説明

硝酸アンモニウムを含む安定化された組成物

本発明の好ましい側面により、硝酸アンモニウムと、少なくとも1種の分解防止剤と、好ましくは第3の化合物とを含む硝酸アンモニウム組成物が提供される。本発明の特定の好ましい態様において、分解防止剤は、組成物の起爆感度を実質的に減じ、及び/又は、そうでない場合、この組成物の所望の特性を改善する効果のある条件の下、そして量で、第3の化合物と共に存在する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、硝酸アンモニウム組成物、及び、特に硝酸アンモニウムを含む安定化された又は感度を低下させた組成物、並びに、これを生産するための方法に関する。本発明の組成物は、一般的に肥料として有用であり、好ましくは、所望の濃度の硝酸イオンを有し、そして比較的高い爆発への耐性(resistance to detonation)を有している。
【0002】
発明の背景
硝酸アンモニウムは、その硝酸イオン濃度が高いことにより、一般に農業分野、そして特に肥料の分野において重要な用途があることが周知である。しかし、硝酸アンモニウムは、これまで通例用いられてきた多くの形態において、商品として大量に扱うこと、及び/又は、特に比較的長期間、大量に保管(例えば、営業倉庫及び収納箱に保管する場合等)することが比較的困難であり、潜在的に危険であることも周知である。更に、これまで通例用いられてきた多くの形態の硝酸アンモニウムは、比較的緩やかな条件の下で爆発する傾向があり、それ故、爆発物として悪用及び誤用されてきたことが知られている。
【0003】
硝酸アンモニウムを含む組成物の、爆発性及び/又は爆発可能性の問題に対する幾つかの有望な解決策が提案されてきた。例えば、硝酸アンモニウムの危険な特性を減ずる目的で、硫酸アンモニウムとの複塩の形態で硝酸アンモニウムを使用することが、米国特許第6,689,181号で提案されており、これは本発明に参照により組み込まれている。他方、その高い爆発性及び爆発傾向により、三硝酸ジエチレントリアミンとの複塩の形態で硝酸アンモニウムを使用することが提案されてきた。例として、米国特許第4,481,048号を参照されたい。従って、いかなる程度の精度であれ、硝酸アンモニウム、特に複塩の形態の硝酸アンモニウムの具体的な形態が、この物質の爆発性、即ちこの物質が爆発する傾向に対して、仮に存在するとしても、どのような影響を持つかを、前もって予測することは困難である。こうして、前記の解決策及び他の解決策により、少なくともある状況において改善された結果が提供される中、本願出願人らは、特定の物質又は剤を、このような組成物及び類似の組成物に含ませることにより、実質的で予期されない利益が獲得され得ることを確認するに至った。更に本願出願人らは、組成物、及び特に肥料組成物と関連して用いられるとも考えられる、特定の分解防止剤が、その独立した目的にとって有害な影響を組成物の特性に及ぼし得ることを理解するに至った。例えば、特定の組成物は、土壌又は植物内へ栄養及び/又は他の有益な成分を供給することに関して所望の効果を得ることができない。
【0004】
発明の好ましい態様の説明
本発明の好ましい側面により、硝酸アンモニウム、及び少なくとも1種の分解防止剤を含む組成物が提供される。本明細書において用いられるように、「硝酸アンモニウム」という用語により、その範囲に、遊離状態の硝酸アンモニウム、並びに、米国特許第6,689,181号、及び本願出願人らの同時係属仮出願第60/758,652号、並びに同時に出願され、代理人整理番号第H00010921号により識別される対応した通常出願(それぞれは本明細書に参照により組み入れられる)において開示されている複塩形態を含む、形成可能な塩のいずれか1種の形態の硝酸アンモニウムを含む、あらゆる形態の硝酸アンモニウムが、表わされ及び包含されるように意図されている。時に減感剤(desensitized in agent)とも称される分解防止剤が、組成物の起爆感度(detonation sensitivity)を実質的に減少させ及び/又はそうでない場合該組成物の所望の特性を改善し、そして、更に、好ましくは同時に該組成物の使用又は特性、特にその意図された目的のための肥料組成物の有用性に、実質的に負の影響を与えない条件の下、そして量で存在することが好ましい。
【0005】
本発明の特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、前記硝酸アンモニウム及び分解防止剤に加え、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム(ammonium hexaflouralsilicate)、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される第3の成分を含む。好ましい態様においては、組成物中の少なくとも硝酸アンモニウムの実質的な部分は、1種又は2種以上の前記第3の化合物又は成分との複塩の形態である。更に好ましい態様において本発明の組成物は、本発明に従って、本質的に、硝酸アンモニウムの1種又は2種以上の複塩及び分解防止剤よりなる。
【0006】
本発明の別の側面は、組成物に、その起爆感度を実質的に減少させ又は低い水準に保たせる効果のある1種又は2種以上の追加の化合物を含ませることによる、硝酸アンモニウムを含有する組成物の起爆感度を減少させる方法を提供する。特定の好ましい態様によれば、本発明の組成物及び方法により、以下の少なくとも1つ、好ましくは双方:a)開始温度(onset temperature)の増加;又はb)DTA加熱速度の増加、により計測される起爆感度が減少する。なお、a)及びb)は、それぞれ、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示されるものの値と比較したものである。
【0007】
例えば、セイコー電子工業(株)により販売されている熱重量分析装置(Thermal Gravimetric Analyzer)(TGA)、型番RT6220は、単塩AN及び2:1ASN双方の開始温度、重量減少(反応の存在を示す)、及びおおよその加熱速度のピーク降下を評価するために用いられてきた。本明細書で報告された、これらの物質についての詳細な結果は、一般的にこれらの物質の特性を示すものである一方、本明細書中で、本発明の組成物及び方法によって達成される相対的な性能の改善を説明するために、主に比較の目的で用いられていることを、当業者はよく理解するであろう。
【0008】
【表1】

【0009】
特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って計測された、2:1ASNのおよその開始温度を実質的に下回らない、そして更に好ましくは、2:1ASNの開始温度を少なくとも約1℃超える開始温度が引き起こされる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物の開始温度は少なくとも約220℃であり、更に好ましくは少なくとも約223℃である。
【0010】
特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って、示差熱分析(DTA)により計測された、2:1ASNのおよその加熱速度のピーク降下(peak drop in heating rate、PDHR)を実質的に下回らない、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約15相対パーセント超える、そして、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約50相対パーセント超えるPDHRが引き起こされる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って、示差熱分析(DTA)により計測された、2:1ASNの加熱速度のピーク降下(PDHR)を少なくとも約0.5uV超える、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約1uV超える、そして、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約2uV超えるPDHRが引き起こされる。
【0011】
数多くの分解防止剤は、有利な結果、及び、特に、上記のような予期されない非常に望ましい有利な結果をもたらしうると考えられるが、それにもかかわらず、一般的に、本発明の組成物が、該組成物の分解傾向を抑制する傾向を有していることにより特徴づけられる分解防止剤を含むことが好ましい。好ましい態様において、このような分解防止剤は、脱酸素剤(アンモニアと結合し、アンモニアの更なる酸化を防ぐものを含む)、及びアンモニア発生剤(ammonium generating agents)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0012】
単独で、又は以下に列挙される別の薬剤、若しくはここに挙げられない他の剤と組み合わせて、本発明に関連して使用することが意図される分解防止剤の例として、以下のものが挙げられる:活性ケイ酸、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水、ドロマイト、シュウ酸、ギ酸、酒石酸塩、カルボジアミド、ビグアニド、ジシアンジアミド、炭酸カルシウム、チオ尿素、尿素、セミカルバジド、セントラライト(centralite)、ウレタン、ジフェニル、ジフェニルアミン、ナフチルアミン、アミノフェノール、安息香酸、ピロカテキン、フェニレンジアミン、ヘキサミン、(NH・HO、NH、LiF、及びこれらの組み合わせ。
【0013】
特定の好ましい態様において、前記分解防止剤は、脱酸素剤、特に金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩及びこれらの混合物により特徴付けられ得るものを含む、1種又は2種以上の金属塩を含む。特定の態様において、該金属塩を形成する金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくは周期律表の第3周期又は第4周期のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、更に詳細には、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びこれらの組み合わせより選択されることが好ましい。ハロゲン化カリウム(特にKCl)、MgSO、CaCO、MgCO、ドロマイト(CaMgCO)、Mg(NO、及びこれら2種又は3種以上の組み合わせが特に好ましい。本願出願人らは、特定の好ましい態様において、分解防止剤の選択される群に、塩化リチウム、及び特にフッ化リチウムが含まれないことが好ましいことを見出した。
【0014】
特定の好ましい態様において、該分解防止剤は、チオ尿素、酸化ケイ素(特にSiOを含む)、アンモニウム塩(特に酒石酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム及びこれらの組み合わせを含むが、特定の好ましい態様においては安息香酸アンモニウムを除く)、及びこれらの組み合わせを1種又は2種以上含む。本願出願人らは、特定の好ましい態様において、前記分解防止剤の選択される群が、尿素、ビフェニル、ジフェニルアミン、2−アミノフタレン(aminophthalene)、4−アミノフェノール、1,3−ジエチル−1,3−ジフェニル尿素、ヘキサメチレンテトラミン、安息香酸アンモニウム、1,4−フェニレンジアミン、ウレタン、又はカテコールを含まないことが好ましいことを見出した。
【0015】
いずれかの特定の組成物において用いられる分解防止剤の具体的な量は、該組成物に用いられる特定の成分を含む数多くの要因により、大きく異なり得るとも考えられるが、本発明の分解防止剤が、該組成物中に、該組成物の約0.1重量%〜約20重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、そして更に好ましくは約0.1重量%〜約2重量%の量で存在することが一般的に好ましい。
【0016】
本発明の別の側面は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の第3の化合物と組み合わせて、硝酸アンモニウムを含む組成物、及び好ましくは肥料に関する。好ましい態様において、硝酸アンモニウムと少なくとも1種の第3の化合物との前記組み合わせとして、硝酸アンモニウムと少なくとも1種の第3の化合物との複塩が包含される。特定の好ましい態様において、第3の成分は、硝酸カリウムアンモニウム、リン酸硝酸アンモニウム及びこれらの組み合わせより選択される複塩である。特定の好ましい態様において、第3の成分が選択される群には、硝酸アンモニウムカルシウム、又はリン酸硝酸一水素アンモニウムは含まれない。第3の成分は、本発明の範囲内で、大きく異なる量で存在してもよいと考えられる。好ましい態様において、第3の成分は、硝酸アンモニウムのモル数に対する第3の成分のモル数の比で換算して、約0.5:1から約2:1のモル比で、より好ましくは約0.75:1から約1.25:1、そして更に好ましくは約1:1で存在する。好ましい該組成物は、主に硝酸アンモニウムよりなる組成物に比べて、減少した起爆感度を示す。
【0017】
本発明の別の側面は、硝酸アンモニウムを、上記の分解防止剤、及び、所望によるが、好ましくは前記少なくとも1種の第3の化合物とも組み合わせて含む、実質的に爆発しない肥料組成物を提供することを含む、肥料組成物の取り扱い方法、に関する。特定の態様において、前記第3の化合物は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれら2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される。特定の好ましい態様において、前記組成物中の前記硝酸アンモニウムの少なくとも一部、より好ましくは少なくとも実質的な部分、そして更に好ましくは実質的にすべてが、1種又は2種以上の前記第2の化合物との複塩の形態で存在する。本発明の取り扱い方法は、肥料の輸送方法、肥料の保存方法、及び、土壌又は育成材料へ適用する方法を含む。
【0018】
本明細書で用いられるように、「硝酸アンモニウム組成物」という用語は、他の化合物との複塩としての形態を含む、いずれかの形態の硝酸アンモニウムを含む組成物を広く指す。
【0019】
本明細書で用いられるように、「複塩」という用語は、少なくとも2種の異なる種類の陽イオン及び1種の陰イオンよりなり、又は、少なくとも2種の異なる種類の陰イオン及び1種の陽イオンよりなる塩を指す。従って、「硝酸アンモニウムの複塩」という用語は、硝酸アンモニウムと別の化合物との、それぞれの構成要素と結晶学的に異なる新しい化合物を形成するような、組み合わせを意味すると理解される。
【0020】
本発明の前記肥料及び他の物質を含む特定の態様を含む、特定の好ましい態様において、前記組成物は単塩ANの濃度が比較的低い。本明細書において用いられるように、「単塩AN」という用語は、実質的にすべての陽イオンがアンモニウムであり、実質的にすべての陰イオンが硝酸である塩を指す。特定の非常に好ましい態様において、本発明の組成物及び物質は、実質的な量の単塩ANを有しておらず、そして、特定の態様において、該組成物は単塩を微量しか含まない。
【0021】
特に、肥料の形態で、そして肥料の取り扱いを含む方法に関連して用いられる際の本発明の組成物は、好ましくは、Title 49 of the Code of Federal Regulations, "Transportation", Part 172, "Hazardous Materials Table", Oct. 1 , 2000の下の危険物質と考えられず、そして好ましくは、United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Manual of Tests and Criteria, 1995", "Section 34, Classification Procedures, Test Methods and Criteria Relating to Oxidizing Substances of Division 5.1 "の下の酸化剤として分類されることもない。
【0022】
本発明の1つの側面は、好ましくは、肥料等に必要とされるもののような、所望の農業上の特性、及び単塩ANと比較して高い爆発耐性を有している組成物を提供する。好ましい態様において、本発明は、1種又は2種以上の以下の式(I)の複塩を含有する肥料組成物を提供する:
(M)・n(NHNO)・m(HO) (I)
式中、Mは、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム及び水酸化硝酸ネオジムよりなる群から選択される陽イオン−陰イオン対であり、nは約0.2〜約3であり、そして、mは約0〜約10である。
【0023】
好ましい態様において、本発明の組成物は、低発熱成分であり及び/又は凝集力減少に対する耐性を有している成分(好ましくは複塩)を含み、並びに、好ましくは本質的に上記のものよりなることで特徴づけられる。
【0024】
本発明の組成物が、少なくとも約500°Kの凝集安定性温度(cohesive stability temperature)を示し、更に好ましくは少なくとも約600°Kを示す成分、及び特に複塩を含むこと、そして好ましくは、本質的に上記のものよりなることで特徴づけられることも多くの態様において好ましい。本明細書で用いられるように、凝集安定性温度とは、複塩の成分が、有意な凝集力の減少を示し始める温度を指す。本発明の組成物が、硝酸アンモニウムの凝集安定性に比べて、より高い凝集安定性を示す成分、及び特に複塩を含むこと、並びに、好ましくは本質的に上記のものよりなることで特徴づけられることも好ましい。ここで、凝集安定性の差は、式(I)の化合物の凝集発熱(cohesive exotherms)と単塩硝酸アンモニウムの凝集発熱との比較により測定される。好ましい態様において、凝集安定性の改善は、単塩硝酸アンモニウムと比較して安定性の増加が2倍である。本明細書において用いられるように、凝集発熱とは、[(M)・n(NHNO)・m(HO)](II)で表わされる塊状材料が式(I)で表わされる構成部分に分解する際に解放される熱力学的自由エネルギーを意味する。ここで、約600°Kにおいて、凝集力の不安定な化合物は負の自由エネルギーを示し、より安定な化合物は正の値を示す。好ましくは、本発明の組成物及び肥料で用いられるように、本発明の好ましい複塩の凝集発熱は、実質的に単塩ANのおよその凝集発熱よりも大きく、更に好ましくは、実質的に3:1ASN複塩のおよその凝集発熱よりも大きい。
【0025】
好ましくは、本発明の組成物には、(NHSO・3(NHNO)複塩と硝酸アンモニウム(NHNO)とを合わせた合計が約0〜約3重量%のものが含まれ、より好ましくは、硝酸アンモニウムが該組成物の約0〜1重量%のいずれかの量で存在し、更に好ましくは、極微量しか存在しない。
【0026】
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の態様の説明するものであり、必ずしも本発明の請求の範囲を制限するものではない。
【0027】
実施例1A及び1B 金属塩分解防止剤
いくつかの組成物を調製する。それぞれの組成物は、約99.5重量%の単塩硝酸アンモニウム及び約0.5重量%の分解防止剤を実質的に均一な組成物に組み合わせることにより調製される。分解防止剤は、それぞれ、以下の表1に示される化合物で構成された。次に、それぞれの組成物は、上記の手続きに従って開始温度及びDTAを試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。
【0028】
【表2】

【0029】
上記の結果からわかるように、CaCO及びLiFを分解防止剤として約0.5重量%の量で用いることにより、DTAが約1.0uV未満となり、これは、本発明の特定の態様において好ましくない。また、LiFにより、本発明の特定の好ましい態様よりも低い開始温度となる。
【0030】
実施例2Aから2D 金属塩分解防止剤
いくつかの種類の組成物が調製される。それぞれの組成物は、約99.5重量%の単塩硝酸アンモニウム及び約0.5重量%の分解防止剤を実質的に均一な組成物に組み合わせることにより調製される。それぞれの分解防止剤は、以下の表2(試料Bの測定を繰り返したことに注意されたい)に示される化合物で構成された。次に、それぞれの組成物は、上記の手続きに従って開始温度及びDTAを試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。
【0031】
【表3】

【0032】
上記の結果からわかるように、表2のそれぞれの化合物を分解防止剤として約0.5重量%の量で用いることにより、DTAが1を超え、開始温度は約200℃を超え、これらは本発明の特定の好ましい態様に従うものである。
【0033】
実施例3Aから3K アミド分解防止剤及びアンモニウム分解防止剤
いくつかの種類の組成物が調製される。それぞれの組成物は、約99.5重量%の単塩硝酸アンモニウム及び約0.5重量%の分解防止剤を実質的に均一な組成物に組み合わせることにより調製される。それぞれの分解防止剤は、以下の表3に示される化合物で構成された。次に、それぞれの組成物は、上記の手続きに従って開始温度及びDTAを試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。
【0034】
【表4】

【0035】
上記の結果からわかるように、表3の化合物を分解防止剤として約0.5重量%の量で用いることにより、DTAが約1.0未満となり、これは本発明の特定の態様において、好ましくない。また、4−アミノフェノールにより、本発明の特定の好ましい態様よりも低い開始温度となる。
【0036】
実施例4Aから4E 金属塩分解防止剤
いくつかの組成物が調製される。それぞれの組成物は、約99.5重量%の単塩硝酸アンモニウム及び約0.5重量%の分解防止剤を実質的に均一な組成物に組み合わせることにより調製される。それぞれの分解防止剤は、以下の表4に示される化合物で構成された。次に、それぞれの組成物は、上記の手続きに従って開始温度及びDTAを試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。
【0037】
【表5】

【0038】
上記の結果からわかるように、表4のそれぞれの化合物を分解防止剤として約0.5重量%の量で用いることにより、DTAが1を超え、開始温度は約200℃を超え、これらは本発明の特定の好ましい態様に従うものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸アンモニウムと、組成物の起爆感度をANと比較して実質的に減少させる効果のある条件の下、そして量で存在する少なくとも一種の分解防止剤とを含む肥料。
【請求項2】
組成物中の硝酸アンモニウムの少なくとも1つの実質的な部分が複塩の形態である、請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
硝酸アンモニウム及び第3の化合物の1種又は2種以上の複塩より本質的になる、請求項2に記載の肥料。
【請求項4】
硝酸アンモニウムと、組成物の起爆感度を2:1 ASNと比較して実質的に減少させる効果のある条件の下、そして量で存在する少なくとも一種の分解防止剤とを含む肥料。
【請求項5】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、約0.1重量%〜約2重量%の量で存在する、請求項4に記載の肥料。
【請求項6】
前記少なくとも1種の分解防止剤は、周期律表の第3周期又は第4周期のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する少なくとも1種又は2種以上の金属塩を含む、請求項1に記載の肥料。
【請求項7】
前記少なくとも1種又は2種以上の金属塩がカリウム、マグネシウム、カルシウム又はこれらの組み合わせを含有する、請求項6に記載の肥料。
【請求項8】
前記少なくとも1種又は2種以上の金属塩が、KCl、MgSO、CaCO、MgCO、ドロマイト(CaMgCO)、Mg(NO、及びこれら2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項6に記載の肥料。
【請求項9】
前記少なくとも1種又は2種以上の金属塩がハロゲン化リチウムを含まない、請求項6に記載の肥料。
【請求項10】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、KCl、MgSO、CaCO、MgCO、ドロマイト(CaMgCO)、Mg(NO、及びこれら2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項6に記載の肥料。
【請求項11】
前記少なくとも1種の分解防止剤は少なくとも1種の金属ハロゲン化物を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項12】
前記少なくとも1種の分解防止剤は少なくとも1種の金属硫酸塩を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項13】
前記少なくとも1種の分解防止剤は少なくとも1種の金属炭酸塩を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項14】
前記少なくとも1種の分解防止剤は少なくとも1種の金属硝酸塩を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項15】
前記少なくとも1種の分解防止剤は、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩及びこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項16】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、活性ケイ酸、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水、ドロマイト、シュウ酸、ギ酸、酒石酸塩、カルボジアミド、ビグアニド、ジシアンジアミド、炭酸カルシウム、チオ尿素、尿素、セミカルバジド、セントラライト、ウレタン、ジフェニル、ジフェニルアミン、ナフチルアミン、アミノフェノール、安息香酸、ピロカテキン、フェニレンジアミン、ヘキサミン、(NH・HO、NH、LiF及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項4に記載の肥料。
【請求項17】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、アミン、酸化シリコン、塩、及びこれら2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項4に記載の肥料。
【請求項18】
前記少なくとも1種の分解防止剤は、少なくとも1種のチオ尿素を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項19】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、酒石酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項4に記載の肥料。
【請求項20】
前記少なくとも1種の分解防止剤が、少なくとも1種の酸化ケイ素を含む、請求項4に記載の肥料。
【請求項21】
硝酸アンモニウムと、組成物の起爆感度を2:1 ASNと比較して実質的に減少させる効果のある条件の下、そして量で存在する少なくとも一種の分解防止剤とを含む肥料。
【請求項22】
前記分解防止剤は、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される開始温度の値と比較した開始温度に増加をもたらす、請求項4に記載の肥料。
【請求項23】
前記分解防止剤は、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される開始温度の値と比較した開始温度に少なくとも約1℃の増加をもたらす、請求項25に記載の肥料。
【請求項24】
前記分解防止剤は、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される加熱速度のピーク降下(PDHR)と比較した加熱速度のピーク降下(PDHR)に増加をもたらす、請求項4に記載の肥料。
【請求項25】
前記分解防止剤は、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される加熱速度のピーク降下(PDHR)と比較した加熱速度のピーク降下(PDHR)に少なくとも約50%の増加をもたらす、請求項25に記載の肥料。
【請求項26】
硝酸アンモニウムを含有する組成物の起爆感度を減少させる方法であって、該組成物中に、少なくとも1種の分解防止剤と、硝酸カルシウム、硝酸カリウム及び硝酸マグネシウム並びにこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の任意の第3の化合物と、を含有させることを含む、前記方法。
【請求項27】
肥料組成物の取り扱い方法であって、硝酸アンモニウムの複塩と、少なくとも1種の分解防止剤と、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される任意の第3の化合物と、を含有する、実質的に爆発することのできない肥料組成物を提供することを含む、前記方法。
【請求項28】
請求項1に記載の肥料を輸送することを含む、肥料の取り扱い方法。
【請求項29】
前記肥料を土壌又は他の育成材料へ適用することを含む、請求項30に記載の取り扱い方法。

【公表番号】特表2009−528239(P2009−528239A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550551(P2008−550551)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/060535
【国際公開番号】WO2007/084873
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】