説明

研磨用治具

【解決手段】 平板状の被研磨体を研磨する際に被研磨体を保持する研磨治具において、カーボン繊維を含む樹脂材料からなる研磨治具。
【効果】 研磨時治具として、カーボン繊維を含む樹脂材料を用いることで、被研磨体の保持能力にすぐれ、研磨治具の寿命を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平板状の材料の表面平滑性を得るために実施される研磨作業に利用される、被研磨体を保持する治具に関する。
【0002】
【従来技術】半導体用のシリコンウェーハやハードディスクや光磁気ディスク用のガラス基板、半導体の回路形成用フォトマスク、ハードディスクなどの金属基板などの平板状の基板の表面平滑性を向上させる目的で、表面研磨が実施されている。その多くは、被研磨体を保持することになるが、被研磨体の大きさにあわせた保持用の治具を使用する。従来これらの治具にはガラス繊維を含む樹脂材料が利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらの被研磨体は、通常1mm程度以上有る場合には、保持用研磨治具の厚みも1mm程度でよく、ガラス繊維強化樹脂材料にて対応できるが、近年これら被研磨体の厚みが薄くなり、したがって保持用研磨治具の厚みが次第に薄くなる傾向にある。しかしながら、ガラス繊維強化樹脂材料ではある程度の強度は持つものの生産性を考慮する大きさを確保することができない欠点を有していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を解決し、高強度を有するカーボン繊維を含有する樹脂材料を使用することにより、1mm以下の薄さにおいても、300X300mm以上の大きさにおいても、実質的な表面平行度を維持し、被研磨体の研磨時の保持性を確保することを目的とする。
【0005】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を提案するに至ったのである。即ち、この問題はカーボン繊維を編み上げたカーボンクロスに樹脂を含浸させたものを厚みに合わせて積み上げ所定の厚みに成形したものを研磨用治具に使用することにより1mm以下の厚みの被研磨体を被研磨体より幾分薄い厚みの成形体を被研磨体の大きさに合わせて整形し、研磨治具とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の具体的構成について以下に説明する。本発明のカーボン繊維含有の樹脂成形体の製造にいおいては、まずカーボン繊維を編み上げたクロス状のものにエポキシ樹脂などの樹脂材料を含浸させたプリプレグを調製する。本発明のカーボン繊維は、1本の繊維径は7μ程度であり、これを1000本程度まとめて1つのトウとしている。このトウを縦横に編み上げたクロス状のものをコア材として、次にこれに樹脂材料を含浸する。この樹脂材料としては、エポキシ樹脂が一般的であるが、これに類似する樹脂であればその種類は問わない。その他の樹脂材料としては、例えばポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、等である。
【0007】次にこのプリプレグを所定の厚みになるように所定の厚みのものを組み合わせて、最終的な厚みとなる成形体とする。成形には熱プレスによる。この成形体は厚みが均一であり、平行度の高い板状の材料である。これを研磨治具として使用するには、被研磨体の大きさを考慮した切削、あるいは金型による形状加工を施す必要がある。切削加工は、被研磨体の形状精度に合わせ、精度の高い加工が必要であり、一般的には数値制御の加工機が利用される。同様に金型加工の場合にも、同程度の加工精度が必要となる。
【0008】被研磨体が円板状であれば円形に、角板状であれば方形に、それぞれ打ち抜く。この打ち抜かれたところに被研磨体を保持する。保持形態を安定化するために必要に応じて都度打ち抜かれた部分をヤスリ等で微調整を実施し、保持効果を向上させる。また、被研磨体の研磨後の目的厚みに合わせて、研磨治具の厚みを設定することになる。研磨治具の厚みは、被研磨体の目的厚みに対して5乃至20%程度薄く設定することが望ましい。
【0009】
【実施例】厚さ0.8mm のハードディスク用のガラス基板を研磨するため、カーボン繊維をクロス状にしたカーボンクロスにエポキシ樹脂を含浸したプリプレグ( 厚さ0.2mm)を3 枚重ね、熱プレスにより、厚さ0.58mmの板状の樹脂材料を成形する。これに、被研磨体であるガラスを取り付けるための孔を明ける。この研磨治具は、その400mm φの円形形状を持ち、その曲げ弾性率は6000Kg/mm2であった。この治具には被研磨体であるガラス基板( 大きさ約80mmφ)を保持するために、専用の孔を明ける。この時、保持用の孔はNC制御の切削加工にて高精度に明けられた。本研磨治具にガラス基板を取り付け後、回転式の研磨装置にてガラス基板の両面を同時に研磨した。その結果、目的の表面の平滑性が得られた。この作業を繰り返し実施し、本研磨作業の作業性及び研磨治具の寿命を評価した。
【0010】〔比較例〕実施例と同様の試験をカーボンクロスではなく、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したプリプレグ(厚さ0.2 mm) を3 枚重ね、プレスにより、厚さ0.58mmの板状の樹脂材料を成形したものにて比較検討した。本樹脂材料の曲げ弾性率は2300Kg/mm2であった。
【0011】
【発明の効果】実施例に示したカーホ゛ ンクロス を含む樹脂材料は表面平滑性において目的のレヘ゛ を達成した。また、その寿命においても100時間の連続使用においても損傷することなく、被研磨体であるガラス基板の研磨を実施することができた。一方、比較例での試験では、被研磨体の保持能力が小さく、研磨治具自体の撓みがあり、研磨時に研磨装置との直接接触や研磨材の付着による損傷も生じるため、10時間の使用において実質的に使用できないレベルに変化してしまうことが分かった。本発明は被研磨体の厚みを上限とする厚みの研磨治具において、カーボンクロスを含む樹脂材料を用いることで、被研磨体の保持能力にすぐれ、実質的に従来の研磨治具の寿命を著しく改善することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 平板状の被研磨体を研磨する際に被研磨体を保持する研磨治具において、カーボン繊維を含むことを特徴とする樹脂材料からなる研磨治具。

【公開番号】特開平10−58319
【公開日】平成10年(1998)3月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−222364
【出願日】平成8年(1996)8月23日
【出願人】(000003126)三井東圧化学株式会社 (49)
【出願人】(591056732)八千代マイクロサイエンス株式会社 (3)