説明

石調布帛の製造方法および石調布帛および繊維製品

【課題】石調外観を呈する石調布帛の製造方法、および該製造方法により得られた石調布帛、および該石調布帛を用いてなる繊維製品を提供する。
【解決手段】島径が50〜1500nmの島成分と、海成分とからなり、かつ前記海成分が島成分よりも易染性または難染性である海島型複合繊維を用いて布帛を得て、該布帛に減量加工を施すことにより前記海成分を部分的に除去した後、染色加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石調外観を呈する石調布帛の製造方法、および該製造方法により得られた石調布帛、および該石調布帛を用いてなる繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合繊維を用いて新規外観を呈する布帛の提案が行われている。例えば、特許文献1では、芯鞘型複合繊維を用いて着古し外観を呈する繊維製品が提案されている。しかしながら、石調外観を呈する石調布帛はこれまであまり提案されていない。
【0003】
なお、ナノファイバーと称せられる超極細繊維を用いて、これまでの繊維では得ることのできなかった質感や機能を付与することは知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−264390号公報
【特許文献2】特開2000−207319号公報
【特許文献3】実用新案登録第2567438号公報
【特許文献4】特開2000−8252号公報
【特許文献5】特開2007−2364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、石調外観を呈する石調布帛の製造方法、および該製造方法により得られた石調布帛、および該石調布帛を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、島成分と海成分とで構成されかつ海成分が島成分よりも易染性または難染性である海島型複合繊維を用いて布帛を得た後、該布帛に減量加工を施すことにより、前記海成分を部分的に除去した後、該布帛に染色加工を施すことにより石調外観を呈する石調布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「島径が50〜1500nmの島成分と、海成分とからなり、かつ前記海成分が島成分よりも易染性または難染性である海島型複合繊維を用いて布帛を得て、該布帛に減量加工を施すことにより前記海成分を部分的に除去した後、染色加工を施すことを特徴とする石調布帛の製造方法。」が提供される。
【0008】
その際、前記島成分がポリエステルで形成されることが好ましい。かかるポリエステルがカチオン染料不染性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。一方、前記海成分が、カチオン染料可染性ポリエステル、ナイロン、およびレーヨンから選択されるいずれかで形成されることが好ましい。特に、前記カチオン染料可染性ポリエステルが、5-ナトリウムスルホン酸を6〜12モル%および分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、前記海島型複合繊維において、島成分の個数が200以上であることが好ましい。また、前記布帛が織物または編物であることが好ましい。また、前記減量加工がアルカリ減量加工であり、かつ減量率が5〜15%の範囲内であることが好ましい。また、前記染色加工の際に分散染料とカチオン染料とを用いることが好ましい。また、前記染色加工を施した布帛に、アルカリ洗浄液を用いて洗浄処理を施すことが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記に記載された製造方法により得られた石調布帛が提供される。また、本発明によれば、前記の石調布帛を用いてなる、カーテン、衣料、椅子被覆材、カーシート、および傘地からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、石調外観を呈する石調布帛の製造方法、および該製造方法により得られた石調布帛、および該石調布帛を用いてなる繊維製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、島径が50〜1500nmの島成分と、海成分とからなり、かつ前記海成分が島成分よりも易染性または難染性である海島型複合繊維を用意する。
【0012】
ここで、前記島成分の島径が50〜1500nm(好ましくは100〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)の範囲内であることが肝要である。該島径が50nm未満では、島を多数並べる為の口金設計が極めて困難であり操業性に乏しくなるおそれがある。逆に、該島径が1500nmを越える場合には、本発明の主目的である石調外観を呈する布帛が得られないおそれがあり好ましくない。島の形状が丸断面以外の異型断面である場合には、前記の島径は外接円の直径を島径とする。なお、かかる島径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0013】
前記海島型複合繊維において、海成分が島成分よりも易染性または難染性(好ましくは易染性)であることが肝要である。このように、海成分と島成分とが染色性を異にすることにより、後記のように海成分を部分的に除去することで石調外観を呈する布帛が得られる。
【0014】
前記島成分を形成するポリマーとしては、機械的強度や耐熱性の点でポリエステルが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。特に、カチオン染料に対して染まらないポリエチレンテレフタレート(第3成分を共重合していないポリエチレンテレフタレート)が好ましい。
【0015】
一方、前記海成分を形成するポリマーとしては、前記島成分を形成するポリマーよりも易染性または難染性(好ましくは易染性)であれば特に限定されないが、カチオン染料可染性ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどが例示される。なかでも、5-ナトリウムスルホン酸を6〜12モル%および分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエチレンテレフタレートからなるカチオン染料可染性ポリエステルが好ましい。前記共重合したポリエチレンテレフタレートからなるカチオン染料可染性ポリエステルは、島成分を形成する前記のポリエステルよりも、カチオン染料に対してだけでなく分散染料に対しても易染性であり好ましい。また、該共重合したポリエチレンテレフタレートからなるカチオン染料可染性ポリエステルは島成分を形成する前記のポリエステルよりも、アルカリ水溶液に対して溶解速度がはやく好ましい。なお、前記の「易染性または難染性」とは「異染性」の意味であり、同一の染料(例えば分散染料)で染色した際に、異なる明度で染色されるという意味である。
【0016】
なお、海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
【0017】
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
【0018】
次に島数は、100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。該島数が100未満の場合は、本発明の主目的とする石調外観を呈する布帛が得られないおそれがある。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎるため、減量加工により島成分を露出させるのが難しくなるおそれがある。逆に、20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなるだけでなく、減量加工により全て海成分が除去されてしまい、部分的に海成分を残すことが難しくなるおそれがある。
【0019】
さらに、前記の海島型複合繊維において、島径(r)と島間の海の厚み(S)、繊維径(R)と海部の最大厚み(Sm)が以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.001 ≦ S/r ≦ 0.5
Sm/R ≦ 0.15
【0020】
ここでrは島径、Sは島と島の間にある海部の厚みとする。また、Smは繊維中心部に存在する海部を除いた、最も厚みのある海部の厚みのことである。高強度とするためにより好ましくは0.01≦S/r≦0.3、Sm/R≦0.08である。ここでS/r値が0.5以上、もしくはSm/R値が0.15以上である場合には、高速紡糸性が悪くなる、また延伸倍率を上げることができないので、海島繊維の延伸糸物性そして海溶解後の極細繊維強度が低くなる。S/r値が0.001以下である場合には島同士が膠着する可能性がある。
【0021】
前記の海島型複合繊維は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、海成分用ポリマーと島成分用ポリマーとを、前者が海成分で後者が島成分となるように溶融紡糸する。ここで、海成分と島成分の溶融粘度の関係は重要で、海成分の比率が小さくなって島間の厚みが小さくなると、海成分の溶融粘度が小さい場合には島間の一部の流路を海成分が高速流動するようになり、島間に接合が起こりやすくなるので好ましくない。
【0022】
溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面形成がなされるいかなる紡糸口金でもよい。
【0023】
吐出された海島型複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。
【0024】
得られた流動状態で延伸された延伸糸は、その強伸度などの機械的特性を向上させるため、常法にしたがって60〜220℃の温度で配向結晶化延伸する。該延伸条件がこの範囲外の温度では、得られる繊維の物性が不十分なものとなる。なお、この延伸倍率は、溶融紡糸条件、流動延伸条件、配向結晶化延伸条件などによって変わってくるが、該配向結晶化延伸条件で延伸可能な最大延伸倍率の0.6〜0.95倍で延伸すればよい。
【0025】
次に、前記海島型複合繊維を用いて布帛を製造する。その際、前記海島型複合繊維以外にポリエステル繊維などの他の繊維を用いることは何らさしつかえないが、布帛重量に対して50重量%以上が前記海島型複合繊維であることが好ましい。
また、前記の布帛において、構造体の形態は特に限定されず、織物であっても編物であってもよい。
【0026】
織物の場合、組織は特に限定されず、通常の方法で製織されたものでよい。例えば、織組織としては、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
【0027】
編物の場合は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
【0028】
次いで、前記布帛に減量加工を施すことにより、前記海成分を部分的に除去する。ここで、「部分的に」とは「島成分が露出している箇所と、海成分が残っている箇所とが混在している。」という意味である。
ここで、減量加工としては、前記海成分がカチオン染料可染性ポリエステルからなる場合にはアルカリ減量加工が好ましく、前記海成分がナイロンからなる場合には蟻酸加工が好ましく、前記海成分がレーヨンからなる場合にはバイオ加工が好ましい。その際、減量率としては、海成分を部分的に除去する上で5〜15%(重量比)であることが好ましい。
【0029】
次いで、減量加工を施された該布帛に染色加工を施し、前記海成分を島成分よりも濃色または淡色に染色することにより、石調外観を呈する石調布帛が得られる。
ここで、前記島成分がポリエチレンテレフタレートなどのカチオン不染性ポリエステルからなり、海成分がカチオン染料可染性ポリエステルからなる場合、カチオン染料および/または分散染料で海成分を島成分よりも濃色に染色することができる。
その際、染料はカチオン染料だけもよいし、分散染料だけでもよいし、カチオン染料と分散染料とを併用してもよい。カチオン染料と分散染料とを併用することが最も好ましい。
【0030】
染料としてカチオン染料だけを用いた場合、染色加工によりカチオン不染性ポリエステルからなる島成分は染色されず、カチオン染料可染性ポリエステルからなる海成分だけが染色される。この場合、通常、カチオン染料は分散染料よりも耐光堅牢度が低いため、布帛の耐光堅牢度が低下するおそれがある。
【0031】
また、染料として分散染料だけを用いた場合、カチオン染料可染性ポリエステルはカチオン不染性ポリエステルよりも濃色に染色でき、しかも島成分の島径が50〜1500nmと小さいため分散染料が島成分にあまり入らないため、海成分を島成分よりも濃色に染色することができる。この場合、耐光堅牢度は良好である。
【0032】
また、カチオン染料と分散染料とを併用すると、カチオン染料可染性ポリエステルからなる海成分はカチオン染料と分散染料とで染色され、カチオン不染性ポリエステルからなる島成分は分散染料により淡く染色される。カチオン染料と分散染料との色を異ならせることにより異色効果を発現することも可能である。カチオン染料と分散染料とを併用する場合、耐光堅牢度は良好である。
【0033】
さらに、常法のカレンダー加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、さらには、親水剤(例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートやその誘導体、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)と、テレフタル酸および/またはイソフタル酸および低級アルキレングリコール(エチレングリコールなど)をブロック共重合してなるブロック共重合体など)、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0034】
特に、前記の布帛にカレンダー加工を施すと人工皮革のような光沢が付加され好ましい。また、アルカリ洗浄液(例えば、家庭用合成洗剤)を用いて洗浄処理を施すと、濃染された海成分の色が脱色し、濃淡コントラストのある色落ち(着古し感)が得られ好ましい。なお、アルカリ洗浄液により海成分の色が脱色するのは、海成分のポリマーの剛性が落ちるためであり、染料の種類は関係ない。
【0035】
本発明の石調布帛は前記の製造方法により得られた石調布帛である。また、本発明の繊維製品は前記の石調布帛を用いてなる、カーテン、衣料、椅子被覆材、カーシート、および傘地からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は石調外観を呈するだけでなく耐光堅牢度にも優れる。
【0036】
<溶融粘度>乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見る。
【0037】
<溶解速度>海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0038】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=40:60、島数=500の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は520nmであった。このポリエチレンテレフタレート糸条56dtex/10fil(帝人ファイバー(株)製)を双糸に引き揃え撚糸機((株)村田製))にて200回施撚し、一本糊付機((株)ヤマダ製)にて互応化学製の糊剤を配合し走行速度100m/min、乾燥温度100℃で走行させ、経糸準備を実施し、経糸に配した。
一方、前記経糸と同一の糸に、ポリウレタン糸条33dtex/1fil(旭化成(株)製)を引きそろえ600回追撚し、緯糸に配した。
【0039】
次いで、ドビー織機にて図1に示す破斜紋組織になるように製織し、経糸密度57.5本/cm、緯密度55.4本/cmの生機を得た。その後、60℃で精錬を行った後、生機重量に対して10%のアルカリ減量を施し、60℃で精錬を行い、120℃にて同色のカチオン染料および分散染料を用い常法にて染色加工を行った。なお、黒色に染色するため、カチオン染料および分散染料はともに3原色を用いた。次いで、170℃で3分間乾燥後、人工皮革調の外観を得るため線圧98000N/cm(10ton/cm)の線圧でカレンダー加工を行い、経密度78.4本/cm、緯密度67.5本/cmの織物(布帛)を得た。なお、染色加工の際に用いた染料は下記のとおりである。
(分散染料)
・キワロンPイエローE−SPECO(紀和化学社製)
・キワロンPレッドAT(紀和化学社製)
・キワロンPブルーE−SP(紀和化学社製)
(カチオン染料)
・カヤクリルイエロー3RL−ED(日本化薬社製)
・カヤクリルレッドGL−ED(日本化薬社製)
・カヤクリルブルー302ED(日本化薬社製)
【0040】
得られた織物において、織物に含まれる海島型複合繊維の海成分が部分的に除去された。すなわち、島成分が露出した箇所と残された海成分とが混在していた。そして、海成分は濃い黒色に染色され、一方島成分は淡い黒色(グレー)に染色された。その結果、該織物は図2のように、濃淡色が明確な石調(花崗岩調)外観となった。この織物の耐光堅牢度を紫外線カーボンアーク灯光(JISL0842第3露光法)にて計測したところ、3級となった。次にこの織物を用いパンツ状の縫製品(繊維製品)を縫製した。これを常温にてアルカリ洗浄液として合成洗剤アタック(商品名)を使用し、10回水洗濯処理すると、かかる縫製品に含まれる海島型複合繊維の濃染された海部が脱落し、図3のように濃淡コントラストのある色落ち(着古し調)を有するものとなった。
【0041】
[比較例1]
芯成分としてポリエチレンテレフタレート、鞘成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いた芯鞘型複合繊維複合未延伸糸290dtex(島数1個)を、実施例1と同様に溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた芯鞘型複合延伸糸は110dtex/48filであり、島径は島径14.4μmであった。このポリエチレンテレフタレート糸条110dtex/48fil(帝人ファイバー(株)製)を一本糊付機((株)ヤマダ製)にて互応化学製の糊剤を配合し走行速度100m/min、乾燥温度100℃で走行させ経糸準備を実施し、経糸に配した。
一方、前記経糸と同一の糸に、ポリウレタン糸条33dtex/1fil(旭化成(株)製)を引きそろえ600回追撚し、緯糸に配した。
【0042】
次いで、ドビー織機にて図1に示す破斜紋組織になるように製織し、経糸密度57本/cm、緯密度54.5本/cmの生機を得た。その後、60℃で精錬を行った後、10%のアルカリ減量を施し、60℃で精錬を行い、120℃にて同色のカチオン染料および分散染料を用い染色加工を行った。なお、黒色に染色するため、カチオン染料および分散染料はともに3原色を用いた。次いで、170℃で3分間乾燥後、線圧98000N/cm(10ton/cm)の線圧でカレンダー加工を行い、経密度77.0本/cm、緯密度65.5本/cmの織物を得た。なお、染色加工の際に用いた染料は下記のとおりである。
(分散染料)
・キワロンPイエローE−SPECO(紀和化学社製)
・キワロンPレッドAT(紀和化学社製)
・キワロンPブルーE−SP(紀和化学社製)
(カチオン染料)
・カヤクリルイエロー3RL−ED(日本化薬社製)
・カヤクリルレッドGL−ED(日本化薬社製)
・ カヤクリルブルー302ED(日本化薬社製)
【0043】
得られた織物において、織物に含まれる芯鞘型複合繊維の鞘成分が部分的に除去された。すなわち、芯成分が露出した箇所と残された鞘成分とが混在していた。そして、芯成分と鞘成分ともに、濃い黒色に染色された。その結果、得られた織物は、実施例1で得られたものと比較して濃淡の色差はあまり発現しなかった。この織物の耐光堅牢度を紫外線カーボンアーク灯光(JISL0842第3露光法)にて計測したところ、2級以下となった。次にこの織物を用いパンツ状の縫製品を縫製した。これを常温にてアルカリ洗浄液として合成洗剤アタック(商品名)を使用し、20回水洗濯処理したが、かかる縫製品に含まれる芯鞘型複合繊維の濃染された海部が脱落しても、実施例1で得られたものと比較して濃淡コントラストのある色落ちを有するものとならず、色落ちの自然さを有するものとならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、石調外観を呈する石調布帛の製造方法、および該製造方法により得られた石調布帛、および該石調布帛を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1および比較例1で用いた織組織図である。
【図2】実施例1で染色加工後に得られた石調外観布帛の図面代用写真である。
【図3】実施例1で洗濯後に得られた色落ち布帛の図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
島径が50〜1500nmの島成分と、海成分とからなり、かつ前記海成分が島成分よりも易染性または難染性である海島型複合繊維を用いて布帛を得て、該布帛に減量加工を施すことにより前記海成分を部分的に除去した後、染色加工を施すことを特徴とする石調布帛の製造方法。
【請求項2】
前記島成分がポリエステルで形成される、請求項1に記載の石調布帛の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステルがカチオン染料不染性ポリエチレンテレフタレートである、請求項2に記載の石調布帛の製造方法。
【請求項4】
前記海成分が、カチオン染料可染性ポリエステル、ナイロン、およびレーヨンから選択されるいずれかで形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項5】
前記カチオン染料可染性ポリエステルが、5-ナトリウムスルホン酸を6〜12モル%および分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエチレンテレフタレートである、請求項4に記載の石調布帛の製造方法。
【請求項6】
前記海島型複合繊維において、島成分の個数が200以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項7】
前記布帛が織物または編物である、請求項1〜6のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項8】
前記減量加工がアルカリ減量加工であり、かつ減量率が5〜15%の範囲内である、請求項1〜7のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項9】
前記染色加工の際に分散染料とカチオン染料とを用いる、請求項1〜8のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項10】
前記染色加工を施した布帛に、アルカリ洗浄液を用いて洗浄処理を施す、請求項1〜9のいずれかに記載の石調布帛の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載された製造方法により得られた石調布帛。
【請求項12】
請求項11に記載の石調布帛を用いてなる、カーテン、衣料、椅子被覆材、カーシート、および傘地からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−111962(P2010−111962A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284341(P2008−284341)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】