説明

研磨パッド

【課題】 本発明は、硬度を維持したままドレッシング性を向上させた研磨パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の研磨パッドは、連続気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有しており、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、原料成分として、(A)イソシアネート成分、(B)ポリオール成分、及び(C)水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料、シリコンウエハ、及びアルミ基板等の表面を研磨する際に用いられる研磨パッド(粗研磨用又は仕上げ研磨用)に関する。特に、本発明の研磨パッドは、仕上げ用の研磨パッドとして好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
研磨パッドの研磨特性としては、研磨対象物の平坦性(プラナリティー)及び面内均一性に優れ、研磨速度が大きいことが要求される。研磨対象物の平坦性、面内均一性については研磨層を高弾性率化することによりある程度は改善できる。また、研磨速度については、気泡を含有する発泡体にしてスラリーの保持量を多くすることにより向上できる。
【0004】
上記特性を満たす研磨パッドとして、ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨パッドが提案されている(特許文献1、2)。該ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート末端プレポリマーと鎖延長剤(硬化剤)とを反応させることにより製造されており、イソシアネートプレポリマーの高分子ポリオール成分としては、耐加水分解性、弾性特性、耐摩耗性等の観点から、ポリエーテル(数平均分子量が500〜1600であるポリテトラメチレングリコール)やポリカーボネートが好適な材料として使用されている。
【0005】
通常、研磨パッドを用いて多数の半導体ウエハの平坦化処理を行うと、研磨パッド表面の微細凹凸部が磨耗して、研磨剤(スラリー)を半導体ウエハの加工面へ供給する性能が落ちたり、ウエハ加工面の平坦化速度が低下したり、平坦化特性が悪化する。そのため、所定枚数の半導体ウエハの平坦化処理を行った後には、ドレッサーを用いて研磨パッド表面を更新・粗面化(ドレッシング)する必要がある。ドレッシングを所定時間行うと、研磨パッド表面には無数の微細凹凸部ができ、パッド表面が毛羽立った状態になる。
【0006】
しかしながら、従来の研磨パッドはドレッシング時のドレス速度が低く、ドレッシングに時間がかかりすぎるという問題があった。
【0007】
上記問題を解決するために、特許文献3では、ポリウレタン樹脂発泡体の原料であるイソシアネート成分として、多量化ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートを用いる技術が提案されている。
【0008】
しかし、多量化ジイソシアネートを用いるとポリウレタン樹脂発泡体の硬度が高くなり、当該ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨パッドを用いると研磨対象物の表面にスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−17252号公報
【特許文献2】特許第3359629号明細書
【特許文献3】特開2006−297582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、硬度を維持したままドレッシング性を向上させた研磨パッドを提供することを目的とする。また、該研磨パッドを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す研磨パッドにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、連続気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、原料成分として、(A)イソシアネート成分、(B)ポリオール成分、及び(C)水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物を含むことを特徴とする研磨パッド、に関する。
【0013】
従来の研磨パッドがドレッシングされにくい理由としては、1)研磨層の比重が高い、2)研磨層の材料自体に「ねばり」があることが挙げられる。研磨層表面をドレッシングしやすくするためには比重を下げればよいと考えられるが、単に比重を下げると研磨パッド全体の硬度が低下して平坦化特性が悪化するため好ましくない。また、比重を小さくしつつ硬度を維持するためには高分子量ポリオールの分子量を小さくする、あるいは低分子量ポリオールの配合量を増やすことが考えられるが、その場合には、研磨層の表面摩耗が必要以上に大きくなって研磨パッドの寿命が短くなったり、ドレッシング後の研磨層表面の毛羽立ちがウエハ研磨時にすぐに除去されて研磨速度が小さくなる傾向にある。
【0014】
本発明は、イソシアネート成分と反応させる活性水素基含有化合物として、(C)水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物を用いたことを特徴とする。通常、イソシアネート成分と反応させる活性水素基含有化合物としては、ジオール及びジアミンなどの活性水素基を2つ有する化合物が用いられており、ジオール(又はジアミン)の2つの活性水素基とイソシアネート成分の2つのイソシアネート基とが逐次反応してポリマー化することによりポリウレタン樹脂が得られる。一方、本発明で用いる芳香族化合物は、分子内に活性水素基を1つしか有していないため、ポリマー化を一部阻害することができる。それにより、ポリウレタン樹脂中に比較的低分子量のポリマーを分散させることができ、ポリウレタン樹脂の硬度を維持したままポリウレタン樹脂自体の「ねばり」を低減させることができる。
【0015】
水酸基を1つ有する芳香族化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
−(OCHCHR−OH (1)
(式中、Rは芳香族炭化水素基であり、Rは水素又はメチル基であり、nは1〜5の整数である。)
【0016】
また、アミノ基を1つ有する芳香族化合物は、アニリン又はその誘導体であることが好ましい。
【0017】
水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物の含有量は、イソシアネート成分のイソシアネート基1当量に対して、当該芳香族化合物の活性水素基(水酸基及び/又はアミノ基)当量が0.01〜0.3となる量であることが好ましい。前記芳香族化合物の活性水素基当量が0.01未満の場合には、ポリウレタン樹脂中に分散させる低分子量のポリマーの含有量が少なくなるため、ポリウレタン樹脂自体の「ねばり」が低減し難くなる。その結果、研磨パッドのドレッシング性が向上し難くなる。一方、0.3を超える場合には、ポリウレタン樹脂中に分散させる低分子量のポリマーの含有量が多くなりすぎるため、研磨層の表面摩耗が必要以上に大きくなって研磨パッドの寿命が短くなったり、ドレッシング後の研磨層表面の毛羽立ちがウエハ研磨時にすぐに除去されて研磨速度が小さくなる。
【0018】
研磨パッドのカットレートは、3.5〜10μm/minであることが好ましい。カットレートが3.5μm/min未満の場合には、ドレッシング時間の短縮効果が不十分であるため、半導体ウエハの製造効率を向上させることが困難になる。一方、カットレートが10μm/minを超える場合には、研磨層の表面摩耗が必要以上に大きくなって研磨パッドの寿命が短くなったり、ドレッシング後の研磨層表面の毛羽立ちがウエハ研磨時にすぐに除去され研磨速度が小さくなる傾向にある。
【0019】
また本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の研磨パッドは、硬度を維持したままドレッシング性を向上させたものである。該研磨パッドを用いるとドレッシング時間を短縮できるため、半導体ウエハの製造効率を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の研磨パッドは、連続気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する。本発明の研磨パッドは、前記研磨層のみであってもよく、研磨層と他の層(例えば基材層又はクッション層など)との積層体であってもよい。
【0023】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため、研磨層の形成材料として特に好ましい材料である。
【0024】
前記ポリウレタン樹脂は、原料成分として、(A)イソシアネート成分、(B)ポリオール成分(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、及び低分子量ポリアミンなど)、及び(C)水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物を含む。
【0025】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI(例えば、商品名ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業製)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、カルボジイミド変性MDIを用いることがより好ましい。
【0026】
前記ジイソシアネートと共に、多量化ジイソシアネートを用いてもよい。多量化ジイソシアネートとは、3つ以上のジイソシアネートが付加することにより多量化したイソシアネート変性体又はそれらの混合物である。前記イソシアネート変性体としては、例えば、1)トリメチロールプロパンアダクトタイプ、2)ビュレットタイプ、3)イソシアヌレートタイプなどが挙げられるが、特にイソシアヌレートタイプであることが好ましい。
【0027】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールであるポリマーポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリウレタン樹脂発泡体を連続気泡構造にするには、ポリマーポリオールを用いることが好ましく、特にアクリロニトリル及び/又はスチレン−アクリロニトリル共重合体からなるポリマー粒子を分散させたポリマーポリオールを用いることが好ましい。該ポリマーポリオールは、全高分子量ポリオール中に20〜100重量%含有させることが好ましく、より好ましくは30〜60重量%である。
【0029】
また、前記高分子量ポリオール(ポリマーポリオールを含む)は、ポリオール成分中に60〜95重量%含有させることが好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。前記高分子量ポリオールを特定量用いることにより気泡膜が破れやすくなり、連続気泡構造を形成しやすくなる。
【0030】
また、上記高分子量ポリオールのうち、水酸基価が30〜350mgKOH/gの高分子量ポリオールを用いることが好ましい。水酸基価は100〜320mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が30mgKOH/g未満の場合には、ポリウレタン樹脂のハードセグメント量が少なくなって耐久性が低下する傾向にあり、350mgKOH/gを超える場合には、ポリウレタン樹脂の架橋度が高くなりすぎて脆くなる傾向にある。
【0031】
高分子量ポリオールの数平均分子量は特に限定されるものではないが、得られるポリウレタン樹脂の弾性特性等の観点から500〜3500であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、これを用いたポリウレタン樹脂は十分な弾性特性を有さず、脆いポリマーとなりやすい。そのため、このポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層は硬くなりすぎ、研磨対象物の表面にスクラッチが発生しやすくなる。一方、数平均分子量が3500を超えると、これを用いたポリウレタン樹脂は軟らかくなりすぎる。そのため、このポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層は耐久性が悪くなる傾向にある。
【0032】
高分子量ポリオールと共に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
これらのうち、水酸基価が400〜1830mgKOH/gの低分子量ポリオール及び/又はアミン価が400〜1870mgKOH/gの低分子量ポリアミンを用いることが好ましい。水酸基価は900〜1500mgKOH/gであることがより好ましく、アミン価は400〜950mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が400mgKOH/g未満又はアミン価が400mgKOH/g未満の場合には、連続気泡化の向上効果が十分に得られない傾向にある。一方、水酸基価が1830mgKOH/gを超える場合又はアミン価が1870mgKOH/gを超える場合には、ウエハ表面にスクラッチが発生しやすくなる傾向にある。特に、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、又はトリメチロールプロパンを用いることが好ましい。
【0034】
ポリウレタン樹脂発泡体を連続気泡構造にするには、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン及びアルコールアミンは、ポリオール成分中に合計で5〜40重量%含有させることが好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。上記低分子量ポリオール等を特定量用いることにより気泡膜が破れやすくなり、連続気泡を形成しやすくなるだけでなく、ポリウレタン樹脂発泡体の機械的特性が良好になる。
【0035】
水酸基を1つ有する芳香族化合物は、1つの水酸基で置換された芳香族炭化水素、又は1つの水酸基を有する有機基で置換された芳香族炭化水素であれば特に制限されない。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、及びインデンなどが挙げられる。なお、芳香族炭化水素は、前記以外の置換基を有していてもよい。1つの水酸基を有する有機基としては、例えば、アルカノール基、及びグリコール基などが挙げられる。本発明においては、特に、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
−(OCHCHR−OH (1)
(式中、Rは芳香族炭化水素基であり、Rは水素又はメチル基であり、nは1〜5の整数である。)
【0036】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンモノフェニルエーテル、及びポリオキシプロピレンモノメチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
アミノ基を1つ有する芳香族化合物は、1つのアミノ基で置換された芳香族炭化水素、又は1つのアミノ基を有する有機基で置換された芳香族炭化水素であれば特に制限されない。芳香族炭化水素としては、前記と同様のものが挙げられる。1つのアミノ基を有する有機基としては、例えば、アミノアルキル基、アミノアルケニル基などが挙げられる。本発明においては、特に、アニリン、及びその誘導体を用いることが好ましい。
【0038】
アミノ基を1つ有する芳香族化合物としては、例えば、アニリン、メチルアニリン(トルイジン)、ジメチルアニリン(キシリジン)、メトキシアニリン(アニシジン)、イソプロピルアニリン(クミジン)、N−メチルアニリン、及び2−フェニルエチルアミンなどが挙げられる。
【0039】
前記芳香族化合物の含有量は、イソシアネート成分(イソシアネート末端プレポリマーの場合を含む)のイソシアネート基1当量に対して、当該芳香族化合物の活性水素基(水酸基及び/又はアミノ基)当量が0.01〜0.3となる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25となる量である。
【0040】
ポリウレタン樹脂発泡体をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオール成分や低分子量ポリアミン成分を挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0041】
ポリウレタン樹脂発泡体は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0042】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、事前にイソシアネート成分及びポリオール成分などからイソシアネート末端プレポリマーを合成しておき、これに鎖延長剤を反応させるプレポリマー法が、得られるポリウレタン樹脂の物理的特性が優れており好適である。
【0043】
前記ポリウレタン樹脂の製造は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分を混合して硬化させるものである。プレポリマー法では、イソシアネート末端プレポリマーがイソシアネート基含有化合物となり、鎖延長剤などが活性水素基含有化合物となる。ワンショット法では、イソシアネート成分がイソシアネート基含有化合物となり、鎖延長剤及びポリオール成分などが活性水素基含有化合物となる。
【0044】
本発明の研磨層の形成材料であるポリウレタン樹脂発泡体は、シリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により作製できる。
【0045】
特に、ポリアルキルシロキサン、又はアルキルシロキサンとポリエーテルアルキルシロキサンとの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用した機械発泡法が好ましい。かかるシリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B8443、B8465(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。
【0046】
シリコン系界面活性剤は、ポリウレタン樹脂発泡体中に0.1〜10重量%添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜7重量%である。
【0047】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0048】
研磨層を構成するポリウレタン樹脂発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン樹脂発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
【0049】
(1)イソシアネート成分及び高分子量ポリオールなどを反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーにシリコン系界面活性剤を添加した第1成分を、非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に鎖延長剤などを含む第2成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。第2成分には、適宜触媒を添加してもよい。
【0050】
(2)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、シリコン系界面活性剤を添加した成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に残りの成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0051】
(3)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、前記第1成分及び第2成分を非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0052】
プレポリマー法の場合、前記芳香族化合物は、予めイソシアネート成分と反応させてイソシアネート末端プレポリマーの構造に組み込んでおいてもよく、あるいは第2成分に加えてもよい。
【0053】
ワンショット法の場合、前記芳香族化合物は、第1成分に加えてもよく、第2成分に加えてもよく、両方に加えてもよい。
【0054】
また、気泡分散ウレタン組成物は、メカニカルフロス法で調製してもよい。メカニカルフロス法とは、原料成分をミキシングヘッドの混合室内に入れるとともに非反応性気体を混入させ、オークスミキサー等のミキサーで混合撹拌することにより、非反応性気体を微細気泡状態にして原料混合物中に分散させる方法である。メカニカルフロス法は、非反応性気体の混入量を調節することにより、容易にポリウレタン樹脂発泡体の密度を調整することができるため好ましい方法である。また、略球状の微細気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体を連続成形することができるため製造効率がよい。
【0055】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0056】
非反応性気体を微細気泡状にして分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置を特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)、メカニカルフロス発泡機などが例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。目的とするポリウレタン樹脂発泡体を得るためには、撹拌翼の回転数は500〜2000rpmであることが好ましく、より好ましくは800〜1500rpmである。また、撹拌時間は目的とする密度に応じて適宜調整する。
【0057】
なお、発泡工程において気泡分散液を調製する撹拌と、第1成分と第2成分を混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。気泡分散液を調製する発泡工程と各成分を混合する混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0058】
その後、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を離型シート上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物を硬化させて、ポリウレタン樹脂発泡体を形成する。
【0059】
また、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材層又はクッション層上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物を硬化させて、基材層又はクッション層上に直接ポリウレタン樹脂発泡体(研磨層)を形成してもよい。
【0060】
基材層は特に制限されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体を用いることが好ましい。また、基材層として両面テープ、片面粘着テープ(片面の粘着層はプラテンに貼り合わせるためのもの)を用いてもよい。
【0061】
基材層は、研磨パッドに靭性を付与するためにポリウレタン樹脂発泡体と同等の硬さ、もしくはより硬いことが好ましい。また、基材層(両面テープ及び片面粘着テープの場合は基材)の厚さは特に制限されないが、強度、可とう性等の観点から20〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは50〜800μmである。
【0062】
クッション層は、研磨層の特性を補うものである。クッション層は、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある研磨対象物を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、研磨対象物全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッション層の特性によってユニフォーミティを改善する。
【0063】
クッション層としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0064】
気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの塗布方法を採用することができるが、基材層上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0065】
気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布して流動しなくなるまで反応したポリウレタン樹脂発泡体を加熱し、ポストキュアすることは、ポリウレタン樹脂発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。ポストキュアは、30〜80℃で10分〜6時間行うことが好ましく、また常圧で行うと気泡形状が安定するため好ましい。
【0066】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類や添加量は、各成分の混合工程後、基材層などの上に塗布するための流動時間を考慮して選択する。
【0067】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、機械撹拌するバッチ方式であってもよく、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して機械撹拌し、気泡分散ウレタン組成物を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0068】
また、基材層上にポリウレタン樹脂発泡体を形成した後又はポリウレタン樹脂発泡体を形成するのと同時に、ポリウレタン樹脂発泡体の厚さを均一に調整しておくことが好ましい。ポリウレタン樹脂発泡体の厚さを均一に調整する方法は特に制限されないが、例えば、研磨材でバフがけする方法、プレス板でプレスする方法などが挙げられる。
【0069】
また、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材層上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物上に離型シートを積層する。その後、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン樹脂発泡体を形成してもよい。
【0070】
一方、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を離型シート上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物上に基材層を積層する。その後、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン樹脂発泡体を形成してもよい。
【0071】
離型シートの形成材料は特に制限されず、一般的な樹脂や紙などを挙げることができる。離型シートは、熱による寸法変化が小さいものが好ましい。なお、離型シートの表面は離型処理が施されていてもよい。
【0072】
基材層、気泡分散ウレタン組成物(気泡分散ウレタン層)、及び離型シートからなるサンドイッチシートの厚さを均一にする押圧手段は特に制限されないが、例えば、コーターロール、ニップロールなどにより一定厚さに圧縮する方法が挙げられる。圧縮後に発泡体中の気泡が1.2〜2倍程度大きくなることを考慮して、圧縮に際しては、(コーター又はニップのクリアランス)−(基材層及び離型シートの厚み)=(硬化後のポリウレタン樹脂発泡体の厚みの50〜85%)とすることが好ましい。
【0073】
そして、前記サンドイッチシートの厚さを均一にした後に、流動しなくなるまで反応したポリウレタン樹脂発泡体を加熱し、ポストキュアして研磨層を形成する。ポストキュアの条件は前記と同様である。
【0074】
その後、ポリウレタン樹脂発泡体の上面側又は下面側の離型シートを剥離して研磨パッドを得る。この場合、ポリウレタン樹脂発泡体上にはスキン層が形成されているため、バフがけ等することによりスキン層を除去する。また、上記のように機械発泡法によりポリウレタン樹脂発泡体を形成した場合、気泡のバラツキは、ポリウレタン樹脂発泡体の上面側よりも下面側の方が小さい。したがって、下面側の離型シートを剥離してポリウレタン樹脂発泡体の下面側を研磨表面にした場合には、気泡のバラツキが小さい研磨表面となるため研磨速度の安定性がより向上する。
【0075】
また、基材層又はクッション層上に直接ポリウレタン樹脂発泡体(研磨層)を形成せずに、研磨層を形成した後に両面テープ等を用いて基材層又はクッション層に貼り合わせてもよい。
【0076】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は主に略球状の連続気泡を有しており、連続気泡率は60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。
【0077】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径は、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは35〜200μmである。この範囲から逸脱する場合は、研磨後の研磨対象物のプラナリティ(平坦性)が低下する傾向にある。
【0078】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の比重は、0.3〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.6である。比重が0.3未満の場合には、研磨層の耐久性が低下する傾向にある。また、0.7より大きい場合は、ある一定の弾性率にするために材料を低架橋密度にする必要がある。その場合、永久歪が増大し、耐久性が悪くなる傾向にある。
【0079】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の硬度は、アスカーC硬度計にて、10〜95度であることが好ましく、より好ましくは40〜90度である。アスカーC硬度が10度未満の場合には、研磨層の耐久性が低下したり、研磨後の研磨対象物の表面平滑性が悪くなる傾向にある。一方、95度を超える場合は、研磨対象物の表面にスクラッチが発生しやすくなる。
【0080】
本発明の研磨パッド(研磨層)の研磨対象物と接触する研磨表面には、スラリーを保持・更新する表面形状を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、更なるスラリーの保持性とスラリーの更新を効率よく行うため、また研磨対象物との吸着による研磨対象物の破壊を防ぐためにも、研磨表面に凹凸構造を有することが好ましい。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0081】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有した金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0082】
本発明の研磨パッドの形状は特に制限されず、長さ数m程度の長尺状であってもよく、直径数十cmのラウンド状でもよい。
【0083】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.2〜2mm程度であり、0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0084】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。
【0085】
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0086】
これにより半導体ウエハ4の表面の表面粗さが改善され、スクラッチが除去される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。また、レンズも前記と同様の方法で仕上げ研磨することができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
[測定、評価方法]
(平均気泡径の測定)
作製したポリウレタン樹脂発泡体を厚み1mm以下になるべく薄くカミソリ刃で平行に切り出したものをサンプルとした。サンプルをスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の全気泡径を測定し、平均気泡径を算出した。ただし、楕円球状の気泡の場合は、その面積を円の面積に換算し、円相当径を気泡径とした。
【0089】
(連続気泡率の測定)
連続気泡率はASTM−2856−94−C法に準拠して測定した。ただし、円形に打ち抜いたポリウレタン樹脂発泡体を10枚重ねたものを測定サンプルとした。測定器は、空気比較式比重計930型(ベックマン株式会社製)を用いた。連続気泡率は下記式により算出した。
連続気泡率(%)=〔(V−V1)/V〕×100
V:サンプル寸法から算出した見かけ容積(cm
V1:空気比較式比重計を用いて測定したサンプルの容積(cm
【0090】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン樹脂発泡体を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0091】
(硬度の測定)
JIS K−7312に準拠して行った。作製したポリウレタン樹脂発泡体を5cm×5cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、サンプルを重ね合わせ、厚み10mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーC型硬度計、加圧面高さ:3mm)を用い、加圧面を接触させてから60秒後の硬度を測定した。
【0092】
(貯蔵弾性率の測定)
作製したポリウレタン樹脂発泡体の40℃における貯蔵弾性率E’(40℃)は、動的粘弾性測定装置(メトラー・トレド社製、DMA861e)を用いて下記条件で測定した。
周波数:1.6Hz
昇温速度:2.0℃/min
測定温度範囲:0〜60℃
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み1.0mm
【0093】
(カットレートの測定)
スピードファム社製9B型両面研磨機に、作製した研磨パッドを貼り付け、その表面をダイヤモンドドレッサー(スピードファム社製、#100仕様、ダイヤペレット24個取付)4枚を用いて回転させながら均一にドレッシングした。この時のドレッサー荷重は100g/cm、研磨定盤回転数は50rpm、ドレス時間は20minとした。そして、ドレス前後の研磨パッドの厚さからカットレート(μm/min)を算出した。
【0094】
実施例1
容器にポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製、PCL210N、官能基数:2、水酸基価:110mgKOH/g)60重量部、ポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業社製、PCL305、官能基数:3、水酸基価:305mgKOH/g)25重量部、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物(旭硝子社製、EX−890MP、官能基数:3、水酸基価:865mgKOH/g)2重量部、ジエチレングリコール(DEG、官能基数:2、水酸基価:1058mgKOH/g)13重量部、エチレングリコールモノフェニルエーテル(日本乳化剤社製、イソシアネート基1当量に対する水酸基の当量:0.105)10重量部、シリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8443)6重量部、及び触媒(花王社製、Kao No.25)0.06重量部を入れて混合した。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、ミリオネートMTL(日本ポリウレタン社製)95.88重量部を添加し、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0095】
調製した気泡分散ウレタン組成物を、離型処理した離型シート(東洋紡績製、ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.1mm)上に塗布して気泡分散ウレタン層を形成した。そして、該気泡分散ウレタン層上に基材層(ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.2mm)を被せた。ニップロールにて気泡分散ウレタン層を1.2mmの厚さにし、その後70℃で3時間キュアしてポリウレタン樹脂発泡体を形成した。その後、ポリウレタン樹脂発泡体から離型シートを剥離した。次に、バンドソータイプのスライサー(フェッケン社製)を用いてポリウレタン樹脂発泡体の表面をスライスして厚さを1.0mmにし、厚み精度を調整した。その後、基材層表面にラミ機を使用して両面テープ(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼りあわせて研磨パッドを作製した。
【0096】
実施例2〜6、及び比較例1
表1に記載の配合を採用した以外は実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。表1中の化合物は以下のとおりである。
・PCL210N(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトンジオール、官能基数:2、水酸基価:110mgKOH/g)
・PTMG1000(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、官能基数:2、水酸基価:112mgKOH/g)
・PCL305(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトントリオール、官能基数:3、水酸基価:305mgKOH/g)
・EX−890MP(旭硝子社製、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物、官能基数:3、水酸基価:865mgKOH/g)
・DEG(ジエチレングリコール、官能基数:2、水酸基価:1058mgKOH/g)
・PhG(日本乳化剤社製、エチレングリコールモノフェニルエーテル)
・PhDG(日本乳化剤社製、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル)
・PhFG(日本乳化剤社製、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)
・B8443(ゴールドシュミット社製、シリコン系界面活性剤)
・Kao No.25(花王社製、触媒)
・ミリオネートMTL(日本ポリウレタン社製、カルボジイミド変性MDI)
【0097】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の研磨パッドはレンズ、反射ミラー等の光学材料、シリコンウエハ、及びアルミ基板等の表面を研磨する際に用いられる。特に、本発明の研磨パッドは、仕上げ用の研磨パッドとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0099】
1:研磨パッド(研磨層)
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:研磨対象物(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、原料成分として、(A)イソシアネート成分、(B)ポリオール成分、及び(C)水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物を含むことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
水酸基を1つ有する芳香族化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1記載の研磨パッド。
−(OCHCHR−OH (1)
(式中、Rは芳香族炭化水素基であり、Rは水素又はメチル基であり、nは1〜5の整数である。)
【請求項3】
アミノ基を1つ有する芳香族化合物が、アニリン又はその誘導体である請求項1又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
水酸基を1つ有する芳香族化合物及び/又はアミノ基を1つ有する芳香族化合物の含有量は、イソシアネート成分のイソシアネート基1当量に対して、当該芳香族化合物の活性水素基(水酸基及び/又はアミノ基)当量が0.01〜0.3となる量である請求項1〜3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
カットレートが3.5〜10μm/minである請求項1〜4のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−66975(P2013−66975A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207631(P2011−207631)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】