説明

石鹸組成物

【課題】 石鹸組成物の固化を促進する塩化ナトリウムと、石鹸組成物のpH値を減ずる青梅エキスとを含んだ石鹸組成物を提供する。
【解決手段】本発明の石鹸組成物には、脂肪酸のアルカリ金属塩と、青梅エキスと、塩化ナトリウムが使用される。脂肪酸のアルカリ金属塩は、鹸化反応においてオイルを強塩基水溶液と反応させることによって合成される。青梅エキスは、水を使用して青梅から抽出され、抗菌剤として機能すると共に、青梅エキスは酸性であるから、石鹸組成物のpH値を低くするように調節して、石鹸組成物を中性或いは弱酸性にする。塩化ナトリウムは天然塩であって、石鹸組成物から水分を取り除き、石鹸組成物を固化させる。従って、本発明の石鹸組成物は、水と接触しても、簡単に溶けて柔らかくなってしまうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石鹸組成物に関し、更に具体的に言うと、石鹸組成物の固化を促進する塩化ナトリウムと、石鹸組成物のpH値を減ずる青梅エキスとを含んだ石鹸組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な石鹸の製造方法は、強塩基水溶液にオイルを混合して、鹸化反応を起こすことで石鹸となるが、更には、パラフィンのような化学物質と固化剤が含有されている。しかし、このような化学物質は皮膚のトラブルを起こす可能性がある上に、生物学的に分解可能なものではないので、環境汚染を引き起こす。
【0003】
鹸化した後の石鹸のpH値は8〜10である。従って、pH値が中性7程度である人間の皮膚を洗浄するのにこのような石鹸が用いられた場合、皮膚が傷ついて皮膚炎を起こしたりアレルギーを起こしたりしてしまう。従って、強塩基水溶液の量を減らして、石鹸のpH値を望ましい値の7から8の間に下げる必要がある。しかし、強塩基水溶液の量を減らせば、オイルの鹸化が著しく妨げられ、その結果、石鹸が固まらないということになる。よって、従来のpH値を低くした石鹸、特にハンドメイドの石鹸は固まりにくい、という欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、石鹸組成物を強化して固めることのできる塩化ナトリウムと、石鹸組成物のpH値を低くする青梅エキスとを含んだ石鹸組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の石鹸組成物は、脂肪酸のアルカリ金属塩と、青梅エキスと、塩化ナトリウムを含む。脂肪酸のアルカリ金属塩は、鹸化反応において強塩基水溶液とオイルを反応させることで合成される。青梅エキスは、水を使って青梅から抽出されるもので、抗菌剤として作用し、また、酸性であるので、石鹸組成物のpH値を低くするよう調節して、石鹸組成物を中性或いは弱酸性にさせる働きをする。塩化ナトリウムは天然塩で、石鹸組成物から水分を除去し、石鹸組成物を固化する。
【発明の効果】
【0006】
本発明による石鹸組成物は、すべて天然材料で作られるので、環境汚染を引き起こさない。
また、pH値を人体と同じ中性7程度までに落として調節したので、洗顔時や入浴時などに使用した場合、皮膚に優しく、肌を傷めたりアレルギーを発症するなどといったトラブルを起こすことがなく、安心して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、一連の製造工程によって本発明の石鹸組成物の説明をする。
本発明の石鹸は、
水で青梅からエキスを抽出し、青梅の液体エキスを採取し、
前記青梅エキスに強塩基と塩化ナトリウム(NaCl)とを加えて、第1混合液を得てから、青梅エキス内の塩化ナトリウムの最終濃度を5重量%から飽和点までの範囲にし、
前記第1混合液に1種類以上のオイルを50重量%〜70重量%の範囲に混合した第2混合液を得て、
前記第2混合液を加熱して、鹸化を行い、
石鹸組成物を採集する、
という工程により製造される。
【0008】
このような工程により製造された本発明の石鹸組成物は、脂肪酸のアルカリ金属塩と、青梅エキスと、塩化ナトリウムと、植物エキスと、保湿剤を含んでいる。
脂肪酸のアルカリ金属塩はオイルと強塩基によって合成され、鹸化反応を行なう。
【0009】
オイルは、ココナッツ・オイル、パーム・オイル(やし油)、オリーブ・オイル、ひまわり油、グレープシード・オイル、キャノーラ・オイル(菜種油)、ホワイト・オイル(白油)、蜜蝋、からなる群から1種類、あるいはそれ以上を選択して組み合わせたものである。オイルの種類によって、それぞれ独自の鹸化値を持っているので、これが必要とされる強塩基水溶液の量を決定することとなる。
【0010】
強塩基水溶液は、強塩基を抽出溶媒において分解したものである。抽出溶媒は水である。強塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCo)などである。
【0011】
青梅エキスは、抗菌作用の特徴を有し、水溶性であって、酸性であり、前記抽出溶媒の中で強塩基を分解する工程の前に、この抽出溶媒を使用して青梅から抽出されて液体エキスとしたものである。青梅は、“Vatica Linn”と呼ばれる青梅属であるが、別の周知の種類の青梅でよい。
【0012】
青梅エキスを生成する場合、抽出溶媒で強塩基を分解する工程の前に、まず、種を取った青梅をこの抽出溶媒に加えて、青梅を均質化して、等質水溶液を得る。次に、この青梅の等質水溶液を濾過して、青梅残留カスを取り除き、青梅エキスを得る。
【0013】
青梅エキスを抽出するための抽出溶媒は、水である。本願発明の実施例においては、青梅エキスを生成するための工程は、種を取った青梅をジューサーにかけ、青梅を均質化して、均質水溶液を作り出し、最後にこの均質水溶液を濾過して、青梅エキスを生成する。
【0014】
青梅エキスは酸性であるから、青梅エキスの量で、石鹸組成物を中性するか或いは弱酸性にするかを決める。更に、青梅エキスは生物学的に分解可能なものなので、環境汚染を引き起こさない。
【0015】
塩化ナトリウム(NaCl)は青梅エキスを含んだ抽出溶媒で分解される。抽出水溶液中の塩化ナトリウムの濃度は、大体5重量%から飽和点(温度によって変わる)までの間である。温度が20℃の場合、抽出水溶液中の塩化ナトリウムの濃度は、大体5重量%〜36重量%の間で、温度が100℃であれば、抽出水溶液中の塩化ナトリウムの濃度は、大体5重量%〜39重量%の間である。当業者であれば、それぞれの温度の飽和点を測定することは簡単に試みることができる。
【0016】
石鹸の製造に使う塩化ナトリウムは、普通の塩でも、海塩等のようなものでも使用することができる。塩化ナトリウムは石鹸組成物から水分を抜き取るので、これにより石鹸組成物が固形化する。塩化ナトリウムは、また、石鹸使用時に石鹸が水に触れた場合、石鹸がふやけて溶け崩れてしまうのを防止する機能がある。更にまた、塩化ナトリウムには、人間の皮膚のケラチンを柔軟にするという更なる利点もあると共に、抗菌作用もある。
【0017】
防腐剤は、1,3−ジメチルロールー5,5―ジメチル・ヒダントイン(DMDM hydantoin)といった殺菌剤、エチレン・グリコール・モノフェニール・エーテル(ethylen glycol monophenyl ether)のような殺菌薬、あるいは、グレープシード・オイルとか、ヴィタミンE・オイルや、キャロット・オイルといった天然の酸化防止剤でもよい。
【0018】
植物エキスは、抽出溶媒を使用して植物から抽出されて作り出した、植物の液体エキスである。植物は、中国アンゼリカ、レンゲ根、甘草、菊、紫蘇、玉ねぎ、じゃがいも、さつまいも、長いも、大豆、竜眼、ナツメヤシ、クコ、シナモンから成る群の1種類から選択したもの、或いは2種類以上を組み合わせたものであってよい。
【0019】
次に、植物エキスの準備方法を説明する。まず、抽出溶媒に植物を加え、その後、均質化され、濾過され、植物エキスが採取された。抽出溶媒は、水か、あるいは、水に青梅エキスを加えたものである。植物エキスを準備するための実施例は、1種類以上の植物をジューサーにかけてから、それを均質化し、濾過して、植物エキスを得る、という工程からなる。
【0020】
保湿剤は、真珠粉および蜂蜜である。
【0021】
青梅エキスは強塩基水溶液と反応し、鹸化反応を起こす。抽出溶媒の量は強塩基水溶液の量とタイプによって決まる。従来の場合、抽出溶媒の量は、重量で強塩基の大体2.4〜3.2倍である。本願発明では、抽出溶媒は、青梅エキスと塩化ナトリウム、そして植物エキスおよび保湿剤も含む。この抽出溶媒が強塩基水溶液と混合されると、混合液が出来上がり、この混合液にオイルを加えて鹸化反応を起させ、石鹸組成物が完成する。
【0022】
この発明の石鹸組成物は、コールドプロセス製法でもホットプロセス製法でも作ることができる。以下に説明するコールドプロセス製法を用いて、本願発明の石鹸組成物の製造方法の実例を示す。
【0023】
まず第1に、複数種のオイルを混合し、加熱して全体を溶け合わせてから、約50℃位まで冷却する。その後、青梅エキスおよび植物エキスの入った抽出溶媒の中で強塩基を分解させて、混合液を作る。抽出溶媒での強塩基分解は発熱反応であるので、混合液は50℃位まで冷却する必要がある。オイルに混合液が加えられ、更には保湿剤や防腐剤も加えられて、低温処理によって混ぜ合わされると、鹸化反応が行なわれ、石鹸組成物ができあがる。そして、この石鹸組成物を常温で40日〜60日間かけてゆっくりと乾燥熟成させる。
【0024】
一方、ホットプロセス製法はコールドプロセス製法に比べて圧倒的に早い。ホットプロセス製法は、オイルを鍋などの反応用容器に入れてガスバーナーや水蒸気などで高温加熱処理をしてから、混合液および保湿剤をこのオイルに加えて鹸化反応を行ない、充分に冷ますと、石鹸組成物(いわゆる、ホットプロセス石鹸)が得られる。ホットプロセス製法は、わずか2〜3時間しかかからない。
【0025】
本願発明を例証するための実施例1〜3を次に説明する。これら実施例は本願を限定するものではなく、当業者であれば、青梅エキスの量や植物エキスの量を適宜変更し、石鹸組成物に別の添加物を加えることもできる。
【実施例1】
【0026】
鹸化を行なう前の、本発明の第1実施例の石鹸組成物を作るための原料成分を表1に示す。
【表1】

【実施例2】
【0027】
鹸化を行なう前の、本発明の第2実施例の石鹸組成物を作るための原料成分を表2に示す。添加物には、蜂蜜と、紫蘇や、菊や、ナツメヤシ、クコ、サツマイモの液体エキスが含まれる。
【表2】

【実施例3】
【0028】
鹸化を行なう前の、本発明の第3実施例の石鹸組成物を作るための原料成分を表3に示す。添加物には、紫蘇粉や、シナモン・パウダー、そして菊や、竜眼、ナツメヤシ、クコ、じゃがいも、さつまいも、長いもの液体エキスが含まれ、紫蘇パウダーやシナモン・パウダーなどは液体抽出溶媒に溶かされる。
【表3】

【0029】
石鹸組成物を固化させるために、固化剤として、前記実施例によるNaClを、例えばパラフィンのような別の化学物質に代えることもできる。
【0030】
本発明の石鹸組成物は人体の肌を害することなく、環境を汚染することもない。更に、青梅エキスによって石鹸組成物のpH値を調節して低くし、石鹸組成物を、中性か或いは弱酸性にすることができる。また、様々な添加剤や保湿剤が石鹸組成物の中に加えられることで、石鹸組成物を穏やかにすることができると共に、皮膚をやさしく保湿することができる。
【0031】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石鹸組成物であって、
水で青梅からエキスを抽出して、青梅の液体エキスを採取し、前記青梅エキスに強塩基と塩化ナトリウム(NaCl)とを加えて、第1混合液を得てから、青梅エキス内の塩化ナトリウムの最終濃度を5重量%乃至飽和点の範囲にし、
前記第1混合液に1種以上のオイルを50重量%〜70重量%の範囲に混合した第2混合液を得て、
前記第2混合液を加熱して、鹸化を行い、石鹸組成物を得る、
という工程により製造されることを特徴とする石鹸組成物。
【請求項2】
前記オイルは、ココナッツ・オイル、パーム・オイル(やし油)、オリーブ・オイル、ひまわり油、グレープシード・オイル、キャノーラ・オイル(菜種油)、ホワイト・オイル(白油)、蜜蝋、からなる群から1種選択されたもの、あるいは1種以上を選択して組み合わせたものであることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項3】
前記強塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCo)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項4】
前記青梅液体エキスの中に、1,3−ジメチルロールー5,5―ジメチル・ヒダントインである防腐剤を加えてなることを特徴とする特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項5】
前記青梅液体エキスの中に、エチレン・グリコール・モノフェニール・エーテルである防腐剤を加えてなることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項6】
前記青梅液体エキスの中に、グレープシード・オイル、ヴィタミンE・オイル、キャロット・オイルから成る群から選択した天然の酸化防止剤である防腐剤を加えてなることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項7】
前記青梅液体エキスの中に、中国アンゼリカ、レンゲ根、甘草、菊、紫蘇、玉ねぎ、じゃがいも、さつまいも、長いも、大豆、竜眼、ナツメヤシ、クコ、シナモンから成る群から1種類選択したもの、或いは2種類以上を組み合わせた植物から抽出された植物の液体エキスを加えてなることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項8】
前記青梅液体エキスの中に、蜂蜜を加えてなることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。
【請求項9】
前記青梅液体エキスの中に、真珠粉を加えてなることを特徴とする請求項1記載の石鹸組成物。


【公開番号】特開2009−29915(P2009−29915A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194709(P2007−194709)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507253152)
【Fターム(参考)】