説明

硝酸アンモニウム複塩を含有する組成物

本発明の好ましい側面により、硝酸アンモニウムと、組成物の起爆感度を実質的に減少させ、そして/又は、そうでない場合、組成物の所望の特性を改善する効果のある条件の下、そして量で存在する少なくとも1種の第2の化合物とを含有する硝酸アンモニウム組成物が提供される。特定の態様において、第2の化合物は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及び、これらの2種又は3種以上の組み合わせより成る群から選択される。好ましい態様において、この組成物中の硝酸アンモニウムの少なくとも実質的な部分は、1種又は2種以上の前記第2の化合物との複塩の形態である。非常に好ましい態様において、本発明の組成物は、本質的に、硝酸アンモニウムと本明細書に記載の第2の化合物との1種又は2種以上の複塩よりなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、硝酸アンモニウム組成物に関し、より詳細には、1種又は2種以上の硝酸アンモニウム複塩を含有する、硝酸アンモニウム組成物に関する。本発明の組成物は、一般的に肥料として有用であり、好ましくは、所望の濃度の硝酸イオンを有し、そして比較的高い爆発への耐性(resistance to detonation)を有している。
【0002】
発明の背景
硝酸アンモニウムは、その硝酸イオン濃度が高いことにより、一般に農業分野、そして特に肥料の分野において重要な用途があることが周知である。しかし、硝酸アンモニウムは、これまで通例用いられてきた多くの形態において、商品として大量に扱うこと、及び/又は、特に比較的長期間、大量に保管(例えば、営業倉庫及び収納箱に保管する場合等)することが比較的困難であり、潜在的に危険であることも周知である。更に、これまで通例用いられてきた多くの形態の硝酸アンモニウムは、比較的緩やかな条件の下で爆発する傾向があり、それ故、爆発物として悪用及び誤用されてきたことが知られている。
【0003】
硝酸アンモニウムの危険な特性を減ずる目的で、硫酸アンモニウムとの複塩の形態で硝酸アンモニウムを使用することが、米国特許第6,689,181号で提案されており、これは本発明に参照により組み込まれている。他方、その高い爆発性及び爆発傾向により、三硝酸ジエチレントリアミンとの複塩の形態で硝酸アンモニウムを使用することが提案されてきた。例として、米国特許第4,481,048号を参照されたい。従って、いかなる程度の精度であれ、硝酸アンモニウム、特に複塩の形態の硝酸アンモニウムの具体的な形態が、この物質の爆発性、即ちこの物質が爆発する傾向に対して、仮に存在するとしても、どのような影響を持つかを、前もって予測することは困難である。
【0004】
発明の概要
本発明の好ましい側面により、硝酸アンモニウムと、組成物の起爆感度(detonation sensitivity)を実質的に減少させ、そして/又は、そうでない場合、組成物の所望の特性を改善する条件下で、そして量で存在する、少なくとも1種の第2の化合物とを含む硝酸アンモニウム組成物が提供される。好ましい態様において、第2の化合物は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム(ammonium hexaflouralsilicate)、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせより成る群から選択される。好ましい態様において、この組成物中の硝酸アンモニウムの少なくとも実質的な部分は、1種又は2種以上の前記第2の化合物との複塩の形態である。非常に好ましい態様において、本発明の組成物は、本質的に、硝酸アンモニウムと本明細書に記載の第2の化合物との1種又は2種以上の複塩より成る。
【0005】
本発明の別の側面により、硝酸アンモニウムを含有する組成物に、組成物の起爆感度を実質的に減少させるのに有効な1種又は2種以上の追加の化合物を含ませることによる、該組成物の起爆感度を減少させるための方法が提供される。そのような追加の化合物は、好ましくは、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせより成る群から選択される。好ましくは、前記の更に1種の追加の化合物は、硝酸アンモニウムと更に1種の前記追加の化合物との少なくとも1種の複塩を生成する効果のある条件の下で前記組成物に組み込まれる。
【0006】
本発明の別の側面は、硝酸アンモニウムが、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジミウム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせより成る群から選択される少なくとも1種の第2の化合物と組み合わせて含まれる組成物、そして好ましくは肥料に関する。好ましい態様において、硝酸アンモニウム及び前記少なくとも1種の第2の化合物の組み合わせは、硝酸アンモニウムと少なくとも1種の第2の化合物との複塩を包含する。好ましい組成物は、本質的に硝酸アンモニウムより成る組成物と比較して、減少した起爆感度を示す。
【0007】
本発明の別の側面は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の第2の化合物と組み合わせて硝酸アンモニウムを含有する、実質的に爆発しない肥料組成物を提供することを含む、肥料組成物の取り扱い方法に関する。好ましい態様において、前記組成物中の前記硝酸アンモニウムの、少なくとも一部、より好ましくは少なくとも実質的な部分、そして、更に好ましくは実質的にすべてが、前記第2の化合物の1種又は2種以上との複塩の形態で存在する。本発明の取り扱い方法は、肥料の輸送方法、肥料の保存方法、及び、土壌又は育成材料へ適用する方法を包含する。
【0008】
本明細書で用いられるように、「硝酸アンモニウム組成物」という用語は、他の化合物との複塩としての形態を含む、いずれかの形態の硝酸アンモニウムを含む組成物を広く指す。
【0009】
本明細書で用いられるように、「複塩」という用語は、少なくとも2種の異なる種類の陽イオン及び1種の陰イオンよりなり、又は、少なくとも2種の異なる種類の陰イオン及び1種の陽イオンよりなる塩を指す。従って、「硝酸アンモニウムの複塩」という用語は、硝酸アンモニウムと別の化合物との、それぞれの構成要素と結晶学的に異なる新しい化合物を形成するような、組み合わせを意味すると理解される。
【0010】
好ましい態様において、本発明の前記肥料及び他の物質を含む前記組成物は、単塩ANの濃度が比較的低い。本明細書において用いられるように、「単塩AN」という用語は、実質的にすべての陽イオンがアンモニウムであり、実質的にすべての陰イオンが硝酸である塩を指す。非常に好ましい態様において、本発明の組成物及び物質は、実質的な量の単塩ANを有しておらず、そして、特定の態様において、該組成物は単塩ANを微量しか含まない。
【0011】
特に、肥料の形態で、そして肥料の取り扱いを含む方法に関連して用いられる際の本発明の組成物は、好ましくは、Title 49 of the Code of Federal Regulations, "Transportation", Part 172, "Hazardous Materials Table", Oct. 1 , 2000の下の危険物質と考えられず、そして好ましくは、United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Manual of Tests and Criteria, 1995", "Section 34, Classification Procedures, Test Methods and Criteria Relating to Oxidizing Substances of Division 5.1 "の下の酸化剤として分類されることもない。
【0012】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の1つの側面は、好ましくは、肥料等に必要とされるもののような、所望の農業上の特性、及び単塩ANと比較して高い爆発耐性を有している組成物を提供する。好ましい態様において、本発明は、1種又は2種以上の以下の式(I)の複塩を含有する肥料組成物を提供する:
(M)・n(NHNO)・m(HO) (I)
式中、Mは、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム及び水酸化硝酸ネオジムより成る群から選択される陽イオン−陰イオン対であり、nは約0.2〜約3であり、そして、mは約0〜約10である。
【0013】
好ましい態様において、本発明の組成物は、低発熱成分であり及び/又は凝集力減少に対する耐性を有している成分(好ましくは複塩)を含み、並びに、好ましくは本質的に上記のものより成ることで特徴づけられる。
【0014】
より具体的には、好ましい態様において、本発明の組成物は、硝酸アンモニウムの反応安定性に対して少なくとも2倍の反応安定性を示す化合物Iの成分を含むこと、そして好ましくは、本質的に上記のものより成ることで特徴づけられる。ここで、反応安定性の差は、硝酸アンモニウムの反応熱に対する(I)の反応熱を比較することにより測定される。本明細書に記載するように、反応熱は、化合物(I)が、NO、NO、NO、N、HO、NH及びHNOを含む(すべてを網羅するわけではない)構成部分に分解反応する際に放出するエネルギーにより定義される。好ましくは、本発明の組成物及び肥料中に用いられるように、本発明の好ましい複塩の反応熱は、ANのおよその反応熱よりも実質的に大きく、更に好ましくは、2:1ANS複塩のおよその反応熱よりも実質的に大きい。
【0015】
本発明の組成物が、少なくとも約500°Kの凝集安定性温度(cohesion stability temperature)を示し、更に好ましくは少なくとも約600°Kを示す成分、及び特に複塩を含むこと、そして好ましくは、本質的に上記のものより成ることで特徴づけられることも多くの態様において好ましい。本明細書で用いられるように、凝集安定性温度とは、前記複塩の成分が、有意な凝集力の減少を示し始める温度を指す。本発明の組成物が、硝酸アンモニウムの凝集安定性に比べて、より高い凝集安定性を示す成分、及び特に複塩を含むこと、並びに、好ましくは本質的に上記のものよりなることで特徴づけられることも好ましい。ここで、凝集安定性の差は、(I)の凝集発熱と硝酸アンモニウムの凝集発熱との比較により測定される。好ましい態様において、凝集安定性の改善は、硝酸アンモニウムと比較して安定性の増加が2倍であるということである。本明細書において用いられるように、凝集発熱とは、[(M)・n(NHNO)・m(HO)]n(II)で表わされる塊状材料が式(I)で表わされる構成部分に分解する際に解放される熱力学的自由エネルギーを意味する。ここで、約600°Kにおいて、凝集力の不安定な化合物は負の自由エネルギーを示し、より安定な化合物は正の値を示す。好ましくは、本発明の組成物及び肥料で用いられるように、本発明の好ましい複塩の凝集発熱は、単塩ANのおよその凝集発熱よりも実質的に大きく、更に好ましくは、2:1ANS複塩のおよその凝集発熱よりも実質的に大きい。
【0016】
本発明の別の側面は、このような組成物に、以下の少なくとも1つ、好ましくは双方:a)開始温度(onset temperature)の増加;又はb)DTA加熱速度の増加、により測定される組成物の起爆感度を比較的低いレベルにするのに効果のある化合物、好ましくは、硝酸アンモニウムとの複塩の形態の化合物を含ませることにより、硝酸アンモニウムを含有する組成物の起爆感度を減少させるための組成物及び方法を提供する。なお、a)及びb)は、それぞれ、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示されるものの値と比較したものである。
【0017】
例えば、セイコー電子工業(株)により販売されている熱重量分析装置(Thermal Gravimetric Analyzer)(TGA)、型番RT6220は、2:1ASNの開始温度、重量減少(反応の存在を示す)、及びおおよその加熱速度のピーク降下を評価するために用いられてきた。本明細書で報告された、これらの物質についての具体的な結果は、一般的にこれらの物質の特性を示すものである一方、本明細書中で、本発明の組成物及び方法によって達成される相対的な性能の改善を説明するために、主に比較の目的で用いられていることを、当業者はよく理解するであろう。
【0018】
【表1】

【0019】
特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って計測された、2:1ASNのおよその開始温度を実質的に下回らない、そして更に好ましくは、2:1ASNの開始温度を少なくとも約1℃超える開始温度が、そして更に好ましくは、2:1ASNの開始温度を少なくとも約3℃超える開始温度が引き起こされる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物の開始温度は少なくとも約220℃であり、更に好ましくは少なくとも約223℃である。
【0020】
特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って、示差熱分析(DTA)により計測された、2:1ASNのおよその加熱速度のピーク降下(PDHR)を実質的に下回らない、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約15相対パーセント超える、そして、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約50相対パーセント超える、そして、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約200相対パーセント超えるPDHRが引き起こされる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物及び方法により、好ましくは、セイコー電子工業(株)により販売されているTGA型番RT6220の公知の使用法に従って、示差熱分析(DTA)により計測された、2:1ASNの加熱速度のピーク降下(PDHR)を少なくとも約0.5uV超える、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約1uV超える、そして、更に好ましくは、2:1ASNのPDHRを少なくとも約2uV超えるPDHRが引き起こされる。
【0021】
好ましくは、本発明の組成物には、(NHSO・3(NHNO)複塩と硝酸アンモニウム(NHNO)とを合わせた合計が約0〜約3重量%のものが含まれ、より好ましくは、硝酸アンモニウムが該組成物の約0〜1重量%のいずれかの量で存在し、更に好ましくは、極微量しか存在しない。
【0022】
実施例
比較実施例1
硝酸アンモニウムを、量子力学計算を用いてその特有の特性を決定することにより試験し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約−0.5乃至約−0.9kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.06乃至約−0.9kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。ANは約200°Kを超える温度において凝集が不安定であると分かる。
【0023】
比較実施例2
硝酸硫酸アンモニウム2:1複塩を、量子力学計算を用いてその特性を決定することにより試験し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約−0.15乃至約−0.7kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.06乃至約−0.25kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。ASNは約500°Kを超える温度において凝集が不安定であると分かる。
【0024】
実施例1
硝酸カルシウムと硝酸アンモニウムとの1:1複塩(CAN)を評価し、その特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.65乃至約0.3kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.01乃至約0.08kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0025】
実施例2
硝酸アンモニウム:リン酸硝酸塩の2:1複塩(APN)を評価し、その特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.04乃至約−0.07kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0026】
実施例3
硝酸アンモニウム:硝酸カリウムの2:1複塩(KAN)を評価し、その特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.17乃至約−0.21kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.12乃至約0.01kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0027】
実施例4
硝酸アンモニウム:硝酸マグネシウムの2:1複塩(MgAN)を評価し、その特有の特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.4乃至約−0.2kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.1乃至約−0.025kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0028】
実施例5
硝酸アンモニウム:ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムの2:1複塩(ASiFN)を、量子力学計算を用いて評価し、その特性を決定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.09乃至約−0.03kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0029】
実施例6
硝酸アンモニウム:モリブデン酸アンモニウムの2:1複塩(AMoON)を試験し、その特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.05乃至約−0.01kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。
【0030】
実施例7
硝酸アンモニウム:水酸化硝酸ネオジムの3:1複塩(ANdOHN)を試験し、その特性を測定し、それぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約−1.06乃至約−1.07kcal/gmの範囲の反応による自由エネルギー発熱及びそれぞれ、約200°K及び約600°Kの温度で約0.09乃至約0.5kcal/gmの範囲の凝集による自由エネルギー発熱を有していることが見出される。前記ANdOHNは凝集が安定であると分かる。
【0031】
実施例8
硝酸アンモニウム:硝酸カリウムの複塩を1:1のモル比で調製する。次に、この複塩を、上記の手続きに従って開始温度及びDTAについて試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。次にこの試験を繰り返す。結果は下記の表1に報告される。
【0032】
【表2】

【0033】
上記の結果からわかるように、この複塩は、本発明の特定の好ましい態様の範囲内のDTA及び開始温度を示す。
実施例9
硝酸アンモニウム:リン酸硝酸塩の複塩を1:1のモル比で調製する。次に、この複塩を、上記の手続きに従って開始温度及びDTAについて試験する。更に、組成物の重量減少が測定され、報告される。重量減少は反応が起こったことを示す。次にこの試験を繰り返す。結果は下記の表2に報告される。
【0034】
【表3】

【0035】
上記の結果からわかるように、この複塩は、本発明の特定の好ましい態様の範囲内のDTA及び開始温度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸アンモニウムと、少なくとも1種の第2の化合物とを含有する肥料であって、前記第2の化合物は、ANと比較して組成物の起爆感度を実質的に減少させるのに効果のある条件下、そして量で存在し、そして、前記第2の化合物は、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせより成る群から選択される、前記肥料。
【請求項2】
前記組成物中の硝酸アンモニウムの少なくとも実質的な部分が、1種又は2種以上の前記第2の化合物との複塩の形態である、請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
硝酸アンモニウムと前記第2の化合物との1種又は2種以上の複塩より本質的になる、請求項2に記載の肥料。
【請求項4】
硝酸アンモニウムを含有する組成物の起爆感度を減少させる方法であって、前記組成物中に、硝酸アンモニウムの少なくとも1種の複塩と、硝酸カルシウム、硝酸カリウム及び硝酸マグネシウム及びこれらの2種又は3種の組み合わせよりなる群から選択される、少なくとも1種の第2の化合物とを含有させることを含む、前記方法。
【請求項5】
肥料組成物の取り扱い方法であって、硝酸アンモニウムの複塩と、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、水酸化硝酸ネオジム、及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の第2の化合物とを含有する、実質的に爆発しない肥料組成物を提供することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記提供された組成物中の実質的にすべての前記硝酸アンモニウムは、1種又は2種以上の前記第2の化合物との複塩の形態で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記肥料を輸送することを含む、請求項6に記載の取り扱い方法。
【請求項8】
前記肥料を土壌又は他の育成材料へ適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
硝酸アンモニウムと、硝酸カルシウム、硝酸カリウム及び硝酸マグネシウム及びこれらの2種又は3種以上の組み合わせよりなる群から選択される少なくとも1種の第2の化合物とを含み、単塩ANを実質的な量で有しておらず、肥料組成物は、式(I):
(M)・n(NHNO)・m(HO) (I)
(式中、Mは、リン酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム及び水酸化硝酸ネオジムよりなる群から選択される陽イオン−陰イオン対であり、nは約0.2から約3であり、mは約0から約10である)、で表わされる複塩を1種又は2種以上含む、肥料。
【請求項10】
本質的に、約600°Kでの反応熱が約−0.5kcal/gmを超える塩より成る、硝酸アンモニウムの複塩を含有する肥料。
【請求項11】
約600°Kでの前記反応熱が約−0.2kcal/gmを超える、請求項10に記載の肥料。
【請求項12】
本質的に、凝集安定性温度が少なくとも約500°Kである塩より成る、硝酸アンモニウムの複塩を含有する肥料。
【請求項13】
前記凝集安定性温度が少なくとも約600°Kである、請求項12に記載の肥料。
【請求項14】
前記複塩が、本質的に、約−0.25kcal/gmを超える凝集発熱を有している塩より成る、請求項12に記載の肥料。
【請求項15】
前記複塩が、本質的に、約−0.1kcal/gmを超える凝集発熱を有している塩より成る、請求項12に記載の肥料。
【請求項16】
硝酸アンモニウムと、少なくとも1種の第2の化合物とを含有する肥料であって、前記第2の化合物は、2:1ASNと比較して組成物の起爆感度を実質的に減少させるのに効果のある条件下、そして量で存在し、そして、前記第2の化合物は、リン酸硝酸塩、硝酸カリウム及びこれらの組み合わせより成る群から選択される、前記肥料。
【請求項17】
前記肥料は、硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される開始温度の値を超える開始温度を有している、請求項16に記載の肥料。
【請求項18】
硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される開始温度の値より少なくとも約1℃高い開始温度を有している、請求項16に記載の肥料。
【請求項19】
硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される加熱速度のピーク降下(PDHR)の値を超えるPDHRを有している、請求項16に記載の肥料。
【請求項20】
硫酸硝酸アンモニウム2:1複塩(2:1ASN)により示される加熱速度のピーク降下(PDHR)の値より少なくとも約50%大きいPDHRを有している、請求項16に記載の肥料。

【公表番号】特表2009−523687(P2009−523687A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550550(P2008−550550)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/060534
【国際公開番号】WO2007/084872
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】