説明

研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法

【課題】ポリシリコンを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物は、モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有するアニオン界面活性剤及び砥粒を含有し、pHが9〜12である。研磨用組成物中のアニオン界面活性剤がポリオキシエチレン基を有する場合、そのポリオキシエチレン基のオキシエチレン単位の繰り返し数は2〜8個であることが好ましい。研磨用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤としては、リン酸基、カルボキシ基又はスルホ基をさらに有しているものを使用することができる。研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は20〜500ppmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコンを研磨する用途において主に使用される研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置製造工程において、基板の上に形成されたポリシリコン膜の一部を除去するための研磨が行われることがある。このような研磨では、ポリシリコン除去速度が大きいことが望ましいのはもちろんであるが、研磨後のポリシリコン膜表面の平坦性を低下させるディッシングをできるだけ発生させないことも重要である。ディッシングとは、除去されざるべきポリシリコン膜の部分が研磨除去されることにより研磨後のポリシリコン膜表面にへこみが生じる現象をいう。従来知られている研磨用組成物の多くは、ポリシリコン除去速度及びディッシングに関する要求性能を十分に満足しておらず、実用に耐えるものではない。
【0003】
本発明に関連する先行技術文献としては以下の特許文献1,2を挙げることができる。
【特許文献1】特開平10−168431号公報
【特許文献2】特開平4−291723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、ポリシリコンを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有するアニオン界面活性剤及び砥粒を含有し、pHが9〜12である研磨用組成物が提供される。研磨用組成物中のアニオン界面活性剤がポリオキシエチレン基を有する場合、そのポリオキシエチレン基のオキシエチレン単位の繰り返し数は2〜8個であることが好ましい。研磨用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤としては、リン酸基、カルボキシ基又はスルホ基をさらに有しているものを使用することができる。研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は20〜500ppmであることが好ましい。研磨用組成物中に含まれる砥粒の平均一次粒子径は10〜90nmであることが好ましい。
【0006】
また、本発明の別の態様では、上記の研磨用組成物を用いて、ポリシリコンを研磨する研磨方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリシリコンを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、アニオン界面活性剤及び砥粒を、必要に応じてpH調整剤とともに、水に混合することにより、pHが9〜12の範囲内になるようにして製造される。従って、研磨用組成物は、アニオン界面活性剤、砥粒及び水を含有し、必要に応じてpH調整剤をさらに含有する。
【0009】
本実施形態の研磨用組成物は、ポリシリコンを研磨する用途での使用、より具体的には、例えば単結晶シリコン基板などの基板の上に形成されたポリシリコン膜の一部を除去するための研磨での使用を主に想定したものである。
【0010】
研磨用組成物中に含まれる前記アニオン界面活性剤は、研磨用組成物を用いて研磨された後のポリシリコン膜表面のディッシングの発生を実用に足るレベルにまで抑制するためには、モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有していることが必須である。そのようなアニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸が挙げられる。すなわち、リン酸基、カルボキシ基又はスルホ基をさらに有するアニオン界面活性剤を使用することができる。研磨用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤がポリオキシエチレン基を有する場合、そのポリオキシエチレン基のオキシエチレン単位の繰り返し数は2〜8個であることが好ましい。
【0011】
研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は20ppm以上であることが好ましい。アニオン界面活性剤の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨された後のポリシリコン膜表面のディッシングの発生は抑制される。この点、研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量が20ppm以上であれば、研磨後のポリシリコン膜表面のディッシングの発生を実用上特に好適なレベルにまで抑制することができる。
【0012】
また、研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は500ppm以下であることが好ましい。アニオン界面活性剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度は増大する。この点、研磨用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量が500ppm以下であれば、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度に関して実用上特に好適なレベルが得られる。
【0013】
研磨用組成物中に含まれる前記砥粒としては、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ及び焼成粉砕シリカが挙げられるが、その中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカを用いた場合には、他の砥粒を使用した場合に比べて、研磨用組成物を用いて研磨された後のポリシリコン膜表面のディッシングの発生が大きく抑制される。
【0014】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度は増大する。この点、研磨用組成物中の砥粒の含有量が0.1質量%以上、さらに言えば0.3質量%以上、もっと言えば1.0質量%以上であれば、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる。
【0015】
また、研磨用組成物中の砥粒の含有量は15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物中での砥粒の分散性は向上する。この点、研磨用組成物中の砥粒の含有量が15質量%以下、さらに言えば10質量%以下、もっと言えば5.0質量%以下であれば、研磨用組成物中での砥粒の分散性を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる。
【0016】
研磨用組成物中に含まれる砥粒の平均一次粒子径は3nm以上であることが好ましく、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度は増大する。この点、砥粒の平均一次粒子径が3nm以上、さらに言えば5nm以上、もっと言えば10nm以上であれば、研磨用組成物によるポリシリコン除去速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる。
【0017】
また、研磨用組成物中に含まれる砥粒の平均一次粒子径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物中での砥粒の分散性は向上する。この点、砥粒の平均一次粒子径が200nm以下、さらに言えば150nm以下、もっと言えば90nm以下であれば、研磨用組成物中での砥粒の分散性を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる。
【0018】
研磨用組成物中に必要に応じて含まれる前記pH調整剤は特に限定されるものではなく、研磨用組成物のpHを9〜12の間の所望の値にするために適宜の量のいずれのアルカリを使用することも可能である。pH調整剤として使用可能なアルカリの具体例としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルアミン及びエタノールアミンが挙げられる。
【0019】
本実施形態によれば以下の作用効果を得ることができる。
本実施形態の研磨用組成物を用いてポリシリコン膜を研磨した場合、高いポリシリコン除去速度を得ることできると同時に、研磨後のポリシリコン膜表面のディッシングの発生を強く抑制することができる。従って、本実施形態の研磨用組成物は、ポリシリコンを研磨する用途、特に、基板の上に形成されたポリシリコン膜の一部を除去するための研磨で好適に使用することができる。本実施形態の研磨用組成物を用いることによって上記したような利点が得られる理由は詳細不明であるが、研磨用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤によってポリシリコン膜表面が改質されることによりもたらされるものと推察される。
【0020】
前記実施形態は、次のようにして変更されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は二種類以上のアニオン界面活性剤を含有してもよい。より具体的には、モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有するアニオン界面活性剤を二種類以上含有してもよい。
【0021】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は二種類以上の砥粒を含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には、必要に応じて、キレート剤や水溶性高分子、アニオン界面活性剤以外の界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤などの添加剤を添加してもよい。
【0022】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することによって調製されてもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
実施例1〜23及び比較例1,2では、砥粒にpH調整剤及び水を添加し、さらにアニオン界面活性剤を添加して研磨用組成物を調製した。ただし、ここで使用したアニオン界面活性剤は、モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有する特定のアニオン界面活性剤である。比較例3〜6では、砥粒にpH調整剤及び水を添加し、さらに特定のアニオン界面活性剤に代わる化合物を添加して研磨用組成物を調製した。各例の研磨用組成物中のアニオン界面活性剤又はそれに代わる化合物と砥粒の詳細、並びに各例の研磨用組成物のpHを測定した結果を表1に示す。なお、各例において使用したpH調整剤は水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0024】
表1中、
A1は、平均一次粒子径が10nmであるコロイダルシリカ、
A2は、平均一次粒子径が30nmであるコロイダルシリカ、
A3は、平均一次粒子径が70nmであるコロイダルシリカ、
A4は、平均一次粒子径が90nmであるコロイダルシリカ、
A5は、平均一次粒子径が130nmであるコロイダルシリカ、
B1は、下記の構造式(1)で表わされるジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(m=6)、
B2は、下記の構造式(1)で表わされるジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(m=2)
B3は、下記の構造式(1)で表わされるジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(m=4)
C1は、下記の構造式(2)で表わされるモノポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸(m=3)、
C2は、下記の構造式(2)で表わされるモノポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸(m=7)、
D1は、下記の構造式(3)で表わされるトリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(m=6)、
D2は、下記の構造式(3)で表わされるトリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(m=8)、
Eは、下記の構造式(4)で表わされるモノポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸(m=3)、
Fは、下記の構造式(5)で表わされる平均分子量約120万のヒドロキシエチルセルロース(m=2〜3)、
Gは、下記の構造式(6)で表わされるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(m1+m2=25、n=30)、
Hは、下記の構造式(7)で表わされるアルキル硫酸塩、
Jは、下記の構造式(8)で表わされるアルキルベンゼンスルホン酸を表す。
【0025】
【化1】

表1の“ポリシリコン除去速度”欄には、各例の研磨用組成物を用いて直径200mmのポリシリコン膜ブランケットウエハの表面を表2に示す条件で研磨したときのポリシリコン除去速度を示す。ポリシリコン除去速度の値は、大日本スクリーン製造株式会社の光干渉式膜厚測定装置“ラムダエースVM−2030”を使用して測定される研磨前後の各基板の厚さの差を研磨時間(60秒)で除することにより求めた。
【0026】
表1の“ディッシング量”欄には、各例の研磨用組成物を用いて直径200mmのポリシリコン膜パターンウエハの表面を表2に示す条件で研磨した後に測定されるディッシング量(ディッシングによるへこみ部分の深さ)を示す。ポリシリコン膜パターンウエハの研磨は、エンドポイントシグナルが検出された後、エンドポイントシグナルが検出されるまでの研磨時間の40%の時間に相当する時間だけさらに継続の後に終了させた。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

表1に示すように、実施例1〜24の研磨用組成物によれば、ポリシリコン除去速度に関して500Å/分以上という実用に足るレベルの値が得られ、ディッシング量に関しても700Å以下という実用に足るレベルの値が得られた。これに対し、pHが9〜12の範囲から外れる比較例1,2の研磨用組成物では、ポリシリコン除去速度に関して500Å/分未満と実用に足るレベルの値が得られなかった。また、特定のアニオン界面活性剤を含有していない比較例3〜6の研磨用組成物では、ディッシング量に関して700Å超と実用に足るレベルの値が得られなかった。
【0029】
前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
研磨用組成物中の前記砥粒はコロイダルシリカである請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【0030】
研磨用組成物中の前記砥粒の含有量は1.0〜5.0質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノオキシエチレン基あるいはポリオキシエチレン基を有するアニオン界面活性剤及び砥粒を含有し、pHが9〜12であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記アニオン界面活性剤は、オキシエチレン単位の繰り返し数が2〜8個のポリオキシエチレン基を有する請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤は、リン酸基、カルボキシ基又はスルホ基をさらに有する請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
研磨用組成物中の前記アニオン界面活性剤の含有量は20〜500ppmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記砥粒の平均一次粒子径は10〜90nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、ポリシリコンを研磨することを特徴とする研磨方法。

【公開番号】特開2009−187984(P2009−187984A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23226(P2008−23226)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】