説明

石英ガラスシリンダー材料の製造方法及びその製造装置

【課題】低コストで種々の石英ガラスシリンダー材料を製造できるようにする。
【解決手段】炉1は、炉天井2、炉底3及び炉壁4から構成され、炉底3は支柱7に支持され、支柱7は、回転すると共に昇降可能としてあるので、炉底3は炉天井2に円形に配置された石英ガラス原料粉を溶融する熱源5に対して回転及び昇降可能である。石英ガラス原料粉が熱源5に供給され、溶融される。炉底3を熱源5に対して回転させながら降下させることによって溶融した石英ガラス原料粉は炉底3に円筒形状に積層して固化していき、円筒形の石英ガラスシリンダー材料8が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスシリンダー材料の製造方法及び製造装置に関し、特に半導体の製造工程で用いられる熱処理用炉芯管などを作製するための高純度石英ガラスシリンダー材料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石英ガラス製のリング材及び円筒状材料の製造方法は、石英ガラスインゴットから不要な領域をコアドリルで抜いたり、あるいは研削によって除去するものであった。
しかしながら、コア抜きまたは研削による製造方法によって得られるシリンダー材料は、インゴットの大きさに依存するもので、大型のものが得られず、また、インゴットから所望の形状にコアドリルなどで加工除去して最終的なシリンダー材料を得るため、最終的に得られるシリンダー材料の重量よりも多くの石英ガラスが除去されることから、大きなインゴットを必要とし、材料効率が低く、コストがかかっていた。
【0003】
こうした問題を解決するため、特許文献1(特開2002−97031号公報)では、炉内で溶融した石英ガラスを炉底部に設けたノズルを用いて溶融石英ガラスを引き下げ、要求する最終形状により近い概形とし、更に、その石英ガラスを研削などの機械加工を施して最終形状の石英ガラス製品を作製する技術が提案されている。
また、特許文献2(特開2004−59400号公報)では、高周波コイルによる誘導加熱発熱体の耐火性ヘッド上に石英ガラス原料粉末を供給して溶融し、石英ガラス溶融体を耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させ、この下端部を一定速度で回転しつつ降下する支持部材により引き下げる石英ガラス円筒体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−97031号公報
【特許文献2】特開2004−59400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のノズルによる溶融石英ガラスの引き下げ法は、ノズルや炉の耐火材が高価なため、製品コストを下げるために連続運転が要求され、大量に石英ガラスシリンダー材料を製作しなければならず、少量の生産にはコスト的に対応できなかった。また、製造する製品の形状に合わせてその都度ノズルや炉を変更する必要があり、製作する石英ガラスシリンダー材料の大きさや形状にも限度があった。
【0006】
特許文献2の耐火性ヘッドの外周縁から流下させながら固化させて石英ガラスシリンダー材料を製造する方法は、成形する石英ガラスシリンダー材料の内径が大きくなると、それに対応して耐火性ヘッドの外径を大きくしなければならず、耐火性ヘッド上に堆積された石英ガラス溶融体をバランス良く耐火性ヘッド外周縁から流下させることが困難となり、また、耐火性ヘッド自体を発熱体としているために炉体外周部に高周波加熱装置を設けなければならず、装置が大掛かりなものとなり、設備のためのコストがかかるという問題があった。
本発明は、このような従来技術の課題を解消し、少量多品種の石英ガラスシリンダー材料の製造を低コストで、また、大きさや形状の変更に対して柔軟に対応できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の石英ガラスシリンダー材料製造方法は、炉天井に石英ガラス原料粉を溶融する火炎バーナー等の熱源を円周上に配置し、石英ガラス原料粉を熱源で溶融しながら炉底を炉天井に設けた熱源に対して回転させて溶融した石英ガラス原料粉を炉底に落下させ、円形状に溶融石英ガラスを積層させ、熱源の焦点が溶融石英ガラス積層体の上面から一定距離となるように炉底を降下させて固化させ、円筒形の石英ガラス積層体として石英ガラスシリンダー材料を得るものである。
【0008】
また、本発明の石英ガラスシリンダー材料の製造装置は、炉天井に円形に配置した焦点を有する火炎バーナー等の熱源と、この熱源に対して炉底を水平に回転させる回転手段、及び昇降させる昇降手段と、石英ガラス原料粉を熱源に供給する原料供給手段とからなる石英ガラスシリンダー材料の製造装置である。
【0009】
石英ガラス原料粉を溶融する熱源としては、火炎バーナー、若しくは、プラズマトーチを使用することができる。
火炎バーナーとしては、酸水素火炎バーナー、または、プロパン火炎バーナー、若しくは炭化水素−酸素ガス火炎バーナー等が使用できる。
また、石英ガラス原料粉を溶融する熱源は、メイン熱源、若しくは、メイン熱源とサブ熱源の組み合わせから構成されており、いずれの熱源も、形成する石英ガラスシリンダー材料の円筒形の上部にその焦点を結ぶように炉の上部、具体的には炉天井に固定設置されているものである。
【0010】
プラズマトーチとしては、本願出願人の発明である特開平4−325425号、特開平7−126019号公報、及び特開平7−126034号に開示されているプラズマトーチを使用することができる。
製作される円筒形の石英ガラスシリンダー材料の円周上にプラズマアークのカップリング帯域が形成されるように、プラズマアノードトーチとプラズマカソードトーチからなるツインプラズマトーチを対称に炉天井に配置し、トーチ角度及び炉天井への挿入深さを調節できるようにして炉底との距離を微調整できるようにする。
プラズマアノードトーチとプラズマカソードトーチから生成されるプラズマアークにより円周上に形成されるプラズマアークカップリング領域に石英ガラス原料粉を連続的に供給し、カップリング帯域近傍を溶融部の頂点として円形状に石英ガラス原料粉を溶融して積層するものであり、前述の火炎バーナーと基本的には同じである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって任意の外径のリング材及びシリンダー形状の石英ガラスシリンダー材料を作製でき、外径400mm超の大口径のものを製造することが可能である。
本発明においては、従来使用されていた高価なノズルが不要であり、溶融石英ガラスが炉体に接触しない非接触式なので耐火材の寿命が長くなり、耐火材の交換の頻度を少なくできるので製造装置の維持費用を抑制することができ、大型リングや炉心管を低コストで製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】石英ガラスシリンダー製造装置の正面断面図。
【図2】石英ガラス原料粉を溶融する熱源の配置の概念図。
【図3】石英ガラス原料粉を溶融する熱源の他の配置の概念図。
【図4】製作例1の石英ガラスシリンダー材料の写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の石英ガラスシリンダー材料の製造装置を示す。
炉1は、炉天井2、炉底3及び炉壁4から構成されている。炉底3は耐火材で構成されており、更に耐火材粉が敷き詰めてあり、回転テーブル6によって回転可能としてある支柱7に支持されている。支柱7は、回転すると共に昇降可能としてあるので、炉底3は炉内において回転及び昇降自在である。
【0014】
炉天井2には、焦点を有する石英ガラス原料粉を溶融する熱源5、たとえば火炎バーナーが、図2及び図3に示すように製作される円筒形の石英ガラスシリンダー材料8の円周上に配置される。石英ガラス原料粉を溶融する熱源5は、焦点を有するものであればよく、火炎バーナーであれば、酸水素火炎バーナー、プロパン火炎バーナーのいずれでもよく、また、プラズマトーチも焦点を有する熱源として利用することができる。
【0015】
石英ガラス原料粉を溶融する熱源5は、石英ガラス原料粉が供給される原料供給部(図示しない)が付設されている。この原料供給部には石英ガラス原料粉を貯留するホッパー(図示しない)が接続されており、石英ガラス原料粉が連続的に石英ガラス原料粉を溶融する熱源5に供給される。石英ガラス原料粉が原料供給部において詰まるのを防止するため、振動装置(図示しない)が装備されており、常時、または必要に応じて振動装置が詰まり防止のため駆動される。
【0016】
石英ガラス原料粉を溶融する熱源5は、単独でも良いが、石英ガラス原料粉を均一に加熱溶融するために原料供給部を有する石英ガラス原料粉を溶融する熱源5を図2に示すように、メイン熱源51とし、製作する石英ガラスシリンダー材料の円周上に原料供給部を有しないサブ熱源52を複数配置することも可能である。サブ熱源52を円周上に複数個設置することによって、溶融堆積する石英ガラス原料粉の温度を一定に維持することが可能となり、製作する石英ガラスシリンダー材料の厚さの制御が容易となる。メイン熱源51を複数個とした場合は、それぞれに原料粉の詰まり防止のため振動装置を設置する。
【0017】
サブ熱源52は、特に大型の石英ガラスシリンダー材料の製造に有効であり、製品全体がバランス良く最適に加熱されるようにメイン熱源51と同様に製品の円筒形の外形に合致する円周上に設置するものであり、原料供給装置は付設されていない。
サブ熱源52は、石英ガラス原料粉の溶融状態を維持するために設けたものであり、作製する石英ガラスシリンダー材料の円周上に適宜の間隔で複数設置して石英ガラス原料粉の溶融と積層固化が円滑に行われるようにするものである。
【0018】
図3に示すようにメイン熱源51には、石英ガラス原料粉が供給されるが、常温で供給されるため溶融部の温度が低下し、石英ガラス原料粉の溶融積層が不均一になる恐れがあり、この場合には、メイン熱源51の前に予熱用としてしてサブ熱源52aを配置するのが好ましく、メイン熱源51から離れた位置のサブ熱源52bは、溶融状態を維持する保温用として機能することになる。
この装置において、製作する石英ガラスシリンダー材料8の外径及び内径に応じて石英ガラス原料粉の供給量と炉底3の回転速度を定め、溶融された石英ガラス原料粉が均一に積層固化するように炉底3の降下速度を定める。
【0019】
製作例1
酸水素火炎バーナーを石英ガラス原料粉を溶融するメイン熱源として使用して石英ガラス原料粉を溶融し、円筒状の石英ガラスシリンダー材料8を製作した。
石英ガラス原料粉が供給される原料供給装置を有するメインバーナー1本、サブバーナー3本を炉天井2に直径400mmの円周上に等間隔に配置した。
メインバーナーに水素を平均59m3/hr、酸素を平均29.5m3/hrでメインバーナー及びサブバーナーに均等に供給し、石英ガラス原料粉の平均フィード量1.0kg/hrでメインバーナーに供給した。
支柱7を0.07rpmで回転させることによって炉底3をメインバーナーに対して回転させると共に、炉底を下降速度9.9mm/hrで下降させたところ、外径約435mm×内径365mm×高さ200mmの石英ガラスシリンダー材料8を得た。得られた石英ガラスシリンダーを図4に示す。
【0020】
製作例2
プラズマトーチを石英ガラス原料粉を溶融する熱源として使用して石英ガラス原料粉を溶融し、円筒状の石英ガラスシリンダー材料8を製作した。
直径400mmの円形の円周上にプラズマアークのカップリング領域が生成されるように、アノードトーチとカソードトーチを対称的に配置し、ツインプラズマトーチの出力を100kwとした。石英ガラス原料粉の平均フィード量を4.2kg/hrとして、支柱7を1.00rpmで回転させると共に、下降速度12.0mm/hrで下降させたところ、外径約440mm×内径360mm×高さ200mmの石英ガラスシリンダー材料が得られた。
【0021】
以上に説明したように、本発明によれば、石英ガラスシリンダー材料を従来に比較して簡単な設備で製作することができる。
石英ガラス原料粉を溶融する熱源を円形に配置する際の直径、石英ガラス原料粉の供給量、また、石英ガラス原料粉を溶融する熱源への燃料またはエネルギーの供給量、炉底の回転速度、及び下降速度を適宜調整することによって石英ガラスシリンダー材料の外径と内径を調節することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 炉
2 炉天井
3 炉底
4 炉壁
5 熱源(火炎バーナー、プラズマトーチ)
51 メイン熱源(メインバーナー)
6 回転テーブル
7 支柱
8 石英ガラスシリンダー材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉天井に石英ガラス原料粉を溶融する焦点を有する熱源を円周上に配置し、この熱源で石英ガラス原料粉を溶融しながら炉底を熱源に対して回転させて溶融し、溶融した石英ガラス原料粉を炉底に落下させて円形状に溶融石英ガラスを積層させ、熱源の焦点が溶融石英ガラス積層体の上面から一定距離となるように炉底を降下させて固化させ、円筒形の石英ガラス積層体とする石英ガラスシリンダー材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、熱源が原料供給装置を有するメイン熱源単独、若しくは、メイン熱源とサブ熱源との組み合わせである石英ガラスシリンダー材料の製造方法。
【請求項3】
炉天井に円形に配置した焦点を有する熱源と、この熱源に対して炉底を回転させる回転手段及び昇降させる昇降手段と、石英ガラス原料粉を熱源に供給する原料供給手段とからなる石英ガラスシリンダー材料の製造装置。
【請求項4】
請求項3において、熱源の焦点が溶融積層された溶融石英ガラス積層体の上面位置となるように炉底の降下速度を制御する制御手段を有する石英ガラスシリンダー材料の製造装置。
【請求項5】
請求項3において、熱源が、火炎バーナーまたはプラズマトーチのいずれかである石英ガラスシリンダー材料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112540(P2013−112540A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257786(P2011−257786)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(390005072)東ソー・クォーツ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】