説明

石膏製品およびその製造方法

石膏製品に耐水性を与える、改良されたエマルションに使用する方法が提供される。ある実施の形態では、石膏製品は、硫酸カルシウム二水和物、ならびに、ケン化されたろう、不ケン化性のろう、アルキルフェノール、界面活性剤/分散剤であるポリナフタレンスルホン酸の塩、および、カルボキシメチルセルロースを含むエマルションを有する。エマルションは、任意の防腐剤、例えば、殺生剤(殺菌剤、殺カビ剤など)を含んでいてもよい。これらの石膏製品は、水の取り込みを妨害するので、防腐剤を添加しなくても生物の蔓延を妨害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードおよび石膏木部繊維製品のようなの石膏製品の耐水性の改良に有用なろうエマルション添加剤に関する。また、本発明は、エマルション添加剤を用いる石膏製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏(硫酸カルシウム二水和物)のある性質は、工業製品および建築製品、特に石膏パネルの製造にとてもよく使用されている。石膏は、脱水と再水和の工程を通して、流し込み、成型、または他の成形によって有用な形状にできる、豊富で、一般に安価な原料である。石膏ボードを製造する基本的な材料は、二水和物から水相が除去される熱転移によって造られ、通常焼石膏と呼ばれる硫酸カルシウム(石膏)の半水の形態である。パネルボード産業での石膏製品は、裏紙が付された石膏ボード、特に、ガラスマットで強化された石膏ボードと、以下で詳細に述べるように、木部またはリグリン繊維を取り込んだ石膏木部繊維製品、および、他の製品を含むが、これらには限定されない。
【0003】
石膏木部繊維(GWF)製品は、GWPが石膏および例えば木部繊維であるリグノセルロース材の両方の固定したスラリーに取り込まれ、通常の石膏壁板製品と異なる。木部繊維またはリグノセルロース材の量は、石膏とリグノセルロース材の総重量の約50wt%から約95wt%とすることができる。典型的なGWP製品は、重量で、石膏と木部繊維の総重量の約80%の木部繊維を含んでいてもよい。リグノセルロース材は、一般に、木の構成として従来の技術が参照される。木の構成の出所は、松、ツガ、および、モミのような軟材、ならびに、オーク、カエデ、ユーカリ、ポプラ、ブナ、および、ヤマナラシのような硬材を含むが、これらには限定されない。通常の石膏壁板、石膏タイル、石膏ブロック、および、石膏成型品のようなこれらの製品は、相対的にほとんど耐水性がない。
【0004】
石膏製品は、吸水して壁板の強度を減少させる。通常の石膏ボード、石膏タイル、石膏ブロック、石膏成型品のような従来の製品は、相対的にほとんど耐水性がない。実際の試験では、石膏ボードの主材料の2インチ×4インチの円柱を約70°Fで水に浸したところ、円柱は、40分間の浸漬後に36%の吸水率を示した。通常の石膏ボードを水に浸すと、ボードは直ちに多量の水を吸って、大きく強度を失う。このため、上記の各石膏製品において、水の取り込みまたは吸水を抑制するのが望ましい。石膏製品は、水によって、カビ、白カビ、菌類、および、他の生物要素が繁殖しやすくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歴史的には、ボードの製造工程で耐水性を付与するために、石膏スラリーに添加する製品は、アスファルト、融けたろう、乳化したろう/アスファルト、乳化したろう、および、種々のシリコーン製品を混ぜていた。これらの従来技術の系は、多くの関連分野での実施において、全て実証された不十分さを有している。これらの不十分さは、一貫しない固形分、エマルションの不安定、広範囲な見かけ粘度、危険性の表示が必要な苛性のpH、水素および硫化水素ガスの発生による健康への危険性を含むが、これらに限定されない。上記の諸問題に対応でき、石膏製品に耐水性を与えることができる添加剤が必要である。
【0006】
ワントリング(Wantling)らの2003年12月16日付けの米国特許第6,663,707号(2003年7月17日公開)は、ホウ酸ナトリウムのような複合剤と併せた、トウモロコシ、サゴヤシ、小麦、稲などから得られる一般的なデンプン種の混合物と、特にリグノスルホン酸ナトリウムである他の化合物と、C24以上に重合されたアルキルフェノールと、各種のろうとの混合物が、耐水性を与えるために石膏製品に混合するのに適したほぼ安定なろうエマルションを形成することを示している。この系は、前から入手できるろうエマルションよりかなり優位であるが、長期間の保存によるリグノスルホン酸ナトリウムの分解によって細菌が活性となりpHが下がること、粘度が温度に応じて変化すること、水とろうの境界で少量の分離として現れる経年変化、異常に変化するために混合して使用する量が予想より少量となること、および、これらの組み合わせを含む多くの欠陥を有している。
【0007】
ソング(Song)の米国特許第6,010,596号には、パラフィン系炭化水素、モンタンろう、ポリビニルアルコール、水、および、乳化剤の組み合わせを含むろうエマルションを、基礎の石膏と木部繊維を含む温かいスラリーに加えることが示されている。乳化剤は、非イオンおよび陽イオン界面活性剤を含んでいる。温かいうちに、スラリーは、ヘッドボックス経由で、製紙工程で使用されるような、連続するフェルト化コンベア上に排出され、濾過ケーク形成し、結合していない水をできるだけ多く除去する。
【0008】
それゆえ、石膏製品に耐水性を与えるのに有用で、経済的に供給できる添加剤が必要である。ポリシロキサンのような高価な成分の使用が不要な耐水性添加剤が必要である。さらに、室温において安定で、石膏液に適用する前に加熱する必要がない耐水性添加剤が必要である。さらに、その安定性を維持するために連続的な混合や撹拌が不要な、安定な耐水性添加剤が必要である。それゆえ、石膏製品を製造するために使用するときに、吸水、粘度調整、安定性、スラリーの流動性の1以上の問題点に対応する石膏製品の製造方法が必要である。もちろん、そのような添加剤は、流動性、起泡性、硬化前の時間、または、硬化時間に影響を与えないで、これらの機能を発揮すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
石膏と、水と、不ケン化性のろう、ケン化されたろう、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分、および、水を含有するエマルションと、を有するスラリーを形成する工程有する製造方法がここに開示される。詳細な態様では、不ケン化性のろうは、重量で、エマルションの約33%から約35%含まれ、ケン化されたろうは、重量で、エマルションの約3%から約5%含まれ、アルキルフェノール成分は、重量で、エマルションの約0.5%から約2.5%含まれ、分散剤は、重量で、エマルションの約0.5%から約2%含まれ、カルボキシメチルセルロース成分は、重量で、エマルションの約0.2%から約5%含まれていてもよい。エマルションは、例えば、殺生剤(殺菌剤、殺カビ剤)の防腐剤を任意に含んでもよい。種々の態様では、石膏製品は、石膏ボードまたは石膏木部繊維製品を含んでもよい。また、石膏と、不ケン化性のろう、ケン化されたろう、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、および、カルボキシメチルセルロース成分を含有するろう成分と、を有する石膏製品がここに記載される。
【0010】
上記および他の特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
石膏ボード、および、石膏繊維混合物、ガラス繊維を充填した石膏製品、石膏木部繊維製品等のような石膏を用いた混合物など(まとめて「石膏製品」という)を含む石膏製品の製造では、ここで述べるように、このような製品に耐水性(疎水性)を付与するため、エマルションが使用できる。そのようなエマルションを使用するとき、そのようなエマルションを使用しない製品と比べて、そのようなエマルションを使用する製品で得られる最大吸収量が減少する、すなわち、エマルションが製品の耐水特性を改善する。石膏製品の耐水性の改善によって、これらのエマルションは、寸法の不安定さ(ふくらみ)、機械的強度の損失、および、生分解を引き起こすことを含む、吸水による製品に有害な影響を改善する。エマルションは、それ自体は撥水剤ではない、難燃剤および防腐剤のような任意の添加剤の担い手としても作用するだろう。
【0012】
石膏製品の製造方法は、一般に、石膏と最終製品の他の成分を含む石膏含有スラリーを準備する工程と、スラリーから水を除去し、成形・乾燥して、残った固形分を望ましい形状にする工程を有する。石膏製品の製造において、石膏は、紙基材上に流せるスラリーとなる。スラリー/基材の組み合わせは、連続工程でローラーの間を通過する際、ある大きさにされる。ある大きさにされると同時に、裏紙が、ある大きさにされたスラリー石膏スラリーの上に配置される。したがって、石膏スラリーは、適切な大きさにされた石膏ボードを製造するのに充分な流動性が維持されるべきである。流動性は、石膏スラリーが流れる能力を示す。
【0013】
石膏ボードの製造では、石膏スラリーが限られた範囲で泡立ちやすいことも重要である。起泡性は、この泡立ち能力を示す。石膏スラリーと紙の基材が、ある大きさにするローラーを通過するとき、一定の流量の石膏が、このローラーに供給されるように、石膏スラリーのある量が逆流し、ローラーの間に溜まることが必要である。起泡性は、ローラーの間で逆流するこの能力にとって重要である。主要なロールを使用せず、成形板を使用してもよいが、泡は、最終製品の密度の調整に重要である。
【0014】
石膏ボードの製造は、石膏スラリーが基材の上に流れ、そして、ある大きさにするローラーを通過する連続製造工程である。このため、ある大きさにされた後の石膏スラリーの流入量の範囲は、石膏ボードの最終製品の寸法を整備する限界である。スラリーがある大きさにされてから石膏スラリーの流れが止まるまでの時間は、硬化前の時間となる。このため、硬化前の時間は、石膏スラリーの重要な特性である。石膏スラリーの硬化時間も重要な特性である。石膏スラリーの硬化時間は、固体の石膏ボードの完成のために、加熱下で石膏スラリーを乾燥させる時間となる。よく知られているように、連続的な石膏ボードの生産工程では、石膏スラリーが一貫した硬化時間を維持することは重要である。
【0015】
石膏ボードの製造とは異なり、GWP製品の製造は、通常の製紙工程を通して促進される。希釈された様々な繊維系材料の水性分散液をフェルト化する工程は、多くの紙およびボード製品のよく知られている量産製造工程である。この工程では、希望や必要に応じて、繊維、接合剤、および、他の成分の水性分散液は、水切りのため、長網抄紙機またはオリバー抄紙機の網のような、移動している多孔質の支持抄網上に流される。分散液は、まず重力によって水切りされ、つぎに真空吸引手段によって水切りされ、そして、加えられた水を除去するために、湿ったマットがロールと支持抄網の間で指定された厚さに押圧される。押圧されたマットは、加熱下で、または、空気乾燥炉によって乾燥される。石膏木部繊維製品の製造は、最初のマットの形成、および、後の連続する真空ベルトローラーを通じて圧縮し脱水するための真空網に石膏木部繊維スラリーを分配し、最終的な脱水を行う炉に入れる湿部のヘッドボックスの分配機構を使用して、同様に行われる。エマルションの添加は、ろうの被覆または真空ベルト上での漏出を起こさない。本発明の石膏木部繊維は、紙面と裏紙が組み込まれず、むしろ、現在入手できる通常の外装として使われ、類似の性能を持つ紙がない芯である。
【0016】
ここに記載するエマルションは、石膏製品を製造するために使用される石膏含有スラリーに組み入れることによって、石膏製品(石膏ボード、石膏木部繊維製品等)の製造に使用される。このようなエマルションは、不ケン化性のろう、ケン化されたろう(ケン化性のろうとケン化剤とを反応させることによって、エマルションを調製している間に作製してもよい)、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分、および、水を有する。米国特許第6,663,707号に記載されたエマルションとは対照的に、このエマルションは、複合化デンプンのようなデンプン、ならびに/または、リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸ナトリウム、および/もしくは、リン酸三ナトリウムのような共通の界面活性剤が任意に含まれない。このエマルションは、典型的には、最終製品に含まれるろうの約1.5重量%(wt%)から約3wt%となるような設計量で加えられる。スラリーがエマルションを壊すと思われる工程では、エマルションがろうを放出してろうが製品の表面に移動し、耐水特性が発現する。水は生物活性を付与する主体なので、このエマルションの使用によって、殺生剤を必要とせずに、石膏製品の生物活性が減り、また、ある場合ではなくなるだろう。しかし、ここに記載するエマルションは、生物活性、すなわち、カビ、白カビ、細菌等の繁殖のような生分解の抑制に大きな影響を与える量で、石膏製品に防腐剤を染み込ませるための補助となる。
【0017】
ここに記載したエマルションは、不ケン化性のろうとケン化されたろうを含有するろう成分を有する。不ケン化性のろうは、約120°F(約49℃)より高い、例えば、約120°Fから約165°F(約49℃から約74℃)、さらに約120°Fから約150°F(約49℃から約66℃)、好ましくは約135°Fから約145°F(約57℃から約63℃)の融点を持つ。(ここに記載した全領域が、含められ、組み合わせられ、例えば、「約120°から約165°F、さらに135°から145°F」の範囲は、例えば、約120°から約145°F、約130°から150°Fなどを含む、境界点と、この範囲の全部の値、および、これらの組み合わせが含まれる。) 好適な不ケン化性のろうは、パラフィンろう、粗ろう、および、発汗ろうを含む。このようなろうは、標準的な熱重量分析の間に約10%未満の重量損失が現れる低揮発性なものとして市場で知られている。また、これらのろうの油分含有量は、典型的には重量で約5%未満、好ましくは重量で約1%未満である。これらのろうのいくつかは、平均の鎖長が、炭素鎖の長さが36であるC36かそれより大きな比較的高分子からなる。パラフィンろうは、典型的には軽い潤滑油の蒸留液から得られ、主に、平均で20から30の炭素原子の鎖長を有する直鎖炭化水素である。好適なパラフィンろうは、ジョージア州ダルースのハニーウェル/アスターから入手できるWax 3816を含む。粗ろうは、3wt%から50wt%の油分含有量の石油ろうである。好適な粗ろうは、Exxon 600 Slack WaxおよびAshland 200 Slack Wax、ならびに、Exxon 600 Slack Waxが50部とAshland 200 Slack Waxが50部の組み合わせを含む。
【0018】
好適なケン化性のろうは、酸価またはケン化価、および、約180°F(約82℃)より高い融点を有する。ケン化性のろうは、石炭の液化状態から得られるろう、植物ろう、および、粗ろう、発汗ろう、もしくは、原油を加工および/または精製して得られる酸化されたろうを含む。例えば、ケン化性のろうは、モンタンろう、カルナバろう、みつろう、ベーベリろう、カンデリラろう、ヒマ種ろう、エスパルトろう、木ろう、オーリカリー(ouricury)ろう、レタモセリミンビ(retamo−ceri mimbi)ろう、セラック、鯨ろう、サトウキビろう、羊毛ろう、および、その他のろうを含む。有用なケン化性のろうの一例は、約190°から約200°F(約88°から約93℃)の融点を持つモンタンろうである。このようなろうのケン化は、ろうを、ケン化剤、すなわち、水酸化アンモニウム、または、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物のような強塩基材料と組み合わせることによって起こる。ろうをケン化するのに必要なケン化剤の量は、ろうのケン化価に基づいて算出できる。例えば、1000で割ったケン化価は、ろう1グラム当たりに加える水酸化カリウムのグラム量と等しい。
【0019】
好ましくは、ろうは、不純物として約5%(重量で)を超える極性化合物を含まない。
【0020】
ろう成分は、エマルションの総重量に対して、重量で約25パーセント(wt%)から約50wt%、好ましくは約30wt%から約40wt%存在してもよい。好ましくは、ろう成分は、約120°F以上の融点を有する不ケン化性のろうとケン化性のろうとの組み合わせを有する。不ケン化性のろうは、エマルションの総重量の約25wt%から約44wt%を占め、ケン化性のろうは、エマルションの総重量の約0.5wt%から約5wt%を占めてもよい。ろうの好ましい組み合わせは、第1のろうとしてHoneywell 3816のようなパラフィンろうと、モンタンろうのようなケン化性のろうとの組み合わせである。ある実施の形態では、ろう成分は、エマルションの総重量に対して、約25wt%から約45wt%、好ましくは約30wt%から約40wt%のパラフィンろうと、約2.5wt%から約5wt%、好ましくは約3.5wt%から約4.5wt%のケン化性のろうとを有する。
【0021】
強塩基化合物は、ケン化性のろうをケン化するためにエマルション混合物に加えられる。ケン化剤は、例えば、水酸化アンモニウム、または、例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムのアルカリ金属の水酸化物を有する。アルカリ金属の水酸化物は、重量で約45%のアルカリ金属の水酸化物を含む濃縮された水溶液中から供給してもよい。水酸化アンモニウムは、固体状態で供給してもよい。いくつかのまたは全てのケン化剤は、分散剤および/またはエマルションの他の成分とそのまま反応する。水酸化アンモニウムは、それが放つアンモニア臭のためときどき嫌がれるが、ろうのケン化に加えると、アンモニアが、エマルションと共に使用する樹脂中のホルムアルデヒドの脱除剤として作用し、最終的な複合製品からのホルムアルデヒドの放出を減らせるので、水酸化アンモニウムは、有利と思われる。また、水酸化アンモニウムとホルムアルデヒドの組み合わせは、水酸化アンモニウムの臭いを改善するので、ある実施の形態では、この目的のために、例えば重量で約0.02から約0.1%の量のホルムアルデヒドをエマルションに加えてもよい。さらに、水酸化アンモニウムは、エマルションを北方の木種、すなわち、ベイマツやヤマナラシなどを含むリグノセルロース材と共に使用するときに、特に有利である。
【0022】
ケン化剤は、重量で、エマルションの約0.15%から約4.5%、さらに約0.5%から約3%の量を供給できる。さらに、濃縮された水性ケン化剤は、エマルションの重量の約0.5から約3%の量を供給でき、水酸化アンモニウムは、固体状態で、エマルションの重量の約0.15から約3%の量を添加できる。使用するケン化性のろうまたは木の類型に応じてケン化剤の量を変えてもよい。ケン化剤の結果として、ここに記載したエマルションは、約8.5から約12.5のpH、例えば、約8.5から約9.5のpHを有するだろう。
【0023】
これらのエマルションに有用な典型的なカルボキシメチルセルロース材は、約20個から約50個の炭素分の炭素鎖の長さの分子を有する。好適なカルボキシメチルセルロースの例は、ペンシルバニア州サマーセットのペン・カーボーズから、炭素鎖の長さが約26から30個の炭素分を有すると言われている取引名LT−30として入手できるカルボキシメチルセルロースナトリウムである。他の好適なカルボキシメチルセルロース材は、ペン・カーボーズ社のLT−20およびLT−42を含む。ここで、カルボキシメチルセルロース、および、これとケン化剤またはエマルション中の他の成分との反応生成物を、「カルボキシメチルセルロース成分」という。
【0024】
ポリナフタレンスルホン酸の塩は、ここに記載したエマルションに有用であり、理論による拘束を望まなければ、分散剤/界面活性剤として作用すると思われる。この塩は、その状態で、ポリナフタレンスルホン酸と、例えばアルカリ金属の水酸化物のケン化剤とを反応させて製造してもよい。ある市販されているポリナフタレンスルホン酸は、カナダのケベック州モントリオールのハンディ・ケミカルから入手されるDISAL GPSである。酸と酸の塩は、まとめて、ポリナフタレンスルホン酸成分、または、より広義に(置換材料を含むため)分散剤/界面活性剤という。分散剤/界面活性剤は、重量でエマルションの約0.1%から約5%、さらに約0.25wt%から約5wt%含んでもよい。
【0025】
エマルションにアルキルフェノールを加えることは、最終的なリグノセルロース複合材における低吸水率の達成を促進した。ここで使用する「アルキルフェノール」は、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を示す。長鎖アルキル基は、直鎖構造であっても分枝構造であってもよい。長鎖アルキル基は、例えばC24からC34、好ましくはC24からC28のC20からC42(20から42個の炭素鎖の長さ)であってもよい。このようなアルキルフェノールは、重合されたメチレンが結合したアルキルフェノール、フェナート塩、カルシウムフェナート、分枝した長鎖のカルシウムアルキルフェノール、直鎖の長鎖のカルシウムアルキルフェノール、ならびに、アミン基で置換されているおよび置換されていないマレイン酸の重合体の複合体を含む。長鎖のアルキル基は、例えば、ポリエチレン基、ポリプロピレン基、または、ポリブチレン基のような高分子基であってもよい。アルキル置換基は、市販の材料によくあることだが、異なる鎖長の混合物であってもよい。好ましくは、アルキル部の平均の炭素鎖の長さが適合する、すなわち、カルボキシメチルセルロースの平均の炭素鎖の長さとほぼ同じか近いように、アルキルフェノールが選択される。例えば、平均の鎖長がおよそC24からおよそC34の範囲であるアルキルフェノールは、約26から約32個の炭素分の平均の鎖長、例えば、カーボーズLT−30のカルボキシメチルセルロースを含むエマルションに使用できる。
【0026】
例えば、C26のアルキル基が、C26のアルケン、好ましくは、1−アルケンから、C34のアルキル基が、C34のアルケンから、および、混合した長さの基が、対応する混合したオレフィンから派生するように、アルキルフェノールのアルキル基は、対応するオレフィンから派生することができる。しかしながら、アルキル基が、少なくとも約30の炭素原子を有するアルキル基であるとき、それは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、および、1−オクテンのように2から10個の炭素原子を有するモノオレフィン、および、ジオレフィンの単独重合体、または、共重合体(例えば、コポリマー、ターポリマー)から造られる脂肪族の基(またはそのような基の混合物)であってもよい。脂肪族炭化水素基も、そのような単独重合体、または、共重合体のハロゲン化(例えば、塩化もしくは臭化)物から派生することができる。しかしながら、このような基は、高分子量のアルケン(例えば、1−テトラコンテン)の単量体、それらの塩化物と塩化水素物、脂肪族の石油留分、特にパラフィンろう、それらの分解物および塩化物、それらの塩化水素化物、ホワイトオイル、チグラ−ナッタ反応(例えば、ポリ(エチレン)グリース)により造られた合成アルケン、および、当業者が知る他の出発物質のような他の出所から派生することもできる。炭化水素基の不飽和部は、望むなら公知の手法によって水素化して、減少または消滅させることができる。塩素または他のハロゲンがほとんどない方法および材料による調製品は、環境的な理由からときどき好ましい。
【0027】
芳香族の各芳香核には、1より大きい、しかし、通常2または3を超えないアルキル基が存在する。もっとも典型的には、1つの芳香部につき炭化水素基が1つだけ存在し、特に、炭化水素置換されたフェノールは、1つのベンゼン環に基づいている。
【0028】
ここで、アルキルフェノール、および、アルキルフェノールとケン化剤もしくはエマルション中の他の成分との反応生成物を、アルキルフェノール成分という。
【0029】
エマルション中のアルキルフェノール成分の量は、エマルションの総重量に対して、約0.25wt%から約10wt%、さらに約0.5%から約2.5%である。
【0030】
本発明の混合物に有用なアルキルフェノール成分の一例は、オハイオ州ウィクリフのラブリゾール化学社から、C24からC34に重合したメチレン基と結合したアルキルフェノールとされている取引名319Hとして市場で入手できる。これらのエマルションに使用でき、市販されている様々な他のアルキルフェノールは、以下を含む(以下の表1では、任意の識別番号によって識別されている)。
【表1】

【0031】
ここに記載したエマルションのある製造方法は、時間、エネルギー、操作者、および、製造効率を生みだす。この方法は、1つの容器内でエマルションの成分を混合し、以下のような状態でホモジナイザーの混合物を運搬する工程を含む。この方法の利点は、1つの容器内でエマルション混合物が調製されることであり、エマルションの成分の部分的な混合物を分かれた容器内で調製する、および、分けて保存する必要がない。
【0032】
「1つの容器」の方法のある実施の形態では、不ケン化性のろう(例えば、以下で詳細に記載される3816ろう)は、融かされて、例えば、融点より約10°F高い融けた状態で保存され、ろうが固まらないようにその温度で水が供給される。そして、容器は、以下に説明する方法で満たされる。
a.融けた不ケン化性のろう、例えば、3816ろうを、約189°Fから約192°F(約87℃から約89℃)の温度の下で満たし、
b.加熱および撹拌を開始し、
c.撹拌を続けながら、融けたケン化性のろうとアルキルフェノールを満たし、
d.水の大半、例えば、95%を満たし、撹拌を続け、
e.分散剤/界面活性剤(例えば、この中のどこかほかに詳しく記載されているDISALポリナフタレンスルホン酸)、カルボシキメチルセルロース、および、ケン化剤を満たし、
f.残りの水−好ましくは、算定され総量から差し引いた、管をすすぐのに使用した水を含んだものを満たし、
g.容器の温度を、例えば、約190°Fから約210°F(約88℃から約100℃)に上昇させ、
h.温度を維持しながら、約30から約150分間撹拌し続け、
i.約1500から約3500PSI(約10メガパスカル(MPa)から約24MPa)の下、ホモジナイザーをつなぎ、
j.ホモジナイザーから周囲の温度に向かう出口温度の間の第1の発熱と、周囲(保存)温度に向かう第2の発熱を含む2つの発熱が起こる工程で適宜冷却する。例えば、エマルションの組成がホモジナイザーから冷却器に進行し、任意の撹拌下で、例えば、ホモジナイザーの出口温度より約10°Fから約20°F低い第1の発熱が起こり、そして、冷却タンクに向かって、例えば、更に5°Fから約15°F低い第2の発熱が起こる。ある実施の形態では、約130°Fから約110°Fに冷却することによって第1の発熱が起こり、約110°Fから約70°Fに冷却することによって第2の発熱が起こる。
【0033】
何の特別な理論による拘束を望まなければ、2つの発熱を冷やす工程によって、エマルションの形成の過程の段階は、完成に向けて進んでいる。その結果、エマルションの粘度が徐々により安定し、1つの発熱を冷やす工程を用いる場合と比べて、振動するに従って、エマルションが安定する。エマルションの調製の他の方法では、融けたろうとアルキルフェノールを含む第1の予備混合物を調整するとき、ならびに、水、カルボキシメチルセルロースおよびポリナフタレンスルホン酸、ケン化剤を含む第2の予備混合物(水性の予備混合物)を調整するときに、バッチ処理が使用され、そして、第1および第2の予備混合物を、少なくともろうがケン化されるのに充分な時間、例えば、1から3時間、混合タンクで混ぜ、そして、得られた混合物は、ホモジナイザーに進み上述のように冷やされる。
【0034】
ここに記載されたエマルションのいくつかの実施の形態の成分の範囲の実例を、以下の表2に示す。
【表2】

【0035】
以下の表3は、ここに記載されたエマルションの特定の実施の形態における成分の割合の例を示す。
【表3】

【0036】
ここに記載されたエマルションは、B型粘度計で測定すると約10から約100センチポイズの粘度を有するだろう。あるエマルションの実例では、約40%の固形物で9cpsの粘度だった。安定性と確実な性能と起泡性を欠くことは、これらのエマルションの受け入れをさらに促進する。例えば、あるエマルションの実例では、料理用ミキサーで4分間撹拌した後でも、全く変化しなかった。これらのエマルションのいくつかの実施の形態では、生物活性に寄与しないことが実証された。
【0037】
一連の実施例のエマルションは、以下の共通の成分で製造された。すなわち、33%の不ケン化性のろう、3%のモンタンろう、0.5%のアルキルフェノール、2%のポリナフタレンスルホン酸(または、注釈のあるものは2.5%)、0.5%のカルボキシメチルセルロースである。各種のエマルションは、以下の表4に示す量のケン化剤、不ケン化性のろう、および、添加剤と共に、残部の水と製造された。表4の実施例は、上述のバッチ処理を用いて調製された。エマルションBとEは、水性の予備混合物にホルムアルデヒドが含まれていたことを示し、エマルションC、F、G、H、および、Iは、他の成分からエマルションが作製された後に、エマルションにホルムアルデヒドが加えられたことを示した。
【表4】

【0038】
エマルションGは、2.5%のポリナフタレンスルホン酸を含む。
【0039】
iiProwax 561と321は、エクソンモービル社から市場で入手できる硬いパラフィンろうである。
【0040】
ここに記載されたエマルションの石膏ボード中での効用は、以下に示す。
【0041】
実験例のスラリーは、50グラムの石膏、35.97グラムの水、および、1.92グラムの表4に示すエマルションを混合して製造した。対照標準のスラリーはエマルションを加えなかった。石膏と水と、もし添加されていたら、エマルションとは、一緒に混合し、1分間放置した。そして、この混合物を更に30秒間混合した。この第2の混合の後、実験例のスラリーは流動性試験に供せられた。
【0042】
実験例のスラリーは、平らな表面に注がれ、得られたパティの直径(「スランプ寸法」)を測定した。パティの直径は、実験例の流動性の指標である。直径が大きいほど実施例の流動性が高い。結果を以下の表5に示すが、表5中の実験例のスラリーは、それに含まれるエマルションによって識別される。
【0043】
起泡性試験は、ろうエマルションの石膏スラリー中での泡の安定性への影響を測定するために用いられる。試験では、0.60グラムの市販の起泡剤と、2グラムのろうエマルションが量り分けられる。起泡剤とエマルションは、100グラムの水と共に混合器に入れられ、20秒間混合される。この混合工程が終わると、泡は、直ちに混合カップから測量された150mlビーカーにオーバーフローするように流れ出る。過剰分は、ビーカーからこぼれる。混合カップに残った泡は、無視する。150mlビーカーの泡の重量を測って、泡密度を決める。混合を止めてから2分後、混合カップに残った泡の中の液体は、排出され捨てられる。第2の泡密度は、まさしく記載されたように測定される。表4のエマルションを含むスラリーは、適切な(すなわち、対照標準と比べて優れる)泡密度を生じ、20秒時点の測定で約40から約65グラム毎150ml、2分時点の測定で約10から約45グラム毎150mlの範囲だった。
【0044】
流動性試験で作製されたパティは、110°F(43.3℃)で少なくとも24時間乾燥させた。この時間が終わると、パティの重量を測定し、その重量を記録した。そして、乾燥したパティを2時間水に浸した。2時間の浸漬後のパティの重量を測定し、その湿重量を記録した。そして、残留水分の百分率を、これらの異なる2種類の重量に基づいて算出した。この結果を以下の表5に示すが、表5中の実験例のスラリーは、それに含まれるエマルションによって識別される。
【表5】

【0045】
表5のデータから分かるように、実験例のスラリーは、全て対照標準より流動性を示し、全て充分な流動性であった。さらに、ろうエマルションと共に製造された石膏製品の吸水量は、ろうエマルションなしで製造された対象標準の石膏製品の35%の吸水率から、かなり減少した。
【0046】
石膏木部製品の製造方法のある実施の形態は、
(a)約95部から約50部の木部繊維(重量で)と、約5部から約50部の石膏と、約1部から約3部のエマルションと、残部の水とを含むスラリーを混合する工程、
(b)マットを形成するための真空網にスラリーを分散させる工程、
(c)工程(b)のマットを部分的に乾燥させる工程、
(d)連続する真空ベルトローラーを通して、工程(c)のマットを圧縮する工程、
(e)工程(d)の圧縮されたマットを炉内で乾燥させる工程、
を有する。
【0047】
スラリー中の水の量は、マットを形成するための真空網へのスラリーの堆積を促進するために十分な量である。各種の石膏木部繊維製品は、この方法、しかしこれには限定されないに方法よって、壁板および外装にしてもよい。
【0048】
これらの水中のろうエマルションは、石膏製品の製造に必要なスラリーの特性、すなわち、流動性、起泡性、硬化時間などに悪影響を与えずに、石膏スラリーに加えられる。任意の実施の形態において、分散助剤または流動性変更剤は、石膏/エマルションの混合物の流動性の維持に有用である。このような分散剤は強い疎水性で、したがって、良好な脱泡剤である。このような分散剤の一例は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジル)、α−フェニル−ω−ヒドロキシスチレン化物である。
【0049】
ここに記載されたエマルションの使用によって、各種の石膏製品における水の取り込み、および、端と中央の隆起がかなり改善され、最終的な石膏製品の緩やかな保存の要求を許容し、約5wt%から約6wt%のろうが含まれる最終製品の耐水性に匹敵するために石膏製品に加えるろうまたはエマルション成分が、他のエマルションより少なくなる。使用する材料が少なくなるだけではなく、ろうをより多く含む石膏製品よりも、石膏製品からの揮発性排出物の排出が少なくなる。さらに、これらのエマルションは、酸と塩基の両性であり、そのため、広範囲なpH領域で安定となる。
【0050】
1以上の防腐剤、例えば、殺菌剤/殺カビ剤、殺白カビ剤、または、他の殺生剤は、エマルションまたは石膏含有スラリーに防腐剤を入れることによって、任意に石膏製品に含められる。石膏に適する防腐剤の一例は、3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオンを含むMETASOL D3TAとして市場で知られている殺菌剤/殺カビ剤である。METASOL D3TAは、テキサス州ヒューストンのオンド−ナルコから入手できる。殺白カビ剤は、ホルムアルデヒドを含む市販のいかなる殺白カビ剤を含められる。他の適切な殺生剤は、ビス−チオ−ベンセン、プロピコナゾール、および、酸化ビス(トリブチルスズ)を含む。これらの殺生剤または上述した他のものの1以上は、製品の重量に対して約0.0025%から約0.2%となるような量で、さらに、エマルションの重量に対して約0.1%から約2%となるような量で、石膏含有スラリーに任意に入れてもよい。
【0051】
石膏製品中のカビの増殖に抵抗するために吸収された防腐剤(殺白カビ剤、殺カビ剤など)を維持するのに役立つここに記載したエマルションの性能を上げるため、連続で石膏製品が調製され、ASTM D3273に記載された手順と一致する試験が行われた。エマルションG(表4)の複製に寄与するエマルション、すなわち、2.5%に代えて0.1%のホルムアルデヒドを用いることによってエマルションGとは異なるエマルション、ホルムアルデヒドをなくすことによってエマルションGとは異なるエマルションを用いて、別々の石膏板を調製した。さらに、これらのエマルションの様々な例と共に、0.2wt%、0.5wt%、0.75wt%、および、1wt%の量で、プロピコナゾール、酸化ビス(トリブチルスズ)、または、METASOL D3TAを含む石膏パネルを製造した。短く換言すると、ASTM D32−73に記載された試験は、約50から75ミリメートルの深さに水を加えること、約46センチメートル(cm)×46cm×61cmの寸法のタンクを含む試験タンクを用意することを含む。容器は、32.5℃の温度で、95から98%の相対湿度に保たれる。更に、容器内の水の上に温室の鉢用の土のトレーを置くことによって、容器が試験用に準備され、トレーに黒酵母(Aureobasidium pullulans)、黒麹カビ(Aspergillus niger)、および、青カビ(Penicillium)を培養した土を入れる。カビによって、胞子が生産され、約2週間で容器が平衡となる。そして、入れられた土の上方の約75ミリメートルの位置に底部がくるように、試験パネルを容器内に吊るす。パネルの表面のカビの繁殖を、4週間に渡って毎週記録した。このような試験では、もしもパネルがカビの繁殖を助けているならば、通常のカビの繁殖は、2から3週間以内に明らかとなる。試験期間の最初の2週間後、カビの繁殖の跡を示す試験例はない。このことは、ここに記載されたエマルションによって付与された耐水性が、カビまたは他の生物の繁殖をかなり抑制することを示している。殺生防腐剤を含む試験例は、殺生防腐剤を含まない試験例よりも長期間にわたって、生物の繁殖を妨害することが期待される。
【0052】
ここに記載されたエマルションと共に石膏製品に入れてもよい好適な防腐剤は、無機物または有機物とすることができ、例えば、殺菌剤、殺カビ剤、および、これらの組み合わせのような殺生剤を含んでもよい。殺生剤は、(1)目標とする生体、(2)溶解性、(3)温度およびpH、ならびに、石膏製品の製造工程での他の条件に応じて選択してもよい。殺生剤は、カビ、白カビ、ぬめり、菌類、細菌などの微生物の繁殖を止めるまたは抑制する物質を含む。殺菌剤は、菌類の繁殖を止めるまたは抑制する物質を含む。殺生剤のより特殊な例は、炭化水素の塩化物、有機金属、ハロゲン放出化合物、金属塩、有機硫黄化合物、および、フェノール類を含むが、これらには限定されない。
【0053】
安定な殺菌剤は、例えば、ジメチルジチオカルバミド酸亜鉛、2−メチル−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−チアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、チオシアン酸銅、N−(フロロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−フロロジクロロメチルチオスルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシドの銅、ナトリウム、および、亜鉛の塩、二硫化テトラメチルチウラム、2,4,6−トリクロロフェニル−マレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、二ヨウ化メチルp−トリルスルホン、二塩化フェニル(ビスピリジル)ビスマス、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、ピリジントリフェニルホウ素、フェニルアミド、ハロゲン化プロパルギル化合物、プロピコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾール、および、2−ハロゲン化アルコシキアリル−3−イソチアゾロン(2−(4−トリフロロ−メトキシフェニル)−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフロロメトキシ−フェニル)−5−クロロ−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフロロメトキシフェニル)−4,5−ジクロロ−3−イソチアゾロンなど)、ならびに、前述の殺菌剤の1以上を含む組み合わせを含む。
【0054】
殺菌剤は、例えば、フェルバム、ジラム、マネブ(エチレンビスジチオ−カルバミド酸マンガン)、マンコゼブ、ジネブ(エチレンビスジチオカルバミド酸亜鉛)、プロピネブ、メタム、チラム、ジネブと二硫化ポリエチレンチウラムの複合体、ダゾメット、これらの銅の塩の混合物のようなジチオカルバミド酸および誘導体、ディノカップ、ビナパクリル、および、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェニルイソプロピルカーボネートのようなニトロフェノール誘導体、ホルペトカプタン、グリオジン、ジチアノン、チオキノックス、ベノミル、チアベンダゾール、ビノロゾリン、イプロジオン、プロシミドン、トリアジメノール、トリアジメフォン、ビタータノール、フロロイミド、トリアリモル、シクロヘキシミド、エチリモル、ドデモルフ、ジエトモルフ、チフルズアミド、および、キノメチオネートのような複素環構造、クロラニル、ジクローン、クロロネブ、トリカンバ、ジクロラン、および、ポリ塩化ニトロベンゼンのような他のハロゲン化殺菌剤、ジフェニルスルホン、ドジン、メトキシル、1−チオシアノ−2,4−ジニトロベンゼン、1−フェニル−チオセミカルバミド、チオファネート−メチル、シモクサニルのような他のハロゲン化殺菌剤、フララクシル、シプロフラム、オフレース、ベナラキシル、および、オキサジクシルのようなアシルアラニン、フルアジナム、フルメトーバー、EP578,586−Aに開示されているようなフェニルベンゾアミド誘導体、EP550,788−Aに開示されているバリン誘導体のようなアミノ酸誘導体、メチル(E)−2−(2−(6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル)−3−メトキシアクリレート、ベンゾ(1,2,3)チアジアゾール−7−カルボチオニック酸S−メチルエステル、プロパモカーブ、イマザリル、カルベンダジム、ミクロブタニル、フェンブ−コナゾール、トリデモーフ、ピラゾフォス、フェナリモル、フェンピクロニル、ピリメタニル、および、前述の殺菌剤の1以上を含む組み合わせのようなアクリル酸メトキシのような農業用の殺菌剤であってもよい。
【0055】
殺生防腐剤に加えて、ホウ砂/ホウ酸、グアニル尿素リン酸−ホウ酸、ジシアンジアミドリン酸ホルムアルデヒド、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチルリン酸、および、前述の添加剤の1以上を含む組み合わせのような難燃性薬品で石膏背品を処理することが望ましい。これらの難燃剤は、例えば、ポリビニルピリジンまたはポリ塩化ビニルから形成されたナノ粒子に、容易に組み込める。望ましい特性を与え、混合物に添加してもよい他の添加剤は、撥水剤、着色剤、UV防止剤、触媒固着剤、および、前述の添加剤の1以上を含む組み合わせを含む。
【0056】
いくつかの実施の形態および本発明の最良の形態がここに記載されているが、これらの実施の形態は、単なる説明に過ぎない。発明の趣旨および請求の範囲の意図に反しない変更ができることは、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏と、水と、不ケン化性のろう、ケン化されたろう、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分、および、水を含有するろう成分を含むエマルションと、からスラリーを形成する工程と、
前記スラリーを固体製品に成形する工程と、
を有することを特徴とする石膏製品の製造方法。
【請求項2】
前記ろう成分は、重量で、前記エマルションの約25%から約50%含まれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ろう成分は、重量で、前記エマルションの約30%から約40%含まれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記不ケン化性のろうは、粗ろう、発汗ろう、パラフィンろう、または、これらの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ケン化されたろうは、ケン化性のろうを、水酸化アンモニウム、アルカリ金属の水酸化物、または、これらの組み合わせと反応させて製造されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
ケン化性のろうを水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと反応させて製造される、ケン化されたろうを有することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
ケン化性のろうを水酸化アンモニウムと反応させて製造される、ケン化されたろうを有することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記アルキルフェノール成分は、C20からC42のアルキル基を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記アルキルフェノール成分は、C24からC34のアルキル基を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記アルキルフェノール成分は、C24からC28のアルキル基を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記分散剤/界面活性剤は、ポリナフタレンスルホン酸塩を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記アルキルフェノール成分は、炭素鎖の長さの平均がカルボキシメチルセルロースの炭素鎖の長さに相当するアルキル基を備えるアルキルフェノールを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記不ケン化性のろうは、重量で、前記エマルションの約33%から約35%含まれ、
前記ケン化されたろうは、重量で、前記エマルションの約3%から約5%含まれ、
前記アルキルフェノール成分は、重量で、前記エマルションの約0.5%から約2.5%含まれ、
前記分散剤/界面活性剤は、重量で、前記エマルションの約0.5%から約2%含まれ、
前記カルボキシメチルセルロース成分は、重量で、前記エマルションの約0.2%から約5%含まれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記ケン化されたろうは、ケン化性のろうを、水酸化アンモニウム、および、さらに重量で約0.5%のホルムアルデヒドと反応させて製造されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記石膏製品は、石膏ボードを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記スラリーは、リグノセルロース材と石膏の総重量の約50wt%から約95wt%のリグノセルロース材をさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記石膏製品は、石膏ボードを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーは、リグノセルロース材と石膏の総重量の約50wt%から約95wt%のリグノセルロース材をさらに有することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記石膏製品は、石膏木部繊維製品を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記エマルションは、最終製品の重量の約1.5wt%から約3wt%の量のろうを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記エマルションは、最終製品の重量の約1wt%から約3wt%の量のろうを有することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項22】
石膏と、水と、不ケン化性のろう、ケン化されたろう、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分、および、水を含有するろう成分を含むエマルションと、から製造されたスラリーから製造されることを特徴とする石膏製品。
【請求項23】
前記アルキルフェノール成分は、炭素鎖の長さの平均がカルボキシメチルセルロースの炭素鎖の長さに相当することを特徴とする請求項22記載の石膏製品。
【請求項24】
前記不ケン化性のろうは、重量で、前記エマルションの約33%から約35%含まれ、
前記ケン化されたろうは、重量で、前記エマルションの約3%から約5%含まれ、
前記アルキルフェノール成分は、重量で、前記エマルションの約0.5%から約2.5%含まれ、
前記分散剤/界面活性剤は、重量で、前記エマルションの約0.5%から約2%含まれ、
前記カルボキシメチルセルロース成分は、重量で、前記エマルションの約0.2%から約5%含まれることを特徴とする請求項23記載の石膏製品。
【請求項25】
前記アルキルフェノール成分は、炭素鎖の長さの平均がカルボキシメチルセルロースの炭素鎖の長さに相当するアルキル基を備えるアルキルフェノールを有することを特徴とする請求項24記載の石膏製品。
【請求項26】
防腐剤を更に有することを特徴とする請求項22記載の石膏製品。
【請求項27】
前記防腐剤は、重量で、前記製品の約0.0025%から約0.2%含まれることを特徴とする請求項26記載の石膏製品。
【請求項28】
前記エマルションは、重量で、約0.1%から約2%の防腐剤を有することを特徴とする請求項24記載の石膏製品。
【請求項29】
石膏と、不ケン化性のろう、ケン化されたろう、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、および、カルボキシメチルセルロース成分を含むろう成分と、を有することを特徴とする石膏製品。
【請求項30】
防腐剤を有することを特徴とする請求項26記載の石膏製品。
【請求項31】
リグノセルロース材と石膏の総重量の約50wt%から約95wt%のリグノセルロース材をさらに有することを特徴とする請求項26記載の石膏製品。
【請求項32】
前記スラリーは、前記製品の重量で、約0.0025wt%から約0.2wt%の量の防腐剤を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記エマルションは、重量で、約0.1%から約2%の防腐剤を有することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項34】
前記製品の重量で、約0.0025wt%から約0.2wt%の防腐剤を有することを特徴とする請求項29記載の石膏製品。


【公表番号】特表2006−526566(P2006−526566A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515169(P2006−515169)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/017627
【国際公開番号】WO2004/108625
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(596174400)ヘキソン スペシャルティ ケミカルズ インコーポレーテッド (20)
【住所又は居所原語表記】180 East Broad Street,Columbus,Ohio 43215,United States of America
【Fターム(参考)】