説明

硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置、保持装置セット、並びに、硝子体手術用コンタクトレンズ、レンズセット

【課題】眼球を動かしても瞳孔位置に確実にレンズを保持しておくことができ、従来の縫着による侵襲等の問題を最小限に抑制できる手術用レンズ保持装置を提供する。
【解決手段】レンズ保持リング50は、強膜2に刺し込まれた複数のカニューラ21、22に支持を取ることで眼球1表面に沿って張設された紐状体40aの間に挟まれ、紐状体40aの張力により眼球1表面に固定され、その状態で手術用レンズ30を眼球上に保持する。レンズ保持リング50は、レンズを挿入する開口52を備えるレンズ保持体51と、開口52を挟んで対向する位置に設けられた係合部57とを有する。係合部は、レンズ保持体を挟み込むようにしてレンズ保持体を眼球表面に固定する紐状体40aを係合する係合構造を有し、係合部の先端に紐状体の外れ止め用の返し部58を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の眼球の診断や手術の際に用いられる硝子体手術用コンタクトレンズを人体眼球上に保持する硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置、保持装置セット、並びに、人体眼球上への保持を可能にする硝子体手術用コンタクトレンズ、レンズセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
硝子体手術は、通常、仰向けに寝かされた患者の瞼に開瞼器を掛けて十分に開瞼した後、角膜上に手術用レンズ(硝子体手術用コンタクトレンズ)を置いて眼内を観察しながら行う。しかし、眼球は略球体であるため、手術用レンズを眼球上に保持する必要がある。
【0003】
この点、従来では、リング状の保持装置を強膜に手術糸を用いて縫着し、手術を行っていた。以下、眼科手術の代表的なものである硝子体手術の場合を例にとって、図14、図15(a)、(b)、図16を用いて説明する。
【0004】
硝子体手術においては、まず、図14に示すように、仰向けに寝かせた患者の眼球400の上眼瞼410と下眼瞼420を、開瞼器510を用いてそれぞれ上下に牽引して開く。次に、開瞼された眼球400上の所望の位置に手術用レンズ550を保持する。しかし、眼球400は略球体であるため、手術用レンズ550が眼球上からずり落ちないように保持する必要がある。
【0005】
そこで、従来は、図14に示すように、手術用レンズ550を眼球上に保持するため、リング形状の手術用レンズの保持装置530(以下、レンズ保持リング530と呼ぶ)を、眼球400上の強膜430(眼球の白目の部分)に手術糸560を用いて縫着している。
【0006】
図15(a)は2箇所の縫着係合部535を有するレンズ保持リング530を眼球400に縫着した場合を示し、(b)は4箇所の縫着係合部536、537を有するレンズ保持リング530を眼球400に縫着した場合を示し、図16はその際の図15(b)のXVI−XVI矢視断面図を示す。
【0007】
ここで、図15(a)、(b)に示すように、レンズ保持リング530は角膜431よりも大きな径を有し、強膜430上に保持される。レンズ保持リング530を強膜430に縫着する手術糸560には、例えば5−0ダクロン糸、7−0絹糸が用いられる。
【0008】
図15(a)に示す例のように、手術者は、手術針に手術糸560を通し、図16に示すように強膜430の上半層を掬うように通過させた後、縫着係合部535へ手術糸560を掛け、レンズ保持リング30を眼球100へ縫着する。
【0009】
図15(b)に示す例は、レンズ保持リング530を脱着可能とする場合の縫着方法の説明図である。この場合、手術者は、手術針に手術糸560を通し、図16に示すように強膜430の上半層を掬うように通過させ、レンズ保持リング530の周囲を周回しながら縫着係合部536、537を固定し、最後に手術糸560を仮縫合561する。
【0010】
レンズ保持リング530を脱離させる場合は、仮縫合561を解き、手術糸560を緩めて縫着係合部536、537より手術糸560を外す。また、再度縫着する場合は、縫
着係合部536、537に手術糸560をかけた後、再び仮縫合561を行って、縫着係合部536、537を固定することで、所望の位置にレンズ保持リング530を再縫着する。
【0011】
上述のようにして、眼球400へのレンズ保持リング530の縫着が完了したら、図14に示すように、手術者は、手術用レンズ550をレンズ保持リング530の中へ挿入すると共に、眼球400へメスを入れ、手術野を照明するライトガイド580、眼球400内の硝子体を切断し吸引する硝子体カッター570等を用いると共に、硝子体が吸引された量に相当する量の灌流液を注入するインフージョン590を眼球400内へ挿入して、眼内手術を行う。
【0012】
図14において、手術用レンズ550の上方には、図示していない手術用顕微鏡を設置し、手術者はこの手術用顕微鏡と、手術用レンズ550とを通して手術野を観察しながら手術を実行する。手術の進行に伴い、異なった手術野を観察する必要が生じた場合は、適宜、綿棒575または手指等を用いて手術用レンズ550を回転させながら手術野を移動する。また、必要に応じて、異なった形状の手術用レンズ550に交換したり、上述したようにレンズ保持リング530の縫着位置を変更したりする。
【0013】
ところで、眼内手術は上述のように行っているが、その際、下記のような問題点があることが明らかとなった。
【0014】
まず、第1の問題点は、手術針を用いて強膜430の上半層を掬うように通過させることは、熟練した手術者にとっても細心の注意と手間を必要とする操作である。しかもこの段階は眼内手術の準備段階であって、この段階で手術者へ注意力を使わせるという負担を与え、且つ時間を消費してしまうことは、この後の眼内手術にとって大きなマイナスとなるということである。
【0015】
第2の問題点は、たとえ熟練した手術者が細心の注意を払っていたとしても、万一、手術針が強膜430を突き抜けてしまった場合には、強膜下組織が傷つき手術後の合併症を引き起こす原因となる可能性があることである。
【0016】
第3の問題点は、手術針が強膜430を突き抜けることがなかったにせよ、手術針や手術糸560が、強膜430へ侵襲を与えていることには変わりがないことである。
【0017】
第4の問題点は、レンズ保持リング530が眼球400上に固定されているため、手術の進行に伴い、レンズ保持リング530が手術操作の邪魔になる場合、その都度に手術糸560を切るか、または仮縫合561を解いて手術糸560を緩めて、レンズ保持リング530を取り外すことが必要となり、第1〜第3の問題点が繰り返されることである。
【0018】
例えば、水晶体超音波乳化吸引手術と、網膜硝子体手術と、眼内レンズ挿入手術との3種の手術を同時に実施する、いわゆるトリプル手術の場合など、例えば(イ)水晶体超音波乳化吸引、(ロ)硝子体手術、(ハ)眼内レンズ挿入、(ニ)空気置換・眼内光凝固、の順序で手術が進行するが、(ロ)、(ニ)の段階では手術用レンズ550が必要であるのに対し、(ハ)の段階では、眼球400に手術用レンズ550やレンズ保持リング530が縫着されていては手術ができず、結局、(ロ)から(ハ)への移行の際、手術糸560を切るか、または緩めてレンズ保持リング530を取り外し、(ハ)から(ニ)へ移行の際には、再びレンズ保持リング530を縫着する必要があった。
【0019】
第5の問題点は、レンズ保持リング530が眼球400上に固定されているため、上述したように、手術用レンズ550を回転したり、交換しても観察困難な部分が生じてしま
うことである。従来このような場合は、レンズ保持リング530の中で手術用レンズ550を若干傾けて観察を行っているが、微調整が困難である。
【0020】
そこで、これらの問題点を解決するために、レンズ保持リングを眼球に縫着するのではなく、開瞼器に連結するようにした技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
この技術は、図17および図18に示すように、係合部635が設けられたレンズ保持リング630と、上眼瞼410と下眼瞼420を牽引して開く開瞼器510と、開瞼器510と係合部635に引っ掛けることにより、レンズ保持リング630を、露出している角膜および強膜のほぼ中央に保持する紐状体650とによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第3827229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この図17および図18にて示した開瞼器510によってレンズ保持リング630を保持する技術は、図14〜図16に示した縫着によりレンズ保持リング530を固定する技術の問題を解決することができる上、低侵襲手術の流れにも沿うことから、硝子体手術において広く普及することとなった。
【0024】
しかし、従来の開瞼器510によってレンズ保持リング630を保持する技術は、眼内眼底の後極部を処置する場合には、大きく眼球を傾けることがないために、眼内を覗く瞳孔位置に手術用レンズを適正に保持することが可能であるが、眼内周辺部を処置する場合には、術者は大きく眼球を傾け、それにより瞳孔位置が、開瞼器により露出している部分の中央から外れ、同時にレンズ保持リングとリング内に挿入された手術用レンズからも外れることになるため、手術用レンズを通して眼底を観察することができなくなるという問題がある。また、そのためにレンズ保持リング630の位置をずらして、リング中心を瞳孔中心に合わせようとすることも行われるが、その性能上、大きな量を調整する機能は備えていないことから、傾斜した眼球の瞳孔位置へ手術用レンズを適正に保持することはできないという問題があった。
【0025】
本発明は、上記事情を考慮し、眼球に対して固定的にレンズを保持しておくことができ、眼球を動かしても瞳孔の位置に対して、より確実にレンズを保持することができ、しかも、従来の縫着による侵襲等の問題を最小限に抑制することのできる硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置、保持装置セット、並びに、人体眼球上への保持を可能にする硝子体手術用コンタクトレンズ、レンズセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
(1) 眼球上に硝子体手術用コンタクトレンズを保持する硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置であって、
前記硝子体手術用コンタクトレンズを挿入する開口を備えるレンズ保持体と、該レンズ保持体の外周部であって前記開口を挟んで対向する位置に設けられた係合部とを有し、
前記係合部は、該係合部にそれぞれ接触して前記レンズ保持体を挟み込むようにして該レンズ保持体を前記眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有するものであることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(2) 前記紐状体は、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであることを特徴とする上記(1)に記載の硝子体手術用コンタクト
レンズ保持装置。
(3) 前記レンズ保持体は、中央に前記開口を有するリング体として構成され、前記係合部として、突片が前記リング体の外周部に設けられ、前記突片が、該突片の上に載った前記紐状体の張力を受けることで前記リング体に眼球表面へ向けての押え付け力を伝えるものとして構成されていることを特徴とする上記(2)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(4) 前記突片が、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられていることを特徴とする上記(3)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(5) 前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられていることを特徴とする上記(4)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(6) 前記リング体の外周面に、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に前記突片が突設されていることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(7) 前記突片が、前記リング体の周方向に連続した環状突条として設けられていることを特徴とする上記(3)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(8) 前記リング体の外周に周方向に連続した環状溝が形成されており、前記環状突条が、前記環状溝の両側壁のうちの眼球側となる下側側壁よりなることを特徴とする上記(7)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(9) 前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出することで、前記突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する返し部が設けられていることを特徴とする上記(3)〜(8)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(10) 前記リング体の外周部に、弾性部材によって輪状に形成された前記紐状体を前記リング体の外周に装着した際に、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を仮保持すると共に、その状態で該紐状体と前記リング体の外周との間および該紐状体と前記リング体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保する紐状体仮保持部が設けられていることを特徴とする上記(3)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(11) 前記リング体の外周部の前記開口を挟んで対向する部位に、2つを組とする互いに離間した凸部が前記紐状体仮保持部としてそれぞれ設けられており、前記各凸部の外側面に、前記輪状の紐状体をその弾性を利用して引っ掛けることにより、前記隙間を確保可能な凹みが設けられていることを特徴とする上記(10)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(12) 前記リング体の開口部を挟んで対向する位置に配された前記突片が、前記輪状の紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられており、前記2つの凸部の組よりなる紐状体仮保持部が、前記対向する位置にある突片同士を結んだ線と略直交する方向において互いに対向する位置に配されていることを特徴とする上記(11)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(13) 前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられ、一方、前記紐状体仮保持部を構成する凸部が、前記突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端から上側に起立した起立片とから構成され、該起立片の外側面に前記凹みが形成されていることを特徴とする上記(12)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(14) 前記リング体の外周面に、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に、前記突片と前記突出片とが突設されていることを特徴とする上記(13)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(15) 前記各突片の先端に、該突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する起立片が設けられており、該突片および起立片が、前記凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成されていることを特徴とする上記(13)または(14)に記
載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
(16) 上記(1)〜(15)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置と前記紐状体の組み合わせよりなる硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セットであって、
前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に両端を引っ掛けることで、互いに並行する部分で前記硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置を挟み込めるようにする1本の輪状の弾性部材よりなることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セット。
(17) 上記(16)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セットに、更に前記支持部材として、角膜を挟んで対向する位置の強膜に刺し込まれるカニューラを加えたことを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セット。
(18) 眼球上に保持される硝子体手術用コンタクトレンズであって、
眼球上に載るレンズ本体と、該レンズ本体の外周部であって該レンズ本体を挟んで対向する位置に設けられた係合部とを有し、
前記係合部は、該係合部にそれぞれ接触して前記レンズ本体を挟み込むようにして該レンズ本体を前記眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有するものであることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ。
(19) 前記紐状体は、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであることを特徴とする上記(18)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(20) 前記係合部として、突片が前記レンズ本体の外周部に設けられ、前記突片が、該突片の上に載った前記紐状体の張力を受けることで前記レンズ本体に眼球表面へ向けての押え付け力を伝えるものとして構成されていることを特徴とする上記(19)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(21) 前記突片が、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられていることを特徴とする上記(20)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(22) 前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられていることを特徴とする上記(21)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(23) 前記レンズ本体の外周面に、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に前記突片が突設されていることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(24) 前記突片が、前記レンズ本体の周方向に連続した環状突条として設けられていることを特徴とする上記(20)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(25) 前記レンズ本体の外周に周方向に連続した環状溝が形成されており、前記環状突条が、前記環状溝の両側壁のうちの眼球側となる下側側壁よりなることを特徴とする上記(24)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(26) 前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出することで、前記突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する返し部が設けられていることを特徴とする上記(20)〜(25)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(27) 前記レンズ本体の外周部に、弾性部材によって輪状に形成された前記紐状体を前記レンズ本体の外周に装着した際に、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を仮保持すると共に、その状態で該紐状体と前記レンズ本体の外周との間および該紐状体と前記レンズ本体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保する紐状体仮保持部が設けられていることを特徴とする上記(20)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(28) 前記レンズ本体の外周部の該レンズ本体を挟んで対向する部位に、2つを組とする互いに離間した凸部が前記紐状体仮保持部としてそれぞれ設けられており、前記各凸部の外側面に、前記輪状の紐状体をその弾性を利用して引っ掛けることにより、前記隙
間を確保可能な凹みが設けられていることを特徴とする上記(27)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(29) 前記レンズ本体を挟んで対向する位置に配された前記突片が、前記輪状の紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられており、前記2つの凸部の組よりなる紐状体仮保持部が、前記対向する位置にある突片同士を結んだ線と略直交する方向において互いに対向する位置に配されていることを特徴とする上記(28)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(30) 前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられ、一方、前記紐状体仮保持部を構成する凸部が、前記突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端から上側に起立した起立片とから構成され、該起立片の外側面に前記凹みが形成されていることを特徴とする上記(29)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(31) 前記レンズ本体の外周面に、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に、前記突片と前記突出片とが突設されていることを特徴とする上記(30)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(32) 前記各突片の先端に、該突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する起立片が設けられており、該突片および起立片が、前記凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成されていることを特徴とする上記(30)または(31)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
(33) 上記(18)〜(32)のいずれかに記載の硝子体手術用コンタクトレンズと前記紐状体の組み合わせよりなる硝子体手術用コンタクトレンズセットであって、
前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に両端を引っ掛けることで、互いに並行する部分で前記硝子体手術用コンタクトレンズを挟み込めるようにする1本の輪状の弾性部材よりなることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズセット。
(34) 上記(33)に記載の硝子体手術用コンタクトレンズセットに、更に前記支持部材として、角膜を挟んで対向する位置の強膜に刺し込まれるカニューラを加えたことを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズセット。
【発明の効果】
【0027】
上記(1)の構成によれば、レンズ保持体の外周部に設けた係合部が、該係合部にそれぞれ接触してレンズ保持体を挟み込むようにしてレンズ保持体を眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有しているので、強膜に刺し込まれた支持部材(カニューラ等)に紐状体の支持を取ることにより、硝子体手術用コンタクトレンズを眼球上の適正位置に固定することができる。従って、開瞼器に支持を取る場合と違って、眼球を傾けた場合にも、瞳孔位置に硝子体手術用コンタクトレンズを保持することができ、眼内周辺部を処置する場合にも、レンズを通して眼内を適正に観察することができる。また、硝子体手術の際に必ず使用する支持部材(カニューラ等)に、保持装置を固定するための紐状体の支持を取ることができるので、従来の縫着による問題を回避することができる。
上記(2)の構成によれば、前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであるので、紐状体の張力を利用してレンズ保持体を容易に眼球上に固定することができる。
上記(3)の構成によれば、前記レンズ保持体が、中央に開口を有するリング体として構成され、係合部としての突片がリング体の外周部に設けられており、それら突片が、該突片の上に載った紐状体の張力を受けることでリング体に眼球表面へ向けての押え付け力を伝えるものとして構成されているので、紐状体の張力を利用してより確実にレンズ保持体を眼球上に固定することができる。
上記(4)の構成によれば、前記突片が、紐状体の間にリング体を挟んだときに紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられているので、眼球表面に沿って張設された紐状体が突片に確実に係合することになり、外れにくくなる。
上記(5)の構成によれば、前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間し
て設けられているので、保持装置を紐状体により安定保持する上で無駄のない状態で突片を設けることができる。
上記(6)の構成によれば、前記リング体として構成された保持装置の外周に、紐状体の入る溝が設けられているので、溝に嵌った紐状体により保持装置を安定保持することができる。
上記(7)の構成によれば、前記突片が、前記リング体の周方向に連続した環状突条として設けられているので、周方向の任意の位置で紐状体を環状突条に係合させることができ、紐状体で眼球上に固定したまま保持装置を回すことが可能である。
上記(8)の構成によれば、前記リング体の外周に周方向に連続した環状溝を形成し、その環状溝の下側側壁を、紐状体を係合させるための環状突条として利用することができるので、加工が容易で低コスト化を図ることができる。
上記(9)の構成によれば、前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出する返し部を設けたので、保持装置を紐状体によって安定して保持することができる。
上記(10)の構成によれば、リング体の外周部に紐状体仮保持部を設けているので、輪状の紐状体をリング体の外周に装着する際に、紐状体仮保持部によって、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所にて紐状体を仮保持することができ、その状態で、紐状体とリング体の外周との間および紐状体とリング体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保することができる。従って、リング体の外周に予め紐状体を装着した状態で、リング体を眼球表面に載せ、その状態で、紐状体とリング体の外周との間の隙間にセッシ等の手術用器具を挿入し、挿入した器具により、紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を外側に引き伸ばしながら、紐状体を、予め眼球に差し込んである支持部材(カニューラ等)に掛け移らせることにより、リング体の外周に装着した紐状体を、リング体の外周に設けた突片の上に載らせることができ、突片の上に載った紐状体の張力によって、リング体を眼球表面へ向けて押え付けて、確実にリング体(レンズ保持体)を眼球上に固定することができる。
この操作の際に、予めリング体の外周に装着した紐状体とリング体の外周の間に隙間を確保し、その隙間にセッシ等の手術用器具を挿入できるようにしているので、紐状体を容易に、セッシ等の手術用器具によって引き伸ばしながら支持部材(カニューラ等)に掛け移らせることができる。またその際、紐状体とリング体の下面との間にも隙間を確保するようにしているので、セッシ等の手術用器具の先端を極力眼球に接触させないように扱うことも容易にできる。
上記(11)の構成によれば、2つの凸部の外側面の凹みに紐状体を掛けることで、前記隙間を容易に確保することができる。
上記(12)の構成によれば、突片が設けられた位置と紐状体仮保持部が設けられた位置が互いに直交する関係になるので、紐状体仮保持部から外した紐状体の両端を、眼球上に固定した支持部材(カニューラ等)に掛け移らせるだけで、自動的に紐状体を突片の上に載せることができ、セットの容易化が図れる。
上記(13)の構成によれば、紐状体仮保持部を構成する凸部が、固定段階で紐状体を係合させる突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端に連続する起立片よりなるので、設計、製作が容易になる。
上記(14)の構成によれば、リング体の外周面に、紐状体の間にリング体を挟んだときに紐状体の入る溝が設けられており、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に突片と突出片とが突設されているので、仮保持段階で輪状の紐状体をリング体の外周に装着するときに、無用なズレを防ぎながら安定して紐状体を装着することができる。また、その仮保持の状態から紐状体をカニューラ等の支持部材に掛け移らせるときにも、紐状体を溝から突片の上に自動的に載り移らせることができる。
上記(15)の構成によれば、各突片の先端に、紐状体の外れを阻止する起立片を設け、それら突片および起立片を、紐状体仮保持部としての凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成したので、全ての突起物の構造を揃えることができて、設計、製作が容
易になる。
上記(16)の構成によれば、1本の輪状の弾性部材と保持装置をセットにしたので、手術の際の取り扱いがやりやすくなる。
上記(17)の構成によれば、1本の輪状の弾性部材と保持装置と支持部材としてのカニューラをセットにしたので、手術の際の取り扱いがやりやすくなる。
上記(18)の構成によれば、レンズ本体の外周部に設けた係合部が、該係合部にそれぞれ接触してレンズ本体を挟み込むようにしてレンズ本体を眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有しているので、強膜に刺し込まれた支持部材(カニューラ等)に紐状体の支持を取ることにより、硝子体手術用コンタクトレンズを眼球上の適正位置に固定することができる。従って、開瞼器に支持を取る場合と違って、眼球を傾けた場合にも、瞳孔位置に硝子体手術用コンタクトレンズを保持することができ、眼内周辺部を処置する場合にも、レンズを通して眼内を適正に観察することができる。また、硝子体手術の際に必ず使用する支持部材(カニューラ等)に、レンズを固定するための紐状体の支持を取ることができるので、従来の縫着による問題を回避することができる。また、レンズ自体に紐状体を掛ける係合部を設けているので、リング状の保持装置(レンズ保持リング)が不要であり、手術に必要な器具の減数を図ることができる。
上記(19)の構成によれば、前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであるので、紐状体の張力を利用して硝子体手術用コンタクトレンズを容易に眼球上に固定することができる。
上記(20)の構成によれば、係合部としての突片がレンズ本体の外周部に設けられており、それら突片が、該突片の上に載った紐状体の張力を受けることでレンズ本体に眼球表面へ向けての押え付け力を伝えるものとして構成されているので、紐状体の張力を利用してより確実にレンズを眼球上に固定することができる。
上記(21)の構成によれば、前記突片が、紐状体の間にレンズ本体を挟んだときに紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられているので、眼球表面に沿って張設された紐状体が突片に確実に係合することになり、外れにくくなる。
上記(22)の構成によれば、前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられているので、保持装置を紐状体により安定保持する上で無駄のない状態で突片を設けることができる。
上記(23)の構成によれば、前記レンズ本体の外周に紐状体の入る溝が設けられているので、溝に嵌った紐状体によりレンズを安定保持することができる。
上記(24)の構成によれば、前記突片が、レンズ本体の周方向に連続した環状突条として設けられているので、周方向の任意の位置で紐状体を環状突条に係合させることができ、紐状体で眼球上に固定したままレンズを回すことが可能である。
上記(25)の構成によれば、レンズ本体の外周に周方向に連続した環状溝を形成し、その環状溝の下側側壁を紐状体を係合させるための環状突条として利用することができるので、加工が容易で低コスト化を図ることができる。
上記(26)の構成によれば、前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出する返し部を設けたので、レンズを紐状体によって安定して保持することができる。
上記(27)の構成によれば、レンズ本体の外周部に紐状体仮保持部を設けているので、輪状の紐状体をレンズ本体の外周に装着する際に、紐状体仮保持部によって、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所にて紐状体を仮保持することができ、その状態で、紐状体とレンズ本体の外周との間および紐状体とレンズ本体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保することができる。従って、レンズ本体の外周に予め紐状体を装着した状態で、レンズ本体を眼球表面に載せ、その状態で、紐状体とレンズ本体の外周との間の隙間にセッシ等の手術用器具を挿入し、挿入した器具により、紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を外側に引き伸ばしながら、紐状体を、予め眼球に差し込んである支持部材(カニューラ等)に掛け移らせることにより、レンズ本体の外周に装着した紐状体を、レンズ本体の外周に設けた突片の上に載らせることができ、突片の上に載った紐
状体の張力によって、レンズ本体を眼球表面へ向けて押え付けて、確実にレンズ本体を眼球上に固定することができる。
この操作の際に、予めレンズ本体の外周に装着した紐状体とレンズ本体の外周の間に隙間を確保し、その隙間にセッシ等の手術用器具を挿入できるようにしているので、紐状体を容易に、セッシ等の手術用器具によって引き伸ばしながら支持部材(カニューラ等)に掛け移らせることができる。またその際、紐状体とレンズ本体の下面との間にも隙間を確保するようにしているので、セッシ等の手術用器具の先端を極力眼球に接触させないように扱うことも容易にできる。
上記(28)の構成によれば、2つの凸部の外側面の凹みに紐状体を掛けることで、前記隙間を容易に確保することができる。
上記(29)の構成によれば、突片が設けられた位置と紐状体仮保持部が設けられた位置が互いに直交する関係になるので、紐状体仮保持部から外した紐状体の両端を、眼球上に固定した支持部材(カニューラ等)に掛け移らせるだけで、自動的に紐状体を突片の上に載せることができ、セットの容易化が図れる。
上記(30)の構成によれば、紐状体仮保持部を構成する凸部が、固定段階で紐状体を係合させる突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端に連続する起立片よりなるので、設計、製作が容易になる。
上記(31)の構成によれば、レンズ本体の外周面に、紐状体の間にレンズ本体を挟んだときに紐状体の入る溝が設けられており、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に突片と突出片とが突設されているので、仮保持段階で輪状の紐状体をレンズ本体の外周に装着するときに、無用なズレを防ぎながら安定して紐状体を装着することができる。また、その仮保持の状態から紐状体をカニューラ等の支持部材に掛け移らせるときにも、紐状体を溝から突片の上に自動的に載り移らせることができる。
上記(32)の構成によれば、各突片の先端に、紐状体の外れを阻止する起立片を設け、それら突片および起立片を、紐状体仮保持部としての凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成したので、全ての突起物の構造を揃えることができて、設計、製作が容易になる。
上記(33)の構成によれば、1本の輪状の弾性部材と硝子体手術用コンタクトレンズをセットにしたので、手術の際の取り扱いがやりやすくなる。
上記(34)の構成によれば、1本の輪状の弾性部材と硝子体手術用コンタクトレンズと支持部材としてのカニューラをセットにしたので、手術の際の取り扱いがやりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の実施形態の硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置セットを用いて硝子体手術を行っている状態を示す斜視図、(b)は同保持装置セットの基本要素であるレンズ保持リング(保持装置)と輪ゴム(輪状の弾性部材よりなる紐状体)を示す斜視図である。
【図2】同保持装置セットを用いて硝子体手術を行っている状態を示す断面図である。
【図3】図1(b)に示したレンズ保持リングの構成図で、(a)は上から見た平面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視図、(c)は(a)のIIIc−IIIc矢視図、(d)は(c)のIIId円部の拡大図、(e)は(a)のIIIe−IIIe矢視断面図である。
【図4】前記レンズ保持リングの突片の位置を説明するための平面図である。
【図5】前記突片の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態のレンズ保持リングの側面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態のレンズ保持リングの側面図である。
【図8】(a)、(b)は図7のVIII部の各例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態の硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置(レンズ保持リング)の構成図で、(a)は同保持装置の外周に輪ゴム(輪状の弾性部材よりなる紐状体)を装着した状態を示す斜視図、(b)は(a)のIX矢視部分の拡大側面図であり、紐状体仮保持部によって輪ゴムの内側に確保した隙間にセッシを挿入して輪ゴムを外側に引き伸ばしている状態を示す図である。
【図10】図9(a)に示したレンズ保持リングの構成図で、(a)は上から見た平面図、(b)は(a)のXb−Xb矢視図、(c)は(a)のXc−Xc矢視図、(d)は(c)のXd円部の拡大図、(e)は(a)のXe−Xe矢視拡大断面図、(f)は(a)のXf−Xf矢視拡大断面図である。
【図11】本発明の更に別の実施形態のレンズ保持リングの構成図で、(a)は同リングの平面図、(b)は(a)のXIb−XIb矢視拡大断面図、(c)は(a)のXIc−XIc矢視拡大断面図である。
【図12】本発明の更に別の実施形態のレンズ保持リングの構成図で、(a)は同リングの平面図、(b)は(a)のXIIb−XIIb矢視拡大断面図である。
【図13】本発明の実施形態の係合部付きの硝子体手術用コンタクトレンズの断面図である。
【図14】従来の、レンズ保持リングを強膜へ縫着し硝子体手術を行っている状態を示す斜視図である。
【図15】(a)、(b)は従来のレンズ保持リングを縫着により患者の眼球に装着した状態を示す平面図である。
【図16】図15(b)のXVI−XVI矢視断面図である。
【図17】従来の、開瞼器に支持を取ってレンズ保持リングを眼球上に保持し、そのリングにより硝子体手術用コンタクトレンズを支持している状態を示す斜視図である。
【図18】図17の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
近年、硝子体手術も低侵襲小切開の術式が普及してきており、多くのケースでカニューラを用いた25ゲージ(直径0.5mm)あるいは23ゲージ(直径0.65mm)の手術が行われている。従来では、レンズ保持リング(保持装置)の縫着や直接20ゲージ太さ(直径0.9mm)の器具の眼内挿入のために、結膜を剥いて強膜を露出していたが、近年の25、23ゲージの硝子体手術では、例えば、図1に示すように、角膜輪部外側3〜4mmの位置の毛様体扁平部に、結膜を剥ぐことなく、経結膜にて直接に、結膜と強膜を貫通するカニューラ21、22、23を設置することが行われている。図1中の21は灌流チューブ25が接続される灌流用のカニューラ、22はレンズガイドとして用いられるカニューラ、23は処置器具が挿入されるカニューラである。
【0030】
本実施形態では、従来のように開瞼器10によってではなく、また縫着することにもよらずに、これら眼球1に刺し込まれた3本のカニューラ21〜23のうち、角膜6(図2)を挟んで対向する位置にある2つのカニューラ21、23を用いて、硝子体手術用コンタクトレンズ30を保持するレンズ保持リング(保持装置)50を支持するようにしたことを特徴としている。レンズ保持リング50は、カニューラ21、23に対して紐状体40を介して支持されるものであり、紐状体40とセットで使用される。また、必要に応じて、紐状体40およびカニューラ21、23とセットにして使用される。
【0031】
図1、図2において、1は眼球、2は強膜、3は水晶体、4は硝子体、5は瞳孔、6は角膜、10は開瞼器であり、開瞼器10により上下眼瞼を牽引することで露出させられた眼球1の強膜2には、予め3本のカニューラ(支持部材)21〜23が刺し込まれている。50は角膜6より直径が僅かに大きめに形成された金属製または樹脂製のレンズ保持リング(保持装置)、40はそのレンズ保持リング50を角膜6の周囲に保持する紐状体、30はレンズ保持リング50の中に挿入されて眼球1の角膜6上に載せられた硝子体手術
用コンタクトレンズ(手術用レンズ)である。
【0032】
紐状体40は、1本のシリコーンゴム製のゴム輪(輪状の弾性部材)であり、輪を延ばしてその両端をカニューラ21、23の首下部に引っ掛けることで、カニューラ21、23間の眼球表面に沿って適度の張力をもって架け渡されている。そして、互いに並行して対向する2本の紐状体40aの間にレンズ保持リング50の外周部が挟まれており、2本の紐状体40aの張力によって眼球1の表面に向けて押え込まれることで、レンズ保持リング50が、眼球1上の定位置(角膜6上)に固定されている。ここで使用する紐状体40としてのゴム輪は、直径10〜20mm、太さ0.1〜0.8mm程度のものである。なお、その中でも、直径12〜14mm、太さ0.2〜0.5mmのものを使用するのが好ましい。但し、小児用として使用する場合のゴム輪は、上記寸法の2/3程度のものであるのが好ましい。
【0033】
レンズ保持リング50は、図1(b)および図3(a)〜(e)に示すように、中央に手術用レンズ30を挿入する開口52を備えた円環状のリング体(レンズ保持体)51と、その外周部に突設された複数の突片(係合部)57とを有するものである。リング体51は、内径が10mm〜13mm程度、外径が12〜15mm程度の環状体であり、厚さは2mm程度のものである。リング体51の外径の大きな肉厚の中央部の上面と下面には、外径を肉厚中央部より絞った小径の凸リング部54、55が設けられ、下側の凸リング部55の内周には、眼球1の形状に合わせた面取部59が設けられている。なお、リング体51の内周面は、小径の凸リング部54、55の内周部分を含めて、滑らかな連続した円筒面として形成されている。
【0034】
紐状体40aの張力を受けるための突片57は、リング体51の円形の開口52の中心Oを挟んで対向する2つの位置に2個ずつ設けられている。これら突片57は、上から載った紐状体40aの張力を受けることで、リング体51に対して、眼球1の表面へ向けての押え付け力を伝える係合部の役割をする部分である。
【0035】
これら突片57は、リング体51の外周部に突設され、各突片57の先端には、該突片57の基部側より上側に向けて反り返ることで、突片57の上に載った紐状体40aの先端側からの外れを阻止する返し部58が設けられている。返し部58の反り返り角度αは45°程度であるのが望ましい。また、リング体51の外周には全周にわたり、2本の紐状体40aの間にリング体51を挟んだときに紐状体40aの入る断面半円状の溝53が設けられており、そのような溝53が外周面に形成されていることにより、溝53の上側の側壁53aと下側の側壁53bが、溝53の内底部より半径方向外方に突き出している。そして、本実施形態では、使用時に眼球1側となる下側の側壁53bの先端に、突片57が突設されている。
【0036】
また、これら開口52を挟んで対向する各側にそれぞれ2個ずつ設けられた突片57の開き角度θ1は、約40°となっている。これら突片57は、図4に示すように、両端がカニューラ21、23に支持されることで対向した2本の紐状体40aの間にリング体51を挟んだときに、紐状体40aが外周部に接する角度範囲βの内側の範囲に設けられていればよく、詳しくは、一方の突片57の外側縁から他方の突片57の外側縁までの角度θ2がβの範囲に入っていればよい。
【0037】
なお、本実施形態のレンズ保持リング50においては、2つの突片57が離間して独立に設けられている場合を示したが、図5のレンズ保持リング50Bのように、角度θ2の範囲にわたり連続した1個の突片57を対向する両側にそれぞれに設けてもよい。
【0038】
このような構成のレンズ保持リング50を用いて手術用レンズ30を保持する場合は、
まず、先に刺し込んである2つのカニューラ21、23にゴム輪(紐状体)40を架け渡す。次いで、レンズ保持リング50を眼球1の上に載せ、架け渡されたゴム輪40によって形成される互いに対向する2本の紐状体40aのそれぞれを、レンズ保持リング50の一方側の2つの突片57の上および他方側の2つの突片57の上に載せる。そうすることにより、紐状体40aの張力によって、レンズ保持リング50を眼球1上に保持することができる。次いで、その状態のレンズ保持リング50の内部に手術用レンズ30を挿入することで、同レンズ30を定位置に保持することができる。
【0039】
このように、強膜2に刺し込まれたカニューラ21、23に支持を取ることで、手術用レンズ30を保持するレンズ保持リング50を眼球1上の適正位置に固定するようにしたので、開瞼器10に支持を取る従来例の場合と違って、眼球1を大きく傾けた場合にも、瞳孔5の位置に手術用レンズ30を保持することができる。従って、眼内周辺部を処置する場合にも、手術用レンズ30を通して眼内を適正に観察することができ、円滑に手術を行うことができる。また、硝子体手術の際に必ず使用するカニューラ21、23に、レンズ保持リング50を固定するためのゴム輪40の支持を取ることができるので、従来の縫着による問題を回避することができる。
【0040】
特に、係合部として設けた突片57に紐状体40aの外れを防止する返し部58を設けているので、レンズ保持リング50を紐状体40aによって安定して保持することができる。また、リング体51の外周に、紐状体40aの入る溝53を設けているので、溝53に嵌った紐状体40aによりレンズ保持リング50に適正に挟持力を作用させることができ、レンズ保持体50を安定保持することができる。また、係合部として設けられた突片57が、紐状体40aの間にリング体51を挟んだときに紐状体40aが外周部に接する角度範囲βの内側の範囲に設けられているので、眼球1の表面に沿って張設された紐状体40aが突片57に確実に係合することになり、外れにくくなる。また、突片57が、角度範囲βの内側に複数個、互いに離間して設けられているので、レンズ保持リング50を紐状体40aにより安定保持する上で無駄のない状態で突片57を設けることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、独立した形状の突片57をリング体51の外周に突設した場合を示したが、図6に示すレンズ保持リング50Cのように、突片57Cを、リング体51の周方向に連続した環状突条として設けてもよい。
【0042】
また、図7および図8(a)、(b)に示すレンズ保持リング50Dのように、リング体51の外周に周方向に連続した環状溝53Dを形成し、その環状溝53Dの両側壁のうちの眼球側となる下側側壁57Dを、環状突条(突片57D)として利用してもよい。その際、環状溝53Dの断面の大きさは、ゴム輪40が入る大きさになっている必要がある。
【0043】
また、いったん嵌め入れたゴム輪40が抜けないようにするために、図8(b)に示すように、環状突条(突片57D)の先端に、上に突出した返し部58Dが設けてあってもよい。ただし、この場合の返し部58Dは、紐状体40の引っ掛かり性を考えた場合、周方向の一部(図4のθ2と同様の角度範囲)だけに設けてあるのがよい。なお、この返し部58Dについては、図6のレンズ保持リング50Cの場合も同様に設けることができる。
【0044】
次に、眼球上へのセットを容易にした、別の実施形態のレンズ保持リングについて説明する。
図9は同実施形態のレンズ保持リング60の構成図で、(a)は同レンズ保持リング60の外周に輪ゴム(紐状体)40を装着した状態を示す斜視図、(b)は(a)のIX矢視部分の拡大側面図であり、紐状体仮保持部62によって輪ゴム40の内側に確保した隙
間にセッシ70を挿入して輪ゴム40を外側に引き伸ばしている状態を示す図である。また、図10は図9(a)に示したレンズ保持リングの構成図で、(a)は上から見た平面図、(b)は(a)のXb−Xb矢視図、(c)は(a)のXc−Xc矢視図、(d)は(c)のXd円部の拡大図、(e)は(a)のXe−Xe矢視拡大断面図、(f)は(a)のXf−Xf矢視拡大断面図である。
【0045】
本実施形態のレンズ保持リング60は、図1〜図4で示したレンズ保持リングのリング体(レンズ保持体)51の外周部に、更に、図9に示すように、ゴム輪40をリング体51の外周に装着した際に、ゴム輪40における輪の開口を挟んで対向する箇所を仮保持する紐状体仮保持部62を設けたものである。この構成について一例を挙げるとするならば、ゴム輪40における、直径方向に対向する2箇所を仮保持する紐状体仮保持部62を設けたものである。本実施形態においてはこの形態の紐状体仮保持部62について説明する。なお、他の構成については、図1〜図4に示したレンズ保持リング50と同じであるから、同一要素に同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0046】
この紐状体仮保持部62は、その部分にゴム輪40を引っ掛けて仮保持した際に、ゴム輪40とリング体51の外周との間、および、ゴム輪とリング体51の下面(眼球に当たる面)との間に、それぞれ所定の隙間S1、S2を確保することのできるようにしたものであり、図10(a)に示すように、対向する位置にある突片57の組同士を結んだ線と略直交する方向において、互いに開口52を挟んで対向する位置に配されている。
【0047】
この場合の各紐状体仮保持部62は、2つを組とする互いに離間した凸部により構成されている。紐状体仮保持部62における各凸部は、突出片67と、該突出片67の先端から上側に起立した起立片68とから構成されている。なお、この突出片67は、先に述べた突片57と略同形状である。ここで、紐状体仮保持部62を構成する各凸部は、図10(b)〜(d)(f)に示すように、帯板を曲げた形状をなしている。そして、図10(f)に示すように、ゴム輪40を引っ掛けることにより前述した隙間S1、S2を確保する凹み68Hが、起立片68の外側面に設けられている。この凹み68Hは、リング体51の周方向に沿った溝状に形成されている。なお、凸部を構成する突出片67は、突片57と同様に、リング体51の外周面の断面半円状の溝53の下側の側壁53bの先端に突設されている。
なお、ここで述べている紐状体仮保持部62とは別に、図10(e)に示す返し部58の別の実施形態として、返し部58の反り返り角度αを略90°としてもよい。
【0048】
次に、図9および図10に示したレンズ保持リング60の作用を説明する。
このレンズ保持リング60は、リング体51の外周部に紐状体仮保持部62を設けているので、図9(a)に示すように、予めゴム輪40をリング体51の外周に装着しておく際に、ゴム輪40における輪の開口を挟んで対向する箇所を、紐状体仮保持部62によって仮保持することができる。即ち、紐状体仮保持部62を構成する2つの凸部の外側面の凹み(起立片68の外側面の凹み)68Hにゴム輪40を引っ掛けることにより、ゴム輪40をリング体51の外周に仮保持することができる。しかも、そのようにゴム輪40を仮保持した状態で、図9(b)に示すように、ゴム輪40とリング体51の外周との間、および、ゴム輪40とリング体51の下面(眼球表面に接触する面)との間に、それぞれ所定の隙間S1、S2を確保することができる。この場合の前者の隙間S1は、約0.5mm程度のもので、例えば、セッシ70等の手術用器具の先端を挿入できる程度の隙間である。また、後者の隙間S2は、セッシ70等の先端をゴム輪40の内周側に引っ掛けた際に、その先端が眼球表面に強く触れない程度の隙間である。
【0049】
従って、上のようにリング体51の外周に予めゴム輪40を装着した状態で、リング体51を眼球表面に載せ、その状態で、ゴム輪40とリング体51の外周との間の隙間S1
に、図9(b)に示すように、セッシ70等の手術用器具を挿入し、挿入した器具により、ゴム輪40における輪の開口を挟んで対向する箇所(すなわちゴム輪40の直径方向に対向する2箇所)を外側に引き伸ばしながら、ゴム輪40を、予め眼球に差し込んである支持部材(カニューラ等)21、23に掛け移らせることにより、リング体51の外周に装着したゴム輪40を、リング体51の外周に設けた突片57の上に載らせることができ、突片57の上に載ったゴム輪40の張力によって、リング体51を眼球表面へ向けて押え付けて、確実にリング体(レンズ保持体)51を眼球上に固定することができる。
【0050】
この操作の際に、予めリング体51の外周に装着したゴム輪40とリング体51の外周の間に隙間S1を確保し、その隙間S1にセッシ70等の手術用器具を挿入できるようにしているので、ゴム輪40を容易に、セッシ70等の手術用器具によって引き伸ばしながら支持部材(カニューラ等)21、23に掛け移らせることができる。またその際、ゴム輪40とリング体51の下面との間にも隙間S2を確保するようにしているので、セッシ70等の手術用器具の先端を極力眼球に接触させないように扱うことも容易にできるようになる。そのため、リング体51のセット時に、手術用器具やリング体51自体で眼球(特に角膜)にキズを付ける可能性を低減できる。また、リング体51のセット時間を短縮できることから、患者、術者双方の負担軽減を図ることができる。
【0051】
因みに、図1〜図4に示したレンズ保持リング50を眼球にセットする場合は、最初にゴム輪40を2本の支持部材(カニューラやトロカール等)21、23に架け渡しておき、その後から、ゴム輪40の互いに並行する部分の狭い隙間を開きながら、リング体51を眼球表面に載せて、ゴム輪40をリング体51の外周に設けた突片57の上に載せる方法を採ることになる。その場合は、眼球表面に張力を持って張った状態のゴム輪40を摘みながらの操作となる。本実施形態のレンズ保持リング60は、その手間を解消することができる。また、ゴム輪40を摘む際に、眼球表面にセッシ70等の手術用器具が触れる機会や時間を少なくすることができ、眼球を傷つけるおそれを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態のレンズ保持リング60は、2つの凸部で紐状体仮保持部62を構成しているので、2つの凸部の外側面の凹み68Hにゴム輪40を掛けるだけで、自動的に前記隙間S1、S2を容易に確保することができる利点が得られる。
【0053】
また、突片57が設けられた位置と紐状体仮保持部62が設けられた位置が互いに直交する関係になっているので、紐状体仮保持部62から外したゴム輪40の両端を、眼球上に固定した支持部材(カニューラ等)21、23に掛け移らせるだけで、自動的にゴム輪40を突片57の上に載らせることができ、レンズ保持リング60のセットの容易化が図れる。また、リング本体51の外周に溝53があることにより、仮保持段階でゴム輪40をリング体51の外周に装着するときに、無用なズレを防ぎながら、安定してゴム輪40を装着することができる。しかもその仮保持の状態から、ゴム輪40をカニューラ等の支持部材21、23に掛け移らせるときにも、ゴム輪40を溝53の中から突片57の上に自動的にスムーズに滑り移らせることができる。
【0054】
また、本実施形態においては、紐状体仮保持部62を構成する各凸部が、突片57と略同形状の突出片67、及び、該突出片67の先端に連続する起立片68よりなるものであるので、設計、製作が容易になる。
【0055】
次に、図9および図10に示したレンズ保持リングの変形例ともいうべき実施形態のレンズ保持リングについて述べる。
図11は本発明の更に別の実施形態のレンズ保持リングの構成図で、(a)は同リングの平面図、(b)は(a)のXIb−XIb矢視拡大断面図、(c)は(a)のXIc−XIc矢視拡大断面図である。
【0056】
この実施形態のレンズ保持リング60Bでは、紐状体仮保持部62Bを構成する凸部67Bの形状を、図9および図10に示すような、帯板を曲げた形状とはせずに、単なる断面略矩形の小ブロック状の突出部としており、その外側面に凹み68Hを形成している。この場合は、構造が単純化するので、製作が容易になる利点が得られる。
【0057】
図12は本発明の更に別の実施形態のレンズ保持リングの構成図で、(a)は同リングの平面図、(b)は(a)のXIIb−XIIb矢視拡大断面図である。
【0058】
この実施形態のレンズ保持リング60Cでは、図9および図10のレンズ保持リング60における突片57と返し部58を全て、凸部を構成する突出片67と起立片68の形状に揃えており、全部の突出部の形状を1種類に統一して、設計や製作の便宜を図っている。
【0059】
以上述べた実施形態では、レンズ保持リング50、50B、50C、50D、60、60B、60Cを用いて手術用レンズ30を保持する場合を示したが、図13に示す例のように、手術用レンズ30Bのレンズ本体31の外周部に直接、係合部としての突片37を設けて、それらの突片37に紐状体40aを掛けるようにすることもできる。その際、前記レンズ保持リング50と同様に、突片37の先端に返し部38を設けるのがよい。
【0060】
このように、硝子体手術用コンタクトレンズ30Bのレンズ本体31の外周部に直接、ゴム輪40を引っ掛ける係合部(突片37)を設ける場合も、その設ける角度範囲については、図4の例と同様の制限をするのがよい。設ける個数や間隔についても同様である。また、レンズ本体31の外周面に、紐状体(ゴム輪40)の入る環状の溝を形成し、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に前記突片37を突設してもよい。また、図6の例と同様に、係合部(突片37)を、レンズ本体の周方向に連続した環状突条として設けてもよいし、図7および図8の例と同様に、レンズ本体の外周に周方向に連続した環状溝を形成し、その環状溝の両側壁のうちの眼球側となる下側側壁を環状突条として利用してもよい。
【0061】
また、硝子体手術用コンタクトレンズ30Bに直接、紐状体(ゴム輪40)を引っ掛ける係合部を設けた場合は、レンズ保持リング50、50B、50C、50Dを用いた場合とほぼ同様の効果を得ることができる他に、レンズ保持リングが不要となることから、手術に必要な器具の数を減らすことができるという効果を奏することができる。
【0062】
なお、図9〜図12に示したものと同様の機能を果たす紐状体仮保持部を、図13のレンズ本体31に設けることもできる。
その場合、レンズ本体31の外周部にゴム輪を装着した際に、ゴム輪における輪の開口を挟んで対向する箇所を紐状体仮保持部によって仮保持できるようにする。しかも、その状態で、ゴム輪とレンズ本体31の外周との間、および、ゴム輪とレンズ本体31の下面との間にそれぞれ、図9(b)に示したものと同様の所定の隙間を確保できるようにする。
【0063】
具体的には、例えば、レンズ本体31の外周部の該レンズ本体31を挟んで対向する部位に、2つを組とする互いに離間した凸部を紐状体仮保持部としてそれぞれ設け、各凸部の外側面に、ゴム輪を引っ掛ける凹みを設ける。ここで、凸部の形状は、図9および図10に示すように、帯板を曲げたような形状としてもよいし、図11に示すように、ブロック状にしてもよい。また、突片37と返し部38の形状を凸部の形状に揃えてもよい。
【0064】
また、弾性部材によって輪状に形成された前記紐状体をレンズ本体31の外周に装着す
る際に、レンズ本体31における、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所に突片37を設けた場合は、2つの凸部の組よりなる紐状体仮保持部を、対向する位置にある突片同士を結んだ線と略直交する方向において互いに対向する位置に配するのがよい。
【0065】
そのような紐状体仮保持部をレンズ本体31に設けることにより、図9〜図12に示したレンズ保持リングの場合と同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 眼球
2 強膜
21,22 カニューラ(支持部材)
30,30B 手術用レンズ(硝子体手術用コンタクトレンズ)
37 突片
38 返し部
40 ゴム輪(紐状体)
40a 紐状体
50,50B,50C,50D レンズ保持リング(保持装置)
51 リング体(レンズ保持体)
52 開口
53 溝
53D 環状溝
57,57C,57D 突片
58,58D 返し部
60,60B,60C レンズ保持リング(保持装置)
62 紐状体仮保持部
67 突出片
67B 凸部
68 起立片
68H 凹み
S1,S2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球上に硝子体手術用コンタクトレンズを保持する硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置であって、
前記硝子体手術用コンタクトレンズを挿入する開口を備えるレンズ保持体と、該レンズ保持体の外周部であって前記開口を挟んで対向する位置に設けられた係合部とを有し、
前記係合部は、該係合部にそれぞれ接触して前記レンズ保持体を挟み込むようにして該レンズ保持体を前記眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有するものであることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項2】
前記紐状体は、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであることを特徴とする請求項1に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項3】
前記レンズ保持体は、中央に前記開口を有するリング体として構成され、前記係合部として、突片が前記リング体の外周部に設けられ、前記突片が、該突片の上に載った前記紐状体の張力を受けることで前記リング体に眼球表面へ向けての押え付け力を伝えるものとして構成されていることを特徴とする請求項2に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項4】
前記突片が、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項5】
前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項6】
前記リング体の外周面に、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に前記突片が突設されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項7】
前記突片が、前記リング体の周方向に連続した環状突条として設けられていることを特徴とする請求項3に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項8】
前記リング体の外周に周方向に連続した環状溝が形成されており、前記環状突条が、前記環状溝の両側壁のうちの眼球側となる下側側壁よりなることを特徴とする請求項7に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項9】
前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出することで、前記突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する返し部が設けられていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項10】
前記リング体の外周部に、
弾性部材によって輪状に形成された前記紐状体を前記リング体の外周に装着した際に、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を仮保持すると共に、その状態で該紐状体と前記リング体の外周との間および該紐状体と前記リング体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保する紐状体仮保持部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項11】
前記リング体の外周部の前記開口を挟んで対向する部位に、2つを組とする互いに離間した凸部が前記紐状体仮保持部としてそれぞれ設けられており、前記各凸部の外側面に、前記輪状の紐状体をその弾性を利用して引っ掛けることにより、前記隙間を確保可能な凹みが設けられていることを特徴とする請求項10に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項12】
前記リング体の開口部を挟んで対向する位置に配された前記突片が、前記輪状の紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられており、前記2つの凸部の組よりなる紐状体仮保持部が、前記対向する位置にある突片同士を結んだ線と略直交する方向において互いに対向する位置に配されていることを特徴とする請求項11に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項13】
前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられ、一方、前記紐状体仮保持部を構成する凸部が、前記突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端から上側に起立した起立片とから構成され、該起立片の外側面に前記凹みが形成されていることを特徴とする請求項12に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項14】
前記リング体の外周面に、前記紐状体の間に前記リング体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に、前記突片と前記突出片とが突設されていることを特徴とする請求項13に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項15】
前記各突片の先端に、該突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する起立片が設けられており、該突片および起立片が、前記凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置と前記紐状体の組み合わせよりなる硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セットであって、
前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に両端を引っ掛けることで、互いに並行する部分で前記硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置を挟み込めるようにする1本の輪状の弾性部材よりなることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セット。
【請求項17】
請求項16に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セットに、更に前記支持部材として、角膜を挟んで対向する位置の強膜に刺し込まれるカニューラを加えたことを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ保持装置セット。
【請求項18】
眼球上に保持される硝子体手術用コンタクトレンズであって、
眼球上に載るレンズ本体と、該レンズ本体の外周部であって該レンズ本体を挟んで対向する位置に設けられた係合部とを有し、
前記係合部は、該係合部にそれぞれ接触して前記レンズ本体を挟み込むようにして該レンズ本体を前記眼球表面に固定する紐状体を係合する係合構造を有するものであることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項19】
前記紐状体は、強膜上に固定された支持部材に支持を取ることで眼球表面に沿って張設されたものであることを特徴とする請求項18に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項20】
前記係合部として、突片が前記レンズ本体の外周部に設けられ、前記突片が、該突片の上に載った前記紐状体の張力を受けることで前記レンズ本体に眼球表面へ向けての押え付
け力を伝えるものとして構成されていることを特徴とする請求項19に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項21】
前記突片が、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられていることを特徴とする請求項20に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項22】
前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられていることを特徴とする請求項21に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項23】
前記レンズ本体の外周面に、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に前記突片が突設されていることを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項24】
前記突片が、前記レンズ本体の周方向に連続した環状突条として設けられていることを特徴とする請求項20に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項25】
前記レンズ本体の外周に周方向に連続した環状溝が形成されており、前記環状突条が、前記環状溝の両側壁のうちの眼球側となる下側側壁よりなることを特徴とする請求項24に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項26】
前記突片の先端の少なくとも一部に、該突片の基部側より上に反り返るか上に突出することで、前記突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する返し部が設けられていることを特徴とする請求項20〜25のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項27】
前記レンズ本体の外周部に、
弾性部材によって輪状に形成された前記紐状体を前記レンズ本体の外周に装着した際に、該輪状の紐状体における輪の開口を挟んで対向する箇所を仮保持すると共に、その状態で該紐状体と前記レンズ本体の外周との間および該紐状体と前記レンズ本体の下面との間にそれぞれ所定の隙間を確保する紐状体仮保持部が設けられていることを特徴とする請求項20に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項28】
前記レンズ本体の外周部の該レンズ本体を挟んで対向する部位に、2つを組とする互いに離間した凸部が前記紐状体仮保持部としてそれぞれ設けられており、前記各凸部の外側面に、前記輪状の紐状体をその弾性を利用して引っ掛けることにより、前記隙間を確保可能な凹みが設けられていることを特徴とする請求項27に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項29】
前記レンズ本体を挟んで対向する位置に配された前記突片が、前記輪状の紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体が外周部に接する角度範囲の内側の範囲に設けられており、前記2つの凸部の組よりなる紐状体仮保持部が、前記対向する位置にある突片同士を結んだ線と略直交する方向において互いに対向する位置に配されていることを特徴とする請求項28に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項30】
前記突片が、前記角度範囲の内側に複数個、互いに離間して設けられ、一方、前記紐状体仮保持部を構成する凸部が、前記突片と略同形状の突出片と、該突出片の先端から上側に起立した起立片とから構成され、該起立片の外側面に前記凹みが形成されていることを特徴とする請求項29に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項31】
前記レンズ本体の外周面に、前記紐状体の間に前記レンズ本体を挟んだときに前記紐状体の入る溝が設けられ、その溝の、使用時に眼球側となる下側側壁の先端に、前記突片と前記突出片とが突設されていることを特徴とする請求項30に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項32】
前記各突片の先端に、該突片の上に載った前記紐状体の先端側からの外れを阻止する起立片が設けられており、該突片および起立片が、前記凸部を構成する突出片および起立片と同形状に形成されていることを特徴とする請求項30または31に記載の硝子体手術用コンタクトレンズ。
【請求項33】
請求項18〜32のいずれか1項に記載の硝子体手術用コンタクトレンズと前記紐状体の組み合わせよりなる硝子体手術用コンタクトレンズセットであって、
前記紐状体が、強膜上に固定された支持部材に両端を引っ掛けることで、互いに並行する部分で前記硝子体手術用コンタクトレンズを挟み込めるようにする1本の輪状の弾性部材よりなることを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズセット。
【請求項34】
請求項33に記載の硝子体手術用コンタクトレンズセットに、更に前記支持部材として、角膜を挟んで対向する位置の強膜に刺し込まれるカニューラを加えたことを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−62502(P2011−62502A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260082(P2009−260082)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)