説明

硫黄化合物吸着剤

【課題】硫化カルボニルをはじめとする硫黄化合物をより効果的に除去できる吸着剤を提供する。
【解決手段】銀、リン、カルシウム及び酸素を含む結晶性粒子を含有することを特徴とする硫黄化合物吸着剤に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硫黄化合物吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システム、とりわけ近年発展著しい固体高分子形燃料電池(PEFC)では、炭化水素系の原料(原燃料)から水素を得る過程において、原燃料に含まれる硫黄成分をきわめて低レベルになるまで除去することは、その後の工程(例えば改質工程、水性ガスシフト工程(CO変成工程)、一酸化炭素の選択酸化工程等の触媒反応工程)を正常にかつ長期的に動作させる上で必要不可欠となっている。
【0003】
特に、家庭用プロパンガスを原料とする燃料電池システムにおいても脱硫する必要性が高いシステムの一つである。一般にプロパンガスは、漏洩発見のために硫黄化合物からなる付臭ガスが配合されている。付臭ガスはプロパンガスより比重が大きく、長期間にわたり静置したものはガスを80%以上使用した後においてガス中に含まれる付臭ガス(硫黄化合物)濃度が急激に増大し、最終的には100ppm近くになる。これによって、電極にある金属触媒を一気に被毒する結果、触媒機能が低下ないしは消失してしまう。特に、白金系触媒等の高価な触媒は、その交換にも高いコストがかかる。
【0004】
このような理由より、多くの燃料電池システムでは、原燃料に含まれる硫黄成分を吸着あるいは水素化分解により除去する脱硫部が設けられている。使用される脱硫剤の種類としては、硫黄吸着剤又は水素化脱硫触媒のほか、常圧かつ室温に近い比較的低温の温和な条件で硫黄成分を極めて低いレベルまで除去できる銀、銅等を担持したゼオライト系脱硫剤が提案されている(特許文献1、特許文献2等)。ゼオライト系脱硫剤は、工業的に利用されているほか、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)等の低沸点の炭化水素を原燃料として用いる家庭用燃料電池システム等にも広く用いられつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277300
【特許文献2】特開2008−31306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ゼオライト系脱硫剤は、炭化水素系燃料中に硫黄成分として硫化カルボニルが含まれている場合にはそれを有効に取り除くことができない。
【0007】
従って、本発明の主に目的は、硫化カルボニルをはじめとする硫黄化合物をより効果的に除去できる吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を硫黄化合物の吸着剤として採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の硫黄化合物吸着剤に係る。
1. 銀、リン、カルシウム及び酸素を含む結晶性粒子を含有することを特徴とする硫黄化合物吸着剤。
2. 結晶性粒子が、リン酸銀及びリン酸カルシウムを含む、前記項1に記載の硫黄化合物吸着剤。
3. 結晶性粒子が、少なくとも1)立方晶又は2)六方晶の結晶系を有する、前記項1又は2に記載の硫黄化合物吸着剤。
4. 粉末X線回折分析において、少なくとも1)AgPOの結晶構造に由来するピーク及び2)Ca(POOHの結晶構造に由来するピークを有する、前記項1〜3のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
5. 銀イオンを含んだ溶液にリン酸カルシウム粒子を分散・攪拌し、得られた反応生成物を乾燥することによって得られる、前記項1〜4のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
6. リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトである、前記項5に記載の硫黄化合物吸着剤。
7. 銀の含有量が0.1〜60重量%である、前記項1〜6のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
8. BET比表面積が20m/g以上である、前記項1〜7のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
9. 燃料電池用脱硫剤として用いる、前記項1〜8のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
10. 硫黄化合物を含有する被処理物に対して前記項1〜9のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤を接触させる工程を含む硫黄化合物の除去方法。
11. 被処理物が気体である、前記項10に記載の硫黄化合物の除去方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硫黄化合物吸着剤は、硫黄化合物を効果的に吸着・除去することができる。特に、硫化カルボニルについては、従来のゼオライト系脱硫剤よりも優れた吸着・除去効果を発揮することができる。
【0011】
このような特徴をもつ硫黄化合物吸着剤は、常温で燃料ガス中の硫黄化合物(付臭剤として含まれる硫黄化合物を含む。)を除去できるので、例えば燃料電池等で使用される脱硫剤としても効果的であるため、燃料電池システム中の触媒の被毒による問題を効果的に抑制ないしは防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例及び比較例の試料におけるX線回折分析の結果を示す図である。
【図2】試験例2で使用したガス吸着装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.硫黄化合物吸着剤
本発明の硫黄化合物吸着剤(本発明吸着剤)は、銀、リン、カルシウム及び酸素を含む結晶性粒子を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明吸着剤における組成は、特に硫黄化合物の吸着性能を発揮するのに十分な所望の含有量の銀があれば特に制限されない。すなわち、銀の含有量は、所望の吸着性能等に応じて適宜変更することができるが、一般的には本発明吸着剤中に銀が0.1重量%以上、特に10〜60重量%含まれていることが望ましい。
【0015】
また、その他の成分は銀の含有量に応じて変更することができる。例えば、カルシウムは、本発明吸着剤中10〜50重量%程度の範囲内とすることができる。また、リンは、本発明吸着剤中10〜20重量%程度の範囲内とすることができる。
【0016】
本発明吸着剤を構成する結晶性粒子は、上記のような各成分を含むものであるが、少なくともリン酸銀及びリン酸カルシウムを含有していることが望ましい。リン酸カルシウムとしては、例えばリン酸二水素カルシウム(Ca(HPO)、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、ヒドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))、ピロリン酸カルシウム(Ca)、β−TCP(β−Ca(PO)、炭酸アパタイト(Ca10(PO(CO(OH))等のいずれであっても良い。
【0017】
これらのリン酸銀及びリン酸カルシウムを含む結晶性粒子のうち、少なくとも、1)立方晶又は2)六方晶の結晶系を有するものであることが好ましい。立方晶を有する結晶性粒子として、好適な例としてリン酸銀(AgPO)等が挙げられる。六方晶を有する結晶性粒子としては、ヒドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、β−TCP(β−Ca(PO)、炭酸アパタイト(Ca10(PO(CO(OH))等が挙げられるが、特にヒドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))であることが好ましい。
【0018】
上記のような結晶系を有する結晶性粒子は、特に粉末X線回折分析において、少なくとも1)AgPOの結晶構造に由来するピーク及び2)Ca(POOHの結晶構造に由来するピークを有することが好ましい。これによって、硫黄化合物に対する吸着性能、特に硫化カルボニル及びジメチルサルファイドの少なくとも1種に対する吸着性能をよりいっそう高めることができる。
【0019】
本発明吸着剤は、いずれの製法によっても得ることができるが、特に、銀イオンを含む溶液とリン酸カルシウムとを混合・攪拌し、得られた反応生成物を乾燥することによって得られるものが好ましい。
【0020】
リン酸カルシウムとしては、例えばリン酸二水素カルシウム(Ca(HPO)、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、ヒドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))等のいずれであっても良いが、特にヒドロキシアパタイトを好適に用いることができる。
【0021】
リン酸カルシウムの形態は特に制限されないが、通常は粉末状、細粒状、顆粒状であり、特に粉末状であることが好ましい。この場合の平均粒子径は、一般的には0.1〜100000μm程度、特に0.1〜1700μmとすることが好ましい。従って、例えば後記の実施例に示すように平均粒子径を2〜5μmと設定することができる。このような粒径範囲に設定することによって、銀との接触をより効果的に行わせることができる。
【0022】
銀イオンを含む溶液は、例えば銀イオン供給源となる銀化合物を溶液に溶解することによって得ることができる。
【0023】
前記の銀化合物としては、溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、例えば硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、塩化銀等の銀の無機酸塩、酢酸銀等の銀の有機酸塩等を挙げることができる。溶媒としては、水のほか、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を使用することができる。本発明では、特に水を使用することが好ましい。溶液の銀イオン濃度は限定的ではないが、通常は0.1〜58w/v%程度とすれば良い。
【0024】
リン酸カルシウムの配合割合は、所望の銀含有量に応じて適宜設定することができる。一般的に銀イオンを含む溶液中に含まれる銀成分はほぼすべて結晶性粒子に含まれることから、銀イオン濃度が一定であれば、銀イオンを含む溶液を多く使用すればそれだけ多くの銀を含有する結晶性粒子を生成することができる。
【0025】
銀イオンを含む溶液とリン酸カルシウムとの混合・攪拌は、両成分が均一になるようにすれば良く、公知の攪拌方法によって実施すれば良く、公知又は市販の混合装置、攪拌装置等を利用することができる。混合・攪拌に際しての温度条件は、一般的には室温下とすれば良いが、必要に応じて加熱しても良い。また、本発明では、光によって銀化合物が分解されるおそれがあるため、遮光下で混合・攪拌することが望ましい。混合・攪拌時間は、一般的には1分〜48時間程度、より好ましくは30分〜5時間程度の範囲内とすれば良いが、必ずしもこの範囲内に限定されない。なお、前記溶液に対してリン酸カルシウムは、一部又は全部が溶解しても良い。
【0026】
混合・攪拌によって得られた反応生成物を乾燥する。本発明では、必要に応じて乾燥に先立って固液分離処理を実施しても良い。固液分離方法は公知の方法に従えば良く、例えばろ過、遠心分離等を採用することができる。さらに、固液分離した後、必要に応じて固形分を水洗しても良い。
【0027】
乾燥は、室温下又は加熱下の乾燥のいずれでも良い。加熱乾燥する場合、加熱温度は通常30〜500℃程度、特に40〜120℃とすることが好ましい。乾燥時間は、乾燥温度等に応じて適宜調節することができる。
【0028】
本発明吸着剤は、BET比表面積が20m/g以上、特に20〜300m/gであることが好ましい。このような範囲内に設定することによって、より優れた吸着性能を得ることができる。
【0029】
また、本発明吸着剤の全細孔容積は特に制限されないが、通常0.05cc/g以上、特に0.1cc/g以上であることが好ましい。なお、全細孔容積の上限値は限定されないが、通常は0.6cc/g程度とすれば良い。
【0030】
また、本発明吸着剤は、銀、リン、カルシウム及び酸素を含む結晶性粒子以外にも、必要に応じて他の添加剤が含まれていても良い。例えば、結合剤、賦形剤、安定化剤、着色剤、酸化防止剤、耐光安定化剤、除湿剤、帯電防止剤等の添加剤が挙げられる。
【0031】
本発明吸着剤は、硫黄化合物を吸着するために用いることができる。吸着させる方法としては限定的でなく、例えば除去対象となる被処理物と接触させることによって使用することができる。具体的な方法は、例えば後記2.で示した方法に従えば良い。
【0032】
被処理物となる硫黄化合物は、硫黄元素(S)を含む化合物であれば限定されず、硫黄酸化物(SOx)、硫化水素、硫化カルボニル、ジメチルサルファイド、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、メチルエチルサルファイド、ベンゾチオフェン、テトラヒドロチオフェン等が例示される。特に、本発明では、硫化カルボニル及びジメチルサルファイドの少なくとも1種が好ましい。これらの成分は、プロパンガス等の炭化水素系ガス中に付臭ガスとして配合されている成分であるが、燃料電池の原燃料として用いる場合、燃料極に侵入すると触媒を劣化させることになる。本発明脱硫剤の使用により、これらの成分を効果的に除去し、触媒の長寿命化、ひいては燃料電池システムの性能保持に寄与することができる。
【0033】
本発明吸着剤は、これらの付臭ガスを効果的に除去することができるので、燃料電池の燃料極用の脱硫剤として好適に用いることができる。より具体的には、燃料電池システムにおいて、原燃料として供給される炭化水素系ガスを改質器等に導入するに先立って前記ガスの脱硫を行う脱硫器に装填することができる。換言すれば、公知の脱硫剤として使用されているゼオライト系脱硫剤が使用されている燃料電池システムにおいて、ゼオライト系脱硫剤に代えて本発明吸着剤を使用することができる。
【0034】
2.硫黄化合物の除去方法
本発明は、硫黄化合物を含有する被処理物に対して本発明の硫黄化合物吸着剤を接触させる工程を含む硫黄化合物の除去方法を包含する。
【0035】
接触方法としては、固体(本発明吸着剤)と気体(炭化水素系ガス)との接触が可能な方法であれば限定されない。例えば連続式、半回分式又は回分式のいずれでも良く、また固定床、流動床、懸濁床等の形式であっても良い。本発明では、本発明吸着剤を充填した反応器中に炭化水素系ガスを流通させる方法を好適に採用することができる。
【0036】
反応温度、反応時間、反応圧力等の条件は、用いる脱硫剤の仕様、炭化水素系ガスの組成等に応じて適宜設定することができる。反応温度としては、一般的に0〜300℃程度、特に5〜100℃とすることが好ましい。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良いが、通常は常圧(1気圧)程度とすれば良い。反応時間は、炭化水素系ガスの流量等を制御しながら、通常は1秒〜60分の範囲内で設定することができる。
【0037】
本発明の脱硫方法においても、除去対象となる硫黄成分は限定されず、前記で例示したものが挙げられる。特に、本発明では、硫化カルボニル及びジメチルサルファイドの少なくとも1種を好適に除去することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0039】
実施例1
精製水200mLに硝酸銀を1.75g溶解させて硝酸銀水溶液を調製した。この水溶液にヒドロキシアパタイト10gを添加し、室温・遮光下で3時間攪拌した。その後、これをろ過し、固形分を水洗した後、100℃で一晩乾燥させることにより銀含有量10重量%の試料を作製した。
【0040】
実施例2
硝酸銀を6.74g溶解させたほかは、実施例1と同様にして銀含有量30重量%の試料を作製した。
【0041】
実施例3
硝酸銀を15.75g溶解させたほかは、実施例1と同様にして銀含有量50重量%の試料を作製した。
【0042】
比較例1
精製水300mLに硝酸銀15gを溶解させて硝酸銀水溶液を調製した。この水溶液にフォージャサイト型ゼオライト(X型)25gを添加し、室温・遮光下で3時間攪拌した。その後、これらをろ過し、固形分を水洗した後、130℃で一晩乾燥させることにより試料を作製した。
【0043】
試験例1
実施例及び比較例で得られた試料について、結晶構造、BET比表面積及び全細孔容積を測定した。その結果を図1及び表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
なお、各物性の測定方法は、次のようにして実施した。
(1)結晶構造
試料を粉末X線回折装置「RINT2100V」 リガク社製を用いて、粉末X線回折分析を行った。
(2)成分の含有量
銀、カルシウム及びリンの含有量を以下に示す条件でICP発光分光分析法により測定した。
装置名:VISTA−PRO(セイコーインスツルメンツ社製)
測定法:標準添加
波長(nm):Ca−393.366、P−213.618、Ag−328.068
(3)BET比表面積
測定装置としてQuantachrome社製の高速比表面積・細孔分布測定装置「NOVA4000e型」を用いた。試料の前処理として、試料0.05gを正確に測り、試験管に封入し、105℃で2時間脱気を行った。比表面積の測定は、前処理終了後、液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、その吸着等温線を用いて多点BET法により比表面積を算出した。
(4)平均粒子径
試料を超音波した後に水中に分散させてレーザー回折法により水溶媒中にて測定を行った。測定装置として「MICROTRAC HRA Model No.9320−X100」Honeywell社製を用いた。
(5)全細孔容積
測定装置としてQuantachrome社製の高速比表面積・細孔分布測定装置「NOVA4000e型」を用いた。試料の前処理として、試料0.05gを正確に測り、試験管に封入し、105℃で2時間脱気を行った。全細孔容積の測定は、前処理終了後、液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、相対圧力P/P≒1付近で吸着したガスの全量を元に全細孔容積を算出した。
【0046】
試験例2
実施例及び比較例で得られた試料について、硫黄化合物の吸着特性についても調べた。その結果を表2〜表3に示す。
【0047】
なお、硫黄化合物の吸着特性は、図2に示すような装置を用いて試験を行った。まず、12〜18メッシュのペレット状にした試料1mLを内径9mm×長さ70mmの耐圧ガラス製反応管に充填した。次いで、対象ガス(硫黄化合物:硫化カルボニル(COS)又はジメチルサルファイド(DMS))を窒素ガスで15ppmに希釈した混合ガスを常温・常圧下GHSV=3000h−1で流通させた。試験は、3時間行い、1分、5分、15分、30分、1時間、3時間の各時点においてカラム出口よりガスを3方バルブを介してガス捕集用テドラーバッグに採取し、採取したガスをFPD検出器付きガスクロマトグラフ「GC−2014」島津製作所製を用いて対象ガスの濃度を測定し、吸着前ガス濃度から吸着後ガス濃度を差し引いて吸着量を算出した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
表2からも明らかなように実施例1〜3の試料は、比較例1の硫黄化合物吸着量よりも高い値を示し、優れた吸着性能を発揮できることがわかる。また、表3に示す通り、DMSガスについても、実施例の試料は高い吸着活性を維持していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀、リン、カルシウム及び酸素を含む結晶性粒子を含有することを特徴とする硫黄化合物吸着剤。
【請求項2】
結晶性粒子が、リン酸銀及びリン酸カルシウムを含む、請求項1に記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項3】
結晶性粒子が、少なくとも1)立方晶又は2)六方晶の結晶系を有する、請求項1又は2に記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項4】
粉末X線回折分析において、少なくとも1)AgPOの結晶構造に由来するピーク及び2)Ca(POOHの結晶構造に由来するピークを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項5】
銀イオンを含んだ溶液にリン酸カルシウム粒子を分散・攪拌し、得られた反応生成物を乾燥することによって得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項6】
リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトである、請求項5に記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項7】
銀の含有量が0.1〜60重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項8】
BET比表面積が20m/g以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項9】
燃料電池用脱硫剤として用いる、請求項1〜8のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤。
【請求項10】
硫黄化合物を含有する被処理物に対して請求項1〜9のいずれかに記載の硫黄化合物吸着剤を接触させる工程を含む硫黄化合物の除去方法。
【請求項11】
被処理物が気体である、請求項10に記載の硫黄化合物の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206060(P2012−206060A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75312(P2011−75312)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】