石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法
【課題】回り止め部材をクロスが貼り付けられた石膏ボードに打ち込む際、事前にクロスに切り込みを入れる必要を無くし、石膏ボードを壊してしまう可能性を著しく低減させると共に、アンカー金具、樹脂受網、接着系アンカー樹脂が三位一体となって、アンカー金具に加わる荷重を分散させて石膏ボードの穿設孔に集中することを回避し、アンカー強度を高めて耐震性能を向上する。
【解決手段】アンカー金具4を、その外周域に凹凸部41aと内周域に雌ネジ部41bを有するアンカー本体41と、アンカー本体41を樹脂受網5内に挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー本体41を回り止めする回り止め部材42とで構成し、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有する回り止め部材42を、アンカー本体41の基端部が石膏ボード3の壁表面から突出する凸状部41cが形成される位置に設ける。
【解決手段】アンカー金具4を、その外周域に凹凸部41aと内周域に雌ネジ部41bを有するアンカー本体41と、アンカー本体41を樹脂受網5内に挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー本体41を回り止めする回り止め部材42とで構成し、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有する回り止め部材42を、アンカー本体41の基端部が石膏ボード3の壁表面から突出する凸状部41cが形成される位置に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードに埋設される石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の内壁は、壁下地として所定間隔(約450〜500mm間隔)に立設した木製の間柱に下地材として石膏ボードを貼り付け、その表面にクロスなどの仕上げ材を貼り付けた構造が多用されている。このような内壁にタオル掛け用フック、カーテンレール、薄型テレビの掛止部材などを取り付ける場合には、間柱に取付けすることができないことが多く、直接石膏ボード壁に石膏ボード壁用アンカーを埋設し、該石膏ボード用アンカーに対して取り付け用のネジをねじ込む必要がある。その理由は、石膏ボード壁が強度的に脆いため、取り付け用のネジを直接ねじ込んでも、十分な固定強度を得ることができないからである。
【0003】
石膏ボード用アンカーとしては、アンカー本体を石膏ボード壁の取付け孔内周に対して、樹脂接着剤を含浸させて硬化させた後に、直にねじ込むタイプ(例えば、特許文献1参照)や、石膏ボード天井の穿設孔に直接接着系アンカー樹脂を注入すると共に、該接着系アンカー樹脂中にアンカー本体を挿入し、接着系アンカー樹脂の硬化によって必要な固定強度を得るタイプが知られている。後者は、接着系アンカー樹脂を併用するため、前者に比べて強度的に有利であるが、内壁に使用すると注入樹脂が壁裏側に落ちてしまい穿設孔周辺に付着保持することが難しく、内壁用に採用することが困難であり、また、取付けネジのねじ込みに際し、共回りの惧れがあるので、回り止め手段が必要である。
【0004】
一方、上記の回り止め手段としては、ALCの外壁に長尺なボルト部分を露出させて埋設される埋込ボルトの埋設部分に取り付けられて、埋込ボルトを回り止めするための回り止め部材が知られている。このものは、ALCの外壁専用に平板状の金属プレートで形成されており、その工法もALCに埋設孔を開けて接着系アンカー樹脂を注入し、埋込ボルトの埋設部分を挿入し、回り止め部材部分を打ち込みして、埋設部分とALCの埋設孔内周全域とを直接凝固結合させても、回り止め機能と抜け止め機能を同時に満たすことができる。
しかしながら、石膏ボードは、板厚が9〜12mm程度と薄く、ALCに比べ非常に脆く、特に、穿設孔内周はネジ山の僅かな力が加わるだけで粉状に崩れてしまうため、これをそのまま内壁用の石膏ボードに採用しても、打ち込む際に石膏ボードを壊してしまう惧れがあり、またアンカー強度や抜け止め機能も充分に得ることができないばかりか、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際には、事前にクロスに切り込みを入れておく必要があるので、埋設時の作業性に劣るという問題がある。しかも、薄型テレビなどの重量物を掛止部材を介して取り付けした場合に、地震などにより穿設孔内周部分の石膏ボード自体が壊れてテレビを落下損傷させてしまう恐れがあり、この様な耐震強度の問題から、壁下地の補修を行なって取付けするなどの対策が採らざるを得ないという実情がある。
【特許文献1】特開2004−308843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、フック等を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボードに取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内の石膏ボード用アンカー構造に利用することが可能となり、樹脂受網内にアンカー本体を挿入して、回り止め部材を石膏ボードに打ち込む際、石膏ボードを壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際にも、事前にクロスに切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れ、しかも、アンカー金具、樹脂受網、接着系アンカー樹脂が三位一体となって、アンカー金具に加わる荷重を分散させて石膏ボードの穿設孔に集中することを回避し、アンカー強度を高めて耐震性能を向上することのできる石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の石膏ボード用アンカー構造は、石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とからなる石膏ボード用アンカー構造であって、前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、該アンカー本体を前記樹脂受網内に挿入する際、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めする回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該回り止め部材は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有し、アンカー本体の基端部を石膏ボード表面から突出する凸状部が形成される位置に設けられていることを特徴とするものである。
また、上記課題を解決するために本発明の石膏ボード用アンカーの施工方法は、石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とを用いて施工される石膏ボード用アンカーの施工方法であって、前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めし、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有する回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該アンカー金具を前記樹脂受網内に挿入するにあたり、アンカー金具を、石膏ボードの穿設孔と略同径の筒状に成形されて、前記回り止め部材を回転規制した状態で筒孔中心に位置決めセット可能な位置決め治具に挿入し、該位置決め治具を穿設孔に挿入して、セットされたアンカー金具と共に前記回り止め部材を打ち込みし、アンカー金具の穿設孔へのセンター合わせをした後、該位置決め治具と共にアンカー金具を穿設孔から抜き出して、予め穿設孔に回り止め部材の打入跡を形成しておき、この穿設孔に対して、前記樹脂受網を挿入した状態で接着系アンカー樹脂を注入し、アンカー金具を、その回り止め部材を前記打入跡に位置合わせして前記樹脂受網内に挿入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記のように構成したことにより、フック等を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボードに取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内壁の石膏ボード用のアンカー金具として利用することが可能となり、樹脂受網内にアンカー本体を挿入して、回り止め部材を石膏ボードに打ち込む際、石膏ボードを壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際にも、事前にクロスに切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れるものとできる。しかも、埋設完了後に雌ネジ部に取り付けられたフックや掛止部材に重量物が吊持されても、その荷重はアンカー金具と樹脂受網、およびその全長域周縁に注入された接着系アンカー樹脂が石膏ボード背面の穿設孔周辺に行き渡り、これらが三位一体となって取付部分における負荷荷重を分散した状態で受け止めて、アンカー金具に加わる負荷が石膏ボードの穿設孔に直接的に加わることが回避され、従来のものに比し、石膏ボードに対するアンカー強度や抜け止め機能をより強固なものとすることができ、内壁用の石膏ボードであっても壁下地の補修を行なう必要がなくなり、耐震性が飛躍的に向上され、しっかりと取り付けすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法を図面に基づいて詳細に説明する。図1は埋設状態を示す石膏ボード用アンカー構造の説明図、図2(A)はアンカー金具の正面図、図2(B)はアンカー金具の平面図、図2(C)はアンカー金具の側面図、図2(D)はアンカー本体の切断端面図、図3(A)は樹脂受網の平面図、(B)は側面図、図4は支持受け板を掛止ブラケットとした実施例を示す構成図、図5は支持受け板を座板とした実施例を示す構成図である。
【0009】
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る石膏ボード用アンカー構造1は、支持受け板2に薄型テレビの吊持ブラケット7やフックなどを取り付けるために、石膏ボード3に埋設されるものであって、アンカー金具4、樹脂受網5、接着系アンカー樹脂6などを備えて構成されている。
【0010】
なお、石膏ボード3は、建築物における天井や内壁の下地材として用いられており、その表面には、クロス31などの仕上げ材が貼り付けられている。以下に内壁に適用した場合を例示するが、天井に用いて良いことは勿論である。石膏ボード3の壁面には、タオル掛け用や、薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケット7などを支持受け板2に取り付ける場合、石膏ボード3に樹脂受網5を介してアンカー金具4を埋設し、該アンカー金具4に支持受け板2装着用の取付けネジ2a(ボルト)がねじ込まれる。
【0011】
アンカー金具4は、アンカー本体41と回り止め部材42とを備えて構成される。アンカー本体41は、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入されるものであって、外周域に凹凸部41aを有し、内周域に雌ネジ部41bを有する。外周の凹凸部41aは、接着系アンカー樹脂6との接着性を高めるためのもので、本実施形態では雄ネジ(ボルト)溝状に形成されるが、ローレット加工などであってもよい。また、内周の雌ネジ部41bは、取付けネジ2aをねじ込むためのネジ穴である。
【0012】
回り止め部材42は、アンカー本体41に一体的に設けられ、アンカー金具4を石膏ボード3の穿設孔3aに挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー金具4を回り止めするものである。そして、本発明に係るアンカー金具4の回り止め部材42は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有する。回り止め部材42の形状や材質に制限はないが、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートとすることが好ましい。この場合には、刃先部42aの頂部を打ち込み方向を向け、基端部側の凹凸部41aを削り取った平滑面に形成し、この平滑面に、刃先部42aが凹凸部41aのネジ山部よりも面落ちさせて、アンカー本体41の基端部(頭部)を石膏ボード3の表面から突出する凸状部41cを有する位置に溶着されている。この様に取着すると、刃先部42aと凹凸部41aのネジ山部との間に形成された溝部域にも接着系アンカー樹脂6が注入されて、アンカー強度の向上に寄与することができる。
【0013】
樹脂受網5は、注入された接着系アンカー樹脂6を保持するための筒袋状の網部材であって、穿設孔3aの孔径と略同じ外径(12mm)に形成され、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入される。基端部には、フランジ部5aが形成され、該フランジ部5aが穿設孔3aの周縁部の石膏ボード3の壁表面に面当(当接)されることにより、それ以上の挿入が規制される。そして、石膏ボード3の穿設孔3aに樹脂受網5を挿入したら、樹脂受網5の筒内に接着系アンカー樹脂6を注入すると共に、該接着系アンカー樹脂6中にアンカー金具4を挿入し、さらに、回り止め部材42を石膏ボード3に打ち込んだ後、接着系アンカー樹脂6を硬化させるが、本実施形態の樹脂受網5には、回り止め部材42の刃先部42aとの接触を避けるための切欠き部5bが形成されており、回り止め部材42を叩き込んだ際に変形を回避して、アンカー金具4を含め注入された接着系アンカー樹脂6をしっかりと保持することができる。また、接着系アンカー樹脂としてエポキシアクリレート樹脂主剤に過酸化ベンゾイル硬化剤を混合するタイプの混合型接着剤を用いている。
【0014】
2は壁面に面当てされてアンカー金具4に取り付けられる支持受け板であって、該支持受け板2には、取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の取付け孔20aと、接着系アンカー樹脂6の硬化前に取付け作業を完了できるようにするためのアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。支持受け板2の裏面側には、取付け孔20aの外周面部に凹溝20cが形成されており、この凹溝20cは、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて壁表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6を収容するスペースであり、石膏ボード3の壁表面側に回り止め部材42から突出するアンカー本体41の凸状部41cがその対向面に面当てされて支持する受け面となる。
そして、アンカー金具4に取付けネジ2aを介して取り付けされた際に、凹溝20cの対向面でアンカー本体41の凸状部41cを面当て支持固定することにより、凹溝20cの外周面で回り止め部材42の両端部を面当て支持され、所謂3点支持により、支持受け板2をアンカー金具5に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を直接かつ一体的に強固に組み付けすることができ、壁面に対する直角度を維持した状態とすることができるようになっている。
【0015】
図4に示す支持受け板2は、薄型テレビ9を壁掛け取り付けする場合に用いられる掛止ブラケット21として形成したものである。この掛止ブラケット21は、支持受け板2を楕円形状に形成し、その表面側に前方に突出する形成された、後述する掛止用の固定バー211の両側部を挿入支持する受け孔21bが開孔された支持片21aを備えて構成される。支持片21aの上下部分に取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の位置調整可能とする楕円形の取付け孔20aが設けられ、支持片21aの左右部分にアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。
【0016】
図5に示す支持受け板2は、薄型テレビ9を壁掛け取り付けする場合や、フックなどを取付けする場合など、汎用的に用いられる座板22として形成したものである。この座板22は、支持受け板2を円板状に形成し、その中央に取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の取付け孔20aが設けられ、取付け孔20aの両側部分にアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。
【0017】
次に、石膏ボード用アンカー構造1の埋設手順の施工方法について、図6、図7を参照して説明する。図6はアンカー金具の位置決め治具を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図、図7は位置決め治具の使用説明図、図8は石膏ボード用アンカー構造の埋設手順を示す説明図である。これらの図に示すように、石膏ボード3に石膏ボード用アンカー構造1を施工する場合は、まず、石膏ボード3に穿設孔3aを開ける。次に、位置決め治具8をアンカー金具4がセットされた状態で穿設孔3aに挿入する。
この位置決め治具8は、アンカー金具4を穿設孔3aの中心に正確にセットするためのものであり、全体が穿設孔3aの孔径と略同じ外径(11.8mm)の筒状に形成され、アンカー金具4の挿入側に、穿設孔3aの外周面に当接するようL字状に形成された位置決め治具8を穿設孔3aに出し入れ操作する把持可能なフランジ部81と、回り止め部材42を当接案内する案内部82とを備える。アンカー金具4の位置決め治具8に対するセットは、予めセットした状態から穿設孔3aに挿入するか、位置決め治具8を穿設孔3aに挿入してからセットするかの何れであっても良い。何れの場合も図7に仮装線で示す状態、即ち、回り止め部材42を打入する前の状態にセットし、凸状部41cを軽く叩きながら回り止め部材42を打ち込むと、刃先部42aは、自らがクロス31を切断して石膏ボード3に鋭利に刺さり、回り止め部材42が案内部82に案内されながら、穿設孔3aにセンター位置決めされた状態で、石膏ボード3に対して精度良く直角にアンカー金具4の正確な位置決めが行える。しかる後、アンカー金具4と共に位置決め治具8を抜き出して、穿設孔3aに回り止め部材42の打入跡3bを予め刻設させておく(図8(A))。
【0018】
次いで、打入跡3bが形成された穿設孔3aに樹脂受網5を挿入し(図8(B))、樹脂受網5内に接着系アンカー樹脂6を注入する(図8(C))。接着系アンカー樹脂6は、樹脂受網5の編み目周縁から石膏ボード3の裏面に充分にはみ出すまで注入したら、樹脂受網5を少しく(約10mm程度)引き出して再度接着系アンカー樹脂6を注入する(図8(D))。この様にすると、石膏ボード3の裏面の穿設孔3a外周面に接着系アンカー樹脂6を引き寄せてしっかりと付着させることができる。
その後、接着系アンカー樹脂6が注入された樹脂受網5中にアンカー金具4を挿入すると共に、回り止め部材42を打入跡3bに位置決めして押し込んで(図8(E))、アンカープラグPを用いない場合には、接着系アンカー樹脂6の硬化を待ち、凝固した後に支持受け板2を取付けネジ2a(ボルト)止めして取り付けを行う。
なお、回り止め部材42の打入跡3bの形成位置は、上下・左右・斜め方向など任意である。
【0019】
さて、上記のように構成した石膏ボード用アンカー構造1に支持受け板2を用いて、薄型テレビ9を壁掛け取り付けた場合について、図9〜図11を参照して説明する。図9は薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケットの斜視図、図10は石膏ボードへの配設状態を示す正面図、図11は石膏ボードへの配設状態を示す縦断面図である。これらの図に示すように、薄型テレビ9を壁掛け装着するにあたっては、掛止ブラケット21、固定バー211、吊持ブラケット7、座板22の各部材(壁掛け金具)を用いる。
吊持ブラケット7は、掛止ブラケット21に支持された固定バー211に、その上端側が引掛け係合可能に逆U字状(凹状)に折曲形成された吊持部71と、該吊持部71から下方に延出形成された薄型テレビ9の背面に取着されるテレビ取付け部72と、吊持部71の下部側となるテレビ取付け部72から壁面側にL字状に折曲されて下方に延出形成された、壁面との離間を保持し座板22に受け止め係止される補助支持部73とで板状部材により折曲形成された部材を、それぞれ左右に組として一体的に備えて構成される。なお、吊持ブラケット7は、軽量化を図るため板状部材を採用したが、これをパイプ材等を折曲形成して採用しても良い。
【0020】
薄型テレビ9を壁掛け取り付けするには、まず、石膏ボード3の壁面の上下左右の所定の高さ位置に、掛止ブラケット21と座板22をそれぞれ所定のピッチで2個所づつ取り付けするための位置決めを行い、間柱に取り付けする場合は、木ねじでネジ止めし、間柱が存在しない場合には石膏ボード用アンカー構造1を適用する。このとき、接着系アンカー樹脂6の硬化前に掛止ブラケット21を取り付けたい場合には、取付けネジ2aでアンカー本体41に取り付けした後、取付け孔20b部分にアンカープラグPを適用してネジ止めし、掛止ブラケット21のそれぞれの受け孔21bに、固定バー211の両側を挿入して架設する。なお固定バー211の両端部はキャップがねじ込まれて着脱自在になっている。次に、吊持ブラケット7の吊持部71を固定バー211に引っ掛けて、左右方向にスライド移動させて薄型テレビ9の取付位置を位置決め調整した後、補助支持部73に設けられた切欠き孔73aの個所に必要において石膏ボード用アンカー構造1を適用する。その後、吊持ブラケット7をテレビ取付け部72に穿設された取付け孔72aを介して薄型テレビ9の背面にビス止めし、吊持部71を固定バー211に引っ掛け、壁面と補助支持部73間に座板22を介在させて切欠き孔73aからワッシャを用いて取付けネジ2aで固定する。なお、吊持ブラケット7は、補助支持部73の取付けネジ2aを緩めるだけで、薄型テレビ9と共に簡単に取り外せるため、ホテルなどの施設に設置した場合に防犯の面から、また、耐震性の面からも、必要において吊持部71を固定バー211にタッピングビスなどによりビス71b止めするなど両者を固定しておけば安心である。
【0021】
次に、上記のような薄型テレビ9の壁掛け金具(壁掛け手段)を用いて、石膏ボード用アンカー構造1を適用した場合について行った耐震性能試験例について説明する。
本耐震性能試験は、財団法人 建材試験センターにより、試験場所をUR都市再生機構 都市住宅技術研究所とし、試験条件としては、1995年兵庫県南部地震の地震波、震度6強、加振回数6回について行われたものである。
本耐震性能試験に用いられた各部材の仕様は、以下の通りである。
・石膏ボード;910×1820mm、厚さ9.5mm、12.5mm、9.5+12.5mm(2枚張り)の3種類を、間柱45mm角(左右、中央に配設)にビス止め
・薄型テレビ;42型(1020×670mm、厚さ90mm、重量24Kg)、52型(1250×820mm、厚さ90mm、重量28.5Kg)の2種類
・接着系アンカー樹脂;旭化成ケミカルズ製のエポキシアクリレート樹脂主剤に過酸化ベンゾイル硬化剤を混合するタイプの混合型接着剤
・アンカー金具;アンカー本体(外ネジw3/8、外径9.2mm、長さ30mm、内ネジM6、有効深さ13mm)、回り止め部材(円弧状半月板、長さ30mm、深さ8mm)、何れも鉄製
・樹脂受網;SUS304ワイヤーメッシュ、12Φ、長さ34mmと石膏ボード2枚張り用40mmの2種類
・掛止ブラケット間のアンカーピッチ;フロアーから1700mmの高さで、52型テレビは800mmと460mmの2種類、42型テレビは700mm
・掛止ブラケットのアンカーピッチ;上下58mm
・座板間のアンカーピッチ;480mm
図10、図11の壁掛け構成は、石膏ボード厚さ9.5mm(12.5mm)、掛止ブラケット間のアンカーピッチ800mmをもって52型テレビを壁掛けした状態を示したものである。
【0022】
而して、その試験結果は、上記何れの条件組み合わせにおいても、
・薄型テレビ9の脱落なし
・壁掛け金具のズレ、損傷なし
・石膏ボードの損傷なし
・アンカー金具の抜け出しなし
との評価結果を得ることができ、特に、試験体中最も条件が厳しいと思われる、厚さ9.5mmの石膏ボード3に対して、掛止ブラケット21、21間のアンカーピッチ460mmをもって52型テレビを壁掛けした状態においても、耐震性能試験をクリアできたことは、本発明における石膏ボード用アンカー構造1が、間柱に直接取り付けした如くのアンカー強度や抜け止め機能を有することが確認されると共に、従来の石膏ボード用アンカー構造の耐震性能に比し、格段に優れていることが確認された。
【0023】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、間柱等の壁下地のない内壁用の石膏ボード3に対して、フック等の壁掛け部材を用いて薄型テレビ9などの重量物を取り付けするのであるが、本発明における石膏ボード用アンカー構造1は、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入される樹脂受網5と、該樹脂受網5の網筒内に注入されて網目から石膏ボード3の背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂6と、該接着系アンカー樹脂6が注入された樹脂受網5内に挿入されるアンカー金具4とからなり、アンカー金具4は、その外周域に凹凸部41aと内周域に雌ネジ部41bを有するアンカー本体41と、該アンカー本体41を樹脂受網5内に挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー本体41を回り止めする回り止め部材42とを一体的に備えて構成され、該回り止め部材42は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有し、アンカー本体41の基端部を石膏ボード3の壁表面から突出する凸状部41cが形成される位置に設けられている構成となっている。
【0024】
このため、フック等の壁掛け部材を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボード3に取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内壁の石膏ボード用のアンカー金具4として利用することが可能となり、樹脂受網5内にアンカー本体41を挿入して、回り止め部材42を石膏ボード3に打ち込む際にも、石膏ボード3を壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロス31が貼り付けられた石膏ボード3に回り止め部材42を打ち込む際にも、自らがクロス31を切断して石膏ボード3に鋭利に刺さるので、事前にクロス31に切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れるものとできる。しかも、埋設完了後に雌ネジ部41bに取り付けられたフックや掛止部材に薄型テレビ9などの重量物が吊持されても、その荷重はアンカー金具4と樹脂受網5、およびその全長域周縁に注入された接着系アンカー樹脂6が石膏ボード3背面の穿設孔3a周辺に行き渡り、これらが三位一体となって取付部分における負荷荷重を分散した状態で受け止めて、アンカー金具4に加わる負荷が石膏ボード3の穿設孔3aに直接的な集中荷重が加わることが回避され、従来のものに比し、石膏ボード3に対するアンカー強度や抜け止め機能をより強固なものとすることができ、内壁用の石膏ボード3であっても壁下地の補修を行なう必要がなくなり、耐震性が飛躍的に向上され、しっかりと取り付けすることができる。
【0025】
更には、石膏ボード3内に打ち込まれた回り止め部材42の基端辺が壁面と面一になった状態で、アンカー本体41の凸状部41cが壁表面から突出する状態でアンカー金具4を埋設することができるので、雌ネジ部41bに対して取付けネジ2aによって取り付けされる支持受け板2の対向裏面に、凹溝20cを形成するだけの簡単な構成をもって、凸状部41cと回り止め部材42の両端部とによる所謂3点支持により、支持受け板2をアンカー金具4に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を壁面に対する直角度を維持した状態で、直接かつ一体的に強固に組み付けすることができる。
【0026】
つまり、樹脂受網5内に挿入されたアンカー本体41に、取り付けネジ2aを雌ネジ部41bに螺入することで石膏ボード3の表面側に取り付けられる支持受け板2であって、該支持受け板2は、取付けネジ2aの取付け孔20aと、その裏面側となる取付け孔20a外周に形成された凹溝20cとを有し、アンカー金具4に取り付けした際に、凹溝20cの対向面でアンカー本体41の凸状部41cを面当て支持し、凹溝20cの外周面で回り止め部材42の両端部を当接支持する構成となっているため、凹溝20cが、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて壁表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6を収容するスペースとして利用することができるばかりか、アンカー金具4に取付けネジ2aを介して取り付けされた際に、面当てされる凸状部41cと回り止め部材42の両端部とによる所謂3点支持構造を実現することができ、支持受け板2をアンカー金具4に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を壁面に対する直角度を維持した状態で、直接かつ一体的に強固に組み付けすることができる。しかも、接着系アンカー樹脂6の硬化前であれば、アンカー金具4が直角度を有することなく埋設されていても、螺入により支持受け板2に引き寄せられてこれを矯正することができるという利点がある。
【0027】
また、支持受け板2には、注入された接着系アンカー樹脂6の硬化前に、支持受け板2をアンカー金具4に取付け可能とすべく、アンカープラグP用の取付け孔20aが設けられているので、アンカープラグPにより支持受け板2を取り付けしておけば、振動や不用意な衝撃が加わらない限り石膏ボード3を壊してしまう虞がないので、これを併用することにより、接着系アンカー樹脂6の硬化前であっても埋設作業と、支持受け板2を用いて薄型テレビ9などの重量物を取り付けする作業を完了することができ、作業時間を著しく短縮することができる。
なお、接着系アンカー樹脂6の硬化時間の目安は、温度10゜Cで約90分、温度20゜Cで約30分、温度30゜Cで約25分である。
【0028】
また、回り止め部材42は、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートからなり、その頂部が打ち込み方向を向くように、刃先部42aを凹凸部41aの山部よりも面落ちさせてアンカー本体41に溶着されているので、石膏ボード3に対する打ち込み抵抗をより低減することができると共に、雌ネジ部41bを塞いでしまうなど邪魔になることがない。しかも、アンカー本体41の基端部側の凹凸部41aを削り取った平滑面に回り止め部材42が溶着されているため、刃先部42aと凹凸部41aのネジ山部との間に形成された溝部域にも接着系アンカー樹脂6が注入されて、アンカー強度の向上に寄与することができる。
【0029】
また、樹脂受網5には、回り止め部材42との接触を避けるための切欠き部5bと、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入した際に石膏ボード3の表面側に面当てされるフランジ部5aが形成されているので、フランジ部5aが穿設孔3aの周縁部の石膏ボード3の壁表面側に面当(当接)されることにより、それ以上の挿入を規制することができ、切欠き部5bが回り止め部材42を叩き込んだ際に変形を回避して、アンカー金具4を含め注入された接着系アンカー樹脂6をしっかりと保持することができる。
【0030】
また、支持受け板2の凹溝20cは、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて石膏ボード表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6の収容スペースにも兼用されて構成されているので、はみ出した接着系アンカー樹脂6をフランジ部5aの外周面にまで付着させた状態で、壁面との間に挟み込んで支持受け板2をアンカー金具4に取り付けすることができる。特に、接着系アンカー樹脂6の硬化前に支持受け板2を取り付けすれば、はみ出した接着系アンカー樹脂6が凹溝20c内に隈無く行き渡った状態で、凹溝20c内面に接着させることができ、更なるアンカー強度を得ることができる。
【0031】
また、石膏ボード用アンカー構造1を室内壁の上下左右何れかの任意個所に適用し、支持受け板2を用いて薄型テレビ9を壁掛け装着するに、上側2個所に配設される支持受け板2を、掛止用の固定バー211の両側部を支持する掛止ブラケット21とし、下側2個所に配設される支持受け板2を座板22として構成して、それぞれアンカー金具4に取り付けし、薄型テレビ9の背面に、上端側に固定バー211へ掛止される一対の吊持部71と、テレビ背面に取付けされるテレビ取付け部72と、下端側に座板22にビス止めされる一対の補助支持部73とを備えた吊持ブラケット7を取着して、薄型テレビ9を、吊持部71を介して固定バー211へ壁掛けし、補助支持部73を座板22にビス止めして装着するようにしたので、吊持ブラケット7を、掛止ブラケット21、21間においてスライド可能な状態で仮壁掛けして位置決め調整することができ、配設位置を決定した後に座板22を取り付けする(アンカー金具4を埋設する)位置決めを行うことができ、取り付け現場の状況に応じて薄型テレビ9を壁掛け装着することができる。
【0032】
しかも、薄型テレビ9のような重量物であっても、各掛止ブラケット21、21にテレビ荷重を分担させて吊持することができ、補助支持部73と共に座板22により支持することができので、テレビ全体の荷重を上下左右に分散させた状態で壁掛けすることができ、吊持状態の恒久性を確保することができる。その結果、アンカー金具4、樹脂受網5、接着系アンカー樹脂6による三位一体の石膏ボード用アンカー構造1によって、穿設孔3aに対する荷重分散が図られた強固な抜け止め機能と相俟って、薄型テレビ9の壁掛け手段による荷重分散機能により、たとえ、間柱の全く無い石膏ボード3の壁面であっても、1個所における石膏ボード用アンカー構造1に対するテレビ荷重が集中することが無く、上記の耐震性能試験結果により実証されたように、格段に優れた耐震性能を有することができる。
更には、補助支持部73によって壁面とテレビ背面との空間が確保され、テレビ背面に設けられた種々の接続端子に接続されたコードやその端子が、壁面にテレビ荷重により押しつけられて傷めてしまうことが回避されると共に、吊持した状態からでもこれら接続端子の抜き差し操作を行うことができるという利点もある。
【0033】
また、アンカー金具4の位置決め治具8には、その基端部に、刃先部42aとの接触を避け回り止め部材42の板面を当接案内して、アンカー本体41を筒孔中心に位置決めするための案内部82と、穿設孔3aの表面側周縁部に当接する把持可能なフランジ部91が形成されており、フランジ部81を介して穿設孔3aへの挿入と抜き出しを行うことができるので、アンカー金具4を回り止め部材42を打入する前の状態にセットし、凸状部41cを軽く叩きながら回り止め部材42を打ち込むと、回り止め部材42が案内部82に摺接案内されながら、穿設孔3aにセンター位置決めされた状態で、石膏ボード3に対して精度良く直角にアンカー金具4の正確な位置決めが行えるばかりか、アンカー金具4と共に位置決め治具8を抜き出して、穿設孔3aに回り止め部材42の打入跡3bを予め刻設させておく施工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】埋設状態を示す石膏ボード用アンカー構造の使用説明図である。
【図2】アンカー金具を示す(A)は正面図、(B)側面図、(C)は平面図、(D)A−A切断端面図である。
【図3】樹脂受網を示す(A)は平面図、(B)側面図である。
【図4】支持受け板を掛止ブラケットとした実施例を示す構成図である。
【図5】支持受け板を座板とした実施例を示す構成図である。
【図6】アンカー金具の位置決め治具を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【図7】位置決め治具の使用説明図である。
【図8】石膏ボード用アンカー構造の埋設手順を示す説明図である。
【図9】薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケットの斜視図である。
【図10】石膏ボードへの配設状態を示す正面図である。
【図11】石膏ボードへの配設状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 石膏ボード用アンカー構造
2 支持受け板
2a 取付けネジ
20a 取付け孔
20b 取付け孔
20c 凹溝
21 掛止ブラケット
21a 支持片
21b 受け孔
211 固定バー
22 座板
3 石膏ボード
31 クロス
3a 穿設孔
3b 打入跡
4 アンカー金具
41 アンカー本体
41a 凹凸部
41b 雌ネジ部
41c 凸状部
42 回り止め部材
42a 刃先部
5 樹脂受網
5a フランジ部
5b 切欠き部
6 接着系アンカー樹脂
7 吊持ブラケット
71 吊持部
71a 取付け孔
71b ビス
72 テレビ取付け部
72a 取付け孔
73 補助支持部
73a 切欠き孔
8 位置決め治具
81 フランジ部
82 案内部
9 薄型テレビ
P アンカープラグ
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードに埋設される石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の内壁は、壁下地として所定間隔(約450〜500mm間隔)に立設した木製の間柱に下地材として石膏ボードを貼り付け、その表面にクロスなどの仕上げ材を貼り付けた構造が多用されている。このような内壁にタオル掛け用フック、カーテンレール、薄型テレビの掛止部材などを取り付ける場合には、間柱に取付けすることができないことが多く、直接石膏ボード壁に石膏ボード壁用アンカーを埋設し、該石膏ボード用アンカーに対して取り付け用のネジをねじ込む必要がある。その理由は、石膏ボード壁が強度的に脆いため、取り付け用のネジを直接ねじ込んでも、十分な固定強度を得ることができないからである。
【0003】
石膏ボード用アンカーとしては、アンカー本体を石膏ボード壁の取付け孔内周に対して、樹脂接着剤を含浸させて硬化させた後に、直にねじ込むタイプ(例えば、特許文献1参照)や、石膏ボード天井の穿設孔に直接接着系アンカー樹脂を注入すると共に、該接着系アンカー樹脂中にアンカー本体を挿入し、接着系アンカー樹脂の硬化によって必要な固定強度を得るタイプが知られている。後者は、接着系アンカー樹脂を併用するため、前者に比べて強度的に有利であるが、内壁に使用すると注入樹脂が壁裏側に落ちてしまい穿設孔周辺に付着保持することが難しく、内壁用に採用することが困難であり、また、取付けネジのねじ込みに際し、共回りの惧れがあるので、回り止め手段が必要である。
【0004】
一方、上記の回り止め手段としては、ALCの外壁に長尺なボルト部分を露出させて埋設される埋込ボルトの埋設部分に取り付けられて、埋込ボルトを回り止めするための回り止め部材が知られている。このものは、ALCの外壁専用に平板状の金属プレートで形成されており、その工法もALCに埋設孔を開けて接着系アンカー樹脂を注入し、埋込ボルトの埋設部分を挿入し、回り止め部材部分を打ち込みして、埋設部分とALCの埋設孔内周全域とを直接凝固結合させても、回り止め機能と抜け止め機能を同時に満たすことができる。
しかしながら、石膏ボードは、板厚が9〜12mm程度と薄く、ALCに比べ非常に脆く、特に、穿設孔内周はネジ山の僅かな力が加わるだけで粉状に崩れてしまうため、これをそのまま内壁用の石膏ボードに採用しても、打ち込む際に石膏ボードを壊してしまう惧れがあり、またアンカー強度や抜け止め機能も充分に得ることができないばかりか、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際には、事前にクロスに切り込みを入れておく必要があるので、埋設時の作業性に劣るという問題がある。しかも、薄型テレビなどの重量物を掛止部材を介して取り付けした場合に、地震などにより穿設孔内周部分の石膏ボード自体が壊れてテレビを落下損傷させてしまう恐れがあり、この様な耐震強度の問題から、壁下地の補修を行なって取付けするなどの対策が採らざるを得ないという実情がある。
【特許文献1】特開2004−308843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、フック等を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボードに取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内の石膏ボード用アンカー構造に利用することが可能となり、樹脂受網内にアンカー本体を挿入して、回り止め部材を石膏ボードに打ち込む際、石膏ボードを壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際にも、事前にクロスに切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れ、しかも、アンカー金具、樹脂受網、接着系アンカー樹脂が三位一体となって、アンカー金具に加わる荷重を分散させて石膏ボードの穿設孔に集中することを回避し、アンカー強度を高めて耐震性能を向上することのできる石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の石膏ボード用アンカー構造は、石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とからなる石膏ボード用アンカー構造であって、前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、該アンカー本体を前記樹脂受網内に挿入する際、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めする回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該回り止め部材は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有し、アンカー本体の基端部を石膏ボード表面から突出する凸状部が形成される位置に設けられていることを特徴とするものである。
また、上記課題を解決するために本発明の石膏ボード用アンカーの施工方法は、石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とを用いて施工される石膏ボード用アンカーの施工方法であって、前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めし、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有する回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該アンカー金具を前記樹脂受網内に挿入するにあたり、アンカー金具を、石膏ボードの穿設孔と略同径の筒状に成形されて、前記回り止め部材を回転規制した状態で筒孔中心に位置決めセット可能な位置決め治具に挿入し、該位置決め治具を穿設孔に挿入して、セットされたアンカー金具と共に前記回り止め部材を打ち込みし、アンカー金具の穿設孔へのセンター合わせをした後、該位置決め治具と共にアンカー金具を穿設孔から抜き出して、予め穿設孔に回り止め部材の打入跡を形成しておき、この穿設孔に対して、前記樹脂受網を挿入した状態で接着系アンカー樹脂を注入し、アンカー金具を、その回り止め部材を前記打入跡に位置合わせして前記樹脂受網内に挿入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記のように構成したことにより、フック等を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボードに取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内壁の石膏ボード用のアンカー金具として利用することが可能となり、樹脂受網内にアンカー本体を挿入して、回り止め部材を石膏ボードに打ち込む際、石膏ボードを壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロスが貼り付けられた石膏ボードに回り止め部材を打ち込む際にも、事前にクロスに切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れるものとできる。しかも、埋設完了後に雌ネジ部に取り付けられたフックや掛止部材に重量物が吊持されても、その荷重はアンカー金具と樹脂受網、およびその全長域周縁に注入された接着系アンカー樹脂が石膏ボード背面の穿設孔周辺に行き渡り、これらが三位一体となって取付部分における負荷荷重を分散した状態で受け止めて、アンカー金具に加わる負荷が石膏ボードの穿設孔に直接的に加わることが回避され、従来のものに比し、石膏ボードに対するアンカー強度や抜け止め機能をより強固なものとすることができ、内壁用の石膏ボードであっても壁下地の補修を行なう必要がなくなり、耐震性が飛躍的に向上され、しっかりと取り付けすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する石膏ボード用アンカー構造、およびその施工方法を図面に基づいて詳細に説明する。図1は埋設状態を示す石膏ボード用アンカー構造の説明図、図2(A)はアンカー金具の正面図、図2(B)はアンカー金具の平面図、図2(C)はアンカー金具の側面図、図2(D)はアンカー本体の切断端面図、図3(A)は樹脂受網の平面図、(B)は側面図、図4は支持受け板を掛止ブラケットとした実施例を示す構成図、図5は支持受け板を座板とした実施例を示す構成図である。
【0009】
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る石膏ボード用アンカー構造1は、支持受け板2に薄型テレビの吊持ブラケット7やフックなどを取り付けるために、石膏ボード3に埋設されるものであって、アンカー金具4、樹脂受網5、接着系アンカー樹脂6などを備えて構成されている。
【0010】
なお、石膏ボード3は、建築物における天井や内壁の下地材として用いられており、その表面には、クロス31などの仕上げ材が貼り付けられている。以下に内壁に適用した場合を例示するが、天井に用いて良いことは勿論である。石膏ボード3の壁面には、タオル掛け用や、薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケット7などを支持受け板2に取り付ける場合、石膏ボード3に樹脂受網5を介してアンカー金具4を埋設し、該アンカー金具4に支持受け板2装着用の取付けネジ2a(ボルト)がねじ込まれる。
【0011】
アンカー金具4は、アンカー本体41と回り止め部材42とを備えて構成される。アンカー本体41は、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入されるものであって、外周域に凹凸部41aを有し、内周域に雌ネジ部41bを有する。外周の凹凸部41aは、接着系アンカー樹脂6との接着性を高めるためのもので、本実施形態では雄ネジ(ボルト)溝状に形成されるが、ローレット加工などであってもよい。また、内周の雌ネジ部41bは、取付けネジ2aをねじ込むためのネジ穴である。
【0012】
回り止め部材42は、アンカー本体41に一体的に設けられ、アンカー金具4を石膏ボード3の穿設孔3aに挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー金具4を回り止めするものである。そして、本発明に係るアンカー金具4の回り止め部材42は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有する。回り止め部材42の形状や材質に制限はないが、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートとすることが好ましい。この場合には、刃先部42aの頂部を打ち込み方向を向け、基端部側の凹凸部41aを削り取った平滑面に形成し、この平滑面に、刃先部42aが凹凸部41aのネジ山部よりも面落ちさせて、アンカー本体41の基端部(頭部)を石膏ボード3の表面から突出する凸状部41cを有する位置に溶着されている。この様に取着すると、刃先部42aと凹凸部41aのネジ山部との間に形成された溝部域にも接着系アンカー樹脂6が注入されて、アンカー強度の向上に寄与することができる。
【0013】
樹脂受網5は、注入された接着系アンカー樹脂6を保持するための筒袋状の網部材であって、穿設孔3aの孔径と略同じ外径(12mm)に形成され、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入される。基端部には、フランジ部5aが形成され、該フランジ部5aが穿設孔3aの周縁部の石膏ボード3の壁表面に面当(当接)されることにより、それ以上の挿入が規制される。そして、石膏ボード3の穿設孔3aに樹脂受網5を挿入したら、樹脂受網5の筒内に接着系アンカー樹脂6を注入すると共に、該接着系アンカー樹脂6中にアンカー金具4を挿入し、さらに、回り止め部材42を石膏ボード3に打ち込んだ後、接着系アンカー樹脂6を硬化させるが、本実施形態の樹脂受網5には、回り止め部材42の刃先部42aとの接触を避けるための切欠き部5bが形成されており、回り止め部材42を叩き込んだ際に変形を回避して、アンカー金具4を含め注入された接着系アンカー樹脂6をしっかりと保持することができる。また、接着系アンカー樹脂としてエポキシアクリレート樹脂主剤に過酸化ベンゾイル硬化剤を混合するタイプの混合型接着剤を用いている。
【0014】
2は壁面に面当てされてアンカー金具4に取り付けられる支持受け板であって、該支持受け板2には、取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の取付け孔20aと、接着系アンカー樹脂6の硬化前に取付け作業を完了できるようにするためのアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。支持受け板2の裏面側には、取付け孔20aの外周面部に凹溝20cが形成されており、この凹溝20cは、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて壁表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6を収容するスペースであり、石膏ボード3の壁表面側に回り止め部材42から突出するアンカー本体41の凸状部41cがその対向面に面当てされて支持する受け面となる。
そして、アンカー金具4に取付けネジ2aを介して取り付けされた際に、凹溝20cの対向面でアンカー本体41の凸状部41cを面当て支持固定することにより、凹溝20cの外周面で回り止め部材42の両端部を面当て支持され、所謂3点支持により、支持受け板2をアンカー金具5に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を直接かつ一体的に強固に組み付けすることができ、壁面に対する直角度を維持した状態とすることができるようになっている。
【0015】
図4に示す支持受け板2は、薄型テレビ9を壁掛け取り付けする場合に用いられる掛止ブラケット21として形成したものである。この掛止ブラケット21は、支持受け板2を楕円形状に形成し、その表面側に前方に突出する形成された、後述する掛止用の固定バー211の両側部を挿入支持する受け孔21bが開孔された支持片21aを備えて構成される。支持片21aの上下部分に取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の位置調整可能とする楕円形の取付け孔20aが設けられ、支持片21aの左右部分にアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。
【0016】
図5に示す支持受け板2は、薄型テレビ9を壁掛け取り付けする場合や、フックなどを取付けする場合など、汎用的に用いられる座板22として形成したものである。この座板22は、支持受け板2を円板状に形成し、その中央に取付けネジ2aをアンカー本体41の雌ネジ部41bへ螺入する為の取付け孔20aが設けられ、取付け孔20aの両側部分にアンカープラグP用の取付け孔20bが穿設されている。
【0017】
次に、石膏ボード用アンカー構造1の埋設手順の施工方法について、図6、図7を参照して説明する。図6はアンカー金具の位置決め治具を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図、図7は位置決め治具の使用説明図、図8は石膏ボード用アンカー構造の埋設手順を示す説明図である。これらの図に示すように、石膏ボード3に石膏ボード用アンカー構造1を施工する場合は、まず、石膏ボード3に穿設孔3aを開ける。次に、位置決め治具8をアンカー金具4がセットされた状態で穿設孔3aに挿入する。
この位置決め治具8は、アンカー金具4を穿設孔3aの中心に正確にセットするためのものであり、全体が穿設孔3aの孔径と略同じ外径(11.8mm)の筒状に形成され、アンカー金具4の挿入側に、穿設孔3aの外周面に当接するようL字状に形成された位置決め治具8を穿設孔3aに出し入れ操作する把持可能なフランジ部81と、回り止め部材42を当接案内する案内部82とを備える。アンカー金具4の位置決め治具8に対するセットは、予めセットした状態から穿設孔3aに挿入するか、位置決め治具8を穿設孔3aに挿入してからセットするかの何れであっても良い。何れの場合も図7に仮装線で示す状態、即ち、回り止め部材42を打入する前の状態にセットし、凸状部41cを軽く叩きながら回り止め部材42を打ち込むと、刃先部42aは、自らがクロス31を切断して石膏ボード3に鋭利に刺さり、回り止め部材42が案内部82に案内されながら、穿設孔3aにセンター位置決めされた状態で、石膏ボード3に対して精度良く直角にアンカー金具4の正確な位置決めが行える。しかる後、アンカー金具4と共に位置決め治具8を抜き出して、穿設孔3aに回り止め部材42の打入跡3bを予め刻設させておく(図8(A))。
【0018】
次いで、打入跡3bが形成された穿設孔3aに樹脂受網5を挿入し(図8(B))、樹脂受網5内に接着系アンカー樹脂6を注入する(図8(C))。接着系アンカー樹脂6は、樹脂受網5の編み目周縁から石膏ボード3の裏面に充分にはみ出すまで注入したら、樹脂受網5を少しく(約10mm程度)引き出して再度接着系アンカー樹脂6を注入する(図8(D))。この様にすると、石膏ボード3の裏面の穿設孔3a外周面に接着系アンカー樹脂6を引き寄せてしっかりと付着させることができる。
その後、接着系アンカー樹脂6が注入された樹脂受網5中にアンカー金具4を挿入すると共に、回り止め部材42を打入跡3bに位置決めして押し込んで(図8(E))、アンカープラグPを用いない場合には、接着系アンカー樹脂6の硬化を待ち、凝固した後に支持受け板2を取付けネジ2a(ボルト)止めして取り付けを行う。
なお、回り止め部材42の打入跡3bの形成位置は、上下・左右・斜め方向など任意である。
【0019】
さて、上記のように構成した石膏ボード用アンカー構造1に支持受け板2を用いて、薄型テレビ9を壁掛け取り付けた場合について、図9〜図11を参照して説明する。図9は薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケットの斜視図、図10は石膏ボードへの配設状態を示す正面図、図11は石膏ボードへの配設状態を示す縦断面図である。これらの図に示すように、薄型テレビ9を壁掛け装着するにあたっては、掛止ブラケット21、固定バー211、吊持ブラケット7、座板22の各部材(壁掛け金具)を用いる。
吊持ブラケット7は、掛止ブラケット21に支持された固定バー211に、その上端側が引掛け係合可能に逆U字状(凹状)に折曲形成された吊持部71と、該吊持部71から下方に延出形成された薄型テレビ9の背面に取着されるテレビ取付け部72と、吊持部71の下部側となるテレビ取付け部72から壁面側にL字状に折曲されて下方に延出形成された、壁面との離間を保持し座板22に受け止め係止される補助支持部73とで板状部材により折曲形成された部材を、それぞれ左右に組として一体的に備えて構成される。なお、吊持ブラケット7は、軽量化を図るため板状部材を採用したが、これをパイプ材等を折曲形成して採用しても良い。
【0020】
薄型テレビ9を壁掛け取り付けするには、まず、石膏ボード3の壁面の上下左右の所定の高さ位置に、掛止ブラケット21と座板22をそれぞれ所定のピッチで2個所づつ取り付けするための位置決めを行い、間柱に取り付けする場合は、木ねじでネジ止めし、間柱が存在しない場合には石膏ボード用アンカー構造1を適用する。このとき、接着系アンカー樹脂6の硬化前に掛止ブラケット21を取り付けたい場合には、取付けネジ2aでアンカー本体41に取り付けした後、取付け孔20b部分にアンカープラグPを適用してネジ止めし、掛止ブラケット21のそれぞれの受け孔21bに、固定バー211の両側を挿入して架設する。なお固定バー211の両端部はキャップがねじ込まれて着脱自在になっている。次に、吊持ブラケット7の吊持部71を固定バー211に引っ掛けて、左右方向にスライド移動させて薄型テレビ9の取付位置を位置決め調整した後、補助支持部73に設けられた切欠き孔73aの個所に必要において石膏ボード用アンカー構造1を適用する。その後、吊持ブラケット7をテレビ取付け部72に穿設された取付け孔72aを介して薄型テレビ9の背面にビス止めし、吊持部71を固定バー211に引っ掛け、壁面と補助支持部73間に座板22を介在させて切欠き孔73aからワッシャを用いて取付けネジ2aで固定する。なお、吊持ブラケット7は、補助支持部73の取付けネジ2aを緩めるだけで、薄型テレビ9と共に簡単に取り外せるため、ホテルなどの施設に設置した場合に防犯の面から、また、耐震性の面からも、必要において吊持部71を固定バー211にタッピングビスなどによりビス71b止めするなど両者を固定しておけば安心である。
【0021】
次に、上記のような薄型テレビ9の壁掛け金具(壁掛け手段)を用いて、石膏ボード用アンカー構造1を適用した場合について行った耐震性能試験例について説明する。
本耐震性能試験は、財団法人 建材試験センターにより、試験場所をUR都市再生機構 都市住宅技術研究所とし、試験条件としては、1995年兵庫県南部地震の地震波、震度6強、加振回数6回について行われたものである。
本耐震性能試験に用いられた各部材の仕様は、以下の通りである。
・石膏ボード;910×1820mm、厚さ9.5mm、12.5mm、9.5+12.5mm(2枚張り)の3種類を、間柱45mm角(左右、中央に配設)にビス止め
・薄型テレビ;42型(1020×670mm、厚さ90mm、重量24Kg)、52型(1250×820mm、厚さ90mm、重量28.5Kg)の2種類
・接着系アンカー樹脂;旭化成ケミカルズ製のエポキシアクリレート樹脂主剤に過酸化ベンゾイル硬化剤を混合するタイプの混合型接着剤
・アンカー金具;アンカー本体(外ネジw3/8、外径9.2mm、長さ30mm、内ネジM6、有効深さ13mm)、回り止め部材(円弧状半月板、長さ30mm、深さ8mm)、何れも鉄製
・樹脂受網;SUS304ワイヤーメッシュ、12Φ、長さ34mmと石膏ボード2枚張り用40mmの2種類
・掛止ブラケット間のアンカーピッチ;フロアーから1700mmの高さで、52型テレビは800mmと460mmの2種類、42型テレビは700mm
・掛止ブラケットのアンカーピッチ;上下58mm
・座板間のアンカーピッチ;480mm
図10、図11の壁掛け構成は、石膏ボード厚さ9.5mm(12.5mm)、掛止ブラケット間のアンカーピッチ800mmをもって52型テレビを壁掛けした状態を示したものである。
【0022】
而して、その試験結果は、上記何れの条件組み合わせにおいても、
・薄型テレビ9の脱落なし
・壁掛け金具のズレ、損傷なし
・石膏ボードの損傷なし
・アンカー金具の抜け出しなし
との評価結果を得ることができ、特に、試験体中最も条件が厳しいと思われる、厚さ9.5mmの石膏ボード3に対して、掛止ブラケット21、21間のアンカーピッチ460mmをもって52型テレビを壁掛けした状態においても、耐震性能試験をクリアできたことは、本発明における石膏ボード用アンカー構造1が、間柱に直接取り付けした如くのアンカー強度や抜け止め機能を有することが確認されると共に、従来の石膏ボード用アンカー構造の耐震性能に比し、格段に優れていることが確認された。
【0023】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、間柱等の壁下地のない内壁用の石膏ボード3に対して、フック等の壁掛け部材を用いて薄型テレビ9などの重量物を取り付けするのであるが、本発明における石膏ボード用アンカー構造1は、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入される樹脂受網5と、該樹脂受網5の網筒内に注入されて網目から石膏ボード3の背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂6と、該接着系アンカー樹脂6が注入された樹脂受網5内に挿入されるアンカー金具4とからなり、アンカー金具4は、その外周域に凹凸部41aと内周域に雌ネジ部41bを有するアンカー本体41と、該アンカー本体41を樹脂受網5内に挿入する際、石膏ボード3に打ち込まれてアンカー本体41を回り止めする回り止め部材42とを一体的に備えて構成され、該回り止め部材42は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部42aを有し、アンカー本体41の基端部を石膏ボード3の壁表面から突出する凸状部41cが形成される位置に設けられている構成となっている。
【0024】
このため、フック等の壁掛け部材を取付けする雌ねじが形成されたアンカー金具を接着系アンカー樹脂を用いて石膏ボード3に取り付けるようにしたものでありながら、従来屋外のALC壁専用の埋設ボルトに備えられていた回り止め部材を応用して、室内壁の石膏ボード用のアンカー金具4として利用することが可能となり、樹脂受網5内にアンカー本体41を挿入して、回り止め部材42を石膏ボード3に打ち込む際にも、石膏ボード3を壊してしまう可能性を著しく低減させることができると共に、クロス31が貼り付けられた石膏ボード3に回り止め部材42を打ち込む際にも、自らがクロス31を切断して石膏ボード3に鋭利に刺さるので、事前にクロス31に切り込みを入れる必要もなくなり、確実に回り止め機能を保持することができ、埋設時の作業性にも優れるものとできる。しかも、埋設完了後に雌ネジ部41bに取り付けられたフックや掛止部材に薄型テレビ9などの重量物が吊持されても、その荷重はアンカー金具4と樹脂受網5、およびその全長域周縁に注入された接着系アンカー樹脂6が石膏ボード3背面の穿設孔3a周辺に行き渡り、これらが三位一体となって取付部分における負荷荷重を分散した状態で受け止めて、アンカー金具4に加わる負荷が石膏ボード3の穿設孔3aに直接的な集中荷重が加わることが回避され、従来のものに比し、石膏ボード3に対するアンカー強度や抜け止め機能をより強固なものとすることができ、内壁用の石膏ボード3であっても壁下地の補修を行なう必要がなくなり、耐震性が飛躍的に向上され、しっかりと取り付けすることができる。
【0025】
更には、石膏ボード3内に打ち込まれた回り止め部材42の基端辺が壁面と面一になった状態で、アンカー本体41の凸状部41cが壁表面から突出する状態でアンカー金具4を埋設することができるので、雌ネジ部41bに対して取付けネジ2aによって取り付けされる支持受け板2の対向裏面に、凹溝20cを形成するだけの簡単な構成をもって、凸状部41cと回り止め部材42の両端部とによる所謂3点支持により、支持受け板2をアンカー金具4に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を壁面に対する直角度を維持した状態で、直接かつ一体的に強固に組み付けすることができる。
【0026】
つまり、樹脂受網5内に挿入されたアンカー本体41に、取り付けネジ2aを雌ネジ部41bに螺入することで石膏ボード3の表面側に取り付けられる支持受け板2であって、該支持受け板2は、取付けネジ2aの取付け孔20aと、その裏面側となる取付け孔20a外周に形成された凹溝20cとを有し、アンカー金具4に取り付けした際に、凹溝20cの対向面でアンカー本体41の凸状部41cを面当て支持し、凹溝20cの外周面で回り止め部材42の両端部を当接支持する構成となっているため、凹溝20cが、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて壁表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6を収容するスペースとして利用することができるばかりか、アンカー金具4に取付けネジ2aを介して取り付けされた際に、面当てされる凸状部41cと回り止め部材42の両端部とによる所謂3点支持構造を実現することができ、支持受け板2をアンカー金具4に対して石膏ボード3を挟み込むことなく、両者を壁面に対する直角度を維持した状態で、直接かつ一体的に強固に組み付けすることができる。しかも、接着系アンカー樹脂6の硬化前であれば、アンカー金具4が直角度を有することなく埋設されていても、螺入により支持受け板2に引き寄せられてこれを矯正することができるという利点がある。
【0027】
また、支持受け板2には、注入された接着系アンカー樹脂6の硬化前に、支持受け板2をアンカー金具4に取付け可能とすべく、アンカープラグP用の取付け孔20aが設けられているので、アンカープラグPにより支持受け板2を取り付けしておけば、振動や不用意な衝撃が加わらない限り石膏ボード3を壊してしまう虞がないので、これを併用することにより、接着系アンカー樹脂6の硬化前であっても埋設作業と、支持受け板2を用いて薄型テレビ9などの重量物を取り付けする作業を完了することができ、作業時間を著しく短縮することができる。
なお、接着系アンカー樹脂6の硬化時間の目安は、温度10゜Cで約90分、温度20゜Cで約30分、温度30゜Cで約25分である。
【0028】
また、回り止め部材42は、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートからなり、その頂部が打ち込み方向を向くように、刃先部42aを凹凸部41aの山部よりも面落ちさせてアンカー本体41に溶着されているので、石膏ボード3に対する打ち込み抵抗をより低減することができると共に、雌ネジ部41bを塞いでしまうなど邪魔になることがない。しかも、アンカー本体41の基端部側の凹凸部41aを削り取った平滑面に回り止め部材42が溶着されているため、刃先部42aと凹凸部41aのネジ山部との間に形成された溝部域にも接着系アンカー樹脂6が注入されて、アンカー強度の向上に寄与することができる。
【0029】
また、樹脂受網5には、回り止め部材42との接触を避けるための切欠き部5bと、石膏ボード3の穿設孔3aに挿入した際に石膏ボード3の表面側に面当てされるフランジ部5aが形成されているので、フランジ部5aが穿設孔3aの周縁部の石膏ボード3の壁表面側に面当(当接)されることにより、それ以上の挿入を規制することができ、切欠き部5bが回り止め部材42を叩き込んだ際に変形を回避して、アンカー金具4を含め注入された接着系アンカー樹脂6をしっかりと保持することができる。
【0030】
また、支持受け板2の凹溝20cは、樹脂受網5のフランジ部5aと樹脂受網5内に注入されて石膏ボード表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂6の収容スペースにも兼用されて構成されているので、はみ出した接着系アンカー樹脂6をフランジ部5aの外周面にまで付着させた状態で、壁面との間に挟み込んで支持受け板2をアンカー金具4に取り付けすることができる。特に、接着系アンカー樹脂6の硬化前に支持受け板2を取り付けすれば、はみ出した接着系アンカー樹脂6が凹溝20c内に隈無く行き渡った状態で、凹溝20c内面に接着させることができ、更なるアンカー強度を得ることができる。
【0031】
また、石膏ボード用アンカー構造1を室内壁の上下左右何れかの任意個所に適用し、支持受け板2を用いて薄型テレビ9を壁掛け装着するに、上側2個所に配設される支持受け板2を、掛止用の固定バー211の両側部を支持する掛止ブラケット21とし、下側2個所に配設される支持受け板2を座板22として構成して、それぞれアンカー金具4に取り付けし、薄型テレビ9の背面に、上端側に固定バー211へ掛止される一対の吊持部71と、テレビ背面に取付けされるテレビ取付け部72と、下端側に座板22にビス止めされる一対の補助支持部73とを備えた吊持ブラケット7を取着して、薄型テレビ9を、吊持部71を介して固定バー211へ壁掛けし、補助支持部73を座板22にビス止めして装着するようにしたので、吊持ブラケット7を、掛止ブラケット21、21間においてスライド可能な状態で仮壁掛けして位置決め調整することができ、配設位置を決定した後に座板22を取り付けする(アンカー金具4を埋設する)位置決めを行うことができ、取り付け現場の状況に応じて薄型テレビ9を壁掛け装着することができる。
【0032】
しかも、薄型テレビ9のような重量物であっても、各掛止ブラケット21、21にテレビ荷重を分担させて吊持することができ、補助支持部73と共に座板22により支持することができので、テレビ全体の荷重を上下左右に分散させた状態で壁掛けすることができ、吊持状態の恒久性を確保することができる。その結果、アンカー金具4、樹脂受網5、接着系アンカー樹脂6による三位一体の石膏ボード用アンカー構造1によって、穿設孔3aに対する荷重分散が図られた強固な抜け止め機能と相俟って、薄型テレビ9の壁掛け手段による荷重分散機能により、たとえ、間柱の全く無い石膏ボード3の壁面であっても、1個所における石膏ボード用アンカー構造1に対するテレビ荷重が集中することが無く、上記の耐震性能試験結果により実証されたように、格段に優れた耐震性能を有することができる。
更には、補助支持部73によって壁面とテレビ背面との空間が確保され、テレビ背面に設けられた種々の接続端子に接続されたコードやその端子が、壁面にテレビ荷重により押しつけられて傷めてしまうことが回避されると共に、吊持した状態からでもこれら接続端子の抜き差し操作を行うことができるという利点もある。
【0033】
また、アンカー金具4の位置決め治具8には、その基端部に、刃先部42aとの接触を避け回り止め部材42の板面を当接案内して、アンカー本体41を筒孔中心に位置決めするための案内部82と、穿設孔3aの表面側周縁部に当接する把持可能なフランジ部91が形成されており、フランジ部81を介して穿設孔3aへの挿入と抜き出しを行うことができるので、アンカー金具4を回り止め部材42を打入する前の状態にセットし、凸状部41cを軽く叩きながら回り止め部材42を打ち込むと、回り止め部材42が案内部82に摺接案内されながら、穿設孔3aにセンター位置決めされた状態で、石膏ボード3に対して精度良く直角にアンカー金具4の正確な位置決めが行えるばかりか、アンカー金具4と共に位置決め治具8を抜き出して、穿設孔3aに回り止め部材42の打入跡3bを予め刻設させておく施工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】埋設状態を示す石膏ボード用アンカー構造の使用説明図である。
【図2】アンカー金具を示す(A)は正面図、(B)側面図、(C)は平面図、(D)A−A切断端面図である。
【図3】樹脂受網を示す(A)は平面図、(B)側面図である。
【図4】支持受け板を掛止ブラケットとした実施例を示す構成図である。
【図5】支持受け板を座板とした実施例を示す構成図である。
【図6】アンカー金具の位置決め治具を示す(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は断面図である。
【図7】位置決め治具の使用説明図である。
【図8】石膏ボード用アンカー構造の埋設手順を示す説明図である。
【図9】薄型テレビの壁掛け用吊持ブラケットの斜視図である。
【図10】石膏ボードへの配設状態を示す正面図である。
【図11】石膏ボードへの配設状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 石膏ボード用アンカー構造
2 支持受け板
2a 取付けネジ
20a 取付け孔
20b 取付け孔
20c 凹溝
21 掛止ブラケット
21a 支持片
21b 受け孔
211 固定バー
22 座板
3 石膏ボード
31 クロス
3a 穿設孔
3b 打入跡
4 アンカー金具
41 アンカー本体
41a 凹凸部
41b 雌ネジ部
41c 凸状部
42 回り止め部材
42a 刃先部
5 樹脂受網
5a フランジ部
5b 切欠き部
6 接着系アンカー樹脂
7 吊持ブラケット
71 吊持部
71a 取付け孔
71b ビス
72 テレビ取付け部
72a 取付け孔
73 補助支持部
73a 切欠き孔
8 位置決め治具
81 フランジ部
82 案内部
9 薄型テレビ
P アンカープラグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とからなる石膏ボード用アンカー構造であって、
前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、該アンカー本体を前記樹脂受網内に挿入する際、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めする回り止め部材とを一体的に備えて構成され、
該回り止め部材は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有し、アンカー本体の基端部を石膏ボード表面から突出する凸状部が形成される位置に設けられていることを特徴とする石膏ボード用アンカー構造。
【請求項2】
前記回り止め部材は、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートからなり、その頂部が打ち込み方向を向くように、前記刃先部を前記凹凸部の山部よりも面落ちさせてアンカー本体に溶着されることを特徴とする請求項1記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項3】
前記樹脂受網には、前記回り止め部材との接触を避けるための切欠き部と、石膏ボードの穿設孔に挿入した際に石膏ボードの表面側に面当てされるフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項4】
前記樹脂受網内に挿入されたアンカー本体に、取り付け用ネジを雌ネジ部に螺入することで石膏ボードの表面側に取り付けられる支持受け板であって、該支持受け板は、取付けネジの取付け孔と、その裏面側となる取付け孔外周に形成された凹溝とを有し、前記アンカー金具に取り付けした際に、前記凹溝の対向面でアンカー本体の凸状部を面当て支持し、凹溝の外周面で前記回り止め部材の両端部を当接支持することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項5】
前記支持受け板の凹溝は、前記樹脂受網のフランジ部と樹脂受網内に注入されて石膏ボード表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂の収容スペースに構成されていることを特徴とする請求項3に記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項6】
前記支持受け板には、前記注入された接着系アンカー樹脂の硬化前に、支持受け板を前記アンカー金具に取付け可能とすべく、アンカープラグ用の取付け孔が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項7】
前記石膏ボード用アンカー構造を室内壁の上下左右の任意個所に適用し、前記支持受け板を用いて薄型テレビを壁掛け装着するに、
前記上側2個所に配設される支持受け板を、掛止用の固定バーの両側部を支持する掛止ブラケットとし、前記下側2個所に配設される支持受け板を座板として構成して、それぞれ前記アンカー金具に取り付けし、
前記薄型テレビの背面には、上端側に前記固定バーへ掛止される一対の吊持部と、テレビ背面に取付けされるテレビ取付け部と、下端側に前記座板にビス止めされる一対の補助支持部とを備えた吊持ブラケットを取着して、
薄型テレビを、前記吊持部を介して固定バーへ壁掛けし、前記補助支持部を座板にビス止めして装着したことを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項8】
石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とを用いて施工される石膏ボード用アンカーの施工方法であって、
前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めし、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有する回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該アンカー金具を前記樹脂受網内に挿入するにあたり、
アンカー金具を、石膏ボードの穿設孔と略同径の筒状に成形されて、前記回り止め部材を回転規制した状態で筒孔中心に位置決めセット可能な位置決め治具に挿入し、
該位置決め治具を穿設孔に挿入して、セットされたアンカー金具と共に前記回り止め部材を打ち込みし、アンカー金具の穿設孔へのセンター合わせをした後、
該位置決め治具と共にアンカー金具を穿設孔から抜き出して、予め穿設孔に回り止め部材の打入跡を形成しておき、
この穿設孔に対して、前記樹脂受網を挿入した状態で接着系アンカー樹脂を注入し、アンカー金具を、その回り止め部材を前記打入跡に位置合わせして前記樹脂受網内に挿入することを特徴とする石膏ボード用アンカーの施工方法。
【請求項9】
前記位置決め治具には、その基端部に、前記刃先部との接触を避け回り止め部材を案内して、アンカー本体を筒孔中心に位置決めするための案内部と、前記穿設孔の周縁部に当接する把持可能なフランジ部が形成されており、該フランジ部を介して穿設孔への挿入と抜き出しを行うことを特徴とする請求項8に記載の石膏ボード用アンカーの施工方法。
【請求項10】
前記接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網を、少しく引き出した後、再び元の位置に押し込むことを特徴とする請求項8または9に記載の石膏ボード用アンカーの施工方法。
【請求項1】
石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とからなる石膏ボード用アンカー構造であって、
前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、該アンカー本体を前記樹脂受網内に挿入する際、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めする回り止め部材とを一体的に備えて構成され、
該回り止め部材は、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有し、アンカー本体の基端部を石膏ボード表面から突出する凸状部が形成される位置に設けられていることを特徴とする石膏ボード用アンカー構造。
【請求項2】
前記回り止め部材は、半円形状又は二等辺三角形状の金属プレートからなり、その頂部が打ち込み方向を向くように、前記刃先部を前記凹凸部の山部よりも面落ちさせてアンカー本体に溶着されることを特徴とする請求項1記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項3】
前記樹脂受網には、前記回り止め部材との接触を避けるための切欠き部と、石膏ボードの穿設孔に挿入した際に石膏ボードの表面側に面当てされるフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項4】
前記樹脂受網内に挿入されたアンカー本体に、取り付け用ネジを雌ネジ部に螺入することで石膏ボードの表面側に取り付けられる支持受け板であって、該支持受け板は、取付けネジの取付け孔と、その裏面側となる取付け孔外周に形成された凹溝とを有し、前記アンカー金具に取り付けした際に、前記凹溝の対向面でアンカー本体の凸状部を面当て支持し、凹溝の外周面で前記回り止め部材の両端部を当接支持することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項5】
前記支持受け板の凹溝は、前記樹脂受網のフランジ部と樹脂受網内に注入されて石膏ボード表面側にはみ出した接着系アンカー樹脂の収容スペースに構成されていることを特徴とする請求項3に記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項6】
前記支持受け板には、前記注入された接着系アンカー樹脂の硬化前に、支持受け板を前記アンカー金具に取付け可能とすべく、アンカープラグ用の取付け孔が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項7】
前記石膏ボード用アンカー構造を室内壁の上下左右の任意個所に適用し、前記支持受け板を用いて薄型テレビを壁掛け装着するに、
前記上側2個所に配設される支持受け板を、掛止用の固定バーの両側部を支持する掛止ブラケットとし、前記下側2個所に配設される支持受け板を座板として構成して、それぞれ前記アンカー金具に取り付けし、
前記薄型テレビの背面には、上端側に前記固定バーへ掛止される一対の吊持部と、テレビ背面に取付けされるテレビ取付け部と、下端側に前記座板にビス止めされる一対の補助支持部とを備えた吊持ブラケットを取着して、
薄型テレビを、前記吊持部を介して固定バーへ壁掛けし、前記補助支持部を座板にビス止めして装着したことを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の石膏ボード用アンカー構造。
【請求項8】
石膏ボードの穿設孔に挿入される樹脂受網と、該樹脂受網の網筒内に注入されて網目から石膏ボードの背面側周辺に流出する接着系アンカー樹脂と、該接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網内に挿入されるアンカー金具とを用いて施工される石膏ボード用アンカーの施工方法であって、
前記アンカー金具は、その外周域に凹凸部と内周域に雌ネジ部を有するアンカー本体と、石膏ボードに打ち込まれてアンカー本体を回り止めし、打ち込み方向先端部に先鋭状に刃先加工された刃先部を有する回り止め部材とを一体的に備えて構成され、該アンカー金具を前記樹脂受網内に挿入するにあたり、
アンカー金具を、石膏ボードの穿設孔と略同径の筒状に成形されて、前記回り止め部材を回転規制した状態で筒孔中心に位置決めセット可能な位置決め治具に挿入し、
該位置決め治具を穿設孔に挿入して、セットされたアンカー金具と共に前記回り止め部材を打ち込みし、アンカー金具の穿設孔へのセンター合わせをした後、
該位置決め治具と共にアンカー金具を穿設孔から抜き出して、予め穿設孔に回り止め部材の打入跡を形成しておき、
この穿設孔に対して、前記樹脂受網を挿入した状態で接着系アンカー樹脂を注入し、アンカー金具を、その回り止め部材を前記打入跡に位置合わせして前記樹脂受網内に挿入することを特徴とする石膏ボード用アンカーの施工方法。
【請求項9】
前記位置決め治具には、その基端部に、前記刃先部との接触を避け回り止め部材を案内して、アンカー本体を筒孔中心に位置決めするための案内部と、前記穿設孔の周縁部に当接する把持可能なフランジ部が形成されており、該フランジ部を介して穿設孔への挿入と抜き出しを行うことを特徴とする請求項8に記載の石膏ボード用アンカーの施工方法。
【請求項10】
前記接着系アンカー樹脂が注入された樹脂受網を、少しく引き出した後、再び元の位置に押し込むことを特徴とする請求項8または9に記載の石膏ボード用アンカーの施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−21731(P2011−21731A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169429(P2009−169429)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(398021043)有限会社柴野製作所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(398021043)有限会社柴野製作所 (4)
【Fターム(参考)】
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