説明

研磨用組成物

【課題】ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途において好適に使用可能な研磨用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物は、シリカ砥粒とヨウ素化合物を含有する。研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位は負の値を示す。シリカ砥粒の平均一次粒子径は30nm以下であり、研磨用組成物のpHは4以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置の製造時にポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造の現場では近年、ポリシリコン膜と窒化ケイ素膜を同時に研磨する必要に迫られている。しかしながら、ポリシリコン膜と窒化ケイ素膜の両方を二酸化ケイ素膜に比べて十分に高い研磨速度で研磨することができる研磨用組成物はこれまで知られていない。
【0003】
従来、窒化ケイ素膜の研磨にはpHが酸性の研磨用組成物が使用されている。例えば特許文献1には、リン酸、硝酸又はフッ酸を添加することによりpHが1〜5に設定された研磨用組成物が開示されている。一方、ポリシリコン膜の研磨にはpHがアルカリ性の研磨用組成物が使用されている(例えば特許文献2参照)
【特許文献1】特開2004−214667号公報
【特許文献2】特開平7−249600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途において好適に使用可能な研磨用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリカ砥粒とヨウ素化合物を含有し、研磨用組成物中での前記シリカ砥粒のゼータ電位は負の値を示し、前記シリカ砥粒の平均一次粒子径は30nm以下であり、研磨用組成物のpHは4以下である研磨用組成物研磨用組成物を提供する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記シリカ砥粒が、アルミニウム粒子を表面に担持してなる請求項1に記載の研磨用組成物を提供する。
請求項3に記載の発明は、前記ヨウ素化合物が過ヨウ素酸である請求項1又は2に記載の研磨用組成物を提供する。
【0007】
請求項4に記載の発明は、研磨用組成物中の前記シリカ砥粒の含有量が8質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を提供する。
請求項5に記載の発明は、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に使用される請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途において好適に使用可能な研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、シリカ砥粒とヨウ素化合物と水を混合して得られるものであり、シリカ砥粒、ヨウ素化合物及び水を含有し、pHは4以下である。この研磨用組成物は、例えば、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に使用される。
【0010】
研磨用組成物中のシリカ砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する役割を担う。
研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ及び焼成粉砕シリカのいずれであってもよいが、その中でも好ましくはコロイダルシリカである。研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒がコロイダルシリカである場合には、研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨したときに研磨対象物に発生する表面欠陥が減少する。
【0011】
研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒の平均一次粒子径が3nm未満の場合、さらに言えば4nm未満の場合、もっと言えば5nm未満の場合には、研磨用組成物による研磨速度が実用に不足する虞がある。従って、実用に足る研磨速度を得るためには、研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒の平均一次粒子径は3nm以上であることが好ましく、より好ましくは4nm以上、最も好ましくは5nm以上である。
【0012】
一方、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得るためには、研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒の平均一次粒子径は30nm以下であることが必須である。というのは、30nmを超える場合には、ポリシリコン膜の研磨速度が低くなるからである。ただし、研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒の平均一次粒子径が25nmを超える場合、さらに言えば20nmを超える場合には、たとえ30nm以下であっても、ポリシリコン膜の研磨速度がやや低くなる傾向がある。従って、研磨用組成物に含まれるシリカ砥粒の平均一次粒子径は25nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下である。なお、シリカ砥粒の平均一次粒子径は、BET法で測定されるシリカ砥粒の比表面積と、シリカ砥粒の粒子密度とに基づいて算出されるものである。
【0013】
研磨用組成物中のシリカ砥粒の含有量が0.1質量%未満の場合、さらに言えば0.3質量%未満の場合、もっと言えば0.5質量%未満の場合には、研磨用組成物による研磨速度が実用に不足する虞がある。従って、実用に足る研磨速度を得るためには、研磨用組成物中のシリカ砥粒の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上である。
【0014】
一方、研磨用組成物中のシリカ砥粒の含有量が15質量%を超える場合、さらに言えば10質量%を超える場合、もっと言えば8質量%を超える場合には、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度に比べて二酸化ケイ素膜の研磨速度が大きく上昇する虞がある。二酸化ケイ素膜の研磨速度が高い研磨用組成物は、半導体装置の製造時にポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途には不適である。従って、研磨用組成物中のシリカ砥粒の含有量は15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは8質量%以下である。
【0015】
半導体装置の製造時にポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得るためには、研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位は負の値を示すことが必須である。というのは、ゼータ電位がゼロ又は正の値を示す場合には、窒化ケイ素膜の研磨速度が低くなったり、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜の研磨速度よりも二酸化ケイ素膜の研磨速度が高くなったりするからである。ただし、研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位が−10mVよりも高い場合、さらに言えば−15mVよりも高い場合には、たとえ負の値であっても、窒化ケイ素膜の研磨速度がやや低くなる傾向や二酸化ケイ素膜の研磨速度がやや高くなる傾向がある。従って、研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位は−10mV以下であることが好ましく、より好ましくは−15mV以下である。
【0016】
pHが4以下である本実施形態の研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位を負の値とするために、本実施形態ではシリカ砥粒の表面にアルミニウム粒子を担持させている。当然ながらアルミニウム粒子の粒子径はシリカ砥粒の粒子径よりも小さい。
【0017】
研磨用組成物中のヨウ素化合物は、研磨用組成物によるポリシリコン膜の研磨速度を向上する働きを有する。
研磨用組成物に含まれるヨウ素化合物は、オルト過ヨウ素酸(HIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、メソ過ヨウ素酸(HIO)、2オルト過ヨウ素酸(H11)及び2メソ過ヨウ素酸(H)のいずれであってもよいが、その中でも好ましくはオルト過ヨウ素酸である。オルト過ヨウ素酸は入手が比較的容易であるうえに、研磨用組成物に含まれるヨウ素化合物がオルト過ヨウ素酸である場合には安定な研磨用組成物が得られやすい。
【0018】
ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得るためには、研磨用組成物中のヨウ素化合物の含有量は、研磨用組成物のpHが4以下となる量であることが必須である。研磨用組成物のpHが4となる量よりも研磨用組成物中のヨウ素化合物の含有量が少ない場合、すなわち、研磨用組成物のpHが4を超える場合には、ポリシリコン膜の研磨速度が低くなる。ただし、研磨用組成物のpHが3を超える場合、さらに言えば2.5を超える場合には、たとえ4以下であっても、ポリシリコン膜の研磨速度がやや低下する虞がある。従って、研磨用組成物のpHは3以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下である。すなわち、研磨用組成物中のヨウ素化合物の含有量は、研磨用組成物のpHが3以下となる量であることが好ましく、より好ましくは研磨用組成物のpHが2.5以下となる量である。
【0019】
一方、研磨用組成物のpHが1未満の場合、さらに言えば研磨用組成物のpHが1.5未満の場合には、研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位が高くなり、その結果、窒化ケイ素膜の研磨速度が低くなったり、二酸化ケイ素膜の研磨速度が高くなったりする虞がある。従って、研磨用組成物のpHは1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。すなわち、研磨用組成物中のヨウ素化合物の含有量は、研磨用組成物のpHが1以上となる量であることが好ましく、より好ましくは研磨用組成物のpHが1.5以上となる量である。
【0020】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
・ 研磨用組成物中でのシリカ砥粒のゼータ電位が負の値を示すため、本実施形態の研磨用組成物は二酸化ケイ素膜に比べて十分に高い研磨速度で窒化ケイ素膜を研磨する能力を有する。また、研磨用組成物中のヨウ素化合物の含有量が研磨用組成物のpHが4以下となる量であるため、本実施形態の研磨用組成物は二酸化ケイ素膜に比べて十分に高い研磨速度でポリシリコン膜を研磨する能力を有する。従って、本実施形態の研磨用組成物は、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する。
【0021】
・ 本実施形態では、ヨウ素化合物を添加することにより研磨用組成物のpHを4以下に設定している。ヨウ素化合物の代わりに、ヨウ素化合物と構造の類似する塩素化合物(例えば過塩素酸)を使用しても研磨用組成物のpHを4以下に設定することは可能であるが、その場合、ポリシリコン膜の研磨速度が低くなり、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得ることはできない。同様に、ヨウ素化合物の代わりにリン酸や硝酸、酢酸などの酸を使用した場合も、ポリシリコン膜の研磨速度が低くなり、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得ることはできない。それに対し、ヨウ素化合物を使用して研磨用組成物のpHを4以下に設定した場合には、ポリシリコン膜の研磨速度が高くなり、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に適する研磨用組成物を得ることができる。
【0022】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には必要に応じてキレート剤、水溶性高分子、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。
【0023】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜以外の研磨対象物を研磨する用途で使用されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は研磨用組成物の原液を水で希釈することによって調製されてもよい。原液は研磨用組成物に比べて体積が小さいので貯蔵や輸送に有利である。
【0024】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
水に砥粒を必要に応じて混合し、さらにpHが所望の値となるようにヨウ素化合物又はそれに代わる化合物を必要に応じて混合することにより実施例1〜6及び比較例1〜17の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物中の砥粒及びヨウ素化合物又はそれに代わる化合物の詳細、研磨用組成物のpH並びに研磨用組成物中での砥粒のゼータ電位は表1に示すとおりである。なお、ゼータ電位の測定には、Dispersion Technology社の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置DT−1200を使用した。
【0025】
表1中、“SiO2(12)”は平均一次粒子径が12nmのコロイダルシリカを表し、“SiO2(8)”は平均一次粒子径が8nmのコロイダルシリカを表し、“SiO2(12)*”はアルミニウム粒子が表面に担持された平均一次粒子径が12nmのコロイダルシリカを表し、“SiO2(34)*”はアルミニウム粒子が表面に担持された平均一次粒子径が34nmのコロイダルシリカを表し、“Al3(25)”は平均一次粒子径が25nmのアルミナゾルを表し、“Al3(90)”は平均一次粒子径が90nmのアルミナゾルを表し、“HIO”はオルト過ヨウ素酸を表し、“NH”はアンモニアを表し、“HPO”はリン酸を表し、“HClO”はオルト過塩素酸を表し、“HNO”は硝酸を表し、HSOは硫酸を表す。
【0026】
実施例1〜6及び比較例1〜17の各研磨用組成物を用いて、ポリシリコン膜付き基板、窒化ケイ素膜付き基板及び二酸化ケイ素膜(TEOS膜)付き基板を表2に示す条件で研磨した。各基板のサイズは縦32mm×横32mmである。
【0027】
表1の“研磨速度”欄には、研磨前後の各基板の厚さの差を研磨時間で除することにより求められるポリシリコン膜の研磨速度、窒化ケイ素膜の研磨速度及び二酸化ケイ素膜の研磨速度を示す。基板の厚さの測定には、大日本スクリーン製造株式会社の光干渉式膜厚測定装置ラムダエースVM−2030を使用した。
【0028】
表1の“選択比”欄には、二酸化ケイ素膜の研磨速度に対するポリシリコン膜の研磨速度の比率及び二酸化ケイ素膜の研磨速度に対する窒化ケイ素膜の研磨速度の比率を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

表1に示すように、実施例1〜6ではポリシリコン膜と窒化ケイ素膜の両方で実用上満足できるレベルの研磨速度が得られた。また、実施例1〜6ではポリシリコン膜の研磨速度と窒化ケイ素膜の研磨速度がいずれも二酸化ケイ素膜の研磨速度よりも実用上満足できる程度に高かった。それに対し、比較例1〜17では、ポリシリコン膜と窒化ケイ素膜の少なくともいずれか一方で実用上満足できるレベルの研磨速度が得られないか、あるいは、ポリシリコン膜の研磨速度と窒化ケイ素膜の研磨速度が二酸化ケイ素膜の研磨速度よりも実用上満足できる程度には高くなかった。
【0031】
前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を同時に研磨することを特徴とする研磨方法。これによれば、ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を好適に研磨することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ砥粒とヨウ素化合物を含有する研磨用組成物であって、
研磨用組成物中での前記シリカ砥粒のゼータ電位は負の値を示し、前記シリカ砥粒の平均一次粒子径は30nm以下であり、研磨用組成物のpHは4以下であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記シリカ砥粒が、アルミニウム粒子を表面に担持してなることを特徴とする請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記ヨウ素化合物が過ヨウ素酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
研磨用組成物中の前記シリカ砥粒の含有量が8質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
ポリシリコン膜及び窒化ケイ素膜を研磨する用途に使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。

【公開番号】特開2007−234784(P2007−234784A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53243(P2006−53243)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】