説明

破砕処理装置、破砕方法、及び、高温鉄片発生個数予測方法

【課題】破砕機内部での廃棄電気製品等の発火の可能性を事前に予測し、破砕機内部での発火を未然に防止し得る破砕処理装置を提供する。
【解決手段】破砕処理装置10は、(A)鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕する破砕機21、(B)破砕機21に備えられ、破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する温度制御装置22、(C)破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別する選別装置31、(D)選別された鉄片を搬送する搬送装置41、(E)搬送装置41において搬送されている鉄片を検出し、鉄片の温度を測定する鉄片検出・温度測定装置51、及び、(F)測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する予測手段61を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕処理装置、破砕方法、及び、高温鉄片発生個数予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効活用、地球環境保全を目的として、廃棄電気製品が解体され、構成部材、構成部品毎に分別再生処理(リサイクル)されている。具体的には、例えば、冷蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機、テレビジョン受像機といった廃棄電気製品は、鉄部材、銅部材、アルミニウム部材、プラスチック部材、ガラス部材等を多く含んでおり、モータや圧縮機等を取り外した後、破砕機によって廃棄電気製品を適切な大きさに破砕した後、破砕片を分別している。
【0003】
ところで、廃棄電気製品を破砕機で破砕しているとき、発熱によって廃棄電気製品あるいは破砕片(以下、これらを総称して『廃棄電気製品等』と呼ぶ場合がある)が発火することが、実験を通じて明らかになってきた。そして、このような発火を防止するために、例えば、特開2003−170078には、破砕機の破砕部に向けて間欠的に散水する散水手段を設けた破砕装置が開示されている。この破砕装置では、破砕機の破砕部の温度を検出する破砕部温度検出手段と、破砕機から排出された破砕片の温度を検出する破砕片温度検出手段の少なくとも一方を備え、散水手段は、破砕部の温度又は排出された破砕片の温度に基づき、一定時間散水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−170078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、破砕機の破砕部の温度を検出することは、屡々、困難を伴う。また、破砕機から排出された破砕片の温度を検出することで散水手段の作動を制御するのでは、破砕機内部での廃棄電気製品等の発火から、発火が検出されるまでの時間差が大きいといった問題があるし、散水手段による散水量の細かい制御を行うことは困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、破砕機内部での廃棄電気製品等の発火の可能性を事前に予測し、破砕機内部での発火を未然に防止し得る破砕処理装置及び破砕方法、並びに、係る破砕方法の実行に適した高温鉄片発生個数予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の破砕処理装置は、
(A)鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕する破砕機、
(B)破砕機に備えられ、破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する温度制御装置、
(C)破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別する選別装置、
(D)選別された鉄片を搬送する搬送装置、
(E)搬送装置において搬送されている鉄片を検出し、鉄片の温度を測定する鉄片検出・温度測定装置、及び、
(F)測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する予測手段、
を具備することを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の破砕方法は、鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕機で破砕した後、破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別し、選別された鉄片を搬出する破砕方法であって、
選別された鉄片の搬出中に、鉄片を検出して鉄片の温度を測定し、
測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測し、その結果に基づき破砕機で破砕中の廃棄電気製品の温度を制御することを特徴とする。
【0009】
そして、本発明の破砕方法にあっては、測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する形態とすることができる。尚、温度を測定すべき鉄片の個数として、1×103個乃至3×104個を例示することができるが、これに限定するものではない。鉄片の温度測定は、搬送装置において搬送されている鉄片を連続して測定することが望ましい。以下の説明においても同様である。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の高温鉄片発生個数予測方法は、
鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕機で破砕した後、破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別し、選別された鉄片の搬出中に、鉄片を検出して鉄片の温度を測定し、
測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する高温鉄片発生個数予測方法であって、
測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測することを特徴とする。
【0011】
また、このような好ましい形態を含む本発明の破砕方法あるいは高温鉄片発生個数予測方法にあっては、あるいは又、本発明の破砕処理装置にあっては、破砕機から排出されてから鉄片の温度を測定するまでに要する時間は、即ち、破砕機の排出部から鉄片検出・温度測定装置までの距離を時間に換算したとき、1分以内、好ましくは0.5分以内であることが、より好ましくは出来る限り0分に近いことが望ましい。あるいは又、破砕機内の鉄片の温度と、鉄片検出・温度測定装置によって測定された鉄片の温度との差が5゜C以内となるような場所に、より好ましくは出来る限り温度差が生じない場所に、鉄片検出・温度測定装置を配置することが望ましい。
【0012】
本発明の破砕処理装置において、予測手段(推計手段)は、測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する形態とすることができる。尚、予測手段(推計手段)として、制御・演算装置やパーソナルコンピュータ、CPUと記憶装置の組合せを例示することができる。予測手段は、所定の温度以上となる鉄片の発生個数の予測結果を表示する画像表示装置を備えていることが好ましい。
【0013】
また、上記の好ましい形態を含む本発明の破砕処理装置において、鉄片検出・温度測定装置は、搬送装置において搬送されている鉄片を検出するレーザ変位計、及び、鉄片の温度を測定する非接触式温度計、例えば、放射温度計やサーモグラフィから成る構成とすることができる。但し、これに限定するものではなく、搬送装置を搬送されている鉄片を検出する装置として、測長機、金属検知器、固体撮像装置を挙げることができる。あるいは又、鉄片検出・温度測定装置として、固体撮像装置と、固体撮像装置で撮像された画像の解析装置との組合せを挙げることができる。
【0014】
また、上記の好ましい形態を含む本発明の破砕処理装置において、予測手段は、所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測し、その結果に基づき温度制御装置を制御する形態とすることができる。
【0015】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕処理装置において、破砕される廃棄電気製品として、冷蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機及びテレビジョン受像機から成る群から選択された少なくとも1種類の廃棄電気製品を挙げることができる。本発明の破砕方法あるいは高温鉄片発生個数予測方法においても同様である。
【0016】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕処理装置において、
破砕機は、竪型破砕機、具体的には、例えば、高速回転ハンマーにより衝撃剪断、破砕を行う竪型破砕機から成り、
温度制御装置は、破砕機内に配設された散水装置から成り、
選別装置は、磁力選別機から成り、
搬送装置は、ベルトコンベアから成る形態とすることができる。
【0017】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕方法にあっては、限定するものではないが、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕処理装置を用いることが好ましい。また、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の高温鉄片発生個数予測方法にあっては、鉄片を検出し、鉄片の温度を測定するために、限定するものではないが、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕処理装置における鉄片検出・温度測定装置を用いることが好ましく、また、測定された鉄片の温度から、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測するために、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の破砕処理装置における予測手段を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
従来の技術にあっては、破砕機から排出された破砕片である鉄片の温度を測定し、或る温度(例えば、180゜Cであり、便宜上、『閾値温度』と呼ぶ)以上の鉄片が検出された場合、破砕機内部で廃棄電気製品等が発火していると判断し、あるいは又、発火の可能性大と判断する。従って、破砕機内部での発火から、鉄片の温度測定に基づく発火の検出がなされるまでに、大きな時間差が生じ易い。一方、本発明においては、破砕機から排出された破砕片である鉄片の温度を測定し、その結果に基づき破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する。即ち、破砕機から排出された鉄片の温度、あるいは、破砕機内の鉄片の温度が閾値温度に達していなくとも、鉄片の温度が閾値温度に達するであろう個数を統計的に、確率に基づき予測することができる。それ故、発火が生じる前に、発火の発生を未然に防止する手段を講じることができるし、破砕機に備えられた温度制御装置の極め細かな制御を行うことができる。しかも、鉄片を検出する鉄片検出・温度測定装置を備えているので、確実に鉄片の温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1の破砕処理装置の概念図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、レーザ変位計によって鉄片の存在が確認され、鉄片の温度が非接触式温度計によって測定される状態を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められた度数分布、及び、測定された鉄片の温度を対数変換したデータに基づく度数分布を示す図である。
【図4】図4は、図3の(B)に示したデータを対数正規確立紙にプロットした結果を示す図である。
【図5】図5は、測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求めた、或る温度の鉄片の発生(出現)確率を求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、本発明の破砕処理装置、破砕方法、及び、高温鉄片発生個数予測方法に関する。実施例1の破砕処理装置の概念図を図1に示すが、実施例1の破砕処理装置10は、
(A)鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕する破砕機21、
(B)破砕機21に備えられ、破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する温度制御装置22、
(C)破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別する選別装置31、及び、
(D)選別された鉄片71を搬送する搬送装置41、
を具備しており、更に、
(E)搬送装置41において搬送されている鉄片71を検出し、鉄片71の温度を測定する鉄片検出・温度測定装置51、及び、
(F)測定された鉄片71の温度に基づき、破砕機21中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する予測手段(推計手段)61、
を具備している。
【0022】
また、実施例1の破砕方法は、鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕機21で破砕した後、破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別し、選別された鉄片71を搬出する破砕方法である。そして、選別された鉄片71を搬出中に、鉄片71を検出して鉄片71の温度を測定する。
【0023】
ここで、鉄片検出・温度測定装置51は、搬送装置41において搬送されている鉄片71を検出するレーザ変位計52、及び、鉄片71の温度を測定する非接触式温度計、具体的には、放射温度計53から成る。また、予測手段61は、制御・演算装置やパーソナルコンピュータから構成されており、画像表示装置を備えている。更には、破砕機21は、竪型破砕機、具体的には、例えば、高速回転ハンマーにより衝撃剪断、破砕を行う竪型破砕機から成り、温度制御装置22は、破砕機21内に配設された散水装置から成り、選別装置31は、吊下げ式磁力選別機から成り、搬送装置41は、ベルトコンベアから成る。また、破砕される廃棄電気製品として、冷蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機及びテレビジョン受像機から成る群から選択された少なくとも1種類の廃棄電気製品、具体的には、図示した例では冷蔵庫を挙げることができる。
【0024】
以下、先ず、実施例1の破砕処理装置を含む廃棄電気製品リサイクル設備における廃棄電気製品リサイクル処理を説明する。
【0025】
人手によって各種の部品が外され、冷媒ガスが回収された冷蔵庫が、投入シュート20に投入され、投入シュート20から破砕機21に送られる。破砕機21にて冷蔵庫は破砕され、例えば、鉄片、銅片、アルミニウム片、ステンレス鋼片、ウレタン樹脂片、プラスチック片等の破砕片とされる。そして、破砕片は破砕機21から排出され、ベルトコンベア23で搬送(搬出)される。
【0026】
破砕片のベルトコンベア23での搬送中に、ウレタン樹脂片の選別が行われる。具体的には、ベルトコンベア23上のウレタン樹脂片が吸引され、フィルタ及び風力選別機によって空気と分離される。そして、ウレタン樹脂片は、ウレタン樹脂片粉砕機で更に粉砕され、粉砕されたウレタン樹脂片は、圧縮装置でパンケーキ状に圧縮され、回収される。尚、破砕片のベルトコンベア23での搬送中に、あるいは又、ウレタン樹脂片の各種処理中に、ウレタン樹脂片中に含まれている発泡ガスの回収も行われる。尚、これらのウレタン樹脂片の回収や発泡ガスの回収に用いる装置の図示は省略した。ウレタン樹脂片の回収や発泡ガスの回収には周知の装置を用いればよいし、ウレタン樹脂片の回収方法や発泡ガスの回収方法も周知の方法を採用すればよい。
【0027】
破砕片のベルトコンベア23での搬送中に、更に、選別装置31、具体的には、吊下げ式磁力選別機を用いて、破砕された廃棄電気製品から鉄片71が選別される。選別された鉄片71は搬送装置41に送られる。鉄片71の温度測定等については後述する。
【0028】
ウレタン樹脂片及び鉄片71の選別が行われた後の破砕された廃棄電気製品(以下、『破砕廃棄電気製品』と呼ぶ)に対して、その後、その他の金属片、プラスチック片等の分別、回収が行われる。具体的には、吊下げ式磁力選別機を用いても選別されなかった鉄片をドラム磁力選別機を用いて破砕廃棄電気製品から回収し、更に、渦電流選別機によってアルミニウム片や銅片といった非鉄金属片を回収する。次いで、破砕廃棄電気製品からプラスチック片を回収し、更に、高磁力選別機を用いてステンレス鋼片を回収する。そして、残ったプラスチック片をプラスチック片破砕機によって破砕し、回収する。尚、これらの破砕廃棄電気製品からの各種破砕片の選別、分別、回収に用いる装置の図示は省略した。これらの破砕廃棄電気製品からの各種破砕片の選別、分別、回収等には周知の装置を用いればよいし、選別、分別、回収方法も周知の方法を採用すればよい。
【0029】
エアコンディショナー、洗濯機あるいはテレビジョン受像機(液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面型表示装置を含む)のリサイクル処理も、ウレタン樹脂片の回収、及び、ウレタン樹脂片中に含まれている発泡ガスの回収を除き、上述した冷蔵庫のリサイクル処理と同様のリサイクル処理とすることができるし、同じ設備、装置を使用すればよい。
【0030】
以下、実施例1の破砕方法、高温鉄片発生個数予測方法、鉄片の温度測定等について説明するが、破砕機内の鉄片の温度との差が大きくならないように、破砕機から排出されてから鉄片の温度を測定するまでに要する時間を1分以内とした。
【0031】
実施例1にあっては、選別された鉄片71の搬出中に、より具体的には、搬送装置41に送られてきた鉄片71が搬送装置41にて搬送(搬出)されている途中で、鉄片71の存在が検出され、そして、鉄片71の温度が測定される。即ち、レーザ変位計52によって鉄片71の存在が確認され、鉄片71の温度が非接触式温度計、具体的には、放射温度計53によって測定される(図2の(A)の概念図を参照)。尚、レーザ変位計52によって鉄片71の存在を確認すべき位置、及び、鉄片71の温度を非接触式温度計によって測定する位置を一致させておく。鉄片71の存在の検出、及び、鉄片71の温度の測定結果は、予測手段61に送られる。たとえ、放射温度計53によって有意の温度が測定されても、レーザ変位計52によって鉄片71の存在が確認されなければ(図2の(B)の概念図を参照)、測定された温度データは、一種のノイズとして、予測手段61によって廃棄される。あるいは又、レーザ変位計52によって鉄片71の存在が確認されたと同時に、あるいは、確認された直後に、放射温度計53によって鉄片71の温度を測定することで、確実に、鉄片71の温度測定を行うことができる。
【0032】
そして、予測手段61において、測定された鉄片71の温度に基づき、破砕機21中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する。具体的には、予測手段61において、測定された鉄片71の温度と検出された鉄片71の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機21中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する。尚、温度を測定すべき鉄片の個数を、1×103個乃至3×104個としたが、これに限定するものではない。鉄片71の温度測定は、搬送装置41において搬送されている鉄片を連続して測定する。
【0033】
一般に、定数μ及び正の定数σに対し、正の実数を値にとる確率変数xの確率密度関数f(x)が以下の式で与えられるとき、確率変数xは対数正規分布に従うという。また、対応する累積分布関数F(x)は以下の式で表される。但し、「erfc」は相補誤差関数であり、Φは標準正規分布の累積分布関数である。
【0034】

【0035】

【0036】
また、確率密度分布に対応する対数正規分布をLN(μ,σ2)で表すと、対数正規分布LN(μ,σ2)に従う確率変数Xに対して、平均E(x)及び分散V(x)は、以下の式のとおりとなる。ここで、μは平均値であり、σは標準偏差である。
【0037】

【0038】
実際に、約2万個の鉄片の温度測定を行い、測定された鉄片71の温度と検出された鉄片71の個数とから求めた度数分布を図3の(A)に示す。また、図3の(A)に示す度数分布における温度を対数変換したデータに基づく度数分布を図3の(B)に示す。図3の(A)に示す度数分布から判るように、高温側の分布において度数分布のグラフは裾を引く形となっており、正規分布とは異なっていることが判る。一方、図3の(B)に示すグラフは、図3の(A)のグラフのような高温側で裾を引くようなグラフではなく、正規分布と極めて類似したグラフとなっている。図3の(B)に示したデータにおける平均値μ、標準偏差σの値は、以下のとおりである。また、図3の(B)に示したデータを対数正規確立紙にプロットした結果を図4に示すが、図4から、対数正規分布であると判断することができる。
【0039】
μ=3.7819
σ=0.1752
【0040】
そして、予測手段61において、測定された鉄片の温度に基づき、破砕機21中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測し、その結果に基づき破砕機21で破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する。測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機21中での鉄片の温度と、そのような温度となる鉄片の発生(出現)確率との関係を求めた結果を、図5に示す。尚、図5中、「A」は、実際に測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数から求めた発生割合であり、「B」は、対数正規分布に基づく対数累積分布関数から求めた発生確率であり、「C」は、正規分布に基づく累積分布関数から求めた発生確率である。鉄片の温度が高温になると、正規分布に基づく累積分布関数から求めた発生確率「C」は、実際の発生確率「A」から乖離することが判る。一方、対数正規分布に基づく対数累積分布関数から求めた発生確率「B」は、鉄片の温度が高温になっても、実際の発生確率「A」からの乖離が少ないことが判る。
【0041】
予測手段61において、測定された鉄片の温度に基づき、破砕機21中で所定の温度(例えば、180゜C)以上となる鉄片の発生個数を予測し、予測結果を画像表示装置に表示すればよい。そして、このような所定の温度の鉄片の発生個数の予測値、推計値(このような所定の温度の鉄片の発生確率の予測値、推計値)が、所定の値を超えた場合には、破砕機21で破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する。具体的には、破砕機21内に配設された温度制御装置22である散水装置を作動させることで、破砕機21で破砕中の廃棄電気製品の温度を下げればよい。また、所定の温度の鉄片の発生個数の予測値、推計値(所定の温度の鉄片の発生確率の予測値)の変化に応じて、例えば、散水量を変えればよい。尚、図3に示したデータからは、180゜C以上となる鉄片の発生個数、云い換えれば、180゜C以上となる鉄片の発生確率は、1×10-15であり、σの値は、8.0541であった。
【0042】
このように、実施例1においては、破砕機から排出された破砕片である鉄片の温度を測定し、その結果に基づき破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する。即ち、破砕機から排出された鉄片の温度、あるいは、破砕機内の鉄片の温度が所定の温度(例えば、180゜C)に達していなくとも、鉄片の温度が所定の温度に達するであろう個数を統計的に、確率に基づき予測することができる。従って、発火が生じる前に発火の発生を未然に防止する手段を講じることができるし、破砕機に備えられた温度制御装置の極め細かな制御を行うことができる。
【0043】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこの実施例に限定するものではない。実施例において説明した破砕処理装置を構成する各種の装置、実施例の破砕処理装置を含む廃棄電気製品リサイクル設備における各種の装置、廃棄電気製品リサイクル処理方法等は例示であり、適宜、変更することができる。また、実施例において説明した各種のデータ、数値も例示であり、破砕処理装置の仕様、構成等が変われば、当然のことながら変わるものである。
【符号の説明】
【0044】
10・・・破砕処理装置、20・・・投入シュート、21・・・破砕機、22・・・温度制御装置、23・・・ベルトコンベア、31・・・選別装置、41・・・搬送装置、51・・・鉄片検出・温度測定装置、61・・・予測手段(推計手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕する破砕機、
(B)破砕機に備えられ、破砕中の廃棄電気製品の温度を制御する温度制御装置、
(C)破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別する選別装置、
(D)選別された鉄片を搬送する搬送装置、
(E)搬送装置において搬送されている鉄片を検出し、鉄片の温度を測定する鉄片検出・温度測定装置、及び、
(F)測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する予測手段、
を具備することを特徴とする破砕処理装置。
【請求項2】
予測手段は、測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測することを特徴とする請求項1に記載の破砕処理装置。
【請求項3】
鉄片検出・温度測定装置は、搬送装置において搬送されている鉄片を検出するレーザ変位計、及び、鉄片の温度を測定する非接触式温度計から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の破砕処理装置。
【請求項4】
予測手段は、所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測し、その結果に基づき温度制御装置を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の破砕処理装置。
【請求項5】
破砕される廃棄電気製品は、冷蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機及びテレビジョン受像機から成る群から選択された少なくとも1種類の廃棄電気製品であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の破砕処理装置。
【請求項6】
破砕機は、竪型破砕機から成り、
温度制御装置は、散水装置から成り、
選別装置は、磁力選別機から成り、
搬送装置は、ベルトコンベアから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の破砕処理装置。
【請求項7】
鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕機で破砕した後、破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別し、選別された鉄片を搬出する破砕方法であって、
選別された鉄片の搬出中に、鉄片を検出して鉄片の温度を測定し、
測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測し、その結果に基づき破砕機で破砕中の廃棄電気製品の温度を制御することを特徴とする破砕方法。
【請求項8】
測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測することを特徴とする請求項7に記載の破砕方法。
【請求項9】
破砕機から排出されてから鉄片の温度を測定するまでに要する時間は、1分以内であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の破砕方法。
【請求項10】
破砕される廃棄電気製品は、冷蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機及びテレビジョン受像機から成る群から選択された少なくとも1種類の廃棄電気製品であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の破砕方法。
【請求項11】
鉄部材を含む廃棄電気製品を破砕機で破砕した後、破砕された廃棄電気製品から鉄片を選別し、選別された鉄片を搬出中に、鉄片を検出して鉄片の温度を測定し、
測定された鉄片の温度に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測する高温鉄片発生個数予測方法であって、
測定された鉄片の温度と検出された鉄片の個数とから求められる対数正規分布に基づき、破砕機中で所定の温度以上となる鉄片の発生個数を予測することを特徴とする高温鉄片発生個数予測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−111531(P2013−111531A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260338(P2011−260338)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(501282659)グリーンサイクル株式会社 (5)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】