説明

硝酸態窒素含有液処理装置及び硝酸態窒素含有液の処理方法

【課題】簡易な装置構成であり且つ比較的低いコストのものであるにも関わらず、硝酸態窒素を従来以上の効率で処理することが可能な硝酸態窒素含有液処理装置、及び、硝酸態窒素含有液の処理方法を得る。
【解決手段】本発明の装置100は、媒を用いて、硝酸態窒素含有液を内部で処理することが可能な処理用タンク10と、処理用タンク10内に酸性液を一定時間毎に所定量ずつ送入可能な酸性液貯留タンク11と、処理用タンク10の内部を撹拌可能な撹拌部12と、を備えている。触媒が予め投入されている処理用タンク10内において、撹拌部12によって撹拌しつつ、硝酸態窒素含有液を酸性液によって処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸態窒素を含有している液体を処理する硝酸態窒素含有液処理装置及び硝酸態窒素含有液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に代表されるように、硝酸態窒素含有液を処理する方法が開示されている。この特許文献1における硝酸態窒素含有液を処理する方法は、硝酸態窒素を含有する排水を還元性物質の存在下に固体触媒と接触させて硝酸態窒素を窒素等に湿式還元して浄化する方法において、100℃未満の温度において反応させることを特徴とするものである。また、該方法を用いた装置が特許文献1には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−95784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された方法及び装置は硝酸態窒素を除去できるものであるが、比較的高温で処理しなければならないために熱交換器が必要であり、装置が煩雑化するとともに比較的高いコストが必要となっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡易な装置構成であり且つ比較的低いコストのものであるにも関わらず、硝酸態窒素を従来以上の効率で処理することが可能な硝酸態窒素含有液処理装置、及び、硝酸態窒素含有液の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の硝酸態窒素含有液処理装置は、触媒を用いて、硝酸態窒素含有液を内部で処理することが可能な処理用タンクと、前記処理用タンク内に酸性液を一定時間毎に所定量ずつ送入可能な酸性液送入部と、前記処理用タンクの内部を撹拌可能な撹拌部と、を備えているものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、簡易な装置構成であり且つ比較的低いコストのものであるにも関わらず、硝酸態窒素含有液を従来以上の効率で処理することが可能である。
【0008】
(2) 上記(1)の硝酸態窒素含有液処理装置においては、前記酸性液が、硫酸、塩酸、又は硝酸であることが好ましい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、より精度よく、硝酸態窒素を処理することが可能である。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)の硝酸態窒素含有液処理装置においては、前記触媒が、鉄、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムであることが好ましい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、より精度よく、硝酸態窒素を処理することが可能である。
【0012】
(4) 本発明に係る硝酸態窒素含有液の処理方法は、硝酸態窒素含有液に触媒を接触させる接触工程と、前記触媒添加工程後、前記硝酸態窒素含有液に所定濃度の酸性液を一定時間毎に所定量ずつ添加する酸性液添加工程と、前記酸性液添加工程中に、前記硝酸態窒素含有液と前記酸性液との混合液を撹拌する撹拌工程と、有しているものである。
【0013】
上記(4)の構成によれば、比較的低いコストで実行できるにも関わらず、硝酸態窒素含有液を従来以上の効率で処理することが可能である。
【0014】
(5) 上記(4)の硝酸態窒素含有液処理装置の製造方法においては、前記酸性液が、硫酸、塩酸、又は硝酸であることが好ましい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、より精度よく、硝酸態窒素を処理することが可能である。
【0016】
(6) 上記(4)又は(5)の硝酸態窒素含有液処理装置の製造方法においては、前記触媒が、鉄、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムであることが好ましい。
【0017】
上記(6)の構成によれば、より精度よく、硝酸態窒素を処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る硝酸態窒素含有液処理装置の概略構成と、ガス処理部とを示した図である。
【図2】本発明の実施例における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態に係る硝酸態窒素含有液処理装置について説明する。
【0020】
図1に示すように、硝酸態窒素含有液処理装置100は、触媒を用いて、硝酸態窒素含有液を内部で処理することが可能な処理用タンク10と、処理用タンク10内に酸性液を一定時間毎に所定量ずつ送入可能な酸性液貯留タンク11と、処理用タンク10の内部を撹拌可能な撹拌部12と、を備えているものである。
【0021】
処理用タンク10内部には、硝酸態窒素含有液の処理に使用される触媒(図示せず)が投入されている。この触媒の例としては、鉄、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムが挙げられる。また、処理用タンク10には、硝酸態窒素含有液を送入するための送入管21と、処理後の廃液を排出するための排出管22と、酸性液貯留タンク11からの酸性液を送入するための送入管23と、処理によって発生したガスを処理するガス処理部200に排出するための排出管24と、が接続されている。
【0022】
送入管21の途中には、硝酸態窒素含有液の流量を調整できる流量調整弁25が設けられている。同様に、排出管22の途中には、処理後の廃液の流量を調整できる流量調整弁26が設けられ、送入管23の途中には、酸性液の流量を調整できる流量調整弁27が設けられている。
【0023】
酸性液貯留タンク11は、送入管23及び流量調整弁27とともに、処理用タンク10内に酸性液を一定時間毎に所定量ずつ送入可能な酸性液送入部の一部を構成しているものである。なお、酸性液の例としては、硫酸、塩酸、又は硝酸などが挙げられる。
【0024】
撹拌部12は、処理用タンク10外部から内部に向かって延設されている棒状部材12aと、処理用タンク10内部側の棒状部材12a先端部に設けられているプロペラ部12と、を有しているものである。
【0025】
次に、硝酸態窒素含有液処理装置100の動作を説明しつつ、硝酸態窒素含有液の処理工程について説明する。
【0026】
まず、処理用タンク10内に触媒を予め入れておく。次に、流量調整弁25が開かれた送入管21を介して、所定量の硝酸態窒素含有液を処理用タンク10内に送入し、触媒と接触させる(接触工程)。所定量の硝酸態窒素含有液が処理用タンク10内に送入されたら、流量調整弁27を開き、酸性液貯留タンク11から一定時間毎に所定量ずつ酸性液を処理用タンク10内に送入し、硝酸態窒素含有液に添加する(酸性液添加工程)。このとき、撹拌部12を作動させ、処理用タンク10内を撹拌しながら、該添加作業を行う(撹拌工程)。なお、撹拌部12を作動させないで、撹拌させずに処理を行おうとすると、硝酸態窒素含有液と酸性液とが反応して発生した水素ガスがガス処理部に排出されるだけとなり、ほとんど処理が行われないこととなる。したがって、撹拌部12を作動させ、処理用タンク10内を撹拌して、該水素ガスを硝酸態窒素含有液によく接触させることが、硝酸態窒素の除去処理をするのに重要である。
【0027】
ここで、上記硝酸態窒素含有液が硝酸又は亜硝酸であって、上記触媒が鉄粉、上記酸性液が硫酸である場合、最終的に発生するガスは、窒素ガス又はアンモニアガスとなる。なお、窒素ガスが発生した場合には、処理後の廃液中にはアンモニウムイオンが生成されている。ここで、上述の発生したガスを処理用タンク10からガス処理部200へ排出するとともに、処理後の廃液を処理用タンク10から、流量調整弁26が開かれた排出管22を介して排出することで一回の処理が完了する。その後、また上記接触工程に戻り、順次、各工程を繰り返すことで、大量の硝酸態窒素含有液を処理する。
【0028】
本実施形態によれば、比較的低いコストのものであるにも関わらず、硝酸態窒素含有液を従来以上の効率で処理することが可能である。特に、硝酸態窒素含有液処理装置100は、簡易な装置構成であるとともに硝酸態窒素含有液を従来以上の効率で処理することが可能であることから、従来品よりもコストパフォーマンスに優れている。
【実施例】
【0029】
次に、本発明について実施例を用いて説明する。
【0030】
(実施例1)
本実施例においては、上述の実施形態に係る硝酸態窒素含有液処理装置100と同様の装置を作製し、該装置を用いて、硝酸を含む硝酸態窒素含有液(濃度:1000mg/L)の処理を行った。具体的には、触媒としての鉄粉を予め入れておいた処理用タンク内に、硝酸態窒素含有液を200ml送入した後、酸性液としての硫酸(濃度62.5%)を1分間に2μlずつ送入し、上記実施形態における硝酸態窒素含有液の処理工程と同様の処理を行った。結果を図2のグラフに示す。
【0031】
図2のグラフより、処理開始から120分程度で濃度が約50mg/Lとなっていることがわかる。また、処理開始から240分後には、硝酸態窒素含有液から硝酸・亜硝酸がほとんど除去されていることがわかる。
【0032】
したがって、本実施例に係る硝酸態窒素含有液処理装置100と同様の装置を用いれば、比較的短時間で、硝酸態窒素含有液から硝酸・亜硝酸をほとんど除去することができることが判明した。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同様の装置を用いるとともに、硝酸態窒素含有液を200ml送入した後、酸性液としての硫酸(濃度62.5%)を1分間に2μlずつ送入する際に撹拌しないこと以外、実施例1と同様の処理を行った。結果を図2のグラフに示す。
【0034】
図2のグラフより、処理開始から240分後となっても、硝酸態窒素含有液から硝酸・亜硝酸が除去されていないことがわかる。したがって、硝酸態窒素含有液に硫酸を加える際、十分に撹拌する必要があることがわかった。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。例えば、上記実施形態においては、撹拌部12は回転撹拌するものを示したが、これに限られず、上下に稼働するようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 処理用タンク
11 酸性液貯留タンク
12 撹拌部
21、23 送入管
22、24 排出管
25、26、27 流量調整弁
100 硝酸態窒素含有液処理装置
200 ガス処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を用いて、硝酸態窒素含有液を内部で処理することが可能な処理用タンクと、
前記処理用タンク内に酸性液を一定時間毎に所定量ずつ送入可能な酸性液送入部と、
前記処理用タンクの内部を撹拌可能な撹拌部と、を備えていることを特徴とする硝酸態窒素含有液処理装置。
【請求項2】
前記酸性液が、硫酸、塩酸、又は硝酸であることを特徴とする請求項1に記載の硝酸態窒素含有液処理装置。
【請求項3】
前記触媒が、鉄、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硝酸態窒素含有液処理装置。
【請求項4】
硝酸態窒素含有液に触媒を接触させる接触工程と、
前記触媒添加工程後、前記硝酸態窒素含有液に所定濃度の酸性液を一定時間毎に所定量ずつ添加する酸性液添加工程と、
前記酸性液添加工程中に、前記硝酸態窒素含有液と前記酸性液との混合液を撹拌する撹拌工程と、有していることを特徴とする硝酸態窒素含有液の処理方法。
【請求項5】
前記酸性液が、硫酸、塩酸、又は硝酸であることを特徴とする請求項4に記載の硝酸態窒素含有液処理装置。
【請求項6】
前記触媒が、鉄、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムであることを特徴とする請求項4又は5に記載の硝酸態窒素含有液処理装置。


【図1】
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【図2】
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