説明

硫黄オンライン分析装置

【課題】自動サンプリングバルブでの熱分解重合物の付着を抑え、長期に亘って安定して硫黄濃度を測定でき、分析誤差を非常に小さくできる。
【解決手段】自動サンプリングバルブにより硫黄含有有機試料を採取し、前記試料を加熱炉で酸素含有ガスの存在下に燃焼分解し、当該燃焼分解ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を紫外蛍光検出器により検出する硫黄オンライン分析装置において、前記自動サンプリングバルブの温度を35℃以下に保持することを特徴とする硫黄オンライン分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動サンプリング装置により硫黄含有有機試料を採取し、前記試料を加熱炉において酸素含有ガスの存在下で燃焼分解し、当該燃焼分解ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を紫外蛍光検出器により検出する硫黄オンライン分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや軽油などに含まれる硫黄の分析方法の一つとして、酸素で試料を燃焼分解し、燃焼排ガスに紫外線を照射すると共に、放出される蛍光の強度から燃焼排ガス中の二酸化硫黄の含有量を測定するいわゆる紫外蛍光測定法が知られている。上記の分析方法は、例えば、沸点が25〜400℃の留分で、室温における動粘度が0.2〜10mm2/sのナフサ、自動車ガソリン、灯油、軽油中の硫黄の含有量が、3〜500ppmを越える試料の分析に採用されている(非特許文献1)。
【0003】
石油精製プロセスにおいては、日常の運転管理のために、上記分析方法を応用して、これに自動サンプリング装置を設けた、例えば図1に概略を示したような硫黄オンライン分析装置が用いられている。
図1において、石油精製プロセスからの試料は、常時、採取管1から自動サンプリングバルブ2に導入され、非測定時は排出管3から排出されている。測定時には、自動サンプリングバルブ2の切り替えにより、所定量(1.2μL程度)の試料がミキシングチャンバー4に導入され、空気などの酸素含有ガス5と混合されて、1100℃程度に加熱された加熱炉6に導入され、燃焼分解される。ここで、試料中の硫黄化合物は二酸化硫黄に、炭化水素は二酸化炭素や水などの燃焼分解ガスとなり、測定セル7に導入される。紫外線ランプ8から発光された紫外線がミラーアセンブリ9を介して、この測定セル7において、燃焼分解ガスに照射されると、二酸化硫黄は蛍光を発する。この蛍光発光の強度を光電子増倍管10で測定し、演算制御器11で処理して、硫黄濃度を表示する。なお、紫外線ランプ8を正常にコントロールするために光検出器12が設けられている。
【0004】
上述のような硫黄オンライン分析装置は、サンプリング部13、燃焼分解部14、検出部15に、それぞれ区切られたボックス内に一体として収納され、燃焼分解部14は、加熱炉6に熱を付与するためにエアーオーブンとなっており、通常、自動サンプリングバルブ2表面は、その輻射熱によって、150℃程度に予熱されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本規格協会、2007年確認、K 2541‐6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記硫黄オンライン分析装置は、長時間測定し続けていると分析誤差が生じるという課題があり、本発明は、かかる課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を加えた結果、自動サンプリングバルブで、試料の熱分解が生じ、自動サンプリングバルブの採取孔に微量の熱分解重合物が付着し、試料採取量が1.2μL程度と僅かなため、採取量に変動を与え、分析誤差が生じていること、及び自動サンプリングバルブの温度を35℃以下にすることにより、自動サンプリングバルブで熱分解重合物の付着を抑え、長期に亘って安定して硫黄濃度を測定できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、自動サンプリングバルブにより硫黄含有有機試料を採取し、前記試料を加熱炉で酸素含有ガスの存在下に燃焼分解し、当該燃焼分解ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を紫外蛍光検出器により検出する硫黄オンライン分析装置において、前記自動サンプリングバルブの温度を35℃以下に保持するものである。なお、前記有機硫黄含有試料はガソリン又はナフサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、自動サンプリングバルブでの熱分解重合物の付着を抑え、長期に亘って安定して硫黄濃度を測定でき、分析誤差を非常に小さくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】硫黄オンライン分析装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の硫黄オンライン分析装置は、自動サンプリングバルブにより試料を採取し、前記試料を加熱炉で酸素含有ガスの存在下に燃焼分解し、当該燃焼分解ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を紫外蛍光検出器により検出するものであれば、特に制限するものではなく、一般に市販されている硫黄オンライン分析装置に適用できる。
なお、自動サンプリングバルブとしては、市販のスライダー式バルブやロータリー式バルブなどが好適に用いられる。
【0012】
本発明の測定対象である硫黄含有有機試料としては、硫黄を含有する有機化合物があれば、特に支障はないが、石油精製プロセスにおける中間生成物及び最終製品などで、LPG、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油などが好適である。特には、沸点が25〜220℃、硫黄濃度が0.5〜20ppm、臭素価が20〜35gBr2/100gのガソリン、ナフサが好ましい。
【0013】
本発明においては、自動サンプリングバルブを35℃以下に保持するものである。35℃を超える温度では熱分解重合物の付着を十分に抑制できない。好ましくは30℃以下、より好ましくは10〜30℃に保持する。
【0014】
また、自動サンプリングバルブを上記温度に保持する方法としては、燃焼分解部からの輻射熱を断熱層を設けて断熱する方法、例えば自動サンプリングバルブと燃焼分解部との間に断熱部材として断熱板を設ける方法でも良いが、この方法では、一般的に50℃程度までしか下げることができない。このため、さらに冷却により所定温度に保持することが好ましい。
【0015】
この冷却方法としては、自動サンプリングバルブの表面に冷却管を巻きつけ、冷却水などの冷却剤を流す方法や、圧縮空気により空気を暖冷させるボルテックスチューブを用いて、その冷気を自動サンプリングバルブの表面に噴出させる方法などを用いることができる。特には、後者のボルテックスチューブによる冷却が簡便で好ましい。なお、この自動サンプリングバルブの温度は、その表面温度を測定し、冷却剤の流量或いは圧縮空気の供給圧をコントロールして、一定温度になるように制御しても良いが、多くは、冷却剤の流量や供給圧を一度決定すれば、特に制御しなくても所定の温度に保持できる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例、比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定して解釈されるものではない。
(加熱による重合確認試験)
沸点91.5〜207℃、硫黄濃度20ppm、臭素価26gBr2/100gの脱硫重質ガソリン留分の200mlを、#150研磨紙で湿式研磨後、脱水乾燥処理した金属試験片(炭素鋼SS400、サイズ25×25×6mm)と共に、耐圧ガラスオートクレーブの500mlガラス容器に入れ、25℃、50℃、150℃で、7日間加熱した。加熱終了後に、金属試験片に析出した重合物の重量及び試料をろ過して、金属試験上と試料中に生成した重合物を0.45μmの樹脂フッルターを用いて減圧ろ過し、ヘキサン不溶解分を重合物量として測定した。また、試料中に生成したガム分(不揮発性残渣分)の測定は、JIS K2261に規定された方法で測定した。この結果を表1に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
ガソリン脱硫プロセスの脱硫重質ガソリン留分中の硫黄濃度を測定するために設置した図1に示したような硫黄オンライン分析装置を用いて、硫黄濃度を測定すると同時に試料を採取して試験室で、JIS K2541、同K2605及びK2254に規定された方法により硫黄濃度、臭素価及び留出温度(初留点と終点)を測定した。
測定は、硫黄オンライン分析装置に何もしていない状態で、自動サンプリングバルブの表面が150℃の場合、自動サンプリングバルブの燃焼分解部側に断熱板を設けた状態で、同表面温度を50℃にした場合、これにさらにボルテックスチューブ(トラスコ中山株式会社製エアージェット;AJ-C)を設置して自動サンプリングバルブの表面温度を25℃に冷却した場合について、それぞれ4ヶ月間測定を行った。試験開始直後と開始1か月後毎の硫黄濃度、臭素価及び留出温度の測定結果を表2に示した。
【0019】
【表2】

【0020】
上記結果から、自動サンプリングバルブの温度を35℃以下にすることにより、長期に亘って、硫黄濃度を精度よく測定できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、石油精製プロセスにおける各種留分の硫黄濃度をオンラインで、長期に亘って、継続的に測定するために利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 採取管
2 自動サンプリングバルブ
4 ミキシングチャンバー
6 加熱炉
7 測定セル7
8 紫外線ランプ
10 光電子増倍管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動サンプリングバルブにより硫黄含有有機試料を採取し、前記試料を加熱炉で酸素含有ガスの存在下に燃焼分解し、当該燃焼分解ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を紫外蛍光検出器により検出する硫黄オンライン分析装置において、前記自動サンプリングバルブの温度を35℃以下に保持することを特徴とする硫黄オンライン分析装置。
【請求項2】
硫黄含有有機試料がガソリン又はナフサである請求項1に記載の硫黄オンライン分析装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−237204(P2011−237204A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107055(P2010−107055)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】