、初期体積の数百倍に達し得る。膨張性黒鉛の特性、すなわち開始温度及び膨潤能力は、主に挿入性(基礎平行層のうちの何層が挿入されたか)及び挿入剤によって決定される。
【0013】
Graphit Kropfmuhl AG文献で使用される術語中、用語「膨張性黒鉛」は、明らかに膨張の前駆体、すなわち膨張が可能な黒鉛層間化合物(黒鉛塩)を意味し、膨張した状態を意味しない。建材の難燃性添加剤としてのこのタイプの黒鉛塩の使用は、当該技術分野において公知である。
【0014】
しかしながら、特許文献3における膨張性黒鉛の開放気孔発泡体状構造を参照すると、それは、なおも膨張可能な黒鉛塩でなく、むしろ既に膨張した形態の膨張性黒鉛であることが示唆される(明瞭にするために、以下、「膨張黒鉛」と呼ぶ。)ことを示唆している。熱膨張の結果として得られたウォーム形状又は手風琴形状の粒子は、非常に嵩高い。膨張黒鉛の嵩密度は、2〜20g/lで非常に低い。従って、膨張黒鉛からなる粒子の運搬及び計量には、相当な技術的問題があり、かつ水相への配合は、軽量で嵩高い膨張材料粒子の浮遊によって著しく妨げられる。従って、石膏又はセメント中で膨張黒鉛の均質な分布を達成することは、困難であろう。更なる問題は、膨張黒鉛が使用されるときに粉塵が著しく形成されることである。従って、膨張黒鉛からなる熱伝導性添加剤が、建材に適すると認められることは、実際にはありそうにない。
【0015】
確かに、前記特許出願の実施態様に関して、膨張黒鉛ではなく、0.05mm未満の粒径を有する微粉砕した天然黒鉛(Graphit Kropfmuhl AGにより、商品名EDMで供給される製品)が、床仕上げ塗膜に添加される。1〜1.4W/m・Kから2〜2.8W/m・Kへの床仕上げ塗膜の熱伝導率増大が、このようにして達成された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第99/62076号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/065322号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10049230号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Gips−Datenbuch,Bundesverband der Gipsindustrie 2003,page 37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記先行技術は、その欠点を克服することを可能にする、石膏ベース建材成形組成物及びこれから製造される成形品のための、熱伝導性で電磁遮蔽性の添加剤を見出すという目的を生じさせた。
【0019】
この添加剤は、比較的低い質量分率でも、熱伝導及び電磁線遮蔽の著しい増大をもたらすことが望ましい。特定の除塵手段等を講じる必要なしに取り扱うことが容易であることが望ましく、かつ運搬し、計量し、特に水性媒体中に配合することが容易であることが望ましい。添加剤は、また、石膏の特性にできるだけ影響を及ぼさないことが望ましく、特に建物成形品の機械的安定性を損なわないことが望ましい。対応する従来の建物成形品と実質的に同じ技術を用いて、かつ、添加剤を添加するために必要とする装置は別として、同じ設備によって、添加剤を含む建物成形品、例えば石膏カードボード、を製造することが可能であることが、また、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的の解決策は、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料を石膏ベース建材に添加することからなる。この添加剤の石膏建材中の乾燥質量換算比率は、5〜50%であり、好ましくは25%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の更なる利点、詳細及び特定の実施態様は、以下の詳細な説明及び実施態様から明らかになるであろう。
【0022】
本発明で使用される添加剤は、膨潤可能な黒鉛格子間化合物を熱膨張させて膨張黒鉛を形成し、膨張黒鉛の再圧縮によって二次元構造を形成し、次に、二次元構造を粉砕して所望の寸法の粒子を形成することによって、得ることができる。1〜5mmの直径を有する板状粒子が、基本的に好ましい。嵩密度は、0.12〜0.25g/cm3である。
本発明による石膏ベース建材成形組成物のための黒鉛ベース添加剤は、先行技術で公知である炭素又は黒鉛添加剤に比べて、多数の利点を有する。
【0023】
添加剤粒子は、圧縮により比較的コンパクトとなっている。従って、それらは、ほとんど粉塵を形成しない傾向を有し、かつ取り扱い、運搬、計量及び配合が容易である。特に、それらは、水性媒体中で浮遊する問題なしに、石膏組成物等に容易に配合することができる。
【0024】
添加剤粒子は、1〜5mmの粒子直径を有しており、先行技術で公知である添加剤と比較して、比較的大きい。大きな添加剤粒径は、非伝導性マトリックス内での伝導性浸透網状構造の形成を容易にするので、このことは、特別な利点である。
【0025】
低い導電性又は熱伝導性を有するマトリックス、及び導電性又は熱伝導性の添加剤からなる粒子複合材料において、導電率又は熱伝導率は、この添加剤の含量の関数であることが一般的に知られている。伝導率は、伝導性添加剤の含量に対して線形的に増大するのではなく、むしろ一旦浸透閾値に達すると、すなわち伝導性添加剤含量が、十分に高くなり連続した伝導路網状構造を形成され次第、著しく上昇する。浸透閾値を超えて添加剤を更に添加しても、伝導率の軽微な増大しかもたらさない。
【0026】
網状構造を形成する能力、従って、浸透閾値に達するために必要とされる伝導性添加剤含量は、添加剤の粒径及び粒径分布に大きく左右される。広い粒径分布を有する大きな粒子からなる添加剤の場合、連続網状構造の形成に必要とされる添加剤含量は、狭い粒径分布を有する小さい粒子からなる添加剤よりも、低い。
【0027】
しかしながら、その低い嵩密度のせいで、膨張黒鉛のような非常に大きい粒子からなる添加剤を、マトリックスを形成する成形組成物に組み込むことは、困難である。本発明で使用される添加剤の嵩密度は、0.12〜0.25g/cm3で、一方で膨張黒鉛(0.002〜0.02g/cm3)の、他方で天然黒鉛(約0.4〜0.7g/cm3)及び合成黒鉛(0.8〜0.9g/cm3)の、2つの極端な場合の間の範囲にある。
【0028】
膨張黒鉛を圧縮すると、その利点を失うことなく、膨張黒鉛の不利な特性が除去される。非常に嵩高い膨張黒鉛粒子とは対照的に、取り扱いが容易で、かつ水性媒体中で浮遊せず、それ故に、従来の成形組成物に容易に配合できる粒子が得られる。膨張黒鉛を圧縮すると、粒子内の熱伝導率の著しい増大も、もたらされる。
【0029】
他方で、締め固めた膨張黒鉛であっても、独国特許出願公開第10049230号明細書から公知である、非圧縮膨張黒鉛の利点、すなわち、ある種の弾性及び結合剤による飽和の容易さを、なおも高い程度で有する。この点に関して、やはり膨張黒鉛の圧縮によって生成され、特に密封技術の分野において公知である黒鉛箔が、同様に、ある程度弾性を有し、かつ結合剤又は類似の物質を含浸することができ、それ自体の質量の100%まで配合できることに注目すべきである。
【0030】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料の更なる利点は、その吸湿性が石膏のそれに類似することである。従って、石膏ベース建材の空気調節効果は、他の添加剤(炭素繊維、合成黒鉛、カーボンブラック等)が使用される場合にそうであるように、添加剤によって減少しない。
【0031】
黒鉛粒子は、結合及び潤滑効果をも有する。従って、粉塵への曝露及び工具摩耗の程度は、例えば石膏ボードのような、本発明による成形品の機械加工においては、減少する。先行技術で公知の添加剤(カーボンブラック、炭素繊維)は、このような効果を有さず、これらの物質を含む成形品の機械加工中に生成される粉塵は、炭素繊維又は非常に微細な炭素粒子を含有するので、有害であり、特別な保護措置を機械加工中に講じなければならない。
【0032】
添加剤を製造する工程の最初の2つの段階は、黒鉛箔の製造において公知である。層間化合物は、天然黒鉛から製造され、熱的に膨張させられ、膨張させられた材料粒子は、次に、圧縮されて、0.1〜3mm、好ましくは1mm以下の厚さ、及び0.8〜1.8g/cm3の密度を有する二次元構造を形成する。
【0033】
圧縮された膨張黒鉛は、好ましくは2〜4mmの網目幅のふるいを有する、切断ミル中で粉砕される。1〜5mmの直径を有する粒子が主に得られる。
【0034】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料の内容は、達成されるはずの熱伝導性の改善を著しく損なうことなく、限られた範囲で、粉砕天然黒鉛と置き換えることができる。例えば、25%の添加剤によって形成される建材の質量換算比率に関して、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料によって形成された建材の全質量の比率は5%であり、粉砕天然黒鉛の比率は20%である。換言すると、この場合、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料の80%は、粉砕天然黒鉛と置き換えられている。粉砕天然黒鉛は、膨張及び締め固め工程を必要としないために、より安価であるので、このことは、財務的に有利である。当業者は、所望の製品特性(必要とする熱伝導率等)及び材料の入手可能性を考慮して、個別の用途に応じて、締め固め膨張黒鉛及び粉砕天然黒鉛からなる粉砕原料の内容を選択するであろう。
更に、締め固めた膨張黒鉛からなる粉砕原料と天然黒鉛等の他の熱伝導性添加剤との組み合わせも、それによって添加剤の粒径分布の幅が増大するので、また、有利である。同様に、これによって、締め固め膨張黒鉛の粉砕によって得られた膨張粒子は、天然黒鉛からなるより小さな粒子の間に伝導ブリッジを形成できるで、浸透網状構造の形成が容易になる。
【0035】
石膏ベース建材の熱伝導性及び導電性を増大させるために、締め固めた膨張黒鉛からなる粉砕原料に添加できる他の添加剤は、炭素繊維及び金属繊維を含む。
【0036】
本発明によれば、圧縮された膨張黒鉛からなる粉砕原料は、石膏ベース建材に添加される。粉砕原料は、建材の乾燥質量の5〜50%の比率を形成するような量で、建材に配合される。「石膏ベース建材」の用語は、この文脈において、石膏と従来の添加剤との混合物を指す。これらは、石膏充填材、石膏プラスタ、石膏床仕上げ塗膜等の成形組成物として使用されるか、又は任意に他の成分と組み合わせて、例えば石膏ボード、具体的には石膏カードボード、石膏繊維板、石膏不織板及び石膏複合ボード等の成形品の製造の出発材料の役割を果たす。従って、本発明による成形品は、粉砕された締め固め膨張黒鉛が、石膏ベース建材の乾燥質量の5〜50%の比率で添加されている石膏ベース建材を含む。
【0037】
本発明は、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料が建材の乾燥質量の5〜50%の比率で添加されている石膏ベース建材を含む少なくとも1つの成形品と、石膏ベース建材を含まない少なくとも1つの成形品と、からなる複合建築要素にも関する。この石膏ベース建材を含まない成形品は、例えば、硬質繊維板、断熱材から作製された板、タイル、耐火粘土れんが、気泡コンクリートれんが等であってもよい。
【0038】
本発明による石膏ボードは、例えば建物内のケーブルダクトの保護鎧装(protective shieth)に使用できる。
【0039】
本発明による成形品、例えば石膏カードボードは、著しく高い熱伝導性だけでなく、ボード又は成形品内の、高度に均質な加熱及び熱分布によっても特徴付けられる。この効果は、サーモグラフィーテストを使用すれば証明できる。本発明による石膏カードボードの表面の均質な加熱は、例えば日照がボードの一部表面だけに限られている場合に、ボード全体にわたって効果的な熱分布をもたらす。
【0040】
本発明の石膏充填材又は石膏プラスタを同時使用すると、居住地の壁面全体は、このようにして、例えばより迅速かつ均質に加熱され、例えば日影又は建築部材間の接合部によって引き起こされる、局部温度が低い地点が、減少する。有利な場合には、局部的に低い部材温度によって引き起こされる、かびの形成が、減少又は防止されることさえも可能になる。更に、二次元加熱及び冷却部材、又は空気調節素子及び要素が使用されるならば、熱伝達の改善によって、熱媒体の流れる管を、従来の建材におけるよりもより広い網目を有する(蛇行、らせん、格子等の)配置で、位置決めすることが可能になり、必要な管がより少なくなるので、本発明による成形品及び建材における非常に良好な熱伝導及び熱の二次元分布という利点は、非常に有用である。
【0041】
本発明による石膏ボード又は他の成形品は、その不浸透性、並びに機械的及びその他の環境の影響に対する抵抗を改善するために、プラスチック材料、例えば樹脂又は熱可塑性ポリマーによって、全体的又は部分的に、含浸されてもよい。
【0042】
これに代えて又はこれに加えて、石膏ボード又は他の成形品の1つ又は2以上の表面に、外観を改善すること、取り扱い性を容易にすること、防火、水蒸気に対する障壁の役割を果たすこと、外側への断熱及び吸音を改善すること、又は衝撃に対する感受性を減少することを始めとする特定の機能を果たす、塗料塗装又は他の形状の塗被(coating)又は被覆(covering)を、全体的又は部分的に、行なってもよい。このタイプの塗被の例には、塗料塗装、プラスチック材料被覆、紙、木質単板、金属箔又はプラスチック材料フィルム、金属シート、金属細片、織物又は二次元繊維構造による裏打ちが含まれる。
【0043】
接着剤、接着促進剤又は結合剤を含む塗被も可能である。これらの塗被は、本発明による成形品間の、又は本発明による成形品と、例えば、耐火粘土れんが、気泡コンクリートれんが、タイル等の、他の建物成形品との複合構造を製造するために使用され得る。
【0044】
本発明は、以下において、例として石膏カードボードを参照して記載されるが:しかしながら、本発明が、全てのタイプの石膏ベース建材に一般的に適合することを考慮して、この選択が、何らかの限定を伴うと理解されるべきでない。
【0045】
石膏カードボードの製造は、公知である。石膏カードボードは、一般的に、焼き石膏及び石膏コア用の添加剤と高級カードボードとから、連続運転ベルト加工ラインで製造される。
【0046】
石膏カードボードの製造において、ボードの可視側面を形成するカードボードが、最初に下方から供給される。縁部を造形するために、カードボードは、刻みを付けられる。成形ステーションにより分配される石膏パテが、次に供給される。その製造について上述した熱伝導性及び電気遮蔽性の添加剤が、この石膏パテに添加される。同時に、カードボードが、上方から供給される。まだ非常に湿っている石膏カードボードのスラブは、硬化区間を通過し、硬化区間の終了時点で、個別のボードが切断装置を使用して種々の長さに切断される。硬化区間の長さ及びベルト速度は、石膏コアの硬化挙動に適合させられる。ターンテーブルにより、多段乾燥器にボードが供給される。一旦ボードが乾燥されると、それらは横方向縁部で切断して形状を整えられ、かつ積み重ねられる。
【0047】
石膏カードボードは、溝、接合部又は凹部を備えていてもよい。このようにして、例えば、一側面に張られた石膏層に、石膏コアを通ってカードボード層まで伸長する接合部を付与することが公知である。巻くことのできる石膏カードボード材料は、このようにして得られる。
【実施例】
【0048】
添加剤の粒径分布
0.1mm〜1mmの厚さを有する締め固め膨張黒鉛の混合物を、3mmの網目幅を有するふるいを有する切断ミル中で粉砕した。粉砕原料の粒径分布は、ふるい分析によって決定された。表1に、ふるい分析の結果を示す。全ての粒子の約3分の2は、1mmを超える直径を有する。
【0049】
【表1】

【0050】
本発明による石膏カードボードの熱伝導率
種々の量の熱伝導性添加剤を含有する本発明による石膏カードボードについて、カードボードで被覆されたボードのボード面に垂直な方向の熱伝導率、石膏コアの熱伝導率(すなわちカードボード被覆効果のないもの)、及びボード面に平行な方向の熱伝導率が、決定された。比較のために、従来の石膏カードボード、及び添加剤が、全体又は部分的に、主に180〜300μmの寸法範囲の粒子を含む粉砕天然黒鉛によって置き換えられた石膏カードボードも検査された。
【0051】
ワンプレート装置が、ボード面に垂直な方向の熱伝導率を測定するために使用された。この装置は、20cmの長さを有し、6cm幅の第1フレーム状保護リング、温度調節される第2保護リング、及び温度調節される冷却プレートによって囲まれる電熱式方形中央プレートからなる。保護リングは、測定表面の領域での一次元の垂直な熱の流れを確実にした。試料は、(中央プレート及び第1保護リングを含む)装置の高温側と、冷却プレートの間に置かれた。中央プレート及び第1保護リングは、温度Thまで電気加熱された。冷却プレートは、温度Tcまで冷却された。温度Th及びTcにおける電力Pc1及び中央プレートの表面積Aから、検査される試料の熱抵抗1/Λが、次のように計算される:
【数1】

【0052】
試料の厚さが知られているならば、プレート面に垂直な方向の試料の熱伝導率は、実験で決定された熱抵抗から計算できる。
【0053】
【数2】

【0054】
このように測定された値は、直列抵抗器の役を果たすカードボード被覆の寄与分を常に含む。
【0055】
コア材料の熱伝導率は、動的熱線法を使用して決定された。この方法において、試料内に埋め込まれた熱線(100μmの直径及び6cmの長さを有する白金線)が、同時に加熱素子及び温度センサとして使用される。測定中、線は、定電源を使用して加熱された。試料の熱伝導率によって決定される、熱線の平均温度の経時進展は、温度に依存する線の抵抗に基づき、確立できた。
【0056】
これらの測定のために、各場合において、試料プレートは、二分割され、熱線は、いずれも、線に面する表面からカードボードケーシングを除去した、試料プレートの2つの半片の間に埋め込まれた。表2に、テスト結果を要約する。
【0057】
【表2】

【0058】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料を、乾燥質量換算で10%含有させただけで、カードボード被覆ボードの面に垂直な熱伝導率が倍増した。コアの熱伝導率のみを測定すれば、直列抵抗器の役を果たすカードボード被覆がないために、効果は、なおさら明白である:10%の添加剤を含有させることにより、ボード面に垂直なコア材料の熱伝導率は、ほぼ3倍になった。
【0059】
質量換算添加剤含量を更に20%まで増大させても、(実験誤差の範囲内で)それ以上の著しい熱伝導率増大は起きなかった。このことは、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料の質量換算含量が10〜15%の低さで、浸透閾値に到達することを示す。
【0060】
代わりに、粉砕天然黒鉛を石膏コアに添加したとき、匹敵する添加剤質量換算含量(15%)では、かかる大きな熱伝導率増大は達成できなかった。
【0061】
しかしながら、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料と天然黒鉛との混合物は、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料のみを含む添加剤の場合と同様の熱伝導率増大をもたらした。このことは、広い粒径分布で浸透網状構造の形成が容易になったことに起因した。
【0062】
本発明による石膏カードボードの遮蔽減衰
従来の石膏カードボード、及び締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料を種々の量で含有する石膏カードボードの遮蔽減衰が、DIN EN 50147−1によって、磁場、平面波及びマイクロ波電場タイプの周波数で、測定された(表3参照)。
【0063】
測定システムは、信号発生器、送信アンテナ、受信アンテナ、及びスペクトル分析器を含んだ。試料は、送信及び受信アンテナの間に置かれた。
【0064】
各測定周波数に関して、検査する材料の遮蔽減衰S(表3)は、通路減衰の2つの測定、すなわち検査する減衰材料のない通路減衰P0及び検査する材料の試料が測定装置に組み込まれた通路減衰PSの差として得られる。2つの測定において、アンテナの距離、方向及び分極、並びに信号発生器の出力電力は、同一であった。
【0065】
【表3】

【0066】
添加剤のない石膏カードボードが、検査したいずれの周波数範囲においても、遮蔽効果を有さなかったのに対し、黒鉛の添加は、平面波及びマイクロ波周波数範囲で遮蔽減衰が達成されることを可能にした。遮蔽減衰は、添加剤含量と並行して増大した;しかしながら、遮蔽減衰増大は、質量換算添加剤含量が15%を超える場合において、質量換算添加剤含量が15%以下の場合よりも遙かに低かった。このことは、熱伝導率に関して観察されたのと同様に、浸透閾値を上回ったことを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ベース建材が、石膏ベース建材の乾燥質量に基づき5〜50%、好ましくは25%以下の含量で、粉砕された締め固め膨張黒鉛を含むことを特徴とする石膏ベース建材。
【請求項2】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料が、0.12〜0.25g/cm3の嵩密度を有することを特徴とする請求項1に記載の石膏ベース建材。
【請求項3】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料が、1〜5mmの直径を有する板状粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の石膏ベース建材。
【請求項4】
粉砕された天然黒鉛が、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料に添加されていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ベース建材。
【請求項5】
金属繊維又は炭素繊維が、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料に添加されていることを特徴とする請求項1に記載の石膏ベース建材。
【請求項6】
石膏充填材、石膏プラスタ又は石膏床仕上げ塗膜であることを特徴とする請求項1に記載の石膏ベース建材。
【請求項7】
以下の段階:黒鉛層間化合物を製造する段階、該層間化合物を熱膨張させて膨張黒鉛を形成する段階、膨張黒鉛を圧縮して0.1〜3mm、好ましくは1mm以下の厚さ、及び0.8〜1.8g/cm3の密度を有する二次元構造を形成する段階、圧縮した膨張黒鉛を粉砕する段階、及び、粉砕原料の乾燥質量換算含量が5〜50%となるような量で粉砕原料を石膏ベース建材に配合する段階、を含む、請求項1に記載の石膏ベース建材を製造する方法。
【請求項8】
石膏ベース建材が、石膏ベース建材の乾燥質量に基づき5〜50%、好ましくは25%以下の含量で、粉砕された締め固め膨張黒鉛を含むことを特徴とする石膏ベース建材を含む成形品。
【請求項9】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料が、0.12〜0.25g/cm3の嵩密度を有することを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料が、1〜5mmの直径を有する板状粒子を含むことを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項11】
粉砕された天然黒鉛が、締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料に添加されていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項12】
金属繊維又は炭素繊維が、締め固めた膨張黒鉛からなる粉砕原料に添加されていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項13】
石膏ボード、石膏複合ボード、石膏カードボード、石膏繊維板及び石膏不織板であることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項14】
石膏ベース建材を含む少なくとも1つの成形品と石膏ベース建材を含まない少なくとも1つの成形品とからなる複合部材であることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項15】
成形品が、含浸物を含むことを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項16】
成形品の1つ又は2以上の表面に、全体的又は部分的に、塗料塗膜又は他の形態の塗被又は被覆が与えられていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項17】
成形品の1つ又は2以上の表面が、紙、木質単板、金属箔若しくはプラスチック材料フィルム、金属シート、金属細片、織物又は他の二次元繊維構造によって、全体的又は部分的に、裏打ちされていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項18】
成形品の1つ又は2以上の表面が、接着剤、接着促進剤又は結合剤によって、全体的又は部分的に、塗被されていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項19】
成形品内に管が埋め込まれていることを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項20】
請求項8に記載の成形品の、ケーブルダクトの鎧装への使用。
【請求項21】
請求項8に記載の成形品の、床、天井若しくは壁加熱システム又は空調天井(air handling ceiling)における使用。
【請求項22】
以下の段階:黒鉛層間化合物を製造する段階、層間化合物を熱膨張させて膨張黒鉛を形成する段階、膨張黒鉛を圧縮して0.1〜3mm、好ましくは1mm以下の厚さ、及び0.8〜1.8g/cm3の密度を有する二次元構造を形成する段階、圧縮した膨張黒鉛を粉砕する段階、粉砕原料の乾燥質量換算含量が5〜50%となるような量で粉砕原料を石膏ベース建材に配合する段階、並びに、乾燥質量換算含量で5〜50%の締め固め膨張黒鉛からなる粉砕原料を含み、任意の更なる成分を含んでいてもよい石膏ベース建材から成形品を製造する段階、を含む、請求項8に記載の石膏ベース建材からなる成形品を製造する方法。

【公開番号】特開2013−47187(P2013−47187A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268439(P2012−268439)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2006−212259(P2006−212259)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL CARBON SE
【住所又は居所原語表記】Rheingaustrasse 182, D−65203 Wiesbaden, Germany
【出願人】(506266492)サン−ゴバン リギプス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】SAINT−GOBAIN RIGIPS GmbH
【Fターム(参考)】