説明

研磨パッドとそれを用いた研磨方法

【課題】 層間絶縁膜に形成した配線溝に埋め込み成長した金属膜を平坦化研磨して配線を形成するCMP技術において、低負荷で平坦性に優れ、かつ層間絶縁膜の除去を効率良く高速に行い、研磨傷の発生を低減する研磨パッド、およびそれを用いて絶縁層に欠陥なく研磨する研磨方法を提供する。
【解決手段】 室温における引張弾性率が0.1〜2.5Gpaの研磨パッドであって、該パッドの研磨面を構成するマトリックスは、ポリウレタンを一種以上含み、該ポリウレタンの少なくともひとつが1)イソシアネート化合物と、2)活性水素および活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物とを含んでなる研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜等の研磨対象物を平坦化研磨して配線を形成する化学機械研磨技術における、研磨パッドおよびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下LSIと記す。)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。
化学機械研磨(以下CMPと記す。)法もその一つであり、例えば特許文献1に開示されているLSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そのため、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている(特許文献2参照。)。
銅合金等の金属CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸し、基体の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から20kPaより高い圧力(以下研磨荷重と記す。)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
【0003】
一方、LSIの高集積化による配線の微細化に伴い、配線間容量の増大による信号遅延時間の増大が問題となっており、電子部品の絶縁材料に対して、耐熱性、機械特性等の他、更なる低比誘電率と熱処理工程の短縮が求められている。
例えば、従来から、比誘電率が4.2程度のCVD法によるSiO2膜が層間絶縁膜の形成材料として用いられてきたが、デバイスの配線間容量を低減し、LSIの動作速度を向上するため、より低誘電率を発現する材料が切望されている。
これに対し、現在実用化されている低誘電率材料としては、比誘電率が3.5程度のCVD法によるSiOF膜が挙げられる。また、比誘電率が2.5〜3.0の絶縁材料としては、有機SOG(Spin On Glass)、有機ポリマー等を例示できる。
さらに、比誘電率が2.5以下の絶縁材料としては、膜中に空隙を有するポーラス材が有力と考えられており、LSIの層間絶縁膜に適用するための検討・開発が盛んに行われている。
【特許文献1】米国特許第4944836号公報
【特許文献2】特開平2−278822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の低誘電率絶縁膜では、絶縁膜の誘電率が低下するにつれ、その膜強度が低下してしまう傾向にあり、プロセス適合性の観点から大きな問題がある。またCu−ダマシンプロセスの層間膜材料として適用する場合、キャップ膜として用いられているCVD法で成膜されるSiO2膜とSOG膜との界面において接着性(接合性)が弱くなる傾向にある。こうなると、配線金属のCu膜を研磨するCu−CMP工程において、界面剥離が生じてしまう。そのため、配線金属等の研磨の際、低荷重で研磨をせざるを得ず、よってタクトタイムの長期化が問題であった。
【0005】
本発明は、層間絶縁膜に形成した電極、プラグ、配線溝パターンに金属膜を埋め込み成長し、かかる金属膜を平坦化研磨して配線を形成するCMP技術において、高速で、かつ低負荷で絶縁層に欠陥を生じず研磨できる研磨パッドおよびそれを用いた研磨方法を提供するものである。
【0006】
また、半導体素子製造工程における層間絶縁膜、BPSG膜、シャロートレンチ分離用絶縁膜を除去するCMP技術において、平坦性に優れ、かつ絶縁膜の除去を効率良く高速に行い、同時に基板上の研磨傷の発生を低減出来る研磨パッドを提供するものである。さらに、本発明は、高速研磨速度が要求される配線板等の分野にも転用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下に示す研磨パッドおよび研磨方法によって解決できる。
すなわち、本発明の研磨パッドは、定盤に貼り付けて研磨対象物の研磨に使用する室温における引張弾性率が0.1〜2.5Gpaの研磨パッドであって、該パッドの研磨面を構成するマトリックスが一種以上のポリウレタンを含み、該ポリウレタンの少なくともひとつが1)イソシアネート化合物と、2)活性水素および活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物とを含むことを特徴とする。
【0008】
加えて、本発明の研磨方法は、研磨パッドを定盤上に固定し、研磨対象物をその被研磨面を前記研磨パッドに対峙させた状態でホルダにより保持し、研磨剤を前記研磨パッド上に供給すると共に、前記パッドならびに前記研磨対象物を相対的に摺動して研磨対象物を研磨する方法であって、前記研磨パッドに、本発明の研磨パッドを使用することを特徴とする研磨方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研磨パッドを使用して金属のCMPを行えば、低荷重で高速に研磨を行うことができるため、層間絶縁膜への負荷が小さく、かつ平坦性にも優れた研磨が行え、次世代のデュアルダマシン法を容易に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み、CMP技術の開発を進めるうちに、パッドの材質であるポリウレタンの構成要素の一つである含活性水素化合物が、該活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物(以下、化合物(A)ともいう。)である場合、特に飛躍的に研磨対象物の研磨速度を向上でき、研磨時間の低減、あるいは低荷重研磨を行えることを見出すに至った。
【0011】
本発明の研磨パッドは、おもに半導体の製造工程において、特に金属を主とする層、あるいは金属とそれらを分離する絶縁膜からなる層を研磨するのに適する研磨パッドであって、該パッドの研磨対象物に接する面(以下、研磨面という。)を構成するマトリックスに、下記に示すポリウレタンが少なくとも一種使用されているものである。
【0012】
ここで、ポリウレタンとは、イソシアネート化合物と活性水素をもつ化合物(含活性水素化合物)の重付加反応または重合反応に基づき合成される高分子である。本発明においては、イソシアネートの反応対象として用いられる化合物は、含活性水素化合物、例えば、二つ以上のポリヒドロキシ基含有化合物(ポリオールなど)あるいはアミノ基含有化合物である。
【0013】
本発明におけるポリウレタンとして使用できるものは、熱可塑性ポリウレタン、架橋型ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンプレポリマー、架橋型ポリウレタンプレポリマーを包含する。
【0014】
ここで、ポリウレタンの原料のイソシアネート化合物として使用できるものは、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(または−2,6−)−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、これらの化合物をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能イソシアネート基を有するものも使用できる。これらの例として、例えば、4、4´、4´´−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの環状三量体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらは単独で使用しても混合物として使用することも可能である。
【0015】
また、イソシアネート化合物として、以上のイソシアネート化合物と活性水素を分子内にひとつ以上有する化合物との反応成生物を使用しても良い。ここで使用できる活性水素を分子内にひとつ以上有する化合物は、以下に示す活性水素および活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物に加え一般的なものが広く使用できる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、アジペートエステルのジオール、ポリカーボネートのジオール等、およびそれらの混合物や共重合物等の、イソシアネート化合物と反応可能なものはすべて使用できる。
【0016】
本発明における化合物(A)は、ポリウレタンを得るためにイソシアネート化合物と反応する化合物であり、活性水素および活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物である。例えばプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ひまし油系ポリオールで代表されるリシノール酸のエステルおよびアミド化合物等、およびそれらの混合物や重合物、共重合物等を指すが、これらに限定されるものではない。特にプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ひまし油系ポリオールが好ましい。
これらの中で、イソシアネート化合物として4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートと、含活性水素化合物のポリオールとして、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、リシノール酸のエステル化合物(ひまし油系ポリオール)との組み合わせで得られるポリウレタンが成形性に優れ、好ましい。
【0017】
化合物(A)以外の含活性水素化合物(以下、化合物(B)という。)を、化合物(A)とイソシアネート化合物との反応に併用して、同一のポリウレタン鎖中に含んでいても良い。また、化合物(B)とイソシアネート化合物とのポリウレタンを、化合物(A)を用いたポリウレタンと混合してマトリックスに使用しても良い。
ここで使用できる、化合物(A)以外の、活性水素を分子内にひとつ以上有する化合物(B)は、以下に示す一般的なものが広く使用できる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、アジペートエステルのジオール、ポリカーボネートのジオール等、およびそれらの混合物や共重合物など、イソシアネート化合物と反応可能で化合物(A)以外のものはすべて使用できる。
【0018】
本発明におけるポリウレタンが熱可塑性樹脂である場合は、ジオールが使用される。熱可塑性ポリウレタンの場合、短鎖ジオールと長鎖ジオールを適宜組み合わせることにより、ハードゼグメントとソフトセグメントの比率を調整し、使用温度での弾性率を調節できる。熱可塑性ポリウレタンの製造方法は、公知の方法、例えば全原料を急速混合し、混合物をコンベア−ベルト上で加熱、重合を行う塊状重合法、単軸あるいは多軸押出機により混練りしながら重合する溶融重合法、溶剤に原料を溶解し過熱して重合を進める方法等が特に制限なく使用できる。また、この際の好ましい配合率は、イソシアネート化合物および活性水素を有する化合物それぞれ2官能のものを使用し、NCO基/活性水素=0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2である。さらに、最終的な形状としては、ペレット状、フレーク状、シート状等の所望の形態が使用できるが、他の成分と混合する場合を考慮すると、ペレット状にすることがより好ましい。
【0019】
また、本発明におけるポリウレタンの製造においては、熱可塑性、熱架橋型に関わらず、必要に応じて触媒を使用できる。触媒として例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物、ジブチル錫ジラウリレート、オクチル酸錫等の有機金属化合物等があげられる。
【0020】
上記のイソシアネート化合物および活性水素を有する化合物からなるポリウレタンの単独あるいは混合物に、弾性率や硬度の調整のために添加物としてさらに他のポリウレタンやアクリル等の高分子化合物、ポリオール等の可塑剤を加えて使用しても良い。また、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤等を加えても良い。但し、これらの添加剤は、重量の90%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは10%以下で使用するのが好ましい。ここで、添加剤のしめる割合が多すぎれば、研磨速度が激減してしまうこともある。
【0021】
以上の材質から構成されるマトリックスは、室温での引張弾性率が0.1〜2.5GPaの範囲となることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1.0GPaである。さらに好ましくは、0.15〜0.4GPaである。弾性率が高ければ研磨速度が高くなり、またディッシング等の局所的な平坦性は向上するが、被研磨面の傷が発生しやすくなる傾向がある。反対に、弾性率が低くなれば傷は発生しにくく、かつウエハレベルの均一性は向上するが、研磨速度やディッシング等の局所的な平坦性は低化する傾向がある。ここで、本発明における弾性率とは、動的弾性率測定による評価結果を言う。ここでいう引張弾性率とは、上記マトリックス等の測定対象物からなるサンプルを1mm×1.5mm×35mmの短冊状に切り出し、通常の動的粘弾性試験装置を用いて、スパン間27.5mmにて周波数1Hzにて室温で測定を行い、得られる複素弾性率の貯蔵弾性率をいう。
【0022】
以上説明してきたポリウレタンを主とするマトリックスに、弾性率の調整、表面へのスラリー保持性向上等を目的に、無機物及び/または有機物の繊維あるいは微粒子、気泡を導入することができる。
無機物及び/または有機物の繊維あるいは微粒子は、研磨パッドの研磨対象物に接する表面露出部(研磨面)の面積のうち20%以下露出することが望ましい。正のゼータ電位を有する繊維や微粒子を加えることは、被研磨面の保護と研磨速度の両立の面から特に望ましい。
【0023】
上記した繊維として使用できるものとしては、アクリル、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース等を繊維状にしたものが特に制限なく使用できる。また、これらのうち二種以上を選択、混合して使用することもできる。単独あるいは主たる成分としてアラミド繊維を選択することが、より好ましい。すなわち、アラミド繊維は、他の一般的な有機繊維に比べて引っ張り強度が高く、本発明による研磨パッド研磨面を機械的に粗して繊維を露出する際、繊維が表面に残りやすく効果的であるからである。また、研磨パッドの耐久性を向上させ、使用寿命を伸ばす効果もある。
【0024】
アラミド繊維にはパラ型とメタ型が有るが、パラ系アラミド繊維はメタ型繊維より力学的強度が高く低吸湿性であるので、より好適である。パラ系アラミド繊維としては、ポリp-フェニレンテレフタルアミド繊維とポリp−フェニレンジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維が市販されており、使用が可能である。
【0025】
これらは、短繊維を所定長に切断したチョップを使用しても、数種の繊維長のものを混合して使用することもできる。また、織布や不織布の形態で樹脂中に充填してもよい。
有機繊維の繊維径(直径)は1mm以下のものが適切に使用できるが、200μm以下であることが望ましい。好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜150μmである。太すぎれば機械的強度が高すぎて、研磨傷やドレス不良の原因となる。細すぎれば取り扱い性が低下したり、強度不足によるパッドの耐久性低下を引き起こす傾向がある。繊維長は、10mm以下のものが適切に使用できるが、5mm以下であることが望ましい。好ましくは、0.1〜3mmである。短かすぎれば、パッド研磨面を機械的に表面を粗した時に露出した繊維がパッドに効果的に保持されず、長すぎれば、パッドを主として構成する弾性体との混合時に増粘して成形が困難となる場合がある。
【0026】
チョップ状の繊維を使用する場合、樹脂との親和性を向上するため、予め繊維表面を機械的あるいは化学的に粗したり、カップリング材等による改質を行っても良い。取り扱いの面から、短繊維チョップを極少量の樹脂でコーティングして束にしたものを使用することができる。ただしこれは、マトリックス樹脂との混合中の加熱、あるいは加えられるせん断力により短繊維がマトリックス樹脂中に分散される程度の保持力をもつ程度ついていればよい。さらに、主たる有機繊維のほかにガラス繊維等の無機繊維を加えても良い。
【0027】
上記有機繊維の含有率は、特に制限されるものではないが、パッドを主として構成する弾性体の軟化温度や粘度により、最適化される必要がある。パッド全体の1〜50重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%である。繊維量が少なければ研磨対象物の被研磨面の研磨傷が顕著になり、多すぎれば成形性が悪くなる傾向がある。
【0028】
上記した無機及び有機物の微粒子としてはマトリックスより硬質のものが好ましい。有機物としてはエポキシ樹脂、架橋型ポリウレタン、ポリアミド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等があり、無機物としてはシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、セリア、チタニア、ジルコニア及びゲルマニア等があげられるがこれに制限されること無く使用できる。
【0029】
これら、特に無機の微粒子においては、その粒径が小さいことが好ましい。その平均粒径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。大きすぎればCuなどの金属に使用した場合、研磨速度が低下するとともに研磨傷の原因となる。ただし、0.01μm以下では混練り等が困難となる。前記微粒子の含有率は、パッド中、2〜30%であることが好ましい。
【0030】
以上の材質から構成される研磨パッドは、室温での引張弾性率が0.1〜2.5GPaの範囲となることが必要である。好ましくは、0.2〜1.0GPaである。さらに好ましくは、0.3〜0.7GPaである。弾性率が高ければディッシング等の局所的な平坦性は向上するが、被研磨面の傷が発生しやすくなる傾向がある。弾性率が低くなればウエハレベルの均一性は向上するが、研磨速度やディッシング等の局所的な平坦性は低化する傾向がある。
【0031】
本発明の研磨パッドを製造する方法は、特に規定はしないが、従来から公知の方法で行うことができる。パッドを主として構成するマトリックスが熱可塑性樹脂で構成される場合は、以下の方法をとることができる。まず、各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ターンブルミキサー、リボンブレンダー等で均一に混合(ドライブレンド)した後、単軸押出機や二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する。さらに、必要ならば有機繊維あるいは粒子を加え溶融混合、冷却してタブレット化する。冷却に水を使用する場合は、タブレットを十分に乾燥し、脱水する必要がある。最終的なシート状成形物は、得られた熱可塑性樹脂組成物タブレットを再度射出成形機でダイスを通して押し出し、ロールで圧延することで作製できる。また、金型に注入しても良い。
【0032】
一方、マトリックスとして熱硬化性樹脂を使用する場合は、注型法が望ましい。例えば2液型の熱硬化性樹脂を用いる場合は、2液の片方或いは両方の樹脂液に、繊維あるいは粒子をホモミキサー等で分散させ、更に2液を混合して攪拌する。攪拌後の混合液を減圧状態にして巻きこんだ気体を脱泡し、さらにシート状に成形出来る型に入れて加圧もしくは常圧で加温し硬化させる。
【0033】
研磨パッドの全体の厚みは0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがより好ましい。これを必要であれば所定の研磨装置の定盤形状にあわせ加工することで、最終製品とする。また、上記研磨パッドに溝を付ける方法として、あらかじめシート状の型に研磨パッドの溝となる凸部を設けて、成形品に溝形状を付ける方法や成形後、NC旋盤等を使用して加工することもできる。
研磨装置定盤への上記研磨パッドの固定は、両面接着テープ等の接着剤を研磨面と逆側に使用することができる。また、発泡ポリウレタン等からなる低弾性率のサブパッドを介してとりつけても良い。
【0034】
以下、本発明の研磨パッドを用いた研磨方法について説明する。
本発明の研磨方法は、研磨パッドを定盤上に固定し、研磨対象物をその被研磨面を該研磨パッドに対峙させた状態でホルダにより保持し、本発明の研磨剤を前記研磨パッド上に供給すると共に、前記パッドならびに研磨対象物を相対的に摺動して研磨対象物を研磨する方法である。研磨パッドと研磨対象物とを相対的に摺動するには、ホルダと定盤との少なくともいずれかを回転させる方法が挙げられる。また、ホルダは、定盤の回転中心から偏倚して回転してもよい。
研磨装置に特に制限はなく、円盤型研磨装置、リニア型研磨装置で使用することができる。一例として、回転数が変更可能なモータ等と接続し、研磨パッドを貼り付けられる定盤と、半導体基板等の研磨対象物を保持するホルダとを有する一般的な研磨装置がある。具体的には、荏原製作所製研磨装置:型番EPO111が挙げられる。
研磨条件に、特に制限はなく、一般的には、研磨荷重は1〜100kPaであることが好ましいが、各種研磨条件は、研磨対象物の材質や状態に応じて最適化を図ることが望ましい。研磨している間、研磨パッド上に研磨剤をポンプ等で連続的に供給する。この供給量には制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。研磨によるパッドの磨耗や形状、あるいは繊維や粒子は、ドレッシングを行うことにより再生される。
研磨終了後の研磨対象物は、流水中でよく水洗後、スピンドライア等を用いて研磨対象物上に付着した水滴を払い落として乾燥させることが望ましい。
【0035】
本発明の研磨方法で研磨するのは、主に金属からなる層であるのが好ましく、銅からなる層であるのがより好ましい。例えば、例えば、絶縁層の複合開口部を埋め込んでなる主にCu、Ta、TaNやAl等の金属を含む膜が挙げられる。具体的には、半導体デバイス製造工程における、ビアホールと配線溝とをドライエッチングで形成した層間絶縁膜上に、開口部と内壁を完全に覆うようにバリア膜、さらにその上にCu等の金属膜を成長させて完全に開口部を埋め込んだ状態の基板が挙げられる。
前記層間絶縁膜としては、Low−kのシリコン系被膜や有機ポリマ膜が挙げられる。シリコン系被膜としては、フルオロシリケートグラス、オルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系被膜が挙げられる。また、有機ポリマ膜としては、全芳香族系低誘電率層間絶縁膜が挙げられる。特に、オルガノシリケートグラスが好ましい。
バリア膜は、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金、その他のタングステン化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金、その他のチタン化合物、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金、その他のタンタル化合物から選ばれる1種以上を含む層が挙げられる。
金属膜としては、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、銀、金等の金属が主成分の物質が挙げられ、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅が主成分であることが好ましい。
【0036】
また、上記のような金属を含む膜だけでなく、所定の配線板に形成された酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコンを主として含む膜、フォトマスク・レンズ・プリズムなどの光学ガラス、ITOなどの無機導電膜、ガラスおよび結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路・光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイア基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラスあるいはアルミ基板、磁気ヘッド、配線板等を研磨することができる。
【0037】
本発明の研磨パッドを用いる研磨方法に使用する金属用CMP研磨剤は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、防食剤、水溶性高分子、及び金属積層膜界面剥離防止剤の内のいずれかを含有するものならば、特に制限なく使用できるが、pHが3〜5の範囲にあるものが好ましい。特に、砥粒粒子をさらに含んでいるものが好ましく、少なくとも砥粒粒子と水溶性高分子、特にポリアクリル酸とを含むものがより好ましい。例えば、Cu用研磨剤として、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア及びゲルマニア等の砥粒と、上記酸化金属溶解剤等の添加剤と防食剤とを水に分散させ、さらに上記金属の酸化剤として過酸化物を添加した研磨剤が挙げられる。
砥粒としては、コロイダルシリカ粒子あるいはアルミナ粒子が、特に好ましい。また、砥粒粒子含有量は、0.1〜20重量%のものが望ましい。粒子含有量が少ないと、研磨速度が低化する傾向がある。該砥粒粒子はその製造方法を限定するものではないが、その平均粒径が、0.01〜1.0μmであることが好ましい。平均粒径が0.01μm未満では研磨速度が小さくなりすぎ、1.0μmを超えると傷になりやすい。
【0038】
研磨剤のpHは、3〜5の範囲にあるのが好ましく、特に3.5〜4.5が好ましい。pHが低すぎても高すぎても研磨剤の保存安定性の低下に繋がり傷発生の原因となる傾向があり、またグローバルな平坦性を損ねる原因となることがある。pHは酸成分、またはアンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ成分の添加によって調整可能である。
本発明において研磨剤のpHは、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製の PH81)で測定した。標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.21(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液pH6.86(25℃))を用いて、2点校正した後、電極を研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定した。
【0039】
金属の酸化剤としては、過酸化水素(H)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
研磨対象物のが集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。
但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。
但し、適用対象物が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0040】
本発明で使用する酸化金属溶解剤は、水溶性のものが望ましい。
以下の群から選ばれたものの水溶液が適している。
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等、及びそれらの有機酸のアンモニウム塩等の塩、硫酸、硝酸、アンモニア、アンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等又はそれらの混合物等が挙げられる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
これらの中ではギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好適である。
【0041】
防食剤は、以下の群から選ばれたものが好適である。
ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾール、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールメチルルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールブチルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等が挙げられる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
その中でもベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールブチルエステル、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾールが、低いエッチング速度を得る上で好ましい。
【0042】
水溶性高分子としては、以下の群から選ばれたものが好適である。
アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸、その塩、エステル及び誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ等が挙げられる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
但し、研磨対象物が半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。
これらの中でもポリメタクリル酸やポリアクリル酸が好ましい。
【0043】
金属積層膜界面剥離防止剤としては、以下の群から選ばれたものが好適である。
1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等の脂肪族アゾール;2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−(イソプロピル)イミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール等のイミダゾール;2−チオヒダントイン、1−(o−トリル)−ビスグアニド、1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、1,2,4−トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、3−メチル−5−ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,3−ジフェニルグアニジン等のその他の含窒素化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、4,5−ジメチルチアゾール、2−アミノチアゾール等のチアゾール;ベンズイミダゾール−2−チオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール等のチオール;チオアセトアミド、チオベンズアミド等のチオアミド;エチレンチオ尿素、プロピレンチオ尿素等のチオ尿素;等が挙げられる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。
その中でも1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、1,3−ジフェニルグアニジン、3,5−ジメチルピラゾール、4,5−ジメチルチアゾール、2−アミノチアゾールがより好ましい。
【0044】
また、研磨対象物として、上記した酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜を研磨するための研磨剤としては、水、酸化セリウム粒子、分散剤、分散助剤を含む組成のものが挙げられる。
なお、研磨剤には、上述した各材料の他に、染料、顔料等の着色剤や、pH調整剤、水以外の溶媒などの、一般に研磨剤に添加される添加剤を、研磨剤の作用効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【実施例】
【0045】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(熱可塑性ポリウレタンの合成)
(合成例1)
窒素気流下、攪拌装置付500mLセパラブルフラスコ中に4,4´―ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、MDI)1251gとポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製、PPG:Mw=1000g/mol)1110gとを加え、75℃で2時間加熱反応した。そののち、このなかにジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を467g滴下して攪拌し、200℃まで加熱、そのまま1時間反応させた。この時、MDIのOCN基およびグリコール類の総活性水素の比、は、0.91であった。作製したポリウレタンはバット上にあけて冷却後、粉砕機で粉砕した。これを数回繰り返して所望の量のポリウレタンを合成した。その後これらを二軸の押出し機に投入し230℃となる温度条件で混練りしながらダイ部よりストランド状に吐出させクリーンバスで水冷し、ストランドカッターでペレット化した。
【0046】
(合成例2)
窒素気流下、攪拌装置付500mLセパラブルフラスコ中に4,4´―ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、MDI)1251gとポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製、PPG:Mw=1000g/mol)832gとを加え、75℃で2時間加熱反応した。そののち、このなかにジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を496g滴下して攪拌し、200℃まで加熱、そのまま1時間反応させた。この時、MDIのOCN基およびグリコール類の総活性水素の比、は、0.91であった。作製したポリウレタンはバット上にあけて冷却後、粉砕機で粉砕した。これを数回繰り返して所望の量のポリウレタンを合成した。その後これらを二軸の押出し機に投入し230℃となる温度条件で混練りしながらダイ部よりストランド状に吐出させクリーンバスで水冷し、ストランドカッターでペレット化した。
【0047】
(合成例3)
窒素気流下、攪拌装置付500mLセパラブルフラスコ中に4,4´―ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、MDI)1251gとポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製、PPG:Mw=1000g/mol)757gとを加え、75℃で2時間加熱反応した。そののち、このなかにジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を451g滴下して攪拌し、200℃まで加熱、そのまま1時間反応させた。この時、MDIのOCN基およびグリコール類の総活性水素の比、は、1.0であった。作製したポリウレタンはバット上にあけて冷却後、粉砕機で粉砕した。これを数回繰り返して所望の量のポリウレタンを合成した。その後これらを二軸の押出し機に投入し230℃となる温度条件で混練りしながらダイ部よりストランド状に吐出させクリーンバスで水冷し、ストランドカッターでペレット化した。
【0048】
(合成例4)
窒素気流下、攪拌装置付500mLセパラブルフラスコ中に4,4´―ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、MDI)1251gとポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製、PPG:Mw=1000g/mol)555g、ひまし油系ジオール(伊藤製油(株)製、商品名 URIC H62)234gとを加え、75℃で2時間加熱反応した。そののち、このなかにジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を451g滴下して攪拌し、200℃まで加熱、そのまま1時間反応させた。この時、MDIのOCN基およびグリコール類の総活性水素の比、は、1.0であった。作製したポリウレタンはバット上にあけて冷却後、粉砕機で粉砕した。これを数回繰り返して所望の量のポリウレタンを合成した。その後これらを二軸の押出し機に投入し230℃となる温度条件で混練りしながらダイ部よりストランド状に吐出させクリーンバスで水冷し、ストランドカッターでペレット化した。
【0049】
(比較合成例1)
窒素気流下、攪拌装置付500mLセパラブルフラスコ中に4,4´―ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製、MDI)1251gとポリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)製PPG:Mw=1000g/mol)1665gとを加え、75℃で2時間加熱反応した。そののち、このなかにジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を409g滴下して攪拌し、200℃まで加熱、そのまま1時間反応させた。この時、MDIのOCN基およびグリコール類の総活性水素の比、は、0.91であった。作製したポリウレタンはバット上にあけて冷却後、粉砕機で粉砕した。これを数回繰り返して所望の量のポリウレタンを合成した。その後これらを二軸の押出し機に投入し230℃となる温度条件で混練りしながらダイ部よりストランド状に吐出させクリーンバスで水冷し、ストランドカッターでペレット化した。
【0050】
(研磨パッドの作製)
以下の方法で研磨パッドを作製した。
(実施例1)
合成例1で作製したポリウレタンペレットを内寸650mm角、厚さ2mmのスペーサーを介して、真空プレス内で加圧加熱することにより、均一なシート状成形体を得た。このシートに、深さ0.6mm、幅2.0mmの矩形断面形状の溝を、ピッチ15mm格子状に形成した後、Φ600mmの円盤状に切り出した。さらに溝加工した面の反対側に両面テープを接着し研磨パッドとした。
【0051】
(実施例2)
合成例2で作製したポリウレタンペレットを使用したほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(実施例3)
合成例3で作製したポリウレタンペレットを使用したほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(実施例4)
合成例4で作製したポリウレタンペレットを使用したほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
【0052】
(実施例5)
熱硬化性樹脂として、(株)エッチアンドケー製ポリウレタン樹脂HEI−CASTを用いて以下の手順でパッドの成形を行った。まず、前記HEI-CAST N4760A液(ひまし油系ポリオール、主成分;ひまし油)およびHEI-CAST 3400C液(ポリオール混合物、主成分:ポリエーテルポリオール)を混合し、さらにこれにHEI-CAST N4760B液(有機ポリイソシアネート混合物、主成分;4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート)を混合し脱泡の後、混合後の樹脂液を厚み2mm、650cm角のシートを成形出来る金型に流し込み、80℃で1時間加熱し硬化させた。ここで、各原料の混合割合は、重量比でN4760A:3400C:N4760B=100:20:100で混合した。このシートに、深さ0.4mm、幅0.5mmの矩形断面形状の溝を、最小半径30mm、ピッチ1.5mm同心円状に形成した後、Φ600mmの円盤状に切り出した。さらに溝加工した面の反対側に両面テープを接着し研磨パッドとした。
【0053】
(実施例6)
有機繊維としてポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維(デュポン製「ケブラー」(登録商標)、繊維径125μm、繊維長3mm)、マトリックス樹脂として合成例3のペレットを押し出し成形機にて溶融混合し、タブレット化した。ここで、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維は、5重量%になるように調整した。タブレットを大型乾燥機にて120℃、5h乾燥した後、押し出し成形およびロールを用いて、厚さ1.2mm、幅1mのシート状成形品を作製した。このシートに、深さ0.6mm、幅2.0mmの矩形断面形状の溝を、ピッチ15mm格子状に形成した後、Φ600mmの円盤状に切り出した。さらに溝加工した面の反対側に両面テープを接着し研磨パッドとした。
【0054】
(実施例7)
有機繊維としてアラミド繊維フェルト基材(品番13−0796−01−25、東レ・デュポン製)を用い、これに実施例5の液状熱硬化性樹脂を滴下の後、樹脂真空プレス中で加圧加熱することにより2mm、650cm角のシートを成形した。重量比から換算した繊維含有量は、5重量%であった。このシートに、深さ0.4mm、幅0.5mmの矩形断面形状の溝を、最小半径30mm、ピッチ1.5mm同心円状に形成した後、Φ600mmの円盤状に切り出した。さらに溝加工した面の反対側に両面テープを接着し研磨パッドとした。
【0055】
(比較例1)
熱可塑性樹脂として比較合成例1のポリウレタン樹脂を用いたほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
(比較例2)
熱可塑性樹脂としてポリカプロラクトン系ジオールを使用したポリウレタン樹脂レザミンP4250(大日精化工業(株)製)を用いたほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
(比較例3)
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系ジオールを使用したポリウレタン樹脂レザミンP890(大日精化工業(株)製、分枝のないポリカーボネート系両末端ジオール)を用いたほかは、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
【0056】
(パッド特性の評価)
作製した研磨パッドの特性を、下記に従い評価した。
(引張弾性率)
作製した研磨パッドを1mm×1.5mm×35mmの短冊状に切り出し、動的粘弾性試験装置(Rheometrix Scientific社製、RSA-II)を用いて、スパン間27.5mmにて周波数1Hzにて室温で測定を行い、弾性率を求めた。
【0057】
表1に以上の方法で求めたパッドの引張弾性率について示す。比較例1は、本発明の熱可塑性ポリウレタンパッドである実施例1〜3とほぼ同様の構造を有しているが、その弾性率が0.1GPa未満と極端に低いものである。比較例2および3は市販の熱可塑性ポリウレタンであり、ジオール成分の構造が本発明とまったく異なるものである。このうち、比較例2は弾性率の特性自体は、本発明によるポリウレタンパッドの範囲に入る。
【0058】
【表1】

【0059】
(研磨剤の作製)
銅用の研磨剤として、砥粒を含まない(砥粒フリー)研磨液(日立化成工業株式会社製スラリー 商品名HS-C430)に二次粒子の平均径が35nmのコロイダルシリカを加え0.37重量%に調整した砥粒入り研磨液を用意した。使用時に、体積比で研磨液:過酸化水素水=7:3で混合した。使用時のpHは3.5であった。
【0060】
(金属膜の研磨)
上記の各研磨パッドを研磨装置の定盤に取り付け、#160番手のダイヤモンド砥石をつけドレッサーで、30分間表面を粗した。その後、上記研磨剤を使用して、配線なしあるいは配線を形成したシリコンウエハ基板を以下のようにCMP研磨し、研磨速度、研磨傷、および平坦性の指標としてディッシングを測定した。
研磨速度及び研磨傷評価用としては配線のない基板を用い、金属膜の研磨に厚さ1μmの銅膜を形成した配線形成のない二酸化シリコン膜層付きシリコン基板(基板1)を用いた。
ディッシング評価には配線を形成した基板、すなわち、二酸化シリコン中に深さ0.5μmの溝を形成して、公知のスパッタ法によってバリア層として厚さ50nmの窒化タンタル膜を形成し、同様にスパッタ法により銅膜を形成して公知の熱処理によって埋め込んだ、配線金属部(銅)幅100μm、二酸化シリコン部幅100μmが交互に並んだストライプ状パターン部を有するシリコン基板(基板2)を金属膜の研磨に用いた。
【0061】
(研磨速度の評価)
研磨装置のウエハ基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに上記銅膜形成ウエハ基板(基板1)をセットし、加工面を下にして研磨装置の定盤に取り付けた研磨パッド上にセットした。上記の銅用研磨剤を210ml/minで供給しながら、研磨荷重14kPa、および10kPa、基板と定盤との各回転速度38rpmで1分間CMP研磨した。研磨前後の銅膜厚を、ナプソン(株)製型番 RT−7を用いてシート抵抗値を測定し、抵抗率から膜厚を計算し、CMP研磨前後での膜厚差を求め計算した。
【0062】
(研磨傷の評価)
Cu膜の傷評価は、上記研磨速度の評価を行なった基板を用い、金属顕微鏡の暗視野にて目視にて評価した。
【0063】
(ディッシング量)
上記銅配線を形成した基板(基板2)と上記銅用の研磨剤を用い、配線部以外の部分でバリア膜が露出するまで前記研磨速度評価と同じ装置、研磨荷重、回転速度、研磨液供給量の条件で、銅研磨を行った。
その後、バリア膜用研磨液(HS-T605、日立化成工業株式会社製研磨剤商品名)を用いた以外は、上記銅研磨と同条件で30秒研磨を行いバリア膜を研磨した。
触針式段差計(Veeco/Sloan社製Dektat3030)で配線金属部(銅)幅100μm、絶縁膜(二酸化シリコン)部幅100μmが交互に並んだストライプ状パターン部の表面形状から、絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を測定し、ディッシング量とした。
【0064】
表2に、上記実施例及び比較例のパッドを用いた研磨特性の結果を示す。
実施例を用いた場合はいずれも、比較例の市販ポリウレタン等と比べ飛躍的に研磨速度が大きく、特に低研磨荷重すなわち低摩擦力での研磨に有用であることが確認できた。
【0065】
【表2】

【0066】
比較例2および3に示す市販の熱可塑性ポリウレタンでは研磨速度がおそく、比較例1と同じくパターンの研磨が10分以上かかったため途中で中止した。以上の比較例から、パッドのマトリックス樹脂の機械的、電気的特性だけでなくその化学構造自体が研磨速度に影響を与えることを示している。
【0067】
実施例6および7は繊維を含むほかは、それぞれ実施例4および実施例5と同様な構造である、研磨速度への影響が小さく、かつディッシングを改善することができる。
以上の検討結果から、本発明による研磨パッドを使用すれば、CMP時に絶縁層にかかる負荷を低減しつつ、研磨速度を維持でき、平坦性を向上できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤に貼り付けて研磨対象物の研磨に使用する室温における引張弾性率が0.1〜2.5Gpaの研磨パッドであって、該パッドの研磨面を構成するマトリックスは、ポリウレタンを一種以上含み、該ポリウレタンの少なくともひとつが1)イソシアネート化合物と、2)活性水素および活性水素を有する官能基のα位炭素に分岐鎖をもつ化合物とを含むことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
ポリウレタンの原料に少なくともひまし油系ポリオールを使用した請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
ポリウレタンの原料に、プロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールの少なくとも一方を使用した請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
マトリックス中に気泡を有する請求項1〜3のいずれか記載の研磨パッド。
【請求項5】
気泡含有率が5〜25%である請求項4記載の研磨パッド。
【請求項6】
マトリックス中に繊維を含有する請求項1〜5のいずれか記載の研磨パッド。
【請求項7】
有機及び無機の少なくとも一方の微粒子をマトリックス中に含有する請求項1〜6記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記微粒子の含有率が2〜30%である請求項7記載の研磨パッド。
【請求項9】
研磨パッドを定盤上に固定し、研磨対象物をその被研磨面を前記研磨パッドに対峙させた状態でホルダにより保持し、研磨剤を前記研磨パッド上に供給すると共に、前記パッドならびに前記研磨対象物を相対的に摺動して研磨対象物を研磨する方法であって、前記研磨パッドに請求項1〜8のいずれか記載の研磨パッドを使用することを特徴とする研磨方法。
【請求項10】
少なくともポリアクリル酸と砥粒粒子とを含む研磨剤を使用する請求項9記載の研磨方法。
【請求項11】
pH 3〜5の研磨剤を使用する請求項9または10記載の研磨方法。
【請求項12】
主に金属よりなる層を研磨する請求項9〜11のいずれか記載の研磨方法。
【請求項13】
主に金属として銅よりなる層を研磨する請求項12記載の研磨方法。

【公開番号】特開2006−100556(P2006−100556A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284734(P2004−284734)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】