説明

研磨剤の回収方法および研磨剤の回収装置

【課題】圧力損失の増大や、膜の閉塞による回収率の大幅な低下を抑制しながら、研磨剤が高濃度に濃縮されたスラリーを回収可能な研磨剤の回収装置および研磨剤の回収方法を提供する。
【解決手段】CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーから研磨剤を回収する装置であって、前記使用済み研磨スラリーが導入される孔道が円筒状で、かつ有効濾過部の長さが0.8m以下である分離膜41を有しており、前記使用済み研磨スラリーの研磨剤濃度を、10質量%以上の濃度に濃縮する研磨剤の回収装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤の回収方法及び回収装置に係り、特に、使用済み研磨スラリーを高濃度に濃縮することができる研磨剤の回収方法及びこれを用いた回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの上に形成された絶縁膜、メタル薄膜などの被膜の表面は、高度な平坦面であることが要求されている。その要求に応えるために、研磨パッドなどの研磨部材と半導体ウェーハとの間に研磨スラリーを介在させた状態で研磨を行なうCMP(化学的機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)が採用されている。
【0003】
CMPで用いられる研磨剤としては、分散性がよく粒子径が揃っているシリカ微粒子や、研磨速度の大きいセリア、硬度が高く安定なアルミナなどが使用されている。これらの研磨剤は、所定粒子径、濃度の粒子が水中に分散したスラリーとしてメーカーにより提供され、各現場に応じて、CMPマシンに供給する際に所定濃度に希釈されて使用されている。
【0004】
通常、このスラリー中には研磨剤の他に、水酸化カリウム、アンモニア、有機酸、アミン類などのpH調整剤、界面活性剤などの分散剤、過酸化水素、ヨウ素酸カリウム、硝酸鉄(III)などの酸化剤などが予め添加されたり、あるいは、研磨時に別途添加される。
【0005】
これらの研磨スラリーは、使用量が多く高価である点、また、産業廃棄物量低減の観点から、再利用することが望まれる。
しかしながら、研磨工程排水は、多数の洗浄工程水等によって希釈され研磨剤濃度が低下し、加えて半導体ウェーハや、被膜材料、研磨パッド屑、研磨剤が破壊された微細粒子や、研磨剤が凝集することによって生じる粒子径の大きい固形不純物などが混入している。このため、このような研磨工程排水を無処理で研磨剤として再利用すると、研磨剤濃度の低下により平坦化する研磨速度が低下したり、ウェーハ表面にキズが発生して製品の歩留まりが低下したりする。
【0006】
したがって、再利用にあたっては、研磨排水から粗大固形物、塩類などの不純物の除去処理を行い、さらに濃縮処理を行って所定組成の研磨スラリーを再調整することが必要である。
【0007】
従来より、CMP工程排水処理のために、さまざまな技術の開発が試みられている。
例えば、CMP工程排水を、精密濾過膜、限外濾過膜等の分離膜に通水して膜処理し、さらに薬剤や超純水を添加して研磨剤や分散剤の濃度を調製し、研磨剤スラリーとして再利用する方法が提案されている。
例えば特許文献1には、第1の膜エレメントにおける循環液のスラリー濃度を所定値に維持して膜分離するとともに、その一部を抜き出して、第2の膜エレメントでさらに膜分離することで、膜透過流速を向上させたCMP排水の膜処理方法が開示されている。また、特許文献2には、第1工程の限外濾過膜1mで、微細粒子を除去するとともに、第2工程の精密濾過膜2mで、研磨傷の原因となる粗大粒子を除去することで、微細粒子が凝集して大径化した凝集物を除去し、所望粒径の研磨剤粒子を回収可能な半導体用スラリー状研磨液の分離方法が開示されている。
さらに特許文献3には、CMP工程の研磨剤廃液を、限外濾過膜等の濃縮用フィルターを用いて原液の比重の0.90倍〜0.96倍に濃縮した後(一次濃縮工程)、この濃縮液をさらに原液の比重の0.99倍〜1.01倍まで濃縮して(二次濃縮工程)、研磨剤をリサイクルする方法が開示されている。
特許文献4には、粗大固形物を除去するための第2の膜分離手段を後段に設け、前段の第1の膜分離手段で濃縮された濃縮液を、第2の膜分離手段に導入することで、膜分離手段への通水量や排水中の分散剤量を低減し、膜の早期の目詰まりを抑制した研磨剤の回収装置が開示されている。
【0008】
上記の例において使用されている中空糸型の分離膜は、限外濾過膜が汎用されている。中空糸型の分離膜は、その有効濾過長が長いほど使用するモジュール本数が抑えられるため、コスト面で優れており、通常は1m程度の濾過長のものが汎用されている。
【0009】
一方、中空糸型の分離膜では、被処理水が高濃度となるにしたがい、その内壁に固形成分がケークとして堆積し、次第にケークの厚みが増大する。このため、膜の有効内径が狭小化し、圧力損失の増大や、膜の閉塞が発生して、研磨剤の回収率が著しく低下するおそれがある。特にCMP工程の排出水の処理の場合には、研磨剤濃度が数%程度を超えるとこの傾向が顕著となる。
このため、現実的には数%程度までの濃縮が限界であり、上記特許文献に記載の技術でも、高濃度の被処理水を通水した場合には、分離膜の目詰まりや、これに伴う研磨剤粒子の回収率の低下を十分に抑制するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−113273号公報
【特許文献2】特開平11−28338号公報
【特許文献3】特開2008−34827号公報
【特許文献4】特開2002−83789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、分離膜による濾過処理では、被処理水濃度が所定値を超えると膜の目詰まりの進行速度が急激に上昇し、先に述べたように、研磨スラリーの場合には、研磨剤濃度が数%程度を超えたときに目詰まりが急激に進行する。このため、廃水処理等の従来の技術では、固形分としての濃縮は、現実的には数%程度が限界であり、この程度の濃度では、研磨スラリーとして直接CMP工程に再利用することは困難であった。
【0012】
さらに中空糸型の分離膜を用いた場合、スラリー中の研磨剤濃度が数%程度を超えるまで濃縮すると、先に述べたように、中空糸内部では、次第にケークの堆積が進行する。その後さらに濃縮処理を継続すると、図8に示すように、ゲル状となった研磨剤が中空糸の被処理水出口側に堆積することが判明した。このような状態となると、濃縮水を得られなくなるだけでなく、モジュール自体の使用継続が不能となる。さらに研磨剤がゲル状に堆積するため、研磨剤の回収率が急激に低下する。
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、圧力損失の増大や、膜の閉塞による回収率の大幅な低下を抑制しながら、研磨剤が高濃度に濃縮可能な研磨剤の回収装置および研磨剤の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明者が鋭意検討したところ、上記のような、分離膜の濾過面上へのケークの堆積や、被処理水出口側での研磨剤のゲル状物質の堆積の有無は、主に分離膜の有効濾過長に依存することを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の研磨剤の回収装置は、CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーから研磨剤を回収する装置であって、前記使用済み研磨スラリーが導入される孔道が円筒状で、かつ有効濾過部の長さが0.8m以下である分離膜を有しており、前記使用済み研磨スラリーの研磨剤濃度を、10質量%以上の濃度に濃縮することを特徴とする。
【0016】
前記分離膜に導入される研磨剤濃度は、客先工場の排液濃度に依存する為特に限定されないが、一般には0.02〜5質量%である使用済みスラリーが導入されるものとすることができる。前記分離膜の中空部には、前記使用済み研磨スラリーがクロスフロー方式で通水されることが好ましい。前記分離膜は、内圧型の膜分離手段に設けられることが好ましい。前記分離膜が中空糸膜であることが好ましい。前記分離膜の内径は0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。前記分離膜の分画分子量は3,000〜30,000であることが好ましい。前記分離膜は、ポリエチレン、4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンのいずいれかで構成されていることが好ましい。
【0017】
前記研磨剤の回収装置は、前記分離膜を第2の分離膜として有するとともに、前記第2の分離膜の前段に、この分離膜と同等以上の有効濾過長を有しており、孔道が円筒状である第1の分離膜を有するものとすることができる。前記第1の分離膜の有効濾過部の長さL1は0.8〜1.5mが好ましく、前記第2の分離膜の有効濾過部の長さL2は0.2〜0.8m以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の研磨剤の回収方法は、CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーを、孔道が円筒状であり、有効濾過部の長さが0.8m以下である分離膜に通水し、前記使用済み研磨スラリーの研磨剤濃度を、10質量%以上の濃度に濃縮することを特徴とする。前記分離膜の中空部には、前記使用済み研磨スラリーをクロスフロー方式で通水することが好ましい。また、前記分離膜の内径は、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。また、前記分離膜の有効濾過部における被処理水の循環流速は、0.5〜2m/secであることが好ましい。
【0019】
前記研磨剤の回収方法は、孔道が円筒状である第1の分離膜に、CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーを通水して前記使用済み研磨スラリーを濃縮する第1の濾過工程と、有効濾過部の長さが0.8m以下である第2の分離膜に、前記第1の分離膜の濃縮水を通水して濃縮する第2の濾過工程と、を有しており、前記第1の分離膜として、前記第2の分離膜よりも長い有効濾過長を有する分離膜を用いるものとすることができる。前記第1の濾過工程では、客先工場排水の研磨剤濃度に依存する為特に限定されないが、一般には0.02〜5質量%の使用済み研磨スラリーを濾過して最大13質量%、より好ましくは9〜10質量%まで濃縮し、前記第2の濾過工程では、前記第1の濾過工程で得られた13質量%以下の濃縮水を濾過して最大26質量%、より好ましくは20〜25質量%まで濃縮することが好ましい。また、前記研磨剤の回収方法は、上記した本発明の研磨剤の回収装置を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の使用済み研磨剤の回収装置によれば、有効濾過部の長さが所定値以下である分離膜を用いることで、濾過面へのケークの堆積や、披処理水出口側での研磨剤のゲル状堆積等の不具合が生じ難くなり、十数%程度以上の研磨剤濃度まで、スラリーを濃縮可能となる。
また、CMP工程で使用した後の使用済み研磨スラリーを、従来より低エネルギーで高濃度に濃縮することができ、製品として利用可能なレベルまで、研磨剤が高濃度に濃縮されたスラリーを回収することができる。また、このように高濃度の濃縮を行っても、膜内の圧力損失の増大や、分離膜の閉塞を抑制でき、回収率の著しい低下が抑制された研磨剤の回収装置とすることができる。
【0021】
また、本発明の使用済み研磨スラリーの回収方法では、回収率の著しい低下を生じることなく、製品として利用可能なレベルまで、研磨剤が高濃度に濃縮されたスラリーを回収することができる。これにより、CMP工程に用いる新たなスラリーの使用量を、60%以上削減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る研磨剤の回収装置の概略構成を示す図である。
【図2】分離膜41を構成する一の中空糸の断面を拡大して示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る研磨剤の回収装置の概略構成を示す図である。
【図4】処理タンク内の研磨剤濃度と、透過水排出配管から排出される透過水量(flux)との関係を示す図である。
【図5】図3の回収装置における、処理タンク13内の研磨剤濃度と第1透過水排出配管22から排出される透過水量(flux)との関係、及び処理タンク17内の研磨剤濃度と第2透過水排出配管24から排出される透過水量(flux)との関係を示す図である。
【図6】分離膜が閉塞した時点での、膜分離手段入口の状態を示す写真である。
【図7】図6の拡大写真である。
【図8】分離膜が閉塞した時点での、膜分離手段出口の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の研磨剤の回収装置および研磨剤の回収方法について詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨剤の回収装置の概略構成を示す図である。
本実施形態における研磨剤の回収装置1は、CMP工程により半導体を研磨した後の使用済みの研磨スラリーS(以下、使用済み研磨スラリーSと示す。)に含まれる粗大粒子を除去するガードフィルター2と、ガードフィルター2の処理水を収容する処理タンク3と、使用済み研磨スラリーSを濾過する分離膜41を備えた膜分離手段4が、流路にそって順次設置されている。
なお、ガードフィルター2は、研磨剤や、半導体ウェーハを研磨した際の研磨パッド屑等が凝集して生じる粒子径の大きい固形不純物を捕捉するものであり、研磨剤粒子の粒径より大きい孔径を有するものであれば、特に限定することなく用いることができる。
ガードフィルター2及び処理タンク3間は、配管5によって接続されており、処理タンク3及び第1の膜分離手段4間は、ポンプP1を備えた配管6によって接続されている。なお、処理タンク3には、成分濃度計C1が設けられている。
【0025】
膜分離手段4には、透過水出口配管7、及び開閉弁B1を備えた濃縮水出口配管8が設けられている。
濃縮水出口配管8は、濃縮水回収タンク9側に開口されており、濃縮水出口配管8の開閉弁B1の上流部と処理タンク3間には、開閉弁B1の閉鎖及び開閉弁B2の開放により、膜分離手段4で得られた濃縮水を、処理タンク3に還流させる還流配管10が設けられている。
【0026】
分離膜41は、円筒状の孔道を有しており、この孔道内部、またはその外側に使用済み研磨スラリーSを通過させることで、使用済み研磨スラリーSの過剰の水分が除去されて濃縮されるようになっている。
円筒状の孔道を有する第1の分離膜41としては、例えば中空糸型、管状型、または平膜型の分離膜を適用することができる。
これらの中でも、中空糸型の分離膜は、省スペースで大きな膜面積を得られるため、分離膜41として好適に用いられる。
【0027】
分離膜41の有効濾過部の長さLは、目的濃縮濃度により0.8m以下、好ましくは、0.5m以下、より好ましくは0.3m以下である。
一般に、高濃度のスラリーを分離膜に通水すると、例えば中空糸型の分離膜の場合、その有効濾過部を濃縮水が通過する過程で、中空糸410の濾過面412上に固形成分が堆積し、ケーク層が形成されてその厚みが増大する(図2参照。)。分離膜41の濾過面412上のケーク層は、その有効濾過長が長いほど形成され易く、ケーク層の形成により、中空糸410の有効内径410Sが狭小化し、圧力損失の増大や、膜の閉塞が発生して、研磨剤の回収効率が著しく低下することがある。また、ケーク層やゲル状の堆積物は研磨剤粒子で形成されるため、ケーク層の増大やゲル状堆積物の発生に伴って研磨剤粒子の回収率が低下する。
さらに、図8に示すように、中空糸の被処理水出口側に研磨剤がゲル状に堆積し、濾過処理の継続が困難となる。また、濾過面の洗浄に要する薬品量や洗浄時間が増加し、研磨剤回収工程全体に要するコストが増大する原因となる。
【0028】
本発明の研磨剤の回収装置1では、分離膜41として、その有効濾過部の長さLが0.8m以下、好ましくは、0.5m以下、より好ましくは0.3m以下である分離膜を用いる。このような所定値以下の有効濾過長モジュールを用いた場合には、高濃度の使用済みスラリーを通水しても、目詰まりの発生が生じ難く、濾過面412上でのケーク層の成長が抑制されるとともに、ゲル状の堆積が生じない。
このため、高濃度の被処理水を通水しても、分離膜41における圧力損失の増大や、膜の閉塞が生じ難く、回収率の著しい低下が抑制された回収装置1とすることができる。
【0029】
また、上記のように、濾過面412上にケーク層が形成すると、研磨剤粒子がゲル化した粗大粒子がケーク層から剥離し、被処理水中に混入することもある。このような粗大粒子が回収後の研磨剤に混入すると、CMP工程で再利用したときに、ウェーハ表面でスクラッチを引き起こし、製品の歩留まりを低下させる原因となる。
【0030】
本発明の研磨剤の回収装置1では、分離膜41として、その有効濾過部の長さLが上記範囲の分離膜を用いているため、分離膜内部でのケーク層の形成や、ゲル状物質の堆積による粗大粒子の生成が抑制されている。このため、回収後の研磨剤粒子への粗大粒子の混入量が極めて低減されており、CMP工程に再利用しても、ウェーハ表面のスクラッチ等を殆ど生じさせず、高精度に研磨可能な研磨剤を回収することができる。
【0031】
分離膜41の有効濾過部の長さLが0.8mを超える場合には、分離膜41の濾過面412上で、ケーク層の厚みが増大し易く、有効内径の狭小化による圧力損失の増大や、膜の閉塞が生じ易くなる。
【0032】
分離膜41の有効濾過部の長さLは、上記の範囲内で、かつ0.2m以上であることが好ましい。分離膜41の有効濾過部の長さLが0.2m未満であると、回収装置1に設置する分離膜41のモジュール本数が増加し、適切な濾過処理装置を設置する事が困難となる。分離膜41の有効濾過部の長さLは、好ましくは0.2〜0.3mである。
【0033】
分離膜41は、有機材料からなる有機膜であってもよく、無機セラミックスからなる無機膜であってもよい。
有機膜としては、例えばポリエチレン(PE)、4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、およびポリエーテルスルホン(PES)等を好適に用いることができる。
また、無機膜としては、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)のセラミックス材料や、ステンレス(SUS)、ガラス(SPG)等を用いることができる。
これらの中でも、分離膜41としては、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)を好適に用いることができる。
【0034】
分離膜41は、中空糸型の形状を有するものであれば、精密濾過膜であってもよく、限外濾過膜であってもよいが、回収後の濃縮液中の研磨剤粒子を最も効率よく回収する観点から、限外濾過膜を好適に用いることができる。
【0035】
分離膜41の分画分子量は、3,000〜30,000であることが好ましい。
分離膜41の分画分子量が3,000未満であると、分離膜41に被処理水を通水して透過水を得る為に、分離膜41への供給圧力を上昇させる必要があり、エネルギー効率が低下するとともに、分離膜41に損傷を与えるおそれがある。
一方、分離膜41の分画分子量が30,000を超えると、研磨剤粒子の一部が分離膜41を通過して透過水側に移動し、研磨剤粒子を効率的に回収できないおそれがある。またこの場合、分離膜41の孔径と略同径を有する微細粒子により、分離膜41の孔が閉塞され易くなり、目詰まりを生じるおそれがある。分離膜41の分画分子量は、6000〜10000がより好ましい。
【0036】
分離膜41が中空糸型分離膜または管状分離膜である場合、各中空糸等の内径は、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。分離膜41の各中空糸等の内径が0.1mm未満であると、膜の中空部を流れる被処理水の圧力損失が増大し、適切な処理効率を得るのが困難となる。またこの場合、膜面強度が低下し、被処理水の濃度上昇に伴い膜が破損するおそれがある。一方、分離膜41の各中空糸等の内径が0.8mmを超えると、膜の中空部を流れる被処理水の剪断速度が小さく、研磨剤その他の不純物が中空糸内壁に堆積し易くなり、中空部を閉塞させる、あるいは研磨剤のゲルが大量に発生し、濃縮液中の研磨剤濃度が低下するおそれがある。剪断速度を上昇させるには、設備を大きくしエネルギーを多く消費する為好ましくない。また、外圧に対する耐圧性が低下するおそれもある。分離膜41の各中空糸等の内径は、0.3mm以上0.8mm以下がより好ましい。
【0037】
膜分離手段4は、中空糸410内部に被処理水を通水する内圧型の分離手段であってもよく、中空糸410の支持層411の外側に被処理水を通水する外圧型の分離手段であってもよいが、内圧型の分離手段とした場合には、濾過面412上に堆積する固形成分が、中空糸410内に通水される被処理水の剪断力により剥離され、ケーク層の成長を抑制できるため好ましい。
【0038】
このような回収装置1とすることで、透過水出口配管7より得られる透過水は、回収して再利用することが可能である。具体的には、たとえば未処理のまま、もしくは透過水の水質に応じた処理をした上で、超純水装置の原水等として利用することが可能である。また、工場内の他のユーティリティー、たとえば生活用水、クーリングタワー用水等として利用することも可能である。
【0039】
(第2実施形態)
図3は、本発明の一実施形態に係る研磨剤の回収装置の概略構成を示す図である。
本実施形態における研磨剤の回収装置11は、CMP工程により半導体を研磨した後の使用済みの研磨スラリーS(以下、使用済み研磨スラリーSと示す。)に含まれる粗大粒子を除去するガードフィルター12の後段に、ガードフィルター12の処理水を収容する前段処理タンク13、使用済み研磨スラリーSを濾過する第1の分離膜141を備えた第1の膜分離手段14が、流路にそって順次設置されている。
なお、ガードフィルター12は、研磨剤や、半導体ウェーハを研磨した際の研磨パッド屑等が凝集して生じる粒子径の大きい固形不純物を捕捉するものであり、研磨剤粒子の粒径より大きい孔径を有するものであれば、特に限定することなく用いることができる。
ガードフィルター12及び前段処理タンク13間は、配管15によって接続されており、前段処理タンク13及び第1の膜分離手段14間は、ポンプP2を備えた配管16によって接続されている。なお、前段処理タンク13には、成分濃度計C2が設けられている。
【0040】
第1の膜分離手段14の後段には、第1の膜分離手段14で分離された濃縮水(以下、第1の濃縮水と示すことがある。)を収容する後段処理タンク17と、後段処理タンク17から供給された第1の濃縮水を濾過する第2の分離膜181を備えた第2の膜分離手段18と、第2の膜分離手段18で分離された濃縮水(以下、第2の濃縮水と示すことがある。)を回収する回収タンク19と、が順次設置されている。なお、後段処理タンク17には、成分濃度計C3が設けられている。
第1の膜分離手段14及び後段処理タンク17間は、開閉弁B3を備えた配管20によって接続されており、後段処理タンク17及び第2の膜分離手段18間は、ポンプP3を備えた配管21によって接続されている。
【0041】
第1の膜分離手段14には、第1透過水出口配管22が設けられている。また、配管20の開閉弁B3の前段と前段処理タンク13間には、開閉弁B3の閉鎖及び開閉弁B4の開放により、第1の膜分離手段14で得られた第1の濃縮水を、前段処理タンク13に還流させる還流配管23が設けられている。
【0042】
第2の膜分離手段18には、第2透過水出口配管24、及び開閉弁B5を備えた濃縮水出口配管25が設けられている。
濃縮水出口配管25は、回収タンク19側に開口されており、濃縮水出口配管25の開閉弁B5の上流部と後段処理タンク17間には、開閉弁B5の閉鎖及び開閉弁B6の開放により、第2の膜分離手段18で得られた第2の濃縮水を、後段処理タンク17に還流させる還流配管26が設けられている。
【0043】
第1の分離膜141、第2の分離膜181は、円筒状の孔道を有しており、この孔道内部、またはその外側に使用済み研磨スラリーSを通過させることで、使用済み研磨スラリーSの過剰の水分が除去されて濃縮されるようになっている。
円筒状の孔道を有する第1の分離膜141としては、例えば中空糸型、管状型、または平膜型の分離膜を適用することができる。
これらの中でも、中空糸型の分離膜は、省スペースで大きな膜面積を得られるため、第1の分離膜141、第2の分離膜181として好適に用いられる。
【0044】
第2の分離膜181は、前段に設けられた第1の分離膜141の濃縮水を濾過してさらに濃縮し、その研磨剤濃度を高めるものである。第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2は、0.8m以下、好ましくは、0.5m以下、より好ましくは0.3m以下である。
第2の分離膜181として、上記の有効濾過長の分離膜を用いることで、高濃度の使用済みスラリーを通水しても、膜の目詰まりが生じ難く、ケーク層の成長が抑制される。このため、高濃度の被処理水を通水しても、第2の分離膜181における圧力損失の増大や、膜の閉塞が生じ難く、回収率の著しい低下が抑制された回収装置11とすることができる。
【0045】
第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2が0.8mを超える場合には、第2の分離膜181の濾過面上で、ケーク層の厚みが増大し易く、有効内径の狭小化による圧力損失の増大や、膜の閉塞が生じ易くなる。
第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2は、第1の実施形態における分離膜41と同様の理由から、特に好ましくは0.2〜0.3mである。
【0046】
第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2は、第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1よりも短く形成されていることが好ましい。すなわち、第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1は、第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2よりも長く形成されていることが好ましい。
これにより、第1の分離膜141では、分散媒体で希釈された低濃度の使用済み研磨スラリーSを効率的に濾過処理するとともに、第2の分離膜181では、第1の分離膜141で得られた第1の濃縮水を、さらに濾過処理することで、製品として再利用可能なレベルまで、研磨剤粒子が高濃度に濃縮されたスラリーを、低エネルギーで回収することができる。
【0047】
近年では、CMP工程で排出される使用済みスラリーは、一日当りの排出量が1000mを超える場合もあり、より効率的な処理により、スラリーに含まれる水を除去、回収するとともに、研磨剤成分を回収する技術が求められている。
本実施形態では、上記のように二段構成とすることで、前段に設けた、膜面積の大きい第1の分離膜141により、被処理水の体積を大幅に低減できるとともに、後段に設けた第2の分離膜181により、目詰まりを生じることなく、被処理水をより高濃度に濃縮することができる。このため、第1の実施形態と比較して、使用するモジュールの本数を低減することが可能となる。
【0048】
第2の分離膜181の有効濾過部の長さL2が、第1の分離膜141の長さL1と同等かまたはこれを超える場合には、第2の分離膜181の内部において、ケーク層の厚みが増大し易く、有効内径の狭小化による、圧力損失の増大や、膜の閉塞が生じ易くなる。
【0049】
第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1は、特に限定されないが、膜面積などを考慮して0.8〜1.5mであることが好ましい。
第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1が0.8m未満であると、回収装置11に設置する分離膜141のモジュール本数が増大したり、設置面積が大きくなったりして、回収装置として、十分な効果を得られないおそれがある。
一方、第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1が1.5mを超えると、第1の分離膜141の設置高さに制限が出たり、分離膜141のハンドリングが困難となるおそれがある。第1の分離膜141の有効濾過部の長さL1は、より好ましくは0.8〜1.5mである。
【0050】
第1の分離膜141は、円筒状の孔道を有するものであれば、精密濾過膜であってもよく、限外濾過膜であってもよいが、研磨剤粒子(砥粒)を効率よく回収し、また回収後の濃縮液中の研磨剤粒子の粒度を一定に保ち、孔径が小さく、またエネルギー効率に優れた限外濾過膜を好適に用いることができる。
【0051】
また、第2の分離膜181も、中空糸型の形状を有するものであれば、精密濾過膜であってもよく、限外濾過膜であってもよいが、回収後の濃縮液中の研磨剤粒子の回収率を高く保つ観点から、限外濾過膜を好適に用いることができる。
【0052】
第1の分離膜141及び第2の分離膜181の分画分子量は、3,000〜30,000であることが好ましい。第1の分離膜141及び第2の分離膜181の分画分子量が3,000未満であると、分離膜に被処理水を通水して透過水を得る為に、分離膜への供給圧力を上昇させる必要があり、エネルギー効率が低下するとともに、分離膜に損傷を与えるおそれがある。
一方、第1の分離膜141及び第2の分離膜181の分画分子量が30,000を超えると、研磨剤粒子の一部が第1の分離膜141を通過して透過水側に移動し、研磨剤粒子の回収効率が低下するおそれがある。また、この場合、分離膜141の孔径と略同径を有する微細粒子により、分離膜141及び第2の分離膜181の孔が閉塞され易くなり、目詰まりを生じるおそれがある。
【0053】
第1の分離膜141及び第2の分離膜181が中空糸型分離膜または管状型分離膜である場合、その内径は、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。第1の分離膜141の各中空糸等の内径が0.1mm未満であると、膜の中空部を流れる被処理水の圧力損失が増大し、適切な処理効率を得るのが困難となるとともに、分離膜141の膜面強度が低下し、被処理水の濃度上昇に伴って膜が破損するおそれがある。一方、第1の分離膜141の各中空糸等の内径が0.8mm以上であると、膜の中空部を流れる被処理水の剪断速度が小さく、研磨剤やその他の不純物が中空部の内壁に堆積し易くなり、中空部を閉塞させたり、研磨剤粒子が凝集したゲルが大量に発生し、回収後の濃縮液中の研磨剤濃度が低下したりするおそれがある。第1の分離膜141及び第2の分離膜181の中空糸等の内径は、0.3mm以上0.8mm以下がより好ましい。
【0054】
第1の分離膜141及び第2の分離膜181は、有機材料からなる有機膜であってもよく、無機セラミックスからなる無機膜であってもよい。
有機膜としては、例えばポリエチレン(PE)、4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、およびポリエーテルスルホン(PES)等を好適に用いることができる。
また、無機膜としては、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)のセラミックス材料や、ステンレス(SUS)、ガラス(SPG)等を用いることができる。
これらの中でも、第1の分離膜141及び第2の分離膜181としては、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)を好適に用いることができる。
【0055】
第1の分離膜141、第2の分離膜181が中空糸型の分離膜である場合には、中空糸内部に被処理水を通水する内圧型の分離手段であってもよく、中空糸の支持層の外側に被処理水を通水する外圧型の分離手段であってもよいが、内圧型の分離手段とした場合には、濾過面上に堆積する固形成分が、中空糸内に通水される被処理水の剪断力により剥離され、ケーク層の成長を抑制できるため好ましい。
【0056】
このような回収装置11では、第1の分離膜141により、スラリーの希薄溶液をある程度まで濃縮できるため、大量のCMP排水を効率的に濃縮することができる。特に製造規模の大きい半導体工場では、1日辺り排水量が1000トン以上になることがあるが、第1の分離膜141を設けることで、このような大量の排水を、約1/10〜1/500の量に低減することができる。したがって、第1の分離膜141を設置しない第1の実施形態と比較して、全体として設置するモジュール本数を低減することができる。
【0057】
以上、本発明の研磨剤の回収装置11についてその一例を挙げて説明したが、本発明の趣旨に反しない限度において、その構成を適宜変更することができる。
【0058】
次に、図3に基づいて、本発明の研磨剤の回収装置11を用いた研磨剤の回収方法について説明する。
なお、本実施形態では、第1の分離膜141、第2の分離膜181として、いずれも中空糸型の限外濾過膜を備えた研磨剤の回収装置11を用いた場合について説明するが、第1の分離141は、円筒状の孔道を有するものであれば必ずしも中空糸型の分離膜でなくてもよく、管状型や平膜型ものもであってもよい。
【0059】
処理対象である使用済み研磨スラリーSは、CMP工程(化学的機械的研磨工程)で使用された後の研磨剤を含有するものであれば、特に限定されない。このような研磨剤粒子としては、例えばケイ素粒子、セリウム粒子等を挙げることができる。
研磨剤粒子としては、通常、平均粒子径が0.01〜1μmのものが好適に用いられる。研磨剤の平均粒子径は、CMP工程によって適宜選定されるが、例えば0.04〜0.4μmである。
【0060】
初めに、CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーSは、配管15を経由してガードフィルター12に供給される。使用済み研磨スラリーSは、ガードフィルター12を通過する過程で粒径数十μm以上の粗大粒子が除去された後、前段処理タンク13に貯留される。
使用済み研磨スラリーSの、未処理段階での研磨剤粒子の濃度は、客先工場に依存する為特に限定されないが、CMP工程での使用済み研磨スラリーSの研磨剤濃度は、通常、0.02〜5質量%である。
【0061】
前段処理タンク13に貯留された使用済み研磨スラリーSは、開閉弁B3を閉とし、開閉弁B4を開とした状態で、ポンプP2により配管16を経由して、第1の分離膜141を備えた第1の膜分離手段14に加圧供給される。
使用済み研磨スラリーSは、ガードフィルター12を通過する過程で粒径数十μm以上の粗大粒子が除去された後、第1の分離膜141の各中空糸内部にクロスフロー方式で通水され、その有効濾過部を通過する過程で過剰の水分が透過され、濃縮される(第1の濾過工程)。この際、使用済み研磨スラリーSの分散媒体等は、分離膜141を通って透過水出口配管22に流出し、使用済み研磨スラリーS内の研磨剤粒子は、第1の分離膜141の濃縮水である第1の濃縮水側に残留する。
【0062】
第1の濃縮水は、還流配管23を通って前段処理タンク13へ還流される。この工程を所定時間継続した後、成分濃度計C2で計測される前段処理タンク13内の貯留水の研磨剤の濃度が最大13質量%、より好ましくは9〜10質量%となった段階で、開閉弁B3が開、開閉弁B4が閉とされ、その一部が配管20を経由して後段処理タンク17に供給される。
【0063】
第1の分離膜141の有効濾過部を通過する、被処理水(使用済み研磨スラリーSおよび第1の濃縮水)の流速は0.5〜2m/secであることが好ましい。
第1の分離膜141の有効濾過部における、被処理水(使用済み研磨スラリーSおよび第1の濃縮水)の流速が0.5m/sec未満であると、分離膜141の濾過面に研磨剤粒子が付着し易くなり、透過水量が低下することがある。この場合、分離膜141の設置本数を増加させる必要があり、回収装置11の製造コストが高くなる。一方、第1の分離膜141の有効濾過部における被処理水の流速が2.0m/secを超えると、膜面に接触する液量が過剰となり、発熱が生じることがある。この場合、分離膜141、濃縮液が共に熱による損傷を受け、劣化するおそれがある。また、分離膜141の被処理水の流速を向上させるには、各配管やバルブ等のサイズを大きくする必要があり、回収装置11の製造コストが高くなる。
第1の分離膜141の有効濾過部を通過する被処理水の流速は、より好ましくは0.55 〜1.5m/secである。
【0064】
後段処理タンク17に貯留された第1の濃縮水は、開閉弁B5を閉とし、開閉弁B6を開とした状態で、ポンプP3により、配管21を経由して、第2の分離膜181を備えた第2の膜分離手段18に加圧供給される。
第2の分離膜181は、第1の分離膜141の有効濾過長L1より短く、かつ0.8m以下、好ましくは0.5m以下、より好ましくは0.3m以下の有効濾過長L2を有しており、各中空糸の中空部に、第1の濃縮水がクロスフフロー方式で通水される。第1の濃縮水は、中空糸の有効濾過部を通過する過程で過剰の水分が透過され、濃縮される(第2の濾過工程)。この際、第1の濃縮水の分散媒体等は、分離膜181を通って透過水出口配管24に流出し、第1の濃縮水に含まれる研磨剤粒子は、第2の分離膜181の濃縮水である第2の濃縮水側に残留する。
【0065】
第2の分離膜181の有効濾過部を通過する、被処理水(第1の濃縮水)の流速は0.5〜2m/secであることが好ましい。
第2の分離膜181の有効濾過部における被処理水の流速が0.5m/sec未満であると、分離膜181の濾過面に研磨剤粒子が付着し易くなり、膜の閉塞が生じ易くなる。一方、第2の分離膜181の有効濾過部における被処理水の流速が2m/secを超えると、研磨剤粒子に過剰量のエネルギーが加わり、この粒子が凝集して粗大粒子を形成することがある。回収後の研磨剤に粗大粒子が混入すると、CMP工程にリサイクル使用したときに、ウェーハ等の表面にスクラッチを生じさせ、製品の歩留まりを低下させることがある。また、このような粗大粒子が発生すると、分離膜の濾過面にケーク層が形成され、洗浄時間や薬品の使用量が増加するおそれがある。
第2の分離膜181の有効濾過部を通過する被処理水の流速は、より好ましくは0.6〜1m/secである。
【0066】
上記の処理工程を所定時間継続した後、成分濃度計C3で計測される後段処理タンク17内の貯留水の研磨剤の濃度が目標濃度となった段階で、開閉弁B5が開、開閉弁B6が閉とされ、その一部が配管25を経由して回収タンク19に供給される。
配管25を経由して回収タンク19に供給する際の後段処理タンク17内の貯留水の濃度は、好ましくは10質量%以上でかつ最大26質量%であり、さらに好ましくは20〜25質量%である。
【0067】
第2の分離膜181の濾過面における、被処理水の圧力損失は0.1MPa以下であることが好ましく、0.08MPa以下であることがより好ましい。
【0068】
本発明の研磨剤の回収方法では、第1の有効濾過長よりも短い有効濾過長を有する第2の分離膜181を用いているため、第2の分離膜の濾過面での圧力損失の増大や、膜の閉塞を抑制しつつ、製品として使用可能なレベルまで、研磨剤粒子が高濃度に濃縮された使用済み研磨スラリーSを効率的に回収することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、第1の濾過工程、第2の濾過工程とも、中空糸の中空部に被処理水を通水する、内圧型の方式で濾過処理する方法を示したが、本発明は必ずしもこのような形態に限定されず、例えば被処理水を中空糸の外側に通水する、外圧型の方式で濾過処理することとしてもよい。
【0070】
第1透過水出口配管22および第2透過水出口配管24より得られる透過水は、回収して再利用することが可能である。
たとえば未処理のまま、もしくは透過水の水質に応じた処理をした上で、超純水装置の原水等として利用することが可能である。また、工場内の他のユーティリティー、たとえば、生活用水、クーリングタワー用水等として利用することも可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明する。
【0072】
(実施例1)
図1に示した研磨剤の回収装置1を用いてCMP工程での使用済みスラリーの濾過処理を行った。
【0073】
図1におけるポンプP1としては、レビトロポンプ「LEV300」(株式会社イワキ製、商品名)を用い、膜分離手段4としては、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名)を用い、処理タンク3、濃縮水回収タンク9としては、濃縮タンク(PVC製)を用いた。
中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」は、分画分子量;6000、中空糸内径;0.5mm、膜面積;0.5m、有効濾過長;0.26mであった。
【0074】
まず、研磨剤濃度約1質量%(pH:9.8)の使用済み研磨スラリー溶液を、配管5からガードフィルター2を経由して、処理タンク3に供給した。次いで、開閉弁B1を閉とし、開閉弁B2を開として、処理タンク3内の使用済み研磨スラリーを、膜分離手段4に通水した。
使用済みスラリーの各配管内の循環流量は8.1L/minとし、中空糸膜41内の線速は、0.55m/secとした。また、中空糸膜41における、使用済み研磨スラリー流入口近傍の圧力が0.2MPaとなるように、ポンプP1(レビトロポンプ)のインペラ回転数、及び膜分離手段4後段の開閉弁B2の開閉度を調製した。
この状態で通水処理を行い、成分濃度計C1で計測される処理タンク3内の研磨剤濃度、及び透過水出口配管から排出される透過水量(flux)を測定した。
【0075】
(実施例2)
膜分離手4として、中空糸型UF膜モジュール「M81S60001N」(SPECTRUM社製、商品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして使用済み研磨スラリーの通水処理を行い、実施例1と同様にして、処理タンク3内の研磨剤濃度を測定した。
なお、中空糸型UF膜モジュール「M81S60001N」は、中空糸内径;0.5mm、有効濾過長;0.46mであった。
【0076】
(実施例3)
膜分離手4として、中空糸型UF膜モジュール「KM1S60001N」(SPECTRUM社製、商品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして使用済み研磨スラリーの通水処理を行い、実施例1と同様にして、処理タンク3内の研磨剤濃度を測定した。
なお、中空糸型UF膜モジュール「KM1S60001N」は、中空糸内径;0.5mm、有効濾過長;0.63mであった。
【0077】
(比較例1)
膜分離手4として、中空糸型UF膜モジュール「KM1S30001N」(SPECTRUM社製、商品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして使用済み研磨スラリーの通水処理を行い、実施例1と同様にして、処理タンク3内の研磨剤濃度を測定した。
なお、中空糸型UF膜モジュール「KM1S30001N」は、中空糸内径;0.5mm、有効濾過長;0.81mであった。
【0078】
(比較例2)
膜分離手4として、中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUST653」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、使用済み研磨スラリーの通水処理を行い、実施例1と同様にして、処理タンク3内の研磨剤濃度を測定した。
なお、中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUST653」は、中空糸内径;0.5mm、有効濾過長;1.0m、膜面積;1.5mであった。
【0079】
実施例1及び比較例2において、成分濃度計C1で計測される処理タンク3内の研磨剤濃度と透過水排出配管7から排出される透過水量(flux)との関係を、図4に示す。
なお、図4において、破線は実施例1における透過水出口配管7からの透過水量を示し、実線は比較例2における透過出口配管7からの透過水量を示す。
また、表1に、実施例1〜3、比較例1〜2の各中空糸分離膜41の中空糸内径、膜面積、有効濾過長、材質と共に、通水開始時点での被処理水研磨剤濃度、及び濃縮処理が不可となった時点での被処理水研磨剤濃度(濃縮可能最大濃度)を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、分離膜41の有効濾過長が0.8m以下である実施例1〜3の回収装置では、濾過処理終了時点において、20質量%以上の高濃度の研磨剤濃度を有する処理水を得られており、有効濾過長が短くなるにしたがって、濃縮可能最大濃度が増大することが認められた。一方、0.8mを超える有効濾過長を有する比較例1の回収装置では、濃縮可能最大濃度が20質量%未満となっており、高濃度領域で目詰まりが生じ易いことが認められた。
また、図4に示すように、膜分離手段4として、0.8mを超える有効濾過長を有する分離膜41を用いた比較例2の回収装置では、被処理水のSi濃度が13質量%を超えた時点で透過水量(flux)が急激に減少しており、これ以上の濾過処理を行うことが困難であった。一方、膜分離手段4として、0.8m以下の有効濾過長を有する分離膜41を用いた実施例1の回収装置では、被処理水の濃度が20質量%を超えても、透過水量の急激な減少は発生せず、被処理水が高濃度となっても濾過処理を安定して行うことができた。
以上の結果から、膜分離手段4として、有効濾過長が0.8m以下である分離膜41を用いた場合、CMP工程から排出された低濃度の使用済みスラリーを、高濃度領域まで安定して濃縮できることが認められた。
【0082】
シリカ粒子等の研磨剤粒子を含む排液は、排水基準を遵守する必要性から、従来より固液分離することが行われていたが、固液分離に限外濾過膜を用いても、固形分としての濃縮は、数%程度が限界であった。砥粒成分の濃度が数%程度では、研磨スラリーとしてCMP工程に再利用することは困難なため、固形分は一般に、産業廃棄物として廃棄処理されていた。
本発明では、実施例1〜3で示すように、CMP工程からの排水の研磨剤濃度を、製品として使用可能な25%程度の濃度まで濃縮処理できるため、回収された濃縮液を、再度CMP工程に使用することができ、高いリサイクル効率を得ることができる。
【0083】
次に、実施例1で用いた研磨剤の回収装置1を用い、膜分離手段4の被処理水入口での圧力は実施例1と同一とし、分離膜の圧力損失を変化させて、実施例4〜5、比較例3〜6を行った。
【0084】
(実施例4)
中空糸膜41内の線速を0.6m/secとし、それ以外の条件は実施例1と同様にして、使用済み研磨スラリーを回収装置1に通水し、濾過処理を行った。この処理を80分間行った後、開閉弁B1を開とし、開閉弁B2を閉として、膜分離手段4の濃縮水を濃縮水出口配管8から濃縮水回収タンク9に回収した。
【0085】
(実施例5)
膜分離手段4として、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」に代えて、中空糸型UF膜モジュール「SLP-1053」(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名。中空糸内径 1.4mm、分画分子量:10000 膜面積:0.12m 有効濾過長 0.20m 膜材質:ポリスルホン)を用い、処理タンク3に供給する使用済み研磨スラリーを、研磨剤濃度約0.8質量%(pH:10.5)、各配管内の使用済みスラリーの循環流量を9.0L/minとし、中空糸膜41における、使用済み研磨スラリー流入口近傍の圧力を0.2MPa、中空糸膜41内の線速を0.69m/secとしたこと以外は、実施例2と同様にして濾過処理を行い、膜分離手段4の濃縮水を回収した。
【0086】
(比較例3)
膜分離手段4として、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」に代えて、中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUS0181」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名。中空糸内径 0.8mm、分画分子量:10000 膜面積:0.5m 有効濾過長 1m 膜材質:PES)を用い、中空糸膜41内の線速を0.55m/secとしたこと以外は、実施例2と同様にして濾過処理を行い、膜分離手段4の濃縮水を回収した。
【0087】
(比較例4)
膜分離手段4として、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」に代えて、中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUS03C1」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名。中空糸内径 1.2mm、分画分子量:30000 膜面積:0.3m 有効濾過長1m 膜材質:PES)を用い、中空糸膜41内の線速を0.85m/secとしたこと以外は、実施例2と同様にして濾過処理を行い、膜分離手段4の濃縮水を回収した。
【0088】
(比較例5)
膜分離手段4として、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」に代えて、「AMK-VC-FUS03C1」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名。中空糸内径 1.2mm、分画分子量:30000 膜面積:0.3m 有効濾過長 1m 膜材質:PES)を用い、中空糸膜41内の線速を1.8m/secとしたこと以外は、実施例2と同様にして濾過処理を行い、膜分離手段4の濃縮水を回収した。
【0089】
(比較例6)
膜分離手段4として、中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」に代えて、「AMK-VC-FUST653」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名。中空糸内径 0.5mm、分画分子量:6000 膜面積:1.5m 有効濾過長 1m 膜材質:PES)を用い、中空糸膜41内の線速は実施例2と同一とし、その他の条件は実施例2と同様にして濾過処理を行い、膜分離手段4の濃縮水を回収した。
【0090】
実施例4〜5及び比較例3〜6について、濃縮水回収タンク9内に回収された濃縮水の研磨剤濃度、及び研磨剤の回収率を表2に示す。また、実施例4〜5及び比較例3〜6の中空糸膜41内の線速、中空糸内径、及び透過水の排出量から算出される濃縮液中の研磨剤濃度値を併せて表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2から明らかなように、有効濾過長が0.8m以下であり、分離膜の内径が0.1mm以上0.8mm以下である分離膜を用いた実施例4では、回収後の濃縮液の研磨剤濃度が25質量%を超えており、より高い回収率を得られることが認められた。
また、実施例4と比較して、有効濾過長を短くするとともに、中空糸内径を増大して圧力損失を低下させた実施例5では、比較的高濃度の領域まで所定量以上の透過水を得られたものの、25質量%以上に濃縮処理することはできず、回収後の濃縮液に含まれる研磨剤濃度は、透過水量から算出された研磨剤濃度(計算値)を下回っており、中空糸内径(ファイバー径)の増大に伴って、研磨剤の回収率が若干低下することが認められた。これは、中空糸内部に砥粒成分(研磨剤粒子)が付着してケーク層が形成され、有効内径が狭小化したものと考えられる。
【0093】
一方、0.8mより大きい有効濾過長を有しており、かつ中空糸内径が0.1〜0.8mmの範囲である比較例3、6では、研磨剤の回収率は76%付近となっており、回収後の濃縮液に含まれる研磨剤濃度は、透過水量から算出された研磨剤濃度(理論値)を下回っていた。また、中空糸の内径を1.2mmと増大させた比較例4、5では、研磨剤の回収率がさらに低くなっており、中空糸内部で砥粒成分(研磨剤粒子)が付着してケーク層が形成され、有効内径が狭小化したものと考えられる。
【0094】
(比較例7)
図1で示す回収装置1に、膜分離手段4として限外濾過膜「MLE−7101H」(株式会社クラレ製、商品名。有効濾過長;1m、中空糸内径;1.2mm、分画分子量;13000、膜材質;ポリスルホン)を設置し、濾過処理を行った。濾過処理は内圧型のクロスフロー方式で行った。
分離膜は、濃縮液に含まれる研磨剤濃度が14質量%となった段階から徐々に閉塞し、その後ポンプの出力を上げて被処理水に対する圧力を高めて濾過処理を継続したが、被処理水のSi濃度が19質量%となった段階で濃縮処理が不可能となった。
図6に、濾過処理が不能となった時点での、膜分離手段4入口の状態を示し、図7に、図6の一部を拡大して示し、図8に、同時点での膜分離手段4出口の状態を示す。
【0095】
図8で示すように、濃縮処理が困難となった時点での膜分離手段には、被処理水の通水方向の後段(膜分離手段4の出口)に、研磨剤が凝集したゲル状の粗大粒子が一帯に形成されており、これにより、分離膜41の中空部が閉塞して濃縮処理の継続が困難となった。
【0096】
(実施例6)
図3に示した研磨剤の回収装置11を用いてCMP工程での使用済みスラリーの濾過処理を行った。
【0097】
図3におけるポンプP2およびP3としては、レビトロポンプ「LEV300」(株式会社イワキ製、商品名)を用い、膜分離手段14としては、中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUST653」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名)を用い、また、第2の濃縮手段18としては中空糸型UF膜間ジュール「FB02-VC-FUST653」(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、商品名)を用いた。
また、処理タンク13及び後段処理タンク17としては処理タンク(PE製)、濃縮水回収タンク19としては、濃縮タンク(PVC製)を用いた。
第1の膜分離手段14である中空糸型UF膜モジュール「AMK-VC-FUST653」は、分画分子量;6000、中空糸内径;0.5mm、膜面積;1.5m、有効濾過長;1mであり、第2の膜分離手段18である中空糸型UF膜モジュール「FB02-VC-FUST653」は、分画分子量;6000、中空糸内径;0.5mm、膜面積;0.5m、有効濾過長;0.26mであった。
【0098】
まず、研磨剤濃度約1質量%(pH:9.8)の使用済み研磨スラリー溶液を、配管15からガードフィルター12を経由して、処理タンク13に200L供給した。次いで、開閉弁B3を閉とし、開閉弁B4を開として、処理タンク13内の使用済み研磨スラリーを、第1の膜分離手段14に通水した。
使用済みスラリーの各配管内の循環流量は8.0L/minとし、中空糸膜141内の線速は、0.7m/secとした。また、中空糸膜141における、使用済み研磨スラリー流入口近傍の圧力が0.2MPaとなるように、ポンプP2(レビトロポンプ)のインペラ回転数、及び膜分離手段14後段の開閉弁B4の開閉度を調製した。
この状態で通水処理を行い、成分濃度計C2で計測される処理タンク3内の研磨剤濃度が9質量%となるまで透過水出口配管22から排出される透過水量(flux)を測定した。この時の処理タンク13内の使用済み研磨スラリーは約22Lであった。
【0099】
次いで、開閉弁B4を閉とし、開閉弁B3を開として、処理タンク13内の使用済み研磨スラリーを、全量後段処理タンク17へ供給した。次いで、開閉弁B5を閉とし、開閉弁B6を開として、後段処理タンク17内の使用済み研磨スラリーを、第2の膜分離手段18に通水した。使用済みスラリーの各配管内の循環流量は8.0L/minとし、中空糸膜181内の線速は、0.7m/secとした。また、中空糸膜181における、使用済み研磨スラリー流入口近傍の圧力が0.2MPaとなるように、ポンプP3(レビトロポンプ)のインペラ回転数、及び膜分離手段18後段の開閉弁B6の開閉度を調製した。
この状態で通水処理を行い、成分濃度計C3で計測される処理タンク3内の研磨剤濃度が25質量%となるまで透過水出口配管から排出される透過水量(flux)を測定した。
【0100】
実施例6において、成分濃度計C2で計測される処理タンク13内の研磨剤濃度と第1透過水排出配管22から排出される透過水量(flux)との関係、及び成分濃度計C3で計測される処理タンク17内の研磨剤濃度と第2透過水排出配管24から排出される透過水量(flux)との関係を図5に示す。
なお、図5において、実線は第1透過水排出配管22から排出される第1の膜分離手段14の透過水を示し、破線は第2透過水排出配管24から排出される第2の膜分離手段18の透過水を示す。
【0101】
実施例1の計測データ(図4)、実施例6の計測データ(図5)に基づいて、実施例1の研磨剤の回収装置1(第1実施形態)、及び実施例6の研磨剤の回収装置11(第2実施形態)を設計し、製作した。
第2実施形態の研磨剤の回収装置11では、第1実施形態の研磨剤の回収装置1と比較して、中空糸型UF膜モジュールの使用本数を87%少なくして製作することができた。その結果、回収装置全体としての配管構成の簡素化、設置面積の縮小化及びコスト削減の効果を得られた。
【符号の説明】
【0102】
1、11…研磨剤の回収装置、2、12…ガードフィルター、3…処理タンク、4…膜分離手段、41…分離膜、410…中空糸、410S…有効内径、411…支持層、412…濾過面、5〜6…配管、7…透過水出口配管、8…濃縮水出口配管、9…濃縮水回収タンク、10…還流配管、13…前段処理タンク、14…第1の膜分離手段、141…第1の分離膜、15〜16、20〜21…配管、17…後段処理タンク、18…第2の膜分離手段、181…第2の分離膜、19…回収タンク、22…第1透過水出口配管、23…還流配管、24…第2透過水出口配管、25…濃縮水出口配管、26…還流配管、P1〜P3…ポンプ、C1〜C3…成分濃度計、B1〜B6…開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーから研磨剤を回収する装置であって、前記使用済み研磨スラリーが導入される孔道が円筒状で、かつ有効濾過部の長さが0.8m以下である分離膜を有しており、
前記使用済み研磨スラリーの研磨剤濃度を、10質量%以上の濃度に濃縮することを特徴とする研磨剤の回収装置。
【請求項2】
前記分離膜の中空部に、前記使用済み研磨スラリーがクロスフロー方式で通水される請求項1の研磨剤の回収装置。
【請求項3】
前記分離膜が、内圧型の膜分離手段に設けられる請求項1又は2記載の研磨剤の回収装置。
【請求項4】
前記分離膜が中空糸膜である請求項1乃至3のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置。
【請求項5】
前記分離膜の内径が0.1mm以上0.8mm以下である請求項1乃至4のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置。
【請求項6】
前記分離膜の分画分子量が3,000〜30,000である請求項1乃至5のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置。
【請求項7】
前記分離膜が、ポリエチレン、4フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンのいずいれかで構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置。
【請求項8】
前記分離膜を第2の分離膜として有するとともに、前記第2の分離膜の前段に、この分離膜より長い有効濾過長を有しており、孔道が円筒状である第1の分離膜を有する請求項1乃至7のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置。
【請求項9】
前記第1の分離膜の有効濾過部の長さL1が0.8〜1.5mであり、前記第2の分離膜の有効濾過部の長さL2が0.2〜0.8m以下である請求項8記載の研磨剤の回収装置。
【請求項10】
CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーを、孔道が円筒状であり、有効濾過部の長さが0.8m以下である分離膜に通水し、前記使用済み研磨スラリーの研磨剤濃度を、10質量%以上の濃度に濃縮することを特徴とする研磨剤の回収方法。
【請求項11】
前記分離膜の中空部に、前記使用済み研磨スラリーをクロスフロー方式で通水する、請求項10記載の研磨剤の回収方法。
【請求項12】
前記分離膜の内径が0.1mm以上0.8mm以下である請求項10又は11記載の研磨剤の回収方法。
【請求項13】
前記分離膜の有効濾過部における被処理水の循環流速が0.5〜2m/secである、請求項10乃至12のいずれか1項記載の研磨剤の回収方法。
【請求項14】
孔道が円筒状である第1の分離膜に、CMP工程で使用された使用済み研磨スラリーを通水して前記使用済み研磨スラリーを濃縮する第1の濾過工程と、有効濾過部の長さが0.8m以下である第2の分離膜に、前記第1の分離膜の濃縮水を通水して濃縮する第2の濾過工程と、を有しており、
前記第1の分離膜として、前記第2の分離膜よりも長い有効濾過長を有する分離膜を用いる請求項10乃至13のいずれか1項記載の研磨剤の回収方法。
【請求項15】
前記第1の濾過工程では、使用済み研磨スラリーを濾過して 最大13質量%まで濃縮し、前記第2の濾過工程では、前記第1の濾過工程で得られた濃縮水を濾過して最大26質量%まで濃縮する、請求項10乃至14のいずれか1項記載の研磨剤の回収方法。
【請求項16】
請求項1乃至9のいずれか1項記載の研磨剤の回収装置を用いることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の研磨剤の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178418(P2012−178418A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39948(P2011−39948)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】