説明

砂地盤の改良工法と工法に使用する装置

【課題】液状化対策における従来の固結材圧入締固めは土被り圧が小さい浅い層、大規模地震に課題がある。また供用施設の場合、表面隆起の課題がある。
【解決手段】対象地盤の表面を面的に加圧して土被り圧を増大させて、適度に流動性のある固結材の柱状固結体1を造成する。ここで、地表面隆起となる固結材の注入圧力と抑止圧力を平衡させる機構、固結材に置き換わる間隙水を直接地上へ排出して過剰間隙水圧の抑制機構、固結材の圧入パイプに土中型枠機構を持たせた。図1は柱状固結体1を造成の改良状況の断面図である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震によって液状化現象の恐れのある砂地盤に適度に流動性のある固結材を静的に圧入して、地中の柱状固結体を造成すると共に、周辺地盤を圧縮強化する。また、必要に応じて動的締固めを併用する液状化対策工法に関するもので、更に云えば、地表面高の現状保持を可能とする液状化対策工法に関する。
【背景技術】
【0002】
阪神大震災を契機に耐震基準等が見直され,耐震補強の重要性が増している。ここでの大きな課題の一つは、供用施設での砂地盤の液状化問題である。供用施設直下の液状化対策は、施設を撤去することなく供用しながら施工を行わなければならない。ここで、施工により地表面の変位が問題となる施設の例として、空港の滑走路、港湾の岸壁のエプロン、背面のコンテナヤード等が挙げられる。
【0003】
地震動に見られるように、ゆるい砂地盤は振動または衝撃で圧縮沈下する。従って地震の前に振動または衝撃による動的締固め工法により地盤の密度増加を図っておくことは有効である。密度増加の動的な工法として、ロッドをバイブロハンマーで地中に貫入させ、バイブロハンマーの振動を介して地盤の締固めするロッドコンパクション工法。棒状の振動機を振動とウォータジェット併用で地中に貫入させ、振動と水締めで地盤を締固めると同時に生じた空隙に砂利などを補給するバイブロフローテーション工法がある。これらの工法の原理は、棒状の振動体による繰返しせん断応力で土粒子間の摩擦をいったん切り、土粒子が容易に移動できる状態にして土被り圧で締固めるものである。これらの工法は供用施設には不向きである。
【0004】
密度増加の動的な工法として、サンドコンパクションパイル(SCP)工法がある。この工法は特殊なケーシングを使い、地盤中にケーシング径より大きな径の砂杭を動的に締固めながら造成すると共に、周辺地盤を締固めて地盤密度の増加を図るものである。しかし、この動的工法は供用施設には不向きである。また、砂杭の増径を静的に締固める方法が開発されている。しかし、この静的工法も供用施設の対象が限定される。
【0005】
薬液浸透注入工法は、従来、仮設に使われていた。しかし、最近、永久構造物とする工法が開発されている。この工法は浸透固化処理工法で、耐久性の高い溶液型の水ガラス系薬液を、低圧力低速度で砂質地盤に浸透注入し、地盤の土粒子間隙にある間隙水を薬液に置換し、その薬液がゲル状に固化することで地盤改良する工法である。この工法は供用中の施設への施工にも実績を有している。しかし、この工法は細粒分が少ないことが条件になること、また、改良費が高いことが難点のようである。
【0006】
固結体の造成による地盤改良工法として、静的圧入締固め工法がある。この工法の原理は地盤に固結材を圧入し固結体を造成する。この固結体による締め固め効果で周辺の地盤を圧縮強化し、想定地震に対応する地盤密度を確保する工法である。必要に応じて固結材強度を考慮した複合地盤の検討をする。一般に静的圧入工法は供用施設の液状化対策に有力な工法である。供用施設の対策は既存の舗装版の削孔が伴う。この工法は前記のSCP工法に比べ舗装版の削孔径を大幅に小径化できること、そして最も重要なことは、施工により地表面変位が生じないようにするための固結材の注入圧および注入量の管理が容易なことである。従来の工法はこの管理が困難であり確立されていない。
【0007】
これの代表的工法であるコンパクショングラウチング(CPG)工法は、固結材としての流動性の極めて小さいソイルモルタルを地盤中に圧入し、略球根状の固結体を連続的に造成する工法である。圧入された固結材は、流動性が低いために地盤内で逸走や迷走することなく所定の位置に固結体を造成する。また、小型機械を使用して、既設構造物の周辺や内部などの狭い場所でも無振動で施工することができる工法で、供用中の施設への施工にも実績を有している。また、前記の耐久性の高い浸透固化処理工法に比べて、経済的な工法となっている。
【0008】
圧入締固め工法で、地表面の変位を認めない場合は、固結材は地盤の密度増加により排除される間隙水と量的に平衡させなければならない。しかし、固結材の圧入と排水にはタイムラグが生じ、過剰間隙水圧が発生する。そして、土被り圧が注入圧のある値よりも小さいときは、注入された固結体の鉛直上の舗装版表面が隆起することになる。
【0009】
前記CPG工法の施工は固結材の圧入孔を一定の間隔で削孔し、孔ごとに注入パイプにより、固結材を注入して略球根状のブロックを積層式に接合させながら所定の固結体であるモルタルブロック柱を造成する。上記固結体を造成すると水圧が上昇する。土被り圧が小さくなると、舗装版表面は隆起が生じ、形状は円錐状が想定される。
【0010】
上記CPG工法の隆起対策は、舗装版の表面隆起の許容値を設けて管理している。モルタルブロック柱の実際の隆起量は、略球根状のブロック別(注入ステップ別)、連続積層のブロック柱別(地点別)、さらに影響範囲内の他ブロック柱の影響による隆起量の累計として得られる。隆起管理は段階ごとで行っている。また、隣接するモルタルブロック柱を連続して造成すると舗装版表面隆起が大きくなることから、同日施工は前記の影響範囲を外し、過剰間隙水圧の消散を計測しながら分散施工を実施しているようである。
【0011】
上述のように、従来の工法の舗装版の表面隆起対策は、許容値を設けて管理している。許容値を超えると固結材の注入を止めるので、所定の締固めとはならない恐れがある。表面隆起を許容する対策は如何なるときもこの問題は生じる。
【0012】
また、隆起は許容値内であっても、隆起後に過剰間隙水圧の消散で地盤の圧縮沈下が起これば、舗装隆起部分は塑性変形として残るが、これの路盤部分の支持力が低下している恐れがある。
【0013】
また、許容値を設けた隆起対策は、隆起を集中させられないので、隆起の分散化のため、固結体の断面積および圧入孔ピッチが小さくなり、固結体の造成、舗装削孔箇所が多くなる。このため工期も長くなる傾向にある。
【0014】
従来の流動性の極めて低い固結材の圧入方式による締固め工法は、所定の深度毎に圧入を行う。このため、固結材は逸走、迷走することなく所定の位置に造成される長所を有する反面、施工速度が遅い。
【0015】
また、積層式の圧入は、積層間にくびれが生じて略球根状のブロックが造成され易く、軸方向に連続した有効断面を得にくい。従って、地中の柱としての機能が小さい。
【0016】
供用施設の対策工は、施工サイクル時間、工期が短いことが肝要である。従来工法は上述のように、隆起対策は許容値管理であること、工程は過剰間隙水圧の自然消散を待つ分散施工であること、流動性の極めて低い固結材の圧入方式であること、隆起量を細かく管理する必要があること、固結体の柱の造成、舗装削孔箇所が多くなることなどから、施工サイクル時間、工期は極めて長くなる傾向にある。
【0017】
土の締固め効果は、対象地盤の土被り圧(有効応力)に大きく依存し、土被り圧が大きいほど締固め効果は大きい。従来の締固め工法は土被り圧の小さい浅い層の締固めに課題を残している。
静的圧入締固め工法の表面隆起も浅い層の小さい土被り圧の問題である。想定地震が大規模になれば必要とする地盤の相対密度は極めて大きくなり、締固め改良は容易ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した従来技術の問題点に鑑み、下記(1)〜(6)に記載した課題が挙げられる。
【0019】
(1)土被り圧が小さい場合においても、大規模地震に必要な所定の締固めを確保する。
【0020】
(2)舗装版等の既設構造物の表面隆起を許さない場合でも、所定の締固めを確保する。
【0021】
(3)固結材圧入に伴う過剰間隙水圧に対しては、自然消散を待たずに速やかに解消して、所定の地盤の締固めを確保する。
【0022】
(4)適度に流動性のある固結材で施工しても、地盤内で逸走や迷走することなく所定の形状寸法の柱状固結体を造成し、所定の周辺地盤の締固めを確保する。
【0023】
(5)地盤改良の合理化を図りながら、所定の柱状固結体の造成、所定の周辺地盤の締固めを確保する。
【0024】
(6)施工サイクル時間,工期を短縮して改良費縮減化を図る。
【問題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題は、下記(1)〜(6)に記載した本発明の手段によって達成する。
【0026】
(1)土被り圧が小さい場合の締固め方法において、想定地震に対応する地盤密度とすべく必要量の固結材の注入圧に対して、対象地盤の表面を面的に加圧して土被り圧を増大させることにより均衡を図る。
【0027】
(2)既設構造物の隆起を許さない方法において、既設構造物の隆起圧力に対して、舗装版に隆起の抑止圧力を平衡するように加える。
【0028】
(3)過剰間隙水圧の自然消散を待たず行う方法において、固結体に置き換わる間隙水量を所定の吸水経路により直接地上へ排出する。この方法は二重パイプの一方の固結材圧入パイプの吐出口の近傍に、他方の吸水パイプのストレーナーを設けて、サクションにより圧入経路とは別の吸水経路で排出する。この結果、過剰間隙水圧の発生を抑制している。
【0029】
(4)適度に流動性のある固結材で、所定の柱状固結体を造成する方法において、固結材の圧入パイプの先端部に土中の型枠機能を持たせる。この方法は圧入パイプの先端部の吐出口に、固結材を所定の柱状断面積とする布状の型枠筒(じょうろ形状の布状筒)を装着する。
【0030】
(5)地盤改良の合理化を図る方法において、上記(2)の〜(4)を達成することで、固結体の断面積を大きくし、固結柱の一本当たりの改良面積を拡大させる。この改良面積の拡大は、舗装版の表面隆起の圧力を集中させることになるが、上記(2)の隆起の抑止圧、(3)の過剰間隙水圧の発生抑制により、拡大を容易に可能としている。また、適度に流動性のある固結材は、圧入されると地盤内で逸走や迷走する恐れがあるが(4)の土中の型枠機能により、所定の柱状固結体の造成を容易に可能としている。
【0031】
(6)施工時間,工期を短縮する方法において、上記(1)〜(5)を達成することで、施工サイクル時間,工期を短縮する。
【発明の効果】
【0032】
上述した本発明によれば、下記(1)〜(6)に記載した発明の効果が得られる。
【0033】
(1)土被り圧を増大させる方法は、所定量の固結材の注入に必要な注入圧と均衡させる土被り圧を定量的に確保できるため、想定地震に対応する地盤密度は余裕をもって計画的に確保される。
【0034】
(2)舗装版表面の隆起は、注入圧のある値に対して土被り圧が小さくなるとき生じる。このときの隆起は、固結体鉛直上の舗装版表面を頂点とする円錐状が想定される。この隆起体積が締固め不足分に相当する。舗装版の隆起圧に対して抑止圧力を平衡するように加える方法は、必要な注入圧が加えられ、固結材の必要量を地盤に圧入できる。これにより、目的の地盤密度が確保される。ここで、舗装版の抑止圧力は路床の支持力が有るので大きめでも良い。しかし、極端に平衡を超えた抑止圧力は、舗装版の表面隆起と逆の現象を生じさせるので適切ではない。
【0035】
(3)固結体に置き換わる間隙水量を所定の吸水経路により直接地上へ排出する方法は、過剰間隙水圧の発生を抑制し、併せて舗装版の隆起を抑止する機能を持つ。過剰間隙水圧の発生抑制は、隣接する固結体の連続造成を可能にして工期を短縮する。舖装版隆起の抑止は、上記の抑止圧力の負担を軽減する。
【0036】
(4)固結材の圧入パイプの先端部に土中の型枠機能を持たせる方法は、適度に流動性のある固結材で施工しても、所定の形状寸法の固結柱を正確に造成することができる。これにより、改良速度は大幅に高められる。また、柱状固結体は軸方向に連続して所定の大きさで一定の断面積となるので、土中の柱としても機能させることができる。これにより、複合地盤として定量的に評価することができ、経済的な性能設計が可能である。
【0037】
(5)地盤改良効果の合理化を図る方法において、上記(2)の舗装版隆起の抑止圧力、(3)の抑止圧力の負担軽減、(4)の土中の型枠機能の効果を達成することで、土中の固結柱の断面積を大きくとることができる。これにより、固結柱の一本当たりの改良面積の拡大、施工効率の改善の両面から改良費の縮減化を図り、且つ、所定の締固めが確保される。
【0038】
(6)施工時間,工期を短縮する方法において、上記(1)〜(5)の効果を達成することで、施工サイクル時間および工期を短縮し、結果として改良費の縮減化が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下,本発明の砂地盤の液状化対策工法の実施形態、実施例1を図1〜図3、実施例2を図4〜図5に基づいて説明する。ここで、土被り圧を増大させる方法は大気圧を利用するものである。
【実施例1】
【0040】
図1は供用されている港湾の岸壁のエプロン、空港の滑走路等の舗装の有害な地表面の沈下を許さない場合の液状化対策工法の実施例による改良状況を示す断面図である。
【0041】
図1において、1は柱状固結体、2は液状化対象層、3は液状化対象外の不飽和土層、4は液状化対象外の硬質地盤。5は既設舗装構造物で5aはアスファルト舗装、5bは路盤である。6はボーリングマシーン形式の二重管ロッドリフト装置、7は二重管ロッドで内管が注入管7a、外管が吸水管7bである。
【0042】
図1は、対象地盤の表面を面的に大気圧で加圧して土被り圧増大の状態をつくり、液状化層2に固結材を静的に圧入して柱状固結体1を造成すると共に、この柱状固結体1の圧入による締め固め効果で周辺の地盤を圧縮強化して想定地震に対応する地盤密度としているところである。固結材は施工性の良い適度に流動性のある固結材を使用する。1例として、スランプ15cm程度のソイルセメントなどである。
【0043】
柱状固結体1の造成法は、液状化対象層2の下端から押し上げる方法と天端から押し下げる方法がある。ここでは押し上げる方法を示している。押し上げる方法では、固結材の吐出口7cは内管の注入管7aの先端部にあり、外管の吸水管7bより突出している。吸水管7bの吸水口であるロッドストレーナー7dは、吐出口7cの上部近傍に設けてある。ロッドストレーナー7dは砂等が混入しないようにメッシュ構造である。
【0044】
本発明における柱状固結体1の造成は、固結材のスランプが極めて小さい工法比べて施工速度が速い。その分、固結材圧入による地盤の過剰間隙水圧が速く生じる。図1において、液状化対象層2の飽和砂層に固結材を圧入すると、相当量の間隙水が直ちに排除されなければ相応の過剰間隙水圧が発生する。本発明はこの間隙水の排出を吐出口7cの上部近傍にあるロッドストレーナー7dから吸水管7bを通して直接地上に排除し、過剰間隙水圧の発生を抑制するものである。ロッドストレーナー7d上部近傍にある7hは、間隙水圧計で間隙水圧の状況を把握する。ここで、注入管7a、吸水管7bを二重管ロッドとしているのは、既設舗装構造物5の削孔を少なくするためである。
【0045】
想定地震に対応する地盤密度とする固結材の注入は、地震規模が大きくなれば、必要な固結材の注入量は多くなり、注入圧も大きくなる。既存の土被り圧では不足することが想定される。本発明では対象地盤の表面を面的に加圧して土被り圧を増大させる。図1における加圧方法はアスファルト舗装5a下の路盤5bを減圧して、アスファルト舗装5aを加圧版に活用して大気圧を作用させるものである。図1の8は減圧用の真空ポンプである。作用させる大気圧は、路盤5bの状態によって異なるが50kPa程度を期待している。これを実用最大大気圧と称する。
【0046】
前記、固結材で置換される間隙水の排除は、ロッドストレーナー7dから直接地上に排除されるが、タイムラグが生じてこの機能だけでは過剰間隙水圧の解消は難しい。従って、既設舗装構造物5の隆起を許さない方法において、隆起圧力に対して、アスファルト舗装5aに隆起の抑止圧力が平衡するように加えることになる。通常は前記大気圧がこれを兼ねることになる。
【0047】
図2(1)は路盤5bを減圧するときに使用される既設舖装構造物5の削孔を防護する二重管ケーシング9の断面図である。図2(2)は二重管ケーシング9の頂部の平面図である。二重管ケーシング9は改良作業に先行して設置され、二重管ケーシング9の設置作業と改良作業の分離が図られる。二重管ケーシング9のケーシング外管9aは路盤5bの減圧用であり、ケーシング内管9bは二重管ロッド7用である。ケーシング外管9aにはケーシングストレーナー9cが設けてある。ケーシング内管9bの底部には路盤5bの気密性を保持するための気密シール材9dが詰められている。ケーシング外管9aを真空ポンプ8により減圧し、路盤5bが減圧される。二重管ケーシング9は、分離作業と既設舗装構造物5の削孔を少なくするためである。二重管ケーシング9はこれにキャップを取り付けることにより、舗装構造物は車両の暫定走行が可能となっている。
【0048】
図3(1),(2)は二重管ロッド7の注入管7a先端部の土中型枠機能の概略説明図である。土中型枠7eはじょうろ形状の布状筒で、根元は注入管7aの外周に固定バンド7fで固定されている。二重管ロッド7を液状化対象層2の下端まで挿入するときは、土中型枠7eは注入管7aに収納される。このとき土中型枠7eは先端部を仮止バンド7gで仮止めされ、一回使いの注入管キャップ7iで蓋をされる。仮止めバンド7gの働きは、固結材が注入されたとき土中型枠7eが正常に拡張するように一定強度の張力を受けたときに破断するようにしたものである。図3(1)は土中型枠7eを収納した状態、図3(2)は土中型枠7eが正常に拡張した状態を表している。
【0049】
本発明の柱状固結体1は土中型枠7eの機能により軸方向に連続して所定の大きさで一定の断面積とするので土中の柱として評価できる。大規模地震の液状化対策として、強度を有する土中の柱として設計することにより定量的に評価し、経済的な性能設計が可能としている。また、必要に応じて固結材にせん断強度補強材、例えば廃材となったグラスファイバーの切断片を混合することも方法である。
【0050】
図4は柱状固結体1の造成における施工順序図を示したものである。図4(1)は、二重管ケーシング9が先行設置され、所定の位置に二重管ロッドリフト装置6を設置し、二重管ロッド7を液状化対象層2の下端まで挿入した状態である。
【0051】
図4(2)は、吐出口7cより1ステップの所定量の固結材を吐き出し、土中型枠7eが正常に拡張した状態である。並行して、大気圧による加圧、吸水管7bを通して相当量の間隙水を直接地上に排除する。
【0052】
図4(3)は、1ステップの所定量の固結材を吐き出した後に、二重管ロッド7を所定の高さに引き上げた状態である。
【0053】
図4(4)は、図4(2)の作業を実施する。この作業を繰り返すことにより、所定の柱状固結体1を造成し、周辺地盤を圧縮強化する。固結材の吐き出し、二重管ロッド7の引き上げを連続させないのは、引き上げ時は横方向の圧縮応力が減少され周辺地盤の締固めが低下することにある。柱状固結体1の造成が完了したら二重管ロッド7を撤去して二重管ロッドリフト装置6を順次移動し、対象区域を面的に余すことなく改良を進める。
【0054】
実用最大大気圧(50kPa程度)を加えた全土被り圧のもとで、過剰間隙水圧を抑えながら単位体積当たりの地盤に固結材を圧入する。地表面隆起開始限界時の地盤の締固めが、この土被り圧における静的圧入による締固め限界状態である。限界を超えて固結材が圧入されると、注入位置の鉛直線上の舗装表面が円錐状に隆起する。表面変位は二重管ロッドリフト装置6周辺の舗装表面に配置された複数の高感度水準器で連続的に計測される。これにより、表面隆起はリアルタイムに把握される。
【0055】
定量的改良管理の核心は、地盤改良による液状化抵抗増大の確認調査にある。確認調査方法はN値などの貫入抵抗による簡易予測法、乱さない試料を採取した室内液状化試験よる詳細予測法がある。最初の改良確認調査は詳細予測法で事前設定値である実用最大大気圧を加えた全土被り圧のもと、単位体積当たりの固結材圧入による地表面隆起の有無、最大圧入圧、圧入量における液状化抵抗増大の確認調査である。設定値が不適正ならば修正され改めて設定値が決定される。施工管理は実用最大大気圧、固結材最大圧入圧、圧入量の設定値で行う。以降の確認調査は詳細な方法と簡易な方法を組合せ適宜行う。また、確認調査位置は、二重管ロッド孔を利用すると位置が固定されるので、締固め改良の前後の比較に好適である。
【実施例2】
【0056】
実施例1は、対象地盤の表面を面的に実用最大大気圧で加圧した土被り圧増大のもとで、固結材の静的圧入により地盤を圧縮強化して想定地震に対応した。また、必要に応じて柱状固結体に柱機能を持たせて複合効果を評価した。実施例2は実用最大大気圧の土被り圧増大のもとでの静的締固めでは対応できない想定地震の場合の対策として動的締固め工法を併用したものである。
【0057】
図5は、所定の位置に繰返し載荷装置構造体10を設置し、対象地盤の表面を面的に実用最大大気圧で加圧して土被り圧増大の状態とした。そして固結材を静的に圧入して柱状固結体1を造成すると共に、繰返し荷重を作用させ、間隙水を直接地上に直接排除し、排除する間隙水と柱状固結体1の体積を平衡させて地表面の現状を保持している状況を示す断面図である。
【0058】
静的圧入による想定地震に対応した地盤密度とするためには、実用最大大気圧を加えた全土被り圧において、締固め限界状態を超えなければならない。しかし実際には、圧入を続行しても地盤隆起するだけで地盤の密度増加にはなない。そこで、本発明は大気圧による土被り圧増加に加えて、繰返し荷重による動的締固め工法を併用する。繰返し荷重は小さくても静的荷重よりも大きな圧縮力を発揮する。すなわち、大気圧と繰り返し荷重の組合せ荷重の作動により地盤に動的圧縮圧力を発生させて地盤隆起の抑制に加えて圧縮沈下を促進させる。併行して固結材を静的に圧入して柱状固結体1を造成し、動的、静的締固めによる地盤の体積減少と柱状固結体1の体積を平衡させて地表面の変位を生じさせないように管理するものである。
【0059】
繰り返し載荷装置構造体10の自重は、繰返し荷重装置10aの起振力よりも大きなものとする必要がある。小さければ繰返し載荷装置構造体10そのものが振動し不都合が生じる。ここでの大気圧の働きは、土被り圧の増加荷重と繰返し載荷装置構造体10の自重増加荷重としての二つの役割を持たせる。土被り圧の増加荷重は舗装構造物5直下の路床を減圧し、舗装構造物5を巨大な加圧版として活用して大気圧を作用させる。つまり、二段重ねの加圧版となる。自重増加荷重は同様に加圧版10b下を減圧するものである。
図の11は気密シール材で加圧版10b下の気密性を保持するものである。
【0060】
図5において、繰返し載荷装置構造体10は繰返し荷重装置10a、加圧版10b、二重管ロッドリフト装置6から構成される。繰返し載荷装置構造体10の基本は、加圧板10bの中央に載荷重の中心を一致させることである。図5の繰返し載荷装置構造体10は、加圧版10bの中心に二重管ロッド7が位置し、さらに柱状固結体1の中心を一致させたものである。
【0061】
図6は繰返し載荷装置構造体10の平面図である。本発明の繰返し載荷装置構造体10は加圧板10bの中央に載荷重および柱状固結体1の中心を一致させた。このため、二重管ロッドリフト装置6の二重管ロッド7の保持部分を繰返し荷重装置10aにくい込んだ形状としなければならない。繰返し荷重装置10aは2つの回転軸を一対として、両軸に同量の偏心重錘を左右対称に置き、同一の回転速度で互いに反対方向に回転することで鉛直方向の繰返し荷重を発生させる機構になっている。本発明の繰返し載荷装置構造体10は、繰返し荷重装置10aの両軸の間隔を離し、この空間に二重管ロッドリフト装置6の二重管ロッド7の保持部分をくい込ませたものである。図6の矢印は両軸の引き離し長さを示している。
【0062】
全土被り圧において、静的圧入だけでは締固め限界状態を超えている。本発明は大気圧による土被り圧増加に加えて、繰返し荷重による動的締固め工法を併用する。動的圧縮圧力を発生させて圧縮沈下を促進させる。併行して固結材を静的に圧入して柱状固結体1を造成し、動的、静的締固めによる地盤の体積減少と柱状固結体1の体積を平衡させて地表面の変位を生じさせないようにする精度の高い管理である。これは前記の加圧版10bの中央に載荷重中心、二重管ロッド7、柱状固結体1の中心を一致させた載荷装置構造体10において圧縮、隆起応力の平衡が確実に実施される。
【0063】
定量的改良管理は実施例1、実施例2も同様に行われるが、実施例2は繰返し荷重の要素繰返し荷重の大きさ、周波数、作動時間の管理が加わる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】 対象地盤上にロッドリフト装置6を据付けた改良状態の断面図
【図2】 舗装構造物を防護する二重管ケーシング9の断面および図平面
【図3】 注入管先端部の土中型枠7eの概略説明図
【図4】 柱状固結体1の造成における施工順序図
【図5】 繰返し載荷装置構造体10据付けた改良状態の断面図
【図6】 繰返し載荷装置構造体10の平面図
【符号の説明】
【0065】
1 柱状固結体
2 液状化対象層
5 舗装構造物
5b 路盤
6 ロッドリフト装置
7 二重管ロッド
7a 注入管
7b 吸水管
7d ロッドストレーナー
7e 土中型枠
8 真空ポンプ
9 二重管ケーシング
10 繰返し載荷装置構造体1
10a 繰返し荷重装置
10b 加圧版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化の恐れのある軟弱地盤の改良工法において、対象地盤の表面を面的に加圧して土被り圧を増大させると共に、適度に流動性のある固結材を用いて、静的圧入し、地盤中に柱状固結体1を造成することで周辺の地盤を圧縮強化して想定地震に対応する地盤密度を確保することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1の地盤改良工法において、地表面隆起の原因となる固結材の注入圧力と抑止圧力を平衡させる機構、固結材に置き換わる間隙水量を所定の吸水経路により直接地上へ排出して過剰間隙水圧の抑制機構、固結材の圧入パイプの先端部に土中の型枠機能を持たせる機構を単独または併せ持つことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
請求項1の地盤改良工法において、対象地盤の表面の面的加圧方法を大気圧として土被り圧を増大させることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項4】
請求項1の地盤改良工法における動的締固めを併用する工法において、大気圧と繰返し荷重の複合荷重とし、繰返し荷重の要素である荷重の大きさ、周波数、作用時間の要素値を対象地盤の圧縮特性により適正に設定することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項5】
請求項4に使用する繰返し載荷装置において、加圧版10bの中央に荷重の中心および二重管ロッド7,柱状固結体1の中心を一致させることを特徴とする繰返し載荷装置構造体10。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157804(P2011−157804A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35361(P2010−35361)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(506101805)
【出願人】(506147755)
【Fターム(参考)】