説明

研磨用組成物

【課題】III−V族化合物材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIII−V族化合物材料を含有する部分に対する高い研磨選択性を発揮することができる研磨用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の研磨用組成物は、平均一次粒子径が40nm以下である砥粒と、酸化剤とを含有し、好ましくは研磨対象物のケイ素材料を含有する部分の表面OH基と結合してケイ素材料を含有する部分の加水分解を抑制する働きをするサプレッサー化合物をさらに含有する。あるいは、本発明の研磨用組成物は、砥粒と、酸化剤と、サプレッサー化合物とを含有する。研磨用組成物のpHは中性であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III−V族化合物材料を含有する部分(以下、III−V族化合物材料部分ともいう)と酸化シリコンなどのケイ素材料を含有する部分(以下、ケイ素材料部分ともいう)とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物に関する。本発明はまた、その研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンよりもキャリアの輸送特性に優れるヒ化ガリウム(GaAs)などのIII−V族化合物材料は、次世代の半導体チャネル材料として期待をされている。III−V族化合物チャネルは、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨して形成することができる。この場合、ケイ素材料部分よりもIII−V族化合物材料部分を高選択的に研磨することができる研磨用組成物を用いれば、III−V族化合物材料部分を効率よく研磨除去することが可能である。また、酸化シリコン等のオキサイドロスが少なくなるため、配線層間の耐電圧が確保される。さらに、その後フォトリソグラフィ工程を行う際には、オキサイドロスが少ないために露光焦点合わせが容易となり、工程が安定する(特許文献1参照)。しかしながら、III−V族化合物のみからなるIII−V族化合物半導体基板を研磨する用途で従来使用されている例えば特許文献2又は特許文献3に記載のような研磨用組成物は、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIII−V族化合物材料部分に対する十分に高い研磨選択性を発揮しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−204520号公報
【特許文献2】特開昭63−150155号公報
【特許文献3】特開2004−327614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIII−V族化合物材料部分に対する高い研磨選択性を発揮することができる研磨用組成物を提供すること、またその研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様では、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、平均一次粒子径が40nm以下である砥粒と、酸化剤とを含有する研磨用組成物を提供する。
【0006】
この研磨用組成物は、前記ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをするサプレッサー化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の第2の態様では、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、砥粒と、酸化剤と、前記ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをするサプレッサー化合物とを含有する研磨用組成物を提供する。
【0007】
上記第1及び第2の態様の研磨用組成物は中性のpHを有することが好ましい。
本発明の第3の態様では、上記第1又は第2の態様の研磨用組成物を用いて、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する方法を提供する。
【0008】
本発明の第4の態様では、上記第1又は第2の態様の研磨用組成物を用いて、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨することにより、基板を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用したときにIII−V族化合物材料部分に対する高い研磨選択性を発揮することができる研磨用組成物と、その研磨用組成物を用いた研磨方法及び基板の製造方法とが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態
以下、本発明の第1の実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、特定の砥粒と、酸化剤を水に混合して調製される。従って、研磨用組成物は、特定の砥粒、及び酸化剤を含有する。
【0011】
この研磨用組成物は、III−V族化合物材料部分とケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途、さらに言えばその研磨対象物を研磨して基板を製造する用途においてIII−V族化合物材料部分を選択的に研磨する目的で使用される。III−V族化合物材料の例としては、リン化ガリウム(GaP)、リン化インジウム(InP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等が挙げられる。また、ケイ素材料の例としては、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等が挙げられる。
【0012】
(砥粒)
研磨用組成物中に含まれる砥粒は、40nm以下の平均一次粒子径を有している。40nm以下という平均一次粒子径の小さい砥粒を使用した場合、平均一次粒子径が40nmを超える砥粒を使用した場合に比べて、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が研磨用組成物によるIII−V族化合物材料部分の研磨速度よりも大きく低下するという有利がある。なお、砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて計算することができる。
【0013】
研磨用組成物中の砥粒は、無機粒子及び有機粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、チタニアなどの金属酸化物からなる粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。その中でもシリカ粒子が好ましく、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
【0014】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、砥粒の凝集が起こりにくくなる。
【0015】
砥粒の平均二次粒子径は170nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。砥粒の平均二次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨することによりスクラッチのより少ない研磨面を得ることが容易になる。砥粒の平均二次粒子径の値は、例えば、レーザー光散乱法により測定することができる。
【0016】
(酸化剤)
研磨用組成物中に含まれる酸化剤の種類は特に限定されないが、0.3V以上の標準電極電位を有していることが好ましい。0.3V以上の標準電極電位を有する酸化剤を使用した場合には、0.3V未満の標準電極電位を有する酸化剤を使用した場合に比べて、研磨用組成物によるIII−V族化合物材料部分の研磨速度が向上するという有利がある。0.3V以上の標準電極電位を有する酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、有機酸化剤、オゾン水、銀( I I ) 塩、鉄( I I I ) 塩、並びに過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、過硫酸、クエン酸、ジクロロイソシアヌル酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、研磨用組成物によるIII−V族化合物材料部分の研磨速度が大きく向上することから、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
なお、標準電極電位とは、酸化反応に関与するすべての化学種が標準状態にあるときに次式で表される。
E0=−△G0/nF=(RT/nF)lnK
ここで、E0は標準電極電位、△G0は酸化反応の標準ギブスエネルギー変化、Kはその平行定数、Fはファラデー定数、Tは絶対温度、nは酸化反応に関与する電子数である。従って、標準電極電位は温度により変動するので、本明細書中においては25℃における標準電極電位を採用している。なお、水溶液系の標準電極電位は、例えば改訂4版化学便覧(基礎編)II、pp464−468(日本化学会編)等に記載されている。
【0018】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量は0.01mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mol/L以上である。酸化剤の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるIII−V族化合物材料部分の研磨速度が向上する。
【0019】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量はまた、100mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは50mol/L以下である。酸化剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。
【0020】
(pH調整剤)
研磨用組成物のpHは中性であること、より具体的には6〜8の範囲内であることが好ましい。pHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。
【0021】
研磨用組成物のpHを所望の値に調整するのにpH調整剤を使用してもよい。使用するpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよく、また無機及び有機の化合物のいずれであってもよい。
【0022】
本実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
・ 本実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度を低下させるために、40nm以下という平均一次粒子径の小さい砥粒が使用されている。そのため、この研磨用組成物はIII−V族化合物材料部分に対する高い研磨選択性を有する。
【0023】
・ 研磨用組成物のpHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、III−V族化合物材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
【0024】
第2の実施形態
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態の研磨用組成物は、砥粒と酸化剤とサプレッサー化合物を水に混合して調製される。従って、研磨用組成物は、砥粒、酸化剤及びサプレッサー化合物を含有する。
【0025】
第2の実施形態の研磨用組成物も、第1の実施形態の研磨用組成物と同様、ヒ化ガリウムなどのIII−V族化合物材料部分と酸化シリコンなどのケイ素材料部分とを有する研磨対象物を研磨する用途、さらに言えばその研磨対象物を研磨して基板を製造する用途においてIII−V族化合物材料部分を選択的に研磨する目的で使用される。
【0026】
(砥粒)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれる砥粒は、40nm以下の平均一次粒子径を有している必要がなく、この点を除けば第1の実施形態の研磨用組成物中に含まれる砥粒と同じである。
【0027】
(酸化剤)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれる酸化剤は、第1の実施形態の研磨用組成物中に含まれる酸化剤と同じである。
【0028】
(サプレッサー化合物)
第2の実施形態の研磨用組成物中に含まれるサプレッサー化合物は、ケイ素材料部分の表面OH基と結合してケイ素材料部分の加水分解を抑制する働きをする。詳細には、ケイ素材料部分の表面OH基とサプレッサー化合物の持つ酸素原子の間で水素結合が形成されると考えられる。また、ケイ素材料部分の表面OH基とサプレッサー化合物のもつ窒素原子との間で水素結合が形成されると考えられる。そのため、サプレッサー化合物を使用した場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。このメカニズムを考えると、サプレッサー化合物は酸素原子を持つ化合物及び窒素原子を持つ窒素含有化合物であることが好ましい。酸素原子を持つサプレッサー化合物の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、2−プロピン−1−オール、アリルアルコール、エチレンシアノヒドリン、1−ブタノール、2−ブタノール、(S)−(+)−2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール、パーフルオロ−t−ブチルアルコール、クロチルアルコール、1−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、S−アミルアルコール、1−ヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、DL−3−ヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−エチルヘキシルアルコール、(S)−(+)−2−オクタノール、1−オクタノール、DL−3−オクチルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−ニトロベンジルアルコール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、3,5−ジニトロベンジルアルコール、3−フルオロベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、4−フルオロベンジルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、m−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、m−アミノベンジルアルコール、m−ニトロベンジルアルコール、o−アミノベンジルアルコール、o−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ニトロベンジルアルコール、2−(p−フルオロフェニル)エタノール、2−アミノフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、2−メチル−3−ニトロベンジルアルコール、2−メチルベンジルアルコール、2−ニトロフェネチルアルコール、2−フェニルエタノール、3,4−ジメチルベンジルアルコール、3−メチル−2−ニトロベンジルアルコール、3−メチル−4−ニトロベンジルアルコール、3−メチルベンジルアルコール、4−フルオロフェネチルアルコール、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、4−メチル−3−ニトロベンジルアルコール、5−メチル−2−ニトロベンジルアルコール、DL−α−ヒドロキシエチルベンゼン、o−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、p−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、p−アミノフェネチルアルコール、p−ヒドロキシフェニルエタノール、p−メチルベンジルアルコール及びS−フェネチルアルコール等のアルコール、
4−メチルフェノール、4−エチルフェノール及び4−プロピルフェノール等のフェノール、
グリセリンエステル、ソルビタンエステル、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、3−エトキシプロピオン酸、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ソルビタン脂肪酸エステル、POEグリコール脂肪酸エステル、POEヘキシタン脂肪酸エステル及びアラニンエチルエステル等のエステル、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール、アルケニルポリプロピレングリコールアルキルエーテル及びアルケニルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、POEアルキレンジグリセリルエーテル、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEポリプロピレンアルキルエーテル等のエーテル、及びポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンのブロック/ランダムコポリマー等が挙げられる。
【0029】
また、窒素原子を持つサプレッサー化合物の具体例としては、ビスヘキサメチレントリアミン(BHMT)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、テトラメチルアミン(TMA)、テトラエチルアミン(TEA)、ヒドロキシルアミン(HA)、ポリエチレンアミン(PEA)、水酸化コリン(CH)、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、キトサン等のアミン化合物が挙げられる。
【0030】
研磨用組成物中のサプレッサー化合物の含有量は10質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは50質量ppm以上である。サプレッサー化合物の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下する。
【0031】
研磨用組成物中のサプレッサー化合物の含有量はまた、100000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50000質量ppm以下である。サプレッサー化合物の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。
【0032】
(pH調整剤)
第2の実施形態の研磨用組成物も、第1の実施形態の研磨用組成物と同様、中性であること、より具体的には6〜8の範囲内であることが好ましい。pHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度が低下するという有利がある。
【0033】
第2の実施形態の研磨用組成物のpHを所望の値に調整するのにpH調整剤を使用してもよい。使用するpH調整剤は酸及びアルカリのいずれであってもよく、また無機及び有機の化合物のいずれであってもよい。
【0034】
第2の実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
・ 第2の実施形態の研磨用組成物では、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度を低下させるために、サプレッサー化合物が使用されている。そのため、この研磨用組成物はIII−V族化合物材料部分に対する高い研磨選択性を有する。
【0035】
・ 研磨用組成物のpHが中性である場合には、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、III−V族化合物材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
【0036】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 第1及び第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の砥粒を含有してもよい。第1の実施形態の研磨用組成物が二種類以上の砥粒を含有する場合、一部の砥粒については必ずしも40nm以下の平均一次粒子径を有している必要はない。
【0037】
・ 第1及び第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の酸化剤を含有してもよい。
・ 第2の実施形態の研磨用組成物は、二種類以上のサプレッサー化合物を含有してもよい。
【0038】
・ 第1の実施形態の研磨用組成物は、サプレッサー化合物をさらに含有してもよい。この場合、研磨用組成物によるケイ素材料部分の研磨速度がさらに低下するために、III−V族化合物材料部分に対する研磨用組成物の研磨選択性がさらに向上する。
【0039】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、防腐剤のような公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。
【0040】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0041】
コロイダルシリカ及び酸化剤を、必要に応じてサプレッサー化合物及びpH調整剤とともに水と混合することにより、実施例1〜16及び比較例1の研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物中の成分の詳細、及び各研磨用組成物のpHを測定した結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

表1中、“H”は過酸化水素を表し、“APS”は過硫酸アンモニウムを表し、“KOH”は水酸化カリウムを表す。
【0043】
実施例1〜16及び比較例1の各研磨用組成物を用いて、ヒ化ガリウムブランケットウェーハ及びオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)ブランケットウェーハの表面を、表2に記載の条件で研磨したときに求められる研磨速度の値を表3の“GaAsの研磨速度”欄及び“TEOSの研磨速度”欄に示す。研磨速度の値は、TEOSブランケットウェーハについては光干渉式膜厚測定装置を用いて測定される研磨前後のウェーハの厚みの差を研磨時間で除することにより求め、ヒ化ガリウムブランケットウェーハについては、研磨前後のウェーハの重量の差を密度と研磨時間で除することによって求めた。また、こうして求めた実施例1〜16及び比較例1の各研磨用組成物によるヒ化ガリウムの研磨速度を同じ研磨用組成物によるTEOSの研磨速度で除して得られる値を表3の“GaAsの研磨速度/TEOSの研磨速度”欄に示す。TEOSの研磨速度の値は、300Å/min以下の場合に合格レベルであるが、より好ましくは200Å/min以下、さらに好ましくは100Å/min以下である。ヒ化ガリウムの研磨速度をTEOSの研磨速度で除した値は、5以上の場合に合格レベルであるが、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

表3に示すように、実施例1〜16の研磨用組成物の場合には、TEOSの研磨速度が100Å/min以下であるか、あるいはヒ化ガリウムの研磨速度をTEOSの研磨速度で除した値が15以上であり、III−V族化合物材料部分を選択的に研磨する目的で満足に使用できるレベルの結果が得られた。
【0046】
これに対し、比較例1の研磨用組成物の場合には、ヒ化ガリウムの研磨速度をTEOSの研磨速度で除した値が合格レベルに達しておらず、III−V族化合物材料部分を選択的に研磨する目的で満足に使用できるレベルの結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族化合物材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、平均一次粒子径が40nm以下である砥粒と、酸化剤とを含有することを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記ケイ素材料を含有する部分の表面OH基と結合してケイ素材料を含有する部分の加水分解を抑制する働きをするサプレッサー化合物をさらに含有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
III−V族化合物材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、砥粒と、酸化剤と、前記ケイ素材料を含有する部分の表面OH基と結合してケイ素材料を含有する部分の加水分解を抑制する働きをするサプレッサー化合物とを含有することを特徴とする研磨用組成物。
【請求項4】
研磨用組成物が中性のpHを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、III−V族化合物材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、III−V族化合物材料を含有する部分とケイ素材料を含有する部分とを有する研磨対象物を研磨することにより、基板を製造することを特徴とする基板の製造方法。

【公開番号】特開2013−115152(P2013−115152A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258343(P2011−258343)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】