説明

研削スラッジの固形化物製造装置

【課題】 設置面積が小さく、研削スラッジが発生する、製造ライン等に組み込むことの可能な研削スラッジの固形化物製造装置を提供する。
【解決手段】 研削スラッジの固形化物製造装置10は、上下方向に延びる圧縮室31と、圧縮室31に収容された研削スラッジを上から押圧する押圧シリンダ32と、研削スラッジを下から支えるように、圧縮室31の底部に開閉可能に設けられた底壁34とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研削スラッジの固形化物製造装置に関し、特に設置面積を小さくすることができる研削スラッジの固形化物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の研削スラッジの固形化物製造装置がたとえば、特開2001−300597号公報(特許文献1)、特開2001−300786号公報(特許文献2)や特開2001−315000号公報(特許文献3)に記載されている。
【0003】
これらの公報によれば、研削スラッジの固形化物製造装置は、濃縮スラッジを加圧して固形化する2段階のプレス部を有しており、基本的に最終圧縮は、横方向の圧縮で行なわれている。
【特許文献1】特開2001−300597公報(段落番号0006、図5等)
【特許文献2】特開2001−300786号公報(段落番号0006、図3等)
【特許文献3】特開2001−315000号公報(段落番号0006、図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の研削スラッジの固形化物製造装置は、上記のように構成されていた。基本的に最終圧縮は、横方向で行なわれていたため、設置面積が大きく、そのため、研削スラッジが発生する、たとえば、軸受の製造ライン等に組み込むのが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、設置面積が小さく、研削スラッジが発生する、たとえば、軸受の製造ライン等に組み込むことの可能な研削スラッジの固形化物製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る研削スラッジの固形化物製造装置は、上下方向に延びる圧縮室と、圧縮室に収容された研削スラッジを上から押圧する押圧手段と、研削スラッジを下から支えるように、圧縮室の底部に開閉可能に設けられた底壁とを含む。
【0007】
好ましくは、押圧手段は上下方向に延在するシリンダである。
【0008】
さらに好ましくは、押圧手段による押圧時に、底壁を上方向へ押上げる押上手段を含む。
【0009】
さらに好ましくは、押上手段は、所定の支点で支持され、その一端が底壁に接続されたてこ部材と、てこ部材の他端に底壁を移動させるための力を付与する付与手段とを含む。
【0010】
さらに好ましくは、付与手段は、てこ部材の他端に連結され、上下方向に延在するシリンダを含む。
【0011】
さらに好ましくは、押上手段は、底壁に連結されて、上下方向に延在するシリンダを含む。
【発明の効果】
【0012】
上下方向に延びる圧縮室に収容された研削スラッジを上から押圧手段で押圧するため、研削スラッジの圧縮が、縦方向に行なわれる。従来のように横方向に押圧手段が延在しないため、設置面積の削減が可能になる。
【0013】
その結果、設置面積が小さい、研削スラッジの固形化物製造装置を提供できる。また、設置面積が小さいため、研削スラッジの固形化物製造装置を、研削スラッジが発生する製造ライン等に組み込むことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1はこの研削スラッジの固形化物製造装置を含む、研削スラッジの処理方法および処理装置の概念を示すブロック図である。研削ライン1では、研削盤2により、クーラントタンク3から供給されるクーラントを用いて研削を行う。研削盤2で発生した研削屑およびクーラントからなる研削スラッジは、ろ過手段4でろ過し、ろ過により生じた濃縮スラッジを、この実施形態に係る固形化物製造装置である研削スラッジの固形化物製造装置10で圧縮により固形化してブリケットBとする。ろ過手段4と研削スラッジの固形化物製造装置10とで固形化装置6が構成される。ろ過手段4でろ過により生じたクーラント、および研削スラッジの固形化物製造装置10で圧縮により生じたクーラントは、それぞれ回収経路7,8により、研削ライン1のクーラントタンク3に戻す。回収経路7,8からは、フィルタおよびポンプを介してクーラントタンク3にクーラントが戻される。また、クーラントタンク3からは、フィルタおよびポンプを介して研削盤2にクーラントが供給される。研削スラッジの固形化物製造装置10で固形化されたブリケットBは、製鋼メーカ9に運搬し、製鋼メーカ9で製鋼材として使用する。ブリケットBの運搬は、同図(B)のようにフレコンバック等と呼ばれる搬送容器26に複数個収容し、トラック等で行う。製鋼メーカ9では、アーク炉27等でブリケットBを製鋼材に使用する。製鋼された鋼材は、被研削物の素材として使用される。
【0015】
研削ライン1で研削する被研削物は、焼入れ部品であり、軸受鋼等の軸受用鋼材等である。例えば、上記焼入れ部品は、転がり軸受の鉄系構成部品であり、具体的には、内輪、外輪等の軌道輪、またはボール等の転動体である。研削のクーラントには油性クーラントが使用される。軸受用鋼材としては、高炭素クロム鋼(SUJ2等)のずぶ焼入れ材、中炭素鋼(S53C等)の高周波焼入れ材、肌焼き鋼(SCR415等)の浸炭焼き入れ材等がある。研削盤2で発生する研削スラッジは、クーラント量90wt%以上の流動体であり、残りは粉状の研削屑と微量の研削砥粒である。研削屑は、一般にはカールした短い線状の形状をしている。この研削スラッジは、ろ過手段4でろ過された濃縮スラッジの状態では、クーラントを略半分含むものとされる。濃縮スラッジの成分は、例えば、軸受鋼等からなる研削屑が略50wt%、クーラントが略50wt%と、微量の研削砥粒である。ブリケットBの成分は、大部分が研削屑からなる鋼材であり、クーラント量が5〜10wt%とされ、固形化処理時にクーラントと共に大部分が排出された後に残るごく微量の研削砥粒を含む。ブリケットBにごく微量の研削砥粒を含んでいても、研削屑が軸受鋼等の良質の鋼材である場合は、製鋼材としての利用に支障がない。ブリケットBは、所定の強度を有するもの、例えば、1mの高さから落下させても、破片が3つ以上にならない程度の強度を有するものとされる。なお、ブリケットBは、研削屑を固めるためのバインダ(切削切粉等)は一切混入させない。
【0016】
図2は、上記した、研削スラッジの固形化物製造装置10の構成要素および処理手順を示す図である。図2を参照して、研削スラッジの固形化物製造装置10は、上記した濃縮スラッジ40を予備圧縮する1次プレス部11と、1次プレス部11で予備圧縮された研削スラッジを2次プレスに搬送する送り装置20と、送り装置20で搬送された予備圧縮後の研削スラッジを所定の圧力で本圧縮する2次プレス部30とを含み、2次プレス30で圧縮された研削スラッジがブリケットBとして製造される。
【0017】
1次プレス部11は横型のプレス部であり、濃縮スラッジ40を投入するホッパ17と、ホッパ17の下部に設けられた横方向に延在する圧縮室12と、圧縮室12に投入された研削スラッジを横方向に予備圧縮する加圧部材13とを含む。加圧部材13は、横向きのシリンダ状であり、図示のない油圧シリンダ等の加圧駆動源で横方向に駆動される。圧縮室12の加圧部材13に対向する前方側には、加圧部材13による加圧時には圧縮室12の前方側を閉じ、加圧終了後に前方側開口するように開閉可能なシャッタ15が設けられる。
【0018】
送り装置20は、1次プレス部11によって予備圧縮された研削スラッジを受けるホッパ22と、ホッパ22で受けた研削スラッジをガイド23に沿って搬送し、2次プレス部30に搬送する送り用ピストン21を含む。
【0019】
2次プレス部30は、送り装置20で搬送されてきた予備圧縮された研削スラッジを受けるシュート36と、上下方向に延びる2次圧縮室31と、2次圧縮室に収容された研削スラッジを上から圧縮する押圧手段として作動する上下方向に延在する押圧シリンダ32と、2次圧縮室の底部に設けられ、研削スラッジを下から支えるように、開閉可能な底壁34と、底壁34を開いたときに、研削スラッジが圧縮されて生成されたブリケットBを排出するシュート37とを含む。
【0020】
このように、この実施の形態においては、2次プレスを押圧手段が上下方向に移動する縦型としたため、設置スペースを削減でき、また、設置面積が小さいため、研削スラッジの固形化物製造装置を、研削スラッジが発生する製造ライン等に組み込むことが可能になる。
【0021】
なお、ここでは、1次プレスを予備圧縮のために用いたが、これに限らず、2次プレスのみで研削スラッジを圧縮するようにしてもよい。そうすれば、より、設置スペースを削減できる。
【0022】
次に、底壁34の開閉機構について説明する。図3は、底壁34の開閉機構の要部を示す図である。図3を参照して、開閉機構は、押圧手段32による押圧時に、底壁34を上方向へ押上げる押上手段50を含む。押上手段50は、底壁34の近傍に設けられた所定の支点54で支持され、その一端が底壁34に接続されたてこ部材53と、てこ部材53の他端に底壁34を移動させるための力を付与する付与手段とを含む。付与手段は、てこ部材53の他端に連結され、上下方向に延在し、上下方向に伸縮するロッド52を有する油圧式のゲートシリンダ51であってもよい。
【0023】
このとき、ゲートシリンダ51の上端は、後に説明する、研削スラッジの固形化物製造装置10全体を支持する本体フレーム57のブラケット58に支持される。具体的には、ゲートシリンダ51の上端には貫通孔が設けられた取付部55が設けられ、この取付部55の貫通孔と、ブラケット58に設けられた貫通孔にピン59が挿入され、それによって、ゲートシリンダ51は、ピン59を中心に回動可能となる。
【0024】
図3に示すように、てこ部材53において、支点54から底壁34までの腕の長さをbとし、てこ部材53の付与手段による力の作用点までの腕の長さをaとしたとき、bに対してaを長くしているため、付与手段により付与される力が小さくても、底壁34は大きな力で、下から研削スラッジを押し上げることができる。
【0025】
なお、この底壁34の押上手段50による押上時には、2次圧縮室31の下端部と底壁34との隙間を2段階で調整するようにしてもよい。すなわち、一度で閉じるようにしても良いし、図4に示すように、先ずわずかな隙間を有する状態で蓋をし(図4において34bで示す状態)、その後、押圧手段32による押圧に合わせて最終的に蓋を閉じるようにする(図4において、34aで示す状態)。こうすれば、クーラントの排出も容易に行われ、圧手段32と押上手段50との相互作用により、より大きな上下圧縮効果を発揮できる。
【0026】
なお、この実施の形態においては、てこ部材53の他端に力を付与する付与手段として、油圧シリンダのようなシリンダを用いたが、これに限らず、回転駆動されるカムによって、てこ部材の他端に力を付与するようにしてもよい。
【0027】
なお、押上手段50は、底壁34に連結され、上下方向に延在するシリンダであってもよい。
【0028】
次に、研削スラッジの固形化物製造装置10の全体的な具体的構成について説明する。図5は、研削スラッジの固形化物製造装置10の全体的な具体的構成を示す側面図(B)と、側面図において、矢印A−Aで示す部分の矢視図(A)である。図5においては、上記で説明した各構成要素に上で説明した参照符号を付しているため、個々の構成要素についての説明は省略する。
【0029】
図5を参照して、研削スラッジの固形化物製造装置10は、1次プレス部11の下部に送り装置20が設けられ、送り装置20によって、2次プレス部30に研削スラッジが搬送されるように、3つの部材が配置されている。
【0030】
一方、図3で説明した、押圧手段として作動する押圧シリンダ32と、付与手段として作動するゲートシリンダ51は、図5(A)に示すように、ともに上下方向に、平行に延在するため、研削スラッジの固形化物製造装置10をコンパクトにできる。
【0031】
なお、上記実施の形態においては、押圧手段や、押上手段および付与手段としてのシリンダとして、油圧シリンダを例にあげて説明したが、これに限らず、空圧シリンダを用いることもできるし、モータの回転駆動力等を利用した手段も採用できる。
【0032】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】研削スラッジの処理方法および処理装置の概念を示すブロック図である。
【図2】研削スラッジの固形化物製造装置の構成要素および処理手順を示す図である。
【図3】底壁の開閉機構の要部を示す図である。
【図4】底壁の作動状態を示す図である。
【図5】研削スラッジの固形化物製造装置の全体的な具体的構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 研削スラッジの固形化物製造装置、11 1次プレス部、12 1次圧縮室、13 加圧部材、15 シャッタ、20 送り装置、30 2次プレス部、31 2次圧縮室、32 押圧シリンダ、34 底壁、36 シュート、37 排出シュート、40 濃縮スラッジ、42 ブリケット、50 押上手段、51 ゲートシリンダ、53 てこ部材、54 支点、57 本体フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる圧縮室と、
前記圧縮室に収容された研削スラッジを上から押圧する押圧手段と、
前記研削スラッジを下から支えるように、前記圧縮室の底部に開閉可能に設けられた底壁とを含む、研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項2】
前記押圧手段は上下方向に延在するシリンダである、請求項1に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項3】
前記押圧手段による押圧時に、前記底壁を上方向へ押上げる押上手段を含む、請求項1または2に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項4】
前記押上手段は、所定の支点で支持され、その一端が前記底壁に接続されたてこ部材と、前記てこ部材の他端に前記底壁を移動させるための力を付与する付与手段とを含む、請求項3に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項5】
前記付与手段は、前記てこ部材の他端に連結され、上下方向に延在するシリンダを含む、請求項4に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
【請求項6】
前記押上手段は、前記底壁に連結されて、上下方向に延在するシリンダを含む、請求項3に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−122985(P2006−122985A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316759(P2004−316759)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【出願人】(502388345)ユニトップ株式会社 (1)
【出願人】(504404216)冨松工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】