説明

研磨用組成物

【課題】配線構造体の製造における研磨工程において、表面段差の発生を抑制と高い研磨速度を両立できる研磨用組成物の提供。
【解決手段】砥粒、加工促進と、R−POE(式中、Rは分岐構造を有する炭素数10〜16のアルキル基を表し、POEはポリオキシエチレン鎖を表す)で表され、かつHLBが7〜12であるノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、保護膜形成剤、酸化剤、および水を含んでなる研磨用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物に関するものである。より詳しくは、本発明は、例えば半導体デバイスの配線を形成するための研磨過程で使用される研磨用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータに使用されるULSI等の高集積化及び高速化に伴い、半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このような半導体装置の配線構造の微細化による配線抵抗の増大に対処するために、銅を含有する金属材料を配線材料として使用することが検討されている。
【0003】
銅を含有する金属材料を配線材料として使用する場合、異方性エッチングによる配線構造の形成は金属材料の性質上難しい。このため、配線構造は化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing、以下CMP法ということがある)を用いた方法等によって形成されるのが一般的である。具体的には以下のような方法が用いられる。まず、タンタルや窒化タンタル等のタンタル含有化合物、またはチタン化合物やルテニウム化合物により形成されているバリア膜を、表面に配線溝が凹設された絶縁膜上に成膜する。次いで、銅を含有する金属材料により形成されている導体膜を、少なくとも配線溝内が完全に埋まるようにバリア膜上に成膜する。続いて、第1の研磨工程で導体膜の一部を研磨する。そして、第2の研磨工程で、導体膜を配線溝以外の箇所のバリア膜が露出するまで研磨する。次いで、第3の研磨工程でバリア膜を配線溝以外の箇所の絶縁膜が露出するまで研磨することにより、配線溝内に配線部を形成する。
【0004】
従来、研磨用組成物は、二酸化ケイ素等の研磨材や各種の添加剤を含むものが検討されている。しかし、従来の研磨用組成物には、上記したような研磨方法において、銅を含有する金属材料に対する研磨速度が高いために導体膜を過剰に研磨することがあった。このような場合、研磨後の被研磨面には、配線溝に対応する箇所の導体膜の表面がバリア膜の表面に比べて内方へ後退する現象、即ちディッシングが発生するという問題が発生する場合があった。
【0005】
このようなディッシングを抑制するための研磨用組成物も検討されている。例えば特許文献1には、溶媒と、研磨粒子と、少なくとも1種類の第1の界面活性剤と、少なくとも1種類の第2の界面活性剤とを含むCMP用スラリーが開示されている。このスラリーにおいて、第1の界面活性剤は、前記研磨粒子の分散性及び研磨時に被研磨膜である金属膜の表面に形成される表面保護膜の緻密性を高め、第2の界面活性剤は、前記研磨粒子の分散性及び前記表面保護膜の緻密性及び親水性を高め、かつ研磨時に用いられる研磨パッド表面の親水性を高めるというものである。しかしながら、本発明者らの知る限り、表面保護膜の緻密性が高まりすぎるとディッシングは抑えることができるが、研磨速度が得られない場合があり、改良の余地があった。また、この技術においては界面活性剤の構造自体が非常に重要な要素であり、単に2種類の界面活性剤を添加するのみでは良好な性能は得られないこともわかった。例えば、分子量が大きなノニオン界面活性剤を使用すると分散安定性が悪化する現象が見られ、またHLBの高い界面活性剤ではディッシングが大きくなる現象が見られることもあった。
【0006】
また、特許文献2には、銅を含む金属層を含む基材を、(a)研磨剤粒子、(b)6を超えるHLB値を有する両親媒性非イオン性界面活性剤、(c)金属層を酸化するための手段、 (d)有機酸、(e)腐食抑制剤、及び(f)液体キャリアーを含むCMP組成物と接触させ、研磨する方法が開示されている。しかしながら、本発明者らの知る限り、この方法においても、非イオン界面活性剤を単体で使用するだけでは研磨速度を維持したままディッシングを低減することが困難であることがわかった。また、HLBが12を超えるノニオン界面活性剤ではディッシングを低減することが困難であった。
【特許文献1】特開2002−155268号公報
【特許文献2】特開2006−502579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来の研磨用組成物では、研磨速度の向上と、ディッシング量の低減とが十分に両立されておらず、このようなジレンマを解決することができる研磨用組成物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による研磨用組成物は、
(a)砥粒と、
(b)加工促進剤と、
(c)R−POE (I)
(式中、Rは分岐構造を有する炭素数10〜16のアルキル基を表し、POEはポリオキシエチレン鎖を表す)で表され、かつHLBが7〜12である少なくとも一種類のノニオン界面活性剤と、
(d)少なくとも一種類のアニオン界面活性剤と、
(e)前記ノニオン界面活性剤および前記アニオン界面活性剤とは異なる保護膜形成剤と、
(f)酸化剤と
(g)水と
を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線構造体の製造における研磨工程において、表面段差の発生を抑制することができるとともに良好な研磨速度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
研磨用組成物
(a)砥粒
本発明による研磨用組成物に用いる砥粒は従来知られている任意のものから選択することができるが、具体的には、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【0011】
二酸化ケイ素には、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、およびその他の、製造法や性状の異なるものが多種存在する。
【0012】
また、酸化アルミニウムには、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、κ−アルミナ、およびその他の形態的に異なるものがある。また製造法からフュームドアルミナと呼ばれるものもある。
【0013】
酸化セリウムには、酸化数から3価のものと4価のもの、また結晶系から見て、六方晶系、等軸晶系、および面心立方晶系のものがある。
【0014】
酸化ジルコニウムは、結晶系から見て、単斜晶系、正方晶系、および非晶質のものがある。また、製造法からフュームドジルコニアと呼ばれるものもある。
【0015】
酸化チタンには、結晶系から見て、一酸化チタン、三酸化二チタン、二酸化チタンおよびその他のものがある。また製造法からフュームドチタニアと呼ばれるものもある。
【0016】
本発明の組成物には、これらのものを任意に、必要に応じて組み合わせて、用いることができる。組み合わせる場合には、その組み合わせ方や使用する割合は特に限定されない。しかしながら、本発明による効果、かつ経済性や入手容易性の観点から、二酸化ケイ素が好ましく、コロイダルシリカが特に好ましい。
【0017】
本発明による研磨用組成物は、前記した砥粒を2種類以上含んでいてもよい。また、同種類の砥粒であって平均一次粒子径の異なるものを2種類以上混合して用いてもよい。ここで、平均一次粒子径はBET法(窒素吸着法)による比表面積より計算されるものをいう。異なる一次粒子径を有する砥粒が混合されている場合、砥粒全体としての一次粒子径は、各砥粒に対して(砥粒の総重量に対する当該砥粒の重量比×当該砥粒の比表面積)を計算し、それらの総計から求められる砥粒全体の比表面積から砥粒全体の平均一次粒子径を計算することができる。
【0018】
本発明による研磨用組成物に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、一般に、5〜40nm、好ましくは5〜20nm、更に好ましくは7〜15nmである。金属層、特に銅層を十分な速度で研磨するという観点から5nm以上であることが好ましく、一方で段差形状を良好に維持するという観点から40nm以下であることが好ましい。
【0019】
また、砥粒の含有量は、研磨用組成物の総重量を基準として、一般に0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%、更に好ましくは0.8〜2重量%である。金属層、特に銅層を十分な速度で研磨するという観点から0.1重量%以上であることが好ましく、一方で製造コストを抑制し、また段差形状を良好に維持するという観点から10重量%以下であることが好ましい。
【0020】
(b)加工促進剤
本発明による研磨用組成物は、少なくとも一種類の加工促進剤をさらに含んでなる。この加工促進剤は、金属層、特に銅層の研磨速度を促進するものである。その作用は、研磨により生じた金属イオンを捕捉することで、金属層の研磨を促進する。
【0021】
加工促進剤として好ましい具体例としては、優れた金属捕捉作用と入手の容易性から、カルボン酸およびアミノ酸が挙げられる。加工促進剤として用いることができるアミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、セリン、トレオニン、アロトレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン及びシスチン等の中性アミノ酸、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸が挙げられ、カルボン酸としては、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、2−キノリンカルボン酸(キナルジン酸)、2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジンカルボン酸、キノン等が挙げられる。これらのうち、最も好ましいのはグリシンである。
【0022】
本発明による研磨用組成物における加工促進剤の含有量は、研磨用組成物の総重量を基準として、一般に0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜2重量%、更に好ましくは0.5〜1.5重量%である。金属層、特に銅層を十分な速度で研磨するという観点から0.1重量%以上であることが好ましく、一方で段差形状を良好に維持するという観点から3重量%以下であることが好ましい。
【0023】
(c)ノニオン界面活性剤
本発明による研磨用組成物は、少なくとも一種類のノニオン界面活性剤を含んでなる。このノニオン界面活性剤は、研磨速度調整剤、およびディッシング抑制剤として機能するものである。本発明において用いられるノニオン界面活性剤は、以下の式(I)により表されるものである。
R−POE (I)
(式中、Rは分岐構造を有する炭素数10〜16のアルキル基を表し、POEはポリオキシエチレン鎖を表す。)
【0024】
このようなノニオン界面活性剤は、RやPOEの種類により種々のものが存在するが、これらのうちHLB値(Hyrdophilie−Lipophilie Balance)が7〜12であることが必要である。HLB値は、金属層の研磨速度を高くするためには高いことが好ましく、段差形状を良好に保つためには低いことが好ましい。このような観点から、HLBは7〜10であることが好ましい。ここで、HLBはグリフィンの式:
HLB=(親水部の式量の総和)/分子量)×20を用いて算出されたものである。
【0025】
また、式(I)で表されるノニオン界面活性剤のR基は分岐構造を有することが必要であり、また炭素数が10〜16であることが必要である。これらは、上記のHLB値にも寄与するものであるが、炭素数だけからみると、金属層の研磨速度を高くするためには高いことが好ましく、段差形状を良好に保つためには低いことが好ましい。このような観点から、R基の炭素数は11〜15であることが好ましく、12〜14であることがより好ましい。
【0026】
本発明においては用いられるノニオン界面活性剤において、アルキル基の炭素数が10〜16であり、かつHLBが7〜12であることにより、ノニオン界面活性剤分子が小さくなるため、砥粒の凝集を抑制する作用があると考えられる。また、ノニオン界面活性剤において、一般にポリオキシエチレン鎖が短い場合、疎水性が高くなり被研磨物表面に強い保護膜が形成される傾向があるが、本発明における研磨用組成物では疎水性であるアルキル基が分岐構造を有することで研磨対象物への保護膜が過度に緻密にならず、適度な研磨速度を得ることができるものと考えられる。
【0027】
また、研磨用組成物におけるノニオン界面活性剤の含有量は、研磨用組成物の総重量を基準として、一般に0.0005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%、更に好ましくは0.02〜0.1重量%である。金属層、特に銅層を十分な速度で研磨するという観点から0.0005重量%以上であることが好ましく、一方で段差形状を良好に維持するという観点から0.5重量%以下であることが好ましい。
【0028】
(d)アニオン界面活性剤
本発明による研磨用組成物はさらに、少なくとも一種類のアニオン界面活性剤を含んでなる。このアニオン界面活性剤は、前記したノニオン界面活性剤との組み合わせによりディッシング抑制の効果をより強めるものである。アニオン界面活性剤は、従来知られている任意のものから選択することができる。しかし、ノニオン界面活性剤との併用により、より強いディッシング抑制機能を発揮するものとして、下記式(IIa)または(IIb)で表されるアニオン界面活性剤が挙げられる。
R’−A (IIa)
R’−POA−A (IIb)
(式中、R’はアルキル基、アルキルフェニル基、およびアルケニル基からなる群から選択される基を表し、POAはポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖およびポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖からなる群から選択されるポリオキシアルキレン鎖を表し、Aはアニオン性官能基を表す。)
ここで、ポリオキシアルキレン鎖を含む(IIb)のアニオン界面活性剤がより好ましい。
【0029】
本発明による研磨用組成物におけるアニオン界面活性剤の含有量は、研磨用組成物の総重量を基準として、一般に0.0005〜0.1重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%、更に好ましくは0.005〜0.02重量%である。段差形状を良好に維持するという観点から0.0005重量%以上であることが好ましく。また金属層、特に銅層を十分な速度で研磨するという観点から0.1重量%以下であることが好ましい。
【0030】
(e)保護膜形成剤
本発明による研磨用組成物は、保護膜形成剤をさらに含んでなる。この保護膜形成剤は金属層の腐食抑制剤として、例えば後述する酸化剤による金属層表面の腐食を抑制する機能するほか、ディッシング抑制剤としても機能するものである。このような保護膜形成剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリアゾールおよびその誘導体、テトラゾールおよびその誘導体、インドールおよびその誘導体、ならびにイミダゾールおよびその誘導体が挙げられる。これらのうちベンゾトリアゾールおよびその誘導体が特に好ましい。
【0031】
本発明において用いることができるベンゾトリアゾールおよびその誘導体としては、種々のものがあるが、下記一般式(III)で示されるものが好ましい。
【化1】

式中、Rは、水素、アルキル基、カルボキシル基で置換されたアルキル基、ヒドロキシル基および3級アミノ基で置換されたアルキル基、およびヒドロキシル基で置換されたアルキル基からなる群から選択され、R〜Rはそれぞれ独立に、水素および炭素数1〜3のアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0032】
具体的には、ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−(2’、3’−ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−(2’、3’−ジヒドロキシプロピル)−4−メチルベンゾトリアゾール、1−(2’、3’−ジヒドロキシプロピル)−5−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N, N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシメチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシメチル−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシメチル−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、3−(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)酪酸、3−(5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)酪酸、α−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、α−エチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、α−イソプロピル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、1H−ベンゾトリアゾール−1−酢酸、1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−[[ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]メチル]−1H−ベンゾトリアゾール、4,5−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、本発明において好ましいベンゾトリアゾールは、1−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール、1−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾール、またはそれらの混合物である。
【0034】
本発明による研磨用組成物における保護膜形成剤の含有量は、研磨用組成物の総重量を基準として、一般に0.001〜0.3重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%、更に好ましくは0.02〜0.05重量%である。金属層の研磨速度を適切に抑制し、ディッシングを十分に低減させ、段差形状を良好に保つという観点から0.001重量%以上であることが好ましく。一方で過度に金属層の研磨速度を抑制することにより研磨速度が不当に低くならないように0.3重量%以下であることが好ましい。
【0035】
(f)酸化剤
本発明による研磨用組成物は酸化剤を含んでなる。この酸化剤は金属層の研磨を促進する作用を有するものである。酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、過酢酸、過蟻酸及び硝酸、並びにそれらの塩のうち少なくとも1種が挙げられるが、安価でかつ金属不純物の少ないものを容易に入手できることから、過酸化水素が好ましい。
【0036】
本発明による研磨用組成物における酸化剤の含有量は、金属層の十分な研磨速度を得るという観点、特に表面に酸化膜等の変質層が形成された被研磨物やパターン付ウエハにおいても高い研磨速度を達成できるとの観点から研磨用組成物の総重量を基準として、0.3重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、0.75g重量%以上であることが特に好ましい。一方、酸化剤の含有量は、段差形状を良好に保つという観点から5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
(g)水
本発明による研磨用組成物は、各成分を分散または溶解するための溶媒として、水を含んでなる。水は、他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましい。
【0038】
(h)その他の成分
本発明による研磨用組成物には、必要に応じてその他の成分としてキレート剤、増粘剤、乳化剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤等を情報に従って含有させることも可能である。
【0039】
本発明による研磨用組成物は、水に前記の各成分を溶解または分散させることにより調製される。溶解または分散の方法は任意であり、また各成分の混合順序や混合方法等は特に限定されるものではない。
【0040】
本発明の研磨用組成物のpHは特に限定されないが、公知の酸またはアルカリを添加することによって調整することが可能である。そのpHは、研磨用組成物の良好な取扱い性を維持するという観点から、好ましくは8〜10、より好ましくは9〜10である。
【0041】
本発明の研磨用組成物は、比較的高濃度の現役として調製して貯蔵または輸送などをし、実際の研磨加工時に希釈して使用することもできる。前述の好ましい濃度範囲は、実際の研磨加工時のものとして記述したものであり、このような使用方法をとる場合、貯蔵または輸送などをされる状態においてはより高濃度の溶液となることはいうまでもない。
【0042】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0043】
研磨用組成物の調製
研磨用組成物として、砥粒としてのコロイダルシリカ、加工促進剤としてのグリシン、酸化剤としての過酸化水素、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、保護膜形成剤を、表1に示すとおりに配合して研磨用組成物を調製した。
【表1】

【0044】
研磨速度の評価
得られた研磨用組成物を用いて、下記の研磨条件1に従い、研磨速度を評価した。
<研磨条件1>
研磨機:片面CMP用研磨機(Reflexion LK;アプライドマテリアルズ社製)、
被研磨物:Cuブランケットウエハ(直径300mm)
研磨パッド:ポリウレタン製の積層研磨パッド(商品名IC−1010、ローム・アンド・ハース社製)、
研磨圧力:0.9psi(=約6.2kPa)、
定盤回転数:100rpm、
研磨用組成物の供給速度:300ml/min、
キャリアー回転数:100rpm
<研磨速度の計算式>
研磨速度[nm/min]=(研磨加工前のブランケットウエハの厚み[nm]−研磨加工後のブランケットウエハの厚み[nm])÷研磨時間[min]
【0045】
研磨加工前後のCuブランケットウエハの厚みはシート抵抗測定器(VR−120SD/8(商品名)、株式会社日立国際電気製)を用いて測定した。得られた結果は表2に示すとおりであった。なお、一般に研磨速度は300nm/minであれば実用上問題がないものと考えられる。
【0046】
段差形状の測定
Cuパターンウエハ表面に、各例の研磨用組成物を用いて下記研磨条件2によりCu残膜300nmまで研磨を施した。上記研磨後、銅パターンウエハ表面に、各例の研磨用組成物を用いるとともに下記研磨条件3によりバリア膜が露出するまで研磨を施した。次いで、第2研磨後の銅パターンウエハ表面の100μm幅の孤立配線部において、原子間力顕微鏡(商品名WA−1300、日立建機ファインテック株式会社製)を用いてディッシング量を測定した。ディッシング量は、(◎)15nm未満、(○)15nm以上30nm未満、(△)30nm以上50nm未満、(×)50nm以上の4段階で評価した。得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0047】
<研磨条件2>
研磨機:片面CMP用研磨機(Reflexion LK;アプライドマテリアルズ社製)、
被研磨物:Cuパターン付ウエハ(ATDF社製、754マスクパターン、成膜厚さ10000Å、初期凹溝5000Å)、
研磨パッド:ポリウレタン製の積層研磨パッド(商品名IC−1010、ローム・アンド・ハース社製)、
研磨圧力:2psi(=約14kPa)、
定盤回転数:100rpm、
研磨用組成物の供給速度:200ml/min、
キャリアー回転数:100rpm
【0048】
<研磨条件3>
研磨機:片面CMP用研磨機(Reflexion LK;アプライドマテリアルズ社製)、
被研磨物:Cuパターン付ウエハ(ATDF社製、754マスクパターン、成膜厚さ10000Å、初期凹溝5000Å)、
研磨パッド:ポリウレタン製の積層研磨パッド(IC−1010;ローム・アンド・ハース社製)、
研磨圧力:0.7psi(=約4.8kPa)、
定盤回転数:100rpm、
研磨用組成物の供給速度:300ml/min、
キャリアー回転数:100rpm
【0049】
分散安定性の評価
研磨用組成物の調製直後に紫外可視分光光度計(商品名UV−2450、株式会社島津製作所製)を用いて波長250nm〜900nmまでの透過率を求めた。次いで、研磨用組成物を80℃において密閉容器にて4日間保存し前記と同様にして透過率を求めた。続いて、下記計算式で計算される透過率の低下率により分散安定性を評価した。分散安定性については、透過率の低下率に基づき3段階で評価し、良好なものから順に(○)2%未満、(△2%以上5%未満、(×)5%以上とした。得られた結果は表2に示すとおりであった。
透過率の低下率 [%] : [(調製直後の波長250〜900nmの透過率の積分値)−(80℃4日保管後の波長250〜900nmの透過率の積分値)]/(調製直後の波長250〜900nmの透過率の積分値)*100
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)砥粒と、
(b)加工促進剤と、
(c)R−POE (I)
(式中、Rは分岐構造を有する炭素数10〜16のアルキル基を表し、POEはポリオキシエチレン鎖を表す)で表され、かつHLBが7〜12である少なくとも一種類のノニオン界面活性剤と、
(d)少なくとも一種類のアニオン界面活性剤と、
(e)前記ノニオン界面活性剤および前記アニオン界面活性剤とは異なる保護膜形成剤と、
(f)酸化剤と、
(g)水と
を含んでなることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記保護膜形成剤(e)が、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記保護膜形成剤(e)が、1−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール、または1−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル]−5−メチルベンゾトリアゾールである、請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記砥粒の平均1次粒子径が5〜40nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記加工促進剤(b)が、カルボン酸およびアミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。

【公開番号】特開2009−164186(P2009−164186A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339472(P2007−339472)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】