説明

硫酸カルシウム半水和物を含むコーティングされた建材パネル及びその製品

内壁を仕上げる方法は、石膏またはセメントまたはそれらの組合せを備えていて、表面を有する、建材パネルの基材を用意するステップと、1〜30重量%のラテックスエマルジョン結合剤と、30〜80重量%の硫酸カルシウム半水和物と、最大約8重量%までの凝固防止剤と、20〜60重量%の水を含むコーティング剤を基材に塗布するステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸カルシウム半水和物組成物及びその使用方法に係り、より詳しくは、漆喰塗装、ペンキ塗装あるいは他の表面化粧仕上げのために表面の下地処理の目的で用いる、新しい石膏パネル、既にペンキ塗装された石膏パネル、セメントパネル等の上に使用可能な汎用性のあるプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
内壁は一般にSHEETROCK(登録商標)ブランドの石膏パネルのような石膏パネルやセメントパネル等で作られている。パネルの使用は、大面積の壁の迅速な施工を可能にするが、パネル間の継ぎ目は、ペンキまたは他の化粧仕上げのための下地処理において継ぎ目なしの表面になるよう、仕上げる必要がある。新しい壁を建築するか古い壁の表面を新しくするかにかかわらず、ペンキ塗装、漆喰塗装、その他の化粧仕上げのための下地処理には、大変な時間がかかる。
【0003】
新しいパネルを仕上げるのは時間のかかる作業である。ボードの設置後、ジョイントコンパウンドを継ぎ目や釘の頭に塗る。ジョイントコンパウンドは乾燥のため一晩寝かされ、完全に乾いたところでサンディングが行われる。サンディングによる粉塵はタッククロスまたは湿ったスポンジで取り除かれる。
ジョイントコンパウンドが収縮性の場合には、再度ジョイントコンパウンドが塗布され一晩寝かして乾かされ、その後サンディングと表面の除塵が行われる。
品質を高めるためには、この作業の過程で継ぎ目材に3回目の塗りを施す。ボードの設置後、表面仕上げに少なくとも3日間必要とする。この作業プロセスは損傷した壁を修理するためにも用いられる。
【0004】
このような作業は時間がかかるが、低コストであり、滑らかで継ぎ目のない表面を形成することができる。また、比較的単純な作業なので、自宅所有者が専門家の手助けなしに、この作業を行うことができる。しかしながら、そうした作業を完了するためには、多くの時間を必要とするという欠点がある。新築現場において、この仕上げ作業が完了するのを待っている間、キャビネット、カーペット、電気設備、その他の設置品の取り付けが停止し、作業者は数日間続けて同じ現場に通わなければならない。
【0005】
修理または改装をしている自宅所有者にとっては、家の中の混乱が長引くことになる。そして、繰り返されるサンディングにより、細かな埃がクローゼットやキャビネットの中に入り込むため、家中の念入りな掃除が必要となってしまう。そのため、古い壁を再仕上げするための、より迅速で、より清潔な方法というものが、施工業者、自宅所有者の双方から望まれている。
【0006】
このような長い作業プロセスを行うかわりに、自宅所有者によっては、壁全体に、表面仕上げ用の漆喰を上から塗る方法を選ぶ場合がある。この方法では、継ぎ目、留め具、その他の不具合を塗りつぶした後で、熟練した職人によって壁が漆喰で覆われる。この方法を行えば、ジョイントコンパウンドを使用した下地処理に比べ、欠けたり、へこんだり、引っかいて傷つけたり、釘の頭に引っかかったりすることのない、より強度の高い表面が得られる。さらに、漆喰塗装の作業で欠かせない、押さえて密度を高めるステップがあるため、漆喰の不具合部分を滑らかにするためのサンディングを行う必要がない。サンディングを行う必要がないため、サンディングによる粉塵を清掃する手間と時間が省略できる。ジョイントコンパウンドを使用する作業では、作業期間が2〜3日かかるのに対し、表面仕上げ漆喰塗装は1日で完了可能であり、より迅速に作業を終えることができる。着色漆喰を使用すれば、漆喰を塗った表面にペンキを塗ることさえ必要なくなる。この技術の不利な点は、表面仕上げ漆喰塗装には熟練した作業者グループが欠かせないため、コストが高くなることである。一般の自宅所有者が、自分で表面仕上げ漆喰塗装を行っても、良い結果を得るのは極めて難しい。
【0007】
ユナイテッドステイツジプサムカンパニー(United States Gypsum Co. シカゴ、イリノイ州)製造の “IMPERIAL”(登録商標)ブランドの石膏ボードなど、石膏塗装用に設計された石膏ボードは、石膏塗装に適した壁板である。このような壁板は、石膏塗装によって水を吸収した後でも、漆喰の保全や紙に含まれた添加物への影響がなく、漆喰の強度が維持できる特性を持っている。しかしながら、こうした特殊な建材パネルはどこでも利用できるとは限らないため、従来の建材パネルが取り付けた後で、漆喰による上塗りを実施しなければならない場合もある。このような場合には、従来の建材パネルでも表面仕上げ漆喰塗装を施すことのできる、コーティング剤やプライマーが必要になる。
【0008】
古い傷んだ壁の表面を再仕上げする場合には、さらに複数のステップが必要となる。例えば、新しい漆喰は古い漆喰に付着しないので、新しい漆喰を古い漆喰に直接塗ることはできない。そのため、壁の表面をサンディングによって荒らし、吸着表面を露出させ、ひどく傷んだ箇所を除去しなければならない。次に、漆喰を接着させるための接着剤を塗り、漆喰で下塗りを施し、さらに薄い漆喰の塗装を施す。乾いた後で、仕上げの漆喰塗装が施される。最後の仕上げ漆喰塗装を行うまでに、少なくとも3層の材料が塗布される。古い漆喰の表面を再仕上げする際に、漆喰塗装の回数を減らし、改造中に塗布しなければならない材料の量を減らせるプライマーがあれば、この作業は、もっと容易なものとなるだろう。
さらに、自宅所有者によっては、以前に漆喰塗装された古い壁にペンキを塗ることや、ペンキが塗ってあった古い壁に漆喰を塗りたいという要望を持っている。これを実施可能とするためには、ペンキと漆喰の両方に接着可能なプライマーが必要となる。
先行技術には、漆喰だけでなく他の壁仕上げ材料に接着できるプライマーは開示されていない。特許文献1では、調合済み、凝固型のジョイントコンパウンドが、結合剤として硫酸カルシウム半水和物を使用して処方されている。
これには、半水和物の二水和物への水和防止のために、凝固遅延剤が加えられており、ジョイントコンパウンドの使用前に凝結促進剤を加えることで、水和が開始されるようになっている。しかしながら、凝固遅延剤は時間経過につれて性能低下し、製品の保存期限内に水和が発生するという問題があった。
【0009】
そのため、多くの異なる表面への接合を可能にし、多くの異なるケースに適用可能な、プライマー組成物に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,661,161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前述のような問題に鑑み、新しいパネルであろうと、既にペンキが塗られたものであろうと、以前に壁紙が貼られていたものであろうと、漆喰が塗られたものであろうと 、接着することを可能とする多目的プライマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的な1つの実施形態としては、漆喰塗装や、ペンキ塗装あるいは他の表面化粧仕上げ塗装のために、内壁を下地処理する方法であって、石膏、セメントあるいはそれらの組合せを有していて、表面を備える、建材パネルの基材を用意するステップと、1〜30重量%のラテックスエマルション接着剤、30〜80重量%の硫酸カルシウム半水和物、約8重量%以内の凝固防止剤、20〜60重量%の水を含むコーティング剤を基材に塗布するステップを含む方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーティング剤は、多目的プライマーとしての機能を有する、建材パネル塗布用の調合済み組成物である。本コーティング剤は、新しい建築パネルの下地処理にも、修理の必要のある古い壁の表面処理にも使用できる。
本プライマー組成物は、ペンキ、漆喰、その他の仕上げ用の組成物の種類にかかわらず、それらのための壁の下地処理に有用である。
【0014】
表面仕上げ漆喰塗装を施す壁の仕上げは、テーピングをし、ジョイントコンパウンドを塗布し、サンディングを行い、ジョイントコンパウンドの次の塗布までに十分乾くよう間隔を24時間まで開けて待つ必要がある場合に比べると、はるかに早く完了する。本組成物を使用する場合には、表面仕上げ用漆喰塗装を施すことができ、同日内に2回目の塗装を施すことができるので、少なくとも1日、しばしば2日間、時間の短縮が図れる。
【0015】
本発明のプライマー組成物の使用は、もともとある乾式壁やその他の建材パネルを取り去ることに加え、別のオプションをユーザーにもたらす。今や、漆喰による表面仕上げ塗装は、従来の建材パネルが設置されていたところにも、漆喰を用いるための特殊パネルが手に入らず使用されていなかった新しい壁にも施すことができる。以前は、従来のパネルにペンキを塗ったり壁紙を貼ったりしていた模様替え作業においても、本発明のプライマー組成物の使用により漆喰塗装が可能となる。
【0016】
本コーティング調合剤の使用は、また、材料を削減することができ、特には、既に漆喰を塗った壁に新たに漆喰による表面仕上げ塗装を施す場合においてである。以前に漆喰が塗られていた壁の表面を、再度仕上げるために行われていた従来の方法に比べ、本コーティング調合剤を使用して表面仕上げ塗装を壁に施す場合に必要とされる漆喰塗装回数や材料は、より少なくて済む。高品質の継ぎ目の無い表面を仕上げるうえで、少なくとも漆喰塗装が1回削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
石膏またはセメントまたはそれらの組合せを備えるパネルが、基板として準備される。本発明の目的のための基材の準備は、コーティング調合剤から準備されたコーティング剤による塗工が可能な基材とするための、あらゆる方法を含む。新築の場合には、基材の準備は、間柱や壁及び/または天井を支持するため別のフレームに、パネルを取り付けることを含んでいる。
【0018】
パネルは、主要な表面の一方または両方に、選択可能な上張りを有するコア材を有している。好ましくは、パネルは、ユナイテッドステイツジプサムカンパニー製造のSHEETROCK(登録商標)ブランド石膏パネルのような石膏パネルである。
このようなパネルは、化粧材の紙がコンベア上に置かれる連続で高速のプロセスで製造される。硫酸カルシウム半水和物、または焼き石膏と水と添加剤のスラリーが、紙の上に注がれ、その上に第二の化粧材がサンドイッチするように被せられる。石膏のスラリーは、厚さを一定に、サンドイッチされた材料の全幅を覆うように広げられ、ついで凝結、硬化させられる。スラリーが約50%水和した時に、ボードは適切な長さにカットされ、窯に送られて乾燥仕上げされる。漆喰とともに使用する石膏建材パネルは、特に好ましくは、ユナイテッドステイツジプサムカンパニー(イリノイ州、シカゴ)製造のIMPERIAL(登録商標)石膏ボードである。
【0019】
硫酸カルシウム半水和物は、どのようなタイプのものでも、異なるタイプの混合物でもよい。α形は、圧力をかけて石膏を仮焼することによって得られるが、β形に比べ高価である。大気圧で仮焼された石膏はβ仮焼形である。β仮焼形石膏は、α形に比べよりアモルファスであるか、平板状の結晶形態をしている。α形は、アモルファス度が低いため、スラリーで希釈された場合、より簡単に流動するので、同等の流動性を得るためにはβ形よりも水が少なくてよい。
【0020】
DUROCK(登録商標)ブランドのセメントパネルのようなセメントパネルは、セメントと水と添加剤のスラリーをスクリムまたはメッシュの化粧材に注いで作られる。完全に硬化する前に、パネルは一定サイズに切断され、乾燥工程を速めるため、窯に送られる。セメントパネルは、地下室、浴室、または水分がありそうなところではどこでも、有用である。セメントと仮焼石膏の混合物でできたパネルの使用も考えられる。
【0021】
化粧材は、コーティング剤が接着し、パネルに強度を与えるものであればどのようなものでも良い。好適な化粧材には、紙、ボール紙、ガラス繊維、プラスチック、スクリム、メッシュなどの化粧材、または公知のあらゆる化粧材が含まれる。化粧材のないパネルの使用も考えられる。
【0022】
基材表面は、壁または天井を支持する間柱のフレームに、パネルを取り付けることで作られ、隣接したパネルは相互に接触し、パネル間の接合箇所はできるだけ小さくする。その後、接合箇所はテープ処理されて、継ぎ目の無い表面にする。パネルはある特定のサイズまたは形の壁または天井に適応するようカットすることができ、取り付け方は公知のどのような方法でも良い。一般的には、パネルは釘またはネジによって取り付けられる。パネルを取り付ける際に、釘やネジは、その頭が基材表面から見えないように、パネルの中に十分深く埋め込まれ、それぞれの釘またはネジは、基材表面と同等の高さにされる。
【0023】
表面の下地処理にはまた、修理のため以前に化粧仕上げをした表面に、上塗りするステップも含まれる。下地処理の具体的な方法は、実施される修理の性質によって決められる。1枚以上のパネルの一部または全部が取り替えられる場合には、準備作業には、複数の新パネルまたはパネルの一部を取り付けることが含まれる。
【0024】
コーティング剤となるコーティング調合剤には、結合剤としてラテックスエマルジョンポリマーが含まれる。コーティング調合剤での実施例では、アクリル酸ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン誘導体、置換エチレンを含むモノマーから作られるラテックスエマルジョンポリマーを使用する。ポリウレタン及びポリエステルエマルジョンもまた有用である。ポリ酢酸ビニルは、コーティング調合剤を石膏パネルに塗る場合に好適であり、その他の基材に応用しても良い。添加されるラテックスエマルジョンポリマーの正確な種類と量は、塗られる表面の状態によって決められる。多孔性の少ない基材を使用する場合には、接着剤を多量にすることが好適である。
【0025】
ラテックスエマルジョンポリマーは、10000ダルトンより大きい分子量を有するものが好ましい。1つの実施例としては、ラテックスエマルジョンの量は混合剤全重量の、約1重量%から約30重量%または約10重量%から約40重量%の範囲である。好適なラテックスエマルジョンの例としては、カナダ国オンタリオ州ハルテック社から入手可能なAIRFLEX(登録商標)4530酢酸ビニルコポリマーエマルジョン、AC1265ポリ酢酸ビニルホモポリマーエマルジョン、HP19−176ポリ酢酸ビニルコポリマーエマルジョン、HP41−830酢酸ビニルエマルジョン、イリノイ州マレンゴのエンジニアド・ポリマー・ソリューションズ社から入手可能なVF−812メタクリレートラテックスポリマーが含まれる。
【0026】
コーティング調合剤のもう一つの成分は硫酸カルシウム半水和物である。建材パネルに関して前述したように、このコーティング調合剤においては、どんな種類の硫酸カルシウム半水和物も有用である。コーティング調合剤を石膏ベースの建材パネルに塗る場合、用いられる硫酸カルシウム半水和物は、建材パネルに使用されるのと同じものを使用しても良いし、異なった種類のものを使用してもよい。コーティング調合剤の多くの実施形態においては、β仮焼硫酸カルシウム半水和物が使用される。
【0027】
硫酸カルシウム半水和物の水和と凝固を防ぐため、凝固防止剤がコーティング調合剤に加えられる。凝固防止剤の添加によって、コーティング調合剤は調合済み製品として用意されることになり、作業現場で水及び/またはさらに別の化学薬品を加える必要がなくなる。製品の保存期限の間、硫酸カルシウム半水和物の凝固を無期限に遅らせるいかなる公知の凝固防止剤も、使用可能である。凝固防止剤の総量は最大8重量%までである。凝固防止剤の量は、約0.05%から約2%でも、有用である。
【0028】
少なくともいくつかのコーティング調合剤の実施形態においては、二成分凝固防止剤として、低分子量ポリマーと低分子量化合物が使用される。二成分凝固防止剤の両構成成分は、カルシウムイオン及び硫酸カルシウム結晶格子と親和性を有するものである。これら2種の添加剤は協同して硫化カルシウムスラリーの凝固メカニズムを無期限に不活性化する。これによってパッケージ化された漆喰製品の保存期限が長くなるが、それでも、水や凝結促進剤などの追加的成分を加えることなしに、現場で使用することができる。
【0029】
低分子量ポリマーは、好ましくは、約2000ダルトンから約6000ダルトンの分子量を有する。低分子量ポリマーの例としては、アクリル酸ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン誘導体、スチレン、置換スチレン、置換エチレンを含むモノマーから作られるものが挙げられる。ポリアミド骨格またはカルボキシレート官能基を有するポリマーもまた有用である。低分子量ポリマーの量は、コーティング調合剤の全重量の最大約8重量%までで、約0.05重量%から約2重量%である。ALCOQUEST(登録商標)408及びALCOQUEST(登録商標)747(テネシー州チャタヌーガのアルコ・ケミカル社)はそれぞれ約3000の分子量を有するポリアクリレート及び変性ポリカルボキシレートポリマーの液状溶液である。これらのポリマーは特にコーティング調合剤成分での使用に好適である。
【0030】
好ましい凝結防止剤の成分である低分子量化合物は、多くのどんな低分子量化合物をも含む。有用な低分子量化合物としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミノペンタ(メチレンホスホン酸)三ナトリウム、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ピロリン酸四カリウムとその混合物などであるが、これだけに限定されるものでなく、ポリホスホン化合物が含まれる。コーティング調合剤に使用される低分子量化合物の量は、成分の全重量の最大約8%までであり、約0.1%から約2%である。好適な低分子量化合物の例としては、ピロリン酸四カリウムHP(ニュージャージー州カテレト、アスタリス社)である。
【0031】
水は作業現場で任意に調合剤に加えることができる。添加される水の実際の量は、所望されるコーティングの厚さにより異なる。ペースト状あるいはペンキ状の粘稠さを有するコーティング調合剤を準備することも可能である。成分の少なくとも20重量%の量の水を加えることが好ましい。より厚みの薄い用途のための混合物の場合、混合物の重量の最大70%まで、水を添加することが可能である。水は望ましくない化学反応、生物的汚染、調合剤の不安定化を避けるため、できる限り清浄なものとすべきである。
【0032】
任意で、保存期限中の、混合物のかび及びバクテリアの成長を阻害するため、殺生物剤が加えられる。殺生物剤の量は、選択された殺生物剤によって決まるが、ある殺生物剤では、コーティング調合剤の重量の約0.08重量%から約0.5重量%の量となる。好適な殺生物剤としては、コネティカット州ノーウォークのアーチケミカルズ社によって製造され、米国特許第3,159,640号の製造プロセスによる、OMADINE(登録商標)ナトリウムまたはOMADINE(登録商標)亜鉛が含まれる。
【0033】
オープンタイムと凍結防止性能を増加させるため、グリコール成分が加えられる。グリコール成分には、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール及びそれらの混合物が含まれる。グリコール成分は、コーティング調合剤の全重量の約1%から約10%の量が使用される。グリコール成分の分子量は、好ましくは、250ダルトンと4000ダルトンの間である。
【0034】
エチレングリコールもまた、凍結防止のため、任意で加えられる。この目的で使用される場合、存在するいかなる水保有剤とも関係なく、成分の重量の約1%から約5%の量のエチレングリコールが加えられる。
【0035】
有機性保水剤は、製品の保存期限の間、水の分離やブリードを少なくする。保水剤はまた、製品の塗布中の水分を保持して、オープンタイムを伸ばし、滑らかさを増す。石膏またはセメントスラリーとともに使用することが知られているいかなる保水剤も、本調合剤において使用可能である。調合剤の実施例としては、保水剤としてスターチまたはポリアクリルアミド類が含まれる。保水剤の量はコーティング調合剤の全重量の約1%から約10%の量である。
【0036】
もう一つの任意の調合剤の成分は、沈降防止剤である。この添加剤は、コーティング調合剤の全重量の約0.05重量%から約1重量%の量が使用される。沈降防止剤は、固形物の沈殿を減少させるとともに、液体のブリードを少なくする。好ましい沈降防止剤としては、改質スメクタイト粘土のような改質粘土、改質含水リチウムナトリウムケイ酸マグネシウムのようなケイ酸塩とこれらの混合物が含まれる。
【0037】
材料の流動特性を制御するため、増粘剤がコーティング調合剤に、任意で加えられる。増粘剤は、プライマー組成物の重量の約0.05重量%から約8重量%の量が任意に加えられる。増粘剤は、塗布を容易にするため、またはカバレッジを増加させるため、コーティング剤組成物のレオロジー特性を改善する。増粘剤の例としては、BERMOCOLL(登録商標)製品(スウエーデン国ステヌングスンド、アクゾノーベル社)のような改質セルロース、及びCELLOSIZE(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース製品(ミシガン州ミッドランド、ダウケミカル社)が挙げられる。
【0038】
砂、炭酸カルシウム、膨張パーライト、硫酸カルシウム二水塩、合成セラミック球、合成ケイ酸エステルベースの球、セルロース系繊維のような軽量テクスチャー材料は、漆喰塗装のためある程度の水分吸着性能を与えるとともに、プライマーに対する漆喰の機械的接着を良くするための表面粗化のため、成分に任意で加えられる。調合剤で使用される軽量テクスチャー材料の量は、成分の全重量の1〜20%の範囲である。粒子の平均直径は、好ましくは30メッシュと160メッシュの間である。
【0039】
コーティング調合剤の調製には、ドライ成分を混合して、均質なドライ混合物を作ることが含まれる。ドライ成分として硫酸カルシウム半水和物と軽量テクスチャー成分を集め、それらをドライブレンドしてドライ混合物を作る。改質スメクタイト粘土または葉状積層ケイ酸塩粘土も、任意にドライ混合物に含められる。ドライ成分をドライブレンドに加える順序は定まっていない。ドライ混合物を調製するドライブレンドの方法としては、撹拌、混合、タンブリングなど、どのような方法でも可能である。いずれの場合においても、均質なドライ混合物が得られるまで、ミキシングを継続する。
【0040】
液状成分の調製は、二成分凝固防止剤を水に溶かすことによって行われる。低分子量ポリマー、低分子量化合物、及び任意の殺生物剤を水に加え、十分に溶解する。混合中に、ドライ混合物が液状成分にゆっくり加えられる。最後に、グリコール成分とラテックスエマルジョンポリマーを、混合中に加える。実施例としては、材料を60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、通常15〜20分間、混合する。
【0041】
コーティング調合剤の他の実施例としては、保存期限を延ばすため、殺生物剤を有する。ポリマーを含む低分子量ポリアクリレート(0.05〜2.0%)、ポリホスホン化合物(0.1〜2.0%)及び殺生物剤/殺菌剤パッケージ(0.08〜0.5%)が水(20〜60%)に加えられ、60rpmで撹拌され、十分に溶解される。次いで、グリコール成分(1〜10%)とラテックスエマルジョン(5〜30%)が、60rpmで、1〜2分間ミキシングされながら加えられる。最後に、硫酸カルシウム半水和物(30〜80%)が、任意の軽量のテクスチャー材料(1〜20%)または改質スメクタイト粘土または葉状積層ケイ酸塩粘土(0.05〜1%)と、5分間乾式ブレンドされ、ドライ混合物を作る。ドライ混合物の投入料が、60rpm以下でミキシングの間、液状成分にゆっくり加えられる。コーティング調合剤は、60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、通常15〜20分間、混合される。
【0042】
さらにコーティング調合剤のその他の実施例においては、水(20〜60%)を加え、約60rpmで撹拌し、十分に溶解したポリホスホン化合物(0.1〜2.0%)と殺生物剤/殺菌剤パッケージ(0.08〜0.5%)を結合させることによって作られる。硫酸カルシウム半水和物(30〜80%)は、ポリマーを含む低分子量ポリアクリレート(0.05〜2.0%)と、任意には、改質スメクタイト粘土(30〜80%)または葉状積層ケイ酸塩粘土(0.05〜1%)とのあらゆる配合で、5分間乾式ブレンドされる。最後に、グリコール成分(1〜10%)とラテックスエマルジョン(5〜30%)が、60rpmで、混合されながら加えられる。材料は、60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、通常15〜20分間、混合される。
【0043】
コーティング調合剤は、このような粘度のコーティング剤を塗布するあらゆる公知の方法により塗布される。1つの実施例としては、コーティング調合剤は、スプレーまたはロールまたはブラシなどのペンキと類似の方法により基材表面に塗布される。やや濃度が高く調製されたコーティング調合剤では、こて板とこて、または幅広ナイフとパン皿で塗布されることもある。コーティング調合剤が、予め基材パネルに塗布されて販売するために製造の場で塗布される場合、大規模な業務用設備の使用が想定される。そのような設備には、噴霧機、ロール塗工機、ブレード塗工機、などが、これらに限られず、含まれる。コーティング調合剤は、石膏紙表面板材及び/またはペンキを塗ったドライウォールに、機械によるスプレー塗装またはペンキナップローラーによるハンド塗装によって、塗布することもできる。
【0044】
プライマーが乾燥したところで、1回または2回の表面仕上げ用漆喰塗装や従来の漆喰塗装が任意に施される。エルコメーター社のデータによれば、漆喰が、SHEETROCK(登録商標)ブランド石膏パネルのような、漆喰塗装されることを考慮していない基材パネルに塗布される場合、初期の漆喰の破損に結びつく不均等な漆喰の接着があることを示す、大きな標準偏差(6.8)の値となる。さらに、そのデータによれば、ペンキ塗装のSHEETROCK(登録商標)ブランド石膏パネルにコーティング剤を塗布したパネルを用いて、それに塗られた漆喰は、比較的標準偏差が小さく(3.3)、平均26という高いエルコメーター測定値が示される。
【0045】
好ましい実施形態においては、調合剤は、約5ミルから約20ミルのウェット厚みで塗布される。この厚みは、表面仕上げ用漆喰塗装やジョイントコンパウンドのスキムコーティングよりはかなり薄く、約3〜4ミルのウェット厚みであるペンキプライマーよりはかなり厚い。
【実施例1】
【0046】
表面再仕上げコーティング調合剤は、表1に示した成分及び量で調製した。調製は、最初に、二成分凝固防止剤を水に溶解することから始めた。ALCOQUEST(登録商標)408ポリアクリレートポリマーと4カリウムポリフォニック酸化合物と殺生物剤/殺菌剤パッケージを水に加え、60rpmで撹拌し、十分に溶解した。60rpm以下での混合中に、硫酸カルシウム半水和物を水性成分に徐々に添加した。最後に、プロピレングリコールとHP41−803ラテックスエマルジョンを、60rpmでの混合中に添加した。これらの材料は、60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、約15〜20分間、混合した。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
テクスチャードコーティング調合剤は、表2に示した成分で調製した。実施例2では、テクスチャー材料として、砂を用いた。調製は、最初に、二成分凝固防止剤を水に溶解することから始めた。ALCOQUEST(登録商標)408ポリアクリレートポリマーと4カリウムポリフォニック酸化合物と殺生物剤/殺菌剤パッケージを水に加え、60rpmで撹拌し、十分に溶解した。硫酸カルシウム半水和物と軽量テクスチャー材料を5分間乾式ブレンドし、ドライ混合物を調製した。60rpm以下での混合中に、ドライ混合物を水性成分に徐々に添加した。最後に、プロピレングリコールとHP41−803ラテックスエマルジョンを、60rpmでの混合中に添加した。これらの材料は、60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、約15〜20分間、混合した。
【0049】
【表2】

【0050】
この組成のコーティング調合剤は、SHEETROCKブランド(登録商標)石膏パネルに塗布し、表面仕上げ漆喰塗装を2回、表面に施した。テクスチャー材を用いた実施例では、漆喰をより容易に塗布することができた。
【実施例3】
【0051】
コーティング調合剤は、表3の成分を使用して調製した。このコーティング調合剤には、膨張パーライトのテクスチャード成分に加え、改質セルロース増粘剤を添加した。改質セルロース増粘剤を少量加えることにより、硫酸カルシウム半水和物の量を、大幅に減少させることができた。調製は、まず水に増粘剤を高せん断混合(high sheer mixing)によって溶解することから開始され、次いで二成分凝固防止剤が加えられた。ALCOQUEST(登録商標)408ポリアクリレートポリマーと4カリウムポリフォニック酸化合物と殺生物剤/殺菌剤パッケージを水に加え、60rpmで撹拌し、十分に溶解した。硫酸カルシウム半水和物と軽量テクスチャー材料を5分間乾式ブレンドし、ドライ混合物を調製した。60rpm以下での混合中に、ドライ混合物を水性成分に徐々に添加した。最後に、プロピレングリコールとHP41−803ラテックスエマルジョンを、60rpmでの混合中に添加した。コーティング調合剤は、60rpmで、塊状物が視認できなくなるまで、約15〜20分間、混合した。
【0052】
【表3】

【0053】
このコーティング調合剤は、SHEETROCKブランド(登録商標)石膏パネルに塗布したが、他のコーティング調合剤よりも良好なカバレッジ性を発揮した。本実施例で用いた膨張パーライトにより、漆喰をより容易に塗布することが可能であった。
硫酸カルシウム半水和物でできたコーティング剤を施したパネルもしくは製品の特定の実施例が示され、記載されたが、本発明の最も広い態様から、また以下のクレームで請求される範囲から逸脱することなく改良を加えることができることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏またはセメントまたはそれらの組合せを有し、表面を備える、パネルの基材を用意するステップと、
1〜40重量%のラテックスエマルジョン結合剤と、30〜80重量%の硫酸カルシウム半水和物と、0.1〜2重量%の凝固防止剤と、0.05〜2重量%の6000ダルトンより小さい分子量を有するポリマーと、10〜40重量%の水とを含むコーティング剤を前記基材に塗布するステップとを含んでなる内壁を仕上げる方法。
【請求項2】
沈降防止剤を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機性の保水剤を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
4ナトリウムピロリン酸塩と、ピロリン酸四カリウムと、アミノトリ(メチレンホスホン酸)と、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)トリナトリウムと、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)と、これらの混合物からなるグループから凝固防止剤を選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
石膏パネルと、セメントパネルと、石膏とセメントの両方を備えるパネルと、これらの混合体からなるグループの中の一つの建材パネルと、
ラテックスポリマーのマトリックス中に硫酸カルシウム半水和物を含み、前記マトリックスが前記マトリックス中に分散された凝固防止剤をさらに含むコーティング剤と、
を含んでなるコーティングされたパネル。
【請求項6】
前記凝固防止剤の組成物が、4ナトリウムピロリン酸塩と、ピロリン酸四カリウムと、アミノトリ(メチレンホスホン酸)と、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)トリナトリウムと、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)と、これらの混合物からなるグループの一つであることを特徴とする請求項5に記載のコーティングされたパネル。
【請求項7】
沈降防止剤をさらに含む請求項5に記載のコーティングされたパネル。
【請求項8】
前記沈降防止剤が、改質粘土と、ケイ酸塩と、これらの混合物のうちの一つを含むことを特徴とする請求項7に記載のコーティングされたパネル。
【請求項9】
前記改質粘土は、改質スメクタイト粘土と、改質含水リチウムナトリウムケイ酸マグネシウムと、これらの混合物のうちの一つを含むことを特徴とする請求項8に記載のコーティングされたパネル。
【請求項10】
テクスチャード材料をさらに含む請求項5に記載のコーティングされたパネル。

【公表番号】特表2011−518105(P2011−518105A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506326(P2011−506326)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/038401
【国際公開番号】WO2009/151724
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】