説明

硫酸リサイクル型洗浄システムおよび硫酸リサイクル型過硫酸供給装置

【課題】 過硫酸を用いた洗浄システムにおいて、過硫酸濃度を十分に高くして洗浄効果を高めるとともに、洗浄の継続が可能な洗浄システムを得る。洗浄装置に過硫酸を供給する供給装置を提供する。
【解決手段】 電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応槽10と、洗浄槽1と電解反応槽10との間で、過硫酸溶液を循環させる循環ライン4、5、6を備える。該構成により供給装置が得られる。該構成と、過硫酸溶液2を洗浄液として被洗浄材30を洗浄する洗浄槽1とにより洗浄システムが構築される。硫酸溶液を繰り返し利用して過硫酸溶液を電解反応装置によってオンサイトで再生して洗浄に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどに付着した汚染物などを剥離効果が高い過硫酸溶液で洗浄剥離する際に、硫酸溶液を繰り返し利用しつつ過硫酸溶液を再生して洗浄に供する硫酸リサイクル型洗浄システムおよび該洗浄装置に過硫酸を供給する硫酸リサイクル型過硫酸供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄技術は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスであり、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されて過硫酸が生成される。過硫酸は自己分解する際に強い酸化力を発するため洗浄能力が高く、上記ウエハなどの洗浄に役立つことが知られている。
また、過硫酸を生成する方法として、上記方法の他に、硫酸イオンを含む水溶液を電解槽で電解して過硫酸溶解水を得て洗浄に供する方法も知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、SPMでは、過酸化水素水により発生する過硫酸が自己分解し酸化力が低下すると分解する分を補うため過酸化水素水の補給を繰り返すことが必要である。そして硫酸濃度がある濃度を下回ると新しい高濃度硫酸と交換する。しかし、上記方法では、過酸化水素水中の水で過硫酸溶液が希釈されるため、液組成を一定に維持することが難しく、さらには所定時間もしくは処理バッチ数毎に液を廃棄して、更新することが必要である。このため洗浄効果が一定しない他、多量の薬品を保管しなければならないという問題がある。一方、SOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより液更新サイクルを長くできるものの、洗浄効果においてはSPMより劣る。
【0005】
また、SPMでは、1回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生できる過硫酸量は少なく、限度がある。また、SOM法ではオゾン吹き込み量に対する過硫酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成する過硫酸の濃度に限界があり、洗浄効果にも限界があるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、硫酸を繰り返し使用しつつ硫酸の水溶液から電気化学的作用により過硫酸イオンを生成することで過硫酸イオンをリサイクルして硫酸使用量を大幅に低減できる硫酸リサイクル型洗浄システムおよび硫酸リサイクル型過硫酸供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムのうち、請求項1記載の発明は、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、前記洗浄装置と電解反応装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1記載の発明において、前記電解反応装置で電解される溶液の温度を、前記洗浄液の温度よりも低く保持することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記電解反応装置で電解される溶液の温度を10℃から90℃の範囲内とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記洗浄液を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置で電解される溶液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記循環ラインにおいて、前記電解反応装置からの相対的に低温な過硫酸溶液の送り液と、前記洗浄装置からの相対的に高温な過硫酸溶液の戻り液との間で熱交換を行う熱交換手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記循環ラインにおける流路が石英またはテトラフルオロエチレン製からなることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記洗浄によって被洗浄材から除去された除去物を分解する分解部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記電解装置で電解される溶液は、硫酸濃度が8Mから18Mであることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、電解反応装置に備える導電性ダイヤモンド電極が、基板上に積層させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の発明において、前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする。
【0019】
請求項13記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の発明において、前記洗浄装置における洗浄による有機汚染物の全有機性炭素濃度(TOC)生成速度と、前記電解装置における過硫酸生成速度との比(過硫酸生成速度〔g/l/hr〕/(洗浄槽内TOC生成速度〔g/l/hr〕)が、10から500となるように電解制御されることを特徴とする。
【0020】
請求項14記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の発明において、前記過硫酸溶液に超純水または過酸化水素水を補給する超純水または過酸化水素水補給ラインを有することを特徴とする。
【0021】
請求項15記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項14記載の発明において、前記超純水または過酸化水素水補給ラインは、洗浄装置の洗浄槽底部側で超純水または過酸化水素水を注入するように設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項16記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項14または15に記載の発明において、前記溶液の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定手段を有し、該硫酸濃度測定手段による測定濃度に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする。
【0023】
請求項17記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項16記載の発明において、前記濃度測定手段による測定濃度が、予め定めた設定濃度よりも0.2M以上高い場合、前記超純水または過酸化水素水補給ラインによる超純水または過酸化水素水の注入を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項18記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項16または17記載の発明において、前記硫酸濃度測定手段は、硫酸濃度を吸光度法で測定するものであることを特徴とする。
【0025】
請求項19記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項14〜18のいずれかに記載の発明において、前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液量を測定する液量測定手段を有し、該液量測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする。
【0026】
請求項20記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項14〜18のいずれかに記載の発明において、前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液の液面高さを測定する液面高さ測定手段を有し、該液面高さ測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする。
【0027】
請求項21記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項14〜18のいずれかに記載の発明において、前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液の質量を測定する液質量測定手段を有し、該液質量測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする。
【0028】
請求項22記載の硫酸リサイクル型洗浄システムの発明は、請求項21記載の発明において、前記液質量測定手段は、洗浄槽とともに洗浄液の質量を測定するものであることを特徴とする。
【0029】
請求項23記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、該電解反応装置と過硫酸を用いる洗浄装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする。
【0030】
請求項24記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23記載の発明において、前記循環ラインにおける洗浄装置から電解反応装置への戻り液を10〜90℃の範囲に冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項25記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23または24に記載の発明において、前記循環ラインにおける電解反応装置から洗浄装置への送り液を100〜170℃の範囲に加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0032】
請求項26記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23記載の発明において、前記循環ラインにおける電解反応装置から洗浄装置への送り液と洗浄装置から電解反応装置への戻り液との間で熱交換を行う熱交換手段を備えることを特徴とする。
【0033】
請求項27記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23〜26のいずれかに記載の発明において、前記溶液に含まれる硫酸イオン濃度を8M以上とすることを特徴とする。
【0034】
請求項28記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23〜27のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極に導電性ダイヤモンド電極を使用することを特徴とする。
【0035】
請求項29記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の発明は、請求項23〜27のいずれかに記載の発明において、前記循環ラインにおける流路がテトラフルオロエチレン製からなることを特徴とする。
【0036】
すなわち本発明によれば、洗浄液中の過硫酸イオンが自己分解して酸化力を発し、この酸化力によって被洗浄材の汚染物などが効果的に剥離洗浄される。そして洗浄液では、溶液中の過硫酸イオンが自己分解することにより過硫酸濃度が次第に低下する。この過硫酸溶液は、循環ラインを通して電解反応装置に送液される。電解反応装置では、硫酸イオンを含む溶液に陽極及び陰極を浸漬し、電極間に電流を流し電解することによって硫酸イオンが酸化されて過硫酸イオンが生成され、過硫酸濃度が十分に高い過硫酸溶液に再生される。再生された過硫酸溶液は、循環ラインを通して洗浄装置に送液され、上記と同様に被洗浄材を高濃度の過硫酸によって効果的に剥離洗浄する。過硫酸は、洗浄装置と電解反応装置との間で繰り返し循環することで、過硫酸組成を維持した状態で効果的な洗浄を継続することができる。なお、立ち上げ時には、硫酸を用意し、これを電解反応装置で過硫酸溶液として洗浄装置に送液するようにして過硫酸溶液の循環を開始することもできる。
【0037】
なお、過硫酸は、温度が高い程、自己分解速度が速くなり高い剥離洗浄作用が得られる。130℃といった高温では半減期が5分程度と自己分解速度が非常に速くなる。一方、電解反応装置では、溶液温度が低いほど過硫酸の生成効率が良く、また電極の損耗も小さくなる。本発明では、洗浄装置と電解反応装置とを分離することから、電解反応装置で電解される溶液の温度を、洗浄液の温度よりも低く保持することが可能になり、洗浄装置および電解反応装置での効率を上げることができる。
【0038】
洗浄液は、適宜の加熱手段により加熱して適温にすることができる。加熱手段としてはヒータや熱水、蒸気などとの熱交換を利用した加熱器などが例示されるが本発明としては特定のものに限定されない。洗浄液の適温としては、例えば100℃〜170℃を示すことができる。該温度範囲を下回ると、過硫酸による剥離洗浄効果が低下する。一方、170℃を超えると、過硫酸の自己分解速度が極めて大きくなり、レジストを十分に酸化できないので、洗浄液の適温を上記範囲に定めた。
【0039】
また、電解反応装置で電解される溶液は、適宜の冷却手段で冷却して適温にすることができる。冷却手段としては空冷、水冷などの冷却器を例示することができる。電解される溶液としての適温は、10〜90℃の範囲を示すことができる。上記温度範囲を超えると、電解効率が低下し、電極の損耗も大きくなる。一方、上記温度を下回ると、洗浄槽内温度130℃まで加熱するための熱エネルギーが莫大になるとともに、熱交換のための配管経路が大幅に長くなり実用的でない。なお、同様の理由により、下限を40℃、上限を80℃とするのが一層望ましい。
上記した加熱手段や冷却手段は、洗浄装置や電解反応装置に付設してもよく、また、循環ラインに設けても良い。さらに洗浄装置や電解反応装置に別ラインを設けて溶液の加熱や冷却を行うようにしてもよい。
【0040】
また、電解される溶液と洗浄液とされる溶液との温度調整は、過硫酸溶液を循環ラインで一方の装置から他方の装置に送液する際に互いに熱交換することにより行うことができる。すなわち、相対的に温度が高くされ、洗浄装置から電解反応装置に送液する過硫酸溶液(戻り液)と、相対的に温度が低くされ、電解反応装置から洗浄装置に送液する過硫酸溶液(送り液)とを互いに熱交換すると、温度の高い戻り液は、熱交換によって熱が奪われることで温度が低下し、電解反応装置の電解用の溶液として望ましい温度調整がなされる。また、温度の低い送り液は熱交換によって熱が与えられることで温度が上昇し、洗浄液として望ましい温度調整がなされる。熱交換は、熱交換器等の適宜の熱交換手段により行うことができる。熱交換器の流路を含めて循環ラインにおける流路材料には、過硫酸による損傷を受けにくい石英やテトラフルオロエチレンが望ましい。
なお、上記熱交換に加えて洗浄液を加熱する手段や電解される溶液を冷却する手段を付設することも可能である。
【0041】
また、洗浄によって過硫酸溶液に含まれるに至ったレジストなどの有機物は、循環ライン系または循環ライン系外に設けた分解部によって分解処理してもよい。該分解部としては、加熱分解装置、電解反応装置などを例示することができる。
【0042】
上記システムでは、電解反応装置で電解される溶液は、硫酸イオンを含むものであり、電解反応装置における過硫酸イオンの生成効率は、硫酸濃度に大きく影響される。具体的には硫酸濃度が低いほど過硫酸発生効率は大きくなる。一方で、硫酸濃度を低くすると、レジスト等の有機化合物の溶解度が低くなり、被洗浄材から剥離しにくくなる。これらの観点から、システムに用いられる溶液の硫酸濃度は、例えば8M〜18Mの範囲が望ましい。同様の理由で、下限は12M、上限は17Mであるのが一層望ましい。
【0043】
しかし、硫酸溶液中の水分が僅かずつではあるが電気分解されるため減少する。また、蒸発によっても水分は減少する。このため水分を補うため、水分が減った際に超純水または過酸化水素水を添加することが望ましい。該超純水または過酸化水素水は、前記過硫酸溶液に超純水または過酸化水素水補給ラインを設けることにより補給することができる。この際に、硫酸溶液の表面上に水を注ぐと高熱を発し、添加した水の一部が表面で蒸発や液の飛散が起こり、超純水または過酸化水素水が無駄になるとともに作業者に対する安全上問題である。このため、前記超純水または過酸化水素水補給ラインは、洗浄装置の洗浄槽底部側で超純水または過酸化水素水を注入するように設けるのが望ましい。
【0044】
また、作業者が感覚的に水分が減少したと感じた時に水分を補給すると、硫酸濃度がかなりの範囲で変動し、それに伴いレジスト残渣等有機物の剥離・除去性能が変化する。そこで、循環ラインを通して循環する溶液の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定手段を設け、該硫酸濃度測定手段による測定濃度に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を行うことを可能にしてもよい。測定結果は、適宜の表示装置などに表示して、操作者が測定内容を確認して超純水または過酸化水素水補給ラインの補給を操作してもよく、また、測定結果に基づいて超純水または過酸化水素水補給ラインに設けた制御弁などを制御して自動的に超純水または過酸化水素水補給ラインの補給動作を行うようにすることもできる。
硫酸濃度測定手段は、硫酸濃度を測定できるものであればよく、本発明として特定のものに限定されないが、即座に硫酸濃度を測定できる吸光度法などを用いたものが好適である。
なお、予め溶液の維持すべき硫酸濃度を設定しておき、測定濃度と設定濃度とを比較して超純水または過酸化水素水補給ラインの補給動作を制御しても良い。その場合、測定濃度が設定濃度よりも0.2M以上高い場合に、前記超純水または過酸化水素水補給ラインによる超純水または過酸化水素水の注入を行うようにするのが望ましい。これは、適切な濃度に対し0.2M以上高くなると、電解反応槽における過硫酸生成効率の低下が顕著になるためであり、0.2M未満であれば、過硫酸生成効率に対する影響は小さい。
【0045】
さらに、超純水または過酸化水素水補給ラインでの補給動作を行う基準として、硫酸濃度の他に、洗浄装置の洗浄槽における洗浄液量を用いることができる。洗浄液量が減少することで硫酸濃度が上昇していることが推定される。洗浄システムでは、洗浄および電解操作中には、循環ラインおよび電解反応槽における溶液量は略一定であり、溶液量の変化は、洗浄槽における洗浄液の変化として現れる。洗浄液量は、洗浄槽における洗浄液の液面高さや洗浄液の質量により知ることができる。これらの値は液量測定手段により測定され、その測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することができる。液量測定手段は、測定する対象によって、例えば液面高さを測定する場合に液面高さ測定手段を用いることができ、液質量を測定する場合は、液質量測定手段を用いることができる。また、洗浄槽における空き空間容量を測定することで洗浄液量を知ることもできる。
これらの洗浄液量測定手段は、測定対象の測定を行えるものであればよく、本発明としては特定の構成に限定されず、各種の既知のセンサなどを用いることができる。これら測定の際にも基準となる液面高さや液質量を設定しておき、この設定値と測定値とを比較して、その乖離量に従って超純水または過酸化水素水補給ラインによる補給動作(オンオフ、注入量調整など)を制御することができる。
【0046】
電解反応装置では、陽極と陰極とを対にして電解がなされる。これら電極の材質は、本発明としては特定のものに限定はしない。しかし、電極として一般に広く利用されている白金を本発明の電解反応装置の陽極として使用した場合、過硫酸イオンを効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。これに対し、ダイヤモンド電極は、過硫酸イオンの生成を効率よく行えるとともに、電極の損耗が小さい。したがって、電解反応装置の電極のうち、少なくとも、硫酸イオンの生成がなされる陽極をダイヤモンド電極で構成するのが望ましく、陽極、陰極ともにダイヤモンド電極で構成するのが一層望ましい。
【0047】
導電性ダイヤモンド電極は、シリコンウエハ等の半導体材料を基盤とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させた後に、ウエハを溶解させたものや、基盤を用いない条件で板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。また、Nb,W,Tiなどの金属基板上に積層したものも利用できるが、電流密度を大きくした場合には、ダイヤモンド膜が基板から剥離するという問題が生じやすい。
【0048】
導電性ダイヤモンド電極によって、硫酸イオンから過硫酸イオンを製造することは、電流密度を0.2A/cm程度にした場合については報告されている(Ch.Comninellis et al.,Electrochemical and Solid−State Letters,Vol.3(2)77−79(2000),特表2003−511555号)。しかし、金属基板にダイヤモンド薄膜を担持した電極ではダイヤモンド膜の剥離が生じて、作用効果が短期間で消失するという問題がある。よって、基板上に析出させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極が望ましい。
【0049】
なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の合成の際にボロン、窒素などの所定量をドープして導電性を付与したものであり、通常はボロンドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。
本発明において、導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。すなわち、本発明としては、電極の形状や数は特に限定されるものではない。
【0050】
この導電性ダイヤモンド電極を用いて行う電解処理は、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100,000A/mとし、硫酸イオンを含む溶液をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を1〜10,000m/hrで接触処理させることが望ましい。
洗浄装置は枚葉式、バッチ式のいずれにも対応できるが、該洗浄装置では電子基板の洗浄時にレジスト等汚染物の剥離溶解に伴い洗浄液中に溶解性のTOCが発生する。このとき、洗浄液のTOCを効率良く除去し、電子基板材料への有機物の再付着を防ぐ必要があるため洗浄装置でレジストの剥離溶解に伴って生成するTOC生成速度〔g/l/hr〕に対して、電解反応装置での過硫酸生成速度〔g/l/hr〕が10倍から500倍となるように電解条件を設定するのが望ましい。これにより過硫酸の消費と生成がバランスし、効率的な洗浄と効率的な電解処理がなされる。なお、同様の理由で下限を20、上限を300とするのが望ましい。
【0051】
なお、本発明の洗浄システムでは、種々の被洗浄材を対象にして洗浄処理を行うことができるが、シリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を対象にして洗浄処理をする用途に好適である。さらに具体的には、半導体基板上に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離プロセスに利用することができる。また、半導体基板上に付着した微粒子、金属などの異物除去プロセスに利用することができる。
なお、従来、半導体基板の処理プロセスなどでは、洗浄処理に先立って、通常、前処理工程としてドライエッチングやアッシングプロセスを利用して有機物であるレジストを予め酸化して灰化する工程が組み込まれている。この工程は、装置コストや処理コストを高価にするという問題を有している。ところで、本発明のシステムでは、優れた洗浄効果が得られることから、上記したドライエッチングやアッシングプロセスなどの前処理工程を組み込むことなく洗浄処理を行った場合にも、十分にレジストなどの除去効果が得られる。すなわち、本発明は、これらの前処理工程を省略したプロセスを確立することも可能にする。
【発明の効果】
【0052】
以上説明したように、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムによれば、過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、前記洗浄装置と電解反応装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備えるので、硫酸溶液を繰り返し利用するとともに剥離効果を高めるための過硫酸溶液を電解反応装置によってオンサイトで再生して洗浄に使用することができる。
【0053】
また、本発明の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置によれば、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、該電解反応装置と過硫酸を用いる洗浄装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えるので、外部からの薬剤使用などを必要することなく、硫酸溶液を繰り返し利用して過硫酸溶液を電解反応装置によってオンサイトで再生して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
(実施形態1−1)
以下に、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの一実施形態を図1に基づいて説明する。
本発明の洗浄装置に相当する洗浄槽1には、本発明の電解反応装置に相当する電解反応槽10が戻り管4と送り管5とによって接続されている。戻り管4と送り管5とは、それぞれ少なくとも内面がテトラフルオロエチレンで構成されており、戻り管4には過硫酸溶液2を送液するための送液ポンプ6が介設されている。上記戻り管4、送り管5、送液ポンプ6によって、本願発明の循環ラインが構成されている。また、戻り管4と送り管5との間には、本発明の熱交換手段に相当する熱交換器7が介設されており、該熱交換器7によって戻り管4を流れる溶液と送り管5を流れる溶液とが互いに熱交換可能になっている。なお、熱交換器7内の流路(図示しない)も少なくとも内面がテトラフルオロエチレンで構成されている。上記のように戻り管4、送り管5、熱交換器7の流路を過硫酸に対し耐性のあるテトラフルオロエチレンなどで構成することで、過硫酸による損耗を回避することができる。なお、この実施形態では、戻り管4と送り管5との間で溶液の熱交換を行うものとしているが、本発明としては、戻り管4に溶液を好適には10〜90℃に冷却する冷却手段を設け、送り管5に溶液を好適には100〜170℃に加熱する加熱手段を設けたものとすることも可能である。
【0055】
上記電解反応槽10には、陽極11および陰極12が配置され、さらに陽極11と、陰極12との間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13…13が配置されている。なお、本発明としてはバイポーラ式ではなく、陽極と陰極のみを電極として備えるものであってもよい。上記陽極11および陰極12には、直流電源14が接続されており、これにより電解反応槽10での直流電解が可能になっている。
【0056】
この実施形態では、上記電極11、12、13はダイヤモンド電極によって構成されている。該ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。また、薄膜形成後に基板を取り去って自立型としたものであってもよい。
【0057】
また上記洗浄槽1は、上記循環ラインとは別系統で、熱分解用循環配管22、24によって、本発明の分解部に相当する加熱分解槽20と接続されている。該熱分解用循環配管22には送液ポンプ23が介設されており、熱分解用循環配管22、24と送液ポンプ23によって洗浄槽1と加熱分解槽20との間で洗浄液の循環が可能になっている。また、加熱分解槽20には、槽内の液を加熱するためのヒータ21が設けられており、該ヒータ21は、本発明の加熱手段としての機能も有している。
【0058】
次に、上記構成よりなる硫酸リサイクル型洗浄システムの作用について説明する。
上記洗浄槽1内に、硫酸濃度が10〜18Mの硫酸を収容し、これに超純水を体積比で5:1となるように混合して硫酸溶液とする。これを送液ポンプ6によって順次、電解反応槽10に送液する。電解反応槽10では、陽極11および陰極12に直流電源14によって通電すると、バイポーラ電極13…13が分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽10に送液される溶液は、これら電極間に通水される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hrとなるように送液ポンプ6の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0059】
電解反応槽10で溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され過硫酸溶液2が再生される。この過硫酸溶液2は、送り管5から洗浄槽1へと送液され、洗浄槽1内において高濃度の過硫酸溶液2が得られる。洗浄槽1内では、自己分解によって過硫酸イオン濃度が漸減するものの電解反応槽10との間で溶液が循環し、電解反応槽10において電解されて過硫酸イオンが生成されることから、高い過硫酸イオン濃度が維持される。なお、この実施形態では、立ち上げ時に硫酸から過硫酸を製造する過程について説明したが、本発明としては、当初から過硫酸が用意されているものであってもよい。ただし、オンサイトで過硫酸を製造するという点では、電解反応装置を用いて過硫酸を製造することが有利である。
【0060】
また、洗浄槽1内の過硫酸溶液2は、熱分解用循環配管22、24、送液ポンプ23によって加熱分解槽20内との間で循環させ、さらに、ヒータ21によって加熱分解槽20内の溶液を加熱することで、洗浄槽1内の過硫酸溶液2を昇温させることができる。なお、熱分解用循環配管22、24、送液ポンプ23による循環は、洗浄槽1内での過硫酸濃度が十分に高くなった後に行うようにしてもよい。
【0061】
上記昇温によって、洗浄液となる過硫酸溶液2の温度が、洗浄槽1内において130℃程度になった状態で、被洗浄材である半導体ウエハ30の洗浄を開始する。すなわち、洗浄槽1内に、半導体ウエハ30を浸漬する。すると、洗浄槽1内では、過硫酸イオンの自己分解および硫酸の作用によって高い酸化作用が得られており、半導体ウエハ30上の汚染物などが効果的に剥離除去され、過硫酸溶液2中に移行する。過硫酸溶液2中に移行した剥離除去物は、過硫酸イオンの作用によって分解される。洗浄槽1内の過硫酸は、戻り管4、送液ポンプ6によって電解反応槽10に送液され、上記のように硫酸イオンから過硫酸イオンが生成されて、自己分解によって低下した過硫酸濃度を高めて過硫酸溶液2を再生する。
【0062】
また、過硫酸溶液2が洗浄槽1から電解反応槽10に向けて上記戻り管4を移動する際に、電解反応槽10において電解処理がなされて送り管5を移動する過硫酸溶液2との間で、熱交換器7において熱交換がなされる。洗浄槽1から送液される過硫酸溶液2は、洗浄に好適なように130℃程度に加熱されている。一方、電解反応槽10から送液される過硫酸溶液2は、40℃程度の温度を有している。これら過硫酸溶液2が熱交換されることによって戻り管4を移動する過硫酸溶液2は40℃に近い温度に低下し、一方、送り管5を移動する過硫酸溶液2は、130℃に近い温度にまで加熱される。熱交換器7で熱交換され、戻り管4を移動する過硫酸溶液2は、その後、自然冷却によって次第に降温し、電解反応に好適な40℃程度の温度となる。なお、確実に温度を低下させたい場合には、電解反応槽10を水冷、空冷するなどして強制的に冷却する冷却手段を付設することもできる。熱交換器7で熱交換され、送り管5を移動する過硫酸溶液2は、洗浄槽1に送られ、洗浄槽1内に残存する過硫酸溶液2に混合される。洗浄槽1内の過硫酸溶液2の温度が低下してしまった場合には、前記ヒータ21での加熱によって洗浄に最適な温度に昇温させることができる。上記のように、過硫酸溶液2は洗浄槽1から電解反応槽10へ送られる際に冷却され、電解された後、電解反応槽10から洗浄槽1へ戻される際に加温される。この1サイクルの中で冷却される熱量と加温される熱量はほぼ等しいため、高効率の熱交換器7を組み込み、放熱分程度について外部から熱エネルギーを加えることで、効率的に過硫酸溶液2の温度調整を行うことができる。
【0063】
また、洗浄槽1で汚染物が取り込まれた過硫酸溶液2は、熱分解用循環配管24によって加熱分解槽20に送液し、ここでヒータ21で十分な温度(例えば、130℃)にまで加熱することでレジスト等の有機化合物が加熱分解されて過硫酸溶液2の清浄度が高まる。この硫酸溶液を熱分解用循環配管22および送液ポンプ23によって電解反応槽10に戻すことで洗浄効果が回復した過硫酸溶液2によって洗浄を継続することができる。
上記硫酸リサイクル型洗浄システムによって半導体ウエハ30の洗浄を行うことで、過酸化水素水やオゾンの添加を必要とすることなく、過硫酸溶液2を繰り返し使用して過硫酸溶液2を再生しつつ効果的な洗浄を継続することができる。
【0064】
(実施形態1−2)
次に、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの他の実施形態を図2に基づいて説明する。
なお、この実施形態1−2において前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化する。
洗浄槽1は、収容された過硫酸溶液2を加熱するヒータ21を備えており、また、過硫酸溶液2に超純水を補給する超純水補給ライン25を備えている。
該洗浄槽1に、電解反応装置に相当する電解反応槽10a、10bが戻り管4と送り管5とによって接続されている。戻り管4には送液ポンプ6が介設されており、また、戻り管4と送り管5との間には前記実施形態1と同様に熱交換器7が設けられている。
【0065】
上記電解反応槽10a、10bは、直列に接続されており、電解反応槽10aに前記戻り管4が接続され、電解反応槽10bに前記送り管5が接続されている。電解反応槽10aと電解反応槽10bとの間には、連結管4aが連結されている。すなわち、戻り管4、電解反応槽10a、連結管4a、電解反応槽10b、送り管5の順に通液される。
なお、電解反応槽10aには、陽極11a、陰極12aが配置され、電解反応槽10bには陽極11b、陰極12bが配置され、さらに陽極11aと陰極12aとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13a…13aが配置され、陽極11bと陰極12bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13b…13bが配置されている。なお、本発明としては電解槽は、バイポーラ式ではなく、陽極と陰極のみを電極として備えるものであってもよい。この実施形態でも、これら電極11a、11b、12a、12b、13a、13bはダイヤモンド電極によって構成されている。該ダイヤモンド電極は、前記実施形態1と同様にダイヤモンド薄膜にボロンをドープすることにより製造したものである。上記陽極11aと陰極12aおよび陽極11bと陰極12bは、直流電源14に並列状態で接続されており、これにより電解反応槽10a、10bでの直流電解が可能になっている。
【0066】
次に、上記硫酸リサイクル型洗浄システムの作用について説明する。
上記洗浄槽1内では、硫酸濃度が8〜18Mの硫酸と超純水を収容し、ヒータ21によって130℃程度に加熱する。硫酸と超純水との混合比は、超純水の蒸散等もあるため、超純水補給ライン25を用いて超純水を補給して混合比率を適切に調整する。上記硫酸溶液は、送液ポンプ6によって電解反応槽10aに送液する。電解反応槽10aでは、陽極11a、陰極12aに直流電源14によって通電することにより、バイポーラ電極13a…13aが分極する。電解反応槽10aに送液される溶液は、通液線速度が1〜10,000m/hrで通水され、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電される。
【0067】
電解反応槽10aを通水する溶液は、硫酸イオンから過硫酸イオンが生成され、さらに、連結管4aを介して電解反応槽10bに送液される。電解反応槽10bにおいても同様に硫酸イオンから過硫酸イオンが生成され、高濃度の過硫酸溶液2が得られる。高濃度の過硫酸溶液2は、送り管5を通して洗浄槽1へと送液される。なお、電解反応槽10bにおいてもダイヤモンド電極表面での電流密度は10〜100,000A/mとなっている。
【0068】
洗浄槽1内では、上記電解によって高濃度の過硫酸溶液2が収容されるに至り、上記と同様に半導体ウエハ30の洗浄がなされ、レジストなどの不要物が半導体ウエハ30上から効果的に剥離除去される。洗浄槽1内の過硫酸溶液2は、自己分解によって過硫酸濃度が次第に低下するものの、戻り管4、送液ポンプ6を通して電解反応槽10a、10bに送液されて電解されることにより過硫酸濃度が高まり再生される。また、上記戻り管4を移動する際に、電解反応槽10bで電解処理がなされて送り管5を移動する過硫酸溶液2との間で、熱交換器7において熱交換がなされる。熱交換によって戻り管4を移動する過硫酸溶液2は40℃よりも若干温度の高い数十℃にまで温度が低下し、送り管5を移動する過硫酸溶液2は、130℃よりも若干温度の低い百数十℃にまで加熱される。戻り管4を移動する過硫酸溶液2は、その後、自然冷却などによって、電解反応に好適な40℃程度の温度となる。送り管5を移動する過硫酸溶液2は、洗浄槽1に送られ、その後、ヒータ21での加熱によって洗浄に最適な温度に温度調整される。
この実施形態においても、硫酸溶液を繰り返し使用して過硫酸溶液2を再生しつつ効果的な洗浄を継続することができる。
【0069】
(実施形態2)
次に、本発明の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の実施形態を図3に基づいて説明する。
なお、この実施形態で前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を簡略にする。
電解反応槽10aに少なくとも内面がテトラフルオロエチレンで構成された戻り管4が接続され、電解反応槽10bに同じく内面がテトラフルオロエチレンで構成された送り管5が接続されている。戻り管4には過硫酸溶液2を送液するための送液ポンプ6が介設され、戻り管4と送り管5との間には、熱交換器7が介設されている。上記戻り管4、送り管5、送液ポンプ6によって、本願発明の循環ラインが構成されている。
【0070】
上記電解反応槽10aと電解反応槽10bとの間には、連結管4aが連結されており、戻り管4、電解反応槽10a、連結管4a、電解反応槽10b、送り管5の順に溶液が通液するように構成されている。
なお、電解反応槽10aには、陽極11a、陰極12aが配置され、電解反応槽10bには陽極11b、陰極12bとが配置され、さらに陽極11aと陰極12aとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13a…13aが配置され、陽極11bと陰極12bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極13b…13bが配置されている。これら電極11a、11b、12a、12b、13a、13bはダイヤモンド電極によって構成されている。
【0071】
上記循環ラインにおける戻り管4および送り管5の先端側には、開閉弁15a、15bが設けられており、これら構成によって本発明の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置40が構成され、開閉弁15aが設けられた送り管5から供給側の洗浄装置へ過硫酸溶液を送液することができ、開閉弁15bが設けられた戻り管を通して洗浄装置から硫酸溶液を還流させて電解反応槽10a、10bで過硫酸を再生することができる。この際の通液線速度および電流密度は前記実施形態と同様に適切に設定する。
上記開閉弁15a、15bのさらに先端側では、洗浄槽1に接続することで電解反応槽10a、10bで再生する過硫酸溶液を洗浄に用いることができる。上記循環ラインは、洗浄槽1に対し、離接可能にすることで、他の洗浄装置に過硫酸溶液を供給することができ、また、接続先を切替弁などで切り替えて複数の洗浄装置に過硫酸を供給することもできる。
上記硫酸リサイクル型過硫酸供給装置40は、前記実施形態の硫酸リサイクル型洗浄システムと同様に、洗浄槽1との間で溶液を循環させつつ半導体ウエハ30の洗浄を行うことができる。
【0072】
(実施形態3−1)
次に、本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの他の実施形態について説明する。
なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
連結管4aによって電解反応槽10a、10bが直列に接続され、さらに電解反応槽10aに戻り管4が接続され、電解反応槽10bに送り管5が接続されている。戻り管4に送液ポンプ6が介設され、戻り管4と送り管5との間に熱交換器7が介設されている。
【0073】
電解反応槽10aには、ダイヤモンド電極からなる陽極11a、陰極12a、バイポーラ電極13a…13aが配置され、電解反応槽10bには同じくダイヤモンド電極からなる陽極11b、陰極12b、バイポーラ電極13b…13bが配置されている。
【0074】
戻り管4および送り管5が接続された洗浄槽1には、洗浄槽1内の洗浄液の一部を循環させて洗浄液の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定器50が硫酸濃度測定手段として接続されている。硫酸濃度測定器50は、硫酸濃度を吸光度法により測定するように構成されており既知の装置を使用することができる。一方、洗浄槽1には超純水補給ライン25が接続されており、該超純水補給ライン25には、電磁開閉弁26が介設されている。該電磁開閉弁26は、前記した硫酸濃度測定器50によって開閉制御が可能になっている。前記硫酸濃度測定器50では、予め洗浄槽1内で維持すべき硫酸濃度が基準値として設定されており、該基準値はメモリなどの適宜の保存手段に保存されて、必要に応じて読み出される。
【0075】
以下に、上記硫酸リサイクル型洗浄システムの動作について説明する。
この実施形態においても、前記実施形態と同様に、洗浄槽1内では、硫酸を収容し、超純水を加えて硫酸濃度を8〜18Mの範囲内で所定濃度に調整し、所定のヒータ21によって130℃程度に加熱する。この際に、維持すべき硫酸濃度を基準値として前記硫酸濃度測定器50に設定しておき、洗浄開始時には、電磁開閉弁26は閉じておく。
上記硫酸溶液は、送液ポンプ6によって電解反応槽10aに送液する。電解反応槽10aで溶液中の硫酸イオンから過硫酸イオンが生成され、さらに、連結管4aを介して電解反応槽10bに送液され、同じく溶液中の硫酸イオンから過硫酸イオンが生成されて、高濃度の過硫酸溶液2が得られる。この際の通液線速度および電流密度は前記実施形態と同様に適切に設定する。
【0076】
洗浄槽1内では、高濃度の過硫酸溶液2が収容され、上記と同様に半導体ウエハ30の洗浄がなされ、レジストなどが半導体ウエハ30上から剥離除去される。洗浄槽1内の過硫酸溶液2は、自己分解によって過硫酸濃度が次第に低下するが、戻り管4、送液ポンプ6を通して電解反応槽10a、10bに送液されて電解されることにより過硫酸イオンの再生がなされる。この実施形態においても、硫酸溶液を繰り返し使用して過硫酸溶液2を再生しつつ効果的な洗浄を継続することができる。
なお、洗浄槽1と電解反応槽10a、10bを循環する溶液は、水の電気分解や蒸発によって硫酸濃度が次第に上昇する。溶液の硫酸濃度は、前記硫酸濃度測定器50によって連続して、または適時測定される。さらに、該硫酸濃度測定器50は前記測定濃度と設定値とを比較して、測定濃度が設定濃度よりも0.2M以上高い場合に、前記電磁開閉弁26を開き超純水補給ライン25から洗浄槽1に超純水を注入するように制御する。この際に、注入量を予め定めておくこともでき、また、硫酸濃度測定器50で硫酸濃度を測定しつつ測定濃度が設定濃度よりも0.2M以上高い状態から抜け出すまで注入を継続するようにしてもよい。注入終了後に硫酸濃度測定器50の制御により電磁開閉弁26は閉じる。上記制御により、溶液の硫酸濃度が適切かつ自動的に維持され、電解反応槽10a、10bによる過硫酸イオンの再生が効率的になされる。
【0077】
(実施形態3−2)
上記実施形態3−1では、溶液の硫酸濃度を測定することにより溶液への超純水の注入を制御して溶液の硫酸濃度を適切に維持するものとしたが、溶液の液量を測定することで、溶液の硫酸濃度を推定し、溶液への超純水の注入を制御することもできる。
この実施形態では、洗浄装置に備える洗浄槽1に収容されている溶液の液面高さを測定することで溶液の液量を測定するものとしている。以下説明する。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0078】
洗浄槽1には、洗浄槽1内に収容されている過硫酸溶液2の液面を測定するために、液面高さ測定手段として液面センサ51a、51bが液面付近に配置されている。該液面センサ51a、51bは、例えば液面センサ51aから照射される光を液面センサ51bで受光することで、光が到達する範囲の下限高さを液面として検知することができる。なお、液面高さ測定手段の構成は、本発明としては特に限定されず、例えばフロート型のセンサによって液面高さを測定することも可能である。ただし、過硫酸溶液2の酸化力は強いため、溶液に対し非接触のセンサが望ましい。液面センサ51bの出力を受ける制御部(図示しない)では、予め維持すべき液面高さが設定値として設定されており、該液面高さによって溶液の硫酸濃度が適切に維持されているものと推定される。また、制御部は測定された液面高さに応じて前記電磁開閉弁26の開閉制御が可能になっている。
【0079】
過硫酸溶液による洗浄がなされている際に、洗浄槽1内の液面高さは、上記液面センサ51a、51bによって連続的にまたは適時測定されている。制御部は、液面センサ51bからの測定出力を受けて、測定結果による液面高さと設定されている液面高さとを比較し、液面高さが設定値よりも所定値以上低くなっている場合に、前記電磁開閉弁26を制御して、超純水補給ライン25から洗浄槽1に超純水を注入するように制御する。なお、液面センサ51bによる電磁開閉弁26の制御を開始する所定値は適宜定めることができ、ゼロの値を定めても良い。また、設定した液面の高さから水分が減って、溶液の濃度が0.2M高くなる液面高さの変化量を所定値として定めることができる。また、超純水の注入制御の際に、注入量を予め定めておくこともでき、また、液面センサ51a、51bで液面高さを測定しつつ測定した液面高さと設定した液面高さとの差が所定値以内になるように、注入を継続するようにしてもよい。上記制御により、溶液の硫酸濃度が適切に維持され、電解反応槽10a、10bによる過硫酸イオンの再生が効率的になされる。
【0080】
(実施形態3−3)
上記実施形態3−2では、洗浄槽の液面高さに基づいて溶液の液量を測定することにより溶液への超純水の注入を制御して溶液の硫酸濃度を適切に維持するものとしたが、洗浄槽の溶液の質量を測定することで、溶液の硫酸濃度を推定し、溶液への超純水の注入を制御することもできる。以下に、その実施形態を説明する。
なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0081】
洗浄槽1は、液質量測定手段である質量計52に載置されており、洗浄槽1内の液質量の変化が質量計52で測定可能になっている。質量計52は、予め所定の硫酸濃度となる液質量を定めておく。該質量によって溶液の硫酸濃度が適切に維持されているものと推定される。質量計52は、さらに前記電磁開閉弁26の開閉動作を制御することが可能になっており、質量計52で測定された質量と前記設定値とが所定量乖離している場合に、前記電磁開閉弁26を制御して超純水補給ライン25から洗浄槽1に超純水を注入するように構成されている。上記所定量は適宜定めることができ、ゼロの値を定めても良い。また、設定した質量から水分が減って、溶液の濃度が0.2M高くなる質量変化を所定値として定めてもよい。
【0082】
過硫酸溶液による洗浄がなされている際に、洗浄槽1の質量は、上記質量計52によって連続的にまたは適時測定されている。洗浄槽1本体の質量は一定しており、質量計52の測定変化は、洗浄槽1内の溶液の質量変化を示すことになる。質量計52は、測定質量と設定質量とを比較し、測定質量が設定値よりも所定値以上軽くなっている場合に、前記電磁開閉弁26を制御して、超純水補給ライン25から洗浄槽1に超純水を注入する。超純水の注入制御の際に、注入量を予め定めておくこともでき、また、質量計52で質量を測定しつつ測定質量が設定質量になるように、注入を継続するようにしてもよい。上記制御により、溶液の硫酸濃度が適切に維持される。
なお、上記実施形態3−1〜3−3では、必要に応じて過硫酸溶液に超純水を補給する超純水補給ラインを設けたものについて説明したが、本発明としては、超純水に変えて過酸化水素水を補給する補給ラインを設けて上記各実施形態と同様の補給動作を行うものとすることも可能であり、さらに、超純水を補給するラインと過酸化水素水を補給するラインの両方を設けて同じく補給動作を行うものであってもよい。
【実施例1】
【0083】
次に、本発明の一実施例について説明する。
図1に示す硫酸リサイクル型洗浄システムを用いて、次の条件で洗浄処理を行った。
循環溶液:高濃度硫酸溶液(硫酸:超純水の体積比=5:1)、溶液量:50L
電解反応槽
導電性ダイヤモンド電極(ボロン5,000ppmドープ)、陽極面積:40dm
電解条件
電流密度:3000A/m、溶液温度:40℃、通水速度:10m/hr
洗浄槽
過硫酸濃度:3g/l、温度:130℃
洗浄ウエハ枚数
5インチウエハ 300枚/hr
上記システムを用いて洗浄を行ったところ、硫酸の交換頻度が1/3になり従来の150L/Dayから50L/Dayに低減でき、過酸化水素添加が不要となった。
【0084】
(実施例1−2)
次に、図2に示す硫酸リサイクル型洗浄システムを用いて、次の条件で洗浄処理を行った。
洗浄槽に、98%濃硫酸40l、超純水10lの割合で調整した高濃度硫酸溶液を収容し、130℃に加熱保持した。電解反応槽内には、直径15cm、厚さ1mmのSi基板にボロンドープ(ボロンドープ量:5,000ppm)した導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ槽を2槽直列に配列させた。電解のための有効電解面積は、全体で、30dmであり、電流密度を3,000A/mに設定して、40℃で電解した。電解反応槽出口水をサンプリングしたところ、過硫酸生成速度が3g/l/hrであることを確認した。洗浄槽には、レジスト付きの5インチのシリコンウエハを10分を浸漬サイクルとして50枚/サイクルで浸漬させて、レジスト溶解を行なった(TOC生成速度は0.06g/l/hr)。この溶解液を洗浄槽と電解反応槽との間で送液ポンプで1l/min(通液線速度は、80m/hr)の流量で循環させた。レジスト付きシリコンウエハを浸漬させた時点では洗浄槽内の溶液は茶褐色に着色し、TOC濃度は30mg/lであったが、10分弱の循環処理によって、洗浄槽内の溶液は無色透明となりTOC濃度も検出限界以下となった。このようなウエハ洗浄を8時間(洗浄ウエハ枚数は2,400枚)継続したが、高濃度硫酸溶液レジスト剥離効果は良好であり、TOC濃度についても検出限界以下であった。そこで、さらに32時間(洗浄ウエハ枚数は9,600枚、総処理枚数は12,000枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であり、TOC濃度についても検出限界以下であった。
【0085】
(比較例1)
洗浄槽に、98%濃硫酸40lを収容し、35%過酸化水素水10lを添加した溶液を130℃に加熱保持した。この溶液に実施例1−2と同様の浸漬サイクルでレジスト付きウエハを浸漬させて、レジスト溶解を行った。最初の6サイクル(洗浄ウエハ枚数は300枚)までは、ウエハ浸漬直後に溶液が茶褐色に着色したが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度として30mg/lの残存が認められた。そこで、洗浄槽内の溶液10lを引き抜きき、過酸化水素水10lを追加添加し、溶液を130℃に加熱保持した。再びウエハ浸漬を継続した。最初の2サイクル(洗浄ウエハ枚数は100枚)までは、ウエハ浸漬直後に溶液が茶褐色に着色するが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度として30mg/lの残存が認められた。再度、洗浄槽内の溶液10lを引き抜いて、過酸化水素水10lを追加添加した。ウエハ浸漬を継続したが、50枚のウエハを浸漬したところで、レジスト剥離溶解効果が悪く10分経過してもレジストがウエハに残存した。ウエハの総処理枚数は、400枚のところで、全体の溶液の交換が必要となった。
【0086】
(実施例1−3)
実施例1−2の条件で、洗浄槽における過硫酸溶液の温度を変えて、洗浄試験を行った。なお、他の条件は、実施例1−2と同様である。
その結果、洗浄液を90℃に加熱して行った洗浄例では、最初の1サイクルにおいてウエハ上のレジスト剥離速度が遅くウエハ上にレジストが残存し洗浄が十分になされなかった。一方、洗浄液を130℃に加熱して行った洗浄例(実施例1−2)では、レジスト剥離速度も速く、TOC生成速度(0.06g/l/hr)に対して十分な過硫酸生成速度(3g/l/hr)を確保できるため効果的な洗浄効果が得られた。また、洗浄液を180℃に加熱して行った洗浄例では、最初の1サイクルにおいてTOC生成速度(0.06g/l/hr)に対して十分な過硫酸生成速度(3g/l/hr)は確保できたが洗浄槽での過硫酸の自己分解速度が大きく、TOCを除去するのに十分な過硫酸が残存せず、溶液中にTOC濃度として30mg/l残存した。したがって、洗浄液の温度は100℃〜170℃が望ましいことが明らかである。
【0087】
(実施例1−4)
次に、実施例1−2の条件で、電解反応槽における溶液の温度を変えて洗浄試験を行った。なお、その他の試験条件は、実施例1−2と同様である。
その結果、電解反応槽の溶液温度を5℃とした例では、過硫酸生成速度が4.5〔g/l/hr〕となりTOC生成速度0.06〔g/l/hr〕に対して十分な過硫酸量を確保できているが、洗浄液の温度は130℃であるため125℃分の加熱を行う必要があり、多大な熱エネルギー投入が必要であるばかりか、配管経路を長くとる必要があり、洗浄槽に到達する前に過硫酸の大部分が消費されてしまい、最初の1サイクルにおいて溶液中にTOC濃度が30mg/l残留した。一方、電解反応槽における溶液の温度を10℃、40℃、80℃、90℃とした例では過硫酸生成速度がそれぞれ、4〔g/l/hr〕、3〔g/l/hr〕、1.2〔g/l/hr〕、0.9〔g/l/hr〕となり、効率よく過硫酸イオンが生成された。また、1,000時間の電解処理においても電極の損耗は見られなかった。一方、電解反応槽の溶液温度を100℃とした例では、過硫酸生成速度は0.25〔g/l/hr〕となり、過硫酸イオンの生成が明らかに低下した。すなわち(過硫酸生成速度〔g/l/hr〕)/(TOC生成速度〔g/l/hr〕)<10となり十分な酸化分解効果が得られなかった。また、500時間の電解反応によって導電性ダイヤモンド層がSi基盤より剥離した。したがって、電解に供する溶液の温度は10〜90℃が望ましいことが明らかである。
【0088】
(実施例1−5)
次に、実施例1−2の条件で、電解反応槽における電流密度を変えることで過硫酸生成速度を変えて洗浄試験を行った。なおその他の試験条件は、実施例1−2と同様である。
その結果、表1のように電流密度が10〜100,000A/mの範囲においてTOC生成速度に対して十分な過硫酸生成速度が得られ、良好な洗浄効果が得られた。
【0089】
【表1】

【0090】
(実施例1−6)
次に、実施例1−2の条件で、電解反応槽における通液線速度を変えることで過硫酸生成速度を変えて洗浄試験を行った。なおその他の試験条件は、実施例1−2と同様である。
その結果、表2のようになった。すなわち、通液線速度が0.3m/hrにおいては、電解セル内に気泡が溜まり電解操作が不可能であった。また、通液線速度を20,000m/hrとした場合では、熱交換器において配管経路が莫大となり装置設計ができなかった。通液線速度が1〜10,000m/hrの範囲においてTOC生成速度に対して十分な過硫酸生成速度が得られ、良好な洗浄効果が得られた。
【0091】
【表2】

【0092】
(実施例2)
洗浄槽に、98%濃硫酸40リットル、超純水8リットルの割合で調整した高濃度硫酸溶液を調製して130℃に加熱保持した。電解反応槽内には、図3に示すように、直径15cm、厚さ1mmのSi基板にボロンドープした導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ槽を2基直列に配列させた。電解のための有効陽極面積は30dmであり、電流密度を30A/dmに設定して、40℃で電解した。電解反応槽出口水をサンプリングしたところ、過硫酸イオン生成速度が3g/L/hrであることを確認した。洗浄槽には、レジスト付きの6インチのシリコンウエハを10分を浸漬サイクルとして50枚/サイクル浸漬させて、レジスト溶解を行った(TOC生成速度は0.04g/L/hr)。この溶解液を洗浄槽と電解反応槽との間を送液ポンプで1L/minの流量で循環させた。
【0093】
レジスト付きシリコンウエハを浸漬させた時点では洗浄槽内の溶液は茶褐色に着色し、TOC濃度は30mg/Lであったが、10分弱の循環処理によって、洗浄槽内の溶液は無色透明となりTOC濃度も検出限界以下となった。このようなウエハ洗浄を8時間(洗浄ウエハ枚数は2,400枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であり、TOC濃度についても検出限界以下であった。そこで、さらに32時間(洗浄ウエハ枚数は9,600枚、総処理枚数は12,000枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であり、TOC濃度についても検出限界以下であった。
【0094】
(比較例2)
洗浄槽に、98%濃硫酸40リットルを入れて、35%過酸化水素水8リットルを添加した溶液を130℃に加熱保持した。この溶液に実施列1と同様の浸漬サイクルでレジスト付きウエハを浸漬させて、レジスト溶解を行った。最初の6サイクル(洗浄ウエハ枚数は300枚)までは、ウエハ上のレジスト剥離効果は良好で、溶液も浸漬直後は茶褐色に着色するが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過してもウエハ上にレジストが残存しており、溶液も茶褐色を呈したままで、TOC濃度として30mg/Lの残存が認められた。したがって、この50枚のウエハについては処理効果が不良として引き抜いた。
次に、洗浄槽内の溶液8リットルを引き抜き、過酸化水素水8リットルを追加添加し、溶液を130℃に加熱保持した。再びウエハ浸漬を継続した。最初の2サイクル(洗浄ウエハ枚数は100枚)までは、ウエハ上のレジスト剥離効果は良好で、溶液も浸漬直後は茶褐色に着色するが、10分弱で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過してもウエハ上にレジストが残存しており、溶液も茶褐色を呈したままで、TOC濃度として30mg/Lの残存が認められた。したがって、この50枚のウエハについては処理効果が不良として引き抜いた。
【0095】
再度、洗浄槽内の溶液8リットルを引き抜いて、過酸化水素水8リットルを追加添加した。ウエハ浸漬を継続したが、50枚のウエハを浸漬したところで、レジスト剥離溶解効果が悪く10分経過してもレジストがウエハに残存した。ウエハの総処理枚数は、400枚のところで、全体の溶液の交換が必要となった。
また、このような洗浄を行ったウエハをウエハアナライザに持ち込んで、400℃に加熱して有機物残渣を質量分析計により測定したところ、残渣は500〜1000pg/cm程度であり、清浄度の高いウエハを得ることができなかった。さらに、低加速電圧の走査電子顕微鏡によりパターン周辺を観察したところ、レジスト残渣が多く付着していることが確認された。
【0096】
(実施例3−1)
洗浄槽に、97%濃硫酸40リットル、超純水8リットルの割合で調整した高濃度硫酸溶液を調製して130℃に加熱保持した。電解反応装置内には、直径15cm、厚さ1mmのSi基板にボロンドープした導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ電解セルを2基直列に配列させた。電解のための有効陽極面積は30dmであり、電流密度を30A/dmに設定して、40℃で電解した。電解反応装置出口溶液をサンプリングしたところ、過硫酸イオン生成速度が3g/L/hrであることを確認した。洗浄槽には、レジスト付きの6インチのシリコンウエハを10分を浸漬サイクルとして50枚/サイクル浸漬させて、総処理時間40時間(ウエハ洗浄総処理枚数は12,000枚)継続してレジスト溶解を行った(TOC生成速度は0.04g/L/hr)。
この処理時間中継続して、硫酸濃度測定器にて硫酸溶液中の硫酸濃度をモニターし、硫酸濃度が16.6Mとなると超純水を硫酸濃度16.4Mになるまで自動的に注入した。
その結果、処理時間中硫酸濃度は16.3〜16.7Mの範囲で推移した。
【0097】
(実施例3−2)
洗浄槽に、97%濃硫酸40リットル、超純水8リットルの割合で調整した高濃度硫酸溶液を調製して130℃に加熱保持した。電解反応装置内には、直径15cm、厚さ1mmのSi基板にボロンドープした導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ電解セルを2基直列に配列させた。電解のための有効陽極面積30dmであり、電流密度を30A/dmに設定して、40℃で電解した。電解反応装置出口溶液をサンプリングしたところ、過硫酸イオン生成速度が3g/L/hrであることを確認した。洗浄槽には、レジスト付きの6インチのシリコンウエハを10分を浸漬サイクルとして50枚/サイクル浸漬させて、総処理時間40時間(ウエハ洗浄総処理枚数は12,000枚)継続してレジスト溶解を行った(TOC生成速度は0.04g/L/hr)。
この処理時間中継続して、洗浄槽に設置した液面センサにより硫酸溶液の液面高さをモニターし、液面が5mm低くなると超純水を初期液面高さになるまで自動的に注入した。
その結果、処理時間中硫酸濃度は16.2〜16.7Mの範囲で推移した。
【0098】
(実施例3−3)
洗浄槽に、97%濃硫酸40リットル、超純水8リットルの割合で調整した高濃度硫酸溶液を調製して130℃に加熱保持した。電解反応装置内には、直径15cm、厚さ1mmのSi基板にボロンドープした導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ電解セルを2基直列に配列させた。電解のための有効陽極面積は30dmであり、電流密度を30A/dmに設定して、40℃で電解した。電解反応装置出口溶液をサンプリングしたところ、過硫酸イオン生成速度が3g/L/hrであることを確認した。洗浄槽には、レジスト付きの6インチのシリコンウエハを10分を浸漬サイクルとして50枚/サイクル浸漬させて、総処理時間40時間(ウエハ洗浄総処理枚数は12,000枚)継続してレジスト溶解を行った(TOC生成速度は0.04g/L/hr)。また、洗浄槽全体をロードセル上に設置した。
この処理時間中継続して、洗浄槽全体重量をモニターし、質量が0.1kg減少すると超純水を0.1kg自動的に注入した。
その結果、処理時間中硫酸濃度は16.0〜16.8Mの範囲で推移した。
【0099】
なお、上記実施形態および実施例に基づいて本発明の説明を行ったが、本発明は上記実施形態および実施例の説明に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲においては変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】同じく、他の実施形態におけるシステムを示す概略図である。
【図3】本発明の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置の一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の硫酸リサイクル型洗浄システムの他の実施形態を示す概略図である。
【図5】同じく、さらに他の実施形態を示す概略図である。
【図6】同じく、さらに他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
1 洗浄槽
2 過硫酸溶液
4 戻り管
5 送り管
6 送液ポンプ
7 熱交換器
10、10a、10b 電解反応槽
11、11a、11b 陽極
12、12a、12b 陰極
13 バイポーラ電極
14 直流電源
20 加熱分解槽
21 ヒータ
25 超純水補給ライン
30 半導体ウエハ
40 硫酸リサイクル型過硫酸供給装置
50 硫酸濃度測定器
51a 液面センサ
51b 液面センサ
52 質量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸溶液を洗浄液として被洗浄材を洗浄する洗浄装置と、電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、前記洗浄装置と電解反応装置との間で、前記過硫酸溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項2】
前記電解反応装置で電解される溶液の温度を、前記洗浄液の温度よりも低く保持することを特徴とする請求項1記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項3】
前記電解反応装置で電解される溶液の温度を10℃から90℃の範囲内とすることを特徴とする請求項1または2に記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項4】
前記洗浄液を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項5】
前記電解反応装置で電解される溶液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項6】
前記循環ラインにおいて、前記電解反応装置からの相対的に低温な過硫酸溶液の送り液と、前記洗浄装置からの相対的に高温な過硫酸溶液の戻り液との間で熱交換を行う熱交換手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項7】
前記循環ラインにおける流路が石英またはテトラフルオロエチレン製からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項8】
前記洗浄によって被洗浄材から除去された除去物を分解する分解部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項9】
前記電解装置で電解される溶液は、硫酸濃度が8Mから18Mであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項10】
電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極が導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項11】
電解反応装置に備える導電性ダイヤモンド電極が、基板上に積層させた後に基板を取り去った自立型導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項12】
前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項13】
前記洗浄装置における洗浄による有機汚染物の全有機性炭素濃度(TOC)生成速度と、前記電解装置における過硫酸生成速度との比(過硫酸生成速度〔g/l/hr〕/(洗浄槽内TOC生成速度〔g/l/hr〕)が、10から500となるように電解制御されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項14】
前記過硫酸溶液に超純水または過酸化水素水を補給する超純水または過酸化水素水補給ラインを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項15】
前記超純水または過酸化水素水補給ラインは、洗浄装置の洗浄槽底部側で超純水または過酸化水素水を注入するように設けられていることを特徴とする請求項14記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項16】
前記溶液の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定手段を有し、該硫酸濃度測定手段による測定濃度に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする請求項14または15に記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項17】
前記硫酸濃度測定手段による測定濃度が、予め定めた設定濃度よりも0.2M以上高い場合、前記超純水または過酸化水素水補給ラインによる超純水または過酸化水素水の注入を行うことを特徴とする請求項16記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項18】
前記硫酸濃度測定手段は、硫酸濃度を吸光度法で測定するものであることを特徴とする請求項16または17記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項19】
前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液量を測定する液量測定手段を有し、該液量測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項20】
前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液の液面高さを測定する液面高さ測定手段を有し、該液面高さ測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項21】
前記洗浄装置の洗浄槽における洗浄液の質量を測定する液質量測定手段を有し、該液質量測定手段による測定結果に基づいて前記超純水または過酸化水素水補給ラインの注入動作を制御することを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項22】
前記液質量測定手段は、洗浄槽とともに洗浄液の質量を測定するものであることを特徴とする請求項21記載の硫酸リサイクル型洗浄システム。
【請求項23】
電解反応により、溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成して過硫酸溶液を再生する電解反応装置と、該電解反応装置と過硫酸を用いる洗浄装置との間で、溶液を循環させる循環ラインとを備えることを特徴とする硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項24】
前記循環ラインにおける洗浄装置から電解反応装置への戻り液を10〜90℃の範囲に冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項23記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項25】
前記循環ラインにおける電解反応装置から洗浄装置への送り液を100〜170℃の範囲に加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項23または24に記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項26】
前記循環ラインにおける電解反応装置から洗浄装置への送り液と洗浄装置から電解反応装置への戻り液との間で熱交換を行う熱交換手段を備えることを特徴とする請求項23記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項27】
前記溶液に含まれる硫酸イオン濃度を8M以上とすることを特徴とする請求項23〜26のいずれかに記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項28】
前記電解反応装置に備える電極のうち、少なくとも陽極に導電性ダイヤモンド電極を使用することを特徴とする請求項23〜27のいずれかに記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。
【請求項29】
前記循環ラインにおける流路がテトラフルオロエチレン製からなることを特徴とする請求項23〜27のいずれかに記載の硫酸リサイクル型過硫酸供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−114880(P2006−114880A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232825(P2005−232825)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】