説明

石膏組成物のための分散剤

本発明は、プラスター組成物のための分散剤、特に液化剤としてのポリマーPの使用、並びにポリマーPを含むプラスター組成物に関する。ポリマーPは、少なくとも1種の酸単位、少なくとも1種のエステル単位、及び少なくとも1種のアミド単位を含み、エステル及びアミド単位に対する酸単位の比が2〜6である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏組成物、特に石膏組成物のための分散剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール側鎖をもつα,β-不飽和カルボン酸のポリマーは、かなり長い間、それらによるかなりの水の低減のおかげでコンクリート技術において、分散剤、特に、減水剤として使用されてきている。これらのポリマーは櫛形ポリマー構造をもつ。エステル及びカルボン酸基に加えてアミド基も有する、かなりの数のそのような櫛形ポリマーがある。
【0003】
公知のコンクリート分散剤は石膏組成物のためには限られた範囲でしか使用することができないことが今ではわかっている。公知のコンクリート分散剤は石膏において比較的僅かの流動化しか達成せず、したがって多量使用しなければならないか、あるいはそれらは強い遅延作用を有し、石膏組成物がほとんど硬化しないかのいずれかである。
【0004】
例えば、メラミン−スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物が、石膏減水剤として今日まで用いられてきている。しかし、これらの減水剤は、例えば、有害なホルムアルデヒドを放出するので環境上の問題があり、そのために望ましくない。その他の公知の石膏減水剤は、例えば、WO02081400A1に記載されているように、リグニン-又はナフタレンスルホネート類に基づいている。そのような減水剤は、それらを用いて調製した石膏組成物が変色するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO02/081400A1パンフレット
【特許文献2】国際公開WO97/35814A1パンフレット
【特許文献3】国際公開WO95/09821A2パンフレット
【特許文献4】ドイツ国特許出願公開DE100 15 135A1号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開EP1138697A1号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開EP1348729A1号公報
【特許文献7】欧州特許EP1138697B1号明細書
【特許文献8】欧州特許EP1061089B1号明細書
【特許文献9】国際公開WO2005/090416A1パンフレット
【特許文献10】欧州特許出願公開EP1136508A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[本発明のまとめ]
したがって、それによって従来技術の欠点が克服され、且つ大きすぎる遅延作用を持つことなしに石膏組成物の充分な減水効果を達成するために適した分散剤を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、これは、請求項1に記載したポリマーPの使用によって達成できることを発見した。今や驚くべきことに、石膏組成物において特に良好な流動化効果が、エステル/アミド単位に対するカルボン酸単位の比2〜6を有するポリマーによって達成できることを発見した。さらに、これらのポリマーは石膏組成物の水の低減のために用いることができ、且つ硬化に対して大きすぎる遅延作用を有することなく、より長い加工時間をもたらすことを発見した。さらに、本発明に従って用いられたこのポリマーを含む石膏組成物は、従来の石膏減水剤を用いて調製されたものよりも実質的に少ない収縮及び膨張挙動を示す。同様に、変色しない組成物が、これらのポリマーを用いて可能である。
【0008】
本発明はまた、石膏と、エステル/アミド単位に対するカルボン酸単位の比2〜6を有する少なくとも1種のポリマーPとを含むバインダー含有混合物、及びそのようなバインダー含有混合物の調製をも含む。本発明のさらに有利な形態は従属請求項から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の好ましい態様]
本発明は、石膏組成物のための分散剤としての、ポリマーPの使用に関する。この分散剤は、特に、流動化剤(プラスチサイザー)として、減水剤として、又はそれらを用いて調製した石膏組成物の加工性及び流動性を向上させるために用いることができる。
【0010】
特に好ましい使用では、ポリマーPは石膏組成物のための流動化剤として用いられる。
【0011】
「石膏組成物」とは、その結合剤(バインダー)の総質量を基準にして、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも80質量%又は100質量%の石膏を含む組成物を意味するものとして理解される。好ましい用途では、この石膏組成物は、セメントを含まない。石膏組成物は、特に、サルフェート結合剤を主に含む組成物を意味するものとして理解される。そのような石膏組成物の例は以下のとおりである:
- 天然無水石膏、化学無水石膏、及びREA無水石膏、並びに硫酸カルシウムα-半水石膏に基づく、流動性無水石膏スクリード(FAS)、
- アルカリ又は中性にされた、硫酸カルシウムα-半水石膏に基づく充填剤化合物、
- 焼き石膏及び型材用プラスター、例えば、鋳造用石膏、旋削用石膏、硬い圧縮鋳型用石膏、ダイキャスト用石膏、及び原型(マスター型)を製作するための石膏、
- 例えばサンドイッチタイプの石膏ボードの製造のために用いられる、硫酸カルシウムβ-半水石膏に基づく石膏組成物。
【0012】
「結合剤(バインダー)」の用語は、石膏のみならず、さらには水硬性物質、例えば、セメント、特にポルトランドセメント又は高アルミナセメント、及びそれらと、フライアッシュ、シリカヒューム、スラグ、高炉砂、及び石灰石フィラー又は生石灰とのそれぞれの混合物なども含む。
【0013】
「石膏」の用語は、全ての公知の形態の石膏、特に、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウムα-半水和物、硫酸カルシウムβ-半水和物、及び硫酸カルシウム無水物(無水石膏)を含む。
【0014】
本発明に従って、石膏組成物のための分散剤として、特に流動化剤として適しているポリマーPは以下のa)〜d)を含む。
【0015】
a)mモル%の下記式(I)の少なくとも1種の構造単位A;
【化1】

【0016】
b)nモル%の下記式(II)の少なくとも1種の構造単位B;
【化2】

【0017】
c)oモル%の下記式(III)の少なくとも1種の構造単位C;
【化3】

【0018】
及び、任意選択成分として、
d)pモル%の少なくとも1種のさらなる構造単位D。
【0019】
上記式中、Rは互いに独立に、H、CHCOOM、又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは互いに独立に、H、1〜5の炭素原子を有するアルキル基、COOM、又はCHCOOMである。
【0020】
は互いに独立に、H、CH、COOM、又はCHCOOMであってよく、RはCOOMであり、あるいはR及びRは環を形成して-CO-O-CO-となっていてもよい。
【0021】
Mは、H、C〜C-アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アンモニウムカチオン、又はそれらの混合である。
【0022】
は互いに独立に、
【化4】

(式中、R13は-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12であり、任意の可能な配列で(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列を有し、R、R10、及びR11は互いにそれぞれ独立にC〜Cアルキレン基である。R12は、H、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり、x、y、及びzは互いに独立に各々0〜250の値を有し、x+y+z=3〜250である。)
である。
【0023】
は互いに独立に、H、CH、COOM、CHCOOM、又はRに対して定義した置換基である。
【0024】
及びRは一緒になって環を形成してもよく、この環は任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよく、あるいはR及びRは互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基である:
【化5】

式中、R14は互いに独立にアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基であり、Xは互いに独立にS、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2であり、R16は任意選択でヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基であり且つ窒素原子と一緒になって5〜8員環、特に6員環を形成し、R9’、R10’、及びR11’はそれぞれ互いに独立にC〜Cアルキレン基であり、任意の可能な配列で(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の配列を有し、R12’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基である。Rは、式(VIII)中のR7’に対して定義した基及び式(VIII’)中のR7’’に対して定義した基の両方であってもよい。同様に、Rは式(VIII)中のR8’に対して定義した基及び式(VIII’)中のR8’’に対して定義した基の両方であってもよい。
【0025】
指数x’、y’、及びz’は互いに独立にそれぞれ0〜100の値を有し、且つx’+y’+z’=1〜100である。
【0026】
ここで、m、n、o、及びpは互いに独立した数であって、m+n+o+p=100であり、且つm>0、n>0、o>0、及びp≧0である。比m/(n+o+p)は2〜6である。
【0027】
好ましくは、mは50〜95、好ましくは66〜86の数であり、nは5〜50、好ましくは14〜34の数であり、oは0.001〜30、好ましくは0.01〜1の数であり、pは0〜30、好ましくは0〜1の数である。
【0028】
ポリマーPが、そのほかの単位すなわち(B、C、D)に対する、特にエステル及びアミド単位に対する酸単位(A)の比2〜6を有する場合、石膏組成物において驚くほど良好な流動化効果(減水効果)が達成されることがわかった。
【0029】
比m/(n+o+p)は、ポリマーPにおける、エステル単位(B)及びアミド単位(C)並びに構造単位Dの任意のさらなる単位に対する、全てのカルボン酸単位(A)の比である。特に良好な結果は、この比が2.5〜5.0、特に2.70〜3.98である場合に得られる。
【0030】
Mはカチオン、特に、H、Na、Ca++/2、Mg++/2、NH、又は有機アンモニウムであることができる。当業者には、多価イオンの場合、さらなる対イオンが存在しなければならず、これはとりわけそれらのカルボキシレート、又はポリマーPの別の分子のカルボキシレートであることもできる。アンモニウム化合物は、特にテトラアルキルアンモニウム又はHRであり、式中Rはアルキル基、特にC〜Cアルキル基、好ましくはエチル又はブチルである。アンモニウムイオンは特にカルボキシル基を、市販されている三級アミンで中和することによって得られる。
【0031】
好ましい態様では、ポリマーPにおいて、R基はH又はCHであり、R、R、及びM、並びに好ましくはRは、Hである。
【0032】
したがって、式(I)の構造単位Aは好ましくはメタクリル酸単位又はアクリル酸単位又はそれらの類似体(Analoga)である。
【0033】
ポリマーPにおいて、(RO)、(R10O)、(R11O)の配列は、R13については好ましくはランダム、交互、又はブロックであり、かつ(RO)≠(R10O)≠(R11O)である。好ましくは、Rは互いに独立にCアルキレン基であり、R10は互いに独立にCアルキレン基であり、R11は互いに独立にCアルキレン基である。
【0034】
好ましいポリマーPの場合、式(II)の構造単位Bの少なくとも30モル%、特に好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、最も好ましくは100モル%が、RがCアルキレン基であり、且つy=0及びz=0である構造によって表される。これは、R13が、好ましくは少なくとも30モル%の(RO)単位、好ましくは50〜100モル%の(RO)単位、より好ましくは80〜100モル%の(RO)単位を、全ての(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の合計モル量を基準にして含むことが好ましいことを意味する。特に好ましくは、R13は、全ての(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の合計モル量を基準にして100モル%の(RO)単位を含む。ポリマーPの調製法に応じて、R12は、H、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であってよい。ポリマーPがポリマー反応(die polymeranaloge Reaktion)によって調製される場合、R12は好ましくはR12’’、特にメチル基であり、水素原子ではない。
【0035】
9’、R10’、及びR11’、又は(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)基は互いに独立に、それぞれR、R10、及びR11について、又は(RO)、(R10O)、及び(R11O)について定義した置換基である。
【0036】
好ましいポリマーPの場合、式(III)の構造単位Cは、RがHであり、Rが式(VI)のものであり、式中、z=0、R9’はCアルキレン基であり、R10’がCアルキレン基である構造で表される。これは、Rが、全ての(R9’O)及び(R10’O)単位の合計量を基準にして、好ましくは少なくとも30モル%の(R9’O)単位、好ましくは50〜80モル%の(R9’O)単位、より好ましくは60〜80モル%の(R9’O)単位、かつ、少なくとも10モル%の(R10’O)単位、好ましくは20〜50モル%の(R10’O)、より好ましくは20〜40モル%の(R10’O)単位を含むことが好ましいことを意味する。特に好ましくは、Rは、全ての(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の合計モル数を基準にして、少なくとも70モル%の(R9’O)単位、及び30モル%以下の(R10’O)単位を含む。
【0037】
さらなる構造単位Dは、さらなるアミド又はエステル単位であってもよい。例えば、構造単位Dは、モノ又はジカルボン酸とアルキルアルコール、特にC〜C20のアルキルアルコールとを反応させることによって調製されるエステル単位であってもよい。
【0038】
特に好ましいポリマーPは以下のa)〜c)を含むか又はa)〜c)のみからなる。
a)mモル%の下記式(I’)の少なくとも1種の構造単位A;
【化6】

【0039】
b)nモル%の下記式(II’)の少なくとも1種の構造単位B;
【化7】

【0040】
及び、
c)oモル%の下記式(III’)の少なくとも1種の構造単位C。
【化8】

【0041】
上記式中、RはH又はアルキル基、好ましくはメチル基であり、
Mは、H、Na、Ca++/2、Mg++/2、NH、又は有機アンモニウム、好ましくはHであり、
及びR9’はエチレン基であり、
10及びR10’はプロピレン基であり、
11及びR11’はブチレン基であり、
12はC〜C12のアルキル基、好ましくはメチル基であり、
xは1〜250、好ましくは10〜100であり、
yは0〜250、好ましくは0〜50であり、
zは0〜100、好ましくは0であり、
mは50〜95、好ましくは66〜86の数であり、
nは5〜50、好ましくは14〜34の数であり、
oは0.001〜30、好ましくは0.01〜1の数である。
【0042】
ポリマーPは、A、B、C、及びDの各構造単位の様々な構造単位の組み合わせを有することができる。例えば、複数の構造単位Aが、ポリマーP中に混合して、例えばメタクリル酸単位とアクリル酸単位との混合として存在できる。あるいは、複数のエステル単位BがポリマーP中に混合して、例えば様々な置換基R13を有する複数のエステル単位Bとして存在してよい。例えば、ポリアルキレングリコール類、特にポリエチレングリコール類とポリプロピレングリコール類との組み合わせ使用、あるいはポリアルキレングリコール類、特に様々な分子量を有するポリエチレングリコール類の組み合わせ使用が好ましい。多数のアミド単位CもポリマーP中に存在することができ、特に、R及びR基としてR7’及びR8’を有する少なくとも1種の単位Cと、R及びR基としてR7’’及びR8’’を有する少なくとも1種の単位Cとの組み合わせが存在してもよい。
【0043】
好ましい態様では、ポリマーPは、50〜95モル%、好ましくは66〜86モル%の式(I)の構造単位A、5〜50モル%、好ましくは14〜34モル%の式(II)の構造単位B、0.001〜30モル%、好ましくは0.01〜1モル%、特に好ましくは0.1〜1モル%の式(III)の構造単位C、及び任意選択成分として場合により0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の構造単位Dを、各場合にポリマーP中の構造単位A、B、C、及びDの合計モル数を基準にして含む。
【0044】
ポリマーP中の個々の構造単位A、B、C、及びDの配列はブロック又はランダムであってよい。
【0045】
ポリマーPは、1000〜150000g/モル、好ましくは10000〜100000g/モル、好ましくは30000〜80000g/モル、特に好ましくは40000〜70000g/モルの範囲の分子量を有することが好ましい。
【0046】
ポリマーPは、様々な方法で調製できる。実質的には3つの方法が用いられる。第一の方法では、ポリマーは、ポリカルボキシルポリマーと各々のアルコール及びアミンとのいわゆるポリマー反応で調製される。第二の方法では、第一の工程でのポリマー反応においてエステル及び場合によってはアミド基に加えて酸無水物基が形成され、第一の工程で形成された酸無水物を第二の工程でアミン化合物と反応させてアミドを得る。第三の方法では、それぞれの不飽和のカルボン酸、エステル、及びアミド官能モノマー類から、フリーラジカル重合によって調製される。
【0047】
特に好ましいポリマーは、第一の方法にしたがうポリマー反応によって調製される。このポリマー反応は、非常に様々な特性をもつ非常に様々な櫛形ポリマーが、α,β-不飽和モノ又はジカルボン酸、特にポリ(メタ)アクリル酸の市販されているポリマーから、アルコールとアミンの量、種類、及び割合を変えることで、簡単且つ信頼できる方法で得ることができるという大きな利点をもっている。そのようなポリマー反応は、例えば、国際公開WO97/35814A1、WO95/09821A2、ドイツ国特許出願公開DE100 15 135A1、欧州特許出願公開EP1138697A1、及びEP1348729A1に記載されている。このポリマー反応の詳細は、例えば、欧州特許EP1138697B1の第7頁第20行〜第8頁第50行及びその実施例、又は欧州特許EP1061089B1の第4頁第54行〜第5頁第38行及びその実施例に開示されている。ポリマーPは、欧州特許出願公開EP1348729A1の第3頁〜第5頁及びその実施例に記載されているように、凝集した固体状態で得ることもできる。
【0048】
したがってポリマーPが好ましく用いられ、ポリマーPは以下の(a)〜(c)及び任意選択で場合によりさらに(d)の反応によって得ることができる。
(a)少なくとも1種のポリカルボン酸、又はポリカルボン酸の類似体;及び
(b)下記式(VII)の少なくとも1種のモノヒドロキシ化合物E
HO-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12’’ (VII)
及び、
(c)下記式(VIII)の少なくとも1種のモノアミン化合物F
7’-NH-R8’ (VIII)
並びに任意選択で場合によっては、
(d)少なくとも1種のさらなる化合物G。
【0049】
ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体は、少なくとも1種のモノマーaと場合により任意選択で少なくとも1種のモノマーbの重合によって得ることができるホモポリマー又はコポリマーを意味するものとして理解される。モノマーaは、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、それらの類似体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。不飽和モノ又はジカルボン酸は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、又はクロトン酸、特に、アクリル酸又はメタクリル酸を含むことが好ましい。モノもしくはジカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体は、本発明との関係では、酸の塩類、酸ハロゲン化物、酸無水物、及び酸のエステル類、特に酸のアルキルエステル類を意味するものとして理解される。
【0050】
モノマーbは、α,β-不飽和モノ又はジカルボン酸、α,β-不飽和モノ又はジカルボン酸エステル、α,β-不飽和カルボキシレート類、スチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、特に、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びそれらの塩類、エステル類、並びにそれらの混合物を含めたエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択されることが好ましい。
【0051】
アクリル酸及びメタクリル酸及びそれらの塩類又は部分塩類のコポリマーは、上記コポリマーとして好ましい。ポリメタクリル酸又はポリアクリル酸、特にポリメタクリル酸、又はそれらの塩類もしくは部分塩類は、上記ホモポリマーとして好ましい。
【0052】
ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体は、ここではフリーの酸又は部分塩として存在することができ、用語「塩」はここ及び以下では、塩基での中和によって得られる古典的な塩類のみならず、金属イオンと、配位子としてのカルボキシレート又はカルボキシル基との間の配位化合物も包含する。ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体の調製においては、用いられる任意の開始剤、共開始剤(Co-Initiatoren)、及び重合調節剤は場合によっては、反応性のヒドロキシル基又はアミン基がポリマーP中に好ましくは存在しないように選択すべきである。
【0053】
ここ及び以下で「モノヒドロキシ化合物」とは、ただ一つのフリーヒドロキシル基を有する物質を意味するものとして理解される。
【0054】
ここ及び以下で「モノアミン化合物」とは、ただ一つのフリーアミノ基を有する物質、又は気体としてもしくは水溶液としてのアンモニアを意味するものとして理解される。
【0055】
本発明との関係では、「分子量」は平均分子量Mwを意味するものとして理解される。
【0056】
本明細書を通じて、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味するものとして理解される。
【0057】
ポリカルボン酸の、又はポリカルボン酸の類似体のホモ又はコポリマーは、慣用される方法によるフリーラジカル重合によって得られる。重合は、溶媒中、好ましくは水中、又は溶媒の不存在下で行うことができる。このフリーラジカル重合は、少なくとも1種の分子量調節剤、特に、無機又は有機硫黄化合物、例えば、メルカプタン類、又はリン化合物などの存在下で行うことが好ましい。この重合は、形成されたホモ又はコポリマーが、10〜250、好ましくは20〜100、さらに好ましくは25〜60のモノマー構造単位(ビルディングブロック)から構成される条件下で行うことが有利である。そのような(メタ)アクリル酸のホモ又はコポリマーは市販されている。ポリカルボン酸の、又はポリカルボン酸の類似体のホモ又はコポリマーは、500〜20000g/モル、好ましくは2000〜10000g/モル、特に好ましくは3500〜6500g/モルの分子量Mを有することが好ましい。
【0058】
モノヒドロキシ化合物Eは、通常の反応条件下では反応しない末端基で一末端を封止されていることが好ましい。このポリマーは、ポリアルキレングリコール骨格を有するポリマーであることが好ましい。このモノヒドロキシ化合物Eは下記式(VII)
HO-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12’’ (VII)
を有する。
【0059】
式(VII)中、R、R10、及びR11はそれぞれ互いに独立してC〜Cアルキレン基であり、(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列は任意の可能な配列であり;
12’’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;x、y、及びzは互いに独立に、それぞれ0〜250の値を有し、且つ、x+y+z=3〜250である。
【0060】
式(VII)の好ましいモノヒドロキシル化合物Eは、置換基R12’’として、メチル、エチル、イソプロピル、又はn-ブチル基、特にメチル基を有し、且つz=0であるものである。好ましくは、Rは互いに独立にCアルキレン基であり、R10は互いに独立にCアルキレン基である。好ましくは、Eには、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、より好ましくは一末端を末端封止されたポリエチレングリコールが含まれる。
【0061】
E群の複数の様々な化合物の混合物も同様に可能である。したがって、例えば、一末端を末端封止され且つ異なる分子量をもつポリエチレングリコール類を混合することができ、あるいは、例えば、一末端を末端封止されたポリエチレングリコール類と、一末端を末端封止されたエチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー又は一末端を末端封止されたポリプロピレングリコールとの混合物を用いることができる。
【0062】
本発明との関連では、「通常の反応条件下で反応しない末端基で末端封止された」とは、エステル化又はアミド化に対して反応性の官能基に代えて、もはや反応し得ない基が存在することを意味するものとして理解される。通常の反応条件とは、エステル化及びアミド化のために当業者によく知られている条件である。「一末端を封止されている」化合物の場合、一末端のみがもはや反応性ではない。
【0063】
好ましい態様では、モノヒドロキシル化合物Eは、一末端を末端封止され、且つ300〜10000g/モル、特に500〜5000g/モル、好ましくは800〜3000g/モルの分子量Mを有するポリアルキレングリコールである。一末端を末端封止され且つ異なる分子量を有するポリアルキレングリコール類の混合物も特に適しており、例えば、1000g/モルの分子量を有するポリアルキレングリコールと3000g/モルの分子量を有するポリアルキレングリコールとの混合物である。
【0064】
モノヒドロキシル化合物Eに加えて、モノアミン化合物Fが、第一の工程、及び適切であれば第二の工程で用いられる。これが、エステル基の形成に加えて、アミド基の形成をもたらす。ポリマーPの調製がいわゆるポリマー反応によって第一の工程で行われる場合、モノアミン化合物Fは、ポリカルボン酸とモノヒドロキシル化合物Eとの反応温度よりも高い沸点及び引火点を有することが好ましい。さらに、モノアミン化合物Fは、ヒドロキシル基を含まないことが好ましい。
【0065】
そのようなモノアミン化合物Fの典型例は、下記式(VIII):
7’-NH-R8’ (VIII)
によって表すことができる。
【0066】
第一に、R7’及びR8’は一緒になって環を形成することができ、その環は任意選択により、酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよい。
【0067】
そのようなモノアミン化合物Fの例は、特に、9H-カルバゾール、インドリン、又はイミダゾールである。
【0068】
第二に、R7’及びR8’は互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基であることができる。
【0069】
【化9】

【0070】
式中、R14は互いに独立に、アルキレン基、好ましくはC〜Cアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基である。Xは互いに独立に、S、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2である。R16は任意選択でヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基であり、且つ化学式中の窒素原子とともに5〜8員環、特に6員環を形成している。
【0071】
置換基R9’、R10’、R11’、及びR12’、又は指数x’、y’、及びz’は互いに独立に、式(VII)のR、R10、R11、及びR12、あるいはx、y、及びzに対して既に定義したものと同じ意味を有する。
【0072】
そのようなモノアミン化合物Fの例は、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジタロウ(tallow)脂肪アミン、脂肪アミン類、例えば、ステアリルアミン、ココナツ脂肪アミン、オクタデシルアミン、タロウ脂肪アミン、オレイルアミン;3-ブトキシプロピルアミン、ビス(2-メトキシエチル)アミン;α-メトキシ-ω-アミノポリオキシエチレン、α-メトキシ-ω-アミノポリオキシプロピレン、α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマーである。
【0073】
好ましくは、モノアミン化合物Fは、一級モノアミンである。α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマー、例えば、Jeffamine(登録商標)M-2070など、又はα-メトキシ-ω-アミノポリオキシエチレン、及びその他のモノアミン(これらは例えばHuntsman社によってJeffamine(登録商標)のMシリーズで販売されている)、及びそれらの混合物が、モノアミン化合物Fとして特に好ましい。一般的には、α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマーが好ましい。そのようなモノアミン化合物Fは、例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのアルコール開始重合とそれに続く末端アルコール基のアミノ基への変換によって得られる。
【0074】
好ましいさらなる化合物Gは、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体と反応しうる化合物である。化合物Gの例は、さらなるアミン類及びアルコール類、例えば、C〜C20アルキルアルコール又はさらなるモノもしくはジアミンである。複数の異なる化合物類Gを用いることもできる。
【0075】
ポリマーPを得るための、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体と、少なくとも1種のモノヒドロキシ化合物E及び少なくとも1種のモノアミン化合物Fと任意選択によっては化合物Gとの反応は、典型的には、少なくとも1種のモノヒドロキシ化合物Eをポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体に撹拌下添加し、反応温度に加熱する方法によって、ポリマー反応において行われる。この混合物は、上述した反応温度でさらに撹拌され、反応物質の上又はその中にガス流を通過させるか又は減圧下で反応させてもよい。この反応のための温度は、例えば、140℃〜200℃である。しかし、この反応は、150℃〜175℃の温度でも可能である。モノアミンFを用いる場合は、その添加はモノヒドロキシ化合物Eと同時に、又はこの反応段階の間の後の時点で行うことができる。
【0076】
好ましい態様では、この反応はエステル化触媒、特に酸、の存在下で行われる。そのような酸は、好ましくは、硫酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、又は亜リン酸である。硫酸が好ましい。反応混合物からの水の除去は、大気圧下又は減圧下で行うことができる。反応混合物の上又はその中にガスを通すこともできる。用いるガス流は空気又は窒素であってよい。
【0077】
この反応は酸価の測定、例えば滴定によって観察でき、所望する酸価で止めることができ、それによってカルボン酸とエステル又はアミド基との所望の比が達成される。この反応は、減圧を止めること及び冷却することによって停止される。
【0078】
好ましい態様では、ポリメタクリル酸を、メトキシ基で一末端を封止されたポリエチレングリコールでエステル化し、モノアミン、特にポリエーテルモノアミンと反応させる。
【0079】
第二の方法では、いわゆるポリマー反応による第一の工程で、エステル基及び場合により任意選択でアミド基に加えて酸無水物基も形成され、第二の工程で、第一の工程で形成された酸無水物基がアミン化合物と完全に又は部分的に反応させられてアミドが得られる。そのような方法は、例えば、国際公開WO2005/090416A1に記載されている。
【0080】
第一の工程は、ポリマー反応について説明した調製方法で行うことが好ましい。
【0081】
アミン化合物を第二の方法の第一の工程で既に用いる場合は、特にモノアミン化合物Fについて説明したアミン化合物が好ましい。
【0082】
この場合、モノアミン化合物Fは、第一の工程の反応温度よりも高い沸点及び引火点を有する。さらに、モノアミン化合物Fはヒドロキシル基を含んでいてはならない。
【0083】
いかなるアミン類も第一の工程では使用しないことが好ましい。
【0084】
第二の方法の第二の工程では、第一の工程で形成され且つエステル基及び場合によってはアミド基に加え、酸無水物基を有するポリマーは、60℃未満、好ましくは40℃未満の温度でアミン化合物F’と反応させられる。この反応は、10℃〜60℃、特に好ましくは15℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃で行うことが好ましい。この反応は温和な条件下で実現でき、減圧を必要とせず、したがって、低沸点を有するアミン化合物F’、又はアミノ基に加えてヒドロキシル基をも含むアミン化合物F’を用いることもできる。
【0085】
ポリマーPの調製がこの第二の方法で行われる場合、第二の工程のために好適なアミン化合物F’の典型例は、下記式(VIII’)
7’’-NH-R8’’ (VIII’)
で表すことができる。
【0086】
第一に、R7’’及びR8’’は一緒になって、任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよい環を形成していてもよい。
【0087】
そのようなアミン化合物F’の例は、特に、9H-カルバゾール、インドリン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、1,3-チアゾリジン、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾール、イミダゾール、である。モルホリンが特に適している。
【0088】
第二に、R7’’及びR8’’は互いに独立に、H、C〜C12アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、特に-CHCH-OH、又は-CHCH(OH)CH、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基であってよい。
【0089】
【化10】

【0090】
式中、R14は互いに独立にアルキレン基、好ましくはC〜Cアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基である。Xは互いに独立にS、O、又はNであり、X=S又はOの場合はr=1であり、X=Nの場合はr=2である。R16は任意選択によりヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基であり、式中の窒素原子と一緒になって5〜8員環、特に6員環を形成している。
【0091】
置換基R9’、R10’、R11’、及びR12’、又は指数x’、y’、及びz’は、互いに独立に、式(VII)のR、R10、R11、及びR12、又は指数x、y、及びzに対して既に定義したものと同じ意味を有する。
【0092】
好ましいヒドロキシアルキル基は、-CHCH-OH又は-CHCH(OH)CHである。
【0093】
好適なアミン化合物F’は、例えば、アンモニア、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、及びシクロオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン;2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、キシリルアミン;N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン;エタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノプロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール;1-(2-アミノエチル)ピペラジン、2-モルホリノエチルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、である。
【0094】
特に好ましいものは、モルホリン、2-モルホリン-4-イルエチルアミン、2-モルホリン-4-イルプロピルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、及びその他のアミン、例えばHuntsman社からJeffamine(登録商標)の名称で販売されているもの、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるアミン化合物F’である。
【0095】
好ましい態様においては、ポリメタクリル酸を、メトキシ基で1つの末端を封止したポリエチレングリコールでエステル化し、次に温和な条件下でモノ又はジエタノールアミンと反応させる。
【0096】
第三の調製方法では、ポリマーPをフリーラジカル重合によって調製する。フリーラジカル重合を経る経路は最も普通の方法であるが、対応するモノマー類の市販入手可能性によっては特定の化合物の場合には複雑となり、複雑な工程制御が必要となる。
【0097】
本発明はしたがってさらに、石膏組成物のための分散剤、特に減水剤としてのポリマーPの使用に関し、ポリマーPは、少なくとも1種のフリーラジカル生成剤の存在下で下記のa)〜c)あるいはa)〜d)の重合反応によって得られる。
a)少なくとも1種の、エチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸M、又は不飽和モノもしくはジカルボン酸の類似体;と
b)下記式(IX)の少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体H;
【化11】

c)下記式(X)の少なくとも1種の第二のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体K;
【化12】

及び場合により任意選択によって、
d)少なくとも1種のさらなるエチレン性不飽和化合物L。
【0098】
置換基R、R、R、R、R、R、及びRは互いに独立に、それぞれ式(II)又は(III)について既に記載したものと同じ意味を有する。
【0099】
エチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸M、又は不飽和モノもしくはジカルボン酸の類似体は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、又はクロトン酸、特に、アクリル酸又はメタクリル酸、であることが好ましい。メタクリル酸が特に好ましい。本発明との関連では、モノ又はジカルボン酸の類似体は、酸の塩、酸ハロゲン化物、酸無水物、及び酸のエステル、特に酸のアルキルエステル、を意味するものとして理解される。
【0100】
式(IX)の少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体Hは、好ましくはカルボン酸エステル、特に好ましくはアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。そのようなエステル類の例は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類である。異なる置換基Rを有する式(IX)の複数のモノマー類を互いに組み合わせて用いることができる。例えば、異なる分子量を有するポリアルキレングリコール類、特にポリエチレングリコール類の組み合わせ使用が好ましい。
【0101】
式(X)の第二のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体Kは、カルボキサミドである。エチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸と、式(VIII’)のアミン化合物F’、特に式(VIII)のモノアミン化合物Fとのアミド類は、好適なカルボキサミド類として用いることができる。特に好ましいものは、(メタ)アクリル酸のアミド類、特にポリオキシアルキレンモノアミド類である。特に好ましいアミドモノマー類は、アルキルポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド類、特に好ましくは、メチルポリエチレングリコール(メタ)アクリルアミド類、メチルポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリルアミド類、又はメチルプロピレングリコール(メタ)アクリルアミド類である。式(VIII’)のアミン類の不飽和カルボキサミド類の例は、好ましくは、モノ又はジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、モノ又はジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、モノ又はジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、又はN-アルキル,-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド類、又はN-アルキル,-N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド類である。
【0102】
これらの不飽和カルボキサミド類の1種又は複数を用いることができる。
【0103】
本発明による使用については、ポリマーPは、液体及び固体の形態の両方で、単独又は分散剤(特に減水剤)の一成分としての両方で用いることができる。
【0104】
本発明による使用については、したがってポリマーPは、単独のポリマーPとして又は複数のポリマーPの混合物として、石膏組成物のための分散剤として用いることができる。しかし、ポリマーPは、その他の分散剤又は分散剤混合物とともに用いることもできる。本発明による使用については、ポリマーP又はポリマーPを含有する混合物は、さらなる成分を含むことができる。さらなる成分の例は、溶媒又は添加剤、例えば別の減水剤、例えば、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、又はポリカルボキシレートエーテル(PCE)、促進剤、遅延剤、収縮低減剤、消泡剤、又は泡形成剤などである。
【0105】
製造方法又は反応手順に応じて、分散剤はポリマーPに加えて、出発物質のフリー化合物、特にフリーのモノヒドロキシ化合物、例えば、ポリアルキレングリコール、特にフリーのポリエチレングリコールなどを含んでもよい。
【0106】
ポリマーPが液状で用いられる場合は、溶媒を反応に用いることが好ましい。好ましい溶媒は、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、又はジオキサン、及びアルコール類、特にエタノールもしくはイソプロパノール、及び水であり、水は最も好ましい溶媒である。
【0107】
ポリマーPは凝集した固体状態で存在してもよい。本発明との関連では、凝集した固体状態のポリマーとは、室温では凝集した固体状態で存在し、例えば、粉末、薄片、ペレット、顆粒、又はシートであり、問題なしにこの形態で輸送及び貯蔵できることを意味するものとして理解される。
【0108】
第二の方法に従い、アミンが第二の工程のみで添加される場合、例えば、アミンは最初に溶媒中、好ましくは水中に導入されることができ、第一の反応工程からの生成物は、ポリマー溶融物又は固体状態、例えば、粉末として、又は薄片の形態で、又は顆粒の形態で、撹拌しながら添加できる。第二工程で溶媒を使用するとともに、所望する場合は、例えば減圧を適用することによって及び/又は加熱することによって再び溶媒を除去することも可能であり、あるいはさらに希釈を行うことができる。アミンはまた、凝集物の固体状態中に又は担体物質中もしくは担体物質上に存在することもできる。
【0109】
石膏組成物に所望の効果を達成させるために、ポリマーPは、結合剤(バインダー)の質量を基準にして0.01〜10質量%の量で用いることが好ましい。所望の効果を達成するために、複数のポリマーPを混合物として用いることもできる。
【0110】
さらなる側面では、本発明は、石膏及び少なくとも1種のポリマーPを含む、結合剤含有混合物に関する。ポリマーPは既に上述している。
【0111】
「石膏」の用語は、全ての公知の形態の石膏、特に、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウムα-半水和物、硫酸カルシウムβ-半水和物、及び硫酸カルシウム無水物(無水石膏)を含む。
【0112】
この結合剤含有混合物は、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも80質量%の石膏を、結合剤の総質量を基準にして含む。結合剤はさらなる水硬性物質、例えば、セメント、特にポルトランドセメント又は高アルミナセメント、それら各々と、フライアッシュ、シリカヒューム、スラグ、高炉サンド、石灰石フィラー又は生石灰との混合物を含んでもよい。
【0113】
さらに、この混合物は、さらなる骨材、例えば、砂、砂利、石、石英砂、石灰粉末(チョーク)、及び添加物として一般的な成分、例えば、その他の減水剤、例えば、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、又はポリカルボキシレートエーテル(PCE)、促進剤、遅延剤、収縮低減剤、消泡剤、又は泡形成剤などを含んでもよい。
【0114】
さらなる側面では、本発明は、結合剤含有混合物の調製法に関するものであり、少なくとも1種のポリマーPが、その結合剤に固体又は液体の形態で混和剤として別途添加されるか又は予め混合される。
【0115】
固体形態でのポリマーPの添加は特に適している。したがって、凝集した固体状態のポリマーPは、石膏組成物、いわゆるドライブレンドの成分であることができ、この石膏組成物は比較的長い貯蔵寿命をもち、典型的にはバッグに詰められるか、あるいはサイロに貯蔵され、前記の形態で使用される。そのようなドライブレンドは、かなり長い貯蔵時間の後で用いることもでき、良好な流動性を有する。
【0116】
ポリマーPは、通常の石膏組成物に、水の添加とともに又は水の添加の直前又は直後に添加することもできる。水溶液又は水分散物の形態でのポリマーPの添加、特に、混合水として又は混合水の一部としての添加は、ここでは特に好適であることがわかっている。上記水溶液又は水分散物の調製は、ポリマーPの調製時に水を添加すること、あるいはポリマーPを水と後混合することによって行われる。典型的には、ポリマーPの割合はその水溶液又は水分散物の質量を基準にして10〜90質量%、特に20〜50質量%である。ポリマーPの種類に応じて、分散物又は溶液ができる。溶液が好ましい。
【0117】
上記水溶液又は分散物はさらなる成分を含むことができる。これらの例は、建築用化学薬品でよく知られているとおりの溶媒又は添加剤、特に、界面活性物質、熱及び光安定剤、染料、消泡剤、促進剤、遅延剤、気泡形成剤である。
【0118】
ポリマーPは、石膏組成物のための、分散剤として、特に減水剤として、特に良好な特性を有しており、すなわち、得られる混合物がその分散剤なしの組成物と比較して、固化が概ね遅延されることなく、非常に大きな流動挙動を有する。流動挙動は典型的にはスランプによって測定される。一方では、同じ流動挙動のために非常に少ない水しか必要としない混合物を得ることができ、それにより、硬化した石膏組成物の機械特性が大きく高められる。
【0119】
分散剤としての、特に減水剤としてのポリマーPは、したがって、硫酸塩結合剤(サルフェートバインダー)を主に含むシステムにおいて卓越した特性を有する。さらに、変色しない組成物が、ポリマーPを用いて可能である。
【実施例】
【0120】
本発明を、実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0121】
1.用いたポリマーP
【0122】
【表1】

【0123】
表2に示したポリマーP−1及びP−2を、公知の方法で、ポリ(メタ)アクリル酸と、対応するアルコール類及びアミン類とのポリマー反応によって調製した。ポリマー反応の詳細は、例えば、欧州特許EP1138697B1の第7頁第20行〜第8頁第50行及びその実施例、あるいは欧州特許EP1061089B1の第4頁第54行〜第5頁第38行及びその実施例に開示されている。
【0124】
ポリマーP−3は、例えば、欧州特許出願公開EP1136508A1に、例えば実施例1に記載されているように、フリーラジカル共重合によって調製した。
【0125】
比較例N−1〜N−5は、ポリマーP−1及びP−2と同様にして調製した。
【0126】
比較例N−6は、メラミンを元にして調製した市販されている減水剤である(BASF社のMelment(登録商標)F15G)。
【0127】
【表2】

【0128】
2.1 純粋な石膏の組成物における流動挙動
【0129】
0.24の水/固形分比を有する石膏組成物を、65質量%の硫酸カルシウムα-半水物、31.7質量%の粒径0〜0.4mmを有する石英砂、及び表3に規定した量の減水剤を用いて調製した。減水剤は、混合水の添加と同時に加えた。さらに、この乾燥石膏モルタルミックスは、消泡剤、増粘剤、分散粉末、及び安定剤等の添加剤を含む。この質量%は各場合において乾燥石膏モルタルミックスの総質量に基づいている。減水剤の記載した質量パーセント割合は、各場合において、乾燥石膏モルタルミックス(水なし)の総質量に基づいた、ポリマーPの固形分含量、又は減水剤の固形分含量に関する。
【0130】
流動挙動を調べるために、3分(min)及び20分後のミリメートル単位でのスランプ(SL)を測定した。この検査はEN196−1、EN459−2、EN13454−1及び2に準拠して行った。さらに、最初の硬化時間(S−イニシャル)及び最後の硬化時間(S−ファイナル)を、DIN1168に準拠してビカット針入度計を使用して測定した。
【0131】
【表3】

【0132】
表3は、本発明によるポリマーP−1〜P−3を含む石膏組成物の加工性が非常に良好であり、遅延がないことを示している。従来の減水剤の場合には、最初の硬化時間又は最後の硬化時間のいずれかは大きく遅延する(N−1、N−4、N−4)か、あるいは加工性が劣る(N−1、N−2)。3分後のスランプの値が330mmより上であれば、その石膏組成物は容易に加工できると考えられる。特に、1時間より短い硬化時間(すなわち最初の又は最後の硬化時間)が望ましい。
【0133】
さらに、ポリマーN−1の使用は、望ましくないポストプラスチサイゼーション(Nachverfluessigung;後での流動化)をもたらす。
【0134】
表3は、より少ない用量で、本発明に従って用いたポリマーが、通常のメラミン系石膏減水剤(N−6)のものと同程度の結果を、それらの欠点、例えば、ホルムアルデヒドの放出あるいは変色を有することなく達成することも示している。このことは、同程度の結果を得るためには、減水剤N−6はより多くの用量で用いなければならないことを意味している。
【0135】
2.2 三元系における流動挙動
【0136】
0.24の水/固形分比を有する三元系組成物を、28質量%の結合剤(バインダー)(うち8質量%が硫酸カルシウムα-半水物、14質量%が高アルミナセメント、及び6質量%がポルトランドセメント)(CEM I)、68.5質量%の0〜0.4mmの粒径をもつ石英砂、及び0.2質量%の減水剤(表4)を用いて調製した。この質量%は、各場合に、乾燥モルタルミックスの総質量に基づいている。加えて、乾燥モルタルミックスは、消泡剤、増粘剤、分散剤粉末、及び安定剤等の添加剤を含んでいる。
【0137】
流動挙動を調べるために、3分(min)後、及び20分後のmm単位でのスランプ(SL)を測定した。検査はEN196−1、EN459−2、EN13454−1及び2に準拠して行った。
【0138】
【表4】

【0139】
表4は、本発明にしたがい、ポリマーP−2及びP−3を含む石膏組成物の加工性が非常に良好であることを示している。従来の減水剤の場合、スランプ及びしたがって加工性はより低い(N−1、N−2、N−5、N−6)。さらに、ここでも、望ましくないポストプラスチサイゼーション(後での流動化)が、ポリマーN−1を使用した場合に明らかである。
【0140】
表4は、従来のメラミン系石膏減水剤(N−6)が、3倍の用量にもかかわらず、本発明にしたがって用いたポリマーP−2及びP−3のスランプを達成していないことも示している。
【0141】
2.3 硫酸カルシウムα-半水物の流動挙動
【0142】
石膏スラリーに対して、減水剤を表5にしたがって規定した量で200gの水に添加し、次に500gの硫酸カルシウムα-半水物にふりかけ、撹拌を1分間、1000rpmで行った。スランプを、2分後に、50mmの直径及び51mmの高さをもつミニコーンを使用して測定した。DIN1168に準拠したビカット針入度計を使用して、最初の硬化時間(S-イニシャル)をEN13279−2に準拠して測定した。石膏ケーキ中への貫入コーンの貫入の深さが1mm未満である場合に、最後の硬化時間(S-ファイナル)に到達する。
【0143】
【表5】

【0144】
表5は、硫酸カルシウムα-半水物を含む純粋な石膏のスラリーにおいて、本発明にしたがってポリマーP−1、P−2、及びP−3を含む石膏組成物の加工性が、遅延することなく非常に良好であることを示している。従来の減水剤の場合には、スランプ、すなわち加工性が低い(N−1及びN−2)か、あるいは最初の硬化時間又は最後の硬化時間が大きく遅延する(N−1、N−2、N−4、N−5)。石膏スラリーを減水剤なしに調製する場合は、スランプは大幅に劣る。
【0145】
表5は、従来のメラミン系石膏可塑剤(N−6)が、3倍の用量にもかかわらず、本発明にしたがって用いたポリマーP−1、P−2、及びP−3の結果を達成しなかったことも示している。
【0146】
2.4 硫酸カルシウムβ-半水物の流動挙動
【0147】
石膏スラリーに対し、表6にしたがって、示した用量の減水剤とともに、204gの水を最初に導入し、次に300gの硫酸カルシウムβ-半水物に15秒以内で撒き入れ、その石膏スラリーを30秒熟成させた。徹底的な撹拌を次に1分間手で行った。50mmの直径と51mmの高さを有するミニコーンを充填し、スランプ(SL)を2分後に測定した。DIN1168に準拠したビカット針入度計を使用して、最初の硬化時間(S-イニシャル)をEN13279−2に準拠して測定した。石膏ケーキ中への貫入コーンの貫入の深さが1mm未満である場合に、最後の硬化時間(S-ファイナル)に到達している。
【0148】
【表6】

【0149】
表6は、硫酸カルシウムβ-半水物を含む純粋な石膏スラリーにおいて、本発明に従って、ポリマーP−1、P−2、及びP−3を含む石膏組成物の加工性が非常に良好であり、最初の硬化時間又は最後の硬化時間が、従来の減水剤の場合よりもかなり速く起こることを示している。従来の減水剤の場合には、特に最初の硬化時間及び最後の硬化時間が、本発明にしたがって用いたポリマーと比較して遅延している(N−1、N−3、N−4、N−5)。
【0150】
従来のメラミン系石膏減水剤(N−6)は、3倍の用量を用いたときのみ、本発明にしたがって用いたポリマーP−1、P−2、及びP−3で達成されるスランプを有する。
【0151】
もちろん、本発明は、提示し且つ説明した実施例に限定されない。本発明の上述した特性は、各場合に記載した組み合わせにおいてばかりでなく、その他の変更、組み合わせ、及び修正においても、あるいは分離して、本発明の範囲から離れることなく用いることができることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)〜c)を含むか又はa)〜d)を含む少なくとも1種のポリマーPの、石膏組成物のための分散剤としての使用:
a)mモル%の下記式(I)の少なくとも1種の構造単位A;
【化1】

b)nモル%の下記式(II)の少なくとも1種の構造単位B;
【化2】

c)oモル%の下記式(III)の少なくとも1種の構造単位C;
【化3】

及び任意選択成分として、
d)pモル%の少なくとも1種のさらなる構造単位D;
〔上記式中、
は互いに独立に、H、CHCOOM、又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
は互いに独立に、H、1〜5の炭素原子を有するアルキル基、COOM、又はCHCOOMであり;
は互いに独立に、H、CH、COOM、又はCHCOOMであり;
は互いに独立にCOOMであり;
あるいはR及びRは環を形成して-CO-O-CO-となっていてもよく;
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アンモニウムカチオン、又はそれらの混合であり;
は互いに独立に、
【化4】

であり、
(式中、R13は-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12であり、
任意の可能な配列で(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列を有し、
、R10、及びR11は互いにそれぞれ独立にC〜Cアルキレン基であり;
12は、H、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
x、y、及びzは互いに独立に各々0〜250の値を有し、且つx+y+z=3〜250である。)
は互いに独立に、H、CH、COOM、CHCOOM、又はRに対して定義した置換基であり;
及びRは一緒になって環を形成し、この環は任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよく;
あるいはR及びRは互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基:
【化5】

(式中、R14は互いに独立にアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基であり、Xは互いに独立にS、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2であり、R16は任意選択でヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基であり;
9’、R10’、及びR11’はそれぞれ互いに独立にC〜Cアルキレン基であり、任意の可能な配列で(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の配列を有し;
12’は、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
指数x’、y’、及びz’は互いに独立にそれぞれ0〜100の値を有し、且つx’+y’+z’=1〜100である。)
であり;
m、n、o、及びpは互いに独立に数であって、その合計m+n+o+p=100であり、且つm>0、n>0、o>0、及びp≧0であり;比m/(n+o+p)は2〜6である。〕
【請求項2】
前記石膏組成物が、結合剤の総質量を基準にして少なくとも30質量%の石膏を含む、請求項1記載の、ポリマーPの使用。
【請求項3】
石膏が、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、又は硫酸カルシウム無水物(無水石膏)である、請求項1又は2に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項4】
前記ポリマーPが、ポリカルボン酸のエステル化及びアミド化のポリマー反応によって得られるか又は調製される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項5】
前記ポリマーPが、以下の(a)〜(c)の反応、又は(a)〜(d)の反応によって得ることができる、請求項4に記載の、ポリマーPの使用。
(a)少なくとも1種のポリカルボン酸、又はポリカルボン酸の類似体;及び
(b)下記式(VII)の少なくとも1種のモノヒドロキシ化合物E
HO-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12’’ (VII)
〔式中、R、R10、及びR11はそれぞれ互いに独立してC〜Cアルキレン基であり、(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列は任意の可能な配列であり;
12’’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
x、y、及びzは互いに独立にそれぞれ0〜250の値を有し、且つx+y+z=3〜250である。〕;
(c)下記式(VIII)の少なくとも1種のモノアミン化合物F
7’-NH-R8’ (VIII)
及び/又は下記式(VIII’)
7’’-NH-R8’’ (VIII’)
の少なくとも1種のアミン化合物F’
〔式中、R7’及びR8’は一緒になって環を形成し、環は任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよく;
あるいは、R7’及びR8’は互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基であり;
式中、R7’’及びR8’’は一緒になって、任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよい環を形成し;
あるいは、R7’’及びR8’’は互いに独立に、H、C〜C12アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基である。
【化6】

(式中、R14は互いに独立にアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基であり、Xは互いに独立に、S、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2であり;
16は任意選択でヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基であり;
9’、R10’、及びR11’は互いに独立にC〜Cアルキレン基であり、任意の可能な配列で(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の配列を有し;
12’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
x’、y’、及びz’は互いに独立に、それぞれ0〜100の値を有し、且つx’+y’+z’=100である。)〕;
及び任意選択成分として、
(d)少なくとも1種のさらなる化合物G。
【請求項6】
前記の少なくとも1種のポリカルボン酸又はポリカルボン酸の類似体を、式(VII)の少なくとも1種のモノヒドロキシ化合物E及び場合により式(VIII)の少なくとも1種のモノアミンF及び場合により少なくとも1種のさらなる化合物Gと、200℃以下の温度で反応させ、酸無水物基を形成させ、その第一の工程で形成された酸無水物基を第二の工程で、実質的に100℃未満の温度で、式(VIII’)のアミノ化合物F’を用いてアミドに完全に又は部分的に変換することを特徴とする、請求項5に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項7】
前記ポリマーPのポリカルボン酸の類似体が、酸の塩類、酸ハロゲン化物、酸無水物、及び酸のエステルからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項8】
前記ポリマーPが、フリーラジカル重合によって得られるか又は調製される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項9】
前記ポリマーPが、少なくとも1種のフリーラジカル生成剤の存在下で下記のa)〜c)又は下記a)〜d)の重合反応によって得られる、請求項8に記載の、ポリマーPの使用。
a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸M、又は不飽和モノもしくはジカルボン酸の類似体;と
b)下記式(IX)の少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体H;
【化7】

c)下記式(X)の少なくとも1種の第二のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体K;
【化8】

及び任意選択成分として、
d)少なくとも1種のさらなるエチレン性不飽和化合物L。
〔上記式中、
は互いに独立に、H、CHCOOM、又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
は互いに独立に、H、1〜5の炭素原子を有するアルキル基、COOM、又はCHCOOMであり;
は互いに独立に、H、CH、COOM、又はCHCOOMであり;
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アンモニウムカチオン、又はそれらの混合であり;
は互いに独立に、
【化9】

であり、
(式中、R13は-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12であり、
任意の可能な配列で(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列を有し、
、R10、及びR11は互いにそれぞれ独立にC〜Cアルキレン基であり;
12は、H、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
x、y、及びzは互いに独立に各々0〜250の値を有し、且つx+y+z=3〜250である。)
は互いに独立に、H、CH、COOM、CHCOOM、又はRに対して定義した置換基であり;
及びRは一緒になって環を形成し、この環は任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよく;
あるいはR及びRは互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基である。
【化10】

(式中、R14は互いに独立にアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基であり、Xは互いに独立にS、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2であり;
16は任意選択でヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基であり;
9’、R10’、及びR11’はそれぞれ互いに独立にC〜Cアルキレン基であり、任意の可能な配列で(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の配列を有し;
12’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
指数x’、y’、及びz’は互いに独立にそれぞれ0〜100の値を有し、且つx’+y’+z’=1〜100である。)〕
【請求項10】
ポリマーPにおいて、RがH又はCHであり、且つR、R、及びMがHである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項11】
がHであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
は互いに独立にCアルキレン基であり、R10は互いに独立にCアルキレン基であり、R11は互いに独立にCアルキレン基であり、(RO)、(R10O)、及び(R11O)の配列が、ランダム、交互、又はブロックであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
13が、少なくとも30モル%の(RO)単位、好ましくは50〜100モル%の(RO)単位、より好ましくは80〜100モル%の(RO)単位を、全ての(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の合計モル量を基準にして含むことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
13が、全ての(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の合計モル量を基準にして100モル%の(RO)単位を含むことを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ポリマーPが、各場合に、ポリマーP中の構造単位A、B、C、及びDの合計モル数を基準にして、
50〜95モル%、好ましくは66〜86モル%の式(I)の構造単位A、
5〜50モル%、好ましくは14〜34モル%の式(II)の構造単位B、
0.001〜30モル%、好ましくは0.01〜1モル%の式(III)の構造単位C、及び
任意選択成分として0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の構造単位D
を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記ポリマーPが、1000〜150000g/モル、好ましくは10000〜100000g/モル、特に好ましくは30000〜80000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記ポリマーPが液体又は固体の形態で用いられることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の、ポリマーPの使用。
【請求項18】
石膏及び少なくとも1種のポリマーPを含み、前記ポリマーPが下記(a)〜(c)又は(a)〜(d)を含む、結合剤含有混合物。
(a)mモル%の下記式(I)の少なくとも1種の構造単位A;
【化11】

(b)nモル%の下記式(II)の少なくとも1種の構造単位B;
【化12】

(c)oモル%の下記式(III)の少なくとも1種の構造単位C;
【化13】

及び任意選択成分である、
(d)pモル%の少なくとも1種のさらなる構造単位D;
〔上記式中、
は互いに独立に、H、CHCOOM、又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
は互いに独立に、H、1〜5の炭素原子を有するアルキル基、COOM、又はCHCOOMであり;
は互いに独立に、H、CH、COOM、又はCHCOOMであり、
は互いに独立にCOOMであり;
あるいはR及びRは環を形成して-CO-O-CO-となっていてもよく;
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アンモニウムカチオン、又はそれらの混合であり;
は互いに独立に、
【化14】

であり、
(式中、R13は-[(RO)-(R10O)-(R11O)]-R12であり、
任意の可能な配列で(RO)、(R10O)、及び(R11O)単位の配列を有し、
、R10、及びR11は互いにそれぞれ独立にC〜Cアルキレン基であり;
12は、H、C〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
x、y、及びzは互いに独立に各々0〜250の値を有し、且つx+y+z=3〜250である。)
は互いに独立に、H、CH、COOM、CHCOOM、又はRに対して定義した置換基であり;
及びRは一緒になって環を形成し、この環は任意選択で酸素、硫黄、又はさらなる窒素原子を含んでいてもよく;
あるいはR及びRは互いに独立に、H、C〜C20アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は下記式(IV)、(V)、又は(VI)の基:
【化15】

(式中、R14は互いに独立にアルキレン基であり、R15はC〜Cアルキル基であり、Xは互いに独立にS、O、又はNであり、X=S又はOである場合はr=1であり、X=Nである場合はr=2であり、R16は任意選択でヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基であり;
9’、R10’、及びR11’はそれぞれ互いに独立にC〜Cアルキレン基であり、任意の可能な配列で(R9’O)、(R10’O)、及び(R11’O)単位の配列を有し;
12’はC〜C12のアルキル又はシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール又はアラルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり;
指数x’、y’、及びz’は互いに独立にそれぞれ0〜100の値を有し、且つx’+y’+z’=1〜100である。)
であり;
m、n、o、及びpは互いに独立に数であって、m+n+o+p=100であり、且つm>0、n>0、o>0、及びp≧0であり;比m/(n+o+p)は2〜6である。〕
【請求項19】
前記混合物が、結合剤の総質量を基準にして少なくとも30質量%の石膏を含むことを特徴とする、請求項18に記載の結合剤含有混合物。
【請求項20】
石膏が、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、又は硫酸カルシウム無水物(無水石膏)であることを特徴とする、請求項18又は19に記載の結合剤含有混合物。
【請求項21】
前記ポリマーPが、ポリカルボン酸のエステル化及びアミド化のポリマー反応によって得られるか又は調製されることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の結合剤含有混合物。
【請求項22】
前記ポリマーPが、フリーラジカル重合によって得られるか又は調製されることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の結合剤含有混合物。
【請求項23】
前記ポリマーPを、前記結合剤に、固体又は液体の形態で混和剤として別途添加するか又は予め混合することを特徴とする、請求項18〜22のいずれか一項記載の結合剤含有混合物を製造する方法。

【公表番号】特表2010−528976(P2010−528976A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511622(P2010−511622)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057249
【国際公開番号】WO2008/152046
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】