説明

硫酸バリウムを含有する複合材

本発明の対象は、硫酸バリウムを含有する複合材、その製造方法及び該複合材の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、硫酸バリウムを含有する複合材、その製造方法及び該複合材の使用である。
【0002】
慣用の、添加剤とも呼ばれる充填剤及び顔料の適用から、ポリマー系では、充填剤もしくは顔料の粒子と、ポリマーマトリックスとの間の相互作用の種類及び強度が、複合材の特性に影響を与えることが公知である。適切な表面変性によって、粒子とポリマーマトリックスとの間の相互作用に影響を及ぼすことができ、ひいてはポリマーマトリックス中の充填剤と顔料とからなる系(以下では複合材とも呼ぶ)の特性を変化させることができる。表面変性の慣用の種類は、アルコキシアルキルシランの使用下での粒子表面の官能化である。表面変性は、粒子とマトリックスとの相容性を高めることに役立つことができる。さらに官能基の適切な選択によって、マトリックスへの粒子の結合も達成することができる。慣用の充填剤の使用の欠点は、これが、その粒径のために可視可能な光を強力に散乱し、従って、この複合材の透明性が顕著に減少されることである。更に、慣用の充填剤、例えば炭酸カルシウムの劣悪な化学的な抵抗性も、数々の適用のための欠点を提示する。
【0003】
ポリマー材料の機械的特性を改善するための第二の可能性は、超微粒子の使用である。US−B−6667360は、1〜100nmの粒径を有するナノ粒子を1〜50質量%含有するポリマー複合材を開示している。ナノ粒子として、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属フッ化物及び金属塩化物が提案されるが、この場合、これらの粒子の表面は変性されていない。ポリマーマトリックスとして、エポキシド、ポリカーボネート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、合成ゴム、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレン、酸化物、ポリケトン及びコポリマーならびにこれらの混合物があげられる。US−B−6667360に開示されている複合材は、充填剤を含有していないポリマーと比較して、改善された機械的特性、特に引っ張り特性及び耐引掻性を有している。開示された超微粒子の欠点は、これがしばしば、高いモース硬度を、従って、高い摩滅性を有することである。更に、この記載された材料(例えば二酸化チタン、n=2.7の屈折率は、ポリマー材料の屈折率と比較して、当然高い。これは、比較的に強力な光散乱を生じ、この結果、複合材の透明性の減少を生じる。
【0004】
典型的な顔料及び充填剤の中での特殊な場合を、硫酸バリウム(BaSO4)が提示する。硫酸バリウムは化学的に不活性であり、かつ、典型的なポリマーとは全く反応しない。モース硬度3では、硫酸バリウムは比較的軟質であり、ルチル変態にある二酸化チタンのモース硬度は、6.5である。硫酸バリウムの屈折率は、n=1.64を有して比較的低い。
【0005】
特許出願DE 102005025719 A1は、分散剤でコートされている、0.5μmよりも小さい平均粒径の解凝集(desagglomeritieren)した硫酸バリウムのプラスチックの前駆体、例えばポリオールへの組み込みのための方法を開示する。この方法では、分散剤及び結晶化抑制剤を含有する解凝集された硫酸バリウムを含有するプラスチックが製造される。WO 2007-039625 A1は、少なくとも1の有機成分を透明なポリマー中に含有する硫酸バリウム又は炭酸カルシウム粒子の使用を記載する。有機的に被覆された、解凝集した硫酸バリウム粒子の使用の際の一般的な欠点は、この有機成分が、普遍的に使用可能でないことである。特に欠点であるのは、結晶化抑制剤の使用であり、というのは、これらは既に、硫酸バリウム粒子の製造(沈殿)の際に使用されるからである。この場合には、結晶化抑制剤の、プラスチック前駆体又はプラスチックとの相容性が、この生成物の使用可能性を強力に限定する。極端な場合には、これは、それぞれのプラスチックのために新規の生成物を開発し、かつ、製造しなくてはならないことを意味することができる。出願DE 102005025719 A1及びWO 2007039625 A1中に記載された解凝集された硫酸バリウム粒子の更なる欠点は、二次粒子の粒径分布にあり、これは、2μm未満、有利には<250nm、特に有利には<200nm、特に有利には<130nm、更に有利には<100nm、特に有利には<50nmの平均粒径を有しなくてはならない。このような微細な二次粒子の分布は、強力な粉塵傾向を生じ、これは、作業安全性の観点から特にナノスケールの粒子では回避すべきである。
【0006】
従来技術に記載されている、充填剤により変性された複合材のもう1つの更なる欠点は、多くの適用にとって不十分なその機械的特性である。
【0007】
本発明の課題は、先行技術の欠点を克服することである。
【0008】
本発明の特別な課題は、従来技術からの複合材と比較して顕著に改善された曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張強さ、亀裂抵抗、破壊靱性、衝撃強さ及び摩耗率を有する複合材を提供することである。
【0009】
意外にも前記課題は本発明による、請求項1に記載の特徴を有する複合材によって解決された。有利な実施態様は、従属請求項において特徴付けられている。
【0010】
意外にも、本発明により既に、350nmより小さい微結晶サイズd50(デバイ・シェラー法により測定)を有する、沈降した表面変性していない硫酸バリウムを使用する場合にも、ポリマー複合材の機械的及びトライボロジー的特性が著しく改善された。これは、表面変性されていない硫酸バリウム粒子が、粒子とマトリックスとの間の結合を構成できないだけに一層意外である。
【0011】
助剤とマトリックスとの間での化学的又は物理的な結合が、付加的に、機械的な及びトライボロジー的な、複合材の特性の改善に対して有利に作用することが公知である。従って、本発明により、このような結合を構成することができる、特別な実施態様に設定された硫酸バリウム粒子を提供でき、かつ、使用できる。このためには、本発明により表面変性された硫酸バリウムが設定される。粒子とマトリックスとの間での結合の狙いを定めた調節のために必要な表面変性は、本発明により、しかしながら、まず、硫酸バリウム粒子の製造(例えば、水性媒体中での沈殿)後に、付加的な方法工程において実施される。
【0012】
後からの表面変性の利点は、従って、可能な限り高い柔軟性にある。この方法様式は、一方では、この粒子形成が、硫酸バリウムの沈殿の際にいつものように実施できることであり、即ち、この粒子形成が、共沈殿により不利に影響されないことを可能にする。他方では、硫酸バリウム粒子の粒径及び粒子モルホロジーの制御がより容易であることである。
【0013】
本発明の場合に使用されるべき硫酸バリウムの沈殿は、先行技術から公知の全ての方法により実施することができる。本発明の場合に、ナノスケールの粒子を沈殿するための沈殿反応器中で、特に複数の反応体、例えば、次のものの水溶液、水酸化バリウム又は硫化バリウム又は塩化バリウム及び硫酸ナトリウム又は硫酸の超急速混合のための反応セル中で製造された硫酸バリウムが有利に使用される。本発明の場合に、有利に硫酸バリウムは沈殿の後に沈殿懸濁液の形で提供される。
【0014】
本発明により使用された硫酸バリウムは洗浄され、濃縮されるので、生じる廃水は有機的に負荷されていない。この硫酸バリウムは、濃縮された硫酸バリウム懸濁液の形で提供される。
【0015】
濃縮した硫酸バリウム懸濁液の乾燥を、噴霧乾燥、凍結乾燥及び/又は粉砕乾燥を用いて実施することができる。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。
【0016】
有利には、本発明による複合材の製造のためには、噴霧乾燥した硫酸バリウム粉末が使用される。これは、比較的粗な噴霧乾燥器−アグロメレートが、粉塵の乏しい、かつ、極めて良好に流動性の粉末を形成し、これは更に、意外にも、良好に分散可能である、という利点を有する。
【0017】
本発明による複合材は、ポリマーマトリックスと、0.1〜60質量%の、350nm未満の平均微結晶サイズd50(デバイ・シェラー法により測定)を有する沈降硫酸バリウム粒子を含有する。有利には、微結晶サイズd50は、200nm未満であり、特に有利には3〜50nmである。本発明により、硫酸バリウム粒子は、この際、表面変性されていても、表面変性されなくてもよい。
【0018】
さらに本発明による複合材は、当業者に公知の成分、例えば鉱物質充填剤、ガラス繊維、安定化剤、加工助剤((保護系とも呼ばれる)、例えば分散助剤、離型剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、顔料、難燃剤(例えば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)、加硫促進剤、加硫遅延剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、過酸化物及び/又は可塑剤を含有していてもよい。
【0019】
本発明による複合材は例えばさらに鉱物質充填剤及び/又はガラス繊維を80質量%まで、有利には10〜80質量%まで、安定化剤及び加工助剤(例えば分散助剤、離型剤、酸化防止剤など)を10質量%まで、有利には0.05〜10質量%、顔料を10質量%まで、及び難燃剤(例えば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)を40質量%まで含有していてもよい。
【0020】
エラストマー100phr、硫酸バリウム0.1〜300phr、加硫促進剤0〜10phr、加硫遅延剤0〜10phr、酸化亜鉛0〜20phr、ステアリン酸0〜10phr、硫黄及び/又は過酸化物0〜20phr、鉱物性充填剤0〜300phr、可塑剤0〜200phr、保護系0〜30phr(有利には酸化防止剤及びオゾン防止剤を含む)を含有する本発明による複合材が例示的に挙げられる。
【0021】
このポリマーマトリックスは本発明により、エラストマー又は熱硬化性樹脂からなることができる。エラストマーとは、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(CIIR、BIIR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレンブタジエンイソプレンゴム(SBIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素化したNBRゴム(HNBR)、ポリメチルシロキサン−ビニルゴム(VMQ)、アクリラートエチレンゴム(AEM)、アクリラートゴム(ACM)、フルオロゴム(FKM)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミド(TPA)ベースの、コポリエステル(TPC)ベースの、オレフィンベースの(TPO)、スチレンベースの(TPS)、ポリウレタンベースの(TPU)、架橋したゴムベースの(TPV)熱可塑性エラストマー(TPE)、又は、少なくとも2つのこれらのプラスチックの混合物であることができる。熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド成形材料、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタラート樹脂、シリコーン樹脂又は尿素樹脂が適している。熱硬化性樹脂のうち特に適しているのは、UP樹脂である。
【0022】
本発明により、超微細硫酸バリウム粒子を、表面変性無しに使用することができる。選択的に、硫酸バリウム粒子は、特別な一実施態様において、無機及び/又は有機表面変性を有することができる。
【0023】
超微細硫酸バリウムの無機表面変性化合物は、典型的には、アルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズ及び/又はジルコニウムの化合物又は塩から選択されている無機化合物少なくとも1からなる。例示的には、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムが挙げられる。
【0024】
超微細BaSO4の無機表面処理は、水性スラリー中で行われる。反応温度はこの場合、有利には50℃を越えるべきではない。懸濁液のpH値は、例えばNaOHを使用して9より高い範囲のpH値に調整する。次いで強力な撹拌下で、後処理薬品(無機化合物)、有利には水溶性の無機化合物、例えばアルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズ及び/又はジルコニウムの化合物又は塩を添加する。pH値及び後処理薬品の量は、本発明によれば、後処理薬品が完全に水中で溶解して存在しているように選択する。懸濁液を強力に、有利には少なくとも5分間攪拌することによって、後処理薬品は懸濁液中に均質に分散される。次の工程で、懸濁液のpH値を低下させる。この場合、pH値は徐々に、かつ強力な撹拌下で低下させることが有利であることが判明している。特に有利にはpH値を、10〜90分以内に、5〜8の値に低下させる。これに引き続き、本発明によれば、熟成時間、有利には約1時間の熟成時間が続く。この場合、温度は有利には50℃を超えるべきではない。次いで水性懸濁液を洗浄し、かつ乾燥させる。超微細の表面変性されたBaSO4を乾燥させるために、例えば噴霧乾燥、凍結乾燥及び/又は粉砕乾燥が考えられる。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。
【0025】
シラン化された、超微細な、表面変性されたBaSO4粒子の製造のためには、既に無機表面変性されたBaSO4粒子からなるBaSO4水性懸濁液が、少なくとも1のシランで付加的に変性される。シランとして、有利には、アルコキシアルキルシランが使用され、特に有利には、オクチルトリエトキシシラン、ガンマメタクリルプロピルトリメトキシシラン、ガンマグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及び/又は水素化したシラン、例えばガンマアミノプロピルシルセスキオキサン(GE社)から選択されるアルコキシアルキルシランが使用される。
【0026】
このためには、洗浄前又は後に、無機表面変性したBaSO4粒子からのBaSO4懸濁液を、強力に撹拌又は分散しながら、アルコキシアルキルシランと混合する。本発明により、成熟期間が引き続き、有利には10〜60分間、有利には最大40℃の温度の成熟期間が引き続く。引き続き、既に記載したように更に進行する。又は、アルコキシアルキルシランは、乾燥後にも、混合により、無機変性した粒子上に設けられることができる。
【0027】
有機表面変性剤として、本発明によれば、以下の化合物が特に適している:ポリエーテル、シラン、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリエチレングリコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリアルコール、有機ホスホン酸、チタナート、ジルコナート、アルキル−及び/又はアリールスルホナート、アルキル−及び/又はアリールスルファート、アルキル−及び/又はアリールリン酸エステル。
【0028】
有機表面変性処理した硫酸バリウムの製造は、自体公知の方法により実施することができる。本発明の場合に、前記硫酸バリウム懸濁液にバリウム成分が添加されるため、バリウム過剰量が生じる。バリウム成分として、全ての水溶性バリウム化合物、例えば硫化バリウム、塩化バリウム及び/又は水酸化バリウムを使用することができる。このバリウムイオンは、硫酸バリウム粒子の表面に吸着する。
【0029】
次いで、適当な有機化合物は、強力な撹拌下で及び/又は分散の間に、前記懸濁液に添加される。この有機化合物は、バリウムイオンと共に難溶性化合物を形成するように選択しなければならない。有機化合物を硫酸バリウム懸濁液に添加することにより、有機化合物は過剰量のバリウムイオンと共に、硫酸バリウムの表面に析出する。
【0030】
有機化合物として、アルキル−及び/又はアリールスルホナート、アルキル−及び/又はアリールスルファート、アルキル−及び/又はアリールリン酸エステルの群から選択される化合物、又は少なくとも2種のこれらの化合物からなる混合物が適しており、その際、前記アルキル基又はアリール基は官能基により置換されていることができる。有機化合物は、場合により官能基を有する脂肪酸であってもよい。このような化合物の少なくとも2種からなる混合物も使用することができる。
【0031】
例えば次のものを使用することができる:アルキルスルホン酸塩、ナトリウムポリビニルスルホナート、ナトリウム−N−アルキルベンゼンスルホナート、ナトリウムポリスチレンスルホナート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホナート、ナトリウムラウリルスルファート、ナトリウムセチルスルファート、ヒドロキシルアミンスルファート、トリエタノールアンモニアラウリルスルファート、リン酸モノエチルモノベンジルエステル、リチウムペルフロロオクタンスルホナート、12−ブロモ−1−ドデカンスルホン酸、ナトリウム−10−ヒドロキシ−1−デカンスルホナート、ナトリウム−カラゲナン、ナトリウム−10−メルカプト−1−セタンスルホナート、ナトリウム−16−セタン(1)スルファート、オレイルセチルアルコールスルファート、オレイン酸スルファート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸。
【0032】
有機変性された硫酸バリウムは、提供される水性ペーストの形で直接使用するか、又は使用の前に乾燥することができる。この乾燥は自体公知の方法により実施することができる。この乾燥のために、特に対流乾燥器、噴霧乾燥器、粉砕乾燥器、凍結乾燥器及び/又は脈動乾燥器の使用が提供される。しかしながら、他の乾燥器も本発明の場合に同様に使用可能である。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。有機変性された硫酸バリウムは、有利にd50=1nm〜100μm、特にd50=1nm〜1μm、特に有利にd50=5nm〜0.5μmの平均粒径を有し、かつ有機変性の前に有利に一次粒子サイズで分散して存在する。
【0033】
この一次粒子は、σg<1.5、有利にσg<1.4の幾何標準偏差を有する、d=1〜5000nm、有利にd=1〜1000nm、特に有利にd=5〜500nmの中央値を有する対数的粒度分布を有する。
【0034】
有機変性された硫酸バリウムは、有機変性の後に付加的に、官能性シラン誘導体又は官能性シロキサンで更に後処理することができる。例えば次のものを使用することができる:オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン。
【0035】
本発明によれば、有機表面変性された硫酸バリウム粒子は場合により、1もしくは複数の官能基、例えば1もしくは複数のヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリレート基及び/又はイソシアネート基、チオール基、アルキルチオカルボキシレート基、ジスルフィド基及び/又はポリスルフィド基を有する。
【0036】
表面変性剤は、化学的に及び/又は物理的に粒子表面に結合していてよい。化学結合は共有結合であっても、イオン結合であってもよい。物理的な結合として、双極子−双極子力又はファン・デル・ワールス力による結合が可能である。有利であるのは、共有結合を介した、又は物理的な双極子−双極子結合を介した表面変性剤の結合である。
【0037】
本発明によれば、表面変性された硫酸バリウム粒子は、表面変性剤によりポリマーマトリックスへ部分的に又は完全に化学結合及び/又は物理結合を開始する能力を有する。化学結合種として、共有結合及びイオン結合が適切である。物理的な結合種として、双極子−双極子力又はファン・デル・ワールス力による結合が適切である。
【0038】
有利には本発明による複合材を製造するためにまず、硫酸バリウムを有利に5〜80質量%含有するマスターバッチを製造することができる。次いでこのマスターバッチを、粗製ポリマーのみによって希釈するか、又は調製物の別の成分と混合し、かつ場合により再度分散させることができる。
【0039】
本発明による複合材の製造のためには、硫酸バリウムをまず有機物質、特にアミン、ポリオール、スチレン、ホルムアルデヒド及びその成形材料、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂中に組み込み、かつ、分散する方法も選択することができる。硫酸バリウムが添加されたこの有機物質は次いで、複合材を製造するための出発材料として使用することができる。
【0040】
マスターバッチ中での、もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散のために、慣用の分散法を、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、水中ミル(Tauchmuehle)、超音波又は混練機を使用する慣用の分散法を使用することができる。特に有利であるのは、水中ミル又はd<1.5mmのビーズ直径を有するビーズミルの使用である。
【0041】
本発明による複合材は意外にも、優れた機械的及びトライボロジー的特性を有している。充填剤を含有していないポリマーと比較して、本発明による複合材は、顕著に改善された曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張強さ、亀裂抵抗、破壊靱性、衝撃強さ、及び摩耗率を有する。
【0042】
改善された機械的特性により、より薄い部材が実現されることができる。これは、自動車並びに飛行機及び宇宙航空学の分野において質量削減に重大に寄与することができる。この適用には、例えば、熱硬化性成形材料からなる列車中の、しかしながら、飛行機中の、緩衝器又は内張りが属する。高い引張強さは、とりわけ、接着剤の場合に実現されなくてはならない。エラストマープラスチック、例えば、ポリマー、例えばスチレンブタジエンプラスチック(SBR)をベースとするエラストマープラスチックのための適用は、特に、封止材及び振動緩衝器である。
【0043】
本発明の対象は、具体的には次の通りである:
−少なくとも1のエラストマー及び/又は少なくとも1の熱硬化性樹脂及び硫酸バリウムであってその微結晶サイズd50が、350nm未満、有利には200nm未満であり、特に有利には3〜50nmである硫酸バリウムからなり、この硫酸バリウムが無機又は有機表面変性されていているか、又は、表面変性されていなくてもよい複合材(以下では硫酸バリウム複合材と呼ぶ)、
−熱硬化性樹脂として、少なくとも1の不飽和ポリエステル樹脂(UP)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド成形材料、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタラート樹脂、シリコーン樹脂及び/又は尿素樹脂、有利にはUP樹脂が使用される硫酸バリウム複合材、
−硫酸バリウム複合材、その際、エラストマーとして:天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(CIIR、BIIR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレンブタジエンイソプレンゴム(SBIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素化したNBRゴム(HNBR)、ポリメチルシロキサン−ビニルゴム(VMQ)、アクリラートエチレンゴム(AEM)、アクリラートゴム(ACM)、フルオロゴム(FKM)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミド(TPA)ベースの、コポリエステル(TPC)ベースの、オレフィンベースの(TPO)、スチレンベースの(TPS)、ポリウレタンベースの(TPU)、架橋したゴムベースの(TPV)熱可塑性エラストマー(TPE)から選択された少なくとも1のエラストマー又はエラストマーとして、少なくとも2種のこれらのエラストマーの混合物が使用される、
−熱硬化性樹脂20〜99.8質量%、硫酸バリウム0.1〜60質量%、鉱物質充填剤及び/又はガラス繊維0〜80質量%、加工助剤0.05〜10質量%、顔料0〜10質量%、及び水酸化アルミニウム0〜40質量%を含有する硫酸バリウム複合材、
−エラストマー100phr、硫酸バリウム0.1〜300phr、加硫促進剤0〜10phr、加硫遅延剤0〜10phr、酸化亜鉛0〜20phr、ステアリン酸0〜10phr、硫黄及び/又は過酸化物0〜20phr、鉱物性充填剤0〜300phr、可塑剤0〜200phr、保護系0〜30phr(有利には酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤を含む)を含有する硫酸バリウム複合材、
−複合材中の硫酸バリウムの割合が、0.1〜60質量%、有利には0.5〜30質量%、特に有利には1.0〜20質量%である硫酸バリウム複合材、
−硫酸バリウム複合材の製造方法:
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、まずマスターバッチを製造し、かつ粗製ポリマーで該マスターバッチを希釈することにより硫酸バリウム複合材が得られ、その際、該マスターバッチは、硫酸バリウム5〜80質量%、有利には硫酸バリウム15〜60質量%を含有する、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、まずマスターバッチを製造し、分散しながらこのマスターバッチを粗製ポリマーで希釈することにより硫酸バリウム複合材を得る、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、マスターバッチを調製物のその他の成分と、1工程もしくは複数の工程で混合し、かつ有利にはその後に分散を行う、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、硫酸バリウムをまず有機物質、特にアミン、ポリポール、スチレン、ホルムアルデヒド及びその成形材料、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂中に組み込み、分散し、その際、この硫酸バリウムは、無機又は有機表面変性されているか、又は、表面変性されないでいることができる。
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、硫酸バリウムが添加された有機物質を、複合材を製造するための出発材料として使用する、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、マスターバッチ中もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散は、慣用の分散法、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、水中ミル、超音波又は混練機を使用して実施する、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、硫酸バリウムの分散のために有利には水中ミル又はビーズミルを使用する、
−硫酸バリウム複合材の製造方法、その際、硫酸バリウムの分散のために有利にはビーズミルを使用し、その際、該ビーズは、有利には<1.5mm、特に有利には<1.0mm、とりわけ有利には<0.3mmの直径dを有する、
−改善された機械的特性及び改善されたトライボロジー的特性を有する硫酸バリウム複合材、
−強度及び靱性の改善を、曲げ試験又は引張試験において観察することができる硫酸バリウム複合材、
−改善された衝撃強さ及び/又は改善されたノッチ付衝撃強さを有する硫酸バリウム複合材、
−改善された摩滅抵抗性を有する、硫酸バリウム複合材、
−改善された耐引掻性を有する、硫酸バリウム複合材、
−改善された応力亀裂低抗性を有する、硫酸バリウム複合材、
−クリープ抵抗性の改善を観察することができる硫酸バリウム複合材、
−損失係数tanδにより特徴付けられる粘弾性挙動が改善される、硫酸バリウム複合材、
−自動車、航空機又は宇宙航空学の分野のための部材のため、特に質量削減のための、例えば緩衝器又は内張りの形態での、硫酸バリウム複合材の使用、
−特に封止材又は振動緩衝器の形態での硫酸バリウム複合材の使用。
【0044】
本発明を、次の実施例によって詳細に説明するが、しかし、本発明はこれに限定されるものではない:
実施例1:
出発材料として、26nmの微結晶サイズd50を有する沈降表面未変性硫酸バリウムを使用する。この表面変性していない硫酸バリウムをビーズミルを用いて、Hegmannくさび(Hegmann-Keil)で5μm未満の微細性が存在するまでUP樹脂Palapreg P17-02中に25質量%まで分散して混入する。
【0045】
第1表:UP樹脂ベースのガラス繊維強化プラスチックの調製物
【表1】

*ビーズミル後の完成した分散体として、これに応じて、33.67gを有する全体の正味重量として(Palapreg P17-02+硫酸バリウム)量りとる。
【0046】
この分散体を、表1に応じた材料の正味の重量により、更なる樹脂Palapreg H814-01 及び助剤と溶解機(溶解機ディスク:直径30mm)中で、1500rpmで、180mlのプラスチックカップ中で撹拌し、かつ、ゆっくりと、上昇性の回転数と共に、充填剤の必要な質量を添加する。充填剤添加の終了後に、3分間、6500rpmで分散させる。粗製のコンパウンドに、ガラス繊維の必要な量を添加し、これをスパチュラを用いて混ぜる。ニーダー中でこの混合物を更なる3分間50rpmで均質化する。この生じるコンパウンドを、80mm×15mm×4mmの12個の切欠を有する離型剤で含浸させた工具中で入念に広げて平らにする。工具の下方のプレスプレートとして、テフロンプレートを用い、上方のプレスプレートとして、研磨した、クロムめっきした金属プレートを用いる。150℃に加熱されたプレート中で、プレートは、紙の保護と一緒に、1分間150℃で熱処理され(プレスを通常どおりに閉めて)、この後に、このプレートを100barの圧力で150℃でプレス処理する。プレス工程後に、このプレートを冷却させ、試験体を工具から押し出した。
【0047】
試験体を、DIN EN ISO 178に応じた3点の曲げ試験において、及び、DIN EN ISO 179に応じた衝撃強さ試験において試験した。この結果は、表2中に示されている。
【0048】
本発明による複合材は、純粋な樹脂と比較して、著しく改善された特性を示す。
【0049】
第2表:製造された試験体の機械的特性
【表2】

【0050】
実施例2:
出発材料として、26nmのd50の微結晶サイズを有する表面変性した硫酸バリウムを使用する。この硫酸バリウム表面は、無機後処理されていて、かつ、シラン化されている。無機表面変性は、ケイ素−アルミニウム−酸素−化合物からなる。シラン化のためには、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用する。
【0051】
無機表面変性された硫酸バリウムは例えば以下の方法により製造されることができる:
平均一次粒径d5026nm(TEM試験による結果)を有する超微細BaSO4粒子の6.5質量%の水性懸濁液3.7kgを、撹拌下に40℃の温度に加熱した。10%の水酸化ナトリウム溶液で懸濁液のpH値を12に調節する。強力な撹拌下に、ケイ酸ナトリウムの水溶液(284gSiO2/L)14.7ml、硫酸アルミニウム溶液(75gAl23/L)51.9ml、及びアルミン酸ナトリウム溶液(275gAl23/L)9.7mlを、12.0のpH値を維持しながら、同時に懸濁液に添加する。該懸濁液を強力な撹拌下にさらに10分間均質化する。引き続き、pH値を、ゆっくり、有利には60分以内に、5%の硫酸の添加によって7.5のpH値に調整する。同様に温度40℃で10分間の熟成時間がこれに続く。次いで該懸濁液を導電率が100μS/cm未満になるまで洗浄し、かつ引き続き噴霧乾燥する。この洗浄された懸濁液を、脱イオン水を用いて、20質量%の固形物含有量に調節し、かつ、溶解機を用いて15分間後分散させる。この懸濁液を溶解機分散しながら、15gの3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランをゆっくりと添加する。この懸濁液を引き続き、更なる20分間溶解機を用いて分散し、次いで、凍結乾燥において乾燥させる。
【0052】
表面変性した硫酸バリウムをビーズミルを用いて、Hegmannくさび(Hegmann-Keil)で5μm未満の微細性が存在するまでUP樹脂Palapreg P17-02中に25質量%まで分散する。
【0053】
第3表:UP樹脂ベースのガラス繊維強化プラスチックの調製物
【表3】

*ビーズミル後の完成した分散体として、これに応じて、33.67gを有する全体の正味重量として(Palapreg P17-02+硫酸バリウム)量りとる。
【0054】
この分散体を、表3に応じた材料の正味の重量により、更なる樹脂Palapreg H814-01 及び助剤と溶解機(溶解機ディスク:直径30mm)中で、1500rpmで、180mlのプラスチックカップ中で撹拌し、かつ、ゆっくりと、上昇性の回転数と共に、充填剤の必要な質量を添加する。充填剤添加の終了後に、3分間、6500rpmで分散させる。粗製のコンパウンドに、ガラス繊維の必要な量を添加し、これをスパチュラを用いて混ぜる。ニーダー中でこの混合物を更なる3分間50rpmで均質化する。この生じるコンパウンドを、80mm×15mm×4mmの12個の切欠を有する離型剤で含浸させた工具中で入念に広げて平らにする。工具の下方のプレスプレートとして、テフロンプレートを用い、上方のプレスプレートとして、研磨した、クロムめっきした金属プレートを用いる。150℃に加熱されたプレート中で、プレートは、紙の保護と一緒に、1分間150℃で熱処理され(プレスを通常どおりに閉めて)、この後に、このプレートを100barの圧力で150℃でプレス処理する。プレス工程後に、このプレートを冷却させ、試験体を工具から押し出した。
【0055】
試験体を、DIN EN ISO 178に応じた3点の曲げ試験において、及び、DIN EN ISO 179に応じた衝撃強さ試験において試験した。この結果は、表4中に示されている。
【0056】
本発明による複合材は、純粋な樹脂と比較して、著しく改善された特性を示す。
【0057】
第4表:製造された試験体の機械的特性
【表4】

【0058】
実施例3:
出発材料として、20nmのd50の微結晶サイズを有する有機表面変性した硫酸バリウムを使用する。有機表面変性として、アクリラート官能性を有するオレイルセチルアルコールスルファート−Na−塩を使用した。
【0059】
有機表面変性された硫酸バリウムは例えば以下の方法により製造されることができる:
撹拌容器中で、硫酸バリウム500gをVE水(完全脱塩水)0.5L中で室温で懸濁させる。次いで、0.1モーラーの水酸化バリウム溶液で、pH値11が達成されるようにバリウム過剰量を調節する。強力に撹拌した硫酸バリウム懸濁液に、アクリラート官能性を有するオレイルセチルアルコール硫酸ナトリウム塩25gをゆっくりと導入する。この懸濁液を引き続き更に30分間撹拌する。次いで、0.1モーラーの硫酸でpH値を6.0にゆっくりと調節し、更に15分間撹拌する。生じる生成物を引き続き105℃で乾燥させる。
【0060】
有機表面変性した硫酸バリウムをビーズミルを用いて、Hegmannくさび(Hegmann-Keil)で5μm未満の微細性が存在するまでUP樹脂Palapreg P17-02中に25質量%まで分散して混入する。
【0061】
第5表:UP樹脂ベースのガラス繊維強化プラスチックの調製物
【表5】

*ビーズミル後の完成した分散体として、これに応じて、33.57gを有する全体の正味重量として(Palapreg P17-02+硫酸バリウム)量りとる。
【0062】
この分散体を、表1中の材料の正味の重量により、更なる樹脂Palapreg H814-01 及び助剤と溶解機(溶解機ディスク:直径30mm)中で、1500rpmである。180mlのプラスチックカップ中で撹拌し、かつ、ゆっくりと、上昇する回転数と共に、必要な質量の充填剤を添加する。充填剤添加の終了後に、3分間、6500rpmで分散させる。粗製のコンパウンドに必要な量のガラス繊維を添加し、これはスパチュラを用いて混ぜる。ニーダー中でこの混合物を更なる3分間50rpmで均質化する。この生じるコンパウンドを、80mm×15mm×4mmの12個の切欠を有する離型剤で含浸させた工具中で入念に広げて平らにする。工具の下方のプレスプレートとして、テフロンプレートを用い、上方のプレスプレートとして、研磨した、クロムめっきした金属プレートを用いる。150℃に加熱されたプレート中で、プレートは、紙の保護と一緒に、1分間150℃で熱処理され(プレスを通常どおりに閉めて)、この後に、このプレートを100barの圧力で150℃でプレス処理する。プレス工程後に、このプレートを冷却させ、試験体を工具から押し出した。
【0063】
試験体を、DIN EN ISO 178に応じた3点の曲げ試験において、及び、DIN EN ISO 179に応じた衝撃強さ試験において試験した。この結果は、表6中に示されている。本発明による複合材は、純粋な樹脂と比較して、著しく改善された特性を示す。
【0064】
第6表:製造された試験体の機械的特性
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中の充填剤及び顔料からなる複合材において、硫酸バリウム、少なくとも1エラストマー及び/又は少なくとも1の熱硬化性樹脂を含有し、その際、硫酸バリウムの微結晶サイズd50は、350nm未満、有利には200nm未満、特に有利には3〜50nmであり、かつ硫酸バリウムは無機表面変性又は有機表面変性されているか、表面変性されていなくてもよいことを特徴とする、ポリマーマトリックス中の充填剤及び顔料からなる複合材。
【請求項2】
熱硬化性樹脂として、少なくとも1の不飽和ポリエステル樹脂(UP)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド成形材料、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタラート樹脂、シリコーン樹脂及び/又は尿素樹脂、有利にはUP樹脂が選択されることを特徴とする、請求項1記載の複合材。
【請求項3】
エラストマーとして、以下の少なくとも1のエラストマー:天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(CIIR、BIIR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレンブタジエンイソプレンゴム(SBIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化したポリエチレンゴム(CSM)、水素化したNBRゴム(HNBR)、ポリメチルシロキサン−ビニルゴム(VMQ)、アクリラートエチレンゴム(AEM)、アクリラートゴム(ACM)、フルオロゴム(FKM)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミド(TPA)ベースの、コポリエステル(TPC)ベースの、オレフィンベースの(TPO)、スチレンベースの(TPS)、ポリウレタンベースの(TPU)、架橋したゴムベースの(TPV)熱可塑性エラストマー(TPE)から選択され、又は、エラストマーとして少なくとも2つのこれらのエラストマーの混合物が選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の複合材。
【請求項4】
複合材が、熱硬化性樹脂20〜99.8質量%、硫酸バリウム0〜60質量%、鉱物質充填剤及び/又はガラス繊維0〜80質量%、加工助剤0.05〜10質量%、顔料0〜10質量%、及び水酸化アルミニウム0〜40質量%を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項5】
複合材が、エラストマー100phr、硫酸バリウム0.1〜300phr、加硫促進剤0〜10phr、加硫遅延剤0〜10phr、酸化亜鉛0〜20phr、ステアリン酸0〜10phr、硫黄及び/又は過酸化物0〜20phr、鉱物性充填剤0〜300phr、可塑剤0〜200phr、保護系0〜30phr(有利には酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤を含む)を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項6】
複合材中の硫酸バリウムの割合が、0.1〜60質量%、有利には0.5〜30質量%、特に有利には1.0〜20質量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項7】
硫酸バリウムが少なくとも1の無機化合物により表面変性されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項8】
BaSO4に対する無機化合物の質量割合が、0.1〜50.0質量%、有利には1.0〜10.0質量%であることを特徴とする、請求項7記載の複合材。
【請求項9】
無機化合物が、アルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズ及び/又はジルコニウムの化合物又は塩から選択されていることを特徴とする、請求項7又は8記載の複合材。
【請求項10】
BaSO4粒子が、無機化合物からの表面変性に付加的に、少なくとも1のシラン又は複数のシランで変性されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項の複合材。
【請求項11】
シランがアルコキシアルキルシランであることを特徴とする、請求項10記載の複合材。
【請求項12】
アルコキシアルキルシランが、オクチルトリエトキシシラン、ガンマメタクリルプロピルトリメトキシシラン、ガンマグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマイソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及び/又は加水分解されたシラン、例えばガンマアミノプロピルシルセスキオキサン(GE社)から選択されていることを特徴とする、請求項11記載の複合材。
【請求項13】
BaSO4粒子が、0.1μm以下、有利には0.05〜0.005μmの一次粒子の粒径d50を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項14】
硫酸バリウムが少なくとも1の有機化合物により表面変性されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項15】
前記有機化合物は、アルキル−及び/又はアリールスルホナート、アルキル−及び/又はアリールスルファート、アルキル−及び/又はアリールリン酸エステル(その際、このアルキル残基又はアリール残基は官能基により置換されていてもよい)及び/又は、官能基を有していてよい脂肪酸、又は少なくとも2種のこれらの化合物からなる混合物の群から選択されていることを特徴とする、請求項14記載の複合材。
【請求項16】
有機化合物が、アルキルスルホン酸塩、ナトリウムポリビニルスルホナート、ナトリウム−N−アルキルベンゼンスルホナート、ナトリウムポリスチレンスルホナート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホナート、ナトリウムラウリルスルファート、ナトリウムセチルスルファート、ヒドロキシルアミンスルファート、トリエタノールアンモニアラウリルスルファート、リン酸モノエチルモノベンジルエステル、リチウムペルフロロオクタンスルホナート、12−ブロモ−1−ドデカンスルホン酸、ナトリウム−10−ヒドロキシ−1−デカンスルホナート、ナトリウム−カラゲナン、ナトリウム−10−メルカプト−1−セタンスルホナート、ナトリウム−16−セタン(1)スルファート、オレイルセチルアルコールスルファート、オレイン酸スルファート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸又は少なくとも2種のこれらの化合物からなる混合物から選択されていることを特徴とする、請求項14又は15記載の複合材。
【請求項17】
硫酸バリウムは、d50=1nm〜100μm、有利にd50=1nm〜1μm、特に有利にd50=5nm〜0.5μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項18】
硫酸バリウムの一次粒子は、d=1〜5000nm、有利にd=1〜1000nm、特に有利にd=5〜500nmの中央値を有する対数的粒度分布及びσg<1.5、有利にσg<1.4の幾何標準偏差を有する対数的粒度分布を有することを特徴とする、請求項14から17までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項19】
硫酸バリウムが官能性シラン誘導体及び/又は官能性シロキサンで後処理されていて、その際、この官能性シラン誘導体及び/又は官能性シロキサンが有利には、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又は少なくとも2種のこれらの化合物からなる混合物から選択されていることを特徴とする、請求項14から18までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項20】
硫酸バリウム及び粗製ポリマーの部分からマスターバッチを製造し、かつ該マスターバッチを粗製ポリマーにより、分散下で希釈することにより複合材を得ることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の複合材の製造方法。
【請求項21】
硫酸バリウムと粗製ポリマーの部分からマスターバッチを製造し、かつ該マスターバッチを粗製ポリマーで希釈することにより複合材が得られ、その際、該マスターバッチは、硫酸バリウムを5〜80質量%、有利には硫酸バリウムを15〜60質量%含有することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
マスターバッチを調製物のその他の成分と、1工程もしくは複数の工程で混合し、かつ有利にはその後に分散を行うことを特徴とする、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
硫酸バリウムをまず、有機物質中に、特にアミン、ポリオール、スチレン、ホルムアルデヒド、及びその成形材料、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂中に混入し、かつ分散させることを特徴とする、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
硫酸バリウムが添加された有機物質を、複合材の製造のための出発材料として使用することを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
マスターバッチ中での、もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散を、慣用の分散法を使用して、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、水中ミル、超音波又は混練機を使用して実施することを特徴とする、請求項20から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
硫酸バリウムの分散を、有利には水中ミル又はビーズミル中で実施することを特徴とする、請求項20から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
硫酸バリウムの分散を、ビーズミル中で実施し、その際、1.5mm未満、特に有利には1.0mm未満、とりわけ有利には0.3mm未満の直径dを有するビーズを使用することを特徴とする、請求項20から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
自動車、航空機又は宇宙航空学の分野のための部材のため、特に質量削減のための、例えば緩衝器又は内張りの形態での請求項1から19までのいずれか1項記載の複合材の使用。
【請求項29】
封止材又は振動緩衝器のための、請求項1から19までのいずれか1項記載の複合材の使用。

【公表番号】特表2010−501709(P2010−501709A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526074(P2009−526074)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058893
【国際公開番号】WO2008/023075
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501082864)ザッハトレーベン ヒェミー ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】Sachtleben Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Rudolf−Sachtleben−Strasse 4, 47198 Duisburg, Germany
【Fターム(参考)】