説明

研磨用構造体

【課題】研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される粘着剤層を備える研磨用構造体を提供する。
【解決手段】支持体と、研磨材と、これらを接合する粘着剤層と、を備える研磨用構造体であって、上記粘着剤層は、第一のモノマー58〜85質量%、第二のモノマー2〜7質量%及び第三のモノマー10〜40質量%を含むモノマーの重合体を含有し、上記第一のモノマーは、ガラス転移温度が0℃以下のホモポリマーを与える、炭素数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、上記第二のモノマーは、ガラス転移温度が50℃以上のホモポリマーを与える、極性モノマーであり、上記第三のモノマーは、ガラス転移温度が10℃以上のホモポリマーを与える、炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、研磨用構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の微細化や光学機器の精密化に伴い、これらに使用される各種基板(シリコンウェハ、サファイアウェハ、ハードディスクに用いられるガラス基板等)の平坦化の要求が高まっている。そして、これらの各種基板の平坦化は、通常、定盤(プラテン)に研磨材が貼り付けられた研磨装置を用いて行われる。その際、しばしば、界面活性剤等を含む研削液が研削工程を促進するために用いられている。
【0003】
定盤と研磨パッドとの貼り付けは、通常、両面粘着テープを用いて行われる。この両面テープとして、例えば特許文献1には「基材の片面に再剥離性粘着剤層が積層され、基材の他面に強粘着層を備える研磨材固定用両面粘着テープであって、強粘着層がスチレン−イソプレン−スチレン共重合体樹脂系エラストマーをベースエラストマーとして含み、少なくとも石油系樹脂とテルペンフェノール樹脂とを粘着付与樹脂として含む粘着剤によって形成されていることを特徴とする研磨材固定用両面粘着テープ」が記載されており、特許文献2には「基材の片面に熱活性のアクリル系接着剤層が設けられ、基材の他面に再剥離性の粘着剤層が設けられていることを特徴とする研磨材固定用両面接着テープ」が記載されている。特許文献3には、「基材に一体成形された複数の研磨複合体を含むガラス研磨用研磨製品」が記載されている。特許文献4には、「裏材と、裏材の表面に接合した少なくとも一つの3次元研磨コーティングとを含む研磨物品」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−111008号公報
【特許文献2】特開2001−354926号公報
【特許文献3】特表2002−503559号公報
【特許文献4】特表2002−542057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の研磨方法において、研磨材は、磨耗により研磨面が減少し、研磨が困難となるまで使用された後に交換されることが好ましい。使用後の研磨材は、研磨装置の定盤から取り外されて交換される。
【0006】
研磨材の表面が完全に消耗する前に研磨材を交換する必要が生じることを、可能な限り避けるため、(a)研削液が研磨材と研磨材固定用両面接着テープとの界面に浸透して接着力が低下すること、(b)研磨材固定用両面接着テープの接着剤層が被研磨体等に接触し、研磨時の摺動運動による負荷を受けて剥れが生じること、等を防止することが望まれる。なお、上記剥れは、研磨材固定用両面接着テープの接着層が研磨液で膨潤することに起因して生じるものと考えられる。
【0007】
本発明は、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される粘着剤層を備え、長期間にわたり安定して使用可能な、研磨用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一つの態様において、支持体と、研磨材と、これらを接合する粘着剤層と、を備える研磨用構造体であって、上記粘着剤層は、第一のモノマー58〜85質量%、第二のモノマー2〜7質量%及び第三のモノマー10〜40質量%を含むモノマーの重合体を含有し、上記第一のモノマーは、ガラス転移温度が0℃以下のホモポリマーを与える、炭素数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、上記第二のモノマーは、ガラス転移温度が50℃以上のホモポリマーを与える、極性モノマーであり、上記第三のモノマーは、ガラス転移温度が10℃以上のホモポリマーを与える、炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、研磨用構造体に関する。
【0009】
上記研磨用構造体における粘着剤層は、上記特定の重合体を含有するものであるため、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される。そのため、上記研磨用構造体によれば、接着力の低下に起因した研磨材と粘着剤層との剥離や、粘着剤層の膨潤に起因した粘着剤層の剥れを防止することができ、長期間にわたり安定して研磨作業を行うことができる。
【0010】
他の態様において、上記重合体のガラス転移温度は−15〜10℃であり得る。このような重合体を含む粘着剤層によれば、研磨時にかかる圧力によって研磨用構造体の側面等へ押出されることを十分に抑制することができる。また、上記研磨用構造体は、粘着剤層上に複数の研磨材が接合されていてもよく、このとき研磨材間に隙間が生じる場合がある。このとき、上記重合体を含む粘着剤層によれば、研磨材間の隙間への粘着剤の押出が十分に抑制される。
【0011】
また、他の態様において、上記研磨材は、基材と、該基材上に規則的に複数配置された砥粒及びその結合剤を含む立体要素と、を有するものであり得る。
【0012】
また、他の態様においては、上記粘着剤層の厚みは50〜500μmであり得る。
【0013】
さらに他の態様においては、上記研磨用構造体は、上記支持体の他方面上に設けられた再剥離性粘着剤層をさらに備えていてもよい。このような研磨用構造体は、再剥離性粘着剤層によって研磨装置の定盤に対する着脱を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される粘着剤層を備え、長期間にわたり安定して使用可能な、研磨用構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線I−Iに沿った断面を示す模式断面図である。
【図2】第二実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線II−IIに沿った断面を示す模式断面図である。
【図3】第三実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線III−IIIに沿った断面を示す模式断面図である。
【図4】第二実施形態に係る研磨用構造体を用いた研磨方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の研磨用構造体は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、第一実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線I−Iに沿った断面を示す模式断面図である。第一実施形態に係る研磨用構造体100は、支持体10と、該支持体10の一方面上に設けられた粘着剤層12と、該粘着剤層12によって支持体10と接合された研磨材14と、支持体10の他方面上に設けられた再剥離性粘着剤層16と、を備える。
【0018】
支持体10としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等からなるプラスチックフィルム;該プラスチックフィルムを積層した積層フィルム;ポリエチレン、ポリウレタン、合成ゴム等を主原料とする発泡体;織布;不織布;等が好適に使用される。
【0019】
支持体10の厚さは、特に限定されないが、25〜5000μmとすることができ、50〜2000μmとすることもできる。
【0020】
粘着剤層12は、第一のモノマー(以下、場合により「(a)成分」という。)58〜85質量%、第二のモノマー(以下、場合により「(b)成分」という。)2〜7質量%及び第三のモノマー(以下、場合により「(c)成分」という。)10〜40質量%を含むモノマー(以下、場合により「モノマー成分」という。)の重合体を含有する。(a)成分は、ガラス転移温度が0℃以下のホモポリマーを与える、炭素数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、(b)成分は、ガラス転移温度が50℃以上のホモポリマーを与える、極性モノマーであり、(c)成分は、ガラス転移温度が10℃以上のホモポリマーを与える、炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。以下、(a)〜(c)成分について詳述する。
【0021】
ここで、ホモポリマーの「ガラス転移温度」(Tgともいう。)とは、加熱融解したポリマーをある条件のもと冷却していくと過冷却液体を経てガラス状態となるが、このガラス状態に変化する際の温度を意味する。具体的には、ホモポリマーのガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して測定される値である。
【0022】
(a)成分は、炭素数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであって、ガラス転移温度が0℃以下となるホモポリマーを与えるモノマーである。
【0023】
(a)成分によって、粘着剤層12に、十分な柔軟性と、支持体10及び研磨材14に対する十分なぬれ性とが付与される。また、(a)成分により、粘着剤層12に疎水性が付与され、これにより粘着剤層12の研削液による膨潤が十分に防止される。
【0024】
(a)成分としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート等が挙げられる。これらのうち、粘着剤層12の粘着性が一層向上する観点から、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートが好ましい。
【0025】
上記モノマー成分中の(a)成分の含有量は、上記モノマー成分の総量基準で58〜85質量%であり、好ましくは65〜80質量%である。(a)成分の含有量が58質量%未満であると、粘着剤層12に疎水性が十分に付与されず、粘着剤層12の研削液による膨潤が十分に防止されない。また、(a)成分の含有量が85質量%を超えると、粘着剤層12の接着力が十分に得られない場合がある。
【0026】
(b)成分は、ガラス転移温度が50℃以上のホモポリマーを与える極性モノマーである。(b)成分によって、粘着剤層12の凝集力が向上し、粘着剤層12に支持体10及び研磨材14に対する優れた接着性が付与される。
【0027】
なお、従来の粘着剤層では、凹凸のある被着体(例えば発泡ウレタン)に対してはアンカー効果によって強い接着性が得られていても、平滑な面を有する被着体(例えばポリエステルフィルム)に対して、被着体との界面に研削液、例えば、水等が進入して剥離してしまう場合がある。これに対して、粘着層12は、(b)成分によって、平滑な面を有する被着体に対しても優れた接着性を発現する。そのため、粘着層12は、研削液の存在下でも支持体10と研磨材14とを長期間接合することができる。
【0028】
(b)成分としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基等の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー;ビニルエステル;ビニルアミド;N−ビニルラクタム;(メタ)アクリルアミド;N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等の置換アクリルアミド;が挙げられる。
【0029】
また、(b)成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、アクリロイルオキシエチルフタレート、アクリロイルオキシプロピルフタレート、マレイミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプトラクタム等が挙げられる。これらのうち、粘着剤層12の接着力及び凝集力が特に優れることから、少なくとも一つの酸基を含有するモノマーが好ましく、このうち(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートが特に好ましい。
【0030】
上記モノマー成分中の(b)成分の含有量は、上記モノマー成分の総量基準で2〜7質量%であり、好ましくは3〜6質量%である。(b)成分の含有量が2質量%未満であると、粘着剤層12の接着力、特に平滑な表面に対する接着力が十分に得られない場合がある。また、単に接着力を高めることのみを目的とする場合には、(b)成分の含有量は多くすることが好ましいが、本発明では上述したように研削液による膨潤を抑制することを目的の一つとしている。(b)成分の含有量を上記範囲内とすることで、優れた接着力と研削液による膨潤の抑制とを両立することができる。
【0031】
(c)成分は、炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであって、ガラス転移温度が10℃以上となるホモポリマーを与えるモノマーである。
【0032】
(c)成分によれば、疎水性を維持しつつ、上記重合体のガラス転移温度をコントロールすることができる。そのため、(c)成分によって、粘着剤層12の十分な疎水性と十分な接着力とが両立される。
【0033】
(c)成分としては、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環アルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0034】
上記モノマー成分中の(c)成分の含有量は、上記モノマー成分の総量基準で10〜40質量%であり、好ましくは20〜40質量%である。(c)成分の含有量が10質量%未満であると、上記重合体のガラス転移温度が十分に上がらず、十分な接着力が得られにくくなる。また、40質量%を超えると、上記重合体のガラス転移温度が高くなりすぎて、接着が困難となる場合がある。
【0035】
上記モノマー成分は、(a)〜(c)成分以外のモノマーを含有してもよい。例えば、上記モノマー成分は、架橋性モノマーを含有してもよい。
【0036】
架橋性モノマーは、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合可能な反応基を、複数有するモノマーである。架橋性モノマーによれば、上記重合体に架橋構造が形成されるため、粘着剤層12の凝集性が一層向上する。
【0037】
架橋性モノマーとしては、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0038】
上記モノマー成分中の架橋性モノマーの含有量は、上記モノマー成分の総量基準で0.01〜2質量%であることが好ましく、0.02〜1質量%であることがより好ましい。
【0039】
上記モノマー成分には、粘着剤層12の特性を損なわない範囲で上記以外のモノマー((a)成分、(b)成分、(c)成分、架橋性モノマー以外のモノマー)を含有していてもよい。上記以外のモノマーの含有量は、上記モノマー成分の総量基準で15質量%以下が好ましい。
【0040】
上記以外のモノマーとしては、例えば、ベンジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等のビニルモノマー;が挙げられる。
【0041】
粘着剤層12が含有する重合体は、上記モノマー成分を重合開始剤の存在下に重合することで形成することができる。上記モノマー成分の重合方法は、特に制限はなく、通常のラジカル重合法、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等に従い重合すればよい。
【0042】
上記モノマー成分の重合は、熱重合開始剤を用いた熱重合方式で行うことができる。ここで、熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系化合物;が挙げられる。
【0043】
上記モノマー成分の重合はまた、光重合開始剤を用いた光重合方式で行うこともできる。具体的には、上記モノマー成分に対して紫外線(UV)等の活性光線を照射することにより、上記モノマー成分を重合させて、重合体を得ることができる。
【0044】
上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−[4−(メチルチオ)−メチル−1−フェニル]−2−モルホリノ プロパノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイル ジフェニルホスフィンオキサイド(例えば、「Lucirin(商標) TPO」、BASF社製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル ジエトキシホスフィンオキサイド(例えば、「Lucirin(商標) TPO−L」、BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン(例えば、「IRGACURE(商標) 819」、チバ・ジャパン製)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えば、「DAROCURE(商標) 1173」、チバ・ジャパン製)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例えば、「IRGACURE(商標) 2959」、チバ・ジャパン製)、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、「IRGACURE(商標) 184」、チバ・ジャパン製)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(例えば、「IRGACURE(商標) 907」、チバ・ジャパン製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン(例えば、「IRGACURE(商標) 369」、チバ・ジャパン製)、N,N’−オクタメチレンビスアクリジン(例えば、「ADEKA Optomer(商標) N1717」)、アクリロイルベンゾフェノン(例えば、「ダイセルUCB Ebercryl(商標) P36」)等を挙げることができる。
【0045】
粘着剤層12が含有する重合体は、架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、重合体が有する基と架橋構造を形成できる化合物が好ましい。このような化合物としては、多官能イソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。架橋剤は、重合体100質量部に対して、0.01〜3質量部添加することが好ましく、0.1〜2質量部添加することがより好ましい。
【0046】
粘着剤層12は、上記重合体以外に、粘着付与剤、酸化防止剤、UV吸収剤、フィラー、などの他の成分を含んでもよい。
【0047】
粘着剤層12における重合体の含有量は、粘着剤層12の総量基準で、70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。
【0048】
粘着剤層12の厚さは、平面性において問題とならない厚さであれば特に制限はなく、例えば、0.025〜1mmとすることができる。粘着剤層12の厚みが厚くなると、支持体10及び研磨材14に対する接着力は高くなるが、基板の被研磨面を研磨する際に研磨材層12の変形量が多くなり、はみ出しの原因となる場合がある。一方、粘着剤層12の厚みが薄くなると、研磨材14の粘着剤層12と接する面に凹凸がある場合に、粘着剤層12と研磨材14の間で十分な追従性と接着性が得られない場合がある。
【0049】
研磨材14は、粘着剤層12により支持体10と接合されており、粘着剤層12と接する面と反対側の面(研磨面)で被研磨物を研磨する。
【0050】
研磨材14は、被研磨物に応じて適宜選択することができる。例えば、研磨材14は、硬質性材料又は軟質性材料からなる公知の研磨材から構成されていてもよい。硬質性材料からなる研磨材としては、硬質ウレタン発泡体シート(例えば、ニッタ・ハース社製MHTMC−14A(W)、SupremeTMRN−H)等が挙げられる。また、軟質性材料からなる研磨材としては、例えば、ニッタ・ハース社製の研磨パッド(SUBATM400、MHTMS15A)、合成皮革スエード、ベロア等を挙げることができる。
【0051】
研磨材14は、被研磨物を研磨可能な研磨層のみから構成されていてもよいし、基材と基材上設けられた研磨面を構成する研磨層とを有していてもよい。
【0052】
基材は、一方面側に研磨層を保持し、他方面側で粘着剤層12と接する。基材の材質は特に限定されず、ポリマーフィルム、紙、、金属フィルム、バルカンファイバー、織布基材、不織布基材、これらの組合せ、これらの処理品等が挙げられる。基材は、被研磨物への追従性の観点からは、柔軟性を有する材料からなることが好ましい。
【0053】
研磨層は、例えば、砥粒及びその結合剤から構成することができる。
【0054】
結合剤は、砥粒を分散させるマトリックスであり、例えば、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、アクリレート化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリレート化ウレタン樹脂、アクリレート化エポキシ樹脂、これらの混合物等を含有する。
【0055】
砥粒の寸法は、砥粒の種類や研磨用途に依存して変化する。例えば、その寸法は、最終仕上げ研磨では、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.1μmであり、曲面形成のための粗研磨では、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。
【0056】
砥粒の例としては、ダイヤモンド、立方晶窒化ボロン、酸化セリウム、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、ゾルゲル酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、酸化クロム、シリカ、ジルコニア、アルミナジルコニア、酸化鉄、ガーネット、これらの混合物が挙げられる。これらのうち、粗研磨には、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、シリコンカーバイドが好ましく、仕上げ研磨にはシリカ、酸化アルミニウムが好ましい。
【0057】
再剥離性粘着剤層16は、支持体10の粘着剤層12が設けられた面と反対側の面に設けられており、研磨用構造体100を研磨装置の定盤等に貼り付けるための層である。
【0058】
研磨用構造体100は、研磨により研磨材14の磨耗が進行して研磨が困難となった場合に、研磨装置の定盤から取り外され、新たな研磨用構造体と交換される。ここで、研磨装置の定盤からの取り外しが可能となるように、研磨用構造体100と研磨装置の定盤との接合は、再剥離性を有する再剥離性粘着剤層16により行われる。そのため、再剥離性粘着剤層16は、研磨用構造体100の交換時に、のり残りなく研磨装置の定盤から剥離できるものであることが好ましい。
【0059】
再剥離性粘着剤層16を構成する粘着剤としては、特に限定されず、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等のいずれも使用可能である。例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸や2−ヒドロキシエチルメタクリレートのようなカルボキシル基や水酸基を有するモノマーと、のコポリマーを主成分とし、これに粘着剤付与樹脂を混合し、さらにイソシアネート系の架橋剤を含有させて粘着力を低く調整したものなどが使用できる。
【0060】
再剥離性粘着剤層16は、必ずしも研削液に接触せず、仮に研削液により膨潤しても被研磨体に接触し難い。そのため、再剥離性粘着剤層16には、必ずしも粘着剤層12のような研削液による膨潤を抑制する効果は必要ではない。
【0061】
再剥離性粘着剤層16の厚さは、特に限定されないが、10〜100μmとすることができる。また、他の態様においては、20〜50μmとすることもできる。
【0062】
第一実施形態に係る研磨用構造体100においては、粘着剤層12が、上記特定の重合体を含有するものであるため、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される。そのため、研磨用構造体100によれば、接着力の低下に起因した研磨材14と粘着剤層12との剥離や、粘着剤層12の膨潤に起因した粘着剤層12の剥れを防止することができ、長期間にわたり安定して研磨作業を行うことができる。
【0063】
次に、研磨材が、基材と該基材上に規則的に複数配置された砥粒及びその結合剤を含む立体要素とを有する、第二実施形態を説明する。
【0064】
図2は、第二実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線II−IIに沿った断面を示す模式断面図である。第二実施形態に係る研磨用構造体110は、支持体20と、該支持体20の一方面上に設けられた粘着剤層22と、該粘着剤層22によって支持体20と接合された研磨材24と、支持体10の他方面上に設けられた再剥離性粘着剤層26と、を備える。
【0065】
研磨用構造体110における支持体20、粘着剤層22、再剥離性粘着剤層26としては、それぞれ上述の研磨用構造体100における支持体10、粘着剤層12、再剥離性粘着剤層16と同じものが例示できる。
【0066】
研磨構造体110において、研磨材24は、基材24bと研磨層24aとを有し、研磨層24aには、規則的に複数の立体要素28が形成されている。ここで基板24b及び研磨層24aとしては、上記基板及び研磨層と同じものが例示できる。立体要素28の形状等は特に限定されないが、以下、好適な例について述べる。
【0067】
隣接する立体要素28は、平坦部領域29により互いに分離していることが好ましい。立体要素28が分離していることで、立体要素18間の溝を通じて、研削液が研磨構造体110の全面にわたって自由に流れることができる。研削液が自由に流れることで、一層良好な切削率が得られ、表面仕上げが一層改善される。
【0068】
立体要素28の数は、1cm当たり0.3個から約100個までの範囲とすることができる。立体要素28の好ましい形状の一つは、図2に示すように四角錐台である。立体要素28の高さ(平坦部領域29のなす面から、立体要素28の上面までの距離)は、例えば、約10〜約15000μmとすることができる。また、立体要素28の四角錐台の上面の面積は、1〜400mmとすることができる。
【0069】
基材24bは、接着剤層22と接合し、研磨層を支持する機能を果たす。基材24bとしては、被研磨物への追従性をより向上させる観点からは、可撓性を有する基材が好ましい。また、研磨用構造体110の耐久性を向上させる観点からは、基材24bは強固で耐久性を有するものであることが好ましい。
【0070】
基材24bの材質としては、例えば、ポリマーフィルム、紙、バルカナイズドファイバー、不織基材、布基材等を選択することができる。基材24bはポリマーフィルムであることが好ましい。ポリマーフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム等が例示され、これらのうちポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムは、強度、平滑性、耐熱性、耐水性、耐油性ともに優れた性質を有する。また、基材24bは、研磨層24aとの接着性を一層向上させるために、エチレン−アクリル酸共重合体の下塗りコーティング等の易接着処理が施されていてもよい。
【0071】
第二実施形態に係る研磨用構造体110においては、粘着剤層22が、上記特定の重合体を含有するものであるため、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される。そのため、研磨用構造体110によれば、接着力の低下に起因した研磨材24と粘着剤層22との剥離や、粘着剤層22の膨潤に起因した粘着剤層22の剥れを防止することができ、長期間にわたり安定して研磨作業を行うことができる。
【0072】
図3は、第三実施形態に係る研磨用構造体の(a)上面図、及び(b)切断線III−IIIに沿った断面を示す模式断面図である。第三実施形態に係る研磨用構造体120は、支持体30と、該支持体30の一方面上に設けられた粘着剤層32と、該粘着剤層32によって支持体30と接合された研磨材34と、支持体30の他方面上に設けられた再剥離性粘着剤層36と、を備える。
【0073】
研磨用構造体120における支持体30、粘着剤層32、再剥離性粘着剤層36としては、それぞれ上述の研磨用構造体100における支持体10、粘着剤層12、再剥離性粘着剤層16と同じものが例示できる。
【0074】
研磨用構造体120において、粘着剤層32上には複数の研磨材34が並設されている。各研磨材34は、それぞれ基材34bと研磨層34aを有し、研磨層34aには、規則的に複数の立体要素が形成されている。ここで基板34b及び研磨層34aとしては、上記基板及び研磨層と同じものが例示できる。
【0075】
研磨用構造体120においては、研磨材34が図3(b)に示すように溝38とともに提供される。このような溝38が存在すると、研磨時の圧力等によって、粘着剤層32が溝38へ流動してしまうおそれがある。ここで、粘着剤層32が含有する上記重合体のガラス転移温度を、−15〜10℃、より好ましくは−10〜10℃、さらに好ましくは−5〜5℃とすることで、このような溝38への粘着剤層32の流動を十分に防止することができる。
【0076】
第三実施形態に係る研磨用構造体120においては、粘着剤層32が、上記特定の重合体を含有するものであるため、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される。よって、この粘着剤層32の改良により、研磨用構造体120において、接着力の低下に起因した研磨材34と粘着剤層32との剥離や、粘着剤層32の膨潤に起因した粘着剤層32の剥れを防止することができ、長期間にわたり安定して研磨作業を行うことができるようになる。
【0077】
また、第三実施形態に係る研磨用構造体120においては、粘接着剤層32が含有する上記重合体のガラス転移温度を特定の範囲とすることで、上記効果に加えて、研磨材34の間に生じる溝38に、粘着剤層32が流動することを防止することができる。
【0078】
図4は、第二実施形態に係る研磨用構造体を用いた研磨方法を示す模式断面図である。図4において、支持体20、粘着剤層22、研磨材24及び再剥離性粘着剤層26を備える研磨用構造体110は、再剥離性粘着剤層26により、研磨装置の定盤40に接合されている。
【0079】
被研磨物50は、研磨用構造体110の研磨材24の研磨面(研磨層24a)と接するように配置され、当該研磨面(研磨層24a)によって研磨される。
【0080】
研磨に際しては、被研磨物50と研磨層24aとが接触する面に研削液を存在させることが好ましい。当該研削液により、研磨抵抗を低減することができ、研磨により生じる熱を除熱・冷却することができ、且つ、研磨屑が被研磨物50の研磨面に付着することを防ぐことができる。
【0081】
研削液としては、従来公知のものを使用できる。研削液は、通常、水を主成分とする溶液であり、該溶液には添加剤が添加されている。添加剤としては、界面活性剤、潤滑剤等が挙げられ、具体的には、キレート化合物、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールカルボン酸塩、アルキルアリールリン酸塩、アルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエステル、アルキルアミン、ポリアルキレンアミン、アルカノールアミン、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0082】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよく、親水性の高いものが好ましい。分子内に強親水性基を有する陰イオン性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤は好ましく、HLB8以上、特にHLB10以上(デイビスのHLB)のものが好ましい。ノニオン性界面活性剤においては、親水性の強いHLB8〜20、特にHLB10〜20(グリフィンのHLB)のものが好ましい。ここで、HLBの値は、陰イオン性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤においてはデイビス(Davis)法に基づき、ノニオン性界面活性剤についてはグリフィン(Griffin)法に基づき得たものである。
【0083】
なお、HLBとは、良く知られた計算値で、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値である。グリフィンのHLB(Griffin HLB)については、“Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311. Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5 (1954): 259”を参照することができる。デイビスのHLB(Davies HLB)については、“Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426−438”を参照することができる。
【0084】
なお、特に被研磨物50が半導体ウエハや無アルカリガラスである場合には、研削液にはアルカリ金属イオンやハロゲン化物イオンが含まれないことが望まれる。そのため、この場合には、界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤やアルカノールアミン塩陰イオン性界面活性剤等が好ましい。
【0085】
研削液中の添加剤の含有量は、好ましくは0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。界面活性剤の含有量が0.5質量%未満であるとその種類によっては付着防止効果が不十分となる場合がある。また、場合により、20質量%を越えると研削液が粘性になり研磨異常が発生するおそれがある。
【0086】
研磨用構造体110は、粘着剤層22が、上記特定の重合体を含有するものであるため、研削液に浸漬しても十分な接着力が維持され、且つ研削液による膨潤が十分に抑制される。そのため、研磨用構造体110を用いた場合、研削液の存在下に研磨を行った場合でも、接着力の低下に起因した研磨材24と粘着剤層22との剥離や、粘着剤層22の膨潤に起因した粘着剤層22の剥れが十分に防止され、長期間にわたり安定して研磨作業を行うことができる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1〜3において円筒状の研磨用構造体を例示したが、本発明の研磨用構造体の形状はこれに限定されるものではない。例えば、研磨用構造体は円柱状であってもよく、多角柱状であってもよい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0089】
まず、粘着シートの貯蔵弾性率及びガラス転移温度Tg(動的粘弾性特性)の測定方法、酸価の測定方法、接着力の測定方法、浸漬試験方法、研削液吸収率の測定方法を以下に示す。
【0090】
<貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)(動的粘弾性特性)の測定>
サンプルの作成:下記製造例1〜11で作製した粘着シートから、剥離フィルムを除去し、16枚積層した約3mm厚のシートを7.9mmφの抜き刃で打ち抜いて、円柱状のサンプルを得た。
【0091】
測定:動的粘弾性特性は、Rheometric Scientific 社製 Advanced Rheometric Expansion System(ARES)を用いた。サンプル固定用じ具は、7.9mmφのパラレルプレートを用い、上記方法で作成した円柱状のサンプルをプレートの間に配し、テンションを調整した。動的粘弾性特性の測定は空気中で行い、せん断モード、周波数1.0Hzおいて、−50〜200℃で昇温速度5℃/分で測定し、貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G”の比であるtanδ(損失正接)がピークとなる温度をガラス転移温度とした。
【0092】
<接着力の測定>
下記実施例及び比較例で得られた研磨用構造体について、ぞれぞれ25×150mmにカッターでカットし、引張試験機AG−IS(島津製作所製:京都府中央区)にて、5mm/minの剥離速度でポリカーボネートフィルムと研磨パッドを引張り、最大強度を記録し、粘着シートの剥離力とした。
【0093】
<浸漬試験>
下記実施例及び比較例で得られた研磨用構造体について、50℃の研削液(SabrelubeTM 9016 Chemetal Oakite社製の重量濃度10%水溶液)に7日間および14日間浸漬し、純水でリンスし、30分後に接着力を測定した。接着力の測定は上記と同じ方法で行った。なお、十分な接着力を出すためには、少なくとも初期、14日浸漬後とも20N/25mm以上あることが望ましい。
【0094】
<研削液吸収率の測定>
下記製造例で得られた粘着シートを、25×70mmにカッターでカットし、粘着シートの両面に存在する剥離フィルムのうち一方の剥離フィルムを剥がした後、重量を測定した。セイバールーブ(Sabrelube)(商標)9016 10%水溶液に23℃で10日間し浸漬した。純水でリンス、ついで圧空で水分を飛ばし、30分後に重量を測定した。膨潤により被研磨物等に接触しないようにするためには、浸漬後の増加率が好ましくは10%より好ましくは5%未満であることが望まれる。表2に示す結果から、研削液吸収率は粘着剤のアクリル酸量や架橋性モノマー量により変化することがわかる。
【0095】
(製造例1:粘着シートの作製)
2−エチルヘキシルアクリレート(日本触媒株式会社製:東京都千代田区)70質量部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:大阪府大阪市)25質量部、アクリル酸(東亜合成株式会社:東京港区)5質量部、及び、光重合開始剤としてイルガキュア651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、BASFジャパン株式会社:東京都港区)0.04質量部を、ガラス容器中でよく混合し、窒素ガスにて溶存酸素を置換した後、低圧水銀ランプ(Sylyania TMF20T12B:OSRAMSYLVANIA Inc.米国マサチューセッツ州)で数分間紫外線を照射して部分的に重合させ、粘度2500cP程度の粘性液体を得た。得られた粘性液体に架橋剤としてHDDA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ライトアクリレートTM1.6HX−A:共栄社化学株式会社:大阪府大阪市)0.06質量部、追加の重合開始剤(イルガキュア651:BASFジャパン株式会社:東京都港区)0.15質量部を加えて、十分に攪拌した。この混合物を剥離処理した50μm厚のポリエステルフィルム(セラピールMIB(T):東レフィルム加工株式会社:東京都港区)の上に250μm厚になるよう塗工し、さらに上記フィルムを被せ、両面から低圧水銀ランプで2000mJ/cm照射し、粘着シートを得た。
【0096】
(製造例2〜11:粘着シートの作製)
各モノマーの配合比(質量比)を表1に記載のとおり変更したこと以外は、製造例1と同様にして粘着シートをそれぞれ得た。
【0097】
なお、表1中、「2EHA」は2−エチルヘキシルアクリレート(AEH:日本触媒株式会社製:東京都港区)を示し、「IOA」はイソオクチルアクリレート(3M社製:米国ミネソタ州)を示し、「AA」はアクリル酸を示し、「CHA」はシクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:大阪府大阪市)を示し、「IBXA」はイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:大阪府大阪市)を示し、「BZA」はベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製:大阪府大阪市)を示し、「BA」はブチルアクリレート(三菱化学株式会社製:東京港区)を示し、「HDDA」は1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(ライトアクリレートTM1.6HX−A:共栄社化学株式会社:大阪府大阪市)を示し、「IRG651」はイルガキュア651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、BASFジャパン株式会社:東京都港区)を示す。
【0098】
【表1】

【0099】
(実施例1)
製造例1で得られた粘着シートを1200×120mmにカッターでカットし、粘着シートの両面に存在する剥離フィルムのうち一方の剥離フィルムを剥がした後、寸法1200mm×1200mm×0.75mmのポリカーボネートフィルム(GE社製:米国コネチカット州)に貼り付けた。次いで、透明粘着シートにおける残りの剥離フィルムを剥がし、これをロールから1200mmに切断された研磨パッド(住友スリーエム製トライザクトタイル DT4M AA1HD:250mm幅×50mm巻:住友スリーエム株式会社;東京都世田谷区)にゴムローラーを用いて貼りつけた。その後、ラミネーター(ARCTICEAGLE1600:日本ジー・ビー・シー株式会社;東京都中野区)にて、80℃、0.5MPaにてラミネート処理を行って、研磨用構造体を得た。
【0100】
(実施例2〜7)
製造例1で得られた粘着シートにかえて、製造例2〜7で得られた粘着シートをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用構造体を得た。
【0101】
(比較例1〜4)
製造例1で得られた粘着シートにかえて、製造例8〜11で得られた粘着シートをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用構造体を得た。
【0102】
実施例1〜7、比較例1〜4について、それぞれ上記の方法で、粘着シートの貯蔵弾性率及びガラス転移温度Tg(動的粘弾性特性)の測定、酸価の測定、接着力の測定、浸漬試験、研削液吸収率の測定、を行った。評価結果は、表2に示すとおりであった。
【0103】
【表2】

【符号の説明】
【0104】
10,20,30…支持体、12,22,32…粘着剤層、14,24,34…研磨材、16,26,36…再剥離性粘着剤層、28…立体要素、29…平坦部領域、40…定盤、50…被研磨物、100,110,120…研磨用構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、研磨材と、これらを接合する粘着剤層と、を備える研磨用構造体であって、
前記粘着剤層は、第一のモノマー58〜85質量%、第二のモノマー2〜7質量%及び第三のモノマー10〜40質量%を含むモノマーの重合体を含有し、
前記第一のモノマーは、ガラス転移温度が0℃以下のホモポリマーを与える、炭素数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記第二のモノマーは、ガラス転移温度が50℃以上のホモポリマーを与える、極性モノマーであり、
前記第三のモノマーは、ガラス転移温度が10℃以上のホモポリマーを与える、炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、研磨用構造体。
【請求項2】
前記重合体のガラス転移温度が、−15〜10℃である、請求項1に記載の研磨用構造体。
【請求項3】
前記研磨材が、基材と、該基材上に規則的に複数配置された砥粒及びその結合剤を含む立体要素と、を有する、請求項1又は2に記載の研磨用構造体。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みが、50〜500μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用構造体。
【請求項5】
前記支持体の他方面上に設けられた再剥離性粘着剤層をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−809(P2013−809A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131587(P2011−131587)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】