砂防用ブロック
【課題】現場作業の省力化と無人化施工に対応できるように1本吊りで施工でき、現場への備蓄、持ち出し、緊急時の移設が容易にできる強固な砂防用ブロックを実現させる。
【解決手段】砂防用ブロック1は、平面が略菱形形状を呈し、各角部には三角形状突部2a〜2dが形成されると共に、その下面にはそれぞれ脚部3a〜3dが突設されている。また、砂防用ブロック1の表面の中心部には略四角形状の角型凹部4が形成され、その奥部には吊り金具(図示せず)が固設されている。各三角形状突部2a〜2dは、隣接する砂防用ブロック1の三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロック1が斜めに競り合うように形成されている。砂防用ブロック1を積み重ねたとき、下段の砂防用ブロック1の角型凹部4には、上段の4個の砂防用ブロック1の脚部3a〜3dが一箇所に集合して嵌入される。これにより、強固に一体化された砂防堰堤を構築することができる。
【解決手段】砂防用ブロック1は、平面が略菱形形状を呈し、各角部には三角形状突部2a〜2dが形成されると共に、その下面にはそれぞれ脚部3a〜3dが突設されている。また、砂防用ブロック1の表面の中心部には略四角形状の角型凹部4が形成され、その奥部には吊り金具(図示せず)が固設されている。各三角形状突部2a〜2dは、隣接する砂防用ブロック1の三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロック1が斜めに競り合うように形成されている。砂防用ブロック1を積み重ねたとき、下段の砂防用ブロック1の角型凹部4には、上段の4個の砂防用ブロック1の脚部3a〜3dが一箇所に集合して嵌入される。これにより、強固に一体化された砂防堰堤を構築することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は砂防用ブロックに関するものであり、特に、河川等における礫・土砂・土石流・火山流等を防止するための砂防堰堤の構築に供する砂防用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、砂防用ブロックなどを用いた砂防施設は、河床の縦侵食を防止して該河床の安定化を図ったり、河床堆積物の流出を防止したりするために広く施工されている。このような砂防施設は、山脚(斜面崩壊地末端部)を固定するための山脚固定や、護岸等の工作物の基礎を保護するための床固工、あるいは、河床の縦侵食防止、河床堆積物の流出防止、土石流の抑制又は抑止、流出土砂の抑制及び調整などを目的とした砂防堰堤などに利用され、その整備が進められている。また、近年、火山の噴火は3ケ月程度前より予知できるため、予知された周辺地域のストックヤードに砂防用ブロックを備蓄しておき、緊急時において砂防堰堤や床固工を必要な箇所に設置し、人家、耕地、あるいは公共施設等を保護する事業も進められている。また、火山噴出物によって推積した脆弱な地質による土石流災害などから住民を守るために砂防堰堤が有効に利用されている。
【0003】
このような砂防堰堤や床固工の構築は、従来より、現場打ちコンクリート工法が多く用いられている。しかしながら、砂防堰堤や床固工を必要とする場所は、一般的に、山間部であって材料の運搬等が困難な場所であることが多く、且つ、工事用地も不足しているような箇所が多く見られる。また、このような砂防堰堤や床固工の構築地点は、土石流や落石等から作業員の安全を確保するために、無人化施工を要求される場合が多い。
【0004】
一方、火山砂防の場合は、火山流の規模や方向が噴火の3ケ月前程度に予知できるため、短期間に防御施設を施工して完了させる必要がある。また、火山予知により危険地域と指定された場合は、その地域に人が立ち入れないために、無人化施工が要求される場合も多い。このような事情により現場打ちコンクリート工法に変わる新たな無人施工が求められている。このような要求に応えるためのプレキャストコンクリートブロックは、現場作業が少なく、且つ、短期間で砂防堰堤を構築できる無人化施工として広く利用されている。
【0005】
このようなプレキャストコンクリートブロックによる砂防堰堤や床固工には、異形コンクリートブロックを乱積みにしたものや、層積みにしたものなどが存在する。また、表面だけをプレキャスト化して残存型枠とし、内部に現場打ちコンクリートを流し込むような工法も知られている。
【0006】
このような異形コンクリートブロックとしては、上下のコンクリートの噛み合いをよくした平面突起型のコンクリートブロックが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。また、表面に凹凸を有する直方体型(長方形型)の異形コンクリートブロックを組み合わせて堰堤を構築する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、それぞれのコンクリートブロックに固着された連結部材を介して各コンクリートブロックを連結するコンクリート連結構造物の技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。このような異形コンクリートブロックを組み合わせて砂防堰堤や砂防ダムを構築することにより、強固なコンクリート構造物を構築することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−28161号公報
【特許文献2】特公平2−22808号公報
【特許文献3】特開2001−32238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の各公報に開示されたコンクリートブロックは、何れも、無人化施工や現場周辺に備蓄して移設施工することを想定していない。また、コンクリートブロックを吊り上げる場合には、該コンクリートブロックの吊点が多いために施工に手間がかかる。さらに、特許文献1に開示された平面突起型のコンクリートブロックは、各ブロックの上面と下面には噛み合せがあるものの、前後左右方向の面には噛み合せがないために、上流から流出する土石流や火山流に対して十分な抵抗力を発揮できないおそれがある。また、上下面方向についても、噛み合せの余裕シロがあるためにコンクリートブロックが微動するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に開示された直方体型の異形コンクリートブロックについても、各ブロックには噛み合せがあるものの、前後方向の面には噛み合せがないために、上流から流出する土石流や火山流に対して十分な抵抗力を発揮できないおそれがある。さらに、特許文献3に開示されたコンクリート連結構造物は、連結部材を介してコンクリートブロックを一体化するための現場作業が多くなり、且つ現場の状況によっては材料の搬入等が困難となることがある。また、コンクリートの養生などに時間を要するなど、作業効率がよくない側面もある。
【0010】
そこで、現場作業が省力化できて無人化施工に対応できるように1本吊りで施工でき、且つ、現場周辺への備蓄、持ち出し、及び緊急時の移設が容易にできるような強固な砂防用ブロックを実現させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成されて成ることを特徴とする砂防用ブロックを提供する。
【0012】
この構成によれば、砂防用ブロックは、平面が略菱形形状であって、その菱形形状のそれぞれの角部には、厚み方向に延在された三角形状突部が形成されている。さらに、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設されている。また、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの表面側の中心部には、略四角形状の角型凹部が形成されている。このような構成の砂防用ブロックによれば、該砂防用ブロックを平面方向に並べながら上段へ積み重ねたときに、相互に隣接する砂防用ブロックは、上下方向、前後方向、左右方向において強固に一体化されるので、堅牢且つ安定的な砂防堰堤を構築することができる。
【0013】
請求項2記載の発明では、前記三角形状突部は、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロックが斜めに競り合うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の砂防用ブロックを提供する。
【0014】
この構成によれば、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの4箇所の角部には三角形状突部が形成されるので、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部が相互に当接したとき、隣接するそれぞれの砂防用ブロックは斜めに競り合う構成となる。従って、各砂防用ブロッ
クを平面上に並べたときに隙間なく密に配列することができるので、強固な砂防堰堤を構築することが可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明は、複数の砂防用ブロックが積み重ねられたとき、下段の砂防用ブロックの前記角型凹部には、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚部が一箇所に集合されて密に嵌入されることを特徴とする請求項2記載の砂防用ブロックを提供する。
【0016】
この構成によれば、砂防用ブロックを積み重ねたとき、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚が一箇所に集合されて、下段の1個の砂防用ブロックの角型凹部に一括して嵌まり込む状態となる。これによって、砂防用ブロックを所望の高さまで積み上げても安定化するので、高い砂防堰堤であっても堅牢に構築することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、さらに、前記角型凹部の奥部には非貫通の円形穴が形成され、該円形穴の内部には、前記角型凹部の底面より突き出ないように吊り金具が固設されていることを特徴とする請求項3記載の砂防用ブロックを提供する。
【0018】
この構成によれば、砂防用ブロックには吊り金具が固設されているので、砂防堰堤を構築するときに、各砂防用ブロックを一本の吊り金具で吊り上げることができる。これによって、現場作業を省力化することができると共に、無人化施工にも対応することができる。さらに、前記吊り金具は、角型凹部の底面より突き出ないように固設されているので、砂防用ブロックを積み上げたときに、吊り金具が上段の砂防用ブロックに当たるおそれはない。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記砂防用ブロックが積み重ねられて備蓄されたとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されることを特徴とする請求項4記載の砂防用ブロックを提供する。
【0020】
この構成によれば、砂防用ブロックを積み重ねて備蓄するとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されている。これにより、砂防堰堤の施工現場の周辺に多数の砂防用ブロックを安定的に積み上げて備蓄することができる。また、緊急時に移設できる状態で多数の砂防用ブロックを備蓄することができると共に、持ち出しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明は、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの各角部には三角形状突部が形成され、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、砂防用ブロックの表面側の中心部には角型凹部が形成されている。このような構成にすることにより、砂防用ブロックを平面方向に並べながら上段へ積み重ねたときに、相互に隣接する砂防用ブロックは、上下方向、前後方向、左右方向において強固に一体化されるので、堅牢且つ安定的な砂防堰堤を構築することができる。
【0022】
請求項2記載の発明は、隣接する砂防用ブロックのそれぞれの三角形状突部は斜めに競り合うように構成されているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、各砂防用ブロックを平面上に並べたときに隙間なく密に配列することができるため、強固な砂防堰堤を構築することが可能となる。
【0023】
請求項3記載の発明は、砂防用ブロックを積み重ねたときに、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚が一箇所に集合されて下段の1個の砂防用ブロックの角型凹部に
一括して嵌まり込むので、請求項2記載の発明の効果に加えて、砂防用ブロックを所望の高さまで積み上げても安定化するので、高い砂防堰堤であっても堅牢に構築することができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、砂防用ブロックには吊り金具が固設されているので、請求項3記載の発明の効果に加えて、砂防用ブロックを一本の吊り金具で吊り上げることができるため、砂防堰堤を構築するときの現場作業を省力化することができると共に、無人化施工にも対応することができる。さらに、吊り金具は角型凹部の底面より突き出ないように固設されているので、砂防用ブロックを積み上げたときに、吊り金具が上段のブ砂防用ロックに当たるおそれはない。
【0025】
請求項5記載の発明は、砂防用ブロックを積み重ねて備蓄するとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されているので、請求項4記載の発明の効果に加えて、施工現場の周辺に多数の砂防用ブロックを安定的に積み上げて備蓄することができると共に、緊急時に移設できる状態で多数の砂防用ブロックを備蓄することができ、且つ持ち出しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る砂防用ブロックの斜視図。
【図2】図1に示す砂防用ブロックの正面図。
【図3】図1に示す砂防用ブロックの平面図。
【図4】図1に示す砂防用ブロックの底面図。
【図5】図1に示す砂防用ブロックの左側面図。
【図6】砂防用ブロックの貫通孔に吊り金具を装着する状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図。
【図7】砂防用ブロックの円形穴の下部に吊り金具を装着した状態を示す斜視図。
【図8】砂防用ブロックを並設したときの平面図。
【図9】砂防用ブロックを積み重ねる状態を示す説明図。
【図10】砂防用ブロックを積層したときの平面図。
【図11】図10の正面図。
【図12】図10のA−A断面図。
【図13】砂防用ブロックを備蓄した状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、現場作業が省力化できて無人化施工に対応できるように1本吊りで施工でき、且つ、現場周辺への備蓄、持ち出し、及び緊急時の移設が容易にできるような強固な砂防用ブロックを実現させるという目的を達成するために、堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成され、その奥部には吊り金具を固設するように構成したことによって実現した。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図13に従って詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る砂防用ブロックの斜視図である。また、図2は図1に示す砂防用ブロックの正面図、図3は平面図、図4は底面図、図5は左側面図である。
【0029】
図1の斜視図、及び図2乃至図5の各方面から見た図に示すように、本発明の一実施例に係る砂防用ブロック1は、全体として平面が略菱型状を呈している。そして、略菱型状
の砂防用ブロック1の各角部には、該砂防用ブロック1の厚み方向に延在された三角形状突部2a,2b,2c,2dが形成されている。さらに、該三角形状突部2a,2b,2c,2dの下面には、それぞれ、脚部3a,3b,3c,3dが突設されている。また、前記砂防用ブロック1の上面の中心部には、略四角形状の角形凹部4が形成されている。さらに、該中心部の角形凹部4の中央部分の下部には、非貫通の円形穴5が設けられている。
【0030】
図6は、砂防用ブロックの円形穴に吊り金具を装着した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。また、図7は、砂防用ブロックの円形穴に吊り金具を装着した状態を示す斜視図である。
【0031】
すなわち、図6(a)、(b)、(c)に示すように、砂防用ブロック1の円形穴5の下部には吊り金具6が設けられているが、該吊り金具6の頭部は略四角形状の角形凹部4の底面までは突き出ていない。尚、吊り金具6の下端は、両側に釣り針状に湾曲していて砂防用ブロック1と一体的に固着されている。
【0032】
すなわち、図7に示すように、吊り金具6は砂防用ブロック1の円形穴5の内部に収納されていて、該吊り金具6の頭部は角形凹部4の底面までは突き出ていない。そのため、上段に積み重ねられた砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3d(図1参照)が、下段の砂防用ブロック1の角形凹部4に収められたときに、上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dは、下段の砂防用ブロック1の吊り金具6に当接するおそれはない。
【0033】
次に、砂防用ブロック1による砂防堰堤の構築方法について説明するが、最初に砂防用ブロック1の搬送方法について述べる。すなわち、砂防用ブロック1を吊り上げて砂防堰堤を構築して行く場合は、図7に示すように、砂防用ブロック1の円形穴5の内部に固着された吊り金具6をクレーン等の建設用機械で吊り上げて、順次、砂防堰堤の設置場所へ並べて行き、さらに、砂防用ブロック1を上段へと積み重ねて行く。このとき、前述したように、砂防用ブロック1を積み重ねたときに、下段の砂防用ブロック1の吊り金具6は上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dには当たらないようになっている。
【0034】
図8は、砂防用ブロックを並設したときの平面図である。すなわち、図1に示すような形状の砂防用ブロック1を一面に並べるときは、隣り合う砂防用ブロック1の三角形状突部2a,2b,2c,2dが斜めに競り合う構造になっているので、図8に示すように各砂防用ブロック1は密着して敷設された平面構成となる。
【0035】
次に、各砂防用ブロック1のそれぞれの隣接線上に上段の砂防用ブロック1の中心線が位置するように積み重ねるとき、上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dのうち、何れかの脚部を下段の砂防用ブロック1の角型凹部4に挿入して積み上げて行く。このときの積み上げ方法について図9を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0036】
図9は、砂防用ブロックを積み重ねる状態を示す説明図である。図9において、右図の砂防用ブロック1aが下段の砂防用ブロックであって、左図の4個の砂防用ブロック1b1,1b2、1b3,1b4が上段に積み上げられる砂防用ブロック1の底面を示している。すなわち、図9に示すように、下段に設置された1個の砂防用ブロック1aの表面側の角形凹部4には、上段の隣接する4個の砂防用ブロック1b1,1b2、1b3,1b4の何れかの脚部3a,3b,3c,3dが4個集中して挿入される。言い換えると、上段の砂防用ブロック1b1の脚部3a、上段の砂防用ブロック1b2の脚部3b、上段の砂防用ブロック1b3の脚部3c、及び上段の砂防用ブロック1b4の脚部3dが1箇所
に集中されて、下段の砂防用ブロック1aの凹部4に挿入される。このようにして砂防用ブロック1を所望の高さまで上段へ積み重ねて行き、所望の高さの砂防堰堤を構築する。
【0037】
図10は、砂防用ブロックを積層したときの平面図、図11は図10の正面図、図12は図10のA−A断面図である。すなわち、図10乃至図12に示すように、前述の手法で砂防用ブロック1を所望の高さまで積み上げて行くと所望の高さの砂防堰堤が構築される。斯くの如くして、任意の高さの砂防堰堤が、例えば、河川を横断するように敷設されることによって、流下する小石又は土砂を該砂防堰堤によって食い止めることができる。
【0038】
図13は、砂防用ブロックを備蓄した状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。すなわち、砂防用ブロック1を現場周辺に備蓄する場合は、図13(a)、(b)に示すように、各砂防用ブロック1の三角形状突部2a,2b,2c,2dを斜めに競り合うにして配置することにより、多数の砂防用ブロック1をコンパクトに積み上げて備蓄することができる。このとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置される。従って、河川の堤防や山間部の斜面などのように、平坦な場所が狭い現場であっても多数の砂防用ブロックを備蓄しておくことができる。
【0039】
すなわち、本実施例の砂防用ブロックによれば、現場作業が省力化でき、且つ、無人化施工に対応できるように、砂防用ブロックに固着された吊り金具を1本吊りすることにより、多数の砂防用ブロックを容易に施工地点へ搬送して砂防堰堤を構築することができる。また、緊急時に移設できるように砂防用ブロックの備蓄が簡単にでき、且つ、持ち出しも容易である。さらに、砂防用ブロックの形状により、砂防堰堤の隣接する砂防用ブロックを、相互に、上下方向、前後方向、左右方向に強固に一体化させることができる。また、上段の4個の砂防用ブロックの脚部が1箇所に集中されて、下段の1個の砂防用ブロックの角形凹部に密に収納されるので、多数の砂防用ブロックを安定的に高く積み上げることも可能である。
【0040】
本発明の砂防用ブロックの効果についてさらに詳細に説明すると、上下方向、前後方向、左右方向の各砂防用ブロックの噛み合せにより強固な一体性を確保することができるので、山脚固定、縦侵食防止、河床堆積物流出防止、土石流の抑制または抑止、流出土砂の抑制および調整などに有効な砂防堰堤を構築することができる。
【0041】
また、上段の4個の砂防用ブロックが下段の1個の砂防用ブロックと強固に一体化されることにより、上下の砂防用ブロックの一体化だけではなく、左右前後方向の各砂防用ブロックの一体化をより強固なものとすることができる。さらに、前後左右の砂防用ブロックについては、平面方向にも摩擦力が大きくなるように競り合う構造となっているため、より強固な一体性を確保できるように砂防堰堤を構築することができる。このようにして、複数の砂防用ブロックの一体性を確保することにより、土石流や火山流の激しい流れに対して、複数の砂防用ブロックがブロック群として抵抗するため、下流への土石流や火山流の流出を抑制及び防止することができる。
【0042】
また、砂防用ブロックを吊り金具によって1本吊りすることができるため、無人化施工に対応することができると共に、該砂防用ブロックの緊急搬出も可能となる。さらに、砂防用ブロックを1箇所で吊り上げることにより、無人化施工用のオートフックでの施工を行うことが可能となる。また、砂防用ブロックを施工現場の近隣に備蓄した状態から搬出する際の手間が省力化されるため、緊急時における砂防用ブロックの搬出も容易となる。
【0043】
また、多数の砂防用ブロックをコンパクトに備蓄することができるので、山間部や狭い河川敷などにおいても、砂防用ブロックを備蓄しながら砂防堰堤を構築することができる
。さらに、上段の砂防用ブロックの脚部が下段の砂防用ブロックの天端に当たるように設置することで、噛み合せがないために備蓄状態からの搬出作業が行い易い。
【0044】
以上、本発明に係る砂防用ブロックの一実施例について説明したが、本発明の砂防用ブロックは上記実施例に限定されるものでなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の砂防用ブロックは、備蓄、搬送が容易であると共に、強固な砂防堰堤を構築することができるので、河川やダムや火山流防止堰堤など様々な砂防施設において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b1,1b2,1b3,1b4 砂防用ブロック
2a,2b,2c,2d 三角形状突部
3a,3b,3c,3d 脚部
4 角型凹部
5 円形穴
6 吊り金具
【技術分野】
【0001】
本発明は砂防用ブロックに関するものであり、特に、河川等における礫・土砂・土石流・火山流等を防止するための砂防堰堤の構築に供する砂防用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、砂防用ブロックなどを用いた砂防施設は、河床の縦侵食を防止して該河床の安定化を図ったり、河床堆積物の流出を防止したりするために広く施工されている。このような砂防施設は、山脚(斜面崩壊地末端部)を固定するための山脚固定や、護岸等の工作物の基礎を保護するための床固工、あるいは、河床の縦侵食防止、河床堆積物の流出防止、土石流の抑制又は抑止、流出土砂の抑制及び調整などを目的とした砂防堰堤などに利用され、その整備が進められている。また、近年、火山の噴火は3ケ月程度前より予知できるため、予知された周辺地域のストックヤードに砂防用ブロックを備蓄しておき、緊急時において砂防堰堤や床固工を必要な箇所に設置し、人家、耕地、あるいは公共施設等を保護する事業も進められている。また、火山噴出物によって推積した脆弱な地質による土石流災害などから住民を守るために砂防堰堤が有効に利用されている。
【0003】
このような砂防堰堤や床固工の構築は、従来より、現場打ちコンクリート工法が多く用いられている。しかしながら、砂防堰堤や床固工を必要とする場所は、一般的に、山間部であって材料の運搬等が困難な場所であることが多く、且つ、工事用地も不足しているような箇所が多く見られる。また、このような砂防堰堤や床固工の構築地点は、土石流や落石等から作業員の安全を確保するために、無人化施工を要求される場合が多い。
【0004】
一方、火山砂防の場合は、火山流の規模や方向が噴火の3ケ月前程度に予知できるため、短期間に防御施設を施工して完了させる必要がある。また、火山予知により危険地域と指定された場合は、その地域に人が立ち入れないために、無人化施工が要求される場合も多い。このような事情により現場打ちコンクリート工法に変わる新たな無人施工が求められている。このような要求に応えるためのプレキャストコンクリートブロックは、現場作業が少なく、且つ、短期間で砂防堰堤を構築できる無人化施工として広く利用されている。
【0005】
このようなプレキャストコンクリートブロックによる砂防堰堤や床固工には、異形コンクリートブロックを乱積みにしたものや、層積みにしたものなどが存在する。また、表面だけをプレキャスト化して残存型枠とし、内部に現場打ちコンクリートを流し込むような工法も知られている。
【0006】
このような異形コンクリートブロックとしては、上下のコンクリートの噛み合いをよくした平面突起型のコンクリートブロックが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。また、表面に凹凸を有する直方体型(長方形型)の異形コンクリートブロックを組み合わせて堰堤を構築する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、それぞれのコンクリートブロックに固着された連結部材を介して各コンクリートブロックを連結するコンクリート連結構造物の技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。このような異形コンクリートブロックを組み合わせて砂防堰堤や砂防ダムを構築することにより、強固なコンクリート構造物を構築することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−28161号公報
【特許文献2】特公平2−22808号公報
【特許文献3】特開2001−32238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の各公報に開示されたコンクリートブロックは、何れも、無人化施工や現場周辺に備蓄して移設施工することを想定していない。また、コンクリートブロックを吊り上げる場合には、該コンクリートブロックの吊点が多いために施工に手間がかかる。さらに、特許文献1に開示された平面突起型のコンクリートブロックは、各ブロックの上面と下面には噛み合せがあるものの、前後左右方向の面には噛み合せがないために、上流から流出する土石流や火山流に対して十分な抵抗力を発揮できないおそれがある。また、上下面方向についても、噛み合せの余裕シロがあるためにコンクリートブロックが微動するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に開示された直方体型の異形コンクリートブロックについても、各ブロックには噛み合せがあるものの、前後方向の面には噛み合せがないために、上流から流出する土石流や火山流に対して十分な抵抗力を発揮できないおそれがある。さらに、特許文献3に開示されたコンクリート連結構造物は、連結部材を介してコンクリートブロックを一体化するための現場作業が多くなり、且つ現場の状況によっては材料の搬入等が困難となることがある。また、コンクリートの養生などに時間を要するなど、作業効率がよくない側面もある。
【0010】
そこで、現場作業が省力化できて無人化施工に対応できるように1本吊りで施工でき、且つ、現場周辺への備蓄、持ち出し、及び緊急時の移設が容易にできるような強固な砂防用ブロックを実現させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成されて成ることを特徴とする砂防用ブロックを提供する。
【0012】
この構成によれば、砂防用ブロックは、平面が略菱形形状であって、その菱形形状のそれぞれの角部には、厚み方向に延在された三角形状突部が形成されている。さらに、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設されている。また、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの表面側の中心部には、略四角形状の角型凹部が形成されている。このような構成の砂防用ブロックによれば、該砂防用ブロックを平面方向に並べながら上段へ積み重ねたときに、相互に隣接する砂防用ブロックは、上下方向、前後方向、左右方向において強固に一体化されるので、堅牢且つ安定的な砂防堰堤を構築することができる。
【0013】
請求項2記載の発明では、前記三角形状突部は、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロックが斜めに競り合うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の砂防用ブロックを提供する。
【0014】
この構成によれば、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの4箇所の角部には三角形状突部が形成されるので、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部が相互に当接したとき、隣接するそれぞれの砂防用ブロックは斜めに競り合う構成となる。従って、各砂防用ブロッ
クを平面上に並べたときに隙間なく密に配列することができるので、強固な砂防堰堤を構築することが可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明は、複数の砂防用ブロックが積み重ねられたとき、下段の砂防用ブロックの前記角型凹部には、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚部が一箇所に集合されて密に嵌入されることを特徴とする請求項2記載の砂防用ブロックを提供する。
【0016】
この構成によれば、砂防用ブロックを積み重ねたとき、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚が一箇所に集合されて、下段の1個の砂防用ブロックの角型凹部に一括して嵌まり込む状態となる。これによって、砂防用ブロックを所望の高さまで積み上げても安定化するので、高い砂防堰堤であっても堅牢に構築することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、さらに、前記角型凹部の奥部には非貫通の円形穴が形成され、該円形穴の内部には、前記角型凹部の底面より突き出ないように吊り金具が固設されていることを特徴とする請求項3記載の砂防用ブロックを提供する。
【0018】
この構成によれば、砂防用ブロックには吊り金具が固設されているので、砂防堰堤を構築するときに、各砂防用ブロックを一本の吊り金具で吊り上げることができる。これによって、現場作業を省力化することができると共に、無人化施工にも対応することができる。さらに、前記吊り金具は、角型凹部の底面より突き出ないように固設されているので、砂防用ブロックを積み上げたときに、吊り金具が上段の砂防用ブロックに当たるおそれはない。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記砂防用ブロックが積み重ねられて備蓄されたとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されることを特徴とする請求項4記載の砂防用ブロックを提供する。
【0020】
この構成によれば、砂防用ブロックを積み重ねて備蓄するとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されている。これにより、砂防堰堤の施工現場の周辺に多数の砂防用ブロックを安定的に積み上げて備蓄することができる。また、緊急時に移設できる状態で多数の砂防用ブロックを備蓄することができると共に、持ち出しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明は、平面が略菱形形状の砂防用ブロックの各角部には三角形状突部が形成され、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、砂防用ブロックの表面側の中心部には角型凹部が形成されている。このような構成にすることにより、砂防用ブロックを平面方向に並べながら上段へ積み重ねたときに、相互に隣接する砂防用ブロックは、上下方向、前後方向、左右方向において強固に一体化されるので、堅牢且つ安定的な砂防堰堤を構築することができる。
【0022】
請求項2記載の発明は、隣接する砂防用ブロックのそれぞれの三角形状突部は斜めに競り合うように構成されているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、各砂防用ブロックを平面上に並べたときに隙間なく密に配列することができるため、強固な砂防堰堤を構築することが可能となる。
【0023】
請求項3記載の発明は、砂防用ブロックを積み重ねたときに、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の脚が一箇所に集合されて下段の1個の砂防用ブロックの角型凹部に
一括して嵌まり込むので、請求項2記載の発明の効果に加えて、砂防用ブロックを所望の高さまで積み上げても安定化するので、高い砂防堰堤であっても堅牢に構築することができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、砂防用ブロックには吊り金具が固設されているので、請求項3記載の発明の効果に加えて、砂防用ブロックを一本の吊り金具で吊り上げることができるため、砂防堰堤を構築するときの現場作業を省力化することができると共に、無人化施工にも対応することができる。さらに、吊り金具は角型凹部の底面より突き出ないように固設されているので、砂防用ブロックを積み上げたときに、吊り金具が上段のブ砂防用ロックに当たるおそれはない。
【0025】
請求項5記載の発明は、砂防用ブロックを積み重ねて備蓄するとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されているので、請求項4記載の発明の効果に加えて、施工現場の周辺に多数の砂防用ブロックを安定的に積み上げて備蓄することができると共に、緊急時に移設できる状態で多数の砂防用ブロックを備蓄することができ、且つ持ち出しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る砂防用ブロックの斜視図。
【図2】図1に示す砂防用ブロックの正面図。
【図3】図1に示す砂防用ブロックの平面図。
【図4】図1に示す砂防用ブロックの底面図。
【図5】図1に示す砂防用ブロックの左側面図。
【図6】砂防用ブロックの貫通孔に吊り金具を装着する状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図。
【図7】砂防用ブロックの円形穴の下部に吊り金具を装着した状態を示す斜視図。
【図8】砂防用ブロックを並設したときの平面図。
【図9】砂防用ブロックを積み重ねる状態を示す説明図。
【図10】砂防用ブロックを積層したときの平面図。
【図11】図10の正面図。
【図12】図10のA−A断面図。
【図13】砂防用ブロックを備蓄した状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、現場作業が省力化できて無人化施工に対応できるように1本吊りで施工でき、且つ、現場周辺への備蓄、持ち出し、及び緊急時の移設が容易にできるような強固な砂防用ブロックを実現させるという目的を達成するために、堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成され、その奥部には吊り金具を固設するように構成したことによって実現した。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図13に従って詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る砂防用ブロックの斜視図である。また、図2は図1に示す砂防用ブロックの正面図、図3は平面図、図4は底面図、図5は左側面図である。
【0029】
図1の斜視図、及び図2乃至図5の各方面から見た図に示すように、本発明の一実施例に係る砂防用ブロック1は、全体として平面が略菱型状を呈している。そして、略菱型状
の砂防用ブロック1の各角部には、該砂防用ブロック1の厚み方向に延在された三角形状突部2a,2b,2c,2dが形成されている。さらに、該三角形状突部2a,2b,2c,2dの下面には、それぞれ、脚部3a,3b,3c,3dが突設されている。また、前記砂防用ブロック1の上面の中心部には、略四角形状の角形凹部4が形成されている。さらに、該中心部の角形凹部4の中央部分の下部には、非貫通の円形穴5が設けられている。
【0030】
図6は、砂防用ブロックの円形穴に吊り金具を装着した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。また、図7は、砂防用ブロックの円形穴に吊り金具を装着した状態を示す斜視図である。
【0031】
すなわち、図6(a)、(b)、(c)に示すように、砂防用ブロック1の円形穴5の下部には吊り金具6が設けられているが、該吊り金具6の頭部は略四角形状の角形凹部4の底面までは突き出ていない。尚、吊り金具6の下端は、両側に釣り針状に湾曲していて砂防用ブロック1と一体的に固着されている。
【0032】
すなわち、図7に示すように、吊り金具6は砂防用ブロック1の円形穴5の内部に収納されていて、該吊り金具6の頭部は角形凹部4の底面までは突き出ていない。そのため、上段に積み重ねられた砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3d(図1参照)が、下段の砂防用ブロック1の角形凹部4に収められたときに、上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dは、下段の砂防用ブロック1の吊り金具6に当接するおそれはない。
【0033】
次に、砂防用ブロック1による砂防堰堤の構築方法について説明するが、最初に砂防用ブロック1の搬送方法について述べる。すなわち、砂防用ブロック1を吊り上げて砂防堰堤を構築して行く場合は、図7に示すように、砂防用ブロック1の円形穴5の内部に固着された吊り金具6をクレーン等の建設用機械で吊り上げて、順次、砂防堰堤の設置場所へ並べて行き、さらに、砂防用ブロック1を上段へと積み重ねて行く。このとき、前述したように、砂防用ブロック1を積み重ねたときに、下段の砂防用ブロック1の吊り金具6は上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dには当たらないようになっている。
【0034】
図8は、砂防用ブロックを並設したときの平面図である。すなわち、図1に示すような形状の砂防用ブロック1を一面に並べるときは、隣り合う砂防用ブロック1の三角形状突部2a,2b,2c,2dが斜めに競り合う構造になっているので、図8に示すように各砂防用ブロック1は密着して敷設された平面構成となる。
【0035】
次に、各砂防用ブロック1のそれぞれの隣接線上に上段の砂防用ブロック1の中心線が位置するように積み重ねるとき、上段の砂防用ブロック1の脚部3a,3b,3c,3dのうち、何れかの脚部を下段の砂防用ブロック1の角型凹部4に挿入して積み上げて行く。このときの積み上げ方法について図9を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0036】
図9は、砂防用ブロックを積み重ねる状態を示す説明図である。図9において、右図の砂防用ブロック1aが下段の砂防用ブロックであって、左図の4個の砂防用ブロック1b1,1b2、1b3,1b4が上段に積み上げられる砂防用ブロック1の底面を示している。すなわち、図9に示すように、下段に設置された1個の砂防用ブロック1aの表面側の角形凹部4には、上段の隣接する4個の砂防用ブロック1b1,1b2、1b3,1b4の何れかの脚部3a,3b,3c,3dが4個集中して挿入される。言い換えると、上段の砂防用ブロック1b1の脚部3a、上段の砂防用ブロック1b2の脚部3b、上段の砂防用ブロック1b3の脚部3c、及び上段の砂防用ブロック1b4の脚部3dが1箇所
に集中されて、下段の砂防用ブロック1aの凹部4に挿入される。このようにして砂防用ブロック1を所望の高さまで上段へ積み重ねて行き、所望の高さの砂防堰堤を構築する。
【0037】
図10は、砂防用ブロックを積層したときの平面図、図11は図10の正面図、図12は図10のA−A断面図である。すなわち、図10乃至図12に示すように、前述の手法で砂防用ブロック1を所望の高さまで積み上げて行くと所望の高さの砂防堰堤が構築される。斯くの如くして、任意の高さの砂防堰堤が、例えば、河川を横断するように敷設されることによって、流下する小石又は土砂を該砂防堰堤によって食い止めることができる。
【0038】
図13は、砂防用ブロックを備蓄した状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。すなわち、砂防用ブロック1を現場周辺に備蓄する場合は、図13(a)、(b)に示すように、各砂防用ブロック1の三角形状突部2a,2b,2c,2dを斜めに競り合うにして配置することにより、多数の砂防用ブロック1をコンパクトに積み上げて備蓄することができる。このとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置される。従って、河川の堤防や山間部の斜面などのように、平坦な場所が狭い現場であっても多数の砂防用ブロックを備蓄しておくことができる。
【0039】
すなわち、本実施例の砂防用ブロックによれば、現場作業が省力化でき、且つ、無人化施工に対応できるように、砂防用ブロックに固着された吊り金具を1本吊りすることにより、多数の砂防用ブロックを容易に施工地点へ搬送して砂防堰堤を構築することができる。また、緊急時に移設できるように砂防用ブロックの備蓄が簡単にでき、且つ、持ち出しも容易である。さらに、砂防用ブロックの形状により、砂防堰堤の隣接する砂防用ブロックを、相互に、上下方向、前後方向、左右方向に強固に一体化させることができる。また、上段の4個の砂防用ブロックの脚部が1箇所に集中されて、下段の1個の砂防用ブロックの角形凹部に密に収納されるので、多数の砂防用ブロックを安定的に高く積み上げることも可能である。
【0040】
本発明の砂防用ブロックの効果についてさらに詳細に説明すると、上下方向、前後方向、左右方向の各砂防用ブロックの噛み合せにより強固な一体性を確保することができるので、山脚固定、縦侵食防止、河床堆積物流出防止、土石流の抑制または抑止、流出土砂の抑制および調整などに有効な砂防堰堤を構築することができる。
【0041】
また、上段の4個の砂防用ブロックが下段の1個の砂防用ブロックと強固に一体化されることにより、上下の砂防用ブロックの一体化だけではなく、左右前後方向の各砂防用ブロックの一体化をより強固なものとすることができる。さらに、前後左右の砂防用ブロックについては、平面方向にも摩擦力が大きくなるように競り合う構造となっているため、より強固な一体性を確保できるように砂防堰堤を構築することができる。このようにして、複数の砂防用ブロックの一体性を確保することにより、土石流や火山流の激しい流れに対して、複数の砂防用ブロックがブロック群として抵抗するため、下流への土石流や火山流の流出を抑制及び防止することができる。
【0042】
また、砂防用ブロックを吊り金具によって1本吊りすることができるため、無人化施工に対応することができると共に、該砂防用ブロックの緊急搬出も可能となる。さらに、砂防用ブロックを1箇所で吊り上げることにより、無人化施工用のオートフックでの施工を行うことが可能となる。また、砂防用ブロックを施工現場の近隣に備蓄した状態から搬出する際の手間が省力化されるため、緊急時における砂防用ブロックの搬出も容易となる。
【0043】
また、多数の砂防用ブロックをコンパクトに備蓄することができるので、山間部や狭い河川敷などにおいても、砂防用ブロックを備蓄しながら砂防堰堤を構築することができる
。さらに、上段の砂防用ブロックの脚部が下段の砂防用ブロックの天端に当たるように設置することで、噛み合せがないために備蓄状態からの搬出作業が行い易い。
【0044】
以上、本発明に係る砂防用ブロックの一実施例について説明したが、本発明の砂防用ブロックは上記実施例に限定されるものでなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の砂防用ブロックは、備蓄、搬送が容易であると共に、強固な砂防堰堤を構築することができるので、河川やダムや火山流防止堰堤など様々な砂防施設において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b1,1b2,1b3,1b4 砂防用ブロック
2a,2b,2c,2d 三角形状突部
3a,3b,3c,3d 脚部
4 角型凹部
5 円形穴
6 吊り金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、
平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成されて成ることを特徴とする砂防用ブロック。
【請求項2】
前記三角形状突部は、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロックが斜めに競り合うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の砂防用ブロック。
【請求項3】
複数の砂防用ブロックが積み重ねられたとき、下段の砂防用ブロックの前記角型凹部には、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の前記脚部が一箇所に集合されて密に嵌入されることを特徴とする請求項2記載の砂防用ブロック。
【請求項4】
さらに、前記角型凹部の奥部には非貫通の円形穴が形成され、該円形穴の内部には、前記角型凹部の底面より突き出ないように吊り金具が固設されていることを特徴とする請求項3記載の砂防用ブロック。
【請求項5】
前記砂防用ブロックが積み重ねられて備蓄されたとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されることを特徴とする請求項4記載の砂防用ブロック。
【請求項1】
堰堤を構築するための砂防用ブロックであって、
平面が略菱形形状を呈し、各角部には厚み方向に延在された三角形状突部が形成されると共に、該三角形状突部の下面にはそれぞれ脚部が突設され、且つ、表面側の中心部には略四角形状の角型凹部が形成されて成ることを特徴とする砂防用ブロック。
【請求項2】
前記三角形状突部は、隣接する砂防用ブロックの三角形状突部と当接したとき、相互の砂防用ブロックが斜めに競り合うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の砂防用ブロック。
【請求項3】
複数の砂防用ブロックが積み重ねられたとき、下段の砂防用ブロックの前記角型凹部には、上段の4個の砂防用ブロックのそれぞれ1個の前記脚部が一箇所に集合されて密に嵌入されることを特徴とする請求項2記載の砂防用ブロック。
【請求項4】
さらに、前記角型凹部の奥部には非貫通の円形穴が形成され、該円形穴の内部には、前記角型凹部の底面より突き出ないように吊り金具が固設されていることを特徴とする請求項3記載の砂防用ブロック。
【請求項5】
前記砂防用ブロックが積み重ねられて備蓄されたとき、上段の砂防用ブロックのそれぞれの脚部は、下段の砂防用ブロックの表面の天端に当接するように配置されることを特徴とする請求項4記載の砂防用ブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−184943(P2011−184943A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50978(P2010−50978)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
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