説明

研磨用組成物

【課題】六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハなどの炭化ケイ素ウエハを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物は、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム及びバナジン酸カリウムなどのバナジン酸塩と、過酸化水素及びオゾンなどの酸素供与剤とを含有する。研磨用組成物は、好ましくは砥粒及びpH調整剤の少なくともいずれか一方をさらに含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素ウエハを研磨する用途、より具体的には、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面、又は(000−1)C面などの(0001)Si面以外の面を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
4H−SiC単結晶ウエハや6H−SiC単結晶ウエハなどの六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハは通常、ダイヤモンド砥粒を含むスラリーを用いてウエハ表面を予備研磨する工程と、予備研磨後のウエハ表面を仕上げ研磨する工程とを経て製造される。六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの仕上げ研磨では、予備研磨によりウエハ表面に生じる非晶質の加工変質層が除去されるとともに、加工変質層の除去の後に露出するウエハ表面が平坦化される。
【0003】
六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの仕上げ研磨で使用することが可能な研磨用組成物としては、特許文献1に開示されているような、コロイダルシリカを含有したpH4〜9の研磨用組成物が知られている。しかしながら、特許文献1の研磨用組成物による六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの研磨速度はあまり大きくなく、特許文献1の研磨用組成物を用いた場合には仕上げ研磨に要する時間が極めて長くなるという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には酸化クロム砥粒及び過酸化水素を含有する研磨用組成物を用いて、炭化ケイ素単結晶ウエハを研磨することが開示されている。しかしながら、特許文献2の研磨用組成物は、環境有害性の高い酸化クロムを含有していることに加え、研磨後のウエハ表面が酸化クロムの付着によって汚染される虞がある点でも問題がある。
【特許文献1】特開2005−117027号公報
【特許文献2】特開2001−205555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハなどの炭化ケイ素ウエハを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バナジン酸塩と、酸素供与剤とを含有することを特徴とする研磨用組成物を提供する。
請求項2に記載の発明は、砥粒をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の研磨用組成物を提供する。
【0007】
請求項3に記載の発明は、炭化ケイ素ウエハを研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨用組成物を提供する。
請求項4に記載の発明は、pHが4〜11.5であり、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面を研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を提供する。
【0008】
請求項5に記載の発明は、pHが8以下であり、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面以外の面を研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハなどの炭化ケイ素ウエハを研磨する用途でより好適に使用可能な研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、バナジン酸塩及び酸素供与剤を、好ましくは砥粒及びpH調整剤の少なくともいずれか一つとともに、水に混合することにより製造される。従って、研磨用組成物は、バナジン酸塩、酸素供与剤及び水を含有し、好ましくは砥粒及びpH調整剤の少なくともいずれか一つをさらに含有する。
【0011】
本実施形態の研磨用組成物は、炭化ケイ素ウエハを研磨する用途、より具体的には、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面、又は(000−1)C面などの(0001)Si面以外の面を研磨する用途で使用される。(0001)Si面は、(000−1)C面などの(0001)Si面以外の面に比べて酸化速度及びエッチング速度が低く、一般的に研磨用組成物による(0001)Si面の研磨速度は、同じ研磨用組成物による(0001)Si面以外の面の研磨速度よりも低い。なお、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの両面は通常、(0001)Si面と(000−1)C面という異なる面方位の結晶面によって構成されている。六方晶炭化ケイ素単結晶中のSi−C結合は約12%がイオン結合性であるため、(0001)Si面は僅かにプラスに帯電し、(000−1)C面は僅かにマイナスに帯電している。
【0012】
前記バナジン酸塩及び前記酸素供与剤は共同して、研磨用組成物による六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハを含む炭化ケイ素ウエハの研磨速度を向上させる働きをする。バナジン酸塩及び酸素供与剤のこの働きは、バナジン酸塩の電離により生じるバナジン酸イオンが酸素供与剤から酸素の供与を受けることによって準安定なペルオキソバナジン酸イオンを生成し、このペルオキソバナジン酸イオンが炭化ケイ素ウエハの表面においてSi−C結合の酸化開裂を促進するためと考えられる。なお、ペルオキソバナジン酸イオンはSi−C結合を酸化開裂することによって自身はバナジン酸イオンに還元されるが、酸素供与剤から酸素の供与を受けることで再びペルオキソバナジン酸イオンに戻ることができる。
【0013】
研磨用組成物に含まれるバナジン酸塩は例えば、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム又はバナジン酸カリウムである。
研磨用組成物中のバナジン酸塩の含有量は0.5g/L以上であることが好ましく、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは3g/L以上である。バナジン酸塩の含有量が多くになるにつれて、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度は向上する。この点、研磨用組成物中のバナジン酸塩の含有量が0.5g/L以上、さらに言えば1g/L以上、もっと言えば3g/L以上であれば、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度を実用上特に好適なレベルまで向上させることができる点で有利である。
【0014】
また、研磨用組成物中のバナジン酸塩の含有量は100g/L以下であることが好ましく、より好ましくは50g/L以下、さらに好ましくは30g/L以下である。バナジン酸塩の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストが低くなるのに加え、研磨用組成物中に不溶解分が生じる虞が小さくなる。この点、研磨用組成物中のバナジン酸塩の含有量が100g/L以下、さらに言えば50g/L以下、もっと言えば30g/L以下であれば、経済性の点だけでなく、不溶解分の生成を十分に抑えることができる点でも有利である。
【0015】
研磨用組成物に含まれる酸素供与剤は例えば、過酸化水素又はオゾンであり、取り扱いが容易である点で好ましくは過酸化水素である。
研磨用組成物中の酸素供与剤の含有量は0.1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは3g/L以上である。酸素供与剤の含有量が多くになるにつれて、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度は向上する。この点、研磨用組成物中の酸素供与剤の含有量が0.1g/L以上、さらに言えば1g/L以上、もっと言えば3g/L以上であれば、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度を実用上特に好適なレベルまで向上させることができる点で有利である。
【0016】
また、研磨用組成物中の酸素供与剤の含有量は100g/L以下であることが好ましく、より好ましくは50g/L以下、さらに好ましくは30g/L以下である。酸素供与剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストは低くなる。この点、研磨用組成物中の酸素供与剤の含有量が100g/L以下、さらに言えば50g/L以下、もっと言えば30g/L以下であれば、経済性の点で有利である。
【0017】
前記砥粒は、炭化ケイ素ウエハを機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物による六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハを含む炭化ケイ素ウエハの研磨速度をさらに向上させる働きをする。
【0018】
研磨用組成物に含まれる砥粒は、例えば、シリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化クロムなどの金属酸化物、あるいはダイヤモンド、炭化ホウ素又は炭化ケイ素である。その中でも、研磨後のウエハ表面のスクラッチを少なくすることができる点及び環境有害性が低い点で、好ましくはシリカ、より好ましくはコロイダルシリカである。
【0019】
研磨用組成物が砥粒としてコロイダルシリカを含有する場合、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。コロイダルシリカの含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度は向上する。この点、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量が1質量%以上、さらに言えば3質量%以上、もっと言えば5質量%以下であれば、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度を実用上特に好適なレベルまで向上させることができる点で有利である。
【0020】
また、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量は50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。コロイダルシリカの含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストは低くなる。この点、研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量が50質量%以下、さらに言えば45質量%以下、もっと言えば40質量%以下であれば、経済性の点で有利である。
【0021】
研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均一次粒子径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。平均一次粒子径が大きくなるにつれて、炭化ケイ素ウエハを機械的に研磨するコロイダルシリカの作用が強まるため、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度は向上する。この点、コロイダルシリカの平均一次粒子径が5nm以上、さらに言えば10nm以上、もっと言えば15nm以上であれば、研磨用組成物による炭化ケイ素ウエハの研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる点で有利である。
【0022】
また、研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均一次粒子径は120nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは85nm以下である。平均一次粒子径が小さくなるにつれて、コロイダルシリカの製造コストは低くなる。この点、コロイダルシリカの平均一次粒子径が120nm以下、さらに言えば100nm以下、もっと言えば85nm以下であれば、経済性の点で有利である。なお、以上で説明したコロイダルシリカの平均一次粒子径の値は、BET法で測定されるコロイダルシリカの比表面積に基づいて算出されるものである。
【0023】
前記pH調整剤の種類は特に限定されるものでなく、研磨用組成物のpHを所望の値とするために適宜の量のいずれの酸又はアルカリが使用されてもよい。
炭化ケイ素ウエハの中でも特に六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面を研磨する用途で研磨用組成物を使用しようとする場合には、研磨用組成物のpHは4以上であることが好ましく、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5以上である。pHが大きくなるにつれて、研磨用組成物による(0001)Si面の研磨速度は向上する。この点、研磨用組成物のpHが4以上、さらに言えば4.5以上、もっと言えば5以上であれば、研磨用組成物による(0001)Si面の研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる点で有利である。pHが大きくなるにつれて、研磨用組成物による(0001)Si面の研磨速度が向上する理由は以下のように推測される。すなわち、研磨用組成物中の水素イオンは、僅かにプラスに帯電している(0001)Si面に対して陰イオンであるペルオキソバナジン酸イオンが電気的に引き寄せられるのを阻害する働きをすると考えられる。そのため、研磨用組成物中の水素イオン濃度が低くなるほど、水素イオンによって阻害されることなくペルオキソバナジン酸イオンが(0001)Si面に引き寄せられ、その結果、ペルオキソバナジン酸イオンが(0001)Si面においてSi−C結合の酸化開裂を促進すると考えられる。また、研磨用組成物のpHが高くなるにつれて、(0001)Si面の最表面のケイ素原子が酸化されることによって(0001)Si面上に形成される酸化シリコン膜の溶解が起こりやすいことも理由と推測される。
【0024】
また、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面を研磨する用途で研磨用組成物を使用しようとする場合には、研磨用組成物のpHは11.5以下であることが好ましく、より好ましくは10.5以下、さらに好ましくは9.5以下である。pHが小さくなるにつれて、研磨用組成物中の砥粒が溶解する虞は小さくなるとともに、研磨用組成物中の酸素供与剤、特に過酸化水素の安定性が向上する。この点、研磨用組成物のpHが11.5以下、さらに言えば10.5以下、もっと言えば9.5以下であれば、研磨用組成物中の砥粒の溶解を十分に抑制することができるとともに、研磨用組成物中の酸素供与剤の安定性を特に向上させることができる点で有利である。
【0025】
一方、(000−1)C面などの(0001)Si面以外の六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの面を研磨する用途で研磨用組成物を使用しようとする場合には、研磨用組成物のpHは8以下であることが好ましく、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7以下である。pHが小さくなるにつれて、研磨用組成物による(0001)Si面以外の六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの面の研磨速度は向上する。この点、研磨用組成物のpHが8以下、さらに言えば7.5以下、もっと言えば7以下であれば、研磨用組成物による(0001)Si面以外の六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの面の研磨速度を実用上特に好適なレベルにまで向上させることができる点で有利である。pHが小さくなるにつれて、研磨用組成物による(0001)Si面以外の六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの面の研磨速度、特に(000−1)C面の研磨速度が向上する理由は以下のように推測される。すなわち、研磨用組成物中の水素イオンは、僅かにマイナスに帯電している(000−1)C面と陰イオンであるペルオキソバナジン酸イオンとの間を仲介して、ペルオキソバナジン酸イオンを(000−1)C面に電気的に引き寄せる働きをすると考えられる。そのため、研磨用組成物中の水素イオン濃度が高くなるほど、水素イオンによって仲介されることによりペルオキソバナジン酸イオンが(000−1)C面に引き寄せられ、その結果、ペルオキソバナジン酸イオンが(000−1)C面においてSi−C結合の酸化開裂を促進すると考えられる。また、(000−1)C面が研磨除去されるときには、最表面の炭素原子がまず酸化によりガス化されて脱離し、その後、ケイ素原子が酸化によりイオン化されて脱離すると考えられるが、研磨用組成物のpHが小さくなるにつれて酸化力が強まることにより、こうした炭素原子及びケイ素原子の脱離が促進されることも理由と推測される。
【0026】
従って、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面と(0001)Si面以外の面、特に(0001)Si面と(000−1)C面を同時に研磨する用途で研磨用組成物を使用しようとする場合には、研磨用組成物のpHは4〜8であることが好ましく、より好ましくは4.5〜7.5、さらに好ましくは5〜7である。研磨用組成物のpHが上記の範囲であれば、(0001)Si面と(0001)Si面以外の面の両方を高い研磨速度で研磨することができる。
【0027】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
本実施形態の研磨用組成物は、バナジン酸塩及び酸素供与剤を含むために、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハなどの炭化ケイ素ウエハを高い研磨速度で研磨することが可能である。従って、本実施形態の研磨用組成物は、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハなどの炭化ケイ素ウエハを研磨する用途で好適に使用することができる。
【0028】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上のバナジン酸塩が含有されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上の酸素供与剤が含有されてもよい。
【0029】
・ 前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上の砥粒が含有されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には二種類以上のpH調整剤が含有されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物には必要に応じて防腐剤や防カビ剤のような公知の添加剤を添加してもよい。
【0030】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は一つの容器に全て収容して保存される一剤型で供給されてもよいし、二つの容器に分けて保存される二剤型を始めとする多剤型で供給されてもよい。
【0031】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することによって調製されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、炭化ケイ素ウエハ以外の研磨対象物を研磨する用途で使用されてもよい。
【0032】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
実施例1〜16では、バナジン酸塩、酸素供与剤、砥粒及びpH調整剤を適宜に水と混合することにより研磨用組成物を調製した。比較例1〜9では、バナジン酸塩又はそれに代わる化合物、酸素供与剤、砥粒及びpH調整剤を適宜に水と混合することにより研磨用組成物を調製した。各例の研磨用組成物中のバナジン酸塩又はそれに代わる化合物、酸素供与剤、砥粒及びpH調整剤の詳細、並びに研磨用組成物のpHを測定した結果を表1に示す。なお、砥粒として使用したコロイダルシリカはいずれも平均一次粒子径が40nmである。
【0033】
表1の“(0001)Si面の研磨速度”欄には、各例の研磨用組成物を用いて六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面を表2に示す研磨条件で研磨したときの研磨速度を研磨前後のウエハの重量の差に基づいて求めた結果を示す。
【0034】
表1の“(000−1)C面の研磨速度”欄には、各例の研磨用組成物を用いて六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(000−1)C面を表2に示す研磨条件で研磨したときの研磨速度を研磨前後のウエハの重量の差に基づいて求めた結果を示す。
【0035】
表1の“研磨速度比((0001)Si面/(000−1)C面)”欄には、各例の研磨用組成物による六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(000−1)C面の研磨速度に対する六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面の研磨速度の比を計算した結果を示す。
【0036】
表1の“酸素供与剤の安定性”欄には、各例の研磨用組成物中の酸素供与剤の安定性に関する評価の結果を示す。具体的には、各例の研磨用組成物を用いて研磨を行っているときにスラリータンク内やスラリー供給チューブ内で酸素供与剤の分解による酸素泡の発生が認められた場合には×(不良)、酸素泡の発生がわずかに認められた場合には△(可)、酸素泡の発生が認められなかった場合には○(良)と評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

表1に示すように、実施例1〜16では、(0001)Si面の研磨速度に関して20nm/時間以上という実用に足るレベルの値が得られ、(000−1)C面の研磨速度に関しても100nm/時間以上という実用に足るレベルの値が得られた。しかも、実施例1〜16では、酸素供与剤の安定性に関する評価が可以上であった。
【0039】
これに対し、バナジン酸塩及び酸素供与剤を含まない研磨用組成物を用いた比較例1〜9では、(0001)Si面の研磨速度に関しては20nm/時間未満、(000−1)C面の研磨速度に関しても100nm/時間未満といずれも実用に足るレベルの値が得られなかった。しかも、バナジン酸塩の代わりに硝酸塩、モリブデン酸塩及びタングステン酸塩を使用した比較例7〜9では、酸素供与剤の安定性に関する評価がいずれも不良であった。
【0040】
なお、実施例1〜16の研磨用組成物を用いて研磨された後のウエハ表面では、(0001)Si面及び(000−1)C面とも原子ステップが原子間力顕微鏡で観察された。
前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0041】
pHが4〜8であることを特徴とする請求項3に記載の研磨用組成物。この研磨用組成物によれば、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面と(0001)Si面以外の面の両方を高い研磨速度で研磨することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジン酸塩と、酸素供与剤とを含有することを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
砥粒をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
炭化ケイ素ウエハを研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
pHが4〜11.5であり、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面を研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
pHが8以下であり、六方晶炭化ケイ素単結晶ウエハの(0001)Si面以外の面を研磨する用途で使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。

【公開番号】特開2008−179655(P2008−179655A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12164(P2007−12164)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】