説明

硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤ用の粉末、フラックスコアードワイヤおよびフラックスコアードワイヤの製造方法

【課題】硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤ用の粉末、フラックスコアードワイヤおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】溶融金属浴と合金化されることを目的としたフラックスコアードワイヤ用であって、且つ少なくとも95%の硫黄で構成される粒子によって形成されている粉末であって、粒度分析集団が
1μm≦d10≦340μm、
200μm≦d50≦2000μm、
500μm≦d90≦2900μm
であることを特徴とする、前記粉末、前記粉末を含有し且つワイヤ内の粉末の圧縮率が85%以上であることを特徴とする硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤ、溶融金属浴との合金化用の硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金の分野に関し、特に溶融金属、特に鋼および金属合金浴に導入される、硫黄を用いたフラックスコアードワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄粉末を含むフラックスコアードワイヤは、部品が機械加工されるときにより迅速に除去される脆い切れ端の形成を促進することによる最終の鋼鉄の機械加工性を改善するために溶融鋼中に導入される。さらに、硫黄は、硫黄を含有する非金属性含有物によってもたらされる潤滑効果により、切断工具類の摩耗を低減し且つそれら工具類の表面状態を改善する。フラックスコアードワイヤによる硫黄の添加は、特に硫黄が含有される溶融金属の全質量との関連で比較的少量でなければならない場合に、添加される硫黄の量について達成されるべき満足のいく精度を可能にする。
【0003】
そのようなフラックスコアードワイヤは、圧縮された硫黄をベースとする粉末を含有する金属覆いから構成されている。他の種類の添加物、例えばケイ酸カルシウムを含有するフラックスコアードワイヤに関して、ワイヤの製造は、通常、動いている金属の細長い一片への重力により粉末硫黄が分配されることにより始まる。前記細長い一片は、細長い一片が加えられる必要がある金属の組成と親和性がある組成を有している必要がある。硫黄が溶融鋼の浴に加えられる必要があるとき、細長い一片は鋼から成る。そして、細長い一片は、続いて望ましい直径に調整されるフラックスコアードワイヤを得るために溶接されるかあるいはローラー型の装置による機械的なプロファイリングにより折り曲げられる。フラックスコアードワイヤを製造するための他の方法は公知であり、そのいくつかは押出しおよび冷間圧延を含む技術を用いるものである。
【0004】
本発明は、主として機械的なプロファイリングにより製造されるワイヤに適用するが、フラックスコアードワイヤを製造するための以下に述べる他の方法によって本発明による粉末を用いることが先験的に不可能というわけではない。
【0005】
フラックスコアードワイヤの製造プロセスは、いくつかの種類の機械的応力、特にせん断応力を含む。硫黄粉末はワイヤ固有の機械的特性を踏まえてワイヤの製造の間、様々な変形を受ける。粉末は、適用されるそれらの応力によって低温状態下に様々な割合で圧縮する。
【0006】
硫黄を抽出する起源および方法は非常に様々(自然の状態で、鉱物から、石油生成物からの抽出など)である。硫黄は、種々の結晶化された同質異形、特に斜方晶系αおよび単斜晶系βの硫黄の種類として存在する。冶金、特に鋼および鉄合金用に用いられるフラックスコアードワイヤを構成する硫黄は、通常、95%より高い純度、一般には98%よち高いあるいは99.5%より高い純度を有する。硫黄粉末のフラックスコアードワイヤは、通常、5〜25mmの外直径(外径)および0.1〜2mmの覆い厚さを有する。
【0007】
フラックスコアードワイヤに含有される硫黄粉末はいくつかの粉砕工程による生成物である。これは粉末を得る工業的方法にとって適した粒度分析分布をもたらす。
【0008】
利用者にとっては、フラックスコアードワイヤに含有される硫黄の単位長さ当たりの質量ができるだけ高いことが有利である。フラックスコアードワイヤの単位長さ当たり質量の増加は利用者に以下の複数の技術的および経済的利益をもたらす。
・フラックスコアードワイヤの製造コストそしてそれゆえに購入価格に関する相当な節約、
・フラックスコアードワイヤの運送の間の物流コストに関する節約、
・フラックスコアードワイヤのコイルの収納スペースに関する節約、
・微粒子の存在のため溶融金属内でのフラックスコアードワイヤに含有される材料の良好な拡散、
・金属浴をかき混ぜて添加剤の希釈を促進するため溶融金属浴内に導入されるガスの添加の制限、
・初期材料中に結合剤および/又は平滑剤がないこと。
【0009】
これまで、本発明者等の知る限り、フラックスコアードワイヤの充填物の最適化に関しての具体的な研究はなされていない。それゆえ、市販のフラックスコアードワイヤは、製造方法と最初の粉末の物理的特性に従った単位長さ当たりの質量を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フラックスコアードワイヤの単位長さ当たりの質量を最適化し得る硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、溶融金属浴と合金化されることを目的としたフラックスコアードワイヤ用であって、且つ少なくとも95%の硫黄で構成される粒子によって形成されている粉末であって、粒度分析集団が
1μm≦d10≦340μm、
200μm≦d50≦2000μm、
500μm≦d90≦2900μm
によって規定されることを特徴とする、前記粉末に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記粉末の好適な態様は、
20μm≦d10≦300μm、
800μm≦d50≦1900μm、
2000μm≦d90≦2700μm
であることを特徴とする。
【0013】
本発明の粉末は、混合物の50〜90質量%を構成する粒度分析集団1および混合物の10〜50質量%を構成する粒度分析集団2の均一混合物であって、前記2つの集団が、
集団1:
350μm≦d10≦1400μm、
650μm≦d50≦2200μm、
1000μm≦d90≦3000μm
集団2:
1μm≦d10≦250μm、
50μm≦d50≦500μm、
100μm≦d90≦800μm
(但し、d10、d50およびd90は累積分布の値がそれぞれ10質量%、50質量%および90質量%である粒子の相当直径である。)
によって規定される、前記均一混合物に由来し得る。
【0014】
最適には、集団1は混合物の65〜75質量%を構成し、集団2は混合物の25〜35質量%を構成する。
【0015】
また、本発明は、金属浴との合金化を目的とした硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤであって、前記ワイヤが前記種類の粉末を含有し、且つワイヤ内の粉末の圧縮率が85%以上であることを特徴とする、前記ワイヤに関する。
【0016】
また、本発明は、溶融金属浴との合金化用の硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤの製造方法であって、以下の工程:
前記種類の粉末を用意する工程、
金属の細長い一片の上に重力によって前記粉末を分配する工程、
ワイヤを形成するため前記細長い一片を溶接あるいは折り曲げ、且つ粉末の圧縮率が85%以上であるワイヤを得るように選択された直径にワイヤをプロファイリングする工程
を含むことを特徴とする、前記方法に関する。
【0017】
明らかなように、本発明は、ときにはわずかに重なることがあり得ることを厳密には排除しないとしても、規定され且つ分化した2種類の粒度分析集団の予め定められた割合での混合から生じるかあるいは生じ得る、正確な粒度分析分布を有する粉末の特定の構成に基づいている。
【0018】
本発明の利点は、一定の横断面を有するフラックスコアードワイヤ内の最大粉末質量の導入である。このことは、最終の成形体混合物の粒間空隙率における低減を可能とする。
【0019】
粒状集合体は、放出あるいは振動の工程に続く再配列に対する能力によって特徴付けられ得る。前記集合体は粒子および粒子の層の物理的特性、粒子粒度、粉末材料の真密度、粒子の形態、粒状集合体の圧縮率、粒子の粒度分布によって、より良くあるいは不十分に再配列され得る。
【0020】
放出および/又は振動の工程後の粒状積層体(スタッキング)の品質はフラックスコアードワイヤの充填高さに影響を及ぼす。粒状再配列は不揃いがより多いかあるいはより少ない。それは主として粒子の形態、粒度および外観に依存している。本発明によってもたらされる技術革新は、フラックスコアードワイヤの最終機械的特性を保持しつつ可能な最良の充填高さを得るためにスタッキングを最適化することおよび改良することを含む。また、フラックスコアードワイヤの製造の間、特に覆いを閉じるおよび溶接するあるいはプロファイリングする間に、特別な方法で充填材料が受ける制約に作用をもたらす充填材料に本来備わっている特性を考慮に入れることも必要である。そういうわけで、特に、最終のフラックスコアードワイヤの単位長さ当たりの質量を最適化するという問題は、充填材料が何であれ適用可能な単一の解答を有し得ない。最適化は充填材料の正確な特性に従ってきめ細かく調整される必要がある。
【0021】
一連の実験と得られた結果の様々な分析により、本発明者らは、フラックスコアードワイヤの硫黄粒子による最適充填にとって最良の粒度分析分布であると考えるものを確証した。前記粒度分析分布は、フラックスコアードワイヤが製造される際、金属の細長い一片上への粉末の被覆の間に、粉末の層に即時の流れ作用を与える一方で高密度のスタッキングを発現させる。粒状集合体の流動性はハウスナー指数と圧縮性指数に特徴付けられる。
【0022】
粒状媒質の圧縮率は、それが粒間の力、それゆえ間接的に媒質の凝集性を示しているので、流れ特性と関連している。粒間の力が大きいほど、適用されるインパクトが十分に強力であるという条件で媒質はより多く圧縮され得る。
【0023】
前記の圧縮性指数は、通気密度と圧縮密度との比率により、
圧縮率=(ρ圧縮−ρ通気)/ρ圧縮
(但し、ρ圧縮は見かけの圧縮密度であり、ρ通気は見掛けの非圧縮密度である。)
と規定される。
【0024】
前記ハウスナー指数Iは、常に1より大きく、流れ速度が低下しそれゆえ粒間摩擦が大きくなるとき増大する。ハウスナー指数は粉末の形態、外観、粒度、密度および残存湿度によって影響される。ハウスナー指数は、
=ρ圧縮/ρ通気
によって規定される。
【0025】
ランダム粒状再配置の間、重力流の後に粒間間隙の低下が生じる。
本発明によって生じる混合物を構成する粒度分析集団は下記に示すように、
1μm≦d10≦340μm、
200μm≦d50≦2000μm、
500μm≦d90≦2900μm
と規定される。
この混合物の好適な態様は
20μm≦d10≦300μm、
800μm≦d50≦1900μm、
2000μm≦d90≦2700μm
によって規定される。
【0026】
前記粒状集合体から生じる圧縮状態での密度はほぼ1.0〜1.70g/cm程度である。硫黄粒子のモルフォロジーは等しく球形又は円形、針状、繊維状あるいは多面体であり得る。フラックスコアードワイヤ内の圧縮率は通常75〜80%程度であるが、本発明においては少なくとも85%の圧縮率が得られている。
【0027】
好適には、本発明に係る粉末は、フラックスコアードワイヤに適用される、少なくとも95%、特に98%より大の純度を有し且つ粒度が0〜5000μmの範囲内である硫黄粒子からなる2つの個別粒度分析集団を最適化された方法で結び付けることによって得られる。前記の結び付けは、通常回転容器を備えた粒状攪拌装置によって得られる、各集団に対して様々な正確な質量割合の均一混合である。本発明の2つの集団の粒度分析分布は前記指数d10、d50、d90:
・前記指数d10は累積分布の値が10質量%である相当直径を規定し、
・前記指数d50は累積分布の値が50質量%である相当直径を規定し、
・前記指数d90は累積分布の値が90質量%である相当直径を規定する、
によって規定される。
【0028】
それら粒度分析集団の混合物に基づくと、同じ覆いを用い且つそれら集団の任意の1つを用いて同じ条件下で製造された同じ直径を有するワイヤとの関連で、典型的には単位長さ当たりの質量の10〜70%の充填レベルの増加が得られている。ワイヤ製造後の硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤの圧縮率は、本発明により、単位長さ当たりの最適質量に達するために85%以上である。
【0029】
本発明者等が確立した2つの粒度分析集団は、本発明の好適な態様に相当し、以下の2つの集団1および集団2:
集団1:
・350μm≦d10≦1400μm
・650μm≦d50≦2200μm
・1000μm≦d90≦3000μm
集団2:
・1μm≦d10≦250μm
・50μm≦d50≦500μm
・100μm≦d90≦8
が用いられている。
【0030】
実験で用いられる手順は、先ず正確な質量割合で任意の粒度分析分布を有する2つの集団を混合することである。その後、異なる混合物の物理的特性、例えば粒子の粒度分布および密度を測定する。それゆえ、それらのデータが系の動作的および現象的モデル化の導入を可能とする。
【0031】
得られた複数のモデルは、理想的である質量と粒度分布比率との関連付けを示す。粒度分析分類を有利に分配するために、開始時に粒状選択が行われる。最後に、最適な粒度分析分布が2つの粒度分類の関連付けから構成される。
【0032】
フラックスコアードワイヤの工業的生産法を対象に試験されたそれら混合物は、室内実験のモデル化相を確認すること可能とする。例えば、最適な混合物は均一に混合された65〜75質量%の集団1と25〜35質量%の集団2から成る。混合物は、混合物が生産能力と緊密さとの最も高い水準を有するときに最適であると考えられる。
【0033】
それらの混合物は従来の市販タイプの回転式容器ミキサーを用いて製造される。ミキサーの複数の内壁は粒状不均一性を制限するため有利には固定されている複数の吐出口から成る。この方法では、それら複数の吐出口は、粉末層の粒度の実質的な変更なしに材料が穏やかにかき混ぜられることを可能とする。前記の混合物の均一性は1〜10分間の混合時間で保証される。
【0034】
フラックスコアードワイヤ内での粉末の圧縮率は、水銀気孔率圧入法による複数の代表的なサンプルの物理的特性で規定される。その破壊分析は粒内および粒間の開放気孔率のための細孔のサイズ分布の測定を可能とする。同時に、粉末材料の理論密度がヘリウム比重ビン法により測定される。この方法では、粉末材料の理論密度がフラックスコアードワイヤ内での粒状集合体の圧縮率および気孔率レベルの評価を可能とする。
【0035】
本発明のフラックスコアードワイヤは、技術的には充填度に従って、特に単位長さ当たりの質量によって特徴付けられる。充填度はフラックスコアードワイヤを構成している粉末又は粒状の集団の密度に起因する。従来の鋼覆いを用いた、13〜14mmの外径を有する硫黄ベースのフラックスコアードワイヤは、180g/m〜205g/mの範囲の単位長さ当たりの質量を有している。従来のフラックスコアードワイヤが含有する粉末の粒度分析分布は0μm〜5000μmの範囲である。
【実施例】
【0036】
以下に、参考のための公知の硫黄ベースのフラックスコアードワイヤと本発明の利点を示す本発明による硫黄ベースのフラックスコアードワイヤの例を示す。粉末の金属製細長い一片上への堆積、ワイヤを形成するために細長い一片を溶接又は折り曲げ、且つ公称直径にするためにワイヤをプロファイリングすることを含む本発明で選択された方法によって本発明のワイヤを調製した。
【0037】
実施例1(参考):標準的であって公知であり、0.39mmの厚さを有する細長い一片を有し13.1mmの外径を有する硫黄粉末の入ったフラックスコアードワイヤの調製
集団Aは粒度分析分布および特性が以下の通りである。
【0038】
【表1】

【0039】
表1:規格のASTM E11−01による集団Aの粒度分析分布
【0040】
前記集団の純度:S=99.95%
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.18g/cm
通気密度:1.09g/cm
圧縮性指数:7.62%
ハウスナー指数:1.08
0.800〜1.000mmのd10、
1.600〜2.000mmのd50、
2.000〜2.360mmのd90
【0041】
d10が本発明に従うものより非常に大きい単一の集団Aから調製されたフラックスコアードワイヤ内で生じた単位長さ当たりの質量は189g/mで、圧縮率が78%である。
【0042】
実施例2(本発明):0.39mmの厚さを有する細長い一片を有し13.1mmの外径を有する硫黄粉末の入ったフラックスコアードワイヤの調製
粉末の他の集団Bが用いられ、その粒度分析分布および特性は以下の通りである。
【0043】
【表2】

【0044】
表2:規格ASTM E11−01による集団Bの粒度分析分布
【0045】
前記集団の純度:S=99.95%
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.13g/cm
通気密度:0.90g/cm
圧縮性指数:20.35%
ハウスナー指数:1.25
0.045〜0.075mmのd10、
0.200〜0.250mmのd50、
0.300〜0.425mmのd90
【0046】
この粉末の流動指数は余り良くない(圧縮性指数とハウスナー指数が高い)ので、本発明に従うためにはd90が余りにも小さいこの粉末単独では、通常の製造条件下で単位長さ当たりの正常な質量を有するフラックスコアードワイヤが得られることを可能としない。
【0047】
70質量%のバッチAと30質量%のバッチBによって構成される集団Cを形成する混合物に対する粒度分析分布および特性は以下の通りである。
【0048】
【表3】

【0049】
表3:規格ASTM E11−01による集団Cの粒度分析分布
【0050】
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.47g/cm
通気密度:1.25g/cm
圧縮性指数:14.96%
ハウスナー指数:1.17
0.100〜0.150mmのd10、
1.250〜1.400mmのd50、
2.000〜2.360mmのd90
【0051】
237g/mの単位長さ当たりの質量および88%の圧縮率を有するワイヤが得られている。集団Aは集団Bとは、別々に用いられるとその貧弱な注型適性により満足のいく結果をもたらさなかったはずであるが、混合されて、集団Aのみで同じ条件下に調製されたものと同じ13.1mmの外径および0.39mmの厚さを有する細長い一片を有する同様のワイヤのものよりも単位長さ当たりの質量が25%大きい。
【0052】
実施例3(本発明):0.39mmの細長い一片の厚さを有し13.1mmの外径を有する硫黄粉末入りのフラックスコアードワイヤの調製
集団Dを構成する硫黄粉末は以下の粒度分析分布および特性を有する。
【0053】
【表4】

【0054】
表4:規格ASTM E11−01による集団Dの粒度分析分布
【0055】
前記集団の純度:S=99.95%
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.14g/cm
通気密度:1.03g/cm
圧縮性指数:9.64%
ハウスナー指数:1.10
0.800〜1.000mmのd10、
1.600〜2.000mmのd50、
2.360〜2.800mmのd90
【0056】
d10が、本発明が必要とする値より大きい集団Dのみを用いることは、13.1mmの外径を有し0.39mmの細長い一片を有し、単位長さ当たりの質量が181g/mで、圧縮率が76%であるフラックスコアードワイヤが得られることを可能とする。
【0057】
60質量%の集団Dと40質量%の集団Bによって構成され、且つ粒度分析分布および特性が以下の通りである集団Eを形成する混合物を製造する。
【0058】
【表5】

【0059】
表5:規格ASTM E11−01による集団Eの粒度分析分布
【0060】
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.43g/cm
通気密度:1.16g/cm
圧縮性指数:18.80%
ハウスナー指数:1.23
0.075〜0.100mmのd10、
1.600〜2.000mmのd50、
2.360〜2.800mmのd90
【0061】
集団Eを用いることは、集団Dを単独で用いて得られる値より25%大きい225g/mの単位長さ当たりの質量および86%の圧縮率を有するフラックスコアードワイヤを得ることを可能とする。この場合でも、集団Dと集団Bとの所定の割合での混合は、集団Dのみを用いることが可能としたはずの値よりもはるかに良好な特性を有して、同じ条件下に調製された0.39mmの細長い一片を有して13.1mmのフラックスコアードワイヤを得ることを可能とした。
【0062】
しかしながら、このフラックスコアードワイヤの圧縮率および単位長さ当たりの質量は実施例2のワイヤのそれらの値よりもわずかに小さいことが評価される。そのことは、集団Eのd90が集団Cのその値よりも大きく且つ本発明の好適な範囲内ではないことによる。
【0063】
実施例4(参考):0.20mmの細長い一片の厚さを有し9.2mmの外径を有する硫黄粉末入りのフラックスコアードワイヤの調製
集団Fを構成する硫黄粉末は粒度分析分布および特性が以下の通りである。
【0064】
【表6】

【0065】
表6:規格ASTM E11−01による集団Fの粒度分析分布
【0066】
前記集団の純度:S=99.95%
比重ビン法密度:2.02g/cm
圧縮密度:1.14g/cm
通気密度:1.01g/cm
圧縮性指数:11.40%
ハウスナー指数:1.13
0.500〜0.630mmのd10、
1.000〜1.250mmのd50、
1.60〜2.000mmのd90
【0067】
d10が本発明の必要とする値より大きい集団Fのみを用いることは、0.20mmの細長い一片厚さを有し9.2mmの直径および、単位長さ当たりの質量が82g/mで圧縮率が75%であるフラックスコアードワイヤを得ることを可能とする。
【0068】
実施例5(本発明):0.20mmの細長い一片厚さを有し9.2mmの外径を有する硫黄粉末入りのフラックスコアードワイヤの調製
実施例2に記載されている集団Cに従って70質量%の集団Aと30質量%の集団Bによって構成される粉末を製造する。
【0069】
実施例4(参考)でのように0.20mmの細長い一片厚さを有し9.2mmの外径を有し同じ条件下にフラックスコアードワイヤを製造するために集団Cを用いることは、集団F単独で製造された実施例4(参考)の値よりも29%大きい109g/mの単位長さ当たりの質量および89%の圧縮率を有するワイヤを得ることを可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属浴と合金化されることを目的としたフラックスコアードワイヤ用であって、且つ少なくとも95%の硫黄で構成される粒子によって形成されている粉末であって、粒度分析集団が
1μm≦d10≦340μm、
200μm≦d50≦2000μm、
500μm≦d90≦2900μm
によって規定されることを特徴とする、前記粉末。
【請求項2】
前記粒度分析集団が、
20μm≦d10≦300μm、
800μm≦d50≦1900μm、
2000μm≦d90≦2700μm
によって規定されることを特徴とする請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
混合物の50〜90質量%を構成する粒度分析集団1および混合物の10〜50質量%を構成する粒度分析集団2の均一混合物であって、前記2つの集団が、
集団1:
350μm≦d10≦1400μm、
650μm≦d50≦2200μm、
1000μm≦d90≦3000μm
集団2:
1μm≦d10≦250μm、
50μm≦d50≦500μm、
100μm≦d90≦800μm
(但し、d10、d50およびd90は、累積分布の値がそれぞれ10質量%、50質量%および90質量%である粒子の相当直径である。)
によって規定される、前記均一混合物に由来することを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記集団1が混合物の65〜75質量%を構成し、前記集団2が混合物の25〜35質量%を構成することを特徴とする請求項3に記載の粉末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末を含有し、且つワイヤ内の粉末の圧縮率が85%以上であることを特徴とする溶融金属浴と合金化されることを目的とした硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤ。
【請求項6】
溶融金属浴との合金化用の硫黄をベースとするフラックスコアードワイヤの製造方法であって、以下の工程:
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末を用意する工程、
金属の細長い一片の上に前記粉末を重力によって分配する工程、
ワイヤを得るため前記細長い一片を溶接あるいは折り曲げ、且つ粉末の圧縮率が85%以上であるワイヤを得るように選択された直径にワイヤをプロファイリングする工程
を含むことを特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2012−524166(P2012−524166A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505206(P2012−505206)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050712
【国際公開番号】WO2010/119223
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511249198)
【Fターム(参考)】