説明

硫酸化多糖を用いて出血性疾患を処置するための方法

【課題】出血性疾患を処置するための新しい治療アプローチを提供する。
【解決手段】非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を凝血原として用いて出血性疾患を処置する方法が開示される。NASPは、単一の薬剤としてか、互いに組み合わせてか、または他の薬剤(例えば、第VII因子、第VIII因子および第IX因子)と組み合わせて、止血を促進するために投与され得る。特に、血液因子欠乏に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む、出血性疾患の処置におけるNASPの使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む、出血性疾患の処置に関する。特に、本発明は、血友病状態において凝固および止血を改善するために、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
正常な血液凝固は、凝固因子カスケードの活性化を含み、局所的血管収縮とともにフィブリン形成および血小板凝集を引き起こす、複雑な生理学的および生化学的プロセスである(非特許文献1により概説される)。凝固カスケードは、正常な凝固開始の主要な手段であると考えられる「外因性」経路、および広範な凝固応答に寄与する「内因性」経路からなる。出血を伴う傷害に対する正常な応答は、外因性経路の活性化を含む。外因性経路の活性化は、血液が、組織因子(TF)(傷害の後に組織上に露出または発現する、第VII因子の補助因子)と接触すると、開始する。TFはFVIIと複合体を形成して、FVIIaの生成を促進する。次いで、FVIIaはTFと結合して、FXをプロトロンビナーゼ複合体の必須成分であるセリンプロテアーゼFXaに変換する。FXa/FVa/カルシウム/リン脂質複合体によりプロトロンビンがトロンビンに変換されると、フィブリンの形成、および血小板の活性化(これらはすべて、正常な血液凝固に必須である)が刺激される。正常な止血は、内因性経路の第IXa因子およびVIIIa因子(これらもまた、FXをFXaに変換する)によってさらに増強される。
血液凝固は、先天性凝固障害、後天性凝固障害、または外傷によって生じる出血状態によって引き起こされ得る出血性疾患においては、不十分である。出血は、疾患の最も重篤かつ重大な徴候の1つであり、局所部位から生じ得るか、または全身性であり得る。局所的な出血は、病変と関連し得、欠陥性の止血機構によってさらに複雑になり得る。任意の凝固因子の先天性欠乏または後天性欠乏は、出血傾向に関与し得る。先天性凝固障害としては、血友病、凝固第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)の欠損に関与する劣性X連鎖遺伝病、およびフォンヴィレブランド病(フォンヴィレブランド因子の重篤な欠損に関与する稀な出血性疾患)が挙げられる。後天性凝固障害は、疾患プロセスの結果として、出血の既往歴のない個体において発症し得る。例えば、後天性凝固障害は、第VIII因子、フォンヴィレブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子のような血液凝固因子に対するインヒビターまたは自己免疫によって;あるいは、凝固因子の合成の低下に関連し得る、肝疾患により引き起こされるような止血障害によって、引き起こされ得る。凝固因子欠乏症は、代表的には、高価であり、不便であり(静脈内)、かつ必ずしも有効であるとは限らない因子補充によって処置される。慢性的な因子補充療法を受ける患者のうち20%もの患者が、補充因子に対する中和抗体を産生し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Davieら,Biochemistry(1991)30:10363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、出血性疾患を処置するための新しい治療アプローチの必要性が残っている。安全であり、簡便であり、かつ、広範な出血性疾患に有効な単一の医薬品は、臨床診療に有利に影響する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、凝血原として非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を用いて出血性疾患を処置するための方法および組成物を提供する。NASPは、単一の薬剤として、または互いに組み合わせて、または他の止血剤と組み合わせて投与され得る。特に、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む出血性疾患の処置におけるNASPの使用が記載される。
【0006】
1つの態様において、本発明は、被験体に非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を投与する工程を含む、血液凝固の促進が必要な被験体を処置する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、NASPを含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、出血性疾患を有する被験体を処置する方法を提供する。特定の実施形態において、NASPは、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−脱−O−硫酸化−ヘパリン(NA−de−o−SH)、脱−N−硫酸化−ヘパリン(De−NSH)、脱−N−硫酸化−アセチル化−ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸−酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン誘導オリゴ糖(HDO)、ペントサンポリサルフェート(PPS)、およびフコイダンからなる群より選択される。
【0007】
他の実施形態において、NASPは、前述の化合物の低分子量フラグメントからなる群より選択される。好ましい実施形態において、NASPのフラグメントは、dPTアッセイで試験された場合に血液凝固時間を短縮させる。1つの実施形態において、NASPは、dPTアッセイで試験された場合に血液凝固時間を短縮させる、フコイダンのフラグメントである。
【0008】
さらなる実施形態において、NASPは、1以上の異なるNASPと共に、および/または1以上の他の治療薬と組み合わせて、同時投与され得る。
【0009】
特定の実施形態において、NASPは、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1以上の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK))欠乏、臨床的に明らかな出血に関与する1以上の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含む)、α−アンチプラスミン欠損、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血からなる群より選択される出血性疾患を処置するために被験体に投与される。
【0010】
特定の実施形態において、NASPは、血液因子欠乏に起因する先天性凝固障害または後天性凝固障害を処置するために被験体に投与される。血液因子欠乏は、1以上の因子(第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、およびフォンヴィレブランド因子が挙げられるが、これらに限定されない)の欠乏によって引き起こされ得る。
【0011】
特定の実施形態において、出血性疾患を有する被験体は、NASPを別の治療薬と組み合わせて含む組成物の治療有効量を投与される。例えば、被験体は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択されるNASPおよび1以上の因子を含む組成物の治療有効量を投与され得る。処置は、トロンビンのような凝血原;内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。出血性疾患を有する被験体を処置するのに用いられる治療薬は、同一または異なる組成物中で投与され得、そしてNASPの投与と同時に、投与前に、または投与後に投与され得る。
【0012】
別の態様において、本発明は、被験体における抗凝血剤の作用を逆転させる方法を提供し、この方法は、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する。特定の実施形態において、被験体は、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリンまたはジクマロール)、組織因子経路インヒビター(TFPI)、抗トロンビンIII、ループス抗凝固因子、線虫抗血液凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位をブロックした第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子インヒビター、第Xa因子インヒビター(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス(idraparinux)、DX−9065a、およびラザクサバン(razaxaban)(DPC906)を含む)、第Va因子および第VIIIa因子のインヒビター(活性化プロテインC(APC)および可溶性トロンボモジュリンを含む)、トロンビンインヒビター(ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランを含む)が挙げられるがこれらに限定されない、抗凝血剤で処置され得る。特定の実施形態において、被験体における抗凝血剤は、凝固因子(第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、または高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない)に結合する抗体であってもよい。
【0013】
特定の実施形態において、NASPは、被験体における抗凝血剤の作用を逆転させるために、1以上の異なるNASPと共に、および/または1以上の他の治療薬と組み合わせて、同時投与され得る。例えば、被験体は、NASPならびに第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1以上の因子を含む組成物の治療有効量を投与され得る。処置は、凝血原、例えば、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。被験体における抗凝血剤の作用を逆転させるためにNASPと組み合わせて用いられる治療薬は、同一または異なる組成物中で投与され得、そしてNASPの投与と同時に、投与前に、または投与後に投与され得る。
【0014】
別の態様において、本発明は、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する、血液凝固の改善が所望される外科的または侵襲的手技を受ける被験体を処置する方法を提供する。特定の実施形態において、NASPは、1以上の異なるNASPと共に、および/または1以上の他の治療薬と組み合わせて、外科的または侵襲的手技を受ける被験体に同時投与され得る。例えば、被験体は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1以上の因子の治療有効量を投与され得る。処置は、凝血原、例えば、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。外科的または侵襲的手技を受ける被験体を処置するのに用いられる治療薬は、同一または異なる組成物中で投与され得、そしてNASPの投与と同時に、投与前に、または投与後に投与され得る。
【0015】
別の態様において、被験体のTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、NASPを含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する。
【0016】
別の態様において、本発明は、生物学的サンプル中のTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、生物学的サンプル(例えば、血液または血漿)を、TFPI活性を阻害するのに十分な量の非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)と混合する工程を包含する。
【0017】
別の態様において、本発明は、NASPを含む組成物を提供する。特定の実施形態において、NASPは、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−脱−O−硫酸化−ヘパリン(NA−de−o−SH)、脱−N−硫酸化−ヘパリン(De−NSH)、脱−N−硫酸化−アセチル化−ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素−酸酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン−誘導オリゴ糖(HDO)、ペントサンポリサルフェート(PPS)、およびフコイダンからなる群より選択される。他の実施形態において、NASPは、前述の化合物の低分子量フラグメントからなる群より選択される。特定の実施形態において、組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含み得る。特定の実施形態において、組成物は、1以上の異なるNASP、および/または1以上の治療薬、ならびに/あるいは試薬をさらに含み得る。例えば、組成物は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、およびフォンヴィレブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子からなる群より選択される1以上の因子;および/またはAPTT試薬、トロンボプラスチン、フィブリン、TFPI、ラッセルクサリヘビ蛇毒、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、およびカオリンからなる群より選択される1以上の試薬をさらに含み得る。
【0018】
別の態様において、本発明は、生物学的サンプル中のNASPによる凝固の加速度を測定する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
a)生物学的サンプルを、NASPを含む組成物と混合する工程;
b)生物学的サンプルの凝固時間を測定する工程;
c)生物学的サンプルの凝固時間を、NASPに曝露されていない対応する生物学的サンプルの凝固時間と比較する工程であって、NASPに曝露された生物学的サンプルの凝固時間の減少が観察される場合、これは、NASPが凝固を促進することを示す、工程。
【0019】
特定の実施形態において、1以上の異なるNASPおよび/または治療薬、ならびに/あるいは試薬は、凝固時間の測定のために生物学的サンプルに添加され得る。例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、およびフォンヴィレブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子が挙げられるがこれらに限定されない、1以上の因子;ならびに/あるいはAPTT試薬、組織因子、トロンボプラスチン、フィブリン、TFPI、ラッセルクサリヘビ蛇毒、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、およびカオリンが挙げられるがこれらに限定されない、1以上の試薬が添加され得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する:
(項目1)
血液凝固の促進を必要とする被験体を処置するための組成物の製造における、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)の使用。
(項目2)
前記NASPが、N−アセチル−ヘパリン(NAH)、N−アセチル−脱−O−硫酸化−ヘパリン(NA−de−o−SH)、脱−N−硫酸化−ヘパリン(De−NSH)、脱−N−硫酸化−アセチル化−ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸−酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン誘導オリゴ糖(HDO)、ペントサンポリサルフェート(PPS)、およびフコイダンからなる群より選択される、項目1に記載の使用。
(項目3)
前記NASPがNAHである、項目2に記載の使用。
(項目4)
前記NASPがPPSである、項目2に記載の使用。
(項目5)
前記NASPがフコイダンである、項目2に記載の使用。
(項目6)
前記NASPが、dPTアッセイにおける血液凝固時間を短縮するフコイダンのフラグメントである、項目2に記載の使用。
(項目7)
前記NASPが、約0.01mg/kg〜約100mg/kgの投薬量で投与される、項目1〜6のいずれか1項に記載の使用。
(項目8)
前記被験体が、慢性または急性出血性疾患、血液因子欠乏に起因する先天性凝固障害、および後天性凝固障害からなる群より選択される出血性疾患を有する、項目1〜7に記載の使用。
(項目9)
前記血液因子欠乏が、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1以上の因子の欠乏である、項目8に記載の使用。
(項目10)
前記血液凝固の促進を要する原因が、抗凝血剤の事前投与または手術もしくは他の侵襲的手技である、項目1に記載の使用。
(項目11)
前記被験体が、凝血原、内因性凝固経路のアクチベーター、外因性凝固経路のアクチベーター、および第2のNASPからなる群より選択される薬剤を投与することによってさらに処置される、項目1〜10のいずれか1項に記載の使用。
(項目12)
前記内因性凝固経路のアクチベーターが、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンからなる群より選択される、項目11に記載の使用。
(項目13)
前記外因性凝固経路のアクチベーターが、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子からなる群より選択される、項目11に記載の使用。
(項目14)
前記被験体が、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される、1以上の因子を投与することによってさらに処置される、項目1〜13のいずれか1項に記載の使用。
(項目15)
前記抗凝血剤は、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリンまたはジクマロール)、組織因子経路インヒビター(TFPI)、抗トロンビンIII、ループス抗凝固因子、線虫抗血液凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位をブロックした第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子インヒビター、第Xa因子インヒビター(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、およびラザクサバン(DPC906)が挙げられる)、第Va因子および第VIIIa因子のインヒビター(活性化プロテインC(APC)および可溶性トロンボモジュリンが挙げられる)、トロンビンインヒビター(ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランが挙げられる)、ならびに凝固因子に結合する抗体からなる群より選択される、項目10に記載の使用。
(項目16)
前記抗凝血剤は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK)からなる群より選択される凝固因子に結合する抗体である、項目15に記載の使用。
(項目17)
被験体におけるTFPI活性を阻害するための組成物の製造における、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)の使用。
(項目18)
生物学的サンプル中のTFPI活性を阻害するための組成物の製造における、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)の使用。
(項目19)
非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP);
薬学的に受容可能な賦形剤;ならびに
第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、およびフォンヴィレブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子からなる群より選択される1以上の因子
を含む組成物。
(項目20)
血液凝固の促進を必要とする被験体を処置するための方法であって、該被験体に非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目21)
被験体におけるTFPI活性を阻害する方法であって、該方法は、該被験体に非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
生物学的サンプル中のTFPI活性を阻害する方法であって、該方法は、該生物学的サンプルと、該TFPI活性を阻害するのに十分な量の非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)とを組み合わせる工程を包含する、方法。
(項目23)
生物学的サンプルにおける非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)による血液凝固の促進を測定する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)該生物学的サンプルと、該NASPを含む組成物とを組み合わせる工程、
b)該生物学的サンプルの凝固時間を測定する工程、
c)該生物学的サンプルの凝固時間を、該NASPに曝されていない対応する生物学的サンプルの凝固時間と比較する工程であって、ここで、該NASPに曝露された生物学的
サンプルの凝固時間の短縮が、該凝固時間を加速させるNASPであることを示す、工程を包含する、方法。
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示を考慮すれば、当業者に容易に想起される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、dPTアッセイによって決定された、組織因子経路インヒビター(TFPI)の存在下での血友病A(Hem−A)血漿の凝固時間の増加を示す。TFPI濃度(μg/ml)に対する凝固時間(秒)のプロットは、凝固時間がTFPI用量とともに直線的に増加することを示す。
【図2】図2は、潜在的なNASP、N−アセチル−ヘパリン(NAH)、N−アセチル−脱−O−硫酸化−ヘパリン(NA−de−O−SH)、脱−N−硫酸化−ヘパリン(De−N−SH)、脱−N−硫酸化−アセチル化−ヘパリン(De−N−SAH)、ペントサンポリサルフェート(PPS)、フコイダン、およびヘパリンの抗凝固活性を比較する。選択された多糖を、Hem−A血漿中での種々の濃度で試験した。図2は、NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。
【図3】図3は、aPTTアッセイを用いて決定された、1.25%のFACT血漿を含むHem−A血漿の凝固時間に対するNAH、PPS、フコイダン、およびヘパリンの影響を比較する。図3は、NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。
【図4】図4は、NAH、PPS、およびフコイダンを含むNASPが、組換えTFPIを含むHem−A血漿の凝固を促進することを示す。NASPを、血漿への添加前に、TFPIとともに短時間プレインキュベートした。凝固時間は、dPTアッセイを用いて決定した。NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。TFPI活性のNASP阻害により、血漿凝固時間が減少した。
【図5】図5は、NAH、PPS、およびフコイダンを含むNASPが、組換えTFPIを含む血友病B(Hem−B)血漿の凝固を促進することを示す。NASPを、血漿への添加前に、TFPIとともに短時間プレインキュベートした。凝固時間は、dPTアッセイを用いて決定した。NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。TFPI活性のNASP阻害により、血漿凝固時間が減少した。
【図6】図6は、NAH、PPS、およびフコイダンが、血漿へのTFPIの導入前にTFPIとNASPをプレインキュベートすることなしに、TFPIを含むHem−A血漿の凝固を促進することを示す。NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。凝固時間は、dPTアッセイを用いて決定した。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。
【図7】図7は、PPSおよびフコイダンが、外因性TFPIの補充のない場合にHem−A血漿の凝固を促進することを示す。NASPの用量反応は、外因性経路の活性化の増幅について、陽性コントロール(第VIIa因子)と比較される。図7は、NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。凝固時間は、dPTアッセイを用いて決定した。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。
【図8】図8は、dPTアッセイにおいて、フコイダンおよびPPSが第VII因子欠乏血漿の凝固を促進することを示す。凝固時間は、第VII因子欠乏血漿と、種々の濃度のフコイダンまたはPPSとのプレインキュベーション後に測定した。図8は、NASP濃度(nM)に対する凝固時間(秒)のプロットを示す。示されたデータポイントは、2連測定値の平均値である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に指示がない限り、当該分野の技術の範囲内にある薬理学、化学、生化学、凝固、組換DNA技術および免疫学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献中に十分に説明されている。例えば、Handbook of Experimental Immunology,第I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,Blackwell Scientific Publications);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,現行の追加);Sambrook, et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編,Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0022】
(I.定義)
本発明を記載するにあたって、以下の用語が使用され、かつ、以下の用語は以下のとおり定義されることが意図される。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が明らかに別のものを指示しない限り、複数の対象を包含することが留意されるべきである。従って、例えば、「NASP」への言及は、2以上のこのような因子の混合物を包含する、などである。
【0024】
「NASP」とは、本明細書中で使用される場合、希釈プロトロンビン時間(dPT)凝固アッセイまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイにおいて、未分画ヘパリン(MW範囲8,000〜30,000;平均18,000ダルトン)のモル抗凝固(凝固時間の統計的に有意な増加)活性の3分の1以下、そして好ましくは10分の1未満の抗凝固活性を示す硫酸化多糖をいう。NASPは、自然源(例えば、褐藻、樹皮、動物の組織)から精製されかつ/または改変されても、あるいはデノボ合成されてもよく、そして100ダルトン〜1,000,000ダルトンの分子量の範囲にわたってもよい。NASPは、出血性疾患(特に、凝固因子の欠乏に関連する出血性疾患)の処置において止血を改善するために、または抗凝血剤の作用を逆転させるために、本発明の方法に用いられ得る。凝固を促進し、出血を減少させるNASPの能力は、種々のインビトロ凝固アッセイ(例えば、dPTアッセイおよびaPTTアッセイ)およびインビボ出血モデル(例えば、血友病のマウスまたはイヌにおける尾部切除、横切断、全血凝固時間、または表皮出血時間測定)を用いて容易に決定される。例えば、PDR Staff.Physicians’Desk Reference.2004,Anderson et al.(1976)Thromb.Res.9:575−580;Nordfang et al.(1991)Thromb Haemost.66:464−467;Welsch et al.(1991)Thrombosis Research 64:213−222;Broze et al.(2001)Thromb Haemost 85:747−748;Scallan et al.(2003)Blood.102:2031−2037;Pijnappels et al.(1986)Thromb.Haemost.55:70−73;およびGiles et al.(1982)Blood 60:727−730を参照のこと。
【0025】
「凝血原」とは、本明細書中で使用される場合、血栓形成を開始し得るかまたは促進し得る、任意の因子または試薬をいう。本発明の凝血原としては、内因性または外因性凝固経路の任意のアクチベーター(例えば、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、および第Va因子からなる群より選択される凝固因子)が挙げられる。凝固を促進する他の試薬としては、カリクレイン、APTTイニシエーター(すなわち、リン脂質および接触アクチベーターを含む試薬)、ラッセルクサリヘビ蛇毒(RVV時間)、およびトロンボプラスチン(dPT用)が挙げられる。本発明の方法において凝血原試薬として用いられ得る接触アクチベーターとしては、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、カオリンなど、当業者に公知のものが挙げられる。凝血原は、単離されかつ実質的に精製された粗製の天然抽出物(血液または血漿サンプル)に由来しても、合成であっても、または組換えであってもよい。凝血原としては、天然に存在する凝固因子あるいは生物活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)そのフラグメント、改変体または共有結合的に修飾された誘導体が挙げられ得る。凝血原の最適濃度は、当業者によって決定され得る。
【0026】
用語「多糖」とは、本明細書中で使用される場合、複数(すなわち、2以上)の共有結合している糖残基を含むポリマーをいう。結合は、天然であっても非天然であってもよい。天然結合としては、例えば、グリコシド結合が挙げられ、一方、非天然結合としては、例えば、エステル結合部分、アミド結合部分、またはオキシム結合部分が挙げられる。多糖は、広範囲の平均分子量(MW)値のいずれかを有し得るが、一般に、少なくとも約100ダルトンである。例えば、多糖は、少なくとも約500ダルトン、1000ダルトン、2000ダルトン、4000ダルトン、6000ダルトン、8000ダルトン、10,000ダルトン、20,000ダルトン、30,000ダルトン、50,000ダルトン、100,000ダルトン、500,000ダルトンまたはそれよりも大きな分子量を有し得る。多糖は、直鎖または分枝鎖構造を有し得る。多糖は、より大きな多糖の分解(例えば、加水分解)によって生成した多糖のフラグメントを含み得る。分解は、酸、塩基、熱、または酵素で多糖を処理して分解多糖を生成する工程を包含する、当業者に公知の種々の手段のいずれかによっても達成され得る。多糖は、化学変化されても、修飾を有してもよい(硫酸化、多硫化、エステル化、およびメチル化が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0027】
用語「に由来する」は、分子の起源を確認するために本明細書中で使用されるが、その分子が作製され得る方法を限定することを意味するものではなく、例えば、化学合成によるものであっても、組換え手段によるものであってもよい。
【0028】
用語「改変体」、「アナログ」および「突然変異タンパク質」とは、本明細書中に記載される出血性疾患の処置における凝固活性のような所望の活性を保持する、参照分子の生物活性な誘導体をいう。一般に、ポリペプチド(例えば、凝固因子)に関連する用語「改変体」および「アナログ」とは、その改変が生物活性を無効化しない限り、天然の分子と比較して、1つ以上のアミノ酸付加、置換(一般には、本質的に保存的である)および/または欠乏を有する天然のポリペプチド配列および構造を有する化合物をいい、これは、以下に定義されるような参照分子と「実質的に相同」である。一般に、このようなアナログのアミノ酸配列は、参照配列に対して、これらの2つの配列を整列させた場合に、高い配列相同性(例えば、50%よりも高い、一般には60%〜70%よりも高い、特に80%〜85%以上(例えば、少なくとも90%〜95%以上)のアミノ酸配列相同性)を有する。本明細書中に説明されるように、アナログはしばしば、同数のアミノ酸を含むが、置換を含む。用語「突然変異タンパク質」は、アミノおよび/またはイミノ分子のみから構成される化合物、1つ以上のアミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などが挙げられる)を含むポリペプチド、置換結合および当該分野で公知の他の改変を有するポリペプチド、天然に存在する分子および天然に存在しない(例えば、合成)分子の両方、環化分子、分岐分子などが挙げられるがこれらに限定されない、1つ以上のアミノ酸様分子を有するポリペプチドをさらに包含する。この用語はまた、1つ以上のN置換グリシン残基(「ペプトイド」)および他の合成アミノ酸またはペプチドを含む分子も包含する。(ペプトイドの記載について、例えば、米国特許第5,831,005号;同第5,877,278号;および同第5,977,301号;Nguyen et al.,Chem Biol.(2000)7:463−473;およびSimon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992)89:9367−9371を参照のこと)。好ましくは、アナログまたは突然変異タンパク質は、天然の分子と少なくとも同じ凝固活性を有する。ポリペプチドアナログおよび突然変異タンパク質を作製する方法は、当該分野において公知であり、さらに以下に記載される。
【0029】
上に説明したとおり、アナログは一般に、本質的に保存的である置換(すなわち、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリー内で起こる置換)を含む。具体的には、アミノ酸は、一般に以下の4つのファミリーに分類される:(1)酸性−−アスパルテートおよびグルタメート;(2)塩基性−−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)無極性−−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、しばしば芳香族アミノ酸として分類される。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの単独置換、アスパルテートのグルタメートでの単独置換、トレオニンのセリンでの単独置換、または構造的に関連したアミノ酸によるアミノ酸の類似の保存的置換が、生物活性に対して大きな影響を及ぼさないことは、合理的に予測可能である。例えば、目的のポリペプチドは、分子の所望の機能がインタクトなままである限り、約5〜10個までの保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換、あるいは約15〜25個までの保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換、あるいは5〜25の間の任意の整数個の保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換を含み得る。当業者は、当該分野で周知のHopp/WoodsプロットおよびKyte−Doolittleプロットを参照することによって、変化を許容し得る目的の分子の領域を容易に決定し得る。
【0030】
「誘導体」とは、参照分子の所望の生物活性(例えば、凝固活性、TFPI活性の阻害)が保持される限り、目的の参照分子またはそのアナログの任意の適切な改変(例えば、硫酸化、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、ポリマー結合体化(例えば、ポリエチレングリコールとの)、または他の外来部分の付加)を意図する。例えば、多糖は、1つ以上の有機基または無機基で誘導体化され得る。例としては、少なくとも1つのヒドロキシル基が、別の部分(例えば、硫酸基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、ニトリル基、ハロ基、シリル基、アミド基、アシル基、脂肪族基、芳香族基、または糖基)で置換されたか、あるいは環酸素が、硫黄、窒素、メチレン基などで置換された多糖が挙げられる。多糖は、例えば凝血促進機能を改善するために、化学変化され得る。このような改変としては、硫酸化、多硫化、エステル化、およびメチル化が挙げられ得るが、これらに限定されない。アナログおよび誘導体を作製する方法は、当該分野で一般に利用可能である。
【0031】
「フラグメント」とは、インタクトな全長配列および構造の一部のみからなる分子を意図する。多糖のフラグメントは、より大きな多糖の分解(例えば、加水分解)によって生成され得る。多糖の活性フラグメントは、当該フラグメントが生物活性(例えば、凝固活性および/またはTFPI活性を阻害する能力)を保持するならば、一般に、全長多糖の少なくとも約2〜20個の糖単位、好ましくは全長分子の少なくとも約5〜10個の糖単位、または2個の糖単位と全長分子の間の任意の整数個の糖単位を含む。ポリペプチドのフラグメントは、天然のポリペプチドのC末端欠乏、N末端欠乏、および/または内部欠乏を含み得る。特定のタンパク質の活性フラグメントは、当該フラグメントが本明細書中で定義されるような生物活性(例えば、凝固活性)を保持するならば、一般に、全長分子の少なくとも約5〜10連続アミノ酸残基、好ましくは全長分子の少なくとも約15〜25連続アミノ酸残基、そして最も好ましくは全長分子の少なくとも約20〜50連続アミノ酸残基以上であるか、または5アミノ酸と全長配列の間の任意の整数個の連続アミノ酸残基を含む。
【0032】
「実質的に精製された」とは、一般に、物質(例えば、硫酸化多糖)が、この物質が存在するサンプルの主要な割合(%)を占めるような、物質の単離をいう。代表的には、サンプル中において実質的に精製された成分は、サンプルの50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90〜95%を占める。目的の多糖、ポリヌクレオチド、およびポリペプチドを精製する技術は、当該分野で周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度勾配沈降が挙げられる。
【0033】
「単離された」とは、多糖またはポリペプチドをいう場合、示された分子が、この分子が天然に見出される生物体全体から分離した状態であるか、または同種の他の生物学的高分子が実質的に存在しないところに存在することを意味する。
【0034】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド部分間の同一性パーセントをいう。2つの核酸配列、または2つのポリペプチド配列は、これらの配列が、それら分子のうちの規定の長さにわたって、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される場合、実質的に相同とはまた、特定の配列に完全な同一性を示す配列もいう。
【0035】
一般に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列のヌクレオチド対ヌクレオチドの正確な一致、または2つのポリペプチド配列のアミノ酸対アミノ酸の正確な一致をいう。同一性パーセントは、これらの配列を整列させ、この2つの整列した配列間の正確なマッチ数を数え、参照配列の長さで除算し、そしてその結果に100を積算することによって、2つの分子(参照配列およびこの参照配列に対する同一性%が未知である配列)間の配列情報を直接比較することにより決定され得る。容易に入手可能なコンピュータプログラム、例えば、ALIGN(Dayhoff,M.O.,Atlas of Protein Sequence and Structure,M.O.Dayhoff編,5補遺3:353−358,National biomedical Research Foundation,Washington,DC)が、分析を補助するのに用いられ得る。ALIGNは、SmithおよびWatermanの局所ホモロジーアルゴリズム(Advances in Appl.Math.2:482−489,1981)をペプチド分析に適応させたものである。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version8(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)に同梱されている、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラム(これらもまた、SmithおよびWatermanのアルゴリズムに基づく)である。これらのプログラムは、製造者が推奨し、上述のWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されるデフォルトパラメータを用いて、容易に利用される。例えば、特定のヌクレオチド配列の参照配列に対する同一性パーセントは、6つのヌクレオチド位置のギャップペナルティおよびデフォルトスコアリング表を用いた、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0036】
本発明に関連して同一性パーセントを算定する別の方法は、University of Edinburghが著作権を有し、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、そしてIntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)によって配布されるプログラムのMPSRCHパッケージを用いることである。この一式のパッケージからのSmith−Watermanアルゴリズムは、デフォルトパラメータがスコアリング表に用いられる場合(例えば、12のギャップ開始ペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、および6のギャップ)に使用され得る。得られたデータからの「マッチ」値は、「配列同一性」を示す。配列間の同一性パーセントまたは類似性を算出する他の適切なプログラムは、当該分野で一般に公知であり、例えば、デフォルトパラメータを用いる別のアルゴリズムプログラムはBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用され得る:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート順序=HIGH SCORE;データベース=重複無し(non−redundant)、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、容易に入手可能である。
【0037】
あるいは、相同性は、相同領域間に安定な2重鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションし、次いで1種以上の1本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、そして消化されたフラグメントをサイズ決定することによって決定され得る。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、特定の系のために定義されるようなストリンジェント条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件の規定は、当該分野の技術の範囲内にある。例えば、Sambrook et al.,(前述);DNA Cloning(前述);Nucleic Acid Hybridization(前述)を参照のこと。
【0038】
「組換え」は、核酸分子について説明するために本明細書中で使用される場合、ゲノム起源、cDNA起源、ウイルス起源、半合成起源、または合成起源のポリヌクレオチドを意味し、このポリヌクレオチドは、その起源または操作によって、そのポリヌクレオチドが本来関連するポリヌクレオチドの全部または一部とは関連していない。用語「組換え」は、タンパク質またはポリペプチドに関して使用される場合、組換えポリヌクレオチドの発現によって生成されるポリペプチドを意味する。一般に、目的の遺伝子は、以下にさらに記載されるように、クローニングされ、次いで形質転換された生物体内で発現される。宿主生物体は、発現条件下で外来遺伝子を発現してタンパク質を産生する。
【0039】
「脊椎動物被験体」とは、ヒトおよび他の霊長類(例えば、チンパンジーおよび他の類人猿ならびにサル種のような、非ヒト霊長類を含む);家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ);家庭内哺乳類(例えば、イヌおよびネコ);齧歯類を含む実験動物(例えば、マウス、ラットおよびモルモット);家庭で飼われている鳥、野鳥および猟鳥を含む鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、およびアヒル、ガチョウなどのような他の家禽)が挙げられるがこれらに限定されない、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を示さない。従って、成体および新生体の両方が包含されることが意図される。本明細書中に記載される発明は、任意の上記の脊椎動物種における使用を意図するものである。
【0040】
用語「患者」とは、本発明のNASPの投与によって予防または処置され得る状態に罹患しているかまたはこのような状態になりやすい、ヒトおよび動物の両方を含む生体をいう。
【0041】
本明細書において、「生物学的サンプル」とは、例えば、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚のサンプル、皮膚、気道、腸管および尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、乳汁、血球、器官、生検、ならびにまたインビトロ細胞培養物成分(培地中の細胞および組織の成長によって生じる条件培地が挙げられるが、これらに限定されない)のサンプル(例えば、組換え細胞、および細胞成分)も挙げられるがこれらに限定されない、被験体から単離される組織または流体のサンプルをいう。
【0042】
NASP、血液因子、または他の治療薬の「治療有効用量または治療有効量」とは、本明細書中に記載されるように投与されると、ポジティブな治療応答(例えば、出血の減少または凝固時間の短縮)を引き起こす量を意図する。
【0043】
用語「出血性疾患」は、本明細書中で使用される場合、過度の出血と関連している任意の障害(例えば、先天性凝固障害、後天性凝固障害、または外傷に起因する出血状態)をいう。このような出血性疾患としては、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1以上の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK))欠乏、臨床的に明らかな出血に関与する1以上の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含む)、α−アンチプラスミン欠損、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
(II.発明の実施のための形態)
本発明を詳細に記載する前に、本発明が特定の処方物またはプロセスパラメータに限定されるものではなく、当然変動し得るものと理解されるべきである。本明細書中で使用される技術用語は、単に本発明の特定の実施形態を記載する目的であり、限定を意図するものではない。
【0045】
本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な多数の方法および材料も、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料および方法が、本明細書中に記載されている。
【0046】
(A.総括)
血友病(Hem)AおよびHem B、重症フォンヴィレブランド病(svWD)、ならびに重症第VII因子(FVII)欠乏を含む血液凝固障害は、代表的には、因子補充(例えば、Hem AおよびsvWDに対して第VIII因子、Hem Bに対して第IX因子、FVII欠乏などに対して第VII(a)因子)によって処置されている(Bishop et al.(2004)Nat.Rev.Drug Discov.3:684−694;Carcao et al.(2004)Blood Rev.18:101−113;Roberts et al.(2004)Anesthesiology 100:722−730;およびLee(2004)Int.Anesthesiol.Clin.42:59−76に最近概説された)。このような治療は多くの場合有効であるが、高いコスト、不便さ(すなわち、静脈内投与)、および中和抗体産生を含む、有用性を制限する特徴がある(Bishop et al.,前述;Carcao et al.,前述;Roberts et al.,前述;Lee,前述;およびBohn et al.,(2004)Haemophilia 10 追補1:2−8)。FVIIaは、種々の出血性疾患においてますます利用されているが(Roberts et al.,前述)、前述の制約がなく、かつ、広い用途を有する代替の単一化合物の凝血原療法は、重要である。
【0047】
出血性疾患の個体において止血を改善する1つの一般的なアプローチは、血液凝固の外因性経路をアップレギュレートすることにより凝結の開始を改善することである。内因性および外因性の凝固経路が、トロンビン生成およびフィブリンクロット(凝固)形成に寄与する一方で(Davie et al.(1991)Biochemistry 30:10363−10370)、外因性経路または組織因子(TF)媒介性経路はインビボにおける凝固の開始に重要であり、かつ、伝播に寄与する(Mann(2003)Chest 124(3 追補):lS−3S;Rapaport et al.(1995)Thromb.Haemost.74:7−17)。外因性経路活性をアップレギュレートするための1つの潜在的機序は、組織因子経路インヒビター(TFPI)の減弱である。TFPIは、外因性経路の活性化の持続性ダウンレギュレーションをもたらす、FVIIa/TFのKunitz型プロテイナーゼインヒビターである(Broze(1992)Semin.Hematol.29:159−169;Broze(2003)J.Thromb.Haemost.1:1671−1675;およびJohnson et al.(1998)Coron.Artery Dis.9(2−3):83−87総説を参照のこと)。実際に、マウスにおけるヘテロ接合性のTFPI欠乏は、血栓形成の悪化を引き起こし得(Westrick et al.(2001)Circulation 103:3044−3046)、そしてTFPI遺伝子突然変異は、ヒトにおける血栓症の危険因子である(Kleesiek et al.(1999)Thromb.Haemost.82:1−5)。TFPIのターゲティングによって血友病における凝固を調節することは、Nordfang et al.およびWun et al.によって記載され、彼らは、抗TFPI抗体が血友病血漿の凝固時間を短縮し得ること(Nordfang et al.(1991)Thromb.Haemost.66:464−467;Welsch et al.(1991)Thromb.Res.64:213−222)、および、抗TFPI IgGが第VIII因子欠乏のウサギの出血時間を改善すること(Erhardtsen et al.(1995)Blood Coagul.Fibrinolysis 6:388−394)を示した。
【0048】
1つの分類として、硫酸化多糖は、動物およびヒトにおいてしばしば有利な耐容性プロフィールを有する過剰の生物活性を特徴とする。これらのポリアニオン分子は、多くの場合、植物および動物の組織に由来し、ヘパリン、グリコサミノグリカン、フコイダン、カラギーナン、ペントサンポリサルフェート、およびデルマタン硫酸または硫酸デキストランを含む広範囲のサブクラスを包含する(Toida et al.(2003)Trends in Glycoscience and Glycotechnology 15:29−46)。低分子量かつ低不均質性の化学的に合成された硫酸化多糖が報告されており、薬物開発の各段階に達している(Sinay(1999)Nature 398:377−378;Bates et al.(1998)Coron.Artery Dis.9:65−74;Orgueira et al.(2003)Chemistry 9:140−169;McAuliffe(1997)Chemical Industry Magazine 3:170−174;Williams et al.(1998)Gen.Pharmacol.30:337−341)。ヘパリン様硫酸化多糖は、抗トロンビンIIIおよび/またはヘパリン補助因子IIの相互作用によって媒介される特異な抗凝固活性を示す(Toida et al.前述)。特に、天然起源であるかまたは化学的に改変された特定の化合物は、抗凝固活性が十分でない濃度(または用量)では、他の生物活性を示す(Williams et al.1998)Gen.Pharmacol.30:337−341;Wan et al.(2002)Inflamm.Res.51:435−443;Bourin et al.(1993)Biochem.J.289(Pt2):313−330;McCaffrey et al.(1992)Biochem.Biophys.Res.Commun.184:773−781;Luyt et al.(2003)J.Pharmacol.Exp.Ther.305:24−30)。さらに、硫酸ヘパリンは、TFPIと強い相互作用を示すことが示されている(Broze(1992)Semin.Hematol.29:159−169;Broze(2003)J.Thromb.Haemost.1:1671−1675;Johnson et al.(1998)Coron.Artery Dis.9:83−87;Novotny et al.(1991)Blood;78(2):394−400)。
【0049】
本明細書中に記載されるように、特定の硫酸化多糖は、TFPIと相互作用して、抗凝固に関与する濃度よりも低い濃度でその活性を阻害する。このような分子は、凝固形成に障害が起きた場合に役立ち得る。
【0050】
(B.凝固促進因子としてのNASP)
本発明は、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)が、出血性疾患の患者の処置において、凝血原として用いられ得るという発見に基づいている。凝固を促進するためにヘパリン様硫酸化多糖のような硫酸化多糖を逆説的に利用する、止血を調節するための新規アプローチが、本発明者らによって発見された。本明細書中に記載される選択された硫酸化多糖は、抗凝固活性をほとんど有さないか、または抗凝固活性を示す濃度よりも顕著に低い濃度で抗凝固促進を示し、従って「非抗凝固性の硫酸化多糖」を示す。
【0051】
実施例4〜6に示されるように、希釈プロトロンビン時間(dPT)凝固アッセイおよび活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイによれば、NASPは、血友病A(Hem−A)または血友病B(Hem−B)を有する被験体由来の血漿の凝固を促進する。さらに、NASPは、傷害後の血友病Aマウスモデルおよび血友病Bマウスモデルにおける出血時間を短縮する(実施例7)。本明細書中に開示される実験において、特定の候補NASPは、ヘパリンと比較して少なくとも1/10低い抗凝固活性を示すことが、凝固アッセイで示される。さらに、NASPのサブセット(ペントサンポリサルフェート(PPS)およびフコイダンが挙げられる)は、組織因子経路インヒビター(TFPI)を阻害し、かつ、希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイにおいて4〜500nMの範囲の濃度で試験した場合に、FVII濃度の低いヒト血友病Aおよび血友病Bの血漿(複数または単数)の凝固時間を改善した(すなわち、加速させた)。インビボでの止血の改善は、血友病Aマウスまたは血友病Bマウスにおいて、PPSまたはフコイダン、あるいはNASPと因子補充の組み合わせを低用量で皮下投与した後に観察された。因子欠乏マウスの出血惹起後の生存の増加もまた観察された。これらの結果は、選択されたNASPの全身投与が、出血性疾患における止血を調節するためのユニークなアプローチになり得ることを示す。
【0052】
従って、本発明は、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む、出血性疾患の被験体における止血を制御するためのNASPの使用に関する。
【0053】
(C.NASP)
本発明の方法に用いるNASPは、凝血促進活性を有する硫酸化多糖である。潜在的なNASPの非凝固性は、希釈プロトロンビン時間(dPT)凝固アッセイまたは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイを用いて決定される。非凝固性の硫酸化多糖は、未分画ヘパリン(MW範囲8,000〜30,000;平均18,000ダルトン)の3分の1以下、好ましくは10分の1未満の抗凝固活性を示す(凝固時間の統計的に有意な増加によって測定される)。
【0054】
潜在的なNASP活性を有する硫酸化多糖としては、グリコサミノグリカン(GAG)、N−アセチルヘパリン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)およびN−脱硫酸化ヘパリン(Sigma−Aldrich)を含むヘパリン様分子、スルファトイド(sulfatoid)、多硫酸化オリゴ糖(Karst et al.(2003)Curr.Med.Chem.10:1993−2031;Kuszmann et al.(2004)Pharmazie.59:344−348)、コンドロイチン硫酸(Sigma−Aldrich)、デルマタン硫酸(Celsus Laboratories Cincinnati,OH)、フコイダン(Sigma−Aldrich)、ペントサンポリサルフェート(PPS)(Ortho−McNeil Pharmaceuticals,Raritan,NJ)、フコピラノンサルフェート(fucopyranon sulfate)(Katzman et al.(1973)J.Biol.Chem.248:50−55)、および新規スルファトイド、例えばGM1474(Williams et al.(1998)General Pharmacology 30:337)およびSR80258A(Burg et al.(1997)Laboratory Investigation 76:505)、および新規ヘパリノイド、およびそのアナログが挙げられるが、これらに限定されない。NASPは、天然源(例えば、褐藻、樹皮、動物の組織)から精製および/または改変され得るか、あるいはデノボ合成され得、そして分子量は100ダルトン〜1,000,000ダルトンの範囲であり得る。潜在的なNASP活性を有するさらなる化合物としては、過ヨウ素酸−酸化ヘパリン(POH)(Neoparin,Inc.,San Leandro,CA)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)(Sigma−Aldrich)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)(Sigma−Aldrich)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)(Sigma−Aldrich)、硫酸デキストラン(DXS)(Sigma−Aldrich)、ヘパリン誘導オリゴ糖(HDO)(Neoparin,Inc.,San Leandro,CA)が挙げられ得る。
【0055】
原則として、複合糖質の単糖成分上の任意の遊離ヒドロキシル基は、本発明の実施においてNASPとして潜在的に使用される硫酸化複合糖質を生成するために、硫酸化によって改変され得る。例えば、このような硫酸化複合糖質としては、限定しないが、硫酸化ムコ多糖(D−グルコサミン残基およびD−グルコロン酸残基)、カードラン(カルボキシメチルエーテル、硫酸水素塩、カルボキシメチル化カードラン)(Sigma−Aldrich)、硫酸化シゾフィラン(Itoh et al.(1990)Int.J.Immunopharmacol.12:225−223;Hirata et al.(1994)Pharm.Bull.17:739−741)、硫酸化グリコサミノグリカン、硫酸化多糖−ペプチドグリカン複合体、硫酸化アルキルマルトオリゴ糖(Katsuraya et al.(1994)Carbohydr Res.260:51−61)、硫酸アミロペクチン、N−アセチルヘパリン(NAH)(Sigma−Aldrich)、N−アセチル−脱−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−o−SH)(Sigma−Aldrich)、脱−N−硫酸化−ヘパリン(De−NSH)(Sigma−Aldrich)、および脱−N−硫酸化−アセチル化−ヘパリン(De−NSAH)(Sigma−Aldrich)が挙げられる。
【0056】
凝固を促進し、出血を減少させるNASPの能力は、種々のインビトロ凝固アッセイ(例えば、dPTアッセイおよびaPTTアッセイ)およびインビボ出血モデル(例えば、血友病のマウスまたはイヌにおける尾部切除または表皮出血時間測定)を用いて容易に決定される。例えば、PDR Staff.Physicians’ Desk Reference.2004,Anderson et al.(1976)Thromb.Res.9:575−580;Nordfang et al.(1991)Thromb Haemost.66:464−467;Welsch et al.(1991)Thrombosis Research 64:213−222;Broze et al.(2001)Thromb Haemost 85:747−748;Scallan et al.(2003)Blood.102:2031−2037;Pijnappels et al.(1986)Thromb.Haemost.55:70−73;およびGiles et al.(1982)Blood 60:727−730を参照のこと。凝固アッセイは、NASPおよび1以上の血液因子、凝血原、または他の試薬の存在下で行われ得る。例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、およびフォンヴィレブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子;ならびに/あるいは1以上の試薬(APTT試薬、トロンボプラスチン、フィブリン、TFPI、ラッセルクサリヘビ蛇毒、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、およびカオリンが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない、1以上の因子が添加され得る。
【0057】
実施例3〜4および図2〜3は、本明細書中でNASPと呼ばれる薬剤が、本当に「非抗凝血剤」である(すなわち、検討された濃度の範囲にわたって、凝固時間を有意に増加させない)ことを確認する。このような化合物は、これらの化合物が示し得るいかなる抗凝固活性も、これらの化合物が凝血促進活性を示す濃度よりも有意に高い濃度でしか示さないならば、本発明の方法および組成物に用いられ得る。所望の凝血促進活性が生じる濃度に対する、所望されない抗凝血性が生じる濃度の比率は、当該NASPの治療係数と呼ばれる。本発明のNASPの治療係数は、5、10、30、100、300、1000またはそれ以上であってもよい。
【0058】
(D.薬学的組成物)
必要に応じて、本発明のNASP組成物は、薬学的組成物を提供するために1以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含み得る。例示的な賦形剤としては、限定されないが、炭水化物、無機塩類、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせが挙げられる。注射可能組成物に適した賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、および界面活性剤が挙げられる。糖、アルジトールのような誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーのような炭水化物は、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤としては、例えば、以下が挙げられる:フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、Dマンノース、ソルボースなどのような単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどのような二糖類;ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどのような多糖;およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのようなアルジトール。賦形剤としてはまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせのような、無機塩類または緩衝液も挙げられる。
【0059】
本発明の組成物はまた、微生物増殖の予防または防止のための抗菌剤を含み得る。本発明に適した抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール(thimersol)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
酸化防止剤も、同様に組成物中に存在し得る。酸化防止剤は、酸化を防止するために用いられ、それによって、NASPまたは調製物の他の成分の変質を防止する。本発明で用いられる適切な酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
界面活性剤は、賦形剤として存在し得る。例示的な界面活性剤としては、以下が挙げられる:ポリソルベート(例えば、「Tween 20」および「Tween 80」)、ならびにプルロニック(例えば、F68およびF88)(BASF,Mount Olive,New Jersey);ソルビタンエステル;脂質、例えば、レシチンのようなリン脂質および他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(ただし、好ましくはリポソームの形態でない)、脂肪酸および脂肪酸エステル;コレステロールのようなステロイド;EDTAのようなキレート剤;ならびに亜鉛および他のこのような適切なカチオン。
【0062】
酸または塩基は、組成物中に賦形剤として存在し得る。用いられ得る酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される酸が挙げられる。適切な塩基の例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム(potassium fumerate)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される塩基が挙げられる。
【0063】
組成物中のNASPの量(例えば、薬物送達系に含まれる場合)は、多くの因子によって変動するが、組成物が単位投薬形態であるかまたは容器(例えば、バイアル)中にある場合、その量は最適には治療有効用量である。治療有効用量は、臨床的に望ましいエンドポイントを生じる量を決定するために、組成物の量を増加させて連続投与することによって、実験的に決定され得る。
【0064】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質および機能ならびに組成物の特定のニーズによって変動する。代表的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、慣用的な実験によって決定され、すなわち、種々の量の賦形剤(少量から多量までの範囲わたる)を含む組成物を調製し、安定性および他のパラメータを検査し、次いで、有意な悪影響を及ぼすことなく最適性能を達成する範囲を決定することによって決定される。しかしながら、一般に賦形剤(単数または複数)は、約1重量%〜約99重量%、好ましくは約5重量%〜約98%重量%、より好ましくは約15重量%〜約95重量%の賦形剤(30重量%未満の濃度が最も好ましい)の量で組成物中に存在する。これらの前述の薬学的賦形剤は、他の賦形剤とともに、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、第19版、Williams & Williams,(1995),「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載される。
【0065】
組成物は、すべてのタイプの処方物、特に、注射に適した処方物(例えば、使用前に溶媒で再構成され得る粉末剤または凍結乾燥物)、ならびに注射可能な状態の溶液または懸濁液、使用前にビヒクルと混合される乾燥した不溶性の組成物、および投与前に希釈される乳剤および液体濃縮物を包含する。注射前に固形組成物を再構成するのに適した希釈剤の例としては、注射用静菌水、5%デキストロース水溶液、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。液体の薬学的組成物について、溶液および懸濁液が想定される。さらなる好ましい組成物としては、経口送達、眼送達、または局在送達のための組成物が挙げられる。
【0066】
本明細書中の製剤はまた、意図される送達様式および使用様式に応じて、シリンジ、埋め込みデバイスなどに収容され得る。好ましくは、本明細書中に記載されるNASP組成物は、あらかじめ測定されたか、あらかじめパッケージされた形態の、単回投与に適した本発明の結合体または組成物の量を意味する、単位投薬形態である。
【0067】
本明細書中のNASP組成物は、必要に応じて1以上の追加の薬剤(例えば、止血剤、血液因子、または状態もしくは疾患について被験体を処置するのに用いられる他の薬剤)を含み得る。特に、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子のような1以上の血液因子を含む、合成調製物が好ましい。NASP組成物はまた、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられるが、これらに限定されない);またはならびに外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられるが、これらに限定されない)のような、他の凝血原も含み得る。NASP組成物は、天然に存在する凝固因子、合成凝固因子、または組換え凝固因子、あるいは生物活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)そのフラグメント、改変体または共有結合的に修飾された誘導体を含み得る。あるいは、このような薬剤は、NASPとは別個の組成物中に含まれ得、そして本発明のNASP組成物と同時に、前に、または後に、併用投与され得る。
【0068】
(E.投与)
NASPを用いた少なくとも1つの治療上有効な治療サイクルが、被験体に投与される。「治療上有効な治療サイクル」とは、投与されると、個体の出血性疾患の処置に関してポジティブな治療応答を引き起こす治療サイクルを意図する。止血を改善するNASPを用いた治療サイクルが、特に重要である。「ポジティブな治療応答」とは、本発明に従って処置を受ける個体が、出血性疾患の1つ以上の症状の改善(血液凝固時間の短縮および出血の減少および/または因子補充療法の必要性の低下のような改善を含む)を示すことを意図する。
【0069】
特定の実施形態において、1以上のNASPおよび/または他の治療薬(例えば、止血剤、血液因子、または他の薬剤)を含む、複数の治療有効用量の組成物が投与される。本発明の組成物は、必ずしもその必要はないが、代表的には、経口的に投与されるか、注射によって(皮下に、静脈内にまたは筋肉内に)投与されるか、注入によって投与されるか、または局所的に投与される。製剤は、投与の直前に溶液または懸濁液の形態であってもよいが、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、カプセル、粉末、ゲル、マトリックス、坐薬などのような別の形態をとってもよい。さらなる投与様式としては、例えば、肺、直腸、経皮、経粘膜、髄腔内、心膜、動脈内、大脳内、眼内、腹腔内なども企図される。NASPおよび他の薬剤を含む薬学的組成物は、当該分野で公知の任意の医学的に受容可能な方法に従って、同じ投与経路かまたは異なる投与経路を用いて投与され得る。
【0070】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、病変、傷害、または手術の結果としての出血の処置については、NASPの局所送達に用いられる。本発明による調製物はまた、局所療法にも適している。例えば、NASPは、出血の部位に注射によって投与され得るか、または固体、液体もしくは軟膏の形態で、好ましくは接着テープまたは創傷カバーによって投与され得る。坐剤、カプセル剤(特に、胃液耐性カプセル剤)、ドロップまたはスプレーもまた用いられ得る。出血の部位を標的化するために、特定の調製物および適切な投与方法が選択される。
【0071】
別の実施形態において、NASPおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、例えば計画的手術の前に、予防的に投与される。このような予防的用途は、既知の血液凝固障害を既に有する被験体にとって特に価値がある。
【0072】
本発明の別の実施形態において、NASPおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、徐放性処方物の状態であるか、または徐放性デバイスを用いて投与される処方物の状態である。このようなデバイスは、当該分野において周知であり、例えば、経皮パッチ、および非徐放性の薬学的組成物を用いて徐放作用を達成するために、種々の用量で連続的な定常様式で経時的に薬物送達を提供し得る、小型埋め込みポンプが挙げられる。
【0073】
本発明はまた、結合体または組成物中に含まれるNASPを用いた処置に応答性の状態を患う患者に、本明細書中に提供されるようなNASPを含む結合体を投与する方法を提供する。この方法は、本明細書中に記載される任意の様式によって、治療有効量の結合体または薬物送達系(好ましくは、薬学的組成物の一部として提供される)を投与する工程を包含する。この投与方法は、NASPを用いた処置に応答性の任意の状態を処置するために用いられてもよい。より具体的には、本明細書中の組成物は、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1以上の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK))欠乏、臨床的に明らかな出血に関与する1以上の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含む)、α−アンチプラスミン欠損、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血を含む、出血性疾患を処置するのに有効である。
【0074】
特定のNASPが効率的に処置される条件は、当業者であれば理解する。投与される実際の用量は、被験体の年齢、体重、および全身状態、ならびに処置される状態の重症度、ヘルスケアの専門家の判断、および投与される結合体によって変化する。治療有効量は、当業者によって決定され得、各特定の症例の特定の要件に適合される。
【0075】
一般に、治療有効量は、1日にNASP約0.01mg/kg〜200mg/kg、より好ましくは、1日に約0.01mg/kg〜20mg/kg、さらにより好ましくは、1日に約0.02mg/kg〜2mg/kgの範囲である。好ましくは、このような用量は、0.01〜50mg/kgを1日4回(QID)、0.01〜10mg/kg QID、0.01〜2mg/kg QID、0.01〜0.2mg/kg QID、0.01〜50mg/kgを1日3回(TID)、0.01〜10mg/kg TID、0.01〜2mg/kg TID、0.01〜0.2mg/kg TID、0.01〜100mg/kgを1日2回(BID)、0.01〜10mg/kg BID、0.01〜2mg/kg BID、または0.01〜0.2mg/kg BIDの範囲である。投与される化合物の量は、特定のNASPの効力および所望の大きさまたは凝血促進作用および投与経路に依存する。
【0076】
NASP(先と同様に、好ましくは製剤の一部として提供される)は、単独で、あるいは他のNASPまたは治療薬(例えば、止血剤、血液因子、または特定の状態もしくは疾患を処置するのに用いられる他の薬剤)と組み合わせて、臨床医の判断や患者の要求などに依存する種々の投薬スケジュールに従って、投与され得る。具体的な投薬スケジュールは、当業者に公知であるか、または慣用的な方法を用いて実験的に決定され得る。例示的な投薬スケジュールとしては、限定されないが、1日5回投与、1日4回投与、1日3回投与、1日2回投与、1日1回投与、週3回投与、週2回投与、週1回投与、月2回投与、月1回投与、およびその任意の組み合わせが挙げられる。好ましい組成物は、1日1回よりも多くの投与を必要としない組成物である。
【0077】
NASPは、他の薬剤の前に、他の薬剤と同時に、または他の薬剤に続いて投与され得る。他の薬剤と同時に投与される場合、NASPは、同じかまたは異なる組成物中に提供され得る。従って、NASPおよび他の薬剤は、併用療法として個体に与えられ得る。「併用療法」とは、物質の併用による治療効果が治療を受ける被験体にもたらされるような、被験体への投与を意図する。例えば、併用療法は、NASPを含むある用量の薬学的組成物と、止血剤または凝固因子(例えば、FVIIIまたはFIX)のような少なくとも1つの他の薬剤を含むある用量の薬学的組成物とを、特定の投薬レジメンに従って、治療有効量を含むように組み合わせて投与することによって達成され得る。同様に、1つ以上のNASPおよび治療薬は、少なくとも1つの治療用量で投与され得る。別々の薬学的組成物の投与は、これらの物質の併用の治療効果が治療を受ける被験体にもたらされる限り、同時にかまたは別々に(すなわち、連続的にか、いずれかの順序でか、同日にか、または他日に)行われ得る。
【0078】
(F.適用)
1つの態様において、NASPは、出血性疾患(特に、凝固因子の欠乏に関連する出血性疾患)の処置において止血を改善するために、または被験体における抗凝血剤の作用を逆転させるために、本発明の方法に用いられ得る。NASPは、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷に起因する出血状態を含む出血性疾患を処置するために、被験体に投与され得る。NASPで処置され得る出血性疾患の例としては、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1以上の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン(HMWK))欠乏、臨床的に明らかな出血に関与する1以上の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血症、低フィブリノーゲン血症、および異常フィブリノーゲン血症を含む)、α−アンチプラスミン欠損、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠に起因するような過度の出血が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、NASPは、血友病A、血友病Bおよびフォンヴィレブランド疾患を含む先天性凝固障害を処置するために用いられる。他の実施形態において、NASPは、第VIII因子、フォンヴィレブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子の欠乏、特に、血液凝固因子に対するインヒビターまたは自己免疫に起因する障害、あるいは凝固因子の合成の低下を引き起こす疾患または状態に起因する止血障害を含む、後天性凝固障害を処置するために用いられる。
【0079】
患者の要求は、処置される特定の出血性疾患によって異なる。例えば、NASPは、慢性症状(例えば、先天性または後天性凝固因子欠乏症)を処置するために、複数用量で長期間にわたって投与され得る。あるいは、NASPは、急性状態(例えば、手術または外傷に起因する出血、あるいは凝固因子補充療法を受けている被験体における因子インヒビター/自己免疫症状の発現)を処置するために、単回または複数用量で比較的短期間(例えば、1〜2週間)投与されてもよい。さらに、NASP治療は、他の止血剤、血液因子、および医薬品と組み合わせて用いられ得る。例えば、被験体は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1以上の因子の治療有効量を投与され得る。処置は、凝血原、例えば、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。さらに、血液製剤の輸液は、過度の出血が起きている被験体における失血を補充するのに必要であり得、そして傷害の場合、外科的修復は、止血するのに適し得る。
【0080】
本発明はまた、被験体における抗凝血剤の作用を逆転させる方法(NASPを含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する方法)を提供する。特定の実施形態において、被験体は、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリンまたはジクマロール)、TFPI、AT III、ループス抗凝固因子、線虫抗血液凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位をブロックした第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子インヒビター、第Xa因子インヒビター(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、およびラザクサバン(DPC906)を含む)、第Va因子および第VIIIa因子のインヒビター(活性化プロテインC(APC)および可溶性トロンボモジュリンを含む)、トロンビンインヒビター(ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランを含む)が挙げられるがこれらに限定されない、抗凝血剤で処置され得る。特定の実施形態において、被験体における抗凝血剤は、凝固因子に結合する抗体(第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、または高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない)であってもよい。
【0081】
特定の実施形態において、NASPは、単独で投与され得るか、または1以上の異なるNASPとともに、かつ/または被験体における抗凝血剤の作用を逆転させるために1以上の他の治療薬と組み合わせて、併用投与され得る。例えば、被験体は、NASPならびに第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される1以上の因子を含む組成物の治療有効量を投与され得る。処置は、凝血原、例えば、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。
【0082】
別の態様において、本発明は、外科的または侵襲的手技を受ける被験体における凝固を改善する方法を提供し、この方法は、非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する。特定の実施形態において、NASPは、単独で投与され得るか、または1以上の異なるNASPとともに、かつ/または1以上の他の治療薬と組み合わせて、外科的または侵襲的手技を受ける被験体に併用投与され得る。例えば、被験体は、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群より選択される、1以上の因子の治療有効量を投与され得る。処置は、凝血原、例えば、内因性凝固経路のアクチベーター(第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲンが挙げられる);または外因性凝固経路のアクチベーター(組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子が挙げられる)を投与する工程をさらに包含し得る。
【0083】
別の態様において、本発明は、TFPIを含む組成物を、TFPI活性を阻害するのに十分な量のNASPと混合する工程を包含する、TFPI活性を阻害する方法を提供する。特定の実施形態において、TFPI活性は、NASPを含む組成物の治療有効量を被験体に投与する工程を包含する方法によって、被験体において阻害される。特定の実施形態において、本発明は、生物学的サンプル中のTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、生物学的サンプル(例えば、血液または血漿)を、TFPI活性を阻害するのに十分な量のNASPと混合する工程を包含する。
【0084】
(III.実験)
下記は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。これらの実施例は、単に例示の目的で挙げられるものであり、本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【0085】
使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確を期すための努力がなされているが、多少の実験誤差および偏差は、当然容認されるべきである。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
(材料および方法)
(A.試薬)
ヘパリンおよび修飾ヘパリン、ならびにフコイダンは、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。ペントサンポリサルフェートナトリウム(PPS)の供給源は、Ortho−McNeil Pharmaceuticals(Raritan,NJ)から入手した処方薬Elmironであった。ヒト血漿は、George King Biomedical(Overland Park,KS)から入手した。第VIIa因子およびヒト組換えTFPIは、American Diagnostica(Stamford,CT)からであり、第VIII因子は、Wyeth Pharmaceuticals(Madison,NJ)から入手した処方薬ReFacto(登録商標)であった。SIMPLASTIN EXCELおよびAPTT試薬は、bioMerieux(Durham,NC)またはOrganon Teknika(Roseland,New Jersey)から入手した。
【0087】
(B.動物)
Hem−Aマウス(エクソン16 FVIIIノックアウト対立遺伝子のホモ接合体)は、John Hopkins Universityから使用許諾され、Hem−Bマウス(エクソン1−3 FIXノックアウトのホモ接合体)は、Chapel HillのUniversity of North Carolinaから使用許諾された。全ての動物手順は、「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(実験動物の管理と使用に関する指針)」(National Research Council.Guide for the care and use of laboratory animals.Washington,D.C.:National Academy Press;1996)に従って行い、そして全ての手順は、所内動物実験委員会によって慎重に検討され、認可された。
【0088】
(C.凝固アッセイ)
(活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ)
aPTTアッセイは、改変を加えて、以前に記載されたように行った(PDR Staff.Physicians’Desk Reference.2004,Anderson Lo,Barrowcliffe,T.W.,Hohmer,E.,Johnson,E.A.,Sims,G.E.C.Thromb.Res.1976;9:575−580)。25mMのCaClおよびフィブリンカップ(fibrin cups)(Fisher)を37℃に予熱した。解凍した(正常のまたは出血性の)ヒト血漿0.1mlを、温めた試験管に添加した。5μlの生理食塩水(例えば、Sigma)または5μlの生理食塩水中に溶解した試験薬剤(例えば、NASP)を、95μlの血漿とともに室温で30分間インキュベートした。APTT試薬(例えば、Organon Teknika)を3mlの蒸留水中で再構成し、そしてAPTT試薬を含む再構成溶液0.1mlを各試験管に添加した。試験薬剤または生理食塩水コントロールおよびaPTT試薬を含む血漿0.2mlを、試験管から予熱したフィブリンカップに移し、2〜3分間インキュベートした。0.1mlの予熱した25mM CaClを添加して凝固を開始させ、血漿凝固の時間をBBL FIBROSYSTEMフィブロメータを用いて測定した。
【0089】
(希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイ)
使用したdPTアッセイは、改変した標準臨床PTアッセイであった(Nordfang et al.(1991)Thromb Haemost 66:464−467;Welsch et al.(1991)Thrombosis Research 64:213−222)。SIMPLASTIN EXCELトロンボプラスチン試薬(Organon Teknika)を製造業者の希釈剤で再構成し、さらに0.9%生理食塩水中で1:100に希釈した。トロンボプラスチン試薬、25mMのCaCl、および血漿サンプルを、アッセイを開始する前に37℃に予熱した。解凍した血漿100μlをマイクロ遠心分離管に等分した。TFPI活性の阻害を測定するために、5μlの生理食塩水(例えば、Sigma)または5μlの試験薬剤(例えば、硫酸化多糖)を95μlの血漿に添加し、室温で約30分間インキュベートした。100μlの希釈トロンボプラスチン試薬および100μlの25mM CaClを、37℃に予熱したフィブリンカップ(Fisher)に添加した。試験薬剤または生理食塩水コントロールを含む100μlの(正常または血友病)血漿を、トロンボプラスチン試薬およびCaClを含むフィブリンカップに添加して、凝固を開始させた。血漿凝固時間をBBL FIBROSYSTEMフィブロメータを用いて測定した。
【0090】
(動物出血時間アッセイ)
出血時間アッセイは、試験薬剤(例えば、ビヒクルコントロールまたはNASP)の投与後に、正常な齧歯類または血友病の(FVIII欠乏もしくはFIX欠乏もしくはvWF欠乏)齧歯類における止血機能の変化を測定するのに用いられ得る。試験薬剤(例えば、ビヒクルコントロールまたはNASP)は、1日1回または2回、経口的に、非経口的に、または持続注入によって投与される。例えば、0.1ml/10g体重(肩甲下筋)の試験薬剤を0.1〜10mg/kgの範囲の用量で、小さなゲージの注射針を用いて1日2回、少なくとも1日間、および好ましくは3日間より長く、投与され得る。出血時間をアッセイする日に、齧歯類をケタミン/キシラジン(またはイソフルラン)で麻酔する。齧歯類を、尾の浸漬のために生理食塩水のペトリ皿と一体化した滅菌パッド上に並べる。EMLAクリームを齧歯類の尾の意図した切断部位に塗布する。マウスについては、尾の極めて先端を切り取り、この尾を生理食塩水皿の中に置き、計数を開始する。ラットについては、ラットの尾の背部に長さ8mm×深さ1mmの切開を行い、次いでこれを生理食塩水中に移す。生理食塩水中への目に見える出血の停止にかかる時間を記録する。齧歯類について、出血時間は、正常なコントロールマウスでは約10分であり、正常なコントロールラットでは6分である。出血時間アッセイの終了後、この齧歯類の尾を滅菌ゲージで乾燥させ、止血を確認し、そして齧歯類をケージに戻した。必要であれば硝酸銀を切断部位に塗布してもよい。
【0091】
あるいは、出血時間は、マウス(Broze et al.(2001)Thromb.Haemost.85:747−748)またはイヌ(Scallan et al.(2003)Blood 102:2031−2037;Pijnappels et al.(1986)Thromb.Haemost.55:70−73)において、他の方法によって測定され得る。代替のまたはさらなる薬力学的エンドポイントとしては、直接分析または血漿単離のためのNASP処置被験体からの血液のサンプリング、ならびにエキソビボ凝固時間(例えば、全血凝固時間および/またはPTおよび/またはAPTT)または凝固因子レベルの測定が挙げられ得る。
【0092】
(全血凝固時間(WBCT)アッセイ)
WBCTアッセイを以下のように行った。マウスをイソフルランチェンバー中で短時間麻酔した。次いで、これらのマウスを後眼窩静脈叢から出血させて、プラスチック採血管中に採血した(例えば、150μl)。これらの採血管を37℃の水浴中に入れ、ストップウォッチを用いて凝固時間を測定した。この期間中、採血管を1分間隔で反転させた。血液凝固(完全な/部分的ではない凝固)に要する時間を測定した。
【0093】
(統計分析)
凝固アッセイについては、スチューデントt検定を用いて、NASP処置サンプルとビヒクルコントロールとの間の有意性を検討した。マウス出血試験のデータを、片側のχ2乗検定によって、ビヒクルコントロール(または下の表に示されるような他の群)との有意性について検討した。ほぼ同一の結果がフィッシャーの直接確率検定によって得られた。
【0094】
(実施例2)
(TFPIはdPTアッセイにおける凝固時間を増加させる)
以下の実験は、TFPIがdPTアッセイにおける凝固時間を増加させることを示すために、そしてその後のNASP実験で用いるTFPI濃度を決定するために行った。100μg/mLのTFPIストック溶液(American Diagnostica,Stamford,CT)を生理食塩水中に連続的に希釈して、以下の濃度のTFPI溶液を作製した:20μg/mL、15μg/mL、10μg/mL、6μg/mLおよび2μg/mL。5μlのこれらのTFPI希釈物を95μlのFVIII欠乏血漿と混合し、室温で30分間インキュベートした。dPTアッセイを以下のように行った:SIMPLASTINトロンボプラスチンを生理食塩水で1:100に希釈し、37℃に予熱した。25mM CaClおよびTFPIを含む試験血漿100μlを37℃に予熱した。100μlのSIMPLASTINトロンボプラスチンと100μlのCaClを混合し、BBLフィブロメータを用いて凝固時間を測定した。その結果を表1に要約する。
【0095】
【表1】

TFPIは、Hem−A血漿の凝固時間を一次の用量応答で増加させた(図1を参照)。これらのデータに基づいて、0.5μg/mlのTFPIの濃度を、NASPの凝血促進機能のアッセイに選択した。
【0096】
(実施例3)
(NASPのスクリーニング)
修飾ヘパリン、ペントサンポリサルフェート、およびフコイダンを含む硫酸化多糖化合物を抗凝固活性について試験し、ヘパリンと比較して、これらの化合物が「非抗凝血剤」とみなされるか否かを決定した。試験した化合物を表2に列挙する。
【0097】
【表2】

試験化合物を、100μM、10μM、2μMおよび200nMに希釈した。各試験化合物について、その試験化合物を含む12.5μlの希釈溶液を237.5μlのHem−A血漿に添加し、室温でインキュベートした。試験化合物を含む100μlの血漿を、実施例2に記載されるような血漿凝固時間のdPTアッセイのために採取した。その結果を表3に要約する。
【0098】
【表3】

示した値は、選択した多糖についての凝固時間(秒)である。NASPの非存在下でのHem−A血漿の凝固時間は、41.5秒である。
【0099】
表3および図2に示されるように、ヘパリンは、10nMよりも高い濃度で顕著に抗凝血性であったが、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−脱−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−O−SH)、脱−N−硫酸化ヘパリン(De−N−SH)は、5000nMよりも高い濃度でも凝固時間の延長をほとんど示さなかった。同様に、フコイダンおよびPPSは、ヘパリンよりもそれぞれ約10倍〜100倍高い濃度で50%の凝固時間の延長を示す、ごく弱い抗凝血剤であったので、「非抗凝血剤」と示される。ほとんど同一のプロフィールが正常ヒト血漿を用いて観察された(データは示さず)。
【0100】
(実施例4)
(aPTTアッセイによるヒト血漿の凝固に対するNASPの影響)
血漿の凝固時間に対するNASPの影響はまた、aPTTアッセイを用いて測定し、これらの化合物が「非抗凝血剤」とみなされるか否かを決定した。「正常な」ヒト標準血漿であるFACT(George King Biomedical)をヒトHem−A血漿中で希釈して、0.31〜100%の正常血漿濃度の血漿を生成した。次いで、aPTTアッセイを以下のように行った:100μlのFACT−Hem−A血漿混合物と100μlのaPTT試薬を混合し、37℃で3分間インキュベートした。100μlのCaClを添加し、そしてBBLフィブロメータを用いて血漿凝固にかかる時間を測定した。その結果を表4に示す。
【0101】
【表4】

このデータに基づいて、1.25%のFACT濃度を、凝血促進活性についてNASPをスクリーニングするアッセイに選択した。血漿の凝固時間に対するNASPの影響は、以下のように決定した:5μlのNASPを、ヒトHem−A血漿で希釈した95μlの1.25%FACTに添加し、室温で30分間インキュベートした。aPTTアッセイを行って、実施例1に記載されるように血漿凝固時間を決定した。その結果を表5に示す。
【0102】
【表5】

「NASP」活性のさらなる確認は、Hem−A血漿を用いたAPTT凝固アッセイにおいて3種の化合物を評価することによって実証した。凝固時間に約50%の延長を生じる濃度は、フコイダン、PPS、およびNAHについて、ヘパリンについてよりもそれぞれ10倍または100倍または500倍よりも高かった(図3を参照)。
【0103】
(実施例5)
(NASPによるTFPI活性の阻害)
A.血漿に添加する前のTFPIとNASPのプレインキュベーション
NASPによるTFPI活性の阻害を、正常血漿または血友病血漿を用いたdPT凝固アッセイで評価し、そして組換えTFPIを添加した。希釈した組換えTFPIを、血漿を添加する前にNASPとともに室温で5分間プレインキュベートした。血漿の添加後、この混合物をさらに25分間インキュベートし、続いてdPTイニシエーションを行った。Hem−A血漿中で行ったアッセイの結果を、表6および図4に示す。
【0104】
【表6】

Hem−A血漿単独の凝固時間は44秒である。
Hem−A血漿+TFPIの凝固時間は151秒である。
【0105】
TFPIは、約0.5μg/mlの最終濃度で、実験およびヒト血漿の供給源に依存して、血漿の凝固時間を約40秒から100〜200秒に延長した。TFPI活性が硫酸化多糖によって阻害されるならば、NASPの存在下で凝固時間の短縮が観察されるはずである(Nordfang et al.(1991)Thromb.Haemost.66(4):464−467を参照)。図4に示されるように、フコイダンおよびPPSを1nMよりも高い濃度で添加すると、TFPIを含むHem−A血漿の凝固を有意に促進した。対照的に、NAHは、凝固時間を短縮するのに約100nMの濃度が必要であり、そしてヘパリン(図示せず)は、凝固時間を延長するのみであった。重要なことには、PPSまたはフコイダンの最適濃度では、凝固時間は、TFPIなしか、またはビヒクルコントロールレベルか、またはわずかに低い程度まで短縮され、そしてTFPI作用の中和の幅は、少なくとも100倍の範囲(例えば、5〜500nM)に及んだ。
【0106】
TFPIの存在下でのNASPによる血漿凝固の促進もまた、Hem−B血漿および正常血漿中で試験した。Hem−B血漿中で行ったアッセイの結果を、表7および図5に示した。
【0107】
【表7】

Hem−B単独、TFPIなしの凝固時間:46秒
Hem−B+TFPIの凝固時間:101秒。
【0108】
NASPによる血漿凝固の促進(おそらくTFPI活性の阻害による)は、Hem B血漿(表7および図5)および正常ヒト血漿(データは示さず)において同様に実証された。NASP間の効力の序列は、Hem−A血漿を用いた研究と同じであり、かつ、濃度応答プロフィールは、ほぼ同じであった。
【0109】
(B.TFPIとNASPのプレインキュベーションなしでのTFPI活性の阻害)
実験を、血漿への曝露前に硫酸化多糖とTFPIをプレインキュベーションすることなく繰り返した。TFPI活性のNASP阻害試験のストリンジェンシーを高めるために、NASPを添加する前にTFPIを血漿に添加した。その結果を表8および図6に示す。
【0110】
【表8】

HemA+TFPI:183秒
Hem−A単独、TFPIなし:45秒。
【0111】
図6に示すように、NASPは、プレインキュベーション研究(図4)とほぼ同じ用量反応プロフィールで、Hem−A血漿において同じ凝固時間促進の特性を明確に実証した。興味深いことには、フコイダンが最も強力であり、顕著な凝固促進についての濃度域は100倍よりも大きかった。従って、これらの研究により、PPSおよびフコイダンのような特定のNASPがTFPI中和活性を示し得ること、および、正味の抗凝固が認められない非常に広範囲の濃度にわたってこのような効力が実証されることが明らかになった。
【0112】
(実施例6)
(TFPI補充のない状態でのNASPによる血友病血漿凝固における改善)
NASPがTFPI補充なしで因子欠乏血漿の凝固を促進する能力もまた、dPTアッセイにおいて試験した。凝血促進応答が観察される場合、これは内因性のTFPI活性(ヒト血漿中に約100ng/mlで存在し(Nordfang et al.,前述)、主にリポタンパク質または血小板に関与する(Broze et al.(1992)Semin.Hematol.29:159−169;Broze et al.(2003)J.Thromb.Haemost.1:1671−1675))の中和と関連し得る。
【0113】
(A.外因性TFPIの非存在下でのHem−A血漿における凝固の促進)
外因性TFPIの非存在下でHem−A血漿の凝固を促進するNASPの能力を試験した。フコイダンまたはPPSをHem−A血漿中に漸増させ、そしてdPTアッセイを行った。さらに、外因性経路活性を増幅させる陽性コントロールとして、第VIIa因子に対する用量反応を分析した。その結果を図7および表9に示す。
【0114】
【表9】

Hem−A単独、NASPなしの凝固時間:69秒。
【0115】
フコイダンおよびPPSのいずれも、用量依存的な様式で凝固時間を有意に加速し、フコイダンは、最高の有効性および最大の効力を示した。他の研究と同様に、凝血促進作用の濃度域は、フコイダンの場合には、約5nMから100nMを上回る範囲であった。図7において、フコイダンの濃度が100nMよりも高いと応答曲線が上方に偏向し始めるが、凝固は依然としてビヒクルコントロールと比較して促進されるので、フコイダンは凝血促進性であることに留意すべきである。20nMのフコイダンで凝固時間が約70秒から55秒に短縮されることは、大きな差ではないにもかかわらず、NAHは活性を有さなかった。このような促進は、FVIIaおよびトロンビンのような凝血促進因子で以前に観察された。従って、FVIIaを20nMになるように添加すると、凝固時間が約20秒加速され、これはフコイダン(図7)の加速よりも大きかった。しかしながら、20nMフコイダンが5nMの薬理学的濃度のFVIIaと同等に機能することに留意することは興味深い。
【0116】
(B.外因性TFPIの非存在下でのHem−B血漿およびFVII欠乏血漿における凝固の促進)
NASPの視覚的な凝血促進活性の評価を、Hem B血漿およびFVII欠乏血漿中のNASP活性を試験することによって、他のヒト出血性疾患にまで広げた。Hem−A血漿について示した結果と同様の結果が、Hem−B血漿について観察された(データは示さず)。
【0117】
第VII因子欠乏血漿における凝固の調節はまた、dPTアッセイでも評価した。予想通り、FVII欠乏血漿は、FVIIa再構成なしでは300秒以内に凝固しなかった。FVIIaを約0.1nMになるように添加すると、凝固時間が約150秒に回復した(データは示さず)。dPTアッセイに見られるこのような凝固時間の変化は、ヒト第VII因子欠乏症のある種の形態に類似している。フコイダンおよびPPSをFVII欠乏血漿中に漸増させると、凝固時間は加速された。その結果を図8および表10に示す。
【0118】
【表10】

NASPなし、FVIIaなしでの凝固時間:>300秒
NASPなし、+0.1nM FVIIaでの凝固時間:173秒。
【0119】
図8に示すように、フコイダンおよびPPSの漸増により、第VII因子欠乏血漿の凝固が促進され、そしてHem A血漿で観察されたように、フコイダンはPPSよりも有意に強力かつ有効であった。今回も、治療濃度域は広かった;フコイダンの場合、実質的な凝固促進は、約10nM〜500nMの範囲の濃度で観察された。
【0120】
(実施例7)
(NASP処置マウスの止血の改善)
インビボにおける止血の潜在的な改善を評価するために、Hem AマウスまたはHem BマウスをPPSおよびフコイダンで処置した。頻回の投薬は血友病マウスにおいて適度に良好な耐容性を示し、種々の硫酸化多糖の皮下経路によるバイオアベイラビリティーは以前に確立されているので(MacGregor et al.(1985)Thromb.Haemost.53:411−414;Millet et al.(1999)Thromb.Haemost.81:391−395)、NASPを皮下注射した。PPSおよびフコイダンの半減期は、1〜2時間程度の短さでもよい。従って、1日2回の投薬レジメンを採用した。初期試験により、数日間の投薬は、1〜2日間にわたることが好ましいことを示した。
【0121】
処置したマウスにおける凝固調節に対するNASP処置の効果は、dPTアッセイのための血漿単離、全血凝固時間(WBCT)アッセイのための血液採取、酷い出血の時間、および尾部切除後または横切開後の長期的生存(Broze et al.(2001)Thromb.Haemost.85:747−748)を含む、いくつかの可能性のあるエンドポイントに基づいて評価した。PPSおよびフコイダンを用いた5日間のインビボ研究の結果を、表11〜13に要約する。
【0122】
(A.Hem−AマウスおよびHem−BマウスにおけるPPSの効力)
Hem−AマウスおよびHem−Bマウスにおける凝固を改善する、PPSの効力を試験した。Hem−AおよびHem−Bの雄性マウスまたは雌性マウスに、0.02mg/kg、0.06mg/kgまたは0.2mg/kgの用量のPPSあるいは生理食塩水ビヒクルを、1日2回、5日間、皮下に投与した。投薬後5日目の朝に、尾部を先端から1cm切断し、行動および生存を次の20〜24時間モニターした。その結果を表11に示す。
【0123】
【表11】

マウスを無作為に選択し、示した薬剤を1日2回、4.5日間、皮下投与した後に、尾部切断を行った(t=0)。
ビヒクルに対してP=0.07。
【0124】
Hem−Aマウスを0.06mg/kgのPPSで処置すると、生存がほぼ2倍に改善されるが、結果は統計学的に有意ではなかった(0.05<p<0.1)(表11)。治療的有用性は、処置群を知らされていない技術スタッフの目視観察により、中用量および高用量のマウスにおいて、ビヒクルコントロールと比較してより正常な行動(不活発な状態および体を丸めた状態がより少ない)およびより少ない出血が観察されたことによって、さらに支持された。同様に、引き続いてHem−Bマウスを0.06mg/kgのより有効な用量で1日2回、皮下投与で処置することにより、FVIII欠乏マウスにおいて観察された結果と同一の結果が得られた。
【0125】
Hem−Bマウスにおける凝固を改善するPPSの効力を、dPTアッセイでさらに試験した。全てのマウスを研究前に出血させて、ベースライン(予備試験)凝固時間を確立した。マウス(14週齢)にPPSを以下の用量で1日2回、4.5日間、皮下投与した:250μlの容量で、2mg/kg、0.3mg/kgおよび0.06mg/kg。4.5日後にマウスを出血させ、採取した血液サンプルから凝固時間を決定した。その結果を表12に示す。
【0126】
【表12】

未処置のHem−Bは、44〜50秒の範囲のdPTを有する。
【0127】
(B.Hem−Aマウスにおけるフコイダンの効力)
上記の凝固アッセイの一部において、PPSと比較してフコイダンの有効性および効力の大きさが改善されることを考慮して、Hem−Aマウスにおいてフコイダンを用いてさらに研究を行った。フコイダンを用いた第1の研究では、PPSについて記載したレジメンと用量レベルはわずかに異なるがほぼ同じレジメンを採用した。Hem−A雄性マウスに、0.1mg/kgまたは1.0mg/kgの用量でフコイダンを、あるいは生理食塩水を、1日2回、4日間、皮下に投与した。5日目の朝に、出血試験の前に2倍用量のフコイダンをマウスに投与した。生存および動物行動を、フコイダンで処置したマウスについてビヒクルコントロールと比較して評価した。
【0128】
フコイダンを用いた第2の研究において、第VIII因子との併用療法の可能性を評価した。本研究は、5日目の朝に53mU/マウスのFVIII(FVIIIの正常レベルの約1.25%)の静脈内ボーラス投与をマウスの身体に近い上方の尾静脈に投与した以外は、上記のように行った。以前ように、動脈ではなく側部尾静脈を、2時間後に直径約2.7mmに相当する領域で横切開した。これらのフコイダン研究において、尾静脈横切開の改変により、止血およびその調節がより正確に評価されることが分かっているので(Broze et al.(2001)Thromb.Haemost.85:747−748)、これを利用した。生存および臨床観察を20〜24時間記録した。その結果を表13に示す。
【0129】
【表13】

マウスを無作為に選択し、ビヒクルまたはNASPを1日2回、4.5日間皮下投与した後に、尾静脈切断を行った(t=0)。示した場合、FVIIIを尾部切断の2時間前に投与した。なお、これらのマウスにおいて、FVIII再構成率1%では生存率が約10%となるが、一方、FVIII再構成率2%では生存率が約100%となることに留意されたい。
ビヒクルに対してP<0.05
ビヒクルに対してP=0.06
フコイダンに対してP=0.06。
【0130】
第1の研究において、用量0.1mg/kgのフコイダンを用いたマウスの処置は、用量1.0mg/kgを用いた処置よりも有効であるようであった(約10時間での生存は、ビヒクルで1/6、0.1mg/kgで4/6、そして1.0mg/kgで3/6であった)。従って、第2の研究は、用量0.1mg/kgのフコイダンを用いて行った。
【0131】
表13の上2列に示されるように、Hem Aマウスのフコイダン処置により、出血の生存が有意に改善された。動物行動は、上記のように、切開後の最初の8〜10時間の間、すべてのフコイダン処置マウスにおいてより正常であり、ほぼ半数の動物において長期にわたって明らかに改善された。
【0132】
併用療法の可能性を、FVIII+/−フコイダンでマウスを処置することによって予備的に評価した(表13)。Hem Aマウスに尾部切開の2時間前にFVIII投与のみを行う予備的な用量誘導研究では、生存に対して極めて急勾配の用量反応関係を示した。正常率1%へのReFacto(登録商標)投与により生存率が約10%となったが、一方、正常率2%への投与により生存率が約100%となった(データは示さず)。従って、FVIII再構成率1.25%の用量を、約50%の生存を得るために選択した。特に、フコイダン+FVIII処置群の生存率(%)は、フコイダンまたはFVIIIのいずれか単独よりも一貫して高かった。従って、PPSおよびフコイダン研究の結果より、選択されたNASPを投与後に血友病の動物モデルにおいて止血が改善されることを示した。
【0133】
(結論)
一連の研究は、エキソビボおよびインビボの血友病モデルにおける凝固の改善についてNASPを試験するために行った。硫酸化多糖は、ヘパリンと比較して抗凝血性を実質的に低下させることが確認された。これらのNASPのサブセット、すなわちフコイダンおよびPPSは、血液凝固の外因性経路の主なダウンレギュレーターであるTFPIの活性を強力に阻害することが示された。フコイダンおよびPPSは、第VII因子、第VIII因子、または第IX因子が欠乏しているヒト血漿の希釈プロトロンビン凝固時間を改善した。インビボでのフコイダン処置またはPPS処置の治療的有用性は、血友病マウスの出血試験により明らかであった。
【0134】
PPSおよびフコイダンのいずれも、ヘパリンコファクターII相互作用の結果(Church et al.(1989)J.Biol.Chem.264:3618−3623;Giedrojc et al.(1999)J.Cardiovasc.Pharmacol.34:340−345)と同様に、より高濃度で抗凝固活性を示し得る。ラットに皮下投与されるPPSは、凝固を延長するためには5mg/kgよりも高い用量が必要であり(Giedrojc et al.前述)、フコイダンは、ウサギでは10mg/kgで静脈内投与しても耐容性が良好なようである(Granert et al.(1999)Infect.Immun.67:2071−2074)。従って、本結果は、血友病の齧歯類において0.1mg/kg以下の用量で止血が改善されることを示す。インビボで止血を改善した用量レベルは、他の報告された作用を引き起こす用量レベルよりも低かった(Toida et al.(2003)Trends in Glycoscience and Glycotechnology 15:29−46;Luyt et al.(2003)J.Pharmacol.Exp.Ther.305:24−30;Berteau et al.(2003)Glycobiology13:29R−40R;Granert et al.,前述;およびSweeney et al.(2002)Blood 99:44−51)。
【0135】
特定の理論にとらわれずに、TFPIのNASP阻害は、エキソビボおよびインビボにおいて観察された凝固の改善に対する部分的な説明となり得る。抗体によるTFPIの中和は、ウサギHem Aモデルにおける止血を改善し、かつヒト血友病血漿の凝固を促進することが示されている(Nordfang et al.,前述;Welsch et al.,前述;およびErhardtsen et al(1995)Blood Coagul.Fibrinolysis 6:388−394)。本研究では、TFPI活性を阻害する化合物だけが、血友病血漿のdPTアッセイにおける凝固時間も減少した。さらに、フコイダンは、自然環境を最も良く模倣するためにTFPIを最初に血漿中に混合した場合、dPT凝固試験においてPPSと比較してより強力な、かつおそらくより大きな最大作用を示した。同様に、未決定の関連する薬物動態が出血結果に影響を与えるにもかかわらず、マウスのフコイダン処置はPPSよりも幾分良好な有効性を示した。
【0136】
このような挙動が、試験したすべてのNASPで現れたわけではないことは、注目に値するものである。例えば、NAHは、TFPIの添加なしでは弱いTFPI中和活性しか示さず(図4〜6)、かつ、血友病血漿の凝固時間を加速しなかった(データは示さず)。さらに、5000nMまでの濃度で固有の抗凝固活性を示さない3種のNASP(図2;De−N−S−AH、De−N−SH、およびNA−De−O−SH)は、TFPI中和活性を全く示さず、さらにHem A血漿の凝固時間を加速しなかった(データは示さず)。
【0137】
NASPを用いて観察された止血の改善の大きさは、臨床的に関連するようである。最適なフコイダン濃度でのHem A血漿の凝固時間の改善は、約5nMでのFVIIa補充に匹敵し(実施例6)、これは、患者の止血を正常化するのに有効であることが証明されている(Bishop et al.(2004)Nat.Rev.Drug Discov.3:684−694;Carcao et al.(2004)Blood Rev.18:101−113;Roberts et al.(2004)Anesthesiology 100:722−730;Lee et al.(2004)Int.Anesthesiol.Clin.42:59−76;およびBrummel et al.(2004)J.Thromb.Haemost.2:1735−1744)。さらに、マウスにおけるNASP処置による延命効果は有意であった(実施例7)。dPTアッセイにおけるフコイダンによる凝固の促進は、マウス血漿よりもヒト血友病血漿で、より延長される(データは示さず)。
【0138】
出血性疾患のための可能性のあるNASPの臨床開発に関する明白な検討材料は、治療指数である。具体的には、止血の改善と抗凝固への移行との間の指数である。ヒト血漿におけるPPSまたはフコイダンのような化合物についての凝固アッセイの結果から、抗TFPIまたはdPT凝固促進「活性」と、このような効力の喪失と、正味の抗凝固の開始との間の差は、50倍以上であるようである。マウス研究用について上に記載したように、この指数は、マウスにおいて少なくとも10倍であるようである。さらに、分類としては、ヘパリン様硫酸化多糖は一般に耐容性が良好である。
【0139】
要約すると、選択したNASPの全身投与は、出血性疾患における止血を調節するためのユニークなアプローチを示し得る。特に、ペントサンポリサルフェートおよびフコイダンは、TFPI活性を阻害し、ヒト第VII因子欠乏血漿、第VIII因子欠乏血漿、および第IX因子欠乏血漿の凝固を改善した。従って、NASP処置は止血を改善し、現在の凝固因子治療に対して、比較的低価格の、安全な、かつ便利な代替または補充を示し得る。
【0140】
本発明の好ましい実施形態が例示され、かつ記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46551(P2012−46551A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−266214(P2011−266214)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2007−515373(P2007−515373)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】