破砕機及び被破砕物処理装置
【課題】ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶等に含まれるガラス球等の大きさの異なる被破砕物を確実に破砕処理することができるようにする。
【解決手段】所定の間隔を開けて略平行に配置された第1の回転軸41及び第2の回転軸42に、複数の第1の回転体43A〜43C及び第2の回転体43D〜43Fを逆向きに設ける。この第1の回転体及び第2の回転体43A〜43Fに少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃52と、破砕刃52の段差の数と同数の段差が形成された段差部53を設ける。そして、第1及び第2の回転体43A〜43Fが互いに逆方向に回転する際に、第1及び第2の回転体43A〜43Fに設けた破砕刃52の段差面54の一部と、第2の回転体43D〜43F及び第1の回転体43A〜43Cに設けた段差部53の段差面55の一部が重なり合う構造とする。これにより、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶のガラス球等の大きさの異なる被破砕物を確実に破砕処理することができる。
【解決手段】所定の間隔を開けて略平行に配置された第1の回転軸41及び第2の回転軸42に、複数の第1の回転体43A〜43C及び第2の回転体43D〜43Fを逆向きに設ける。この第1の回転体及び第2の回転体43A〜43Fに少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃52と、破砕刃52の段差の数と同数の段差が形成された段差部53を設ける。そして、第1及び第2の回転体43A〜43Fが互いに逆方向に回転する際に、第1及び第2の回転体43A〜43Fに設けた破砕刃52の段差面54の一部と、第2の回転体43D〜43F及び第1の回転体43A〜43Cに設けた段差部53の段差面55の一部が重なり合う構造とする。これにより、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶のガラス球等の大きさの異なる被破砕物を確実に破砕処理することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄されたエアゾール缶やスプレー缶、及びガスライター等の被破砕物を破砕処理する破砕機、及びその破砕機を備えた被破砕物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用として用いられるガスを封入した缶、ボンベ類には、卓上ガスコンロ用ガス缶、点火用ガスライター、薬用スプレー缶(殺虫剤入り等)、塗装用スプレー缶、ガス入り化粧用スプレー缶(ヘアースプレー缶)等多種多様のものがある。
これらのガス缶類を粉砕処理する際の最大の問題は、ガス缶類を破砕するときに発生する火花がガス缶内に残っているガスに引火して爆発することである。このような爆発は大事故につながる恐れがあり、これらのガス缶類の処理業者にとっては極めて重要な課題となっている。
【0003】
このため、この爆発を防止する手段として、破砕時にガス缶内の封入されていたガスを吸引し外部へ放出する方法や、ガスが放出しても爆発しないような酸素量に保持するために、破砕室(処理室)の空気を吸引して一旦低圧状態にし、その後窒素を添加して窒素を増加させる方法等がある。
【0004】
この破砕室におけるガス缶あるいはボンベを破砕する方法としては、ガス缶等に強力な圧力を加えて圧縮破壊する方法(プレス方式)や、ガス缶及びボンベを鋭利な刃物で切断破砕する方法(カッター切断方法)が考えられている。
【0005】
また、エアゾール缶やスプレー缶等のガス缶等を破砕処理する技術として、容器を密閉してから真空ポンプで減圧する。そして、減圧した工程の中でガス缶等に孔を開けてガスを出してから缶を圧接処理することにより、ガス缶を処理する技術が本発明者らによって提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に記載のガス缶の処理方法は、容器内を減圧して酸素濃度を低くしているので、ガス缶をつぶす際に火花が生じても、残留ガスに引火して爆発することが防止できるという利点があった。また、容器内を真空ポンプで減圧するだけなので、装置を小型化できるという利点もあった。
【0007】
また、圧接処理により缶をつぶす代わりに、回転刃で切断して処理する方法も提案さている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、一対の回転ローラ軸に複数のスプロケット歯車を固定し、一対の回転ローラ軸に取り付けられた各スプロケット歯車がはさみの両刃のように作用してガス缶類を切断する方法である。すなわち、一方の回転ローラ軸に設けられたスプロケット歯車は他方の回転ローラ軸のスプロケット歯車の間に挿入されるように配置され、そのスプロケット歯車のサイドエッジで挿入された缶類を破砕するようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−81386号公報
【特許文献2】特開2000−61344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した破砕装置で処理するガス缶類の中には、その形状が異なるだけでなく、容器の強度や硬さの異なるものなどさまざまなものがある。特許文献1に記載の破砕装置では、エアゾール缶やスプレー缶のような比較的大きな被破砕物は処理できるが、ガスライターのような比較的小さな被破砕物に対して確実に孔を開けてガスを放出することが難しいという問題があった。また、これらのガスライター等の比較的小型のガス製品を圧接処理しても対向する圧接板の間でつぶされない状態で、つまりガスが放出されない状態で処理後のごみとなって落下してしまうという問題があった。
【0010】
更に、特許文献2に記載の粉砕装置では、スプロケット歯車の破損を防ぐために、スプロケット歯車と他方の回転ローラ軸との間に隙間を設けている。その結果、ビニール等で形成されたガスライター等の場合では、スプロケット歯車と回転ローラ軸の隙間を小さくしても、ガスライターが薄く伸ばされるだけで孔が開けず、ガスが放出されない、という問題があった。ここで、スプロケット歯車と回転ローラ軸の幅をガスライターの厚さよりも薄くすることが、考えられる。しかしながら、スプロケット歯車と回転ローラ軸の幅を薄くすると、エアゾール缶やスプレー缶等のガス缶に含まれるライターの厚さよりも大きいガラス球等が、スプロケット歯車と回転ローラ軸の間に入り込まず、破砕することができなくなる、という問題もあった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、通常のガスライターのような比較的小さい被破砕物だけでなく、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶に含まれるガラス球等の大きさの異なる被破砕物を確実に破砕処理することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の破砕機は、所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、第2の回転軸の軸方向に沿って、第1の回転体の取り付けの向きとは反対方向に設けられた複数の第2の回転体と、を備えている。そして、第1の回転体及び第2の回転体は、外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、第1の回転体と第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、第1の回転体及び第2の回転体に設けた破砕刃の段差面の一部と、第2の回転体及び第1の回転体に設けた段差部の段差面の一部が重なり合う構造になっている。
【0013】
本発明の被破砕物処理装置は、ガス缶等からなる被破砕物を投入する容器と、被破砕物を破砕する破砕機と、容器に入っている空気を排出する空気排出装置と、容器内に不燃性ガスを注入するガス注入装置と、容器内で破砕された被破砕物から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置と、から構成されている。なお、破砕機としては、上述した通りの破砕機が用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の破砕機及び被破砕物処理装置によれば、破砕刃に段差を設けると共に破砕刃の段差と同数の段差が形成された段差部を設けて、2つの回転体が逆方向に回転する際に、互いの段差面の一部が重なる構造になっているので、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶に含まれるガラス球等の大きさの異なる被破砕物に対して確実に破砕処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の破砕機、及び被破砕物処理装置を実施するための実施形態について、図1〜図13を参照して説明する。
【0016】
まず、図1〜4を参照して本発明の被破砕物処理装置の実施の形態について説明する。図1は、本発明の被破砕物処理装置の全体構成を示す構成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)である被破砕物処理装置1は、ガス缶、ガスライター等の被破砕物を投入する容器2と、この容器2内を減圧する空気排出装置である真空ポンプ3と、この真空ポンプ3の上流側に設けられた第1のタンク4と、真空ポンプ3の下流側に設けられた第2のタンク5等を有している。そして、この第2のタンク5の下流側には、排出されたガスを引火しない程度に希釈化するガス濃度希釈用のファン6と、排出されたガスを燃焼する燃焼装置7が設けられている。更に、本例の被破砕物処理装置1には、容器2内に不燃性ガスである窒素ガスを供給するガス注入装置である窒素ガス供給源8が設けられている。
【0017】
この容器2は、中空をなしており、その上部には、被破砕物を投入するための蓋2aが設けられている。そして、容器2の内部には、後述する破砕機9が配置されている。この破砕機9の下方には、破砕した被破砕物を回収するためのハッチ10が設けられている。更に、容器2の底部には、排出用(ドレーン用)の管路11が接続され、この管路11にドレーン弁12が設けられている。また、容器2の上方の側部には、この容器2内の圧力を測定する圧力計13が接続されており、容器2の下方の側部には、窒素ガス供給部8に至る管路23が弁24を介して接続されている。この窒素ガス供給部8から容器2内に窒素ガスが供給される。さらに、この容器2の側部には、第1のタンク4に至る管路14が接続されている。
【0018】
第1のタンク4は、真空ポンプ3の上流側に配設されており、その内部には、オイル4aが充填されている。このオイル4a内には、弁15を介して上述した管路14が挿入されている。また、第1のタンク4には、弁17を介して真空ポンプ3に接続される管路16が接続されている。
【0019】
また、真空ポンプ3の下流側には、管路18と弁19を介して第2のタンク5が設けられている。この第2のタンク5の内部には、溶剤として水5aが充填されている。そして、この水5aは、前述した管路18の一端が挿入されている。また、第2のタンク5には、ファン6又は燃焼装置7に至る管路20が接続されている。そして、管路20とファン6の経路には弁21が設けられ、管路20と燃焼装置7の間には、弁22が接続されている。
【0020】
ここで、真空ポンプ3を作動すると、容器2内の気体は、管路14を通り、第1のタンク4内のオイル4a内を通過する。そして、オイル4a内を通過した気体は、管路16を通って真空ポンプ3に吸引され、真空ポンプ3の下流側に気体が吐き出される。
【0021】
次に、真空ポンプ3から吐き出された気体は、管路18を通って、第2のタンク5内の水5aを通過する。この水5a内を通過させることで、気体に含まれる臭気を除去することができる。臭気が除去された気体は、管路20を通って、ガス濃度希釈用のファン6、又はガスを燃焼する燃焼装置7に供給される。ここで、真空ポンプ3、第1及び第2のタンク4,5、ファン6及び燃焼装置7により、本発明の被破砕物処理装置に係る排出装置の一具体例が構成される。
【0022】
以上の構成の他に、被破砕物処理装置1には、図示しないシーケンサを用いた制御装置があり、この制御装置により処理装置全体の制御を行っている。また、弁12,15,17,19,21,22及び24の全ての弁は、電気信号で開閉される電磁弁が使用されており、制御装置によって制御されている。更に、圧力計13の検知結果は、電気信号として図示しない制御装置に伝達される。そして、制御装置は、真空ポンプ3とファン6又は燃焼装置7との運転及び停止から各弁の開閉動作を、シーケンサに予めインストールされたプログラムにより自動的に行う。
【0023】
次に、図2から図4を参照して被破砕物処理装置1の容器2内の詳細を説明する。図2は容器2の内部に設けた破砕機9とそれを駆動するための電動機32の配置関係を示した図、図3は図2のA−A′線断面図、図4は被破砕物処理装置に係る投入部34及び破砕機9を断面して示す図である。
【0024】
この図2に示すように、破砕機9は、容器2の内部に配設されているのに対し、この破砕機9を駆動する駆動部である電動機32は、減速器33を介して容器2の外部に設置されている。つまり、電動機32は、減速器33を介して破砕機9の回転軸に連結されており、電動機32の回転が減速器33によって、低速に変換されて破砕機9の回転軸を回転するようになっている。ここで、容器2の側面には、電動機32の軸を貫通させる軸貫通穴が設けられているが、容器2内のガスが外部に漏れない構造になっている。そして、この電動機32を支える図示しないブラケットが、容器2の側壁に固定されている。
【0025】
このように、電動機32を容器2の外部に設置することにより、容器2内に投入されたガス缶等に残留する可燃性ガスと電動機32を隔離することができる。これにより、例え、容器2内で可燃性ガスが爆発しても、その爆発から電動機32を保護することが可能である。
【0026】
また、上述したように破砕機9の下方には、ハッチ10が配置されており、このハッチ10の側面前方には密閉ドア36が設けられている。そして、ハッチ10の底部には、ハッチ10の片側を持ち上げる昇降機構37が設けられている。この昇降機構37が作動すると、ハッチ10が図2に示す点線の位置まで傾く。これにより、昇降機構37を作動させてハッチ10を密閉ドア36側に傾かせることで、ハッチ10を外部に取り出し易くすることができる。
【0027】
図3及び図4に示すように、破砕機9の上部には、被破砕物が投入されるロート状の投入部34と、この投入部34に投入された被破砕物が溜め込まれる収納部35が設けられている。そして、投入部34の内部には、被破砕物を収納部35に押し込むパドルプッシャ31が設けられている。
【0028】
パドルプッシャ31は、回転軸31aと、この回転軸31aに取り付けられた2枚の押圧片31bと、回転軸31aの軸方向に一端に設けられた連結歯車31cから構成されている。このパドルプッシャ31は、2枚の押圧片31b,31bが回転することにより、投入部34に投入された被破砕物を収納部35及び破砕機9に押し込む機能を有している。そして、図3に示すように、このパドルプッシャ31の連結歯車31cは、後述する破砕機9の回転軸41とベルト38で連結されており、破砕機9の回転と連動して回転するようになっている。なお、本例では、パドルプッシャ31の押圧片31bの枚数を2枚としたが、3枚以上にしてもよい。
【0029】
次に、本例の破砕機9の詳細を図5〜図9を参照して説明する。図5は図2のB−B′線断面図、図6は破砕機9の斜視図、図7は破砕機9の側面図、図8は破砕機9を構成する回転体の斜視図、図9は破砕機9の破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
【0030】
図5に示すように、破砕機9は、第1の回転軸41と、この第1の回転軸41と所定の間隔を開けて略平行に配置された第2の回転軸42と、6つの回転体43A〜43Fと、2つの回転軸41,42及び回転体43A〜43Fを囲むケース44等を有している。
【0031】
ケース44は、中空の略直方体状をなしており、上面と下面が開口している。このケース44の側面には、2つの回転軸41,42が挿通する図示しない2つの開口穴が開口している。そして、この2つの開口穴には、2つの回転軸41,42を回転可能に支持する軸受け45がそれぞれ設けられている。本例では、この軸受け45に、ころがり軸受けを用いているが、これに限定されるものではない。また、ケース44下部の縁には、容器2内にこのケース44をねじ止め等の固定方法で固定するための複数の第1の固定部46を有している(図3及び図4参照)。更に、ケース44上部の縁には、収納部35をケース44にねじ止め等の固定方法で固定するための複数の第2の固定部47を有している(図3及び図4参照)。
【0032】
第1の回転軸41は、円柱状をなしており、軸の側面には、2つの係合凸部41a,41aを有している(図7参照)。第1の回転軸41の軸方向の一端は、容器2の外部に配置された減速器33に連結しており、この第1の回転軸41に電動機32からの回転力が伝達される。また、この第1の回転軸41の軸方向の他端には、第1の歯車48が設けられている。更に、第1の回転軸41は、図3で示したように、ベルト38を介してパドルプッシャ31に連結している。
【0033】
第2の回転軸42は、第1の回転軸41と同様に、円柱状をなしており、軸の側面には、2つの係合凸部42a,42aを有している(図7参照)。第2の回転軸42の軸方向の他端には、ケース44の外部で第1の回転軸41の第1の歯車48に連結する第2の歯車49を有している。そして、第1の歯車48と第2の歯車49が連結することにより、第1の回転軸41の回転力が第2の回転軸42に伝達される。その結果、第1の回転軸41及び第2の回転軸42が、それぞれ反対方向、すなわち図6に示す矢印の方向に回転する。
【0034】
また、図5及び図6に示すように、第1の回転軸41には、第1の回転体である3つの回転体43A,43B及び43Cが取り付けられている。同様に、第2の回転軸42には、第2の回転体である3つの回転体43D,43E及び43Fが取り付けられている。図7及び図8に示すように、回転体43は、略円盤状をなしており、軸部50と、回転軸41,42が挿通する軸受け穴51と、複数の破砕刃52と、段差部53等を有している。軸部50は、円盤状をなしており、その略中心に軸受け穴51が設けられている。この軸受け穴51には、回転軸41,42の係合凸部41a,42aに係合される2つの係合凹部51a,51aが形成されている。また、回転体43の側面には、複数(本例では、10個)の破砕刃52が設けられている。
【0035】
破砕刃52は、爪状をなしており、回転体43における側面の略半分から半径方向の外側に向けて連続して突出している。この破砕刃52は、幅方向で略二分する位置に段差を有しており、幅方向の一側に第1破砕刃52aと幅方向の他側に第2破砕刃52bが形成されている(図8参照)。この第1破砕刃52aと第2破砕刃52bは、軸部50の側面からの突出高さが異なっている。本例では、幅方向の内側(他側)に位置する第2破砕刃52bが、第1破砕刃52aの略半分の高さに設定されている。
【0036】
また、図9に示すように、破砕刃51の幅方向の厚さは、Mに設定されており、第1及び第2破砕刃52a,52bの一つ分の幅方向の厚さは、Mの略半分のN(N=M/2)に設定されている。なお、破砕刃52の厚さMは、例えば被破砕物であるガス缶等に含まれるガラス球よりも大きいことが好ましく、第1及び第2破砕刃52a,52bの一つ分の厚さNは、例えばガスライターのような比較的小さい被破砕物よりも小さいことが好ましい。
【0037】
また、この回転体43における側面の残りの略半分、即ち、回転体43の幅方向の他の側には、段差部53が設けられている。この段差部53は、第1段差部53aと、第1段差部53aから所定の段差をもって連続する第2段差部53bから構成されている。本例では、段差部53の段差の高さは、破砕刃52の第1破砕刃52aと第2破砕刃52bの高さの差と略等しくなるように設定されている。また、第1段差部53a及び第2段差部53bの幅方向の厚さは、破砕刃52の第1及び第2破砕刃52a,52b(図8参照)の一つ分の厚さNと等しくなるように設定されている。このように、段差を有する破砕刃52と段差部53により、回転体43は、軸方向の一端側から他端側にかけて、4段階に半径が小さくなっている。
【0038】
また、図5及び図6に示すように、第1の回転軸41に取り付けられた回転体43A〜43Cと、第2の回転軸42に取り付けられた回転体43D〜Fでは、回転軸41,42に取り付ける方向が反対になっている。即ち、第1の回転軸41に取り付けた回転体43A〜43Cの破砕刃52の向きと、第2の回転軸42に取り付けた回転体43D〜43Fの破砕刃52の向きが反対になっている。そのため、回転体43A〜43Cの破砕刃52が、回転体43D〜43Fの段差部53に対向しており、回転体43D〜43Fの破砕刃52が、回転体43A〜43Cの段差部53に対向している。そして、図9に示すように、破砕刃52の段差面54と、対向する回転体43の第1段差部53aと第2段差部53bで形成された段差面55の一部が互いに重なり合うようになっている。この破砕刃52の段差面54と段差部53の段差面55が重なり合う部分がはさみの両刃のように作用して被破砕物を破砕するのである。
【0039】
ここで、上述したように、破砕刃52の第1及び第2破砕刃52a,52b一つ分の厚さが、ガスライターのような比較的小さい被破砕物よりも小さく設定されている。その結果、被破砕物は、確実に破砕刃52の段差面54と段差部53の段差面55が重なり合う部分に挟み込まれる。これにより、ビニールで形成されたガスライターでも、伸びることなく確実に破砕することができる。更に、破砕刃51の幅方向の厚さを、ガス缶等に含まれるガラス球よりも大きく設定している。そのため、ガラス球は、破砕刃51と、対向する回転体43の段差部52の間に入り込むため、確実にガラス球を破砕することができる。このように、本例の破砕機によれば、ビニールで形成されたガスライターやガス缶のガラス球等のように大きさや材質の異なる被破砕物を確実に処理することが可能である。
【0040】
なお、本例では、第1及び第2の回転軸41,42に取り付ける回転体43の数をそれぞれ3つとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、第1及び第2の回転軸41、42にそれぞれ2つ、或いは4つ以上の回転体43を取り付けてもよい。更に、回転体43の破砕刃52の数を本例では、10個としたが、9個以下でもよく、又は11個以上設けてもよい。
【0041】
次に、このような構成を有する破砕機9を備えた被破砕物処理装置1の破砕処理を説明する。初期状態として、図1に示す、全ての弁12,15,17,19,21,22及び24を閉じておく。次に、図2に示すように、蓋2aを開いて容器2内に廃棄されたガス缶やライター等の被破砕物を投入部34に投入する。そして、被破砕物は、破砕機9の上方に設けられたパドルプッシャ31の押圧片31bに押圧されて、収納部35に送り込まれる。この状態で容器2の蓋2aが閉じられ、破砕機9の下部に配置されたハッチ10の密閉ドア36も閉じる。そのため、容器2は外部から遮断された状態となる。
【0042】
次に、図1に示す、弁15,17,19及び21を開き、真空ポンプ3及びファン6を作動させる。すると、容器2内の空気は矢印の方向に流れ、容器2内は真空ポンプ3及びファン6に吸引力によって減圧される。そして、容器2内の空気は、真空ポンプ3を通過し、ファン6から大気に強制的に排気される。このとき、ファン6の吸引力は、真空ポンプ3の突出量よりも十分に大きく設定されているため、容器2内のガス等を希釈化することができる。
【0043】
この減圧の程度は、被破砕物から可燃性ガスが噴出しても爆発を起こさない酸素濃度に維持できる圧力であり、具体的には約400〜500mmHg前後である。この減圧の状態は、圧力計13で逐一検知される。容器2内が所定の圧力まで減圧されると、真空ポンプ3及びファン6を停止する。そして、弁15,17,19及び21を閉じ、弁24を開いて窒素ガス供給源8から窒素ガス8を容器2内に充填する。すると、容器2内の圧力が大気圧まで加圧されることにより、容器2内の酸素濃度は、爆発限界となる13%未満まで低下する。
【0044】
そして、容器2内の酸素濃度が爆発限界未満になると、弁24を閉じ、再び弁15,17,19及び21を開いて、真空ポンプ3及びファン6を作動させる。これにより、再び容器2内の気圧が低下する。
【0045】
容器2内が所定の圧力まで減圧されたのを確認したら、図2に示す、電動機32の電源をオンにして、破砕機9の運転を開始する。破砕機9の運転が開始されると、2つの回転軸41,42が回転し、回転体43に設けた破砕刃52と、対向する回転体43に設けた段差部53により、被破砕物が破砕処理される。破砕処理された被破砕物は、破砕機9の下方に落下し、ケース10に回収される。
【0046】
このとき、被破砕物から残留していたガスが噴出したり、液状物が流れ出たりすることがある。その場合、容器2内で溶剤に混入するが、一部はミスト状となって容器2内に浮遊する。そして、この浮遊しているミストは、容器2内の気体と一緒に管路14を通って第1のタンク4に充填されたオイル4a内を通過する。このように、オイル4a内を通過させることで、オイル4a内に溶融させたり、オイル4aの粘性で閉じ込めたり、液化させてオイル4aに溶かしたりして補足することができる。
【0047】
このようにして、ガス缶等の被破砕物を破砕した際に流出して容器2内の残留する各種の液状物は、オイル4aで殆ど補足することができる。その結果、真空ポンプ3に加わる付加は、オイル4aで補足できないプロパンガスやブタンガス等だけになる。これにより、真空ポンプ3に加わる付加を大幅に減少することが可能である。更に、ガス濃度希釈用のファン6で希釈化するガス、又は燃焼装置7で燃焼するガスは、プロパンガスやブタンガス等だけであるため、燃焼しても有毒ガスが発生しないものとなる。また、破砕機9で被破砕物を破砕処理するときに、火花が発生することがあるが、容器2内は、低酸素状態及び不燃性ガスが充満している状態であるため、爆発するおそれがない。
【0048】
更に、被破砕物からガスの噴射によって容器2内の圧力が所定値より上昇したときは、破砕機9の運転を停止し、真空ポンプ3及びファン6によって、容器2内が所定の圧力まで減圧されるまで待つことが好ましい。そして、前述したような工程を繰り返して破砕処理を行う。
【0049】
そして、投入された被破砕物がすべて破砕され、容器2内に未処理の被破砕物が無くなると、被破砕物の破砕による新規のガスの発生が止まる。すると、圧力計13の圧力が低下し始める。そのため、予め適当な圧力を設定しておき、設定値まで圧力が下がったら、破砕処理が終了したとして被破砕物処理装置1の運転を停止する。そして、容器2内の圧力が大気圧と略等しくになると、ハッチ10を開いて破砕された被破砕物を取り出す。また、ドレーン弁12を開き、容器2内に溜まった被破砕物の液状物を管路11に排出する。このようにして、本発明の被破砕物処理装置1による被破砕物の破砕処理が終了する。
【0050】
次に、図10及び図11を参照して回転体の第2の実施の形態例を説明する。図10Aは破砕刃の第1の実施の形態を示す斜視図、図10Bは破砕刃の第2の実施の形態を示す斜視図、図11は第2の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
【0051】
この図10Aに示すように、本例では、第1及び第2破砕刃52a,52bにおける刃の角度を段差面54に対して略90度に設定したが、これに限定されるものではない。図10Bに示す第2の実施の形態に係る破砕刃62のように、第1及び第2破砕刃62a,62bの刃の角部を段差面64に対して鈍角に設定してもよい。これに伴って、図11に示すように段差部63(第1段差部63a及び第2段差部63b)も段差面65に鈍角になるように形成することが好ましい。このように、破砕刃62の角度を鈍角にして、回転体43の側面に対して刃を斜め形成にすることにより、被破砕物が破砕刃62に巻き込み易くなり、より確実に破砕処理することができる。
【0052】
次に、図12及び図13を参照して回転体の第3の実施の形態例を説明する。図12は回転体を示す斜視図、図13は破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
この図12及び図13に示すように、この実施の形態に係る回転体73では、破砕刃82に2つの段差が設けられている。即ち、本例に係る破砕刃82は、幅方向の一側から第1破砕刃82aと第2破砕刃82bと第3破砕刃82cが形成されている。また、破砕刃82の段数と等しくなるように、本例に係る段差部83は、第1段差部83aと、第1段差部から所定の段差をもって連続する第2段差部83bと、更にこの第2段差部83bから所定の段差をもって連続する第3段差部83cから構成されている。
【0053】
そして、図13に示すように、第1破砕刃82aと第2破砕刃82bで形成された第1段差面84aの一部が、第2段差部83bと第3段差面83cで形成された第2段差面85bと重なり合い、第2破砕刃82bと第3破砕刃82cで形成された第2段差面84bが、第1段差部83aと第2段差部83bで形成された第1段差面85aと重なりあっている。このような構成を有する回転体73によっても、前述した回転体と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明は、以上説明しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、上述した実施の形態例では、回転軸と回転体を別部材として説明したが、これに限定されるものではなく、回転軸と回転体を一つの部材として一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の被破砕物処理装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の被破砕物処理装置の実施の形態に係る容器の断面図である。
【図3】図2のA−A′線断面図である。
【図4】本発明の被破砕物処理装置の実施の形態に係る投入部と破砕機を拡大して示す断面図である。
【図5】図2のB−B′線断面図である。
【図6】本発明の破砕機の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の破砕機の第1の実施の形態を示す側面図である。
【図8】本発明の破砕機の第1の実施の形態に係る回転体を示す斜視図である。
【図9】本発明の破砕機の第1の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【図10】本発明の破砕機の第1及び第2の実施の形態に係る破砕刃を示すもので、図10Aは第1の実施の形態に係る破砕刃の拡大斜視図、図10Bは第2の実施の形態に係る破砕刃の拡大斜視図である。
【図11】本発明の破砕機の第2の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【図12】本発明の破砕機の第3の実施の形態に係る回転体を示す斜視図である。
【図13】本発明の破砕機の第3の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1…被破砕物処理装置、 2・・・容器、 3・・・真空ポンプ(空気排出装置)、 8・・・窒素ガス供給源(ガス注入装置) 9・・・破砕機、 41・・・第1の回転軸、 42・・・第2の回転軸、 43A,43B,43C,43D,43E,43F,73・・・回転体(第1の回転体、第2の回転体)、 52,62,82・・・破砕刃、52a,62a,82a・・・第1破砕刃、 52b,62b,82b・・・第2破砕刃、 83c・・・第3破砕刃、 53,63,83・・・段差部、 第1段差部・・・53a,63a,83a、 第2段差部・・・53b,63b,83b、 第3段差部・・・83c、 54,55,64,64,84a,84b,85a,85b・・・段差面
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄されたエアゾール缶やスプレー缶、及びガスライター等の被破砕物を破砕処理する破砕機、及びその破砕機を備えた被破砕物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用として用いられるガスを封入した缶、ボンベ類には、卓上ガスコンロ用ガス缶、点火用ガスライター、薬用スプレー缶(殺虫剤入り等)、塗装用スプレー缶、ガス入り化粧用スプレー缶(ヘアースプレー缶)等多種多様のものがある。
これらのガス缶類を粉砕処理する際の最大の問題は、ガス缶類を破砕するときに発生する火花がガス缶内に残っているガスに引火して爆発することである。このような爆発は大事故につながる恐れがあり、これらのガス缶類の処理業者にとっては極めて重要な課題となっている。
【0003】
このため、この爆発を防止する手段として、破砕時にガス缶内の封入されていたガスを吸引し外部へ放出する方法や、ガスが放出しても爆発しないような酸素量に保持するために、破砕室(処理室)の空気を吸引して一旦低圧状態にし、その後窒素を添加して窒素を増加させる方法等がある。
【0004】
この破砕室におけるガス缶あるいはボンベを破砕する方法としては、ガス缶等に強力な圧力を加えて圧縮破壊する方法(プレス方式)や、ガス缶及びボンベを鋭利な刃物で切断破砕する方法(カッター切断方法)が考えられている。
【0005】
また、エアゾール缶やスプレー缶等のガス缶等を破砕処理する技術として、容器を密閉してから真空ポンプで減圧する。そして、減圧した工程の中でガス缶等に孔を開けてガスを出してから缶を圧接処理することにより、ガス缶を処理する技術が本発明者らによって提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に記載のガス缶の処理方法は、容器内を減圧して酸素濃度を低くしているので、ガス缶をつぶす際に火花が生じても、残留ガスに引火して爆発することが防止できるという利点があった。また、容器内を真空ポンプで減圧するだけなので、装置を小型化できるという利点もあった。
【0007】
また、圧接処理により缶をつぶす代わりに、回転刃で切断して処理する方法も提案さている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、一対の回転ローラ軸に複数のスプロケット歯車を固定し、一対の回転ローラ軸に取り付けられた各スプロケット歯車がはさみの両刃のように作用してガス缶類を切断する方法である。すなわち、一方の回転ローラ軸に設けられたスプロケット歯車は他方の回転ローラ軸のスプロケット歯車の間に挿入されるように配置され、そのスプロケット歯車のサイドエッジで挿入された缶類を破砕するようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−81386号公報
【特許文献2】特開2000−61344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した破砕装置で処理するガス缶類の中には、その形状が異なるだけでなく、容器の強度や硬さの異なるものなどさまざまなものがある。特許文献1に記載の破砕装置では、エアゾール缶やスプレー缶のような比較的大きな被破砕物は処理できるが、ガスライターのような比較的小さな被破砕物に対して確実に孔を開けてガスを放出することが難しいという問題があった。また、これらのガスライター等の比較的小型のガス製品を圧接処理しても対向する圧接板の間でつぶされない状態で、つまりガスが放出されない状態で処理後のごみとなって落下してしまうという問題があった。
【0010】
更に、特許文献2に記載の粉砕装置では、スプロケット歯車の破損を防ぐために、スプロケット歯車と他方の回転ローラ軸との間に隙間を設けている。その結果、ビニール等で形成されたガスライター等の場合では、スプロケット歯車と回転ローラ軸の隙間を小さくしても、ガスライターが薄く伸ばされるだけで孔が開けず、ガスが放出されない、という問題があった。ここで、スプロケット歯車と回転ローラ軸の幅をガスライターの厚さよりも薄くすることが、考えられる。しかしながら、スプロケット歯車と回転ローラ軸の幅を薄くすると、エアゾール缶やスプレー缶等のガス缶に含まれるライターの厚さよりも大きいガラス球等が、スプロケット歯車と回転ローラ軸の間に入り込まず、破砕することができなくなる、という問題もあった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、通常のガスライターのような比較的小さい被破砕物だけでなく、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶に含まれるガラス球等の大きさの異なる被破砕物を確実に破砕処理することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の破砕機は、所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、第2の回転軸の軸方向に沿って、第1の回転体の取り付けの向きとは反対方向に設けられた複数の第2の回転体と、を備えている。そして、第1の回転体及び第2の回転体は、外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、第1の回転体と第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、第1の回転体及び第2の回転体に設けた破砕刃の段差面の一部と、第2の回転体及び第1の回転体に設けた段差部の段差面の一部が重なり合う構造になっている。
【0013】
本発明の被破砕物処理装置は、ガス缶等からなる被破砕物を投入する容器と、被破砕物を破砕する破砕機と、容器に入っている空気を排出する空気排出装置と、容器内に不燃性ガスを注入するガス注入装置と、容器内で破砕された被破砕物から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置と、から構成されている。なお、破砕機としては、上述した通りの破砕機が用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の破砕機及び被破砕物処理装置によれば、破砕刃に段差を設けると共に破砕刃の段差と同数の段差が形成された段差部を設けて、2つの回転体が逆方向に回転する際に、互いの段差面の一部が重なる構造になっているので、ビニール等で形成されたガスライター等やガス缶に含まれるガラス球等の大きさの異なる被破砕物に対して確実に破砕処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の破砕機、及び被破砕物処理装置を実施するための実施形態について、図1〜図13を参照して説明する。
【0016】
まず、図1〜4を参照して本発明の被破砕物処理装置の実施の形態について説明する。図1は、本発明の被破砕物処理装置の全体構成を示す構成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)である被破砕物処理装置1は、ガス缶、ガスライター等の被破砕物を投入する容器2と、この容器2内を減圧する空気排出装置である真空ポンプ3と、この真空ポンプ3の上流側に設けられた第1のタンク4と、真空ポンプ3の下流側に設けられた第2のタンク5等を有している。そして、この第2のタンク5の下流側には、排出されたガスを引火しない程度に希釈化するガス濃度希釈用のファン6と、排出されたガスを燃焼する燃焼装置7が設けられている。更に、本例の被破砕物処理装置1には、容器2内に不燃性ガスである窒素ガスを供給するガス注入装置である窒素ガス供給源8が設けられている。
【0017】
この容器2は、中空をなしており、その上部には、被破砕物を投入するための蓋2aが設けられている。そして、容器2の内部には、後述する破砕機9が配置されている。この破砕機9の下方には、破砕した被破砕物を回収するためのハッチ10が設けられている。更に、容器2の底部には、排出用(ドレーン用)の管路11が接続され、この管路11にドレーン弁12が設けられている。また、容器2の上方の側部には、この容器2内の圧力を測定する圧力計13が接続されており、容器2の下方の側部には、窒素ガス供給部8に至る管路23が弁24を介して接続されている。この窒素ガス供給部8から容器2内に窒素ガスが供給される。さらに、この容器2の側部には、第1のタンク4に至る管路14が接続されている。
【0018】
第1のタンク4は、真空ポンプ3の上流側に配設されており、その内部には、オイル4aが充填されている。このオイル4a内には、弁15を介して上述した管路14が挿入されている。また、第1のタンク4には、弁17を介して真空ポンプ3に接続される管路16が接続されている。
【0019】
また、真空ポンプ3の下流側には、管路18と弁19を介して第2のタンク5が設けられている。この第2のタンク5の内部には、溶剤として水5aが充填されている。そして、この水5aは、前述した管路18の一端が挿入されている。また、第2のタンク5には、ファン6又は燃焼装置7に至る管路20が接続されている。そして、管路20とファン6の経路には弁21が設けられ、管路20と燃焼装置7の間には、弁22が接続されている。
【0020】
ここで、真空ポンプ3を作動すると、容器2内の気体は、管路14を通り、第1のタンク4内のオイル4a内を通過する。そして、オイル4a内を通過した気体は、管路16を通って真空ポンプ3に吸引され、真空ポンプ3の下流側に気体が吐き出される。
【0021】
次に、真空ポンプ3から吐き出された気体は、管路18を通って、第2のタンク5内の水5aを通過する。この水5a内を通過させることで、気体に含まれる臭気を除去することができる。臭気が除去された気体は、管路20を通って、ガス濃度希釈用のファン6、又はガスを燃焼する燃焼装置7に供給される。ここで、真空ポンプ3、第1及び第2のタンク4,5、ファン6及び燃焼装置7により、本発明の被破砕物処理装置に係る排出装置の一具体例が構成される。
【0022】
以上の構成の他に、被破砕物処理装置1には、図示しないシーケンサを用いた制御装置があり、この制御装置により処理装置全体の制御を行っている。また、弁12,15,17,19,21,22及び24の全ての弁は、電気信号で開閉される電磁弁が使用されており、制御装置によって制御されている。更に、圧力計13の検知結果は、電気信号として図示しない制御装置に伝達される。そして、制御装置は、真空ポンプ3とファン6又は燃焼装置7との運転及び停止から各弁の開閉動作を、シーケンサに予めインストールされたプログラムにより自動的に行う。
【0023】
次に、図2から図4を参照して被破砕物処理装置1の容器2内の詳細を説明する。図2は容器2の内部に設けた破砕機9とそれを駆動するための電動機32の配置関係を示した図、図3は図2のA−A′線断面図、図4は被破砕物処理装置に係る投入部34及び破砕機9を断面して示す図である。
【0024】
この図2に示すように、破砕機9は、容器2の内部に配設されているのに対し、この破砕機9を駆動する駆動部である電動機32は、減速器33を介して容器2の外部に設置されている。つまり、電動機32は、減速器33を介して破砕機9の回転軸に連結されており、電動機32の回転が減速器33によって、低速に変換されて破砕機9の回転軸を回転するようになっている。ここで、容器2の側面には、電動機32の軸を貫通させる軸貫通穴が設けられているが、容器2内のガスが外部に漏れない構造になっている。そして、この電動機32を支える図示しないブラケットが、容器2の側壁に固定されている。
【0025】
このように、電動機32を容器2の外部に設置することにより、容器2内に投入されたガス缶等に残留する可燃性ガスと電動機32を隔離することができる。これにより、例え、容器2内で可燃性ガスが爆発しても、その爆発から電動機32を保護することが可能である。
【0026】
また、上述したように破砕機9の下方には、ハッチ10が配置されており、このハッチ10の側面前方には密閉ドア36が設けられている。そして、ハッチ10の底部には、ハッチ10の片側を持ち上げる昇降機構37が設けられている。この昇降機構37が作動すると、ハッチ10が図2に示す点線の位置まで傾く。これにより、昇降機構37を作動させてハッチ10を密閉ドア36側に傾かせることで、ハッチ10を外部に取り出し易くすることができる。
【0027】
図3及び図4に示すように、破砕機9の上部には、被破砕物が投入されるロート状の投入部34と、この投入部34に投入された被破砕物が溜め込まれる収納部35が設けられている。そして、投入部34の内部には、被破砕物を収納部35に押し込むパドルプッシャ31が設けられている。
【0028】
パドルプッシャ31は、回転軸31aと、この回転軸31aに取り付けられた2枚の押圧片31bと、回転軸31aの軸方向に一端に設けられた連結歯車31cから構成されている。このパドルプッシャ31は、2枚の押圧片31b,31bが回転することにより、投入部34に投入された被破砕物を収納部35及び破砕機9に押し込む機能を有している。そして、図3に示すように、このパドルプッシャ31の連結歯車31cは、後述する破砕機9の回転軸41とベルト38で連結されており、破砕機9の回転と連動して回転するようになっている。なお、本例では、パドルプッシャ31の押圧片31bの枚数を2枚としたが、3枚以上にしてもよい。
【0029】
次に、本例の破砕機9の詳細を図5〜図9を参照して説明する。図5は図2のB−B′線断面図、図6は破砕機9の斜視図、図7は破砕機9の側面図、図8は破砕機9を構成する回転体の斜視図、図9は破砕機9の破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
【0030】
図5に示すように、破砕機9は、第1の回転軸41と、この第1の回転軸41と所定の間隔を開けて略平行に配置された第2の回転軸42と、6つの回転体43A〜43Fと、2つの回転軸41,42及び回転体43A〜43Fを囲むケース44等を有している。
【0031】
ケース44は、中空の略直方体状をなしており、上面と下面が開口している。このケース44の側面には、2つの回転軸41,42が挿通する図示しない2つの開口穴が開口している。そして、この2つの開口穴には、2つの回転軸41,42を回転可能に支持する軸受け45がそれぞれ設けられている。本例では、この軸受け45に、ころがり軸受けを用いているが、これに限定されるものではない。また、ケース44下部の縁には、容器2内にこのケース44をねじ止め等の固定方法で固定するための複数の第1の固定部46を有している(図3及び図4参照)。更に、ケース44上部の縁には、収納部35をケース44にねじ止め等の固定方法で固定するための複数の第2の固定部47を有している(図3及び図4参照)。
【0032】
第1の回転軸41は、円柱状をなしており、軸の側面には、2つの係合凸部41a,41aを有している(図7参照)。第1の回転軸41の軸方向の一端は、容器2の外部に配置された減速器33に連結しており、この第1の回転軸41に電動機32からの回転力が伝達される。また、この第1の回転軸41の軸方向の他端には、第1の歯車48が設けられている。更に、第1の回転軸41は、図3で示したように、ベルト38を介してパドルプッシャ31に連結している。
【0033】
第2の回転軸42は、第1の回転軸41と同様に、円柱状をなしており、軸の側面には、2つの係合凸部42a,42aを有している(図7参照)。第2の回転軸42の軸方向の他端には、ケース44の外部で第1の回転軸41の第1の歯車48に連結する第2の歯車49を有している。そして、第1の歯車48と第2の歯車49が連結することにより、第1の回転軸41の回転力が第2の回転軸42に伝達される。その結果、第1の回転軸41及び第2の回転軸42が、それぞれ反対方向、すなわち図6に示す矢印の方向に回転する。
【0034】
また、図5及び図6に示すように、第1の回転軸41には、第1の回転体である3つの回転体43A,43B及び43Cが取り付けられている。同様に、第2の回転軸42には、第2の回転体である3つの回転体43D,43E及び43Fが取り付けられている。図7及び図8に示すように、回転体43は、略円盤状をなしており、軸部50と、回転軸41,42が挿通する軸受け穴51と、複数の破砕刃52と、段差部53等を有している。軸部50は、円盤状をなしており、その略中心に軸受け穴51が設けられている。この軸受け穴51には、回転軸41,42の係合凸部41a,42aに係合される2つの係合凹部51a,51aが形成されている。また、回転体43の側面には、複数(本例では、10個)の破砕刃52が設けられている。
【0035】
破砕刃52は、爪状をなしており、回転体43における側面の略半分から半径方向の外側に向けて連続して突出している。この破砕刃52は、幅方向で略二分する位置に段差を有しており、幅方向の一側に第1破砕刃52aと幅方向の他側に第2破砕刃52bが形成されている(図8参照)。この第1破砕刃52aと第2破砕刃52bは、軸部50の側面からの突出高さが異なっている。本例では、幅方向の内側(他側)に位置する第2破砕刃52bが、第1破砕刃52aの略半分の高さに設定されている。
【0036】
また、図9に示すように、破砕刃51の幅方向の厚さは、Mに設定されており、第1及び第2破砕刃52a,52bの一つ分の幅方向の厚さは、Mの略半分のN(N=M/2)に設定されている。なお、破砕刃52の厚さMは、例えば被破砕物であるガス缶等に含まれるガラス球よりも大きいことが好ましく、第1及び第2破砕刃52a,52bの一つ分の厚さNは、例えばガスライターのような比較的小さい被破砕物よりも小さいことが好ましい。
【0037】
また、この回転体43における側面の残りの略半分、即ち、回転体43の幅方向の他の側には、段差部53が設けられている。この段差部53は、第1段差部53aと、第1段差部53aから所定の段差をもって連続する第2段差部53bから構成されている。本例では、段差部53の段差の高さは、破砕刃52の第1破砕刃52aと第2破砕刃52bの高さの差と略等しくなるように設定されている。また、第1段差部53a及び第2段差部53bの幅方向の厚さは、破砕刃52の第1及び第2破砕刃52a,52b(図8参照)の一つ分の厚さNと等しくなるように設定されている。このように、段差を有する破砕刃52と段差部53により、回転体43は、軸方向の一端側から他端側にかけて、4段階に半径が小さくなっている。
【0038】
また、図5及び図6に示すように、第1の回転軸41に取り付けられた回転体43A〜43Cと、第2の回転軸42に取り付けられた回転体43D〜Fでは、回転軸41,42に取り付ける方向が反対になっている。即ち、第1の回転軸41に取り付けた回転体43A〜43Cの破砕刃52の向きと、第2の回転軸42に取り付けた回転体43D〜43Fの破砕刃52の向きが反対になっている。そのため、回転体43A〜43Cの破砕刃52が、回転体43D〜43Fの段差部53に対向しており、回転体43D〜43Fの破砕刃52が、回転体43A〜43Cの段差部53に対向している。そして、図9に示すように、破砕刃52の段差面54と、対向する回転体43の第1段差部53aと第2段差部53bで形成された段差面55の一部が互いに重なり合うようになっている。この破砕刃52の段差面54と段差部53の段差面55が重なり合う部分がはさみの両刃のように作用して被破砕物を破砕するのである。
【0039】
ここで、上述したように、破砕刃52の第1及び第2破砕刃52a,52b一つ分の厚さが、ガスライターのような比較的小さい被破砕物よりも小さく設定されている。その結果、被破砕物は、確実に破砕刃52の段差面54と段差部53の段差面55が重なり合う部分に挟み込まれる。これにより、ビニールで形成されたガスライターでも、伸びることなく確実に破砕することができる。更に、破砕刃51の幅方向の厚さを、ガス缶等に含まれるガラス球よりも大きく設定している。そのため、ガラス球は、破砕刃51と、対向する回転体43の段差部52の間に入り込むため、確実にガラス球を破砕することができる。このように、本例の破砕機によれば、ビニールで形成されたガスライターやガス缶のガラス球等のように大きさや材質の異なる被破砕物を確実に処理することが可能である。
【0040】
なお、本例では、第1及び第2の回転軸41,42に取り付ける回転体43の数をそれぞれ3つとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、第1及び第2の回転軸41、42にそれぞれ2つ、或いは4つ以上の回転体43を取り付けてもよい。更に、回転体43の破砕刃52の数を本例では、10個としたが、9個以下でもよく、又は11個以上設けてもよい。
【0041】
次に、このような構成を有する破砕機9を備えた被破砕物処理装置1の破砕処理を説明する。初期状態として、図1に示す、全ての弁12,15,17,19,21,22及び24を閉じておく。次に、図2に示すように、蓋2aを開いて容器2内に廃棄されたガス缶やライター等の被破砕物を投入部34に投入する。そして、被破砕物は、破砕機9の上方に設けられたパドルプッシャ31の押圧片31bに押圧されて、収納部35に送り込まれる。この状態で容器2の蓋2aが閉じられ、破砕機9の下部に配置されたハッチ10の密閉ドア36も閉じる。そのため、容器2は外部から遮断された状態となる。
【0042】
次に、図1に示す、弁15,17,19及び21を開き、真空ポンプ3及びファン6を作動させる。すると、容器2内の空気は矢印の方向に流れ、容器2内は真空ポンプ3及びファン6に吸引力によって減圧される。そして、容器2内の空気は、真空ポンプ3を通過し、ファン6から大気に強制的に排気される。このとき、ファン6の吸引力は、真空ポンプ3の突出量よりも十分に大きく設定されているため、容器2内のガス等を希釈化することができる。
【0043】
この減圧の程度は、被破砕物から可燃性ガスが噴出しても爆発を起こさない酸素濃度に維持できる圧力であり、具体的には約400〜500mmHg前後である。この減圧の状態は、圧力計13で逐一検知される。容器2内が所定の圧力まで減圧されると、真空ポンプ3及びファン6を停止する。そして、弁15,17,19及び21を閉じ、弁24を開いて窒素ガス供給源8から窒素ガス8を容器2内に充填する。すると、容器2内の圧力が大気圧まで加圧されることにより、容器2内の酸素濃度は、爆発限界となる13%未満まで低下する。
【0044】
そして、容器2内の酸素濃度が爆発限界未満になると、弁24を閉じ、再び弁15,17,19及び21を開いて、真空ポンプ3及びファン6を作動させる。これにより、再び容器2内の気圧が低下する。
【0045】
容器2内が所定の圧力まで減圧されたのを確認したら、図2に示す、電動機32の電源をオンにして、破砕機9の運転を開始する。破砕機9の運転が開始されると、2つの回転軸41,42が回転し、回転体43に設けた破砕刃52と、対向する回転体43に設けた段差部53により、被破砕物が破砕処理される。破砕処理された被破砕物は、破砕機9の下方に落下し、ケース10に回収される。
【0046】
このとき、被破砕物から残留していたガスが噴出したり、液状物が流れ出たりすることがある。その場合、容器2内で溶剤に混入するが、一部はミスト状となって容器2内に浮遊する。そして、この浮遊しているミストは、容器2内の気体と一緒に管路14を通って第1のタンク4に充填されたオイル4a内を通過する。このように、オイル4a内を通過させることで、オイル4a内に溶融させたり、オイル4aの粘性で閉じ込めたり、液化させてオイル4aに溶かしたりして補足することができる。
【0047】
このようにして、ガス缶等の被破砕物を破砕した際に流出して容器2内の残留する各種の液状物は、オイル4aで殆ど補足することができる。その結果、真空ポンプ3に加わる付加は、オイル4aで補足できないプロパンガスやブタンガス等だけになる。これにより、真空ポンプ3に加わる付加を大幅に減少することが可能である。更に、ガス濃度希釈用のファン6で希釈化するガス、又は燃焼装置7で燃焼するガスは、プロパンガスやブタンガス等だけであるため、燃焼しても有毒ガスが発生しないものとなる。また、破砕機9で被破砕物を破砕処理するときに、火花が発生することがあるが、容器2内は、低酸素状態及び不燃性ガスが充満している状態であるため、爆発するおそれがない。
【0048】
更に、被破砕物からガスの噴射によって容器2内の圧力が所定値より上昇したときは、破砕機9の運転を停止し、真空ポンプ3及びファン6によって、容器2内が所定の圧力まで減圧されるまで待つことが好ましい。そして、前述したような工程を繰り返して破砕処理を行う。
【0049】
そして、投入された被破砕物がすべて破砕され、容器2内に未処理の被破砕物が無くなると、被破砕物の破砕による新規のガスの発生が止まる。すると、圧力計13の圧力が低下し始める。そのため、予め適当な圧力を設定しておき、設定値まで圧力が下がったら、破砕処理が終了したとして被破砕物処理装置1の運転を停止する。そして、容器2内の圧力が大気圧と略等しくになると、ハッチ10を開いて破砕された被破砕物を取り出す。また、ドレーン弁12を開き、容器2内に溜まった被破砕物の液状物を管路11に排出する。このようにして、本発明の被破砕物処理装置1による被破砕物の破砕処理が終了する。
【0050】
次に、図10及び図11を参照して回転体の第2の実施の形態例を説明する。図10Aは破砕刃の第1の実施の形態を示す斜視図、図10Bは破砕刃の第2の実施の形態を示す斜視図、図11は第2の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
【0051】
この図10Aに示すように、本例では、第1及び第2破砕刃52a,52bにおける刃の角度を段差面54に対して略90度に設定したが、これに限定されるものではない。図10Bに示す第2の実施の形態に係る破砕刃62のように、第1及び第2破砕刃62a,62bの刃の角部を段差面64に対して鈍角に設定してもよい。これに伴って、図11に示すように段差部63(第1段差部63a及び第2段差部63b)も段差面65に鈍角になるように形成することが好ましい。このように、破砕刃62の角度を鈍角にして、回転体43の側面に対して刃を斜め形成にすることにより、被破砕物が破砕刃62に巻き込み易くなり、より確実に破砕処理することができる。
【0052】
次に、図12及び図13を参照して回転体の第3の実施の形態例を説明する。図12は回転体を示す斜視図、図13は破砕刃の重なり合いを示す模式図である。
この図12及び図13に示すように、この実施の形態に係る回転体73では、破砕刃82に2つの段差が設けられている。即ち、本例に係る破砕刃82は、幅方向の一側から第1破砕刃82aと第2破砕刃82bと第3破砕刃82cが形成されている。また、破砕刃82の段数と等しくなるように、本例に係る段差部83は、第1段差部83aと、第1段差部から所定の段差をもって連続する第2段差部83bと、更にこの第2段差部83bから所定の段差をもって連続する第3段差部83cから構成されている。
【0053】
そして、図13に示すように、第1破砕刃82aと第2破砕刃82bで形成された第1段差面84aの一部が、第2段差部83bと第3段差面83cで形成された第2段差面85bと重なり合い、第2破砕刃82bと第3破砕刃82cで形成された第2段差面84bが、第1段差部83aと第2段差部83bで形成された第1段差面85aと重なりあっている。このような構成を有する回転体73によっても、前述した回転体と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明は、以上説明しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。また、上述した実施の形態例では、回転軸と回転体を別部材として説明したが、これに限定されるものではなく、回転軸と回転体を一つの部材として一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の被破砕物処理装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の被破砕物処理装置の実施の形態に係る容器の断面図である。
【図3】図2のA−A′線断面図である。
【図4】本発明の被破砕物処理装置の実施の形態に係る投入部と破砕機を拡大して示す断面図である。
【図5】図2のB−B′線断面図である。
【図6】本発明の破砕機の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の破砕機の第1の実施の形態を示す側面図である。
【図8】本発明の破砕機の第1の実施の形態に係る回転体を示す斜視図である。
【図9】本発明の破砕機の第1の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【図10】本発明の破砕機の第1及び第2の実施の形態に係る破砕刃を示すもので、図10Aは第1の実施の形態に係る破砕刃の拡大斜視図、図10Bは第2の実施の形態に係る破砕刃の拡大斜視図である。
【図11】本発明の破砕機の第2の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【図12】本発明の破砕機の第3の実施の形態に係る回転体を示す斜視図である。
【図13】本発明の破砕機の第3の実施の形態に係る破砕刃の重なり合いを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1…被破砕物処理装置、 2・・・容器、 3・・・真空ポンプ(空気排出装置)、 8・・・窒素ガス供給源(ガス注入装置) 9・・・破砕機、 41・・・第1の回転軸、 42・・・第2の回転軸、 43A,43B,43C,43D,43E,43F,73・・・回転体(第1の回転体、第2の回転体)、 52,62,82・・・破砕刃、52a,62a,82a・・・第1破砕刃、 52b,62b,82b・・・第2破砕刃、 83c・・・第3破砕刃、 53,63,83・・・段差部、 第1段差部・・・53a,63a,83a、 第2段差部・・・53b,63b,83b、 第3段差部・・・83c、 54,55,64,64,84a,84b,85a,85b・・・段差面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、
前記第2の回転軸の軸方向に沿って、前記第1の回転体の向きと反対の向きに設けられた複数の第2の回転体と、を備え、
前記第1の回転体及び前記第2の回転体は、
外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、該破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、
前記第1の回転体と前記第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、前記第1の回転体及び前記第2の回転体に設けた前記破砕刃の段差面の一部と、前記第2の回転体及び前記第1の回転体に設けた前記段差部の段差面の一部が重なり合う構造とした
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記複数の破砕刃は、前記第1及び第2の回転体の外周の幅方向を2分した一の側に設けられ、
前記段差部は、前記第1及び第2の回転体の外周における幅方向を2分した他の側に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記破砕刃の段差の高さと前記段差部の段差の高さが略等しい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記破砕刃の前記段差面が前記第1及び第2の回転体の側面に対して略直角に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の破砕機。
【請求項5】
被破砕物を投入する容器と、
前記被破砕物を破砕する破砕機と、
前記容器に入っている空気を排出する空気排出装置と、
前記容器内に不燃性ガスを注入するガス注入装置と、
前記容器内で破砕された前記被破砕物から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置と、から構成された被破砕物処理装置において、
前記破砕機は、
所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ前記被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、
前記第2の回転軸の軸方向に沿って、前記第1の回転体の向きと反対の向きに設けられた複数の第2の回転体と、を備え、
前記第1の回転体及び前記第2の回転体は、
外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、該破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、
前記第1の回転体と前記第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、前記第1の回転体及び前記第2の回転体に設けた前記破砕刃の段差面の一部と、前記第2の回転体及び前記第1の回転体に設けた前記段差部の段差面の一部が重なり合う構造とした
ことを特徴とする被破砕物処理装置。
【請求項1】
所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、
前記第2の回転軸の軸方向に沿って、前記第1の回転体の向きと反対の向きに設けられた複数の第2の回転体と、を備え、
前記第1の回転体及び前記第2の回転体は、
外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、該破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、
前記第1の回転体と前記第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、前記第1の回転体及び前記第2の回転体に設けた前記破砕刃の段差面の一部と、前記第2の回転体及び前記第1の回転体に設けた前記段差部の段差面の一部が重なり合う構造とした
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記複数の破砕刃は、前記第1及び第2の回転体の外周の幅方向を2分した一の側に設けられ、
前記段差部は、前記第1及び第2の回転体の外周における幅方向を2分した他の側に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記破砕刃の段差の高さと前記段差部の段差の高さが略等しい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記破砕刃の前記段差面が前記第1及び第2の回転体の側面に対して略直角に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の破砕機。
【請求項5】
被破砕物を投入する容器と、
前記被破砕物を破砕する破砕機と、
前記容器に入っている空気を排出する空気排出装置と、
前記容器内に不燃性ガスを注入するガス注入装置と、
前記容器内で破砕された前記被破砕物から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置と、から構成された被破砕物処理装置において、
前記破砕機は、
所定の間隔を開けて略平行に配置され、且つ前記被破砕物を巻き込むように互いに逆方向に回転する第1の回転軸及び第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の軸方向に沿って設けられた複数の第1の回転体と、
前記第2の回転軸の軸方向に沿って、前記第1の回転体の向きと反対の向きに設けられた複数の第2の回転体と、を備え、
前記第1の回転体及び前記第2の回転体は、
外周に、少なくとも1つの段差が形成された複数の破砕刃と、該破砕刃の段差の数と同数の段差が形成された段差部と、を有しており、
前記第1の回転体と前記第2の回転体が互いに逆方向に回転する際に、前記第1の回転体及び前記第2の回転体に設けた前記破砕刃の段差面の一部と、前記第2の回転体及び前記第1の回転体に設けた前記段差部の段差面の一部が重なり合う構造とした
ことを特徴とする被破砕物処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−189926(P2009−189926A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31854(P2008−31854)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(592152510)株式会社中島自動車電装 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(592152510)株式会社中島自動車電装 (12)
【Fターム(参考)】
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