破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体
【課題】信頼区間を簡易かつ適正に算出できる破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体を提供すること。
【解決手段】この破壊検査システムは、寿命母集団決定部21と、無作為抽出部22と、二次標本算出部23と、信頼区間決定部24とを有する。寿命母集団決定部21は、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定し、無作為抽出部22は、上記寿命母集団のうちから上記複数個の要素を無作為抽出する。二次標本算出部23は、無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求め、信頼区間決定部24は、複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する。
【解決手段】この破壊検査システムは、寿命母集団決定部21と、無作為抽出部22と、二次標本算出部23と、信頼区間決定部24とを有する。寿命母集団決定部21は、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定し、無作為抽出部22は、上記寿命母集団のうちから上記複数個の要素を無作為抽出する。二次標本算出部23は、無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求め、信頼区間決定部24は、複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊検査システムに関し、例えば、機械部品等の破壊の検査を行う破壊検査システムに関する。また、本発明は、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の破壊寿命の信頼区間を求める方法としては、非特許文献1(Koyo Engineering Journal N0. 130 (1986))に記載されている方法がある。この方法は、寿命データを統計処理するもので、転がり軸受の寿命分布として、次の数式1に示すワイブル分布を仮定する。
【数1】
【0003】
ここで、xは、軸受寿命であり、上記θ、mは、定数パラメータである。上記方法は、その数式1から導かれる次の寿命の数式2に基づいて、信頼区間を求めるものである。
【数2】
【0004】
詳細に述べると、無限個数のデータからなる母集団を考え、その中からランダムにn個のデータを抽出し、そのデータを小さい順に並びかえたとき、母関数の確率密度g(z)と、累積分布関数G(z)が与えられたとすれば、k番目にあたるデータz(k)が、任意の微小空間(z,z+Δz)に入る確率h(z)は、多項定理により次の数式3から導かれる。
【数3】
【0005】
ここで、G(z)と、g(z)との関係は、次の数式4で与えられる。
【数4】
【0006】
ここで、データを取り出した母関数が、区間(0,1)において一様分布であれば、g(z)=1であり、数式4から、G(z)=zになる。したがって、これを、数式3に代入することにより、次の数式5が導かれる。
【数5】
【0007】
k番目にあたるデータz(k)の分布が、数式5で与えられたとき、z(k)の累積分布関数は、次の数式6で与えられる。
【数6】
【0008】
したがって、数式5を、数式6に代入して、次の式7が導出される。
【数7】
【0009】
ここから、k番目にあたるデータz(k)が100(1−α)%の範囲に収まる区間を計算する。具体的には、信頼区間の下限は、次の数式8で求める。
【数8】
【0010】
また、信頼区間の上限は、次の数式9で求める。
【数9】
【0011】
そして、数式8で求めた下限zα/2(k)を数式2に代入して、次の数式10で示される下限を求める。
【数10】
【0012】
また、数式8で求めた上限z1−α/2(k)を数式2に代入して、次の数式11で示される上限を求める。従来の方法は、このようにして、信頼区間を求めるようになっている。
【数11】
【0013】
尚、数式1より、以下の数式12が導かれる。したがって、縦軸を、lnln1/〔1−F(x)〕とし、横軸を、lnxとすると、式11は、Y=mX+a(aは定数)となるから、図化すると、図17に示すように、全てのワイブル分布は、勾配mの直線として表される。このように、縦軸がlnln1/〔1−F(x)〕で、横軸がlnxであるグラフは、ワイブル確率紙と呼ばれている。図18は、数式10、11に基づくワイブル確率紙上における信頼区間を示す図である。
【数12】
【0014】
尚、数式6は、確率密度であるから全領域にわたって積分すると、Hk(z)=1となるが、メジアンランクzm(k)は、次の式13を解いたときのzの値であり、分布を等分するzの値をさす。
【数13】
【0015】
ここで、数式13の近似解としては、次の数式14が知られている。
【数14】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】寿命データの統計処理(Koyo Engineering Journal N0. 130 (1986) 47)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来の方法では、信頼区間を求める数式8、9に、試料数nと順序番号kに関する組合せnC○が含まれているため、整数以外の順序番号が生じる中途打切りを含む標本に対しては、この方法で信頼区間を求めることができないという問題がある。
【0018】
また、中途打切りを含む標本に対する信頼区間の計算方法として、全数破損のときの順序統計量から比例補間して求める方法や、複雑な統計理論を駆使した方法も提案されているが、従来理論との不整合などの問題がある。
【0019】
すなわち、従来、信頼区間を簡易かつ適正に算出できる確立した破壊検査システムが存在せず、信頼区間の評価を、簡易かつ適正に行うシステムは知られていない。
【0020】
そこで、本発明の課題は、信頼区間を簡易かつ適正に算出できる破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、この発明の破壊検査システムは、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定手段と、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出手段と、
上記無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出手段と、
上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定手段と
を備えることを特徴としている。
【0022】
尚、無作為抽出手段が、無作為抽出する要素の数を、試料の数と一致させる理由は、抽出される二次標本のばらつきが、試料数に依存するためであり、寿命試験の試料数と異なる数の要素から二次標本を作ると、寿命試験で得た標本とは,異なる性質のものになってしまうためである。
【0023】
本発明者は、後述するように、モンテカルロ法により、標本抽出のシミュレーションを繰り返した結果、母集団から抽出される標本のばらつきが、母集団を推定母集団に置き換えて確率論から算出される信頼区間にほぼ一致することを見出した。
【0024】
また、この結果を応用し、仮想の母集団からの標本抽出で得られる二次推定母集団のばらつきによって、信頼区間をおおむね推定可能であることを確認した。
【0025】
本発明によれば、寿命母集団決定手段が、現実に試験が行われた複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団からなる推定母集団を決定できる。また、無作為抽出手段が、上記寿命母集団のうちから上記複数個の要素を無作為抽出することができて、二次標本算出手段が、無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求めることができる。また、信頼区間決定手段が、上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定することができる。したがって、本発明によれば、上記寿命母集団からの標本抽出で得られる二次標本のばらつきによって、適正な信頼区間を求めることができる。
【0026】
また、本発明によれば、無作為抽出のシミュレーションで抽出データのばらつきを評価することができるから、理論式が適用できない中途打ち切りデータを含む標本の信頼区間を推定できる。
【0027】
また、一実施形態では、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定する。
【0028】
本発明者は、二次標本から二次推定母集団を求めた上で、その求めた二次推定母集団に基づいて信頼区間を求めると、二次標本そのものに基づいて、信頼区間を求めた場合と比較して、低破損確率での信頼性が高くなることを確かめた。
【0029】
上記実施形態によれば、上記二次推定母集団手段が、決定した二次推定母集団に基づいて、信頼区間を求めることができるから、信頼区間の低破損確率での信頼性を高くすることができる。
【0030】
また、一実施形態では、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定する。
【0031】
順序統計量は、順序番号によって分布の形が大きく異なる。そのため、時間軸方向に変換した信頼区間も同様に分布の形は順序番号によって異なるはずであり、これを模擬した各破損確率レベルの二次標本あるいは二次推定母集団の分布も様々な形の分布となり得る。ここで、各破損確率レベルの二次推定母集団の分布に対しても、あらゆる形の分布に柔軟に対応できるワイブル分布を適用すると、データのバラツキを適正に評価できる。
【0032】
上記実施形態によれば、信頼区間決定手段が、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するから、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できて、例えば、軸受等の耐久性を正確に把握することができ、適正品質の製品設計、選定を行うことができる。
【0033】
また、一実施形態では、
上記第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団である。
【0034】
母集団のサイズを無限大として、母集団を例えば2母数ワイブル分布を仮定して、無作為抽出される寿命のばらつきを模擬する場合、0や無限大に極端に近い寿命が出現する場合があるが、この場合、実際よりも寿命のばらつきを過大に評価してしまう。一方、例えば、ワイブル分布で整理される転がり軸受等の寿命において、0や無限大に極端に近い寿命は、実際には観測されない。
【0035】
上記実施形態によれば、第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団であって、サイズが無限大の寿命母集団でないから、寿命が0や無限大に極端に近いデータが発生することを防止できる。したがって、信頼性が担保された寿命推定が可能になり、過剰な安全性を適用することなく、適正品質の軸受設計、選定が可能になる。
【0036】
また、一実施形態では
上記第1の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であり、
上記信頼区間決定手段は、上記破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とする。
【0037】
上記実施形態によれば、第1の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であって、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするから、信頼性が高い信頼区間を算出できる。
【0038】
また、一実施形態では、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定し、
上記第2の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数である。
【0039】
上記実施形態によれば、上記第2の分布関数は、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であるから、信頼性が高い信頼区間を算定できる。
【0040】
また、一実施形態では、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定する。
【0041】
上記実施形態によれば、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布を直接ワイブル回帰して、二次推定母集団の推定を行わずに、累積確率を求めるから、信頼区間の算出の計算時間を大幅に短縮できる。
【0042】
また、一実施形態では、
上記要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものである。
【0043】
上記実施形態によれば、軸受寿命の信頼区間を簡単かつ適正に求めることができる。
【0044】
また、本発明の破壊検査方法は、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
を備えること特徴としている。
【0045】
また、本発明のデータ処理プログラムは、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0046】
また、本発明のコンピュータ読出し可能なプログラム記録媒体は、
本発明のデータ処理プログラムが記録されている。
【発明の効果】
【0047】
本発明の破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体によれば、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できて、軸受等の耐久性を正確に把握することができ、適正品質の製品設計、選定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の破壊検査システムのブロック図である。
【図2】CPUおよびその周辺部の諸機能を表すブロック図である。
【図3】寿命母集団決定部が、決定した2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数の一例を示す図である。
【図4】仮想母集団から抽出した20組の二次標本(枠外の一点は、F=6.6967%、x=0.0095)をワイブル確率紙上にプロットした図である。
【図5】各組の二次標本から求めた二次推定母集団の寿命を示す図である。
【図6】各破損確率における二次標本の分布を示す図である。
【図7】各破損確率における二次推定母集団の分布を示す図である。
【図8】二次標本分布から推定した信頼区間を示す図である。
【図9】二次推定母集団から推定した信頼区間を示す図である。
【図10】仮定した母集団の寿命分布(θ=10、m=1.5、N=1000)を示す図である。
【図11】表2の標本の寿命分布と推定母集団を示す図である。
【図12】表1の母集団から試料数10の標本を20回抽出した結果(黒三角の標本でF=6.6967%の寿命は0.0783(プロット省略))を示す図である。
【図13】図12の20組の標本から求めた推定母集団を示す図である。
【図14】母集団を試料数10の推定母集団と仮定して求めた信頼区間と、標本データとの比較を示す図である。
【図15】母集団を試料数10の推定母集団と仮定して求めた信頼区間と、標本から求めた推定母集団との比較を示す図である。
【図16】表2の標本に対する20組の二次推定母集団と確率論に基づく信頼区間を示す図である。
【図17】ワイブル確率紙の原理を示す図である。
【図18】ワイブル確率紙上における信頼区間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態の破壊検査システムのブロック図である。
【0051】
この破壊検査システムは、制御装置1と、操作部2と、表示部3とを有し、制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、プログラムおよびデータを格納するメモリ11と、各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)12とを備える。
【0052】
上記CPU10は、操作部2および表示部3の夫々と、I/F12を介してデータを入出力するようになっている。
【0053】
図2は、CPU10およびその周辺部の諸機能を表すブロック図である。
【0054】
図2に示すように、CPU10には、寿命母集団決定部21と、無作為抽出部22と、二次標本算出部23と、信頼区間決定部24とが形成されるようになっており、信頼区間決定部24には、二次推定母集団決定部25と、累積確率算出部26とが形成されるようになっている。上記各部21〜26は、適宜メモリ11にアクセスでき、メモリ11に収納されている計算プログラムを用いることができるようになっている。
【0055】
図2に示すように、上記操作部2で入力された情報は、寿命母集団決定部21に出力されるようになっている。また、上記信頼区間決定部24からディスプレイ等で構成される表示部3に信号が出力されるようになっている。
【0056】
上記構成において、このシステムは、以下のように信頼区間を決定するようになっている。上記寿命母集団決定部21は、ユーザが操作部2を介して入力した10個の軸受の寿命試験の結果を表す信号を受けるようになっている。10個の軸受は、複数個の試料を構成している。上記寿命母集団決定部21は、得られた推定母集団と同じ母数を持つ、多数の構成要素からなる母集団(仮想母集団)を仮定するようになっている。この実施形態では、上記寿命母集団決定部21は、寿命を、X軸とし、累積破損確率(破損確率レベル)Fを、Y軸とする、ワイブル確率紙上における、上記10個の試料の寿命の測定点から、周知の手段、例えば、最小2乗法や重み付き最小2乗法を用いて、ワイブル確率紙上における回帰直線を求めるようになっている。
【0057】
また、上記寿命母集団決定部21は、その回帰直線のデータから、仮想母集団の構成要素数が有限の10000個であるとした場合の、その回帰直線を表す2母数ワイブル分布の特性寿命の推定値θと、ワイブル勾配の推定値mとを求める。上記寿命母集団決定部21は、このようにして、求めたθとmとの値を有する2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数としての寿命母集団(仮想母集団)を決定するようになっている。
【0058】
図3は、上記寿命母集団決定部21が、決定した2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数の一例を示す図である。図3に示す例では、回帰直線で表される推定母集団は、θの値が、13.71で、mが、m=1.316と決定されている。
【0059】
上記無作為抽出部22は、乱数を用いたモンテカルロ法を用いて、1から10000の整数の中から、上記寿命試験が施された軸受の数と同一の10個の順序番号をランダムに選び出すようになっている。
【0060】
上記二次標本算出部23は、寿命母集団決定部21および無作為抽出部22からの信号を受けるようになっている。上記二次標本算出部23は、無作為抽出部22からの情報に基づいて、無作為抽出シミュレーションを行って、寿命母集団決定部21が決定した仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本)を繰り返し抽出するようになっている。
【0061】
この実施形態では、上記二次標本算出部23は、無作為抽出部22が抽出した10個の要素を、順序番号の短い順に並べ替え、各メジアンランクを数式14から近似的に求めると共に、求めた各メジアンランクを、数式2のF(t)に代入して、各要素に対する寿命を求めるようになっている。このようにして、各順序番号の寿命と、各順序番号のメジアンランクで近似される累積破損確率との組からなる要素を、10個算出する。この10個の要素は、二次標本を構成している。
【0062】
上記二次推定母集団決定部25は、二次標本に基づいて、周知の手段、例えば、最小2乗法や重み付き最小2乗法を用いて、ワイブル確率紙上における二次標本の回帰直線を求めるようになっている。また、上記二次推定母集団決定部25は、その回帰直線から第2の分布関数としての2母数ワイブル分布の分布関数を有する二次推定母集団を算出するようになっている。
【0063】
この実施形態では、上記二次推定母集団決定部25は、無作為抽出部22が抽出した20組の10個の要素に基づいて、20組の二次推定母集団を算出するようになっている。
【0064】
上記累積確率算出部26は、複数の破損確率レベルにおける20組の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求めるようになっている。詳しくは、上記累積確率算出部26は、先ず、二次推定母集団決定部25が求めた20組の二次推定母集団のワイブル確率紙上での、横軸を構成する各累積破損確率との交点を、異なる10の累積破損確率(破損確率レベル)の夫々について求めるようになっている。
【0065】
図4は、この実施形態において、20組の二次標本をワイブル確率紙上にプロットした図であり、図5は、この実施形態において、二次推定母集団決定部25が求めた20組の二次推定母集団のワイブル確率紙上での、横軸を構成する各累積破損確率との交点をプロットした図である。
【0066】
この実施形態では、上記累積確率算出部26は、異なる10の累積破損確率(破損確率レベル)の夫々における二次推定母集団の時間分布に基づいて各破損確率レベルで累積確率の分布を求め、その時間分布および累積確率の分布を2母数ワイブル回帰して、その回帰直線を求めると共に、累積確率を求めるようになっている。
【0067】
図6は、破損確率レベルにおける二次標本の分布を2母数ワイブル回帰した結果であり、図中のプロットの記号は、図4に対応している。また、図7は、破損確率レベルにおける二次推定母集団の分布を2母数ワイブル回帰した結果であり、図中のプロットの記号は、図5に対応している。
【0068】
図6では、極端に寿命の短い一点(x=0.0095)のため、F=6.6967%の分布が他の破損確率の分布と大きく異なっている。これに対し、二次推定母集団を用いた場合は、図7に示すように、破損確率が高くなるほど、ばらつきが徐々に小さくなる一様な傾向が認められる。
【0069】
上記信頼区間決定部24は、累積確率算出部26が求めた各破損確率レベルでの回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定するようになっている。このようにして、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を決定するようになっている。
【0070】
図8は、図6において、夫々の破損確率における回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定した結果を示す図である。また、図9は、図7において、夫々の破損確率における回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定した結果を示す図である。
【0071】
図6において、ばらつきが特に大きかった二次標本分布によるF=6.6967%の推定値は、下側限界、上側限界とも理論値と大きく離れている。これに対し、図7の二次推定母集団による推定では、推定可能な破損確率の全域で、比較的良好に信頼区間を推定できていることがわかる。
【0072】
以上、簡単にまとめると、本実施形態は、以下の(a)、(b)、(c)のプロセスにより、信頼区間を良好に推定した。すなわち、(a)それぞれの二次標本をもとに、二次推定母集団を算出した。(b)各破損確率における二次推定母集団の寿命値の分布を2母数ワイブル回帰した。(c)ワイブル回帰した各破損確率の分布において、累積確率が5%と95%の寿命値をそれぞれ下側信頼限界、上側信頼限界とした。
【0073】
尚、図8を参照して、二次標本をそのまま用いて信頼区間を推定した場合に、低破損確率で認められた理論値との乖離は、短寿命データの影響を受けやすいことを示唆している。これは、今回の検討における二次標本の抽出回数が20回と少ないために、特に顕著に表れたものと考えられる。実用化に際しては、二次標本をそのまま用いる方が、二次推定母集団の計算時間が不要になる分、有利である。このように、本発明では、二次標本をそのまま用いて信頼区間を算出しても良く、上述の理論値との乖離は十分な抽出回数を設定することで緩和することができる。
【0074】
以下、上記実施形態のシステムの信頼区間の特定についての信頼性について検討する。先ず、無作為抽出した標本の特性について検討する。
【0075】
ある母集団から試料数nの標本を無作為に繰り返し抽出した場合に、抽出された標本がどのような特性を持つのかを数値シミュレーションによって確認する。このような標本抽出は、通常の寿命試験の手順と同様である。ただし、寿命試験による母集団推定においては、(すべての軸受を壊さない限り)真の母集団が未知であるのに対し、数値シミュレーションでは母集団を既知として扱えるため、抽出した標本と母集団の関係を定量的に把握することができる。
【0076】
次にシミュレーションの手順について説明する。
【0077】
先ず、母集団の仮定を行う。詳しくは、寿命のばらつきが、特性寿命θ、ワイブル勾配mの2母数ワイブル分布に完全に適合するN個の要素(例えば軸受)からなる母集団を仮定する。母集団における順序番号iの要素(N個中、寿命の短い方からi番目の要素)のメジアンランクは、上記数式14により次の数式15ように算出される。
[数15]
【0078】
また、上式を2母数ワイブル分布(数式1、2)に代入することにより,i番目の要素の寿命が以下の数式16ように算出される。
[数16]
ここで、
【0079】
このように、母集団の寿命分布の母数と構成要素の数を仮定することにより、すべての構成要素の寿命を既知として扱うことができる。例として、特性寿命θ=10、ワイブル勾配m=1.5のN=1000個で構成される母集団のメジアンランクと寿命の一部を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
図10は、仮定した母集団の寿命分布(θ=10、m=1.5、N=1000の例)を示す図である。
【0082】
図10に示すように、仮定した表1の母集団をワイブル確率紙にプロットすると、一直線上の点群となる。
【0083】
次に、母集団からの標本抽出について説明する。分布が既知の母集団から無作為抽出するシミュレーションには、一般に分布関数の逆関数を用いて発生させた乱数が用いられている。ここでは、現実の寿命試験により近いシンプルな方法として、母集団の構成要素の数を有限として、その中から無作為に○○番目の要素を抜き取るという手順を模擬する。つまり、構成要素Nが1000個であれば、1から1000の整数の中から、所定の個数(試料数n)の順序番号を選び出す方法である。以下の表2は、表1の母集団から10個を無作為に抽出した標本の一例である。
【0084】
【表2】
【0085】
次に、標本データの整理について説明する。抽出したn個の試料を寿命の短い順に並べ替え、母集団中の順序番号から数式15によってメジアンランクを割り付け直し、さらに、数式16によって寿命を計算する。これにより、無作為抽出したn個の試料による推定母集団が得られる。表2の標本における各試料の寿命を表3に示す。図11は、これらの寿命データをワイブル確率紙にプロットし、2母数ワイブル回帰した結果を示す図である。
【0086】
【表3】
【0087】
次に標本抽出の繰り返しについて説明する。詳しくは、以上の標本抽出と標本データの整理を同じ母集団から繰り返し行うことにより、抽出される標本がどのようにばらつくのかを把握する。図12は、表2に例示した表1の母集団からの標本抽出を20回繰り返した結果ある。また、図13は、20組の標本それぞれを2母数ワイブル回帰して得られた推定母集団である。これらの図からわかるように、無作為抽出された標本は、母集団を取り巻くようにばらついている。
【0088】
続いて、抽出した標本と、母集団の関係について説明する。図13では、累積破損確率50〜80%の範囲において、時間軸方向の推定母集団のばらつきが狭く、そこから高破損確率側あるいは低破損確率側に離れるほど、ばらつきの幅が広くなっている。この傾向は、信頼区間の振る舞いと定性的に類似している。
【0089】
そこで、母集団を同じ母数(θとm)を持つ試料数10の推定母集団と仮定し、数式8−11において、転がり軸受の分野で一般に用いられている危険率a=0.1とおいた以下の数式17、18で表す信頼区間、すなわち、90%信頼区間の計算式によって算出した信頼区間を、図14および15において、図12および図13の結果と比較した。
[数17]
[数18]
【0090】
図14より、それぞれの破損確率レベルにおける20個のプロットのうち0〜3個が母集団の信頼区間よりも外側に位置していることがわかる。このことから、それぞれの破損確率において試料の90%(標本数が20組であれば、18個)が含まれる範囲は、母集団の90%信頼区間の近似になっている。
【0091】
また、図15に示すように、標本データから求めた推定母集団との比較では、破損確率が40〜80%の範囲を除いて、20組中の2組の推定母集団が、母集団の信頼区間よりも外側に位置しており、図14の結果と同様に、それぞれの破損確率における推定寿命の90%が含まれる範囲によって、母集団の90%信頼区間がほぼ近似できている。
【0092】
したがって、分布が既知の母集団から無作為に抽出した標本の特性と、本来は意味を持たない母集団に対する信頼区間との比較から、抽出される標本の90%が含まれる範囲によって、母集団の信頼区間が近似できることが確認された。
【0093】
したがって、この得られた知見を逆説的に応用することにより、寿命試験によって得られた推定母集団に対する信頼区間の推定を、
1)先ず得られた推定母集団と同じ母数を持つ、多数の構成要素からなる母集団を仮定する(仮想母集団と呼ぶ)、
2)次に、無作為抽出のシミュレーションによって,仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本と呼ぶ)を繰り返し抽出する、
3)各破損確率レベルにおける二次標本の時間分布における累積確率5%と95%の時間に挟まれる範囲を、90%の信頼区間の近似値とする、
という手順で行えば、信頼区間の信頼性が得られることになる。
【0094】
図16は、表2に示した試料数10の推定母集団(θ=13.71,m =1.316)に対して、上述の手順を適用した例を示す図である。図中の黒丸は、抽出した20組の各二次標本において、2母数ワイブル回帰により求めた二次推定母集団上の寿命である。なお、仮想母集団の構成要素数は10000とした。
【0095】
図16によれば、ほとんどの破損確率レベルにおいて、20個中、長寿命側に1個、短寿命側に1個のプロットが確率論に基づく信頼区間から外れていることがわかる。逆に言うと、二次標本の90%が含まれる範囲が確率論に基づく信頼区間と定性的に一致している。この結果から、上述の手順によって推定母集団に対する信頼区間のシミュレーションが成立することを確認できた。
【0096】
上記実施形態の破壊検査システムによれば、寿命母集団決定部21が、現実に試験が行われた10個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その10個の試料が適合する2母数ワイブル分布の分布関数の寿命母集団からなる推定母集団を決定できる。また、上記無作為抽出部22が、上記寿命母集団のうちから10個の要素を無作為抽出することができて、二次標本算出部23が、無作為抽出部22によって無作為抽出された10個の要素に基づいて寿命母集団から10個の要素からなる二次標本を求めることができる。また、信頼区間決定部24が、上記二次標本算出部23が算出した20の二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定することができる。したがって、上記寿命母集団からの標本抽出で得られる二次標本のばらつきによって、適正な信頼区間を求めることができる。
【0097】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、無作為抽出のシミュレーションで抽出データのばらつきを評価することができるから、理論式が適用できない中途打ち切りデータを含む標本の信頼区間を推定できる。
【0098】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、上記二次推定母集団決定部25が、決定した二次推定母集団に基づいて、信頼区間を求めることができるから、信頼区間の低破損確率での信頼性を高くすることができる。
【0099】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、信頼区間決定部24が、累積確率算出部26を有して、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するから、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できる。そして、軸受等の耐久性を正確に把握することができて、適正品質の製品設計、選定を行うことができる。
【0100】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第1の分布関数である2母数ワイブル分布の関数に従う寿命母集団は、10000の要素からなる寿命母集団であって、サイズが無限大の寿命母集団でないから、寿命が0や無限大に極端に近いデータが発生することを防止できる。したがって、信頼性が担保された寿命推定が可能になり、過剰な安全性を適用することなく、適正品質の軸受設計、選定が可能になる。
【0101】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第1の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であって、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするから、信頼性が高い信頼区間を算出できる。
【0102】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第2の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であるから、信頼性が高い信頼区間を算定できる。
【0103】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものであるから、軸受寿命の信頼区間を簡単かつ適正に求めることができる。
【0104】
尚、上記実施形態の破壊検査システムでは、寿命母集団決定部21が、10個の試料の寿命試験結果に基づいて寿命母集団を決定したが、この発明では、寿命母集団決定手段は、10個以外の複数個の試料の寿命試験結果に基づいて寿命母集団を決定しても良い。
【0105】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、検査対象が、軸受であったが、この発明では、検査対象は、軸受に限らず、一方クラッチ、ユニバーサルジョイント、十字継手、ハブユニット、パックシール等の密封装置、プーリ、トルクリミッタ、圧延機、ターボチャージャ、ポンプ、タイヤ、注射器等であっても良い。この発明では、検査対象は、寿命が存在する如何なる製品であっても良い。
【0106】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、第1の分布関数および第2の分布関数が、2母数ワイブル分布の分布関数であったが、この発明では、第1の分布関数および第2の分布関数のうちの少なくとも一方は、3母数ワイブル分布の分布関数、対数正規分布の分布関数、指数分布の分布関数、2項分布の分布関数、ポアソン分布の分布関数、多項分布の分布関数、超幾何分布の分布関数、多次元正規分布の分布関数等、2母数ワイブル分布の分布関数以外の如何なる分布関数であっても良い。破壊検査が行われる対象は、その対象によって適切に従う分布関数が異なるが、本願で開示した考えは、如何なる対象(製品)、如何なる分布関数においても、広範的に適用することができるからである。
【0107】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、無作為抽出部22が、寿命母集団のうちから20組の複数の要素を無作為抽出したが、この発明では、無作為抽出手段は、寿命母集団のうちから複数の要素からなる組を20回以外の回数で無作為抽出しても良い。
【0108】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、寿命母集団決定部21が、構成要素数が、10000の寿命母集団を決定したが、この発明では、寿命母集団決定手段は、例えば、100、1000、5000、15000等の構成要素からなる寿命母集団を決定しても良く、10000以外の如何なる複数の構成要素からなる寿命母集団を決定しても良い。
【0109】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、信頼区間決定部24が、二次推定母集団決定部25を有し、信頼区間決定部24が、二次推定母集団決定部25が決定した複数の二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、二次推定母集団決定手段が存在せず、信頼区間決定手段が、二次標本算出手段が求めた二次標本に基づいて、信頼区間を算出しても良い。例えば、信頼区間決定手段は、累積破損確率と、寿命とのワイブル確率紙上の複数の二次標本のプロット位置において、各累積破損確率において、その各累積破損確率上に存在する二次標本のプロット位置から、信頼区間を決定しても良い。そして、例えば、90%信頼区間を決定する場合で、20組の10個の要素からなる二次標本がワイブル確率紙上プロットされている場合(合計プロット点の数は、200)、各累積破損確率において、下側信頼限界を1番目の点と2番目の点の中間位置で決定し、上側信頼限界を19番目の点と20番目の点の中間位置で決定しても良い。
【0110】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、信頼区間決定部24が、累積確率算出部26を有し、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、信頼区間決定手段は、累積確率算出部を有していなくても良く、信頼区間決定手段は、累積確率を求めずに、二次推定母集団決定手段が決定した複数の二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定するようになっていても良い。例えば、90%信頼区間を決定する場合で、20組の二次推定母集団が求められた場合、信頼区間決定手段は、その20組の二次推定母集団をワイブル確率紙上での軌跡を算出し、各累積破損確率での20本の二次推定母集団との交点を算出し、各累積破損確率において、下側信頼限界を1番目の交点と2番目の交点の中間位置で決定し、上側信頼限界を19番目の交点と20番目の交点の中間位置で決定しても良い。
【0111】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、第1の分布関数に従う寿命母集団が、有限個の要素からなる寿命母集団であったが、この発明では、第1の分布関数に従う寿命母集団は、無限個の連続要素からなる母集団であっても良い。
【0112】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、上記信頼区間決定部24が、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするようになっていた。しかしながら、この発明では、信頼区間決定部手段は、例えば、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの50%、60%、70%、80%、95%の要素が含まれる区間を信頼区間とする等、信頼区間決定部手段は、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%以外の数の要素が含まれる区間を信頼区間とするようになっていても良い。
【0113】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、上記信頼区間決定部25が、複数の破損確率レベルにおける二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、二次推定母集団を求めず、二次標本の時間分布を直接ワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていても良く、この場合、計算時間を大幅に低減できる。
【0114】
また、この破壊検査システムの技術的思想および作用効果は、以下の方法の発明、プログラムの発明およびそのプログラムが記録された記録媒体によっても実現できる。
【0115】
すなわち、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップとを備える破壊検査方法によっても実現できる。また、これのステップに加えて、更に、上記破壊検査システムの実施形態および変形例で説明した一以上の部位での計算に対応するステップを行う破壊検査方法によっても実現できる。
【0116】
また、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップとをコンピュータに実行させるデータ処理プログラムによっても実現できる。また、これのステップをコンピュータに実行させることに加えて、更に、上記破壊検査システムの実施形態および変形例で説明した一以上の部位での計算に対応するステップを、コンピュータに実行させるデータ処理プログラムによっても実現できる。また、本発明のデータ処理プログラムが記録されているコンピュータで読出し可能なプログラム記録媒体によっても実現できる。
【0117】
以下、最後に、本発明の一側面である、モンテカルロ・シミュレーションによるワイブル分布の信頼区間推定と、そのシミュレーションの成立性について、簡潔にまとめを行う。
【0118】
1.問題の所在
転がり軸受などの機械要素や材料の寿命データ解析に、ワイブル回帰による母集団推定が行われることがある。その際、信頼区間によって寿命母集団の推定精度を表すのが一般的である。しかし、確率論から導かれた信頼区間の計算方法は、整数以外の順序番号が発生する中途打切りデータを含む標本には適用できない。この問題を解決できる方法として、数値シミュレーションが考えられる。本発明の一側面では、新たなシミュレーションによる信頼区間推定を提唱する。そして、そのシミュレーションによる信頼区間推定の成立性の客観評価を行う。
【0119】
2.確率論に基づく信頼区間の計算方法
先ず、試料数nの全数破損の寿命標本において順序番号j(寿命の短い方からj番目)のデータに対する順序統計量z(j)の累積分布関数G(z)は、次の数式19で表される。
[数19]
【0120】
寿命母集団の推定においては、数式19でGが0.5となるz〔メディアンランクz0.5(j)〕をjの累積破損確率Fとし、ばらつきを持つzの中央値によって寿命母集団を推定する。それゆえ、寿命母集団の推定精度は、zのばらつきに依存する。転がり軸受の寿命データ解析では、zのばらつきを90%信頼区間で表し、推定精度の指標とする。90%信頼区間は、数式19でGが0.05となるz〔5%ランク z0.05(j)〕を下側信頼限界とし、Gが0.95となるz〔95%ランクz0.95(j)〕を上側信頼限界として、両者に挟まれる範囲で定義する。これは、累積破損確率の取り得る範囲を表す。ここで、実際に寿命データから得たい情報は、時間軸方向の推定精度であるため、実用的には時間軸に変換した信頼区間を用いる。2母数ワイブル回帰によって得られる推定寿命母集団に対する下側信頼限界時間xL(j)と、上側信頼限界時間xU(j)とは、次の数式20で計算する。
[数20]
【0121】
ここで、θハットは特性寿命(尺度母数)の推定値、mハットはワイブル勾配(形状母数)の推定値である。
【0122】
3.抽出される標本の性質
母集団から無作為に抽出される標本の寿命分布のばらつきを数値シミュレーションによって確認する。
【0123】
3.1 母集団からの無作為標本抽出
特性寿命q、ワイブル勾配mの2母数ワイブル分布に完全に適合する寿命母集団から、試料数nの標本をシミュレーションによって無作為に抽出する。このような既知の母集団からの無作為抽出シミュレーションには、例えば、分布関数の逆関数を用いて発生させた乱数を用いる。ここでは、寿命試験に近い方法として、母集団の要素数Nを有限とし、擬似乱数を使って1からNの順序番号の中からn個を抜き取る手順を採用する。抽出したそれぞれの試料の寿命は、母集団中の順序番号から逆算できる。n個の試料を寿命の短い順に並べ替え、メディアンランクを割り付け直した標本寿命をワイブル回帰することによって、推定寿命母集団を得る。
【0124】
図11は、無作為抽出による推定寿命母集団の一例を示す図であり、q =10、m=1.5、N=1000の寿命母集団から抽出した試料数10の寿命標本、および、これらをワイブル回帰して求めた推定寿命母集団を示す図である。
【0125】
上記で説明した、標本抽出と、データ整理とを同じ母集団から繰り返し行うことにより、抽出される標本の寿命分布がどのようにばらつくのかを把握することができる。図15は、無作為抽出による推定母集団と母集団の信頼区間を示す図であり、上述の寿命母集団からの標本抽出を20回繰り返し、それぞれの標本から推定寿命母集団を求めた結果を示す図である。
【0126】
3.2 標本寿命分布のばらつき
図15においては、上述の寿命母集団を、母数(qとm)が同じn=10の推定寿命母集団に置き換えている。また、図15には、数式20によって算出した信頼区間を示している。
【0127】
図15を参照して、破損確率が40〜80%の範囲を除いて、20組中2組(すなわち10%)の推定寿命母集団が、寿命母集団の信頼区間よりも外側に位置している。このことから、推定寿命母集団の90%が含まれる範囲と、寿命母集団の90%信頼区間とは、等価であると推察できる。
【0128】
4.推定母集団に対する信頼区間のシミュレーション
上記説明した抽出される標本の性質では、寿命分布が既知の母集団から無作為に抽出された標本の寿命分布のばらつきと、本来は意味を持たない寿命母集団に対する信頼区間とを比較した。そして、抽出される標本の90%を含む範囲が、寿命母集団の信頼区間に相当することを発見し、確認した。
【0129】
以下、この知見を実際問題へ適用する。対象とする実際の問題とは、「寿命試験によって得られる推定寿命母集団に対する信頼区間の推定」である。上述の知見をこの問題に置き換えることにより、以下の手順で信頼区間を推定する。
【0130】
a)まず、寿命試験によって得られた推定寿命母集団と同じ母数を持つ、多数の要素からなる寿命母集団を仮定する(仮想母集団と呼ぶ)。
【0131】
b)次に、無作為抽出のシミュレーションによって、仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本と呼ぶ)を繰り返し抽出する。さらに、各二次標本をワイブル回帰し、二次推定母集団を求める。
【0132】
c)次に、破損確率レベルごとの二次推定母集団の時間分布において、累積確率が5%および95%となる時間を90%信頼区間の上下限とする。
【0133】
図16は、図11にn=10で示した推定寿命母集団(θハットの値が13.71,mハットの値が1.316)に対して、上述の手順a),b)を適用した例を示す図である。また、図16のプロットは、抽出した20組の二次標本から求めた二次推定母集団上の寿命である。なお、手順a)での仮想母集団の要素数は、10000としている。
【0134】
図16では、ほとんどの破損確率レベルにおいて、20個中、長寿命側に1個、短寿命側に1個のプロットが、数式20(数式20と数式18とは同一)で算出した信頼区間から外れている。逆に言うと、二次推定母集団のおよそ90%が含まれる範囲と、確率論に基づく信頼区間とが一致している。
【0135】
図7は、上記手順c)において、各破損確率における二次推定母集団の累積確率を求めるため、二次推定母集団の時間分布をワイブル確率紙にプロットした結果を示す図である。また、図9は、図7の各回帰直線における累積確率5%と95%の時間によって求めた信頼区間を示す図である。ここで、図9において、シミュレーションによる上側信頼限界およびシミュレーションによる下側信頼限界は、数式20で計算されている。
【0136】
図7,9に示すように、上述の手法で算出した信頼区間は、数式20の計算結果を良好に再現している。このことから、本発明の手法によって、信頼性が高い計算を行うことができる。尚、無作為抽出を扱う問題のため、本報と同じ条件で再度シミュレーションを実施しても同じ結果は得られるとは限らない。しかし、二次標本の抽出回数を十分に多くすれば、結果の再現性を高めることができる。
【符号の説明】
【0137】
21 寿命母集団決定部
22 無作為抽出部
23 二次標本算出部
24 信頼区間決定部
25 二次推定母集団決定部
26 累積確率算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、破壊検査システムに関し、例えば、機械部品等の破壊の検査を行う破壊検査システムに関する。また、本発明は、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の破壊寿命の信頼区間を求める方法としては、非特許文献1(Koyo Engineering Journal N0. 130 (1986))に記載されている方法がある。この方法は、寿命データを統計処理するもので、転がり軸受の寿命分布として、次の数式1に示すワイブル分布を仮定する。
【数1】
【0003】
ここで、xは、軸受寿命であり、上記θ、mは、定数パラメータである。上記方法は、その数式1から導かれる次の寿命の数式2に基づいて、信頼区間を求めるものである。
【数2】
【0004】
詳細に述べると、無限個数のデータからなる母集団を考え、その中からランダムにn個のデータを抽出し、そのデータを小さい順に並びかえたとき、母関数の確率密度g(z)と、累積分布関数G(z)が与えられたとすれば、k番目にあたるデータz(k)が、任意の微小空間(z,z+Δz)に入る確率h(z)は、多項定理により次の数式3から導かれる。
【数3】
【0005】
ここで、G(z)と、g(z)との関係は、次の数式4で与えられる。
【数4】
【0006】
ここで、データを取り出した母関数が、区間(0,1)において一様分布であれば、g(z)=1であり、数式4から、G(z)=zになる。したがって、これを、数式3に代入することにより、次の数式5が導かれる。
【数5】
【0007】
k番目にあたるデータz(k)の分布が、数式5で与えられたとき、z(k)の累積分布関数は、次の数式6で与えられる。
【数6】
【0008】
したがって、数式5を、数式6に代入して、次の式7が導出される。
【数7】
【0009】
ここから、k番目にあたるデータz(k)が100(1−α)%の範囲に収まる区間を計算する。具体的には、信頼区間の下限は、次の数式8で求める。
【数8】
【0010】
また、信頼区間の上限は、次の数式9で求める。
【数9】
【0011】
そして、数式8で求めた下限zα/2(k)を数式2に代入して、次の数式10で示される下限を求める。
【数10】
【0012】
また、数式8で求めた上限z1−α/2(k)を数式2に代入して、次の数式11で示される上限を求める。従来の方法は、このようにして、信頼区間を求めるようになっている。
【数11】
【0013】
尚、数式1より、以下の数式12が導かれる。したがって、縦軸を、lnln1/〔1−F(x)〕とし、横軸を、lnxとすると、式11は、Y=mX+a(aは定数)となるから、図化すると、図17に示すように、全てのワイブル分布は、勾配mの直線として表される。このように、縦軸がlnln1/〔1−F(x)〕で、横軸がlnxであるグラフは、ワイブル確率紙と呼ばれている。図18は、数式10、11に基づくワイブル確率紙上における信頼区間を示す図である。
【数12】
【0014】
尚、数式6は、確率密度であるから全領域にわたって積分すると、Hk(z)=1となるが、メジアンランクzm(k)は、次の式13を解いたときのzの値であり、分布を等分するzの値をさす。
【数13】
【0015】
ここで、数式13の近似解としては、次の数式14が知られている。
【数14】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】寿命データの統計処理(Koyo Engineering Journal N0. 130 (1986) 47)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来の方法では、信頼区間を求める数式8、9に、試料数nと順序番号kに関する組合せnC○が含まれているため、整数以外の順序番号が生じる中途打切りを含む標本に対しては、この方法で信頼区間を求めることができないという問題がある。
【0018】
また、中途打切りを含む標本に対する信頼区間の計算方法として、全数破損のときの順序統計量から比例補間して求める方法や、複雑な統計理論を駆使した方法も提案されているが、従来理論との不整合などの問題がある。
【0019】
すなわち、従来、信頼区間を簡易かつ適正に算出できる確立した破壊検査システムが存在せず、信頼区間の評価を、簡易かつ適正に行うシステムは知られていない。
【0020】
そこで、本発明の課題は、信頼区間を簡易かつ適正に算出できる破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、この発明の破壊検査システムは、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定手段と、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出手段と、
上記無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出手段と、
上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定手段と
を備えることを特徴としている。
【0022】
尚、無作為抽出手段が、無作為抽出する要素の数を、試料の数と一致させる理由は、抽出される二次標本のばらつきが、試料数に依存するためであり、寿命試験の試料数と異なる数の要素から二次標本を作ると、寿命試験で得た標本とは,異なる性質のものになってしまうためである。
【0023】
本発明者は、後述するように、モンテカルロ法により、標本抽出のシミュレーションを繰り返した結果、母集団から抽出される標本のばらつきが、母集団を推定母集団に置き換えて確率論から算出される信頼区間にほぼ一致することを見出した。
【0024】
また、この結果を応用し、仮想の母集団からの標本抽出で得られる二次推定母集団のばらつきによって、信頼区間をおおむね推定可能であることを確認した。
【0025】
本発明によれば、寿命母集団決定手段が、現実に試験が行われた複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団からなる推定母集団を決定できる。また、無作為抽出手段が、上記寿命母集団のうちから上記複数個の要素を無作為抽出することができて、二次標本算出手段が、無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求めることができる。また、信頼区間決定手段が、上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定することができる。したがって、本発明によれば、上記寿命母集団からの標本抽出で得られる二次標本のばらつきによって、適正な信頼区間を求めることができる。
【0026】
また、本発明によれば、無作為抽出のシミュレーションで抽出データのばらつきを評価することができるから、理論式が適用できない中途打ち切りデータを含む標本の信頼区間を推定できる。
【0027】
また、一実施形態では、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定する。
【0028】
本発明者は、二次標本から二次推定母集団を求めた上で、その求めた二次推定母集団に基づいて信頼区間を求めると、二次標本そのものに基づいて、信頼区間を求めた場合と比較して、低破損確率での信頼性が高くなることを確かめた。
【0029】
上記実施形態によれば、上記二次推定母集団手段が、決定した二次推定母集団に基づいて、信頼区間を求めることができるから、信頼区間の低破損確率での信頼性を高くすることができる。
【0030】
また、一実施形態では、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定する。
【0031】
順序統計量は、順序番号によって分布の形が大きく異なる。そのため、時間軸方向に変換した信頼区間も同様に分布の形は順序番号によって異なるはずであり、これを模擬した各破損確率レベルの二次標本あるいは二次推定母集団の分布も様々な形の分布となり得る。ここで、各破損確率レベルの二次推定母集団の分布に対しても、あらゆる形の分布に柔軟に対応できるワイブル分布を適用すると、データのバラツキを適正に評価できる。
【0032】
上記実施形態によれば、信頼区間決定手段が、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するから、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できて、例えば、軸受等の耐久性を正確に把握することができ、適正品質の製品設計、選定を行うことができる。
【0033】
また、一実施形態では、
上記第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団である。
【0034】
母集団のサイズを無限大として、母集団を例えば2母数ワイブル分布を仮定して、無作為抽出される寿命のばらつきを模擬する場合、0や無限大に極端に近い寿命が出現する場合があるが、この場合、実際よりも寿命のばらつきを過大に評価してしまう。一方、例えば、ワイブル分布で整理される転がり軸受等の寿命において、0や無限大に極端に近い寿命は、実際には観測されない。
【0035】
上記実施形態によれば、第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団であって、サイズが無限大の寿命母集団でないから、寿命が0や無限大に極端に近いデータが発生することを防止できる。したがって、信頼性が担保された寿命推定が可能になり、過剰な安全性を適用することなく、適正品質の軸受設計、選定が可能になる。
【0036】
また、一実施形態では
上記第1の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であり、
上記信頼区間決定手段は、上記破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とする。
【0037】
上記実施形態によれば、第1の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であって、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするから、信頼性が高い信頼区間を算出できる。
【0038】
また、一実施形態では、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定し、
上記第2の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数である。
【0039】
上記実施形態によれば、上記第2の分布関数は、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であるから、信頼性が高い信頼区間を算定できる。
【0040】
また、一実施形態では、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定する。
【0041】
上記実施形態によれば、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布を直接ワイブル回帰して、二次推定母集団の推定を行わずに、累積確率を求めるから、信頼区間の算出の計算時間を大幅に短縮できる。
【0042】
また、一実施形態では、
上記要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものである。
【0043】
上記実施形態によれば、軸受寿命の信頼区間を簡単かつ適正に求めることができる。
【0044】
また、本発明の破壊検査方法は、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
を備えること特徴としている。
【0045】
また、本発明のデータ処理プログラムは、
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0046】
また、本発明のコンピュータ読出し可能なプログラム記録媒体は、
本発明のデータ処理プログラムが記録されている。
【発明の効果】
【0047】
本発明の破壊検査システム、破壊検査方法、データ処理プログラムおよびプログラム記録媒体によれば、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できて、軸受等の耐久性を正確に把握することができ、適正品質の製品設計、選定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の破壊検査システムのブロック図である。
【図2】CPUおよびその周辺部の諸機能を表すブロック図である。
【図3】寿命母集団決定部が、決定した2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数の一例を示す図である。
【図4】仮想母集団から抽出した20組の二次標本(枠外の一点は、F=6.6967%、x=0.0095)をワイブル確率紙上にプロットした図である。
【図5】各組の二次標本から求めた二次推定母集団の寿命を示す図である。
【図6】各破損確率における二次標本の分布を示す図である。
【図7】各破損確率における二次推定母集団の分布を示す図である。
【図8】二次標本分布から推定した信頼区間を示す図である。
【図9】二次推定母集団から推定した信頼区間を示す図である。
【図10】仮定した母集団の寿命分布(θ=10、m=1.5、N=1000)を示す図である。
【図11】表2の標本の寿命分布と推定母集団を示す図である。
【図12】表1の母集団から試料数10の標本を20回抽出した結果(黒三角の標本でF=6.6967%の寿命は0.0783(プロット省略))を示す図である。
【図13】図12の20組の標本から求めた推定母集団を示す図である。
【図14】母集団を試料数10の推定母集団と仮定して求めた信頼区間と、標本データとの比較を示す図である。
【図15】母集団を試料数10の推定母集団と仮定して求めた信頼区間と、標本から求めた推定母集団との比較を示す図である。
【図16】表2の標本に対する20組の二次推定母集団と確率論に基づく信頼区間を示す図である。
【図17】ワイブル確率紙の原理を示す図である。
【図18】ワイブル確率紙上における信頼区間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態の破壊検査システムのブロック図である。
【0051】
この破壊検査システムは、制御装置1と、操作部2と、表示部3とを有し、制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、プログラムおよびデータを格納するメモリ11と、各部とデータを入出力するためのI/F(Interface)12とを備える。
【0052】
上記CPU10は、操作部2および表示部3の夫々と、I/F12を介してデータを入出力するようになっている。
【0053】
図2は、CPU10およびその周辺部の諸機能を表すブロック図である。
【0054】
図2に示すように、CPU10には、寿命母集団決定部21と、無作為抽出部22と、二次標本算出部23と、信頼区間決定部24とが形成されるようになっており、信頼区間決定部24には、二次推定母集団決定部25と、累積確率算出部26とが形成されるようになっている。上記各部21〜26は、適宜メモリ11にアクセスでき、メモリ11に収納されている計算プログラムを用いることができるようになっている。
【0055】
図2に示すように、上記操作部2で入力された情報は、寿命母集団決定部21に出力されるようになっている。また、上記信頼区間決定部24からディスプレイ等で構成される表示部3に信号が出力されるようになっている。
【0056】
上記構成において、このシステムは、以下のように信頼区間を決定するようになっている。上記寿命母集団決定部21は、ユーザが操作部2を介して入力した10個の軸受の寿命試験の結果を表す信号を受けるようになっている。10個の軸受は、複数個の試料を構成している。上記寿命母集団決定部21は、得られた推定母集団と同じ母数を持つ、多数の構成要素からなる母集団(仮想母集団)を仮定するようになっている。この実施形態では、上記寿命母集団決定部21は、寿命を、X軸とし、累積破損確率(破損確率レベル)Fを、Y軸とする、ワイブル確率紙上における、上記10個の試料の寿命の測定点から、周知の手段、例えば、最小2乗法や重み付き最小2乗法を用いて、ワイブル確率紙上における回帰直線を求めるようになっている。
【0057】
また、上記寿命母集団決定部21は、その回帰直線のデータから、仮想母集団の構成要素数が有限の10000個であるとした場合の、その回帰直線を表す2母数ワイブル分布の特性寿命の推定値θと、ワイブル勾配の推定値mとを求める。上記寿命母集団決定部21は、このようにして、求めたθとmとの値を有する2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数としての寿命母集団(仮想母集団)を決定するようになっている。
【0058】
図3は、上記寿命母集団決定部21が、決定した2母数ワイブル分布で表された第1の分布関数の一例を示す図である。図3に示す例では、回帰直線で表される推定母集団は、θの値が、13.71で、mが、m=1.316と決定されている。
【0059】
上記無作為抽出部22は、乱数を用いたモンテカルロ法を用いて、1から10000の整数の中から、上記寿命試験が施された軸受の数と同一の10個の順序番号をランダムに選び出すようになっている。
【0060】
上記二次標本算出部23は、寿命母集団決定部21および無作為抽出部22からの信号を受けるようになっている。上記二次標本算出部23は、無作為抽出部22からの情報に基づいて、無作為抽出シミュレーションを行って、寿命母集団決定部21が決定した仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本)を繰り返し抽出するようになっている。
【0061】
この実施形態では、上記二次標本算出部23は、無作為抽出部22が抽出した10個の要素を、順序番号の短い順に並べ替え、各メジアンランクを数式14から近似的に求めると共に、求めた各メジアンランクを、数式2のF(t)に代入して、各要素に対する寿命を求めるようになっている。このようにして、各順序番号の寿命と、各順序番号のメジアンランクで近似される累積破損確率との組からなる要素を、10個算出する。この10個の要素は、二次標本を構成している。
【0062】
上記二次推定母集団決定部25は、二次標本に基づいて、周知の手段、例えば、最小2乗法や重み付き最小2乗法を用いて、ワイブル確率紙上における二次標本の回帰直線を求めるようになっている。また、上記二次推定母集団決定部25は、その回帰直線から第2の分布関数としての2母数ワイブル分布の分布関数を有する二次推定母集団を算出するようになっている。
【0063】
この実施形態では、上記二次推定母集団決定部25は、無作為抽出部22が抽出した20組の10個の要素に基づいて、20組の二次推定母集団を算出するようになっている。
【0064】
上記累積確率算出部26は、複数の破損確率レベルにおける20組の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求めるようになっている。詳しくは、上記累積確率算出部26は、先ず、二次推定母集団決定部25が求めた20組の二次推定母集団のワイブル確率紙上での、横軸を構成する各累積破損確率との交点を、異なる10の累積破損確率(破損確率レベル)の夫々について求めるようになっている。
【0065】
図4は、この実施形態において、20組の二次標本をワイブル確率紙上にプロットした図であり、図5は、この実施形態において、二次推定母集団決定部25が求めた20組の二次推定母集団のワイブル確率紙上での、横軸を構成する各累積破損確率との交点をプロットした図である。
【0066】
この実施形態では、上記累積確率算出部26は、異なる10の累積破損確率(破損確率レベル)の夫々における二次推定母集団の時間分布に基づいて各破損確率レベルで累積確率の分布を求め、その時間分布および累積確率の分布を2母数ワイブル回帰して、その回帰直線を求めると共に、累積確率を求めるようになっている。
【0067】
図6は、破損確率レベルにおける二次標本の分布を2母数ワイブル回帰した結果であり、図中のプロットの記号は、図4に対応している。また、図7は、破損確率レベルにおける二次推定母集団の分布を2母数ワイブル回帰した結果であり、図中のプロットの記号は、図5に対応している。
【0068】
図6では、極端に寿命の短い一点(x=0.0095)のため、F=6.6967%の分布が他の破損確率の分布と大きく異なっている。これに対し、二次推定母集団を用いた場合は、図7に示すように、破損確率が高くなるほど、ばらつきが徐々に小さくなる一様な傾向が認められる。
【0069】
上記信頼区間決定部24は、累積確率算出部26が求めた各破損確率レベルでの回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定するようになっている。このようにして、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を決定するようになっている。
【0070】
図8は、図6において、夫々の破損確率における回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定した結果を示す図である。また、図9は、図7において、夫々の破損確率における回帰直線が、累積確率5%および95%と交わる点によって信頼限界を推定した結果を示す図である。
【0071】
図6において、ばらつきが特に大きかった二次標本分布によるF=6.6967%の推定値は、下側限界、上側限界とも理論値と大きく離れている。これに対し、図7の二次推定母集団による推定では、推定可能な破損確率の全域で、比較的良好に信頼区間を推定できていることがわかる。
【0072】
以上、簡単にまとめると、本実施形態は、以下の(a)、(b)、(c)のプロセスにより、信頼区間を良好に推定した。すなわち、(a)それぞれの二次標本をもとに、二次推定母集団を算出した。(b)各破損確率における二次推定母集団の寿命値の分布を2母数ワイブル回帰した。(c)ワイブル回帰した各破損確率の分布において、累積確率が5%と95%の寿命値をそれぞれ下側信頼限界、上側信頼限界とした。
【0073】
尚、図8を参照して、二次標本をそのまま用いて信頼区間を推定した場合に、低破損確率で認められた理論値との乖離は、短寿命データの影響を受けやすいことを示唆している。これは、今回の検討における二次標本の抽出回数が20回と少ないために、特に顕著に表れたものと考えられる。実用化に際しては、二次標本をそのまま用いる方が、二次推定母集団の計算時間が不要になる分、有利である。このように、本発明では、二次標本をそのまま用いて信頼区間を算出しても良く、上述の理論値との乖離は十分な抽出回数を設定することで緩和することができる。
【0074】
以下、上記実施形態のシステムの信頼区間の特定についての信頼性について検討する。先ず、無作為抽出した標本の特性について検討する。
【0075】
ある母集団から試料数nの標本を無作為に繰り返し抽出した場合に、抽出された標本がどのような特性を持つのかを数値シミュレーションによって確認する。このような標本抽出は、通常の寿命試験の手順と同様である。ただし、寿命試験による母集団推定においては、(すべての軸受を壊さない限り)真の母集団が未知であるのに対し、数値シミュレーションでは母集団を既知として扱えるため、抽出した標本と母集団の関係を定量的に把握することができる。
【0076】
次にシミュレーションの手順について説明する。
【0077】
先ず、母集団の仮定を行う。詳しくは、寿命のばらつきが、特性寿命θ、ワイブル勾配mの2母数ワイブル分布に完全に適合するN個の要素(例えば軸受)からなる母集団を仮定する。母集団における順序番号iの要素(N個中、寿命の短い方からi番目の要素)のメジアンランクは、上記数式14により次の数式15ように算出される。
[数15]
【0078】
また、上式を2母数ワイブル分布(数式1、2)に代入することにより,i番目の要素の寿命が以下の数式16ように算出される。
[数16]
ここで、
【0079】
このように、母集団の寿命分布の母数と構成要素の数を仮定することにより、すべての構成要素の寿命を既知として扱うことができる。例として、特性寿命θ=10、ワイブル勾配m=1.5のN=1000個で構成される母集団のメジアンランクと寿命の一部を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
図10は、仮定した母集団の寿命分布(θ=10、m=1.5、N=1000の例)を示す図である。
【0082】
図10に示すように、仮定した表1の母集団をワイブル確率紙にプロットすると、一直線上の点群となる。
【0083】
次に、母集団からの標本抽出について説明する。分布が既知の母集団から無作為抽出するシミュレーションには、一般に分布関数の逆関数を用いて発生させた乱数が用いられている。ここでは、現実の寿命試験により近いシンプルな方法として、母集団の構成要素の数を有限として、その中から無作為に○○番目の要素を抜き取るという手順を模擬する。つまり、構成要素Nが1000個であれば、1から1000の整数の中から、所定の個数(試料数n)の順序番号を選び出す方法である。以下の表2は、表1の母集団から10個を無作為に抽出した標本の一例である。
【0084】
【表2】
【0085】
次に、標本データの整理について説明する。抽出したn個の試料を寿命の短い順に並べ替え、母集団中の順序番号から数式15によってメジアンランクを割り付け直し、さらに、数式16によって寿命を計算する。これにより、無作為抽出したn個の試料による推定母集団が得られる。表2の標本における各試料の寿命を表3に示す。図11は、これらの寿命データをワイブル確率紙にプロットし、2母数ワイブル回帰した結果を示す図である。
【0086】
【表3】
【0087】
次に標本抽出の繰り返しについて説明する。詳しくは、以上の標本抽出と標本データの整理を同じ母集団から繰り返し行うことにより、抽出される標本がどのようにばらつくのかを把握する。図12は、表2に例示した表1の母集団からの標本抽出を20回繰り返した結果ある。また、図13は、20組の標本それぞれを2母数ワイブル回帰して得られた推定母集団である。これらの図からわかるように、無作為抽出された標本は、母集団を取り巻くようにばらついている。
【0088】
続いて、抽出した標本と、母集団の関係について説明する。図13では、累積破損確率50〜80%の範囲において、時間軸方向の推定母集団のばらつきが狭く、そこから高破損確率側あるいは低破損確率側に離れるほど、ばらつきの幅が広くなっている。この傾向は、信頼区間の振る舞いと定性的に類似している。
【0089】
そこで、母集団を同じ母数(θとm)を持つ試料数10の推定母集団と仮定し、数式8−11において、転がり軸受の分野で一般に用いられている危険率a=0.1とおいた以下の数式17、18で表す信頼区間、すなわち、90%信頼区間の計算式によって算出した信頼区間を、図14および15において、図12および図13の結果と比較した。
[数17]
[数18]
【0090】
図14より、それぞれの破損確率レベルにおける20個のプロットのうち0〜3個が母集団の信頼区間よりも外側に位置していることがわかる。このことから、それぞれの破損確率において試料の90%(標本数が20組であれば、18個)が含まれる範囲は、母集団の90%信頼区間の近似になっている。
【0091】
また、図15に示すように、標本データから求めた推定母集団との比較では、破損確率が40〜80%の範囲を除いて、20組中の2組の推定母集団が、母集団の信頼区間よりも外側に位置しており、図14の結果と同様に、それぞれの破損確率における推定寿命の90%が含まれる範囲によって、母集団の90%信頼区間がほぼ近似できている。
【0092】
したがって、分布が既知の母集団から無作為に抽出した標本の特性と、本来は意味を持たない母集団に対する信頼区間との比較から、抽出される標本の90%が含まれる範囲によって、母集団の信頼区間が近似できることが確認された。
【0093】
したがって、この得られた知見を逆説的に応用することにより、寿命試験によって得られた推定母集団に対する信頼区間の推定を、
1)先ず得られた推定母集団と同じ母数を持つ、多数の構成要素からなる母集団を仮定する(仮想母集団と呼ぶ)、
2)次に、無作為抽出のシミュレーションによって,仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本と呼ぶ)を繰り返し抽出する、
3)各破損確率レベルにおける二次標本の時間分布における累積確率5%と95%の時間に挟まれる範囲を、90%の信頼区間の近似値とする、
という手順で行えば、信頼区間の信頼性が得られることになる。
【0094】
図16は、表2に示した試料数10の推定母集団(θ=13.71,m =1.316)に対して、上述の手順を適用した例を示す図である。図中の黒丸は、抽出した20組の各二次標本において、2母数ワイブル回帰により求めた二次推定母集団上の寿命である。なお、仮想母集団の構成要素数は10000とした。
【0095】
図16によれば、ほとんどの破損確率レベルにおいて、20個中、長寿命側に1個、短寿命側に1個のプロットが確率論に基づく信頼区間から外れていることがわかる。逆に言うと、二次標本の90%が含まれる範囲が確率論に基づく信頼区間と定性的に一致している。この結果から、上述の手順によって推定母集団に対する信頼区間のシミュレーションが成立することを確認できた。
【0096】
上記実施形態の破壊検査システムによれば、寿命母集団決定部21が、現実に試験が行われた10個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その10個の試料が適合する2母数ワイブル分布の分布関数の寿命母集団からなる推定母集団を決定できる。また、上記無作為抽出部22が、上記寿命母集団のうちから10個の要素を無作為抽出することができて、二次標本算出部23が、無作為抽出部22によって無作為抽出された10個の要素に基づいて寿命母集団から10個の要素からなる二次標本を求めることができる。また、信頼区間決定部24が、上記二次標本算出部23が算出した20の二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定することができる。したがって、上記寿命母集団からの標本抽出で得られる二次標本のばらつきによって、適正な信頼区間を求めることができる。
【0097】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、無作為抽出のシミュレーションで抽出データのばらつきを評価することができるから、理論式が適用できない中途打ち切りデータを含む標本の信頼区間を推定できる。
【0098】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、上記二次推定母集団決定部25が、決定した二次推定母集団に基づいて、信頼区間を求めることができるから、信頼区間の低破損確率での信頼性を高くすることができる。
【0099】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、信頼区間決定部24が、累積確率算出部26を有して、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するから、推定された寿命母集団の信頼区間を正しく評価できる。そして、軸受等の耐久性を正確に把握することができて、適正品質の製品設計、選定を行うことができる。
【0100】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第1の分布関数である2母数ワイブル分布の関数に従う寿命母集団は、10000の要素からなる寿命母集団であって、サイズが無限大の寿命母集団でないから、寿命が0や無限大に極端に近いデータが発生することを防止できる。したがって、信頼性が担保された寿命推定が可能になり、過剰な安全性を適用することなく、適正品質の軸受設計、選定が可能になる。
【0101】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第1の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であって、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするから、信頼性が高い信頼区間を算出できる。
【0102】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、第2の分布関数が、適用範囲が広い2母数ワイブル分布の分布関数であるから、信頼性が高い信頼区間を算定できる。
【0103】
また、上記実施形態の破壊検査システムによれば、要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものであるから、軸受寿命の信頼区間を簡単かつ適正に求めることができる。
【0104】
尚、上記実施形態の破壊検査システムでは、寿命母集団決定部21が、10個の試料の寿命試験結果に基づいて寿命母集団を決定したが、この発明では、寿命母集団決定手段は、10個以外の複数個の試料の寿命試験結果に基づいて寿命母集団を決定しても良い。
【0105】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、検査対象が、軸受であったが、この発明では、検査対象は、軸受に限らず、一方クラッチ、ユニバーサルジョイント、十字継手、ハブユニット、パックシール等の密封装置、プーリ、トルクリミッタ、圧延機、ターボチャージャ、ポンプ、タイヤ、注射器等であっても良い。この発明では、検査対象は、寿命が存在する如何なる製品であっても良い。
【0106】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、第1の分布関数および第2の分布関数が、2母数ワイブル分布の分布関数であったが、この発明では、第1の分布関数および第2の分布関数のうちの少なくとも一方は、3母数ワイブル分布の分布関数、対数正規分布の分布関数、指数分布の分布関数、2項分布の分布関数、ポアソン分布の分布関数、多項分布の分布関数、超幾何分布の分布関数、多次元正規分布の分布関数等、2母数ワイブル分布の分布関数以外の如何なる分布関数であっても良い。破壊検査が行われる対象は、その対象によって適切に従う分布関数が異なるが、本願で開示した考えは、如何なる対象(製品)、如何なる分布関数においても、広範的に適用することができるからである。
【0107】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、無作為抽出部22が、寿命母集団のうちから20組の複数の要素を無作為抽出したが、この発明では、無作為抽出手段は、寿命母集団のうちから複数の要素からなる組を20回以外の回数で無作為抽出しても良い。
【0108】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、寿命母集団決定部21が、構成要素数が、10000の寿命母集団を決定したが、この発明では、寿命母集団決定手段は、例えば、100、1000、5000、15000等の構成要素からなる寿命母集団を決定しても良く、10000以外の如何なる複数の構成要素からなる寿命母集団を決定しても良い。
【0109】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、信頼区間決定部24が、二次推定母集団決定部25を有し、信頼区間決定部24が、二次推定母集団決定部25が決定した複数の二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、二次推定母集団決定手段が存在せず、信頼区間決定手段が、二次標本算出手段が求めた二次標本に基づいて、信頼区間を算出しても良い。例えば、信頼区間決定手段は、累積破損確率と、寿命とのワイブル確率紙上の複数の二次標本のプロット位置において、各累積破損確率において、その各累積破損確率上に存在する二次標本のプロット位置から、信頼区間を決定しても良い。そして、例えば、90%信頼区間を決定する場合で、20組の10個の要素からなる二次標本がワイブル確率紙上プロットされている場合(合計プロット点の数は、200)、各累積破損確率において、下側信頼限界を1番目の点と2番目の点の中間位置で決定し、上側信頼限界を19番目の点と20番目の点の中間位置で決定しても良い。
【0110】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、信頼区間決定部24が、累積確率算出部26を有し、複数の破損確率レベルにおける複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、信頼区間決定手段は、累積確率算出部を有していなくても良く、信頼区間決定手段は、累積確率を求めずに、二次推定母集団決定手段が決定した複数の二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定するようになっていても良い。例えば、90%信頼区間を決定する場合で、20組の二次推定母集団が求められた場合、信頼区間決定手段は、その20組の二次推定母集団をワイブル確率紙上での軌跡を算出し、各累積破損確率での20本の二次推定母集団との交点を算出し、各累積破損確率において、下側信頼限界を1番目の交点と2番目の交点の中間位置で決定し、上側信頼限界を19番目の交点と20番目の交点の中間位置で決定しても良い。
【0111】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、第1の分布関数に従う寿命母集団が、有限個の要素からなる寿命母集団であったが、この発明では、第1の分布関数に従う寿命母集団は、無限個の連続要素からなる母集団であっても良い。
【0112】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、上記信頼区間決定部24が、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とするようになっていた。しかしながら、この発明では、信頼区間決定部手段は、例えば、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの50%、60%、70%、80%、95%の要素が含まれる区間を信頼区間とする等、信頼区間決定部手段は、破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%以外の数の要素が含まれる区間を信頼区間とするようになっていても良い。
【0113】
また、上記実施形態の破壊検査システムでは、上記信頼区間決定部25が、複数の破損確率レベルにおける二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていた。しかしながら、この発明では、二次推定母集団を求めず、二次標本の時間分布を直接ワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定するようになっていても良く、この場合、計算時間を大幅に低減できる。
【0114】
また、この破壊検査システムの技術的思想および作用効果は、以下の方法の発明、プログラムの発明およびそのプログラムが記録された記録媒体によっても実現できる。
【0115】
すなわち、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップとを備える破壊検査方法によっても実現できる。また、これのステップに加えて、更に、上記破壊検査システムの実施形態および変形例で説明した一以上の部位での計算に対応するステップを行う破壊検査方法によっても実現できる。
【0116】
また、複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップとをコンピュータに実行させるデータ処理プログラムによっても実現できる。また、これのステップをコンピュータに実行させることに加えて、更に、上記破壊検査システムの実施形態および変形例で説明した一以上の部位での計算に対応するステップを、コンピュータに実行させるデータ処理プログラムによっても実現できる。また、本発明のデータ処理プログラムが記録されているコンピュータで読出し可能なプログラム記録媒体によっても実現できる。
【0117】
以下、最後に、本発明の一側面である、モンテカルロ・シミュレーションによるワイブル分布の信頼区間推定と、そのシミュレーションの成立性について、簡潔にまとめを行う。
【0118】
1.問題の所在
転がり軸受などの機械要素や材料の寿命データ解析に、ワイブル回帰による母集団推定が行われることがある。その際、信頼区間によって寿命母集団の推定精度を表すのが一般的である。しかし、確率論から導かれた信頼区間の計算方法は、整数以外の順序番号が発生する中途打切りデータを含む標本には適用できない。この問題を解決できる方法として、数値シミュレーションが考えられる。本発明の一側面では、新たなシミュレーションによる信頼区間推定を提唱する。そして、そのシミュレーションによる信頼区間推定の成立性の客観評価を行う。
【0119】
2.確率論に基づく信頼区間の計算方法
先ず、試料数nの全数破損の寿命標本において順序番号j(寿命の短い方からj番目)のデータに対する順序統計量z(j)の累積分布関数G(z)は、次の数式19で表される。
[数19]
【0120】
寿命母集団の推定においては、数式19でGが0.5となるz〔メディアンランクz0.5(j)〕をjの累積破損確率Fとし、ばらつきを持つzの中央値によって寿命母集団を推定する。それゆえ、寿命母集団の推定精度は、zのばらつきに依存する。転がり軸受の寿命データ解析では、zのばらつきを90%信頼区間で表し、推定精度の指標とする。90%信頼区間は、数式19でGが0.05となるz〔5%ランク z0.05(j)〕を下側信頼限界とし、Gが0.95となるz〔95%ランクz0.95(j)〕を上側信頼限界として、両者に挟まれる範囲で定義する。これは、累積破損確率の取り得る範囲を表す。ここで、実際に寿命データから得たい情報は、時間軸方向の推定精度であるため、実用的には時間軸に変換した信頼区間を用いる。2母数ワイブル回帰によって得られる推定寿命母集団に対する下側信頼限界時間xL(j)と、上側信頼限界時間xU(j)とは、次の数式20で計算する。
[数20]
【0121】
ここで、θハットは特性寿命(尺度母数)の推定値、mハットはワイブル勾配(形状母数)の推定値である。
【0122】
3.抽出される標本の性質
母集団から無作為に抽出される標本の寿命分布のばらつきを数値シミュレーションによって確認する。
【0123】
3.1 母集団からの無作為標本抽出
特性寿命q、ワイブル勾配mの2母数ワイブル分布に完全に適合する寿命母集団から、試料数nの標本をシミュレーションによって無作為に抽出する。このような既知の母集団からの無作為抽出シミュレーションには、例えば、分布関数の逆関数を用いて発生させた乱数を用いる。ここでは、寿命試験に近い方法として、母集団の要素数Nを有限とし、擬似乱数を使って1からNの順序番号の中からn個を抜き取る手順を採用する。抽出したそれぞれの試料の寿命は、母集団中の順序番号から逆算できる。n個の試料を寿命の短い順に並べ替え、メディアンランクを割り付け直した標本寿命をワイブル回帰することによって、推定寿命母集団を得る。
【0124】
図11は、無作為抽出による推定寿命母集団の一例を示す図であり、q =10、m=1.5、N=1000の寿命母集団から抽出した試料数10の寿命標本、および、これらをワイブル回帰して求めた推定寿命母集団を示す図である。
【0125】
上記で説明した、標本抽出と、データ整理とを同じ母集団から繰り返し行うことにより、抽出される標本の寿命分布がどのようにばらつくのかを把握することができる。図15は、無作為抽出による推定母集団と母集団の信頼区間を示す図であり、上述の寿命母集団からの標本抽出を20回繰り返し、それぞれの標本から推定寿命母集団を求めた結果を示す図である。
【0126】
3.2 標本寿命分布のばらつき
図15においては、上述の寿命母集団を、母数(qとm)が同じn=10の推定寿命母集団に置き換えている。また、図15には、数式20によって算出した信頼区間を示している。
【0127】
図15を参照して、破損確率が40〜80%の範囲を除いて、20組中2組(すなわち10%)の推定寿命母集団が、寿命母集団の信頼区間よりも外側に位置している。このことから、推定寿命母集団の90%が含まれる範囲と、寿命母集団の90%信頼区間とは、等価であると推察できる。
【0128】
4.推定母集団に対する信頼区間のシミュレーション
上記説明した抽出される標本の性質では、寿命分布が既知の母集団から無作為に抽出された標本の寿命分布のばらつきと、本来は意味を持たない寿命母集団に対する信頼区間とを比較した。そして、抽出される標本の90%を含む範囲が、寿命母集団の信頼区間に相当することを発見し、確認した。
【0129】
以下、この知見を実際問題へ適用する。対象とする実際の問題とは、「寿命試験によって得られる推定寿命母集団に対する信頼区間の推定」である。上述の知見をこの問題に置き換えることにより、以下の手順で信頼区間を推定する。
【0130】
a)まず、寿命試験によって得られた推定寿命母集団と同じ母数を持つ、多数の要素からなる寿命母集団を仮定する(仮想母集団と呼ぶ)。
【0131】
b)次に、無作為抽出のシミュレーションによって、仮想母集団から寿命試験と同じ試料数の標本(二次標本と呼ぶ)を繰り返し抽出する。さらに、各二次標本をワイブル回帰し、二次推定母集団を求める。
【0132】
c)次に、破損確率レベルごとの二次推定母集団の時間分布において、累積確率が5%および95%となる時間を90%信頼区間の上下限とする。
【0133】
図16は、図11にn=10で示した推定寿命母集団(θハットの値が13.71,mハットの値が1.316)に対して、上述の手順a),b)を適用した例を示す図である。また、図16のプロットは、抽出した20組の二次標本から求めた二次推定母集団上の寿命である。なお、手順a)での仮想母集団の要素数は、10000としている。
【0134】
図16では、ほとんどの破損確率レベルにおいて、20個中、長寿命側に1個、短寿命側に1個のプロットが、数式20(数式20と数式18とは同一)で算出した信頼区間から外れている。逆に言うと、二次推定母集団のおよそ90%が含まれる範囲と、確率論に基づく信頼区間とが一致している。
【0135】
図7は、上記手順c)において、各破損確率における二次推定母集団の累積確率を求めるため、二次推定母集団の時間分布をワイブル確率紙にプロットした結果を示す図である。また、図9は、図7の各回帰直線における累積確率5%と95%の時間によって求めた信頼区間を示す図である。ここで、図9において、シミュレーションによる上側信頼限界およびシミュレーションによる下側信頼限界は、数式20で計算されている。
【0136】
図7,9に示すように、上述の手法で算出した信頼区間は、数式20の計算結果を良好に再現している。このことから、本発明の手法によって、信頼性が高い計算を行うことができる。尚、無作為抽出を扱う問題のため、本報と同じ条件で再度シミュレーションを実施しても同じ結果は得られるとは限らない。しかし、二次標本の抽出回数を十分に多くすれば、結果の再現性を高めることができる。
【符号の説明】
【0137】
21 寿命母集団決定部
22 無作為抽出部
23 二次標本算出部
24 信頼区間決定部
25 二次推定母集団決定部
26 累積確率算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定手段と、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出手段と、
上記無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出手段と、
上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定手段と
を備えることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の破壊検査システムにおいて、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項3】
請求項2に記載の破壊検査システムにおいて、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団であることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記第1の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であり、
上記信頼区間決定手段は、上記破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とすることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定し、
上記第2の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項7】
請求項1に記載の破壊検査システムにおいて、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものであることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項9】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
を備えること特徴とする破壊検査方法。
【請求項10】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のデータ処理プログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータ読出し可能なプログラム記録媒体。
【請求項1】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定手段と、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出手段と、
上記無作為抽出手段によって無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出手段と、
上記二次標本算出手段が算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定手段と
を備えることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の破壊検査システムにおいて、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項3】
請求項2に記載の破壊検査システムにおいて、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記複数の二次推定母集団の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記第1の分布関数に従う寿命母集団は、有限個の要素からなる寿命母集団であることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記第1の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であり、
上記信頼区間決定手段は、上記破損確率レベル毎に存在を算出した要素のうちの90%の要素が含まれる区間を信頼区間とすることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記二次標本が適合する第2の分布関数を有する二次推定母集団を決定する二次推定母集団決定手段を備え、
上記信頼区間決定手段は、上記二次推定母集団決定手段が決定した複数の上記二次推定母集団に基づいて、破損確率レベルごとの信頼区間を決定し、
上記第2の分布関数は、2母数ワイブル分布の分布関数であることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項7】
請求項1に記載の破壊検査システムにおいて、
上記信頼区間決定手段は、複数の上記破損確率レベルにおける上記二次標本の時間分布をワイブル回帰して、累積確率を求め、その求めた累積確率に基づいて信頼区間を決定することを特徴とする破壊検査システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の破壊検査システムにおいて、
上記要素は、夫々、一つの軸受に対応させられるものであることを特徴とする破壊検査システム。
【請求項9】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
を備えること特徴とする破壊検査方法。
【請求項10】
複数個の試料の寿命試験の結果に基づいて、その複数個の試料が適合する第1の分布関数の寿命母集団を決定する寿命母集団決定ステップと、
上記寿命母集団のうちから上記複数個の試料の数と同じ数の複数個の要素を無作為抽出する無作為抽出ステップと、
上記無作為抽出された複数の要素に基づいて上記寿命母集団から複数の要素からなる二次標本を求める二次標本算出ステップと、
上記二次標本算出ステップで算出した複数の上記二次標本に基づいて破損確率レベルごとの信頼区間を決定する信頼区間決定ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のデータ処理プログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータ読出し可能なプログラム記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−36901(P2013−36901A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174178(P2011−174178)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本トライボロジー学会、トライボロジー会議予稿集 東京 2011−5、平成23年4月22日
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本トライボロジー学会、トライボロジー会議予稿集 東京 2011−5、平成23年4月22日
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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