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研磨用吸着パッド素材及びその製造方法
説明

研磨用吸着パッド素材及びその製造方法

【課題】精密機器に用いられる基盤やレンズ、液晶ガラス等における研磨加工時に剥がれが少なく安定生産ができ、かつ圧縮弾性率が低く被研磨面の高い平坦性を得られる研磨用吸着パッド素材とその製造方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、高分子弾性体(A)からなる接着層と、架橋剤を含有しかつ多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層とが、順に存在する研磨用吸着パッド素材。さらには、架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることや、圧縮時の圧縮変形量が多孔層上部よりも多孔層下部において大きいこと、高分子弾性体(B)の100%伸張モジュラスが2〜5MPaであること、架橋剤がブロックイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。また研磨用吸着パッド素材の製造方法は、基材上の高分子弾性体(A)からなる接着層上に、架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液を塗布し、湿式凝固することを特徴とする。さらには、架橋剤が末端封鎖されたものであり湿式凝固後に熱処理を行うことや、湿式凝固表面を熱プレス処理することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用吸着パッド素材に関し、さらに詳しくは精密機器に用いられる基盤やレンズ、液晶ガラス等における研磨加工時に被研磨物を吸着、保持することに適した研磨用吸着パッド素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年コンピューターなどの情報処理技術の発達に伴い、磁気記録媒体やシリコンウエハーに対する高精度の表面仕上げが要求されている。例えば磁気記録媒体のハードディスク等を製造する場合、被研磨物となるアルミニウム、ガラス等の表面を研磨し平滑化する加工が行われ、そしてこの平滑化加工としては、研磨加工を被研磨物の両面に同時に行う方法もあるが、より精度良く研磨するためには、その被研磨物を保持しながら片面のみに実施する方法が行われている。
【0003】
この片面研磨加工については、近年、液晶用ガラスを用いた製品の需要が高騰している上、液晶用ガラスの大きさも大型化、それに伴う研磨機の大型化が進んできており、その固定化が困難になってきていた。また、被研磨物を研磨加工機の定盤に固定するためには、従来は被研磨体をワックス塗布したセラミックシートや真空吸引により固定する方式が主流であったが、作業性や設備導入の面に難があり、研磨加工を効率的に行う上で不利であった。加えて、被研磨物の仕上がりの要求特性が年々高くなってきていた。例えば研磨機定盤に取り付けた被研磨物が研磨加工時に研磨時の回転力によりズレを生じた場合には、研磨斑を引き起こすという問題があった。
【0004】
そこで、研磨時に被研磨物を強固に定盤に固定密着ができると同時に、研磨後の被研磨物の表面粗さが低くなるような研磨加工用素材が求められており、近年、研磨用吸着パッド素材が主に使用されるようになっている。この研磨加工時に用いられる吸着パッド素材としては、均質性と平滑性が要求され、被研磨物の仕上がりの要求特性を満たせるような素材が求められているため、現在では高分子弾性体の多孔シートが用いらることが多い。高分子からできた弾性体を多孔化することによってより柔軟にすることにより、被研磨物に傷を与えることを、有効に防止しうるからである。
【0005】
このような吸着加工に用いられる多孔シートとしては、例えばポリウレタンの発泡体を作成し、それをフィルム、不織布、織布などからなる支持体の表面に張り合わせる製造方法が知られている。しかしポリウレタンの発泡体として、圧縮特性に優れる湿式凝固ポリウレタンを使用し、別途支持体に張り合わせるというこの手法を用いた場合には、平滑性を確保しにくいという問題があった。そこでこの場合には、あらかじめ表面または裏面を研磨して平滑にしてから張り合わせるなどの追加工程が必要とされていたのである。
【0006】
例えば特許文献1や、特許文献2などでは、平滑性を高めるために裏面研磨して用い、出現した多孔中に接着剤を浸入させることで平坦性の確保と多孔質層と支持体の接合を実現している。しかしこの場合、接着剤の塗布ムラや加圧、加熱による接着剤の流動、研磨加工時に用いる研磨液(スラリー)に含まれる水、酸、アルカリ溶液等による接着剤の加水分解、酸アルカリによる分解等が発生し、加工中に支持体層と高分子弾性重合体からなる多孔層との間で剥がれたり、面平滑性が悪化するなどの問題が発生しやすく、研磨加工時に掛かる剪断方向の力に対して弱く、十分な物性を確保することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−239786号公報
【特許文献2】特開2008−055528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、精密機器に用いられる基盤やレンズ、液晶ガラス等における研磨加工時に剥がれが少なく安定生産ができ、かつ圧縮弾性率が低く被研磨面の高い平坦性を得られる研磨用吸着パッド素材とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の研磨用吸着パッド素材は、基材上に、高分子弾性体(A)からなる接着層と、架橋剤を含有しかつ多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層とが、順に存在することを特徴とする。
さらには、架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることや、圧縮時の圧縮変形量が多孔層上部よりも多孔層下部において大きいこと、高分子弾性体(B)の100%伸張モジュラスが2〜5MPaであること、架橋剤がブロックイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0010】
またもう一つの本発明の研磨用吸着パッド素材の製造方法は、基材上の高分子弾性体(A)からなる接着層上に、架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液を塗布し、湿式凝固することを特徴とする。
さらには、架橋剤が末端封鎖されたものであり湿式凝固後に熱処理を行うことや、湿式凝固表面を熱プレス処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精密機器に用いられる基盤やレンズ、液晶ガラス等における研磨加工時に剥がれが少なく安定生産ができ、かつ圧縮弾性率が低く被研磨面の高い平坦性を得られる研磨用吸着パッド素材とその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の研磨用吸着パッド素材は、基材上に高分子弾性体(A)からなる接着層と、架橋剤を含有しかつ多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層とが、順に存在するものである。
【0013】
ここで本発明の研磨用吸着パッド素材に用いられる基材としては、その上に存在する高分子弾性体からなる接着層と表面層の形態を保持することができる支持体であれば特に制限は無く、フィルムや繊維質基材が好ましくは用いられる。繊維質基材としては、不織布形状の繊維と高分子弾性体、特には多孔質高分子弾性体からなるものを挙げることができ、柔軟性に優れた素材となる。一方、接着層と表面層の形態をより安定的に保持するためには、基材がフィルムであることが好ましい。中でも、均質な厚みと硬度を持った合成樹脂からなるフィルム状のものが好ましい。フィルムを形成する合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)などの素材が挙げられるが、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)がその寸法安定性、均質性、汎用性と取り扱い易さから良好である。また、基材となるフィルムの厚さは、50〜300μmの範囲であることが好ましく、100μm〜250μmの範囲がより好ましい。薄すぎると、その厚みの薄さから十分な剛性が発現されないため、多孔層の形成のために、高分子弾性重合体を基材上にコーティングする時に、加工工程における張力等により皺が入り、均一なコーティングが行いにくい傾向にある。一方、厚い場合には工程での取り扱い性は楽になり、加工性は向上するものの、その上に多孔の表面層を形成するため、コーティング後の素材の剛性が高くなりすぎる傾向にある。生産工程の最後にロール状に巻き取る巻き付けが困難になるとともに、巻き癖が付きやすく、最終製品である吸着パッド素材に歪みやそりが発生するなどの問題点が出てくることがある。
【0014】
本発明の研磨用吸着パッド素材は上記のような基材上に、まず高分子弾性体(A)からなる接着層が存在する。この高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等であることが好ましく、物性的な面からはポリウレタンエラストマーであることが特に好ましい。
【0015】
さらに、本発明の高分子弾性体(A)からなる接着層に使用される高分子においては、末端にイソシアネート基などの反応性の高い置換基を含んでいる架橋剤が添加されていることが好ましく、さらにこの反応性の高い置換基部分が解離温度90〜120℃の反応封鎖基でブロックされたブロック型架橋剤であることがより好ましい。また接着層及び後に詳細に述べる表面層が、共にポリウレタン系の高分子である場合には、ウレタン基と反応性の高い置換基を持つ架橋剤が含まれている接着層が存在することにより、フィルム上に湿式成膜される高分子弾性重合体との間で架橋反応が起こりやすく、合成樹脂フィルムなどの基材と、高分子弾性重合体からなる多孔質表面層との間で、強い接着性能が得られる。ここで、接着層に架橋剤を用いる場合には、架橋剤中の反応性の高い置換基部分が解離温度90〜120℃の反応封鎖基でブロックされたブロック型架橋剤を用いることが、更に好ましく、安定した接着性能を発現しうる。
【0016】
接着層の厚みとしては5〜50μmが好ましく、5〜35μmがより好ましい。接着層の厚みが5μm以下の場合コーティング装置におけるちょっとした歪み等で接着不良等を起こす場合がある。一方50μm以上の場合接着層が厚くなりすぎてしまい。接着層の影響が素材の硬さに影響を及ぼすようになり、素材の剛性が高くなるとロール状に巻き取るなどの加工時において巻き付けが困難になり、また巻き癖が付きパッド加工後にそりが発生するなどの傾向にある。
【0017】
本発明では、この接着層の上に架橋剤を含有しかつ多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層が存在することが必要である。この表面層に用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等が挙げられるが、なかでもポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー等のポリウレタン系のエラストマーであることが好ましい。これらポリウレタン系エラストマーは、例えば平均分子量500〜4000のポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエステル・エーテルグリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリカーボネートグリコール等から選ばれた、一種または二種以上のポリマーグリコールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の有機ジイソシアネートと、低分子グリコール、ジアミン、ヒドラジン、又は有機酸ヒドラジッド、アミノ酸ヒドラジッド等のヒドラジン誘導体等から選ばれた鎖伸長剤を反応させて得られるものである。
【0018】
本発明では、この表面層の高分子弾性体(B)が多孔構造をとり、架橋剤を含有することが必要である。このとき多孔構造の高分子弾性体を得るためには、湿式凝固法により得られたものであることが好ましい。例えば高分子弾性体(B)を、基材上に成膜された接着層(B)の上にコーティングし、湿式凝固法にて高分子弾性体(B)を多孔化させながら凝固させ、多孔質の表面層とすることができる。
【0019】
さらに本発明においては、表面層に使用される高分子弾性体が架橋剤を含有していることが必須である。ここで架橋剤としては、末端にイソシアネート基などの反応性の高い置換基を含んでいるものを挙げられる。さらにこの反応性の高い置換基部分が解離温度90〜120℃の反応封鎖基でブロックされたブロック型架橋剤であることが好ましい。さらには先に述べたように、接着層にも同種の架橋剤が含まれていることが好ましく、特には接着層及び表面層がポリウレタン系の高分子である場合により高い接着効果が発揮される。また、表面層の高分子弾性体にこのような架橋剤が含有されることにより、本発明では表面層を構成する高分子弾性体の強度や弾性率が向上し、より安定した加工が行えるようになった。また例えば本発明の研磨吸着パッドは、使用時に研磨液(スラリー)中の水、酸、アルカリ溶液にさらされるが、高分子弾性体層中に架橋剤を含むことにより、接着層の加水分解、酸アルカリによる分解等を有効に防止することが可能となる。加工中のフィルムと高分子弾性重合体からなる多孔層、接着層との間での剥がれや、面平滑性の悪化を防止できるばかりでなく、加工時に掛かる剪断方向の力に対しての耐久性をも向上させることが可能となるのである。
【0020】
さらにこの本発明の表面層は、多孔高分子弾性体の多孔の形状として、涙型の大きな孔と微多孔からなる断面多孔からなる多孔質表面層であることが好ましい。このような形状の多孔を形成する方法としては、表面層の作成時に高分子弾性体溶液中に多孔構造を調整する各種添加剤を添加する方法などが採用される。またこのような本発明の吸着パッドを用いて研磨加工を行うことにより、吸着パッドが小変形時には大きな多孔が変形し、大変形時には微多孔や、弾性体自体が本来有する弾性変形を行うことにより、研磨時の各種応力に対し被研磨物に掛かる荷重をコントロールしうるのである。高分子弾性重合体からなる多孔フィルムはその厚み方向に適度のクッション性を持たせることにより、被研磨物を保持するための吸着パッドとして用いることにより、結果的には被研磨物の研磨精度をも高めることができるのである。また、この多孔層の多孔構造が均一でその多孔層の両側にスキン層を有するものであることが好ましい。特に多孔層と接着層の間に存在するスキン層は、圧縮による疲労性を向上させるために有効である。
【0021】
また、使用する高分子弾性体としては、樹脂単体での使用あるいは2種以上の樹脂同士のブレンドによる使用のどちらでも可能であるが、素材の圧縮変形状態をより細かく制御するためには、樹脂をブレンドして使用する方が、多孔質表面層の樹脂から反映される弾性や塑性を調整することができ好ましい。例えばウレタン樹脂のハード成分・ミッド成分・ソフト成分間のセグメント比率のバランスをブレンド比率で調整することにより、多孔質表面層の変形挙動を制御することが可能になる。
【0022】
この本発明の吸着パッド素材に用いられる高分子弾性体(B)の100%モジュラスとしては、その被研磨体にもよるが1〜10MPaの範囲であることが好ましく、特には2〜5MPaの範囲であることが好ましい。モジュラスが低すぎるものは、その高分子弾性重合体中の結晶成分が少なく、成膜時に安定したフィルムを成型することが困難な傾向にある。逆にモジュラスが高すぎる場合、結晶成分が多く弾性体的挙動が少なくなり、加工時の圧力の分散が不均一となり、研磨加工後の被研磨体表面におけるマイクロスクラッチなどの欠点が多くなる傾向にある。本発明の吸着パッド素材では、モジュラスの調整により、圧縮時の変形率、すなわち、圧縮率や圧縮後の回復性を示す圧縮弾性率などを適正化することができ、個別の被研磨体の種類毎に異なってくる研磨加工における要求特性(被研磨体の研磨後の表面粗さ、うねり、端部形状や研磨レート、吸着パッド寿命など)に応えることが可能となる。さらに特にこの高分子弾性体(B)のモジュラス範囲を2〜5MPaとすることにより、良好な吸着力と安定した成膜性を両立することが可能となる。
【0023】
この多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層の厚さとしては0.2〜2mmの範囲が好ましく、0.5〜1.0mmの範囲がより好ましい。多孔質である表面層の見かけ密度としては、0.10〜0.40g/cmの範囲であることが好ましく、0.15〜0.35g/cmがより好ましい。厚すぎたり、見かけ密度が小さいと研磨加工時の圧力による研磨用吸着パッド素材の変形が大きくなり、応力分散が大きいために研磨圧力が安定せず、被研磨体表面の研磨斑が大きくなり、さらに面の平滑性が悪くなる傾向にある。また、薄すぎたり、見掛け密度が大きいと多孔質表面層の圧縮時の変形が小さくなり、応力集中による被研磨体表面の研磨斑が大きくなる傾向にある。研磨加工時の反発性が高くなることにより部分的に研磨が進み、さらに吸着力自体が低下する傾向にある。密度や物性を調整するために熱処理を施すのも良い方法であり、圧縮時の変形率の減少や、遅延弾性を得ることができる。
【0024】
また、本発明の研磨用吸着パッド素材では、その表面粗さが平滑であることが好ましい。例えば金属板状物や金属ロールを介してパッド素材に熱を付与し、加圧することにより、このような表面が平滑な吸着パッド素材を得ることができる。
【0025】
このような本発明の吸着パッド素材は、例えばもう一つの本発明である吸着パッド素材の製造方法により得ることができる。すなわち、基材上の高分子弾性体(A)からなる接着層上に、架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液を塗布し、湿式凝固する製造方法である。
【0026】
ここで用いる基材や高分子弾性体(A)及び高分子弾性体(B)としては、先に述べたものを使用することが望ましい。基材としては樹脂フィルムであることが好ましく、高分子弾性体(A)や高分子弾性体(B)としては、ポリウレタン系重合体であることが特に好ましい。
【0027】
基材上に高分子弾性体(A)からなる接着層を形成する方法としては、高分子弾性体(A)を含む溶液を基材上に塗布し、乾燥する方法が一般的である。また、この溶液中には架橋剤、より好ましくは末端が封鎖された架橋剤を用いることが好ましい。中でもブロックイソシアネート系の架橋剤が最も好ましい。特には解離温度90〜120℃の反応封鎖基でブロックされたブロック型架橋剤を用いることがさらに好ましく、安定した接着性能を発現しうる。
【0028】
ただしこのような架橋剤を用いたときの接着層成膜時の乾燥温度としては、70〜80℃の狭い範囲であることが好ましい。高温にしすぎると架橋剤の反応が促進され、多孔質表面層を成膜している途中で基材と多孔質表面層の間で、剥がれが発生しやすくなる傾向にある。逆に低い温度で乾燥すると、接着層が粘着性を発現し、巻き取り工程において接着層表面と基材である合成樹脂フィルム等の裏面が接着する傾向にある。その場合には、次工程の高分子弾性体(B)をコートする工程において、巻き出す時に接着層が剥がれ、表面層のコート後に多孔質表面層が接着層と接着しない現象が発生することがある。部分的あるいは全面的に表面層のウキを生じ、剥がれるのである。また、接着層の形成後、表面層の形成までは短時間で行う必要が有り、速やかに次の工程を行うことが好ましい。特に接着層に架橋剤を含有している場合、接着層を形成後、表面層の成形までに高温下に暴露したり、長時間放置したりすると、架橋剤の反応基が反応するため、より接着性が低下する傾向にある。基材上に接着層の成膜後、なるべく早いタイミングで多孔質表面層を湿式凝固することが好ましいのである。
【0029】
本発明の吸着パッド素材の製造方法では、基材上にある接着層上に、架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液を塗布し、湿式凝固する。この湿式凝固した層が、多孔の表面層になるのである。高分子弾性体(B)は上記のものを適用することができ、ポリウレタン系重合体であることが好ましい。各種添加剤を併用することが好ましく、湿式法にて多孔化させながら凝固させ、多孔の表面層を得る。
【0030】
さらに本発明においては、この湿式凝固層(表面層)に使用される高分子弾性体には架橋剤を含有していることが必要である。ここで架橋剤としては、末端にイソシアネート基などの反応性の高い置換基を含んでいるものを挙げられる。さらにこの反応性の高い置換基部分が解離温度90〜120℃の反応封鎖基でブロックされたブロック型架橋剤であることが好ましい。さらには接着層にも同種の架橋剤が含まれていることが好ましく、特には接着層及び湿式凝固層がポリウレタン系の高分子である場合により高い接着効果が発揮される。また、湿式凝固層の高分子弾性体にこのような架橋剤が含有されることにより、本発明では湿式凝固層を構成する高分子弾性体の強度や弾性率が向上し、より安定した加工が行えるようになった。
【0031】
本発明では高分子弾性重合体(B)を湿式法にて多孔化させながら凝固させ、多孔質の湿式凝固層を得る。この時、高分子弾性体の溶液中に多孔構造を調整する添加剤を添加することで、涙型の大きな孔と微多孔からなる断面多孔を調整し、所望の多孔を有する湿式凝固層を形成させることが好ましい。また、使用する高分子弾性体は、樹脂単体での使用あるいは2種以上の樹脂同士のブレンドによる使用のどちらでも良く、物性を制御する場合は、ブレンドによる使用が好ましい。
【0032】
より具体的には、高分子弾性体(B)としてはポリウレタン系重合体であることが好ましく、この場合には、ジメチルホルムアミドにポリウレタン系重合体を溶解し、さらにこの高分子弾性体溶液に各種湿式凝固助剤を添加して湿式凝固を行うことが好ましい。湿式凝固助剤としては、公知のセルロース系添加剤、トーナーなどの着色剤、湿式多孔の形成助剤として知られるシリコーン系親水剤や疎水剤を挙げることができる。
【0033】
ここで用いられる高分子弾性体(B)の100%モジュラスは、1〜10MPaの範囲であることが好ましく、さらには2〜5MPaの範囲であることが好ましい。実際に用いる被吸着体に応じ、最適なものを選定することが好ましい。モジュラスが低すぎる場合は、その高分子弾性体中の結晶成分が少なくなり成膜時に安定した層(フィルム)を成型しにくい傾向にある。逆にモジュラスが大きすぎる場合は、結晶成分が多くなり弾性的な挙動が少なくなり、加工時の被吸着体に対する圧力の分散が不均一となる傾向にある。最終的に被吸着物を研磨加工した後の、研磨面におけるマイクロスクラッチなどの欠点が多くなってしまうのである。
【0034】
また架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液の固形分濃度としては2〜30重量%であることが好ましく、10〜25重量%であることがさらに好ましい。濃度が薄すぎると、形成される多孔層の密度が低下しかつ薄くなり、吸着力が低下する傾向にある。逆に濃度が濃すぎると、凝固速度が遅くなり生産性が低下することに加えて、表面の平滑性が低下する傾向にある。
【0035】
このような架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液は、よく混合撹拌し、ロールコート方式やナイフコート方式などにより、基材上の高分子弾性体(A)からなる接着層の上に塗布される。塗布する際には、所定のクリアランスを設けて処理液(コーティング液)を塗布するコーティング処理を行う。そして本発明の製造方法では、高分子弾性体がポリウレタン系高分子弾性体のジメチルホルムアミド溶液である場合が、湿式凝固を行いやすく好ましい。この場合には、処理液の塗布に引き続き、溶液中のジメチルホルムアミド等と水との置換による湿式凝固成膜を行う。このとき凝固浴のジメチルホルムアミド濃度としては20%以下が好ましく、さらには5〜10%の範囲であることが好ましい。凝固浴のジメチルホルムアミド溶液の濃度が高すぎる場合には凝固速度が遅くなり、湿式凝固した多孔層の内部が、製造工程におけるロール等の接圧により、未凝固の多孔層がずれて、表面凹凸が大きくなり、表面平滑性が低下する傾向にある。形成された多孔層の見かけ密度は、0.10〜0.40g/cmの範囲であることが好ましく、0.15〜0.35g/cmがより好ましい。また多孔層の厚さとしては2.0mm以下の範囲が好ましく、さらには0.5〜1.0mmの範囲であることが好ましい。
【0036】
多孔層の形成後には、水あるいは温水中に浸漬することにより、多孔内に残留するジメチルホルムアミドを多孔層から除去し、さらに乾燥処理を行って吸着パッド素材を得ることが好ましい。
【0037】
本発明の吸着パッド素材の製造方法では、高分子弾性体(B)からなる処理液中に架橋剤が含有されていることが必須である。この架橋剤が末端封鎖されたものであることが好ましく、この場合は湿式凝固工程中では末端封鎖されており、架橋剤中の反応基は反応封鎖基でブロックされたまま残留し、湿式成膜時に存在する水との反応もブロックされる。そして多孔質が湿式形成された後、乾燥熱処理するが、その乾燥処理時に水分が除去され、素材温度が反応封鎖基の解離温度となったところで架橋剤中の反応基がフリーとなり、高分子弾性体と架橋反応を起こし、物性が向上するのである。
【0038】
さらに、本発明の吸着パッド素材の製造方法では、湿式凝固表面を熱プレス処理することが好ましい。より具体的には例えば、金属板状物や金属ロールを介して湿式凝固表面に熱を付与し、加圧する連続的なプロセスを通過させることにより、表面粗さの低い形状を多孔質の湿式凝固層の表面に転写することにより、表面粗さがより平滑な吸着パッド用素材を得ることが出来るのである。さらにこのような熱処理を実施することにより、最適な圧縮時の変形形態や遅延弾性を得ることが可能となる。
【0039】
このようにして得られた本発明の吸着パッド素材は、さらに基材の高分子弾性体からなる接着層や表面層が存在しない側(裏面側)に、両面テープを接着し、使用する研磨機の加圧定盤にあったサイズにカットすることにより、研磨用吸着パッドを得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各測定値は次の方法により測定した。
【0041】
(1)圧縮率
吸着パッドの一定荷重を付与したときの圧縮率である。低荷重時の圧縮率は150g/mの条件下にて測定し、高荷重時の圧縮率は1427g/mの条件下にて測定したものである。圧縮が全く起こらない場合を0%、圧縮により厚さが0となった場合を100%とした。
【0042】
(2)圧縮弾性率
上記(1)の圧縮率の測定後、荷重除去後の厚さの回復率を「圧縮弾性率」とした。なお低荷重は150g/cmの荷重、高荷重は1427g/cmの荷重の条件を採用した。もとの厚さに戻った場合を100%、全く厚さが回復しない場合を0%とした。
【0043】
(3)接着層と表面層間の剥離強度測定
得られた吸着パッド用素材を、幅2.5cm、長さ7cmに切断して試験片とし、試験速度50mm/minにて剥離試験をおこない、剥離位置及び剥離強度を記録した。
【0044】
(4)吸着力
15cm×10cm(150cm)のサンプルをガラスに貼り付け、表面に水を噴霧し、ワイパーで拭き取り、サンプル表面をガラスに貼り合わせて一定荷重を加え、その状態で1分間保持し試験機にて引っ張り試験を実施し吸着力の値を得る。
【0045】
[実施例1]
厚み188μmのポリエステルフィルム上に、大日精化工業(株)製ポリエステルポリオール/ポリイソシアネート系のポリウレタン系接着剤E−256/C−76を重量比100:10となるように混合された樹脂溶液を厚み100μmとなるようにコーティングし、80℃の乾燥機で2分乾燥させ、ポリエステルフィルム上に25μmの接着層を形成したベースを得た。なお、接着層の厚みはベース断面の電子顕微鏡写真より測長して確認した。
【0046】
得られたベースの接着層の上に、100%モジュラスが4MPaであるポリエステル系ポリウレタンの18%濃度のジメチルホルムアミド(以下DMFとする)溶液100部にシリコーン系の凝固調節剤7部及びブロックイソシアネート(解離温度140℃)7部を添加し、800g/mとなるようにコーティングした後、7%DMF水溶液の凝固バス中で凝固(湿式凝固)し、十分に水洗を行い、多孔質層内に残存しているDMFを除去して、乾燥温度120℃で15分間乾燥し、多孔質からなる表面層を接着層の上に形成した。引き続き、乾燥温度140℃で15分間の熱処理を実施し、続いて面平滑性を付与するためにロール温度120℃で加熱したエンボス(鏡面ロール)表面に密着させることにより、446g/m、厚み1.02mm(多孔質層=0.93mm)の研磨用吸着パッド素材を得た。
【0047】
得られた研磨用吸着パッド素材のポリエステルフィルムの接着剤層及び表面層がコーティングされていない方の面に両面テープを貼り合わせることにより、研磨加工時に被研磨物を研磨機定盤に固定化しておくための、吸着パッドとなった。
得られた研磨用吸着パッド素材の剥離試験を行ったところ、剥離強度は10N/cmと十分に高いものであり、表面に存在する多孔質層と接着層は、一体化して破壊されている形態であった。またこのものは研磨加工に対して十分な強度を示し、研磨加工時に剥離したり、剥離による吸着パッド表面の平坦性が損なわれ、研磨不良が起きるようなことは観察されなかった。
【0048】
また表面に存在する多孔層の断面は、微多孔が表層近くに多く存在し、支持層であるフィルムに近くなればなるほど多孔が大きくなった円錐形の形状の多孔であった。そして表面の多孔質層から圧縮を掛けたところ、下部のフィルムや接着層に近いところから沈み込みが始まり、除圧をすると、その多孔がゆっくりと元の厚さへ回復した。さらに得られた研磨吸着パッドは圧縮時の変形量が大きく、逆に圧縮弾性率が低いものであった。つまり、加圧保持状態が維持されている状況下での被研磨物に対する反発弾性が弱く、均一に研磨物を保持することができるものであった。表1に物性を示した。
【0049】
[実施例2,3]
接着層の上に塗布するポリエステル系ポリウレタンの濃度を実施例1の18重量%から表1記載の濃度に変更した以外は、実施例1と同様にして吸着パッドを作成した。表1に物性を併せて示す。
【0050】
[比較例1]
接着層用の高分子弾性体(B)にイソシアネートを添加しなかった以外は、実施例1と同様の配合にて、フィルム上に接着層と多孔質層を有するシートを得た。このものは実施例1と比べて圧縮率が低く、弾性率も高いものであり、均一に研磨物を保持できないものであった。表1に物性を併せて示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、高分子弾性体(A)からなる接着層と、架橋剤を含有しかつ多孔の高分子弾性体(B)からなる表面層とが、順に存在することを特徴とする研磨用吸着パッド素材。
【請求項2】
架橋剤が、イソシアネート系架橋剤である請求項1記載の研磨用吸着パッド素材。
【請求項3】
圧縮時の圧縮変形量が、多孔層上部よりも多孔層下部において大きい請求項1または2記載の研磨用吸着パッド素材。
【請求項4】
高分子弾性体(B)の100%伸張モジュラスが2〜5MPaである請求項1〜3のいずれか1項記載の研磨用吸着パッド素材。
【請求項5】
架橋剤が、ブロックイソシアネート系架橋剤である請求項1記載の研磨用吸着パッド素材。
【請求項6】
基材上の高分子弾性体(A)からなる接着層上に、架橋剤を含有する高分子弾性体(B)からなる処理液を塗布し、湿式凝固することを特徴とする研磨用吸着パッド素材の製造方法。
【請求項7】
架橋剤が末端封鎖されたものであり、湿式凝固後に熱処理を行う請求項6記載の研磨用吸着パッド素材の製造方法。
【請求項8】
湿式凝固表面を熱プレス処理する請求項6または7記載の研磨用吸着パッド素材の製造方法。

【公開番号】特開2013−52471(P2013−52471A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191769(P2011−191769)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】