説明

研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法

【課題】 成形されたブリケットを破壊させることなく排出させることができる研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】 研削スラッジの固形化物製造装置は、研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とするものである。研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型1と、その端部からなる固形化物の出口1aを開閉するゲート2と、円筒状金型1内に進退自在で金型1内の研削スラッジを圧搾するピストン3と、ゲート2下方に上端が位置して金型出口1aから出た固形化物を受けて排出する排出シュート5とを備える。ゲート2は、金型1の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く方向にスライド可能で、上方へスライドした状態で金型出口1aを開く。排出シュート5は、ゲート2のスライド方向と同じ方向に傾斜させ上面で固形化物を転がり自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼材等の研削ラインで発生した研削スラッジをブリケットに固形化する研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機械部品(例えば転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品)等の研削ラインにおいて、研削により生じた粉状の研削屑は、研削液と共にスラッジとして機外に流して排出し、ろ過の後、研削液を研削に再利用する。ろ過により残った研削スラッジは、汚泥として埋め立て処理される。しかし、研削スラッジの埋め立ては、環境の面から好ましくないばかりでなく、産廃処理場の行き詰まりから、今後、埋め立て処理ができなくなることは明白である。研削で生じる研削屑の量は、切削等に比べて少ないが、軸受等のような量産ラインでは、その発生量は多量となる。
このため、研削スラッジを圧搾することにより固形化し、絞り出された研削液を再利用すると共に、その固形化物(以下「ブリケット」という)を製鋼材として再利用することが検討されている。
【0003】
研削スラッジを固形化する固形化物製造装置としては、ゲート方式とダブルシリンダ方式の2種類に大別される。ゲート方式は、ダブルシリンダ方式に比べて構成が簡素で、小型にできるという利点がある。
ゲート方式による固形化物製造装置として、研削スラッジを入れる円筒状金型と、ガイド部材でスライド自在に支持され円筒状金型の一端を閉じるゲートと、他端側から進退自在に挿入された1つの加圧用のピストンとを備えるものが知られている(特許文献1,2)。この固形化物製造装置では、ピストンを加圧シリンダで加圧することにより、研削スラッジを円筒状金型内で圧搾してブリケットを成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3959014号公報
【特許文献2】特開2004−141935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した研削スラッジの固形化物製造装置では、ゲートが垂直方向に設けられており、圧搾成形されたブリケットは、円筒状金型から加圧シリンダにより水平方向に押し出され、水平方向に押し出されたブリケットは自重で落下排出されるか、加圧シリンダによって水平方向に蹴り出されて垂直方向に落下する。
このため、落下したブリケットが破壊し粉状となり易く、製鋼材料として利用できないという問題が有る。
【0006】
この発明の目的は、成形されたブリケットを破壊させることなく排出させることができる研削スラッジの固形化物製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置は、研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造装置であって、上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを備え、上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、ゲートを、円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能とし、排出シュートを、ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ上面で固形化物を転がり自在としているので、円筒状金型の出口から押し出された固形化物がほとんど落下することなく、傾斜した排出シュートの上面を転がって下方へ排出される。すなわち、排出シュートの傾斜方向が上記の傾斜方向であると、横姿勢の円筒状金型の出口を出た位置にある円柱状の固形化物は、その軸心が、傾斜した排出シュートの上面の幅方向と平行となる。そのため、排出シュート上の固形化物は、転がって下方へ排出される。このため、成形された固形化物であるブリケットを、落下による衝撃で破壊させることなく排出させることができる。また、排出シュートとゲートの傾斜方向が同じであるため、例えば、ピストンの先端に付着した状態で円筒状金型の出口を出た位置にある固形化物を、ゲートの閉じ動作で剥がすときなどに、固形化物と排出シュートの上面との間の距離が短くても、ゲートで固形化物を排出シュートの上面に押し付ける恐れがない。このため、円筒状金型の出口と排出シュートの上面との間の距離を短くし、固形化物が自由落下する距離を短くすることができる。
【0009】
この発明において、上記ゲートのスライド方向の傾斜角度と、上記排出シュートの傾斜角度とを互いに同一角度とするのが望ましい。ゲートのスライド方向と排出シュートとは、傾斜方向が同じであれば、傾斜角度が多少異なっていても良いが、傾斜角度が同一であると、上記の排出シュート上面へのゲートによる固形化物の押し付けの問題がより確実に回避でき、円筒状金型の出口と排出シュートの上面との間の距離を、より一層短くできる。
また、この発明において、円筒状金型の軸心に沿う方向における、上記ゲートの中心と上記排出シュートの中心を一致させるのが望ましい。すなわち、排出シュートの幅方向の中心と、ゲートの厚さの中間とを一致させることが好ましい。この一致により、ピストンの先端に付着した状態で円筒状金型の出口を出た位置にある固形化物を、ゲートの閉じ動作で剥がすときに、ゲートによる固形化物の押し付け位置が、ゲートの中心や排出シュートの中心に対して偏った位置になることがなくて、ゲートにより円滑に固形化物を剥がし、その剥がされた固形化物を排出シュートの中心で受けることができる。
【0010】
この発明において、上記円筒状金型の出口の軸心と、この軸心の鉛直方向の直下位置における上記排出シュートの上面との距離を、上記円筒状金型の出口から排出シュートの上面に落下した位置にある固形化物の一部が、上記出口の下縁よりも上方に位置する距離とするのが望ましい。
このように、円筒状金型の出口から落下した固形化物の一部が、上記出口の下縁よりも上方に位置するように、上記出口の軸心とこの軸心の鉛直方向の直下位置における上記排出シュートの上面との距離を短く設定しても、固形化物は排出シュートの上面を転がって排出される。そのため、円筒状金型の出口からの固形化物の落下距離をそれだけ小さくすることができ、固形化物であるブリケットの落下による破壊をより確実に防止できる。
【0011】
この発明において、上記ゲートをスライドさせるゲート開閉用駆動源と、このゲート開閉用駆動源を制御するゲート開閉制御手段とを設け、このゲート開閉制御手段は、上記ゲートを上方へ開き、上記ピストンにより固形化物が上記円筒状金型の出口から押し出された後、上記ピストンが後退を開始するまでに、上記ゲートを、上記ピストンの先端に付着した固形化物を押し出すことのできる下降位置まで下降動作を行わせるものとしても良い。
円筒状金型内の固形化物をピストンで押し出したときに、固形化物がピストンの先端に付着して落下しない場合がある。そこで、このとき、ゲート開閉制御手段によるゲート開閉用駆動源の制御で、ゲートを一旦上方へ開いた後、上記ピストンが後退を開始するまでの間に、ゲートを開き位置から閉じ位置に下降させることで、ピストンの先端から固形化物を確実に剥がすことができる。
このとき、上記のように、ゲートのスライド方向が鉛直方向であると、円筒状金型の出口と排出シュートの上面との落下距離を大きくしなければ、ゲートで固形化物を排出シュートの上面に押し付けて固形化物を潰すことになる。この固形化物製造装置では、ゲートのスライド方向を傾斜させているので、排出シュートの上面を円筒状金型の出口に近付けても、固形化物を潰す問題がない。この点からも、出口から排出シュート上面までの落下距離をできるだけ小さくすることができる。なお、固形化物を剥がすためにゲートを開き位置から閉じ位置に下降させる動作は、剥がし専用の動作である必要はなく、次の圧搾のためにゲートを閉じ位置に復帰させる動作で良い。
【0012】
この発明において、上記ゲートを上記円筒状金型の端面に沿ってスライド可能にゲート両端部で案内する一対のガイド部材を設け、上記排出シュートを、上記ガイド部材に上端が接続された排出シュート本体と、上記一対のガイド部材における下側のガイド部材の上面に設けられた排出シュート部とで構成しても良い。このようにゲートのガイド部材に排出シュートの一部となる排出シュート部を設けることで、ガイド部材と排出シュートの干渉の問題を生じることなく、排出シュートの上端を円筒状金型の出口に近づけることができる。
【0013】
この発明において、上記研削液含有の研削スラッジは、研削ラインで発生した研削液含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジであっても良い。研削液含有の研削スラッジは、その研削液の粘性等のために強固に固形化物とすることが難しく、崩れやすいものとなる。しかし、この発明ではゲートを傾斜させ、このゲートと同じ方向に排出シュートを設けていて、上記のように固形化物の落下距離が短くできるため、崩れ易い研削液含有の研削スラッジの固形化物であっても、崩れを生じることなく排出することができる。
【0014】
この発明の研削スラッジの固形化物製造方法は、研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造方法であって、上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを用い、上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ、前記円筒状金型の出口から排出された固形化物を、上記排出シュートから排出することを特徴とする。
この固形化物製造方法によると、ゲートを、円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能とし、排出シュートを、ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ上面で固形化物を転がせて排出するようにしているので、円筒状金型の出口から押し出された固形化物がほとんど落下することなく、傾斜した排出シュートの上面を転がって下方へ排出される。このため、成形された固形化物であるブリケットを落下による衝撃で破壊させることなく排出させることができる。
【0015】
この発明において、上記ゲートのスライド方向の傾斜角度と、上記排出シュートの傾斜角度とを互いに同一角度とするのが望ましい。
【0016】
この発明において、上記ゲートを上方へ開き、上記円筒状金型内の固形化物を上記ピストンで押し出した後、ピストンの先端に付着状態にある固形化物を上記ゲートの閉じ方向の動作でピストンの先端から剥がすようにしても良い。
円筒状金型内の固形化物をピストンで押し出したときに、固形化物がピストンの先端に付着して落下しない場合がある。このとき、ゲートを開き位置から閉じ位置に下降させることで、ピストンの先端から固形化物を剥がすことができる。この場合、ゲートのスライド方向が鉛直方向であると、円筒状金型の出口と排出シュートの上面との落下距離を大きくしなければ、ゲートで固形化物を排出シュートの上面に押し付けて固形化物を潰すことになる。この固形化物製造方法では、ゲートのスライド方向を傾斜させているので、排出シュートの上面を円筒状金型の出口に近付けても、固形化物を潰す問題がない。この点からも、円筒状金型の出口から排出シュート上面までの落下距離をできるだけ小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置は、研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造装置であって、上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを備え、上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させたため、成形された固形物であるブリケットを破壊させることなく排出させることができる。
この発明の研削スラッジの固形化物製造方法は、研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造方法であって、上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを用い、上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ、上記円筒状金型の出口から排出された固形化物を、上記排出シュート上から排出することとしたため、成形された固形化物であるブリケットを破壊させることなく排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態にかかる研削スラッジの固形化物製造装置の構成を示す正面図である。
【図2】同固形化物製造装置の一部破断平面図である。
【図3】同固形化物製造装置の一部破断正面図である。
【図4】(A)は同固形化物製造装置の固形化物成形時における側面図、(B)は(A)におけるIVb−IVb矢視断面図、(C)は(A)におけるIVc−IVc矢視断面図である。
【図5】(A)は同固形化物製造装置のゲート退避状態における側面図、(B)は(A)におけるVb−Vb矢視断面図、(C)は(A)におけるVc−Vc矢視断面図である。
【図6】(A)は同固形化物製造装置の固形化物押し出し時での図4(A)におけるIVb−IVb矢視断面図、(B)は(A)におけるVIb−VIb矢視断面図、(C)は(B)におけるVIc−VIc矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1はこの研削スラッジの固形化物製造装置の構成を示す正面図、図2はその一部破断平面図、図3はその一部破断正面図である。この固形化物製造装置は、研削盤で発生した研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物であるブリケットB(図4)とする装置である。この固形化物製造装置は、上記研削スラッジを充填する円筒状金型1と、この円筒状金型1の端部開口からなるブリケットBの出口1aを開閉するゲート2と、円筒状金型1内に進退自在に設けられ円筒状金型1内の研削スラッジを圧搾するピストン3と、ゲート2の下方に上端が位置して円筒状金型1の出口1aから出たブリケットBを受けて排出する排出シュート5とを備える。ゲート2は、図4(A)に側面図で示すように、円筒状金型1の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して所定角度αだけ傾く傾斜方向にスライド可能で、上方へスライドした状態で円筒状金型1の出口1aを開き、下方へスライドした状態で円筒状金型1の出口1aを閉じる。また、排出シュート5は、ゲート2のスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ、その上面でブリケットBを転がり自在としている。ゲート2は、上下一対のガイド部材(図4(C)4A,4Bによりゲート両側部が案内されて、円筒状金型1の端面に沿ってスライド可能とされる。
【0020】
ゲート2のスライド方向の傾斜角度と、排出シュート5の傾斜角度は、互いに同一角度とされている。また、円筒状金型1の軸心に沿う方向における、ゲート2の中心と排出シュート5の中心は一致させてある。
また、円筒状金型1の出口1aの軸心と、この軸心の鉛直方向の直下位置における排出シュート5の上面との距離は、円筒状金型1の出口1aから排出シュート5の上面に落下した位置にあるブリケットBの一部が、出口1aの下縁よりも上方に位置する距離とされている。排出シュート5は、図4(A)のように、ガイド部材4A,4Bの下端に上端が接続された排出シュート本体51と、一対のガイド部材4A,4Bにおける下側のガイド部材4Bの上面に設けられた排出シュート部52とで構成される。
【0021】
図1および図2に示すように、円筒状金型1は枠組体12に略水平の横向き姿勢で設置され、枠組体12は基台11上に脚部材21を介して設置される。枠組体12は、円筒状金型1におけるブリケット出口1a側である一端部をその外周で保持する前部保持部材13と、この前部保持部材13に一端が連結固定される上下一対の水平連結板14,15と、これら水平連結板14,15の他端が連結固定される後部保持部材16とで構成される。後部保持部材16に、上記ピストン3を進退駆動する進退駆動手段17が設置されている。進退駆動手段17は、油圧式のシリンダ装置からなる。
【0022】
固形化物製造装置の正面断面図を示す図3のように、円筒状金型1のブリケット出口1aとは反対側の端部に近い金型上壁部分に、スラッジ入口18が開口させてある。このスラッジ入口18に臨んで、枠組体12を構成する上側水平連結板14に、スラッジ投入口19が開口させてある。スラッジ入口18には、スラッジ投入口19を介して、同図に仮想線で示すように搬入シュート20の出口が続く。投入する研削スラッジは、研削ラインで発生した研削屑および研削液含有の研削スラッジで、ろ過および濃縮過程を経て濃縮された状態のものである。上記研削液は、油性のものであっても水性のものであっても良い。
【0023】
図4(C)に示すように、上下一対のガイド部材4A,4Bは、ゲート2の両側部をそれぞれスライド自在に嵌合させる一対の対向する溝形の案内面4a,4aを形成した部材である。上下一対のガイド部材4A,4Bは、背面部材25と共に、これらを貫通するボルト27によって前部保持部材13に固定され、これらの部材で囲まれた方形の筒部内をゲート2がスライドする。
【0024】
ゲート2は、両側部がガイド部材4A,4Bにスライド自在に案内される被案内部31と、この被案内部31よりも幅狭とされた蓋部32とでなる。蓋部32は、被案内部31から円筒状金型1の出口1a側に突出し、この出口1aを蓋する。被案内部31と蓋部32とは、それぞれ別の部材で構成されていて、ボルト33(図4(B))により着脱可能に結合される。蓋部32は、円筒状金型1の出口1aの内径よりも大きな外径の円柱状に形成されていて、被案内部31の金型対向面に形成された凹部に嵌合し、上記ボルト33により結合される。
このゲート2は、ゲート開閉用駆動源34によってスライドさせられる。ゲート開閉用駆動源34は油圧シリンダからなり、ガイド部材4A,4Bの上端に取付台35を介して傾斜姿勢に設置されている。そのピストンロッド36が、ゲート2を構成する被案内部31の上方に突出する首部31aにピン37を介して連結されている。図1に示すように、ゲート開閉用駆動源34はゲート開閉制御手段40によって制御される。ゲート開閉制御手段40は、ゲート2を開閉させる基本的な制御を行うが、この基本として、ピストン3の先端に付着したブリケットBを剥がすための以下のような制御を行う。すなわち、ゲート2を上方へ開き、ピストン3によりブリケットBが円筒状金型1の出口1aから押し出された後、ピストン3が後退を開始するまでに、ゲート2を、ピストン3の先端に付着したブリケットBを押すことのできる下降位置まで下降動作を行わせる。この下降動作は、1個のブリケットBの固形化毎に行われるゲート2の開閉の繰り返し動作のうちの閉じ動作であるが、この閉じる時期を上記のタイミングで行う。なお、ゲート2の基本的な開閉の繰り返し動作とは別に、ピストン3の先端に付着したブリケットBをゲート2で押す専用の動作を加えても良い。
【0025】
ゲート2の前部保持部材13と対向する周面には、蓋部32の部分を除いて遮蔽板41(図4(B))が取付けられている。この遮蔽板41により、ゲート2の外周面を伝うガイド部材4A,4B側への研削液流れを止めることができる。
【0026】
図1に示すように、固形化物製造装置を支持する基台11には、研削液ガイド46と研削液貯留パン47が設置されている。これら研削液ガイド46および研削液貯留パン47は、研削スラッジが固形化処理されるときに、円筒状金型1とゲート2の接触面隙間から漏れて排出シュート5を伝って流下する研削液を受けるものである。
【0027】
上記構成の動作を説明する。図3のように、円筒状金型1内に挿入されたピストン3が円筒状金型1のスラッジ入口18よりも後方に退避した状態で、搬入シュート20を経て研削液含有の濃縮状態の研削スラッジが、円筒状金型1内に投入される。なお、投入の前に、上方位置に退避させていたゲート2はゲ−ト開閉用駆動源34により下降させ、図1のようにゲート2の蓋部32で円筒状金型1のブリケット出口1aを閉じておく。
研削スラッジが所定量投入されると、進退駆動手段17により円筒状金型1内のピストン3が進出駆動される。これにより、図4のように、円筒状金型1内の研削スラッジがゲート2の蓋部32とピストン3とで挟まれて圧搾され、円柱状のブリケットBに固形化される。この圧搾により搾り出された研削液は、円筒状金型1とゲート蓋部32の接触面の隙間から漏れ出て、排出シュート5、研削液ガイド46および研削液貯留パン47を経て機外へ排出される。
【0028】
研削スラッジの固形化が完了すると、ゲート2はゲート開閉用駆動源34により図5に示すように、円筒状金型1のブリケット出口1aが完全に開放される上方の待機位置までスライドして退避させられる。この退避状態で、一対のガイド部材4A,4Bのうち、下側のガイド部材4Bの上面が、排出シュート5の排出シュート部52となる。
ついで、ピストン3が後退を開始するまでに、ゲート2は、ピストン3の先端に付着したブリケットBを押し出すことのできる下降位置まで下降動作させられる。これにより、ピストン3の先端にブリケットBが付着することがあっても、ブリケットBをピストン3の先端から確実に剥がすことができる。この後、ピストン3は進退駆動手段17によりスラッジ入口18より後方の待機位置まで後退し、次のブリケット形成を待つ。
これにより、図6のようにピストン1内のブリケットBが排出シュート5の排出シュート部55の上面に確実に排出される。特に、ゲート2を、円筒状金型1の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能とし、排出シュート5を、ゲート2のスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ上面でブリケットBを転がり自在としているので、円筒状金型1の出口1aから押し出されたブリケットBがほとんど落下することなく、傾斜した排出シュート5の上面を転がって下方へ排出される。このため、成形された固形化物であるブリケットBを落下による衝撃で破壊させることなく排出させることができる。
【0029】
ピストン3の先端面からブリケットBを剥がすゲート2のスライド動作において、そのスライド方向が鉛直方向であると、円筒状金型1の出口1aと排出シュート5の排出シュート部52の上面との落下距離を大きくしなければ、ゲート2でブリケットBを潰すことになる。ここでは、ゲート2のスライド方向が傾斜しているため、排出シュート5の上面を円筒状金型1の出口1aに近付けても、ゲート2でブリケットBを潰すおそれがない。このため、円筒状金型1の出口1aから排出シュート5の上面までの落下距離をできるだけ小さくすることができる。この点からも、ブリケットBを落下による衝撃で破壊させるのをさらに確実に防止できる。
【0030】
また、この実施形態では、円筒状金型1の出口1aの軸心と、この軸心の鉛直方向の直下位置における排出シュート5の上面との距離を、円筒状金型1の出口1aから排出シュート5の上面に落下した位置にあるブリケットBの一部が、上記出口1aの下縁よりも上方に位置する距離としているが、それでもブリケットBは排出シュート5の上面を転がって排出される。このため、円筒状金型1の出口1aからのブリケットBの落下距離をそれだけ小さくすることができ、固形化物であるブリケットBの落下による破壊をより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0031】
1…円筒状金型
1a…出口
2…ゲート
3…ピストン
4A,4B…ガイド部材
5…排出シュート
17…進退駆動手段
34…ゲート開閉用駆動源
40…ゲート開閉制御手段
51…排出シュート本体
52…排出シュート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造装置であって、
上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを備え、
上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させたことを特徴とする研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ゲートのスライド方向の傾斜角度と、上記排出シュートの傾斜角度とを互いに同一角度とした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項3】
請求項2において、円筒状金型の軸心に沿う方向における、上記ゲートの中心と上記排出シュートの中心を一致させた研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、上記円筒状金型の出口の軸心と、この軸心の鉛直方向の直下位置における上記排出シュートの上面との距離を、上記円筒状金型の出口から排出シュートの上面に落下した位置にある固形化物の一部が、上記出口の下縁よりも上方に位置する距離とした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、上記ゲートをスライドさせるゲート開閉用駆動源と、このゲート開閉用駆動源を制御するゲート開閉制御手段とを設け、このゲート開閉制御手段は、上記ゲートを上方へ開き、上記ピストンにより固形化物が上記円筒報金型の出口から押し出された後、上記ピストンが後退を開始するまでに、上記ゲートを、上記ピストンの先端に付着した固形化物を押し出すことのできる下降位置まで下降動作を行わせるようにした研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、上記ゲートを上記円筒状金型の端面に沿ってスライド可能にゲート両端部で案内する一対のガイド部材を設け、上記排出シュートを、上記ガイド部材に上端が接続された排出シュート本体と、上記一対のガイド部材における下側のガイド部材の上面に設けられた排出シュート部とで構成した研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、上記研削液含有の研削スラッジは、研削ラインで発生した研削液含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジである研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項8】
研削液含有の研削スラッジを、圧搾により固形化物とする研削スラッジの固形化物製造方法であって、
上記研削スラッジを充填する横姿勢の円筒状金型と、この円筒状金型の端部からなる固形化物の出口を開閉するゲートと、上記円筒状金型内に進退自在に設けられて円筒状金型内の研削スラッジを圧搾するピストンと、上記ゲートの下方に上端が位置して上記円筒状金型の上記出口から出た固形化物を受けて排出する排出シュートとを用い、
上記ゲートを、上記円筒状金型の軸心に垂直な平面内で上下方向に対して傾く傾斜方向にスライド可能で上方へスライドした状態で上記円筒状金型の出口を開くものとし、上記排出シュートを、上記ゲートのスライド方向と同じ傾斜方向に傾斜させ、前記円筒状金型の出口から排出された固形化物を、上記排出シュートから排出することを特徴とする研削スラッジの固形化物製造方法。
【請求項9】
請求項8において、上記ゲートのスライド方向の傾斜角度と、上記排出シュートの傾斜角度とを互いに同一角度とする研削スラッジの固形化物製造方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、上記ゲートを上方へ開き、上記円筒状金型内の固形化物を上記ピストンで押し出した後、ピストンの先端に付着状態にある固形化物を上記ゲートの閉じ方向の動作でピストンの先端から剥がす研削スラッジの固形化物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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