説明

石膏組成物用の分散剤

本発明は、石膏組成物用、特に石膏ボードパネル用の分散剤として、特に可塑剤としてのポリマーPの使用、ならびにポリマーPを含む石膏組成物に関する。ポリマーPは、少なくとも一つの酸単位と、少なくとも1800 g/molの分子量を有する長い側鎖とを含み、ポリオキシアルキレン基を含み、かつポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolの酸基の酸含有量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏組成物、特に石膏組成物用の分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレン側鎖を有するα-,β-不飽和カルボン酸に由来するポリマーは、長らくコンクリート技術において、それらが提供する適度な水分減少を理由として、分散剤として、特に可塑剤としてすでに使用されている。これらのポリマーは、櫛型ポリマー構造を有する。エステルおよびカルボン酸基以外に、アミド基も有する、一連の櫛型ポリマーが存在する。
【0003】
当業者に知られるコンクリート分散剤は、石膏組成物用に限定された程度でしか使用できないことが現在知られている。石膏中の既知のコンクリート分散剤により、比較的小さい可塑効果のみが達成され、それゆえ多量に使用されなければならず、あるいは、それらは石膏組成物がほとんど実行できないような強い遅延効果を有する。
【0004】
現在までに、例えば、メラミンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物が、石膏可塑剤として使用されている。しかし、これらの可塑剤は、有毒なホルムアルデヒドを放出するため環境的に不利であり、それゆえ望ましくない。別の公知の石膏可塑剤は、例えばWO02081400A1に記載されているもののような、リグニンまたはナフタレンスルホネートをベースとするものである。そのような可塑剤は、一緒に調製する石膏組成物を変色させる点で不利である。
【0005】
特に、石膏ボードパネルを製造するための石膏組成物における分散剤は、慣用的な石膏分散剤で達成できないある特性が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO02081400A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、先行技術の不利な点を克服し、石膏組成物における十分な可塑効果を達成するため、特に過剰な遅延を引き起こすことなく石膏ボードを製造するために適している分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、この目的を、請求項1で特定されるポリマーPを使用することにより達成することができることが、いま発見された。驚くべきことに、少なくとも1800 g/molの分子量を有する長い側鎖、ならびにポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolの酸基の酸含有量を有するポリマーとともに、特に良好な可塑効果を、石膏組成物において実行することができることが確立されうる。さらに、これらのポリマーを石膏組成物において水分を減少させるために使用することができること、ならびにそれらはセッティングを大きく遅らせないことが示された。同様に、前記組成物を、これらのポリマーにより変色しないかもしれない。
【0009】
さらに本発明は、石膏ボードパネルを製造するための、少なくとも一つのポリマーP、および好ましくはカルシウムサルフェートβ-半水化物を含む石膏組成物の使用を含む。さらに本発明の有利な実施態様は、サブクレームより続けられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、石膏組成物のため、特に石膏ボードパネルを製造するための分散剤として、ポリマーPを使用することに関する。
【0011】
前記分散剤を特に可塑剤として、水分減少剤として、またはそれを使用して製造される石膏組成物の作業性および流動性を改善するために使用することができる。そのような石膏組成物は、特に石膏ボードパネルを製造するために適している。「石膏ボードパネル」は、例えば、石膏コアが2つのカードボードパネルの間に挟まれている石膏カードボードパネル;さらに繊維を含む石膏繊維ボードパネル;ならびに通常プレキャスト形態にある石膏乾式壁パネルを意味する。
【0012】
カルシウムサルフェートβ-半水化物を含む、またはカルシウムサルフェートβ-半水化物からなる石膏コア、ならびに少なくとも一つのポリマーPがカードボードパネルの間に挟まれている、石膏カードボードパネル用に、本発明の石膏組成物は特に好ましい。
【0013】
別の特に好ましい使用において、そのような石膏組成物用にポリマーPを可塑剤として使用する。
【0014】
「石膏組成物」は、結合剤の総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは70重量%、または100重量%の石膏を含む組成物を意味する。好ましい適用において、石膏組成物は、セメントを含まない。「石膏組成物」は、特に、主にサルフェート結合剤を含む組成物を意味する。
【0015】
「石膏」の語は、公知のいずれかの形態の石膏、特にカルシウムサルフェート二水和物、カルシウムサルフェートα-半水化物、カルシウムサルフェートβ-半水化物、またはカルシウムサルフェート無水物、あるいはそれらの混合物を指す。
【0016】
好ましい実施態様において、石膏はカルシウムサルフェートβ-半水化物であり、カルシウムサルフェートβ-半水化物ベースの石膏組成物を、石膏ボードパネルを製造するために使用する。石膏組成物は、好ましくは結合剤の総重量に対して、少なくとも70重量%のカルシウムサルフェートβ-半水化物、さらにより好ましくは90重量%のカルシウムサルフェートβ-半水化物を含む。
【0017】
「結合剤」の語は、石膏以外に、例えば、セメント、特にポートランドセメントまたは高アルミナセメント、ならびにそれぞれの、フライアッシュ、シリカフューム、スラグ、水砕スラグ、およびライムストーンフィラー、またはクイックライムとの混合物のような、他の水硬性セッティング材料を含む。
【0018】
本発明のポリマーPは特に、石膏組成物用の分散剤として、特に可塑剤として適しており、
a) 炭化水素基を含む主鎖、
b) カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、またはそれらの塩からなる群より選択される、少なくとも一つの酸基を含む、少なくとも一つの側鎖、ならびに
c) 少なくとも一つのエステル、アミド、またはイミド基、好ましくは少なくとも一つのエステル、またはアミド基を含む連結を介して主鎖に結合している少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含み、少なくとも1800 g/molの分子量Mwを有する側鎖
を含み、
ポリマーPの酸含有量は、ポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolの酸基である。
【0019】
本発明において「分子量」の語は、重量平均分子量Mwを意味する。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸、またはそれらの混合物を意味する。
【0021】
「炭化水素基を含む主鎖」は、炭素原子と水素原子とを含む化合物を意味する。炭化水素基は、飽和でも不飽和でもある可能性があり、脂肪族基、芳香族基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、直鎖または分枝基を含む、またはこれらの基からなる可能性がある。炭化水素基を含むこの主鎖を、例えばフリーラジカル重合の手段によって合成することができ、従って、イニシエーターシステムおよび任意の使用する分子量コントローラーに依存して、鎖の末端、または鎖の中に、例えばS、O、N、Pのような1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0022】
主鎖を、交互、ブロック、またはランダムな手法でアレンジすることができる同一のまたは異なる炭化水素基または炭化水素単位より構築することができる。炭化水素基を含む主鎖の例は、純粋な炭化水素基ではない、例えば酸、エステル、エーテルまたはアミド基である側鎖が、鎖から除かれる場合、例えば、(メタ)アクリル酸またはその誘導体の重合により、あるいはアクリル酸の、メタクリル酸またはその誘導体との共重合により、あるいはマレイン酸またはその誘導体と、ビニルまたはアリル化合物との共重合により、形成されるような炭化水素鎖である。アクリル酸の重合により形成される炭化水素鎖が最も好ましい。
【0023】
「少なくとも一つの酸基またはその塩を含む側鎖」の語は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、またはそれらの塩を含む化合物を意味する。酸基は、完全に中和されていない、部分的に中和されている、あるいは完全に中和されている可能性があり、塩または無水物として存在する可能性がある。酸基は、好ましくはカルボン酸基である。
【0024】
少なくとも1800 g/molの分子量Mwを有する側鎖は、少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含む。ポリオキシアルキレン基は、好ましくは少なくとも一つのエステル、アミド、またはイミド基を含む連結を介して主鎖に結合している。少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含む少なくとも一つの側鎖の分子量は、少なくとも1800 g/mol、好ましくは2000 g/mol、さらにより好ましくは3000 g/molである。
【0025】
前記連結は、少なくとも一つのエステル、アミド、またはイミド基を含み、好ましくはエステルまたはアミド基であり、好ましくは-COO-, -CO-NH-, -R’-COO-, and R-CO-NH-からなる群より選択され、ここでR’はそれぞれ独立に、C1-C6アルキレンラジカルを表す。
【0026】
ポリマーPは、少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含み、異なる連結を介して主鎖に連結した、異なる側鎖を含む可能性がある。例えば、ポリマーPは、エステル、アミド、またはイミド基あるいはそれらの混合物を介して主鎖に連結した側鎖を含む可能性がある。それゆえ、ポリマーP中に、混合エステル、アミド、またはイミド連結が現れる可能性がある。例えば、ポリマーPに対して、少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含む側鎖の一部を、エステル基を介して主鎖に連結することができ、少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含む側鎖の別の一部を、アミド基を介して主鎖に連結することができる。
【0027】
ポリオキシアルキレン基は、好ましくはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、またはオキシエチレン基とオキシプロピレン基の混合物を含む、またはそれらからなる。
【0028】
本発明の効果を実現するために、ポリマーPは、少なくとも1800 g/molの分子量Mwを有する少なくとも一つの長い側鎖、ならびに、ポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmol、より好ましくは1.8から2.7mmolの酸基である、特定の酸含有物(AC)を含むべきである。ポリマーPの酸含有量は、1グラムのポリマーPに含まれる遊離酸基およびその塩のmmol総計により与えられる。「酸基」は、酸を含む全ての基、およびその塩を意味する。酸基はまた、部分的にまたは完全に中和される可能性がある。mmol/gで示すポリマーの酸含有量ACを、式
【数1】

より算出する[前記式中、zは式(I)の酸単位Aが与えることができるプロトンの数に相当する。そして例えば、モノカルボン酸の場合z = 1であり、式(I)の酸単位Aがジカルボン酸の場合z = 2である。Mw は、酸または構成単位の分子量であり、例えば、式(I)の酸単位Aがアクリル酸である場合、MWA=72 g/molである。指標m、nおよびoは、mol%で示され、mはポリマーP中における式(I)の酸単位Aのmol%比率を示し、nはポリマーP中における式(I)の構成単位Bのmol%比率を示し、oはポリマーP中における式(I)の構成単位Cのmol%比率を示す。]。
【0029】
ポリマーPは、好ましくは
a) 少なくとも一つの式(I)の酸単位A:
【化1】

b) 少なくとも一つの式(II)の構造単位B
【化2】

ならびに任意に、
c) 少なくとも一つの付加構成単位C
を含む。
【0030】
R1およびR2はそれぞれ独立に、H、COOM、CH2COOM、または1から5個の炭素原子を有するアルキル基、特にHを表し;
R3はそれぞれ独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOM、特にHを表し;
R4はそれぞれ独立に、カルボン酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、アリールスルホン酸、カルボニルアミドメチルプロパンスルホン酸、ホスホン酸またはリン酸のラジカル、あるいはそれらの塩を表す。R4は特にCOOMを表し;あるいはR3はR4と環を形成し、CO-O-CO-を形成しうる。
【0031】
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または他の二価もしくは三価金属原子、アンモニア、アルキルアンモニア、あるいはそれらの混合物を意味する。Mは、特にH、Na、Ca/2、Mg/2、NH4、または有機アンモニアを表しうる。多価イオンに対して、それ自体また同じまたは異なるポリマーPのカルボキシレートでありうる、他のカウンターイオンが存在しなければならないことは、当業者に明らかである。
【0032】
アンモニア化合物は、特にテトラアルキルアンモニア、または他のHR3Nであり、ここでRは、アルキル基、特にC1〜C6アルキル基、好ましくはエチルまたはブチルを表す。アンモニアイオンは特に、カルボキシル基を市販の三価アミンで中和することにより得られる。
【0033】
適切な酸単位Aの例は、アクリル酸、メタクリル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、フマル酸、マレイン酸、マレアミン酸、イタコン酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、もしくはビニルホスホン酸、またはそれらの誘導体もしくはアナログ、例えば、マレイン酸由来のマレイン酸ヘミアミドおよびスルファニル酸、特にN-(4-スルホフェニル)マレイン酸アミドの重合により形成される単位である。モノカルボン酸が好ましい。アクリル酸単位またはその塩の重合により形成される単位が、酸単位Aとして特に適している。
【0034】
少なくとも一つの式(I)の酸単位Aは、好ましくは部分的にまたは完全に中和されている。酸単位は、遊離酸として、または塩もしくは部分的な塩として存在する可能性があり、本明細書において「塩」はまた、(塩基との中和により得られる古典的な塩のほかに)金属イオンと、リガンドとしてのカルボキシレートまたはカルボキシル基との化学的複合体も含む。
【0035】
R1、R2およびR3がHを表し、R4がCOOMを表し、MがHまたはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表すポリマーPが特に好ましい。それゆえ式(I)の酸単位Aは、好ましくはアクリル酸単位またはその塩を表す。
【0036】
R6はそれぞれ独立にH、CH3、COOMまたはCH2COOMあるいはR5に対して規定される置換体、好ましくはHを表す。
【0037】
R5はそれぞれ独立に式(III)
【化3】

のラジカルを表す。
【0038】
同時に、R7はエステル、アミド、またはイミド連結、好ましくはCOO-または-CO-NH-を表す。R8はC2-C6アルキレン基、好ましくはC2-C4アルキレン基、いずれかの順番でC2、C3および/またはC4アルキレン基の混合物を表す。R9はH、C1-C12アルキルまたはシクロアルキルラジカル、C7-C20アルキルアリールまたはアラルキルラジカル、あるいは置換または非置換アリールラジカル、あるいは1個から30個のC原子を有する一価有機ラジカルを表し、任意にヘテロ原子を含む。
【0039】
下つき記号xは、それぞれ独立に0または1の値を有し;yは、それぞれ独立に40から250、好ましくは60から120の値を表す。
【0040】
好ましい実施態様において、R5は、 -COO-(R8O)y-R9または-CO-NH-(R8O)y-R9、特に-COO-(R8O)y-R9を表し、-(R8O)y-は、C2-C4ポリオキシアルキレン基、特にポリオキシエチレン基、またはポリオキシプロピレン基、または可能性のあるいずれかの配列、例えばランダム、交互、またはブロック式ののオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の混合物を表し、yは、40から250、好ましくは45から120の値を表す。好ましいポリマーPに対して、式(II)の構成単位Bの少なくとも30mol%、特に好ましくは50-100 mol%、より好ましくは80-100 mol%、最も好ましくは100 mol%が、R8がC2アルキレン基を示す構造により示される。すなわち、R5は好ましくは、全ての(R8O)単位のモル総量に対して、少なくとも30mol%の(C2H4O)単位、好ましくは50-100 mol%の(C2H4O)単位、より好ましくは80-100 mol%の(C2H4O)単位を含む。R5は特に好ましくは、全ての(R8O)単位のモル総量に対して、100 mol%の(C2H4O)単位を含む。ポリマーPの合成法に依存して、R9は、C1-C12アルキルまたはシクロアルキルラジカル、C7-C20アルキルアリールまたはアラルキルラジカル、あるいは置換または非置換アリールラジカル、あるいは1個から30個のC原子を有する一価有機ラジカルを表し、任意にヘテロ原子を含む。
【0041】
ポリマーPがポリマーアナログ反応を介して合成される場合、R9は好ましくは、メチルラジカルであり、水素原子を表さない。
【0042】
付加構成単位Cは、付加的なエーテル、エステル、アミド、またはイミド単位、好ましくはアミドまたはエステル単位を含みうる。例えば、付加構成単位Cは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、カルボニルアミドメチルプロパンスルホン酸、およびそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、ポリ(オキシアルキレン)オキシカルボニル、ポリ(オキシアルキレン)アミノカルボニル、ポリ(オキシアルキレン)オキシアルキル、ポリ(オキシアルキレン)オキシ、ヒドロキシエチル オキシカルボニル、アセトキシ、フェニル、またはN-ピロリドニル基を含みうる。付加構成単位Cは、ポリオキシアルキレン基、好ましくはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、またはそれらの混合物を含む。例えば、付加構成単位Cは、モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を、アルキルアルコール、特にC6-C20アルキルアルコールと反応させることにより合成するエステル単位でありうる。
【0043】
ポリマーPが少なくとも1800 g/molの分子量を有する長い側鎖、ならびにポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolの酸基の酸含有量を有する場合、驚くべき良好な可塑効果が達成されることが示された。
【0044】
特に好ましいポリマーPは、
a) 少なくとも一つの式(I’)の酸単位A:
【化4】

および
b) 少なくとも一つの式(II’)の構造単位B
【化5】

を含む、またはそれらからなり、
前記式中、M’は、H、Na、Ca/2、Mg/2、NH4、または有機アンモニア、好ましくはHを表し、
R7’は、COOまたはCONHを表し、
R8’は、エチレン基を表し、
R9’は、C1〜C12アルキル基、好ましくはメチル基を表し、
y’は、40から250、好ましくは60から100を表し、
酸含量は、ポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolのCOOM’である。
【0045】
ポリマーPは、構造単位A、Bおよび任意にCそれぞれに対して、異なる構造単位の組み合わせを有しうる。例えば、ポリマーP中に、複数の混合構造単位A、例えばメタクリル酸単位とアクリル酸単位との混合物が存在しうる。しかし、純粋なアクリル酸単位が好ましい。あるいは、ポリマーP中に、複数の混合エステルまたはアミド単位B、例えば異なる置換基R8’を有する複数のエステル単位Bが存在しうる。例えば、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールの、ポリプロピレングリコールと組み合わせた使用、あるいは異なる分子量のポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールの組み合わせた使用が好ましい。
【0046】
好ましい実施態様において、ポリマーPは、ポリマーP中の構造単位A、BおよびCの総モル量に対してそれぞれ、50から99.5 mol%、好ましくは70から99 mol%の式(I)の酸単位A、0.5から50mol%、好ましくは1から30 mol%の式(II)の構造単位B、ならびに任意に0から49mol%の構造単位Cを含む。
【0047】
好ましくは、式(I)の酸単位Aは式(I’)の酸単位であり、ここで式(II)の構造単位Bは、式(II’)の構造単位であり、ならびに式(III)の構造単位Cは、式(III’)の構造単位である。
【0048】
ポリマーPは、ポリマーP中の構造単位A、BおよびCの総モル量に対してそれぞれ、75から98mol%、さらにより好ましくは85から98mol%の式(I)の酸単位A、2から25mol%、さらにより好ましくは2から15mol%の式(II)の構造単位B、ならびに任意に0から23 mol%の構造単位Cを含む。好ましくは、式(I)の酸単位Aは式(I’)の酸単位であり、式(II)の構造単位Bは、式(II’)の構造単位であり、ならびに式(III)の構造単位Cは、式(III’)の構造単位である。
【0049】
ポリマーP中の構造単位A、BおよびCのそれぞれの配列は、交互、統計的、ブロック状、またはランダムでありうる。
【0050】
ポリマーPは好ましくは、10 000から150 000 g/mol、好ましくは15 000から100 000 g/mol、特に好ましくは25 000から80 000 g/molの分子量Mwを有する。
【0051】
ポリマーPを、異なる方法により合成することができる。特に2つの方法を使用する。第一の方法では、ポリマーを、ポリカルボキシレート、ならびにそれぞれアルコールおよび/またはアミンから「ポリマーアナログ反応」で合成する。第二の方法では、ポリマーを、フリーラジカル重合により、それぞれ不飽和カルボン酸−官能およびエステル官能および/またはアミド官能モノマーより合成する。
【0052】
特に好ましいポリマーを、第一の方法により特定されるようなポリマーアナログ反応により合成する。
【0053】
ポリマーアナログ反応は、非常に異なる特性を有する、非常に異なる櫛型ポリマーを、α-,β-不飽和酸に由来する、特にモノカルボン酸またはジカルボン酸に由来する、特にポリ(メタ)アクリル酸に由来する市販のポリマーより、アルコールおよびアミンの量、タイプ、および比率を変動させることにより、簡単かつ確実に取得することができる点で非常に有益である。そのようなポリマーアナログ反応は、例えばWO97/35814A1、WO95/09821A2、DE 100 15 135A1、EP 1138697A1、EP1348729A1およびWO2005/090416A1に記載されている。ポリマーアナログ反応の詳細は、例えばEP 1 138 697 B1の7頁20行から8頁50行、ならびにその実施例、あるいはEP 1 061 089 B1の4頁54行から5頁38行ならびにその実施例に開示されている。ポリマーPをまた、EP 1 348 729 A1の3頁から5頁ならびにその実施例に記載されているように、固体凝集状態(solid aggregate state)で取得することができる。
【0054】
そして、(a) 少なくとも一つのポリカルボン酸またはポリカルボン酸アナログ、(b) 少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含む、少なくとも一つのモノヒドロキシ化合物E、および/または少なくとも一つのモノアミン化合物F、ならびに、任意に(c) 少なくとも一つの付加化合物Dの反応により取得することができる、ポリマーPを使用することが好ましい。
【0055】
「ポリカルボン酸またはポリカルボン酸アナログ」は、少なくとも一つのモノマーa、および任意に少なくとも一つのモノマーbの重合により取得することができるホモポリマーまたはコポリマーを意味する。モノマーaは、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、それらのアナログ、およびそれらの混合物を含む基から選択される。不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸は、好ましくはマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸またはクロトン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸を含む。「モノカルボン酸またはジカルボン酸またはポリカルボン酸のアナログ」は、本発明において、酸の塩、酸のハロゲン化物、酸無水物、及び酸エステル、特にアルキル酸エステルを意味する。
【0056】
モノマーbは、好ましくは、α-,β-不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、α-,β-不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸エステル、α-,β-不飽和モノカルボキシレート、スチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、特にメタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ならびにそれらの塩、エステル、およびそれらの混合物を含む、エチレン系不飽和モノマーの群より選択されれる。
【0057】
好ましいコポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸、ならびにそれらの塩または部分塩のコポリマーである。
【0058】
好ましいホモポリマーは、ポリアクリル酸ならびにその塩または部分塩である。
【0059】
本明細書において、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸のアナログは、遊離酸または部分塩として存在しうるものであり、ここで「塩」の語は、ここおよび以下でまた、(塩基との中和により得られるような古典的な塩のほかに)金属イオンおよびリガンドとしてカルボキシレートまたはカルボキシル基の間の化学錯体も含む。ポリカルボン酸またはポリカルボン酸のアナログの合成において、任意に使用されるイニシエーター、コイニシエーター、および重合コントローラーを、好ましくはポリマーP中に反応性ヒドロキシルまたはアミン官能基が存在しないように選択すべきである。
【0060】
本明細書において、「モノヒドロキシ化合物」は、遊離水酸基を一個だけ有する基質を意味する。
【0061】
本明細書において、「モノアミン化合物」は、遊離アミノ基を一個だけ有する基質を意味する。
【0062】
ポリカルボン酸またはポリカルボン酸のアナログのホモポリマーまたはコポリマーは、慣用的な方法による遊離ラジカル重合により取得される。前記重合を、溶媒中、好ましくは水中、または基質中で実行することができる。この遊離ラジカル重合は好ましくは、少なくとも一つの分子量コントローラー、特に無機または有機硫黄化合物、例えば、メルカプタン、あるいはリン化合物の存在下で実行される。
【0063】
前記重合は、有利には、ホモポリマーまたはコポリマーが10から250、好ましくは20から100、より好ましくは25から60個のモノマー成分より構成される条件下で実行される。そのような(メタ)アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが市販されている。ポリカルボン酸またはポリカルボン酸のアナログのホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、500から20000g/mol、好ましくは2000から10000g/mol、特に好ましくは3500から6500g/molの分子量を有する。
【0064】
モノヒドロキシ化合物Eは、好ましくは、通常の反応条件下で反応性ではない末端基により一方の端を末端キャップ化されている。これは好ましくは、ポリアルキレングリコール足場(scaffolding)を有するポリマーである。モノヒドロキシ化合物Eは、式(IV)
【化6】

を有する[前記式中、R8’’”は、それぞれ独立に、可能性のあるいずれかの順序の(R8’’”O)の配列を有するC2-C4アルキレン基を意味し;
R9’”は、C1-C12アルキルまたはシクロアルキルラジカル、C7-C20アルキルアリールまたはアラルキルラジカル、あるいは置換または非置換アリールラジカル、あるいは1個から30個のC原子を有する一価有機ラジカルを表し、任意にヘテロ原子を含み;
y’”は、それぞれ独立に40から250、好ましくは45から120を表す]。
【0065】
好ましい式(IV)のモノヒドロキシ化合物Eは、置換基R9’’としてメチル、エチル、i-プロピル、またはn-ブチル基、特にメチル基を有する。R8は、それぞれ独立に、C2アルキレン基および/またはC3アルキレン基を表す。Eは好ましくは、エチレンオキシド/プロピレンオキシド、より好ましくは一端をエンドキャップ化されたポリエチレングリコールに由来する混合ポリマーである。
【0066】
基Eにおける複数の異なる化合物の混合が同様に可能である。そして、例えば、一端をエンドキャップ化され、異なる分子量を有するポリエチレングリコール類を混合することができ、あるいは例えば、一端をエンドキャップ化されたポリエチレングリコールと、一端をエンドキャップ化されたエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、または一端をエンドキャップ化されたポリプロピレングリコールとの混合物を使用することができる。
【0067】
「通常の反応条件下で反応性ではない末端基により一方の端を末端キャップ化されている」は、本願発明において、エステル化またはアミド化に反応性の官能基ではなく、もはや反応することができない基が存在することを意味する。通常の反応条件とは、エステル化およびアミド化に対して当業者によく知られているものである。「一方の端を末端キャップ化されている化合物」に対して、一端のみが、もはや反応することができない。
【0068】
好ましい実施態様において、モノヒドロキシ化合物Eは、800から10000g/mol、特に2000から8000g/mol、好ましくは2000から6000g/molの分子量Mwを有する、一方の端を末端キャップ化されているポリアルキレングリコールである。異なる分子量を有し、一方の端を末端キャップ化されているポリアルキレングリコール類の混合物、例えば、1000g/molの分子量を有するポリアルキレングリコールと、5000g/molの分子量を有するポリアルキレングリコールの混合物もまた適している。
【0069】
モノヒドロキシ化合物Eに加えて、またはモノヒドロキシ化合物Eの代わりに、モノアミン化合物Fを第一の方法で使用することができる。それにより、アミド基が形成される。
【0070】
そのようなモノアミン化合物Fの典型的な例は、式(V)
【化7】

により表すことができる。
【0071】
置換基R8およびR9または記載yは、それぞれ独立に、式(III)に対してすでに規定されたのと同じ意味を有する。
【0072】
そのようなモノアミン化合物Fの例は、(α-メトキシ-ω-アミノ)ポリオキシエチレン、(α-メトキシ-ω-アミノ)ポリオキシプロピレン、(α-メトキシ-ω-アミノ)オキシエチレン/オキシプロピレンコポリマーである。
【0073】
モノアミン化合物Fとして特に好ましいのは、(α-メトキシ-ω-アミノ)オキシエチレン/オキシプロピレンコポリマー、例えばJeffamine(登録商標) M-2070、または(α-メトキシ-ω-アミノ)ポリオキシエチレン、ならびに市販の他のモノアミン、例えばMシリーズのJeffamine(登録商標) の名でHuntsmanにより販売されているもの、ならびにそれらの混合物である。(α-メトキシ-ω-アミノ)オキシエチレン/オキシプロピレンコポリマーが最も好ましい。そのようなモノアミン化合物Fを、例えば、エチレンおよび/またはプロピレンオキシドのアルコール開始重合、あるいは末端アルコール基のアミン基への変換により取得することができる。
【0074】
好ましい付加化合物Dは、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸アナログとの反応を開始することができる化合物である。付加化合物Dの例は、付加アミンまたはアルコール類、例えばC6-C20アルキルアルコールあるいは付加モノアミンまたはジアミンである。複数の異なる付加化合物Dもまた使用することができる。
【0075】
ポリマーPを形成する、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸アナログの、少なくとも一つのモノヒドロキシ化合物E、および/または少なくとも一つのモノアミン化合物F、ならびに、任意に少なくとも一つの付加化合物Dとの反応は、典型的には、少なくとも一つのモノヒドロキシ化合物E、および/または少なくとも一つのモノアミン化合物Fが、撹拌されながらポリカルボン酸またはポリカルボン酸アナログに添加され、混合物を反応温度に加熱するような、ポリマーアナログ反応において実行される。
【0076】
混合物の撹拌を継続し、反応を、任意に真空で、または反応混合物上もしくは混合物を介するガス流の通過ににより実行する。この反応のための温度は、例えば140°Cから200°Cの間である。しかし、150°Cから175°Cの間の温度でも反応は可能である。モノヒドロキシ化合物Eに加えて、モノアミン化合物Fが使用される場合、モノヒドロキシ化合物Eと同時に添加することができ、あるいはこの反応工程の間の後の時間に添加することができる。
【0077】
好ましい実施態様において、この反応を、エステル化触媒、特に酸の存在下で実行する。そのような酸は、好ましくは、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ホスホン酸、またはリン酸である。スルホン酸が好ましい。大気圧下のみでなく真空下で、反応混合物から水を除去することができる。ガス流を、反応混合物上もしくは混合物を介して通過させることもできる。ガス流として、空気または窒素を使用することができる。
【0078】
反応を、酸価の測定により、例えば滴定によりモニタリングすることができ、反応を、所望の酸価(それゆえ所望の酸含有量)で停止することができる。反応を、真空を解除および冷却することにより停止する。
【0079】
好ましい実施態様において、ポリアクリル酸を、ポリエチレングリコールでエステル化し、メチル基で一端をエンドキャップ化し、ならびに/あるいはモノアミンと反応させる。
【0080】
「ポリマーアナログ」反応において、エステル基および任意にアミド基のほかに、無水物基もまた形成することができ、その第二工程において、アミン化合物と完全または部分的に反応し、アミドを形成することができる。
【0081】
そのような方法は、例えば、WO2005/090416A1に記載されている。
【0082】
第二の反応方法において、ポリマーPを、遊離ラジカル重合により合成する。遊離ラジカル重合経路は、最も一般的な方法であるが、対応するモノマーが市販されているかということ、および高価な方法制御が必要であることにより、特別な化合物に対して、より困難となる。
【0083】
そして、本発明はさらに、石膏組成物用の分散剤、特に可塑剤としてのポリマーPの使用に関し、ポリマーPを、
(a) 不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和リン酸、不飽和ホスホン酸、およびそれらの塩から選択される、少なくとも一つのエチレン系不飽和モノマーMM、
(b) 式(VI)
【化8】

の少なくとも一つのエチレン系不飽和カルボン酸誘導体H、
ならびに任意に、
(c) 少なくとも一つの付加エチレン系不飽和化合物L
からの少なくとも一つのラジカル形成剤の存在下における重合反応により取得することができる。
【0084】
置換基R1、R2、R5、およびR6は、それぞれ独立に、式(II)に対してすでに規定されたものと同じ意味を有する。
【0085】
エチレン系不飽和モノマーMMは、好ましくは、モノカルボン酸またはジカルボン酸、あるいはモノカルボン酸またはジカルボン酸の塩である。
【0086】
モノカルボン酸またはジカルボン酸は、好ましくは、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸またはクロトン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸である。アクリル酸が特に好ましい。
【0087】
式(VI)の少なくとも一つのエチレン系不飽和カルボン酸誘導体Hは、好ましくは、カルボン酸エステルまたはカルボン酸アミド、特に好ましくはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである。そのようなエステルの好ましい例は、ポリアルキレングリコールアクリレートである。異なる置換基R5を有する、式(VI)の複数のモノマーを、組み合わせて一緒に使用することができる。例えば、ポリアルキレングリコール類、特に異なる分子量のポリエチレングリコール類が好ましい。適切なカルボン酸アミド類の例は、エチレン系不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸およびアミド化合物に由来するアミドである。(メタ)クリル酸のアミド、好ましくはポリオキシアルキレンモノアミドが特に好ましい。特に好ましいアミドモノマーは、アルキルポリアルキレングリコール(メタ)クリルアミド、特に好ましくは、メチルポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール(メタ)クリルアミド、またはメチルポリプロピレングリコール(メタ)クリルアミドである。一つまたは複数のこれらの不飽和カルボン酸アミド類を使用することができる。
【0088】
付加エチレン系不飽和化合物Lは、好ましくはカルボン酸エステルまたはアミド、特に好ましくはアクリル酸エステルまたはアミド、あるいはメタクリル酸エステルまたはアミドである。そのようなエステルまたはアミドの例は、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。複数の異なる化合物Lを、組み合わせて一緒に使用することができる。例えば、モノヒドロキシエチルまたはジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、モノヒドロキシプロピルまたはジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、モノシクロヘキシルまたはジヒドロヘキシル(メタ)アクリルアミド、あるいはN-アルキル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド類、あるいはN-アルキル-N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド類が適している。
【0089】
本発明による使用のために、ポリマーPを、液体及び固体形態の両方において、ならびに単独でまたは分散剤、特に可塑剤の成分として、使用することができる。
【0090】
そして、本発明による使用のために、ポリマーPを、単独ポリマーPとして、または複数のポリマーPの混合物として、石膏組成物用の分散剤として使用することができる。ポリマーPをまた、他の分散剤または分散剤の混合物と使用することもできる。本発明による使用のために、ポリマーPまたはポリマーPを含む混合物は、他の成分を含むことができる。他の成分の例は、溶媒あるいは可塑剤、例えばリグノスルホネート、スルホン化ナフタレン/ホルムアミドコンデンセート、スルホン化メラミン/ホルムアミドコンデンセート、またはポリカルボン酸エーテル(PCE)、促進剤、遅延剤、収縮減少剤、消泡剤、または発泡剤のような添加物である。
【0091】
合成方法、または反応の実行法に応じて、分散剤はさらに、ポリマーPに加えて、出発物質の遊離化合物、特に、例えばポリアルキレングリコール、特に遊離ポリエチレングリコールのような、遊離モノヒドロキシ化合物を含むことができる。
【0092】
ポリマーPが液体形状で使用される場合、好ましくは溶媒を反応のために使用する。好ましい溶媒は、例えば、アルコール、特にエタノールまたはイソプロパノール、および水であり、水が最も好ましい溶媒である。
【0093】
ポリマーPはまた、固体凝集状態で存在することもできる。本発明において、「固体凝集状態のポリマー」の語は、室温で固体凝集状態であり、例えば、粉末、フレーク、ペレット、顆粒またはシートであり、この形態で容易に移動させ、保存することができるポリマーを意味する。
【0094】
ポリマーPは好ましくは、石膏組成物の所望の効果を達成するために、結合剤の重量に対して、0.01から10重量%の量で使用される。複数の混合ポリマーPをまた、所望の効果を達成するために使用することもできる。
【0095】
別の態様において、本発明は、石膏および少なくとも一つのポリマーPを含む混合物を含む結合剤に関する。ポリマーPは、すでに上述している。
【0096】
「石膏」の語は、既知のいずれかの石膏の形態、特にカルシウムサルフェート二水和物、カルシウムサルフェートα-半水化物、カルシウムサルフェートβ-半水化物、またはカルシウムサルフェート無水物に関する。ポリマーPは特に、石膏ボードパネル、特に石膏カードボードパネルにおいて使用するための、カルシウムサルフェートβ-半水化物を含む混合物を含む結合剤における使用に適している。
【0097】
混合物を含む結合剤は、結合剤の総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは70重量%の石膏、特にカルシウムサルフェートβ-半水化物を含む。結合剤は、例えば、セメント、特にポートランドセメントまたは高アルミナセメント、ならびにそれぞれの、フライアッシュ、シリカフューム、スラグ、水砕スラグ、およびライムストーンフィラー、またはクイックライムとの混合物のような、他の水硬性セッティング材料を含むことができる。
【0098】
混合物はさらに、例えば繊維のような他の添加物、ならびに、例えば他の可塑剤、例えばリグノスルホネート、スルホン化ナフタレン/ホルムアミドコンデンセート、スルホン化メラミン/ホルムアミドコンデンセート、またはポリカルボン酸エーテル(PCE)、促進剤、遅延剤、収縮減少剤、消泡剤、または発泡剤のような慣用的な成分の添加物を含むことができる。
【0099】
特に好ましい結合剤は、ポリマーP、カルシウムサルフェートβ-半水化物および少なくとも一つの促進剤、ならびに、石膏ボードパネルの製造用の他の慣用的な添加物を含む混合物である。
【0100】
別の態様において、本発明は、少なくとも一つのポリマーPを別々に、あるいは固体または液体形態のプレミックス添加物として結合剤に添加する、混合物を含む結合剤を調製する方法に関する。
【0101】
固体凝集状態のポリマーPは、長期間保存することができ、典型的には袋に封入して、またはサイロに保存して使用される石膏組成物「ドライミックス(dry mix)」の成分であることができる。そのようなドライミックスはまた、長期間の保存後に使用可能であり、良好な流動性(pourability)を有する。
【0102】
ポリマーPを、水の添加とともに、またはその直前、またはその直後に慣用的な石膏組成物に添加することもできる。水溶液または水性分散剤の形態で、特に混合水として、または混合水の一部としてポリマーPの添加は、このために特に適することが示されている。水溶液または水性分散剤は、ポリマーPの合成中に水を添加することにより、または水とポリマーPを後で混合することにより、調製される。この目的のために、ポリマーPの比率は、水溶液または水性分散剤の重量に対して、典型的には10から90重量%、特に20から50重量%である。ポリマーPのタイプに応じて、分散剤または溶液が形成する。溶液が好ましい。
【0103】
水溶液または水性分散剤は、他の成分を含むことができる。この例は、建築化学に一般に使用されるような、特に界面活性剤、熱および光安定剤、消泡剤、ならびに発泡剤のような溶媒または添加物である。
【0104】
ポリマーPは、石膏ボードパネルにおいて使用するための、石膏組成物、特にカルシウムサルフェートβ-半水化物を含む組成物用の、分散剤、特に可塑剤として良好な特性を有している。
【0105】
すなわち、得られる混合物は、分散剤を有さない組成物よりも、顕著に良好な流動振る舞いを有し、目だって遅いセッティングを示さない。流動振る舞いは典型的には、展開直径(spread diameter)により測定される。第二に、硬化石膏組成物の力学的特性が大きく改善され、例えば、時間およびエネルギーを、石膏ボードパネルを乾燥させる際に節約することができるため、改善が、石膏組成物、特に石膏ボードパネルを製造する方法において達成されるよう、同じ流動振る舞いのために、かなり水が少ない必要がある混合物により達成することができる。
【0106】
そして、ポリマーPは、主に硫酸結合剤、特に主にカルシウムサルフェートβ-半水化物を含む系において、分散剤、特に可塑剤として、優れた特性を有する。さらに、ポリマーPとともに、組成物は脱色されない。
【実施例】
【0107】
本発明はここで、実施例によってより詳細に説明される。
【0108】
1.使用されるポリマーP
【表1】

【0109】
表2に示されるポリマーP-1、P-2およびP-3、ならびに比較例V1、V2、およびV3を、ポリアクリル酸および対応するアルコール、および/またはアミンから、当業者に既知の方法によるポリマーアナログ反応により合成した。ポリマーアナログ反応についての詳細は、例えば、EP 1 138 697 B1の7頁20行から8頁50行、ならびにその実施例、あるいはEP 1 061 089 B1の4頁54行から5頁38行ならびにその実施例に開示されている。
【0110】
例えば、ポリマーP-2を、以下のようにポリマーアナログ反応により合成した。ポリアクリル酸(PAS、約5000 g/molの平均分子量Mwを有する)の40パーセント水溶液(約1モルの酸単位に相当する)145gを、撹拌機(IKA(登録商標)スターラー)、温度計、ガス流入チューブ、および蒸留ブリッジを備えた丸底フラスコに添加した。混合物を50°Cに加熱し、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(MPEG、約5000 g/molの平均分子量Mwを有する)を300g、Jeffamine(登録商標)M-2070を4 g添加した。N2流下で反応混合物を175°Cに加熱した。
【0111】
混合物に含まれる水、ならびに反応において生成する水を、N2流下で連続的に蒸留した。前記温度に到達したときに、66%酢酸カリウム溶液を3 g、反応混合物に添加し、80 mbarの真空を確立した。2時間半以内に反応を完了させた。ポリマー溶解物を固化させ、あるいは100°Cより低い温度に冷却後、550gの水を添加し、40%のポリマー溶液を取得した。
【0112】
ポリマーP-1およびP-3、ならびに比較例V1からV3を、ポリマーP-2と同様に合成した。
【0113】
比較例V-4は、市販のメラミンベースの可塑剤(例えば、BASFからのMelment(登録商標)F15G)である。比較例V-4は、市販のナフタレンスルホネートベースの可塑剤(例えば、CC Rokita SA, PolandからのSuperplastyfikator CA4O)である。第六の比較例には、可塑剤を使用しなかった。
【0114】
【表2】

【0115】
2.カルシウムサルフェートβ-半水化物における流動振る舞い
石膏スラリー用に、40%可塑剤溶液(カルシウムサルフェートβ-半水化物の総重量に対して、0.2重量%の可塑剤に相当)を1g、140gの水に添加した。その後、任意に0.2gのカルシウムサルフェート二水和物促進剤(例えば、Flukaより市販されているもの)、あるいは4g(カルシウムサルフェートβ-半水化物の総重量に対して、0.2重量%)のカリウムサルフェート促進剤(Fluka)を含む200 gのカルシウムサルフェートβ-半水化物を、15秒の間水中に飛散させ、石膏スラリーを15秒間浸した。その後それを30秒間、手で激しく撹拌した。直径50nm、高さ51nmのミニコーンを満たし、75秒後、展開直径をミリメートルで測定した。形成した石膏切片の直径を、流動がもはや観察されなくなってすぐに測定した。mm単位の直径を、展開直径と呼んだ。硬化の開始と、硬化の終了を、DIN EN 13279-2によるナイフカット法、および親指圧力法により測定した。石膏切片を介するナイフカット後、カットのエッジがもはや修復されなければ、硬化の開始に達している。
【0116】
硬化の終了は、約5kgの指圧力を適用したときに、もはや石膏からの離脱がない場合に発生する。
【0117】
【表3】

【0118】
表3は、純粋なカルシウムサルフェートβ-半水化物石膏スラリーにおいて、展開直径、そして作業性および流動性が、本発明によるP-1、P-2およびP-3を含む石膏組成物用に非常に良好であることを示している。実用的な必要性をより満たすために、石膏組成物は一般に促進剤を含む。それゆえ、興味があるのは、特に促進剤を伴う実施例である。
【0119】
そして、ポリマーP1からP3を有する本願発明の組成物は、効果の開始または終了を過度に遅くすることなく、比較例に比べてより良好な流動振る舞いを明らかに有している。
【0120】
比較例V-1は、1000 g/molの短い側鎖のみを有するポリマーを含む。比較例V-2は、非常に低い酸含量を有するポリマーを含み、比較例V-3は、低い酸含量と短い側鎖を有するポリマーを含む。これらの全ての特性により、カルシウムサルフェートβ-半水化物組成物における、展開直径を減少する。慣用的な可塑剤用(Melment, V-4、およびナフタレンスルホネート, V-5)に対しても、特に展開直径が、本発明のポリマーに比較して減少している。
【0121】
もちろん、本発明は、示されて記載される例示的な実施態様に限定されない。上述の本発明の特徴を、それぞれの場合に与えられる組み合わせのみではなく、他の改変、組み合わせ、および変更において、あるいは単離において、本発明の範囲を超えないで使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏組成物用の分散剤としての、少なくとも一つのポリマーPの使用であって、前記ポリマーPは、
a) 炭化水素基を含む主鎖、
b) カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、またはそれらの塩からなる群より選択される、少なくとも一つの酸基を含む少なくとも一つの側鎖、ならびに
c) 少なくとも一つのエステル、アミド、またはイミド基を含む連結鎖を介して主鎖に結合している少なくとも一つのポリオキシアルキレン基を含み、少なくとも1800 g/molの分子量Mwを有する少なくとも一つの側鎖
を含み、
前記ポリマーの酸含有量は、ポリマー1グラムあたり1.5から4mmol、好ましくは1.7から3.5mmolの酸基である、ポリマーPの使用。
【請求項2】
前記石膏組成物が、結合剤の重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも70重量%の石膏を含むことにより特徴づけられる、請求項1に記載のポリマーPの使用。
【請求項3】
石膏がカルシウムサルフェートβ-半水化物を意味することにより特徴づけられる、請求項1または2に記載のポリマーPの使用。
【請求項4】
前記酸基がカルボン酸基であることにより特徴づけられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項5】
前記少なくとも一つのポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基であるか、またはポリオキシエチレン基を含むことにより特徴づけられる、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項6】
前記ポリマーの前記酸含有量が、ポリマー1グラムあたり1.8から2.7mmolの酸基であることにより特徴づけられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項7】
前記ポリマーPが、
a) 少なくとも一つの式(I)の酸単位A;
【化1】

b) 少なくとも一つの式(II)の構造単位B;
【化2】

を含み、かつ任意に、
c) 少なくとも一つの付加構造単位C
を含んでいてもよいことにより特徴づけられる、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーPの使用であって、
R1およびR2はそれぞれ独立に、H、COOM、CH2COOM、または1から5個の炭素原子を有するアルキル基を表し;
R3はそれぞれ独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOMを表し;
R4はそれぞれ独立に、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸またはリン酸の基、あるいはそれらの塩を表し;
あるいはR3はR4と環を形成して、CO-O-CO-を形成し;
Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アンモニウムカチオン、あるいはそれらの混合物を表し;
R5はそれぞれ独立に式(III)
【化3】

の基を表し;
R7はエステル、アミド、またはイミド連結基、好ましくはCOO-または-CO-NH-を表し;
R8はC2-C6アルキレン基、好ましくはC2-C4アルキレン基、またはそれらの混合基を表し;
R9はH、C1-C12アルキルまたはシクロアルキル基、C7-C20アルキルアリールまたはアラルキル基、あるいは置換または非置換アリール基、あるいは任意にヘテロ原子を含んでいてもよい1個から30個のC原子を有する一価有機基を表し;
xは、それぞれ独立に0または1の値を有し;
yは、それぞれ独立に40から250の値を表し;
R6はそれぞれ独立にH、CH3、COOMまたはCH2COOM、あるいは置換基、例えばR5に対して規定した置換基を表す、ポリマーPの使用。
【請求項8】
R1、R2、R3およびR6がHを表し、かつR4がCOOMを表すことにより特徴づけられる、請求項7に記載のポリマーPの使用。
【請求項9】
xが0を表すことにより特徴づけられる、請求項7または8に記載のポリマーPの使用。
【請求項10】
前記ポリマーPを、ポリカルボン酸のエステル化および/またはアミド化のポリマーアナログ反応によって得ることができる、あるいは合成することができることにより特徴づけられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項11】
前記ポリマーPを、遊離基重合反応によって得ることができる、あるいは合成することができることにより特徴づけられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項12】
前記ポリマーPが、ポリマーP中の構造単位A、BおよびCの総モル量に対してそれぞれ、50から99.5 mol%、好ましくは70から99 mol%の式(I)の酸単位A、0.5から50 mol%、好ましくは1から30 mol%の式(II)の構造単位Bを含み、ならびに任意選択で0から49 mol%の構造単位Cを含んでいてもよいことにより特徴づけられる、請求項7から11のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項13】
石膏ボードパネル、特に石膏カードボードパネルを製造するための請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマーPの使用。
【請求項14】
結合剤の総重量に対して、少なくとも30重量%の石膏と、請求項1から13のいずれか一項に規定される少なくとも一つのポリマーPとを含む混合物を含有する結合剤。
【請求項15】
前記ポリマーPを別途に、あるいは固体または液体形態のプレミックス添加物として結合剤に添加することにより特徴づけられる、請求項14に記載の混合物を含有する結合剤を調製する方法。

【公表番号】特表2011−529432(P2011−529432A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520517(P2011−520517)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059871
【国際公開番号】WO2010/012804
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】