説明

研磨装置用の研磨工具および研磨方法

【課題】内径部を有する円板状の研磨材を備えた研磨工具でガラス基板を研磨後、研磨材の内周の摩耗量が極端に小さかったり、大きかったりすることがあり、研磨材の表面を修正加工する必要が生じ、またガラス基板を目的形状に研磨できない場合がある。
【解決手段】中心に内径穴15cが形成された円板状の研磨材15dを工具保持円盤15bの片面側に固定し、工具保持円盤15bを研磨装置により回転させて研磨材15dに当接する被研磨部材の表面を研磨する研磨装置用の研磨工具において、円板状の研磨材15dは、前記内径穴15cの内径に対する外径の比である内外径比を10%以上、20%以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板等の板状被加工物の表面を研磨する研磨装置に用いられる中心部に円形の内径穴の開いた円板状の研磨工具、およびこの研磨工具を用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレーの製造に際し、例えばR,G,Bのカラーフィルタのパターン、TFTアレイのパターンは、フォトマスク基板によりガラス基板上に露光されて形成される。このフォトマスク基板は、石英ガラス基板(以下、ガラス基板とする)の表面にマスクを形成したもので、ガラス基板の表面を研磨加工により高平坦度に研磨している。
【0003】
また、このガラス基板は矩形形状をしており、その表面研磨加工においては、化学機械研磨装置としてのオスカー式研磨機に糸巻き状の研磨軌跡を適用することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
オスカー式研磨機は、垂直方向に回転軸を有し、該回転軸を中心に回転する下定盤と、前記下定盤に対してその径方向に揺動(往復動)すると共に垂直方向の回転軸を中心に自転する上定盤とを有し、下定盤には被加工物としてのガラス基板を保持し、上定盤には研磨工具を取り付けている。ガラス基板が平面矩形形状の場合、下定盤の1回転で上定盤が4往復動するように同期駆動させ、被加工物であるガラス基板の表面に矩形枠状の研磨軌跡(以下、矩形研磨軌跡と称す)を形成する。
【0005】
研磨工具は、回転砥石としての作用を有し、中心部に円形に開口された内径穴を有する円板形状に形成した研磨材を備えている。
【0006】
また、ガラス基板の表面を高平坦度に加工する方法としては、予め測定したガラス基板の表面形状に基づいて、所望する平坦度を得るための研磨(研削)量を求め、この求めた研磨量に従って加工し、表面を目的とする形状に加工する修正加工方法がある。
【0007】
そして、このようなガラス基板の表面を高平坦度に加工するための研磨工具としては、内径穴を有する円板形状の研磨材を備えた研磨工具が使用され、研磨工具は被加工物であるガラス基板に対して外周側から中心に向かって研磨軌跡を往復移動させながら自転すると共に、一定圧力をガラス基板に加えながら加工(定圧加工)し、あるいは研磨工具を一定量ずつ降下(切り込み加工)させながら研磨加工を行い、その際研磨剤を研磨工具の研磨材下面である工具面とガラス基板の間に介在させる。
【特許文献1】特開2006−062055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、ガラス基板の研磨加工では両面研磨機が使用され、1度に複数枚処理できるなどの利点がある。しかしながら、近年のガラス基板の大サイズ化に伴い装置が非常に大型化し研磨装置そのものが製作困難となっているため、装置サイズが比較的小さくて済むオスカー式研磨機が大型ガラス基板の研磨加工には向いていると言える。
【0009】
オスカー式研磨機において、内径穴を有する円板形状の研磨材を備えた研磨工具は、被加工物(被研磨部材)であるガラス基板の回転により予め設定している研磨軌跡上を研磨工具が移動しつつ、研磨工具およびガラス基板が回転する。その際、ガラス基板の表面が研磨されると同時に、研磨工具の工具面が磨耗する。
【0010】
被加工物であるガラス基板の研磨量と研磨工具の工具面における磨耗量は、研磨工具と被加工物であるガラス基板との相対速度、被加工物に対する研磨工具の印加圧力、加工時間に比例する。
【0011】
また、研磨工具と被加工物であるガラス基板との相対速度は、自転する研磨工具の中心付近は回転速度がゼロに近いため、研磨工具を構成する研磨材の内径穴の直径(内径)が小さい、もしくは内径穴がないと、特に摩耗速度が比較的大きい研磨工具(例えば、鋳鉄製の研磨工具)の場合は、研磨工具の工具面である該研磨材の表面は内周側と外周側とでは磨耗量に差が生じ、研磨工具の工具面の形状(研磨材の形状)が著しく変形するため、工具形状の修正が必要となり、生産効率の低下を招くおそれがある。
【0012】
したがって、内径穴の直径を大きくすれば外周と内周の差が小さくなり、研磨工具の工具形状の変形を少なくすることができるが、研磨に供する工具面の幅が狭くなり、一度に研磨できる面積が小さくなる。特に、例えば1220mm×1400mm、あるいはそれ以上の大サイズのガラス基板の表面を平坦化のために研磨する際に、研磨時間の短縮化を図るためには、研磨工具の工具面の面積をできるだけ大きくすることが望まれている。
【0013】
ところで、内径穴を備えた研磨工具によりガラス基板等の被研磨材を研磨すると、図5に示すように、ガラス基板等の被研磨材の表面の一部に突出部が形成される場合があった。なお、図5は、ガラス基板の表面を研磨工具により研磨した実線で示す加工面形状と、破線で示す突出部がないものとして内挿した形状(以下基準形状と称す)を示す。なお、x軸は基板面方向、y軸は基板厚さ方向を示す。
【0014】
上記突出部が形成される原因として、研磨工具を例えば揺動させてガラス基板を研磨処理する場合、ガラス基板の表面において、研磨工具の内径穴が通過する部分は、内径穴の通過しない部分に比べて研磨量が少なくなり、結果として該内径穴が通過する部分の基板形状が回りに比べて突出する。このような突出部の生成は、研磨工具の内径穴の直径(内径)が大きくなるに従って顕著となり、特に図2に示す研磨工具の移動幅Lが研磨工具の内径穴の直径よりも狭い範囲の場合に顕著となる。
【0015】
突出部の突出量を加工後におけるガラス基板の平均研磨量で規格化した数値を突出度(ガラス基板等の被研磨物の基準形状からの変化の度合い)とすると、ガラス基板の表面を高平坦度に加工するには突出度をできるだけ小さくする必要がある。しかし、単純に突出度を小さくするには、内径穴の直径を小さくすればよいが、この場合は上述のように工具形状の変形を招くことになる。
【0016】
また、自転するガラス基板に対して円形の研磨軌跡を描く場合には、ガラス基板の回転と工具の往復駆動との間に同期をとる必要がないため、工具の揺動範囲を大きくし、例えばガラス基板の回転半径を一往復の揺動範囲とすればよいが、これを矩形のガラス基板に適用した場合、基板の辺部、角部で研磨量に差が生じる不均一研磨となる。これを回避するためには、上述した矩形研磨軌跡を描いて研磨加工を行う必要がある。
【0017】
本発明の目的は、このような観点に鑑みなされたもので、研磨加工に伴う研磨工具の変形(偏摩耗)を抑えることができ、加工対象であるガラス基板等の被研磨部材の表面を目的形状に研磨加工できる研磨装置用の研磨工具を提供しようとするものである。
【0018】
本発明の他の目的は、内径穴を備えた研磨工具により被研磨部材の表面を突出部を形成することなく研磨処理できる研磨方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的を実現する研磨装置用の研磨工具の構成は、中心に内径部が形成された円板状の研磨材を工具保持円盤の片面側に固定し、該工具保持円盤を研磨装置により回転させて該研磨材に当接する被研磨部材の表面を研磨する研磨装置用の研磨工具において、前記円板状の研磨材は、前記内径部の内径に対する研磨材の外径の比である内外径比を10%以上、20%以下としたことを特徴とする。
【0020】
本発明の目的を実現する研磨方法は、矩形状被研磨部材の表面を平坦に加工する研磨方法において、上記した研磨装置用の研磨工具を単一の研磨軌跡をトレースさせ、あるいは内径穴の直径よりも狭い移動幅で複数の研磨軌跡をトレースさせながら被研磨部材を研磨することを特徴とする。
【0021】
また、上記した研磨方法において、前記単一の研磨軌跡は、少なくとも対向する二辺が内側に向かって湾曲し、前記矩形状被研磨部材の四隅に向かって尖った形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の研磨工具によれば、回転するガラス基板等の被研磨部材の表面に対し、研磨工具を往復揺動させながら研磨する際、研磨工具の研磨材は、研磨材の表面における形状が全体的にバランス良く摩耗する。このため、研磨後における研磨材の表面を修正加工する必要が殆どない。
【0023】
また本発明による研磨方法によれば、突出部を形成することなくガラス基板等の被研磨部材の表面を目的とする形状に加工することができ、特に内径穴を有する研磨工具を単一の研磨軌跡をトレースさせながら被研磨部材を研磨することで、突出部を形成することなく目的とする表面形状に研磨することができる。
【0024】
また、請求項3に係る発明によれば、研磨工具が糸巻き軌跡に沿ってトレースしながらガラス基板等の矩形形状に形成された被研磨部材の4隅を目的形状に研磨する際、研磨工具の内径穴の影響による突出部が発生することがなく、大型の矩形ガラス基板の表面を全体に目的の形状に研磨することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1は本発明による研磨装置用の研磨工具の一実施形態を示す図、図2は図1の研磨工具と研磨対象であるガラス基板との関係を示す図、図3は本発明を実施できる研磨装置の実施形態を示し、(a)は概略上面図、(b)は概略正面図および制御ブロック図を示す。
【0026】
図3に示す研磨装置10は、不図示の基台に上下方向に回転軸11を有するワーク回転駆動機構12を取り付けている。
【0027】
ワーク回転駆動機構12は、回転数可変の駆動モータ12aと減速機12bとモータの回転角(角速度)を検出するロータリエンコーダ12c等により構成され、減速機12bの出力側に回転軸11を取り付け、この回転軸11の上端に水平回転テーブル13を取り付けている。
【0028】
水平回転テーブル13上には、ワーク保持手段14が設置され、このワーク保持手段14上にワークであるガラス基板1を水平姿勢に保持する。本実施形態において、ワーク保持手段14は、ポリウレタン等の粘弾性素材を平板状としたもの(以下、バッキングパッドと称す)を使用している。
【0029】
一方、水平回転テーブル13の上方には、上下方向に回転軸15aを有する研磨工具15が配置され、工具回転駆動機構16により研磨工具15を回転駆動する。工具回転駆動機構16は、工具昇降機構17を介して工具水平移動機構18に取り付けられ、工具水平移動機構18は水平案内手段19に支持案内されて水平方向に移動可能となっている。
【0030】
本実施形態において、研磨工具15は、図1に示すように、回転軸15aの先端に固定された金属製の工具保持円盤15bに、有底の内径穴15c(内径d1)を中心部に形成した例えば円板状に形成した鋳鉄製の研磨材15d(外径d2)を固定した構成としている。また、研磨工具15は回転軸15aに対して工具保持盤15bが直角に固定されている。なお、ワーク保持手段14はバッキングパッドに限定されるものではなく、真空吸着用の孔部が形成された鋼製の保持台等であっても良い。また、研磨工具15は、工具保持盤15bに対して研磨材を自由に首振りできる構成、あるいは回転軸15aに対して工具保持盤15bを自由に首振りできる構成であっても良い。
【0031】
工具回転駆動機構16は、パソコン19から受け取った制御データに基づいて制御装置20からの工具回転数指令により回転数を可変とし、また例えばロータリエンコーダにより研磨工具15の回転数を検出可能としている。
【0032】
工具昇降機構17は、不図示の位置センサにより工具15の昇降位置を検出可能とすると共に、不図示のパルスモータ等のアクチュエータに制御装置20より工具昇降指令信号を出力すると、指令信号に応じて研磨工具15を昇降させる。
【0033】
工具水平移動機構18は、研磨工具15が水平回転テーブル13の回転中心を通る直径線上を移動軌跡として研磨工具15を往復移動(揺動)させ、不図示の位置センサにより研磨工具15の水平方向位置を検出可能としている。
【0034】
工具15の往復移動量と水平回転テーブル13の回転速度との関係を調節することにより、工具15がガラス基板1に対して種々の研磨軌跡を描いて研磨することができる。
【0035】
本実施形態において、工具15は、工具の内径と外形の比である内外径比を10%以上、20%以下、例えば外径700mm、工具内径100mmとしたものを使用している。
【0036】
本実施形態において、研磨工具15が図2に示す矩形研磨軌跡tr(または同心的に多数の矩形研磨軌跡が設定されてもよい)をトレースして矩形平板状のガラス基板1を研磨する場合には、矩形研磨軌跡trは単一の研磨軌跡であるため、研磨工具15は当該矩形研磨軌跡上をトレースするためにガラス基板1の回転に同期して往復揺動する。この場合、上記した内外径比を有する工具15を使用することにより、工具15の内径孔に起因する突出部の形成は見られない。
【0037】
なお、工具15は例えば図2を例にすると、研磨工具15の内径穴15cがガラス基板1の外周端から外側に出ない範囲で使用される。
【0038】
また、図2において、実際には多数の矩形研磨軌跡が設定されることもあり、説明容易のために代表的に1本の矩形研磨軌跡trを図示している。この矩形研磨軌跡trは4辺が内側に向かって湾曲し、ガラス基板1の4隅に向かって尖った形状としており、この矩形軌跡は全体的に糸巻きに似た形状としていることから糸巻き軌跡と呼ぶ。この糸巻き軌跡では、ガラス基板1の四隅近くまで研磨工具15が近付くので、ガラス基板1の四隅部分も他の部分と同様に研磨でき、ガラス基板1の表面を全体的に一様に研磨できる。ここで、ガラス基板1の中心から基板長手方向を0°方向としたとき、最外周軌跡の0°位置と最内周軌跡の0°位置の間隔Lを工具移動幅と称す。
【0039】
そして、研磨工具15が一つの矩形研磨軌跡trのトレースを終了すると、例えば外側の矩形研磨軌跡から内側の矩形研磨軌跡に向けて研磨工具15を所定量だけ移動させ再び矩形研磨軌跡trをトレースしてガラス基板を研磨し、この一連の動作を繰り返し行い最終的に上述した工具移動幅Lだけ移動してガラス基板1に対する全ての研磨を終了する。
【0040】
なお、本発明は矩形軌跡の4辺が内側に湾曲した糸巻き軌跡に限定されるものではなく、対向する2辺が内側に湾曲し、他の対向する2辺を直線状とした糸巻き軌跡としても良く、4辺を直線状とする軌跡としてもよく、また糸巻き状軌跡と4辺直線状の矩形軌跡とを組み合わせても良い。
【0041】
また、上記した実施形態では、閉鎖した軌跡であるいわゆる一筆書きの軌跡である単一の研磨軌跡として上述した矩形軌跡を例にしているが、本発明は単一の研磨軌跡として一筆書きでき、回転するガラス基板等の被研磨部材の回転に同期して研磨工具15の位置を制御することにより描ける閉鎖した軌跡であればどのようなものでも良く、例えば星形状、5角形以上の多角形、楕円形等の種々の形状の軌跡に対して適用することができる。
【0042】
また、本実施形態において、工具15を上方から下方へ段階(ステップ)的に降下させる切り込み加工を行う場合、切り込みのタイミング(工具15を1ステップ降下させるタイミング)として所定の加工時間毎で行っているが、回転テーブル13の周回数に応じて行うようにしても良い。
【0043】
上記切り込み加工において、工具15の総降下量(目標切り込み量)は基板表面形状の計測結果から、目的形状を得るのに要する修正加工量に基づいて求められる。
【実施例】
【0044】
工具の外形を700mmとし、工具の内径を200mm(比較例1)、100mm(実施例1)、50mm(比較例2)、0mm(比較例3)の各研磨工具によりガラス基板を研磨した。このとき図2に示す糸巻き軌跡(tr)を用いた。工具の材質としては、球状黒鉛鋳鉄を用いた。
【0045】
研磨後におけるガラス基板の突出量と突出度を基板中心から基板0゜方向と基板90゜方向の2か所についてそれぞれ求めた。結果を表1に示す。また、図4は工具内径と基板0゜方向の突出度との関係を示すグラフである。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、同一外径の研磨工具において、基板0゜方向、基板90゜方向共に工具内径が大きいほど突出度が大きくなるが、凹部深さ値は小さくなる。突出度が大きいと基板を平坦化するために再度研磨する必要が生じ、凹部深さが大きいと下記に示すように工具修正が必要となる。
【0048】
図6(a)には、実施例1および比較例1〜3における工具内径と加工後の工具形状との関係、すなわち工具半径と工具形状(μm)との関係を示す。
【0049】
図6(a)において、比較例1〜3、及び実施例1の外周での工具形状(研磨材15dの形状)はいずれも12μm程度で、比較例1を除く他の工具では半径150mmの前後で工具形状(研磨材15dの形状)に凹部(実施例1:29μm程度、比較例2:26μm程度、比較例3:25μm程度)を有し、外周からこの凹部まで略同様の工具形状(研磨材15dの形状)を有している。
【0050】
また、図6(b)には、図6(a)における実施例1、比較例1〜3の凹部の深さのうち、工具形状の工具の最内周と最外周を通る直線を基準にしたときの工具半径と凹形状の深さとの関係を示し、その最大値を、凹部深さ値として表1に示した。
【0051】
すなわち、実施例1、比較例2、3では研磨材15dの外周と内周の間である中周が窪んだ形状となる。
【0052】
ここで、工具(研磨材15d)は弾性体であるため、前記工具中周の凹部は印加圧力により変形しある程度は平らになっていくと考えられる。このときの変形は工具(研磨材15d)全体の形状が平らになる変形(工具内周と外周の差がなくなるような変形)と、工具中周の凹部が平らになる変形とがあるが、工具圧力が工具の回転中心の回転軸15aを中心とした圧力であるため、回転軸15aからずれた工具中周の変形は起き難い。つまり、工具の印加圧力により工具(研磨材15d)中周部の凹形状が研磨加工中に平らになることは殆どない。
【0053】
図6(a)において、比較例1(内径の半径:100mm)の内周における工具形状(研磨材15dの形状)は34μm程度と大きく、比較例2(内径の半径:25mm)の内周における工具形状(研磨材15dの形状)は13μm程度、比較例3の中心における工具形状(研磨材15dの形状)は6μm程度である。また、実施例1(内径の半径:50mm)の内周における工具形状(研磨材15dの形状)は20μm程度である。
【0054】
すなわち、工具内周径が小さくなると工具内周(研磨材15dの内周)が摩耗しなくなる傾向にあり、比較例2に示すように、工具の内径が外径比10%未満であると工具内周(研磨材15dの内周)の摩耗量が極端に小さくなる。さらに比較例3では、工具内径の摩耗がさらに小さくなるため、工具形状が独楽状(工具全体が凸形状)となり工具全体を使用した研磨が不可能となってしまう。
【0055】
このように、比較例2、3の研磨工具を用いて研磨したガラス基板の突出度は実施例1の研磨工具を用いた場合よりも小さいが、上述のように加工後の工具形状(研磨材15dの形状)の変形が著しく、比較例1の研磨工具を用いて研磨したガラス基板の突出度は実施例1よりもはるかに大きく、平坦度を効率よく向上させることが難しい。
【0056】
一方、実施例1のように、外径比が10%以上、20%以内では、基板突出度も基板90゜方向で5.17%と小さく(比較例2の突出度4.69%とさほど相違しない)、高平坦度の研磨加工に影響を与えるものではない。
【0057】
すなわち、工具外径700mmで内径が100mm前後(工具内外径比が10%〜20%程度)の内径部を有する研磨工具では、研磨するガラス基板の基板突出度が小さく、また工具の摩耗形状のバランスが取れている。したがって、高平坦度にガラス基板を研磨でき、また研磨工具の研磨面もバランス良く摩耗するので、研磨面の修正加工を殆ど不要とする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による研磨装置用の研磨工具の一実施例を示す図。
【図2】図1の研磨工具とガラス基板との関係を示す図。
【図3】本発明を有効に実施できる研磨装置を示し、(a)は概略上面図、(b)は概略正面図および制御ブロック図を示す。
【図4】工具内径と基板0゜方向の突出度の関係を示す図。
【図5】基板突出部の模式図。
【図6】(a)は工具内径と加工後の工具形状との関係を示す図、(b)は工具中周の凹部深さを示す図。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラス基板
12 ワーク回転駆動機構
13 水平回転テーブル
14 ワーク保持手段
15 研磨工具
16 工具回転駆動機構
17 工具昇降機構
18 工具水平移動機構
19 水平案内手段
20 制御装置
tr 研磨軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に内径部が形成された円板状の研磨材を工具保持円盤の片面側に固定し、該工具保持円盤を研磨装置により回転させて該研磨材に当接する被研磨部材の表面を研磨する研磨装置用の研磨工具において、
前記円板状の研磨材は、前記内径部の内径に対する研磨材の外径の比である内外径比を10%以上、20%以下としたことを特徴とする研磨装置用の研磨工具。
【請求項2】
矩形状被研磨部材の表面を平坦に加工する研磨方法において、請求項1に記載の研磨装置用の研磨工具を単一の研磨軌跡をトレースさせ、あるいは内径穴の直径よりも狭い範囲で複数の研磨軌跡をトレースさせながら被研磨部材を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項3】
前記単一の研磨軌跡は、少なくとも対向する二辺が内側に向かって湾曲し、前記矩形状被研磨部材の四隅に向かって尖った形状としたことを特徴とする請求項2に記載の研磨方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−214271(P2009−214271A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62973(P2008−62973)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】