説明

研磨剤及び基板の研磨方法

【課題】無機絶縁膜層等の被研磨面を、研磨傷の発生を抑え、かつ高速で研磨することが可能な研磨剤及び研磨方法を提供すること。
【解決手段】金属酸化物粒子及び媒体を含有する研磨剤であって、前記金属酸化物粒子が、金属塩、高分子化合物、及び高沸点有機溶媒を含有する混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を焼成して得られる金属酸化物粒子を含む、研磨剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のULSI半導体素子製造工程では、高密度・微細化のための加工技術が研究開発されている。その一つであるCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術は、半導体素子の製造工程において、基板表面の平坦化、特に、層間絶縁膜の平坦化、シャロー・トレンチ素子分離形成、プラグ及び埋め込み金属配線形成等を行う際に必須の技術となってきている。
【0003】
従来、半導体素子の製造工程において、プラズマ−CVD、低圧−CVD等の方法で形成される酸化珪素膜等の無機絶縁膜層を平坦化するための化学機械研磨材としてフュームドシリカ系の研磨材(砥粒)が一般的に検討されている。フュームドシリカ系の研磨材は、四塩化珪酸を熱分解する等の方法で粒子を成長させ、pH調整を行って製造している。しかしながら、この様な研磨材は、研磨速度が小さいという技術課題がある。
【0004】
また、デザインルール0.25μm以降の世代では、集積回路内の素子分離にシャロー・トレンチ分離が用いられている。シャロー・トレンチ分離では、基板上に成膜した余分の酸化珪素膜を除くためにCMPが使用され、研磨を停止させるために、酸化珪素膜の下に研磨速度の遅いストッパ膜が形成される。ストッパ膜には窒化珪素などが使用され、酸化珪素膜とストッパ膜との研磨速度比が大きいことが望ましいとされている。この工程に従来用いられているコロイダルシリカ系の研磨材は、上記の酸化珪素膜とストッパ膜の研磨速度比が3程度と小さく、シャロー・トレンチ分離用としては実用に耐える特性を有していなかった。
【0005】
一方、フォトマスクやレンズ等のガラス表面研磨材として、酸化セリウム研磨材が用いられている。酸化セリウム粒子はシリカ粒子やアルミナ粒子に比べ硬度が低く、したがって、研磨表面に傷が入りにくいことから、仕上げ鏡面研磨に有用である。また、シリカ研磨材に比べ、研磨速度が高く、研磨速度比が大きい利点がある。近年、高純度酸化セリウム粒子を用いた半導体用CMP研磨材が使用されている。例えば、その技術は特許文献1に開示されている。
【0006】
酸化セリウム粒子は、原料となる炭酸セリウム、シュウ酸セリウム、水酸化セリウム等を焼成し、微粉砕することで製造されることが知られている。例えば、この技術は非特許文献1に開示されている。
【0007】
また、近年、液相中でのポリオール法により微小な金属酸化物粒子を製造する方法も研究されている。この技術は金属塩とポリオールとを含む混合物を加熱・還流することで、加水分解・脱水反応を経て金属酸化物を得るものであり、例えば特許文献2、3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−106994号公報
【特許文献2】特開2008−115370号公報
【特許文献3】特開2008−111114号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】足立吟也(編) 「希土類の化学」 化学同人 1999発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
酸化セリウム研磨材を、無機絶縁膜層の研磨に適用すると、酸化セリウムの化学的作用と粒子による機械的除去作用で加工が進行するとされる。研磨材中に粗大粒子が存在すると、局所的に機械的除去作用が集中し研磨傷が入る。一方、微細粒子化しすぎると所望の研磨速度が得られない。そこで、所望の研磨速度が得られ、研磨傷の発生を最小化することができる酸化セリウム二次粒子径を選択する試みがなされているが、焼成・粉砕工程を経て製造された酸化セリウム粒子を用いる限り、粗大粒子の完全な除去は困難である。
【0011】
一方、ポリオール法などの液相法による酸化セリウム粒子合成では、微細粒子を製造できるとされている。しかし、液相法による酸化セリウム粒子は一次粒子径が小さく所望の研磨速度が得られないという課題がある。今後、半導体素子の多層化・高精細化が進むにつれ、半導体素子の歩留り及び生産効率向上には研磨傷の発生を抑え、かつ高速で研磨することが可能な研磨材を用いたCMP研磨剤が求められる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、無機絶縁膜層等の被研磨面を、研磨傷の発生を抑え、かつ高速で研磨することが可能な研磨剤及び研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、金属酸化物粒子及び媒体を含有する研磨剤であって、前記金属酸化物粒子が、金属塩、高分子化合物、及び高沸点有機溶媒を含有する混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を焼成して得られる金属酸化物粒子を含む、研磨剤に関する。
本発明の研磨剤の実施形態として、例えば、混合物を加熱することにより生成する金属酸化物の粒子の粒径の変動係数は、0.25以下であることが好ましい。高沸点有機溶媒としては、エチレングリコール又はジエチレングリコールを使用することが可能であり、金属塩としては、硝酸塩又は酢酸塩、より具体的には、硝酸セリウム又は酢酸セリウムを使用することが可能であり、高分子化合物としては、重量平均分子量が2,000〜1,000,000の高分子化合物、例えば、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースを使用することが可能である。金属塩は、0.05mol/L以上の濃度で用いることが好ましく、高分子化合物は、30〜150g/Lの濃度で用いることが好ましい。混合物を加熱することにより、媒体に分散させた際の平均粒径が好ましくは10〜300nmである金属酸化物の粒子を得ることができる。
また、本発明の研磨剤の実施形態として、例えば、焼成温度は200〜1,200℃であることが好ましい。焼成雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンとすることが可能であり、また、混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を、ビヒクル中に分散させ、焼成することが可能である。焼成により、一次粒子の平均粒径が好ましくは5〜200nmである金属酸化物粒子を得ることができ、媒体に分散させた際の平均粒径が好ましくは10〜300nmである金属酸化物粒子を得ることができる。
研磨剤のpHは3〜9であることが好ましく、また、媒体として水を用いることができる。
【0014】
さらに、本発明は、上記の研磨剤で所定の基板を研磨することを特徴とする基板の研磨方法に関する。基板の研磨方法の実施形態として、上記の研磨剤を研磨定盤上の研磨パッドに供給することにより、無機絶縁膜層が形成された半導体基板の被研磨面と研磨パッドとを相対運動させて研磨する基板の研磨方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無機絶縁膜層等の被研磨面を、傷の発生を抑えつつ、高速に研磨することが可能な研磨剤及び研磨方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1において得られた焼成前の酸化セリウム粒子のSEM写真である。
【図2】図2は、実施例6において得られた焼成後の酸化セリウム粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の研磨剤は、金属酸化物粒子及び媒体を含有する研磨剤であって、金属酸化物粒子が、金属塩、高分子化合物、及び高沸点有機溶媒を含有する混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を焼成して得られる金属酸化物粒子を含む、研磨剤である。
【0018】
まず、金属酸化物(焼成前の金属酸化物)を得る方法について説明する。金属酸化物は、金属塩、高分子化合物、及び高沸点有機溶媒を含有する混合物を加熱する加熱工程により得られる。
【0019】
一般に金属塩は、一定の条件下で100℃以上の高温に加熱されることで、水酸化物を経て酸化物を形成することが知られている。本発明において、混合物を加熱することにより、金属酸化物の一次粒子が、高分子化合物の存在下、高沸点有機溶媒中で析出し、その後、凝集して球状の二次粒子を形成する。混合物中では、高分子化合物は高沸点有機溶媒に溶解していることが好ましい。その際、二次粒子の表面で金属酸化物が触媒として働き、高分子化合物が架橋反応を起して強固な高分子層を形成することで、二次粒子が表面に高分子層を有するものとなる。
【0020】
金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩等の無機酸塩、酢酸塩等の有機酸塩を使用することができ、好ましくは硝酸塩、酢酸塩を使用することができる。また、反応を促進しやすくするため金属塩が部分的に中和されたものであっても良い。あるいは、混合物にアルカリ液を混合しても良い。部分中和塩のアルカリ種またはアルカリ液としては、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が使用できる。好ましくはアンモニア水溶液が良い。
【0021】
金属としては、セリウムまたはジルコニウムが好適に使用できる。特にセリウムが好ましい。したがって、金属塩としては、例えば、硝酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム等が使用でき、なかでも硝酸セリウム、酢酸セリウムが好ましく用いられる。金属酸化物の生成反応を良好に進行させるという点から、金属塩の濃度(単位高沸点有機溶媒あたりに添加した金属塩のモル数)は0.05mol/L以上であることが好ましい。また、微粒子を安定に形成させるという観点から、金属塩の濃度は2.0mol/L以下であることが好ましい。
【0022】
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子が好適に使用される。好ましくは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースであり、特に好ましくはポリビニルピロリドンである。
【0023】
高分子化合物の濃度(単位高沸点有機溶媒あたりに添加した高分子化合物重量)は、金属酸化物一次粒子が凝集して二次粒子を形成する際に、二次粒子表面に十分な高分子層が形成されることにより過剰な凝集が防止されるという点から、30g/L以上が好ましく、40g/L以上がより好ましく、50g/L以上がさらに好ましい。また、高分子化合物の濃度は、金属酸化物の核形成が阻害されることなく、一次粒子が良好に形成されるという点から、150g/L以下が好ましく、140g/L以下がより好ましく、130g/L以下がさらに好ましい。
【0024】
高分子化合物の重量平均分子量は、凝集した二次粒子表面で架橋反応が起きた際に、強固な高分子層が形成され粗大凝集粒子の生成が抑えられるという点から、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、4,000以上がさらに好ましい。また、高分子化合物の重量平均分子量は、金属酸化物の一次粒子の表面に強固な高分子層が形成され凝集による二次粒子が形成されにくくなることを防ぐという点から、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましい。上記重量平均分子量の範囲は、高分子化合物の分子量を大きくすることによって、金属酸化物の二次粒子の粒子径を小さく調整することができるという点から、好ましい範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量である。
【0025】
高沸点有機溶媒とは、沸点が高い有機溶媒であり、例えば、沸点が、110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上の溶媒をいう。沸点の上限に特に制限はない。高沸点有機溶媒として、混合物を加熱する際の加熱温度よりも高い沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。具体的には、多価アルコールすなわちポリオール類を好適に使用できる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等を使用できる。
【0026】
混合物を加熱、好ましくは加熱還流する際、温度は、金属塩からの金属酸化物の形成が良好に進行するという点から、110℃以上が好ましい。また、温度は、高沸点有機溶媒の使用量を抑え、反応後に混合物からの高沸点有機溶媒の除去を容易にするという点で、200℃以下が好ましい。反応時間は、例えば、10分〜120分とすることができる。こうして液相法で得られた金属酸化物の二次粒子は、形状が球状となる。
【0027】
媒体に分散させた金属酸化物(焼成前の金属酸化物)の粒子の平均粒径は、焼成後に実用的な研磨速度を得るという点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましい。また、媒体に分散させた金属酸化物の粒子の平均粒径は、研磨傷を減少させる効果が十分に得られるという点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。なお、本発明においては、金属酸化物の粒子の粒度分布を、レーザー回折法(例えば(株)堀場製作所製LA−950)を用いた湿式測定により求めることができ、金属酸化物の粒子の平均粒径とは、体積基準の粒度分布における粒径の平均値をいう。金属酸化物の二次粒子は表面に高分子層を有しているため、媒体中での分散安定性が良好であり、その結果、金属酸化物の粒子は狭い粒度分布を有する。
【0028】
一般に粒径の小さな粒子は凝集する傾向にあるが、本発明においては、金属酸化物の二次粒子は、高分子層の効果により分散安定性が良好であり、結果として単分散粒子となっている。単分散粒子の粒径の変動係数は、理想的には0.0であり、変動係数が小さいほど分散性が優れていると言える。金属酸化物の粒子の粒径の変動係数は、研磨剤中の粒子に粗大凝集粒子が混入する頻度が低下し、研磨傷が発生し難くなるという点から、0.25以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。変動係数は、前述の粒度分布における標準偏差を平均粒径で除した値として求めることができる。
【0029】
次に、金属酸化物粒子(焼成後の金属酸化物の粒子)を得る方法について説明する。金属酸化物粒子は、上記により得られた金属酸化物を焼成する焼成工程により得られる。
【0030】
上述のような液相法で得られた金属酸化物の一次粒子は、通常、粒径が5nm未満となり、機械的な研磨能力が低いという傾向がある。さらに、二次粒子の表面に形成された高分子層が厚すぎると被研磨面と研磨粒子(金属酸化物)との接触を阻害してしまうため、研磨能力がさらに低下してしまう。そこで本発明は、液相法で得られた金属酸化物を焼成処理することで、一次粒子を所望の大きさに成長させ、また、二次粒子層の表面に形成された過剰な高分子層の除去を行うことで、研磨能力を向上させるものである。焼成に先立ち、遠心分離等の操作によって、金属酸化物と、高沸点有機溶媒、高分子化合物、及び未反応の金属塩とを分離することが可能である。また、分離後、金属酸化物を乾燥させてもよい。
【0031】
焼成工程における温度は、一次粒子を成長させ、十分な研磨能力を得るという点から、200℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、400℃以上がさらに好ましい。また、温度は、粒子間の過剰な焼結を防止し、粗大粒子による研磨傷の発生を抑制するという点から、1,200℃以下が好ましく、1,100℃以下がより好ましく、1,000℃以下がさらに好ましい。
【0032】
焼成時間は、過剰な焼結を防止するという点から、10時間以下が好ましく、8時間以下がより好ましく、5時間以下がさらに好ましい。また、焼成時間は、結晶を成長させるという点から、0.2時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。焼成は、雰囲気を制御することなく空気中で行うことも、また、不活性雰囲気下で行うことも可能である。焼成により、金属酸化物の一次粒子を成長させた球状の二次粒子を得ることができる。
【0033】
研磨傷を抑制するには、金属酸化物を焼成する際、焼成前の金属酸化物の二次粒子の単分散性、つまり、狭い粒度分布を維持することが望ましい。粒子間の焼結を抑制する方法として特に制限はないが、例えば、高温で焼成するほど焼結の頻度が上昇することを考慮して焼結温度を設定する。
【0034】
また、焼結を抑制するには、不活性雰囲気下、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の存在下で焼成することが好ましい。不活性雰囲気下で焼成することで、焼成前の金属酸化物の二次粒子表面の高分子層を炭化させ、粒子間の焼結を抑制することが可能である。
【0035】
さらに、粒子間の焼結を抑制する方法として、金属酸化物をビヒクル中に分散させてから焼成してもよい。ビヒクル中では金属酸化物の二次粒子が離れて存在するため、焼成時の焼結を抑制できる。ビヒクルには、有機溶剤と樹脂との混合物を用いることができ、有機溶剤としては、テルピネオール、ターピネオール、ブチルカルビトール等を、樹脂としては、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。具体例としてテルピネオールに10重量%のエチルセルロースを溶解したものが挙げられる。ビヒクル中の金属酸化物の濃度は、ビヒクルの重量に対し、粒子間の焼結を防止するという点から、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。また、ビヒクル中の金属酸化物の濃度に特に制限はないが、経済性の観点から、例えば5重量%以上とすることができる。
【0036】
焼成後、高分子層を不活性雰囲気下で焼成した場合に形成される炭化層を除去してもよい。炭化層を除去することにより、被研磨面と研磨粒子(金属酸化物粒子)とが接触することになり、研磨能力が向上すると考えられる。炭化層を除去するには、例えば、金属酸化物粒子を酸素が存在する状態、具体的には空気中で、再度焼成すればよい。焼成温度は、焼結による粒子の過剰な増大を防ぐ温度に設定する。焼成温度は、粒子間の焼結を回避するという点から、700℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、500℃以下がさら好ましい。また、焼結温度は、炭化層の除去効果を得るという点から、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。
【0037】
このようにして金属酸化物の焼成処理を行うことで、粗大粒子の発生を抑えつつ、一次粒子を成長させることが可能であり、その結果、機械的研磨能力を向上させ、研磨傷の低減を達成することができる。
【0038】
金属酸化物粒子(焼成後の金属酸化物の粒子)の一次粒子径の平均粒径は、所望の研磨速度が得られるという点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。また、一次粒子径の平均粒径は、研磨傷の発生を抑制するという点から、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。金属酸化物粒子の一次粒子径の平均粒径は、XRD精密測定(例えば株式会社リガク製RINT)により測定を行った後、リートベルト解析によって決定した値である。
【0039】
また、媒体に分散させた金属酸化物粒子(焼成後の金属酸化物の粒子)の平均粒径は、所望の研磨速度を得るという観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましい。また、金属酸化物粒子の平均粒径は、研磨傷の発生を抑制するという点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、光子相関法(例えばMalvern製Zetasizer HS3000)を用いた測定により求めることができる。
【0040】
媒体に分散させた金属酸化物粒子(焼成後の金属酸化物の粒子)のD95は、研磨傷の発生を抑制するという点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。また、金属酸化物粒子のD95は、所望の研磨速度を得るという観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましい。D95とは、金属酸化物粒子の粒度分布を、レーザー回折法(例えば(株)堀場製作所製LA−950)を用いた湿式測定により求め、得られた体積基準の粒度分布において、金属酸化物粒子の積算値が95%のときの粒径をいう。
【0041】
本発明において、研磨剤は、金属酸化物粒子(研磨材)と媒体とを含み、金属酸化物粒子は媒体中に分散している。金属酸化物粒子を分散剤を用いて媒体に分散させ、スラリーを調製し、このスラリーをそのまま研磨剤に用いることも、また、スラリーを媒体で希釈したり、添加剤を加えたりした後に研磨剤として用いることもできる。なお、金属酸化物粒子、分散剤及び媒体を含むスラリーを希釈したり、添加剤を加えたりしても、その濃度が後述する濃度の範囲内であれば、媒体に分散された金属酸化物粒子の粒度分布が変動することはなく、金属酸化物粒子は、希釈/添加の前後で同じ平均粒径、D95を示す。
【0042】
焼成した金属酸化物粒子を分散させる媒体としては、水の他、以下の群から選ばれた有機溶剤が好適である。メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−プロピン−1−オール、アリルアルコール、エチレンシアノヒドリン、1−ブタノール、2−ブタノール、(S)−(+)−2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール、パーフルオロ−t−ブチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルコール;ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2,2−(ジメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン等が挙げられ、その中でも、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましく、高研磨速度が得られる点で水が特に好ましい。焼成して得られた金属酸化物粒子を水中に分散させる方法としては、通常の撹拌機による分散処理の他に、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミルなどを用いることができる。
【0043】
金属酸化物粒子の濃度は、所望とする研磨速度が得られるという点から、研磨剤100重量部中の配合量が0.1重量部以上が好ましく、0.2重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。また、金属酸化物粒子の濃度は、金属酸化物粒子の凝集を防ぐという点から、5重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。
【0044】
分散剤として、例えば、水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤等が挙げられ、(共)重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤が好ましい。例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸アミドとアクリル酸アンモニウムの共重合体等が挙げられる。
【0045】
また、(共)重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤の少なくとも1種類と、水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤から選ばれた少なくとも1種類とを含む2種類以上の分散剤を併用してもよい。半導体素子の製造に係る研磨に使用することから、分散剤中のナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属及びハロゲン、イオウの含有率は10ppm以下に抑えることが好ましい。水溶性陰イオン性分散剤としては、例えば、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、特殊ポリカルボン酸型高分子分散剤等が挙げられる。水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。水溶性陽イオン性分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられ、水溶性両性分散剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0046】
分散剤の添加量は、研磨剤中の金属酸化物粒子の分散性及び沈降防止、さらに研磨傷と分散剤添加量との関係等の点から、金属酸化物粒子100重量部に対して0.01重量部以上が好ましく、また、金属酸化物粒子100重量部に対して10重量部以下が好ましい。
【0047】
分散剤の重量平均分子量は、十分な分散安定性を得るという点から、100以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。また、分散剤の分子量は、粘度が高くなることによる研磨剤の保存安定性の低下を防止するという点から、50,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0048】
また、研磨剤には、添加剤としてビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、マレイン酸、イタコン酸、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、アクリルアミドおよびメタアクリルアミドからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマを(共)重合することで得られる水溶性高分子を用いることができる。より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸を重合してなるアニオン性の水溶性高分子が使用される。また、研磨剤には、他のアニオン性水溶性高分子を使用してもよい。例えば、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリンゴ酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリビニル硫酸、ポリグリオキシル酸が挙げられる。
【0049】
添加剤として用いる水溶性高分子の添加量は、高平坦化特性を得るという点から、金属酸化物粒子100重量部に対して0.001重量部以上が好ましく、0.01重量部以上がより好ましい。また、水溶性高分子の添加量は、研磨剤の高粘度化による流動性の低下を防止するという点から、10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0050】
上述の分散剤と添加剤とには、異なる物質を使用しても、同一の物質を使用してもよい。同一の物質を使用する場合には、合計した添加量が、金属酸化物粒子100重量部に対して0.01重量部以上、また、金属酸化物粒子100重量部に対して10重量部以下となることが好ましい。
【0051】
添加剤として用いる水溶性高分子の重量平均分子量は、高平坦化特性が得られるという点から、100以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。また、水溶性高分子の重量平均分子量は、粘度が高くなることによる研磨剤の安定性の低下を防止するという点から、5,000,000以下が好ましく、1,000,000以下がより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0052】
これらの添加剤は、研磨剤を所定のpHに調整するため、予めアルカリ液によってpH調整するか、完全または部分中和塩を使用することができる。アルカリ液または中和塩のアルカリ種としてアンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液が使用できる。好ましくはアンモニア水溶液が良い。
【0053】
研磨剤のpHは、化学的作用力を発揮し、所望の研磨速度を得るという点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。また、同様の点から、9以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。研磨剤のpHは、上記のアルカリ液、好ましくはアンモニア水溶液によって調整することができる。
【0054】
研磨剤には、さらに、研磨剤のpH安定化剤として、カルボン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アミン塩を用いることができる。pH安定化剤を2種以上併用し、pH安定化剤の少なくとも一方の構成成分のpKa値が、研磨剤のpHの1.0単位以内、すなわち、pKaが、(研磨剤のpH−1)〜(研磨剤のpH+1)にあるものが好ましく使用される。例えば、研磨剤のpHを5から6に調整する場合、リン酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸等及びその塩、及びエチレンジアミン、ピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、キサントシン、トルイジン、ピコリン酸、ヒスチジン、ピペラジン、1−メチルピペラジン、2−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、尿酸等及びその塩が好適に使用される。
【0055】
本発明の研磨剤を、所定の基板を研磨する方法に用いることができる。具体的には、研磨剤を研磨定盤上の研磨パッドに供給することにより、無機絶縁膜が形成された半導体ウエハである基板の被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨することを特徴とする方法に用いることができる。
【0056】
所定の基板として、回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板(例えば、Si基板)上に酸化珪素膜層或いは酸化珪素膜層及び窒化珪素膜層等の無機絶縁膜層が形成された基板が使用できる。一例においては、このような半導体基板上に形成された酸化珪素膜層を本発明の研磨剤で研磨することによって、酸化珪素膜層表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に渡って平滑な面とする。シャロー・トレンチ分離の場合には、酸化珪素膜層の凹凸を解消しながら下層の窒化珪素膜層まで研磨することによって、素子分離部に埋め込んだ酸化珪素膜層のみを残す。この際、ストッパとなる窒化珪素との研磨速度比が大きければ、研磨のプロセスマージンが大きくなる。ここで、添加剤として上記水溶性高分子を添加すると、中性pH域において添加剤が窒化珪素膜層に選択的に吸着し、より効果的にストッパ膜として機能し、プロセス管理が容易となる。
【0057】
また、シャロー・トレンチ分離に使用するためには、研磨時に傷発生が少ないことが望ましい。ここで本発明の金属酸化物粒子を研磨材(砥粒)として使用した研磨剤は、粗大粒子の濃度が小さく保たれているため研磨傷の発生を抑制しつつ、また、目的の二次粒子径を持つ粒子を多く含むため研磨速度を高速にすることが可能となる。
【0058】
無機絶縁膜層の作製方法として、定圧CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。一例においては、定圧CVD法による酸化珪素膜層形成は、Si源としてモノシラン:SiH、酸素源として酸素:Oを用いる。このSiH−O系酸化反応を400℃程度以下の低温で行わせることにより得られる。高温リフローによる表面平坦化を図るためにリン:Pをドープするときには、SiH−O−PH系反応ガスを用いることが好ましい。プラズマCVD法は、通常の熱平衡下では高温を必要とする化学反応が低温でできる利点を有する。プラズマ発生法には、容量結合型と誘導結合型の2つが挙げられる。反応ガスとしては、Si源としてSiH、酸素源としてNOを用いたSiH−NO系ガスとテトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−O系ガス(TEOS−プラズマCVD法)が挙げられる。基板温度は250℃〜400℃、反応圧力は67〜400Paの範囲が好ましい。このように、酸化珪素膜層にはリン、ホウ素等の元素がドープされていても良い。同様に、低圧CVD法による窒化珪素膜層形成は、Si源としてジクロルシラン:SiHCl、窒素源としてアンモニア:NHを用いる。このSiHCl−NH系酸化反応を900℃の高温で行わせることにより得られる。プラズマCVD法は、Si源としてSiH、窒素源としてNHを用いたSiH−NH系ガスが挙げられる。基板温度は300〜400℃が好ましい。
【0059】
研磨する装置としては、半導体基板を保持するホルダーと研磨布(パッド)を貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。また、研磨布には研磨剤が溜まる様な溝加工を施すことが好ましい。研磨条件には制限はないが、定盤及び/又は半導体基板の回転速度は半導体が飛び出さない様に100rpm以下の低回転が好ましい。被研磨膜を有する半導体基板の研磨布への押しつけ圧力が10〜100kPa(100〜1000gf/cm)であることが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、20〜50kPa(200〜500gf/cm)であることがより好ましい。研磨している間、好ましくは研磨布には研磨剤をポンプ等で連続的に供給する。この供給量には制限はないが、研磨布の表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。
【0060】
なお、本発明の研磨剤が被研磨膜表面を傷なく研磨可能であるという特長を活用し、仕上げ研磨用として用いることも可能である。すなわち一段目の研磨を、通常のシリカ研磨剤、酸化セリウム研磨剤等を用いて行った後、本発明の研磨剤を用いて仕上げ研磨を行うことで、例えばシャロー・トレンチ分離を行う際、研磨傷の発生を抑制しつつ高速に研磨可能である。
【0061】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このようにして、半導体基板上にシャロー・トレンチ分離を形成したあと、酸化珪素膜層及びその上にアルミニウム配線を形成し、さらにその上に形成した酸化珪素膜層を平坦化する。平坦化された酸化珪素膜層の上に、第2層目のアルミニウム配線を形成し、その配線間および配線上に再度上記方法により酸化珪素膜層を形成後、上記研磨剤を用いて研磨することによって、絶縁膜層表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の層数の半導体を製造する。
【0062】
本発明の研磨剤は、半導体基板に形成された酸化珪素膜や窒化珪素膜だけでなく、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素膜等の無機絶縁膜、フォトマスク・レンズ・プリズムなどの光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバ−の端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザ用もしくはLED用サファイア基板、SiC、GaP、GaAS等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を研磨するために使用される。
【0063】
粒子による研磨傷を少なくするには、研磨剤に含まれる粗大粒子を削減することが望ましい。一方、所望の研磨速度を得るためには、適切な一次粒子径、二次粒子径を持つ粒子を使用することが望ましい。本発明の実施形態は、一次粒子径が小さな金属酸化物を調製し、その後、焼成処理をすることで、粗大粒子の発生を抑えつつ、適切な一次粒子径、二次粒子径を持つ金属酸化物粒子を得て、これを研磨剤に用いることで、被研磨面を研磨傷の発生を抑え、高速に研磨することを可能とするものである。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明の実施態様をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
(酸化セリウム粒子の作製)
(酸化セリウム粒子の合成)
エチレングリコール30mLに対し、硝酸セリウム六水和物(高純度化学製)7.8g(0.6mol/L)、GPCでのPEG換算で重量平均分子量4,400のポリビニルピロリドン(PVP)3.6g(120g/L)を加え、混合物を165℃で90分間加熱還流を行い、酸化セリウム粒子の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を18,000rpmにて30分遠心分離を行い、エチレングリコール、PVP、未反応硝酸セリウムと、酸化セリウム粒子とを分離した。酸化セリウム粒子の一部を150℃、1時間乾燥し、株式会社リガク製X線回折装置RINTを用い、XRD精密測定を行った。測定条件として、2θが20から90°、ステップ幅0.05°、時定数5秒、電流20mA、電圧40kVとした。得られたデータをリートベルト解析した結果、酸化セリウム粒子の一次粒径(結晶子サイズ)の平均粒径は3nmであった。分離した酸化セリウム粒子を水及びエタノールで洗浄し、エタノール洗浄後80℃にて1時間乾燥し、酸化セリウム粒子を得た(図1)。得られた酸化セリウム粒子の一部をイオン交換水に懸濁させ、超音波ホモジナイザーで分散をした。その後、孔径1μmのフィルターでろ過を行った。レーザー回折法による粒度分布測定装置として(株)堀場製作所製LA−950を用い、酸化セリウムの屈折率1.930、水の屈折率を1.333として粒度分布を測定した。その結果、酸化セリウム粒子の平均粒径は89nm、標準偏差を平均粒径で除した値である変動係数は0.12であった。また、上記の操作を繰り返し、酸化セリウム粒子100gを得た。
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成炉において酸化セリウム粒子5gの焼成を行った。雰囲気は制御せず、空気中で1000℃、2時間実施した。得られた酸化セリウム粒子の一次粒子径を前記と同様の方法で測定した結果、46nmであった。また、酸化セリウム粒子のSEM観察を行ったところ、球状の二次粒子が確認され、二次粒子の一部が焼結していた。
【0066】
(研磨剤の作製)
酸化セリウム粒子4gとポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量10,000、40重量%水溶液)0.2gを395gの純水と混合した。その後、超音波分散を施し、さらに1μmのメンブレンフィルタでろ過を行い、研磨剤を得た。研磨剤5gをサンプリングし、150℃、1時間乾燥して得られた固形分は0.6重量%であった。研磨剤を純水にて500倍に希釈したサンプルをMalvern製Zetasizer HS3000を用い、25℃にて酸化セリウム粒子の粒径を光子相関法(動的光散乱法)によって測定したところ、その平均粒径は233nmであった。またレーザー回折法による粒度分布測定装置として(株)堀場製作所製LA−950を用い、酸化セリウムの屈折率1.930、水の屈折率を1.333として粒度分布を測定した。その結果、D95は645nmであった。さらに研磨剤を純水にて十分希釈し、Zetasizer HS3000にてゼータ電位を測定したところ、そのゼータ電位は−53mVであった。
【0067】
(絶縁膜層の研磨)
厚さ1μmのプラズマTEOS(SiO)膜付8インチブランケットウエハを用いて、得られた研磨剤の研磨特性を評価した。研磨装置(Applied Materials製 Mirra)の、基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに上記ウエハをセットし、一方、φ480mmの研磨定盤にロデール社製多孔質ウレタン樹脂製の研磨パッドIC−1000(K溝)を貼り付けた。該パッド上に絶縁膜面を下にして前記ホルダーを載せ、さらに加工荷重としてメンブレン、リテーナリング、インナチューブ圧力をそれぞれ20.7kPa(3psi),27.6kPa(4psi)、20.7kPa(3psi)に設定した。定盤上に上記の研磨剤を50mL/分の速度で滴下しながら、定盤とウエハとをそれぞれ98rpm、78rpmで作動させてプラズマTEOS膜付ウエハを60秒間研磨した。研磨後のウエハを純水で良く洗浄後、乾燥した。その後、光干渉式膜厚装置(ナノメトリクス社製Nanospec AFT−5100)を用いて、絶縁膜の残膜厚を測定した。残膜厚の変化量を研磨時間で除することによって研磨速度を決定した。その結果、研磨速度は260nm/minであった。また、研磨後のプラズマTEOS(SiO)膜付8インチブランケットウエハ上の欠陥数を測定した。測定にはAMAT社製欠陥観察装置ComPLUSを用いた。研磨後のウエハを0.1%フッ酸で60秒洗浄後の欠陥数を研磨傷の数とした。その結果90(相対値)であった。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例2]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成温度を800℃とした以外は実施例1と同様に酸化セリウム粒子を合成した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例1と同様の方法で研磨剤を調製した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の粒径、D95及びゼータ電位を測定した。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を評価した。実施例2の結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成温度を600℃とした以外は実施例1と同様に酸化セリウム粒子を合成した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例1と同様の方法で研磨剤を調製した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の粒径、D95及びゼータ電位を測定した。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を評価した。実施例3の結果を表1に示す。
【0070】
[実施例4]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成温度を400℃とした以外は実施例1と同様に酸化セリウム粒子を合成した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
分散剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で研磨剤を調製した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の粒径、D95及びゼータ電位を測定した。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を評価した。実施例4の結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
(研磨剤の作製)
実施例1で合成した酸化セリウム粒子(焼成前の粒子)2gを純水198gと混合し、超音波分散を行い、研磨剤を得た。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の粒径、D95及びゼータ電位を測定した。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で、プラズマTEOS膜に対する研磨速度を評価した。その結果、研磨速度は0nm/minであり、全く研磨が進行しなかった。比較例1の結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
(酸化セリウム粒子、研磨剤の作製)
炭酸セリウム水和物40gをアルミナ製容器に入れ、800℃で2時間、空気中で焼成することにより、酸化セリウムの黄白色の粉末を20g得た。焼成粉末粒子径は30〜100μmであった。次いで、前記酸化セリウムの焼成粉末20kgを、ジェットミルを用いて乾式粉砕を行った。粉砕して得られた酸化セリウム粒子20gと脱イオン水79.75gを混合し、分散剤として市販のポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量8000、重量40%)0.25gを添加し、撹拌しながら超音波分散を行った。超音波周波数は、400kHzで、分散時間20分で行った。その後、孔径1μmのフィルターでろ過を行った。次いで、得られた酸化セリウム分散液(酸化セリウムスラリー)を、固形分濃度が5重量%になるように脱イオン水で希釈した。実施例1と同様の方法で平均粒径を測定した結果、240nmであった。酸化セリウム分散液の一部を乾燥し、実施例1と同様に一次粒子径(結晶子サイズ)を測定した結果、90nmであった。研磨に先立ち酸化セリウム分散液40gに対し、純水160gを加えて研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で、プラズマTEOS膜に対する研磨速度及び研磨傷を評価した。その結果、研磨速度は380nm/minであった。また、比較例2における欠陥数をを100(相対値)とした。比較例2の結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に実施例1から4、並びに比較例1及び2の結果を示す。
比較例1に示すように、未焼成の酸化セリウム粒子を用いた研磨剤は研磨がほとんど進行しなかった。比較例2に示すように、焼成工程を経て調製された酸化セリウム粒子は、結晶子サイズが90nmと大きく、高い研磨速度を示した。
実施例1から4の研磨剤は、いずれも、比較例1の研磨剤に比べ研磨速度が高く、かつ、比較例2の研磨剤に比べ研磨傷が少なかった。実施例1から3に示すように、液相法で合成した後に焼成処理をした酸化セリウム粒子は、その焼成温度が高いほど結晶子サイズが増大し、研磨速度も向上した。実施例4では、400℃と比較的低温の焼成においても高い研磨速度を示した。これは、アニオン系分散剤を使用しなかったため、結果として研磨剤中のゼータ電位が正の値を示すことで、負に帯電している被研磨面であるSiO膜と間で静電引力が作用したため、高速に研磨されたものと考えられる。研磨粒子と被研磨面との間に引力が作用する場合は、研磨後の洗浄によって粒子を除去し難いという傾向があるが、粒子残りが問題にならない用途には実施例4の研磨剤を適用することができる。
【0075】
[実施例5]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成炉において、実施例1において液相法で合成した酸化セリウム粒子の焼成を行った。雰囲気は制御せず空気中で、800℃、2時間実施した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
酸化セリウム粒子10gとポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量10,000、40重量%水溶液)0.5gを190gの純水と混合した。その後、超音波分散を施し、さらに1μmのメンブレンフィルタでろ過を行い、酸化セリウム分散液(酸化セリウムスラリー)を得た。酸化セリウム分散液5gをサンプリングし、150℃、1時間乾燥して得られた固形分は1.25重量%であった。酸化セリウム分散液を純水にて500倍に希釈したサンプルをMalvern製Zetasizer HS3000を用い、25℃にて酸化セリウム粒子の粒径を実施例1と同様の方法で測定したところ、その平均粒径は190nmであった。またレーザー回折法による粒度分布測定装置として(株)堀場製作所製LA−950を用い、実施例1と同様の方法で粒度分布を測定した。その結果、D95は610nmであった。研磨に先立ち酸化セリウム分散液160gに対し、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3gと純水26.7gを加えて、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施したところ、研磨速度は243nm/minであり、研磨傷は89(相対値)であった。実施例5の結果を表2に示す。
【0076】
[実施例6]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成炉において、実施例1において液相法で合成した酸化セリウム粒子の焼成を行った。焼成に先立ちエチルセルロース10gをテルピネオール90gに溶解させたビヒクルを調製し、酸化セリウム粒子25gをビヒクルに分散させたものを焼成した(図2)。雰囲気は制御せず空気中で、800℃、2時間実施した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例5と同様に酸化セリウム分散液の調製を行った。酸化セリウム分散液の固形分濃度は2.00重量%であった。実施例5と同様に、粒径及びD95を測定した。研磨に先立ち酸化セリウム分散液100gに対し、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3gと純水86.7gを加えて、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を測定した。実施例6の結果を表2に示す。
【0077】
[実施例7]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成温度を850℃とした以外は実施例6と同様に酸化セリウム粒子の焼成を行った。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例5と同様に酸化セリウム分散液の調製を行った。酸化セリウム分散液の固形分濃度は2.80重量%であった。実施例5と同様に、粒径及びD95を測定した。研磨に先立ち酸化セリウム分散液71.4gに対し、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3gと純水115.2gを加えて、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を測定した。実施例7の結果を表2に示す。
【0078】
[実施例8]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成温度を900℃とした以外は実施例6と同様に酸化セリウム粒子の焼成を行った。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例5と同様に酸化セリウム分散液の調製を行った。酸化セリウム分散液の固形分濃度は1.60重量%であった。実施例5と同様に、粒径及びD95を測定した。研磨に先立ち酸化セリウム分散液125.0gに対し、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3gと純水61.7gを加えて、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を測定した。実施例8の結果を表2に示す。
【0079】
[実施例9]
(酸化セリウム粒子の焼成)
焼成炉において、実施例1において液相法で合成した酸化セリウム粒子の焼成を行った。雰囲気をアルゴン雰囲気とし、800℃、2時間実施した。その後雰囲気は制御せず空気中で500℃にて2時間焼成し、酸化セリウム粒子表面の炭化層を除去した。実施例1と同様の方法で酸化セリウム粒子の一次粒子径(結晶子サイズ)を測定し、また、酸化セリウム粒子をSEMで観察した。
(研磨剤の作製)
実施例5と同様に酸化セリウム分散液の調製を行った。酸化セリウム分散液の固形分濃度は2.60重量%であった。実施例5と同様に、粒径及びD95を測定した。研磨に先立ち酸化セリウム分散液76.9gに対し、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3gと純水109.7gを加えて、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で絶縁膜の研磨を実施し、研磨速度及び研磨傷を測定した。実施例9の結果を表2に示す。
【0080】
[比較例3]
(研磨剤の作製)
比較例2で調製した酸化セリウム分散液(固形分濃度5重量%)40g、添加剤としてポリカルボン酸水溶液(固形分濃度3重量%)13.3g、純水146.7gを混合し、さらにアンモニア水(アンモニア25重量%)でpHを5.0に調整し、研磨剤を得た。
(絶縁膜層の研磨)
実施例1と同様の方法で、プラズマTEOS膜に対する研磨速度及び研磨傷を評価した。その結果、研磨速度は270nm/minであった。また、比較例3における欠陥数をを100(相対値)とした。比較例3の結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に実施例5から9及び比較例3の結果を示す。
実施例5から9では、いずれも、高い研磨速度を示し、かつ、比較例3と比べ研磨傷が少なかった。実施例5では、酸化セリウム粒子を空気中で焼成したため、粒子間で一部焼結が生じ、平均粒径、D95ともに高くなった。一方、実施例6、7及び9に示すように、ビヒクル中、または、アルゴン雰囲気で焼成処理を行なった場合は、平均粒径、D95ともに小さくなった。すなわち、粒子間の焼結を抑制することで粗大粒子が減少し、結果として研磨傷数も減少した。また、合成後の酸化セリウム粒子の粒度分布の狭さを維持しつつ一次粒子が成長したため、研磨に適した粒径の粒子数を多く含有することとなり、比較例3と同等の研磨速度を示し、かつ、研磨傷を減少させることができた。さらに、実施例8では、焼成温度を900℃まで高めたが、ビヒクル中での焼成処理を行ったために、D95は181nm程度の上昇に抑えることができた。実施例8は、研磨速度が比較例3よりも大きくなっているにも関わらず、研磨傷を減少させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子及び媒体を含有する研磨剤であって、前記金属酸化物粒子が、金属塩、高分子化合物、及び高沸点有機溶媒を含有する混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を焼成して得られる金属酸化物粒子を含む、研磨剤。
【請求項2】
混合物を加熱することにより生成する金属酸化物の粒子の粒径の変動係数が、0.25以下である、請求項1に記載の研磨剤。
【請求項3】
高沸点有機溶媒が、エチレングリコール又はジエチレングリコールである、請求項1又は2に記載の研磨剤。
【請求項4】
金属塩が、硝酸塩又は酢酸塩である、請求項1〜3のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項5】
金属塩が、硝酸セリウム又は酢酸セリウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項6】
金属塩の濃度が、0.05mol/L以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項7】
高分子化合物が、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1〜6のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項8】
高分子化合物の濃度が、30〜150g/Lである、請求項1〜7のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項9】
高分子化合物の重量平均分子量が、2,000〜1,000,000である、請求項1〜8のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項10】
混合物を加熱することにより生成する金属酸化物の粒子の平均粒径が、10〜300nmである、請求項1〜9のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項11】
焼成温度が、200〜1,200℃である、請求項1〜10のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項12】
焼成雰囲気が、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンである、請求項1〜11のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項13】
混合物を加熱することにより生成する金属酸化物を、ビヒクル中に分散させ、焼成する、請求項1〜12のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項14】
焼成して得られる金属酸化物粒子の一次粒子の平均粒径が、5〜200nmである、請求項1〜13のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項15】
媒体に分散させた、焼成して得られる金属酸化物粒子の平均粒径が、10〜300nmである、請求項1〜14のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項16】
pHが3〜9である、請求項1〜15のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項17】
媒体が水である、請求項1〜16のいずれかに記載の研磨剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の研磨剤で所定の基板を研磨することを特徴とする、基板の研磨方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の研磨剤を研磨定盤上の研磨パッドに供給することにより、無機絶縁膜層が形成された半導体基板の被研磨面と研磨パッドとを相対運動させて研磨することを特徴とする、基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−110272(P2013−110272A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254113(P2011−254113)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】