硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池
本発明は、硫黄を含有する多孔質構造体の電気化学電池における使用に関する。その材料は、例えば、電気化学電池の1つまたは複数の電極を作製する上で有用である。例えば、本書類に記載されたシステムと方法は、導電性多孔質支持構造体と、支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄(例えば、活性種として)を含む複数の粒子を含む電極の使用を含んでいる。本発明者らは、意外にも、いくつかの態様では、電池の効率的な運転が可能となるように電極の導電性と構造的一体性を十分に高い水準に維持しながら、電解質と硫黄との接触を向上させるために、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/または該ポア内の粒子の大きさを調整することが可能であることを見出した。
また、電極内の機械的安定性を維持しながら、支持材料に対する硫黄の適切な比が得られるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/または該ポア内の粒子の大きさを選択することもできる。本発明者らは、意外にも、ある種の材料(例えば、ニッケル等の金属)を含む多孔質支持構造体を用いると、比較的大きな電池特性の向上が得られることも見出した。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内に硫黄粒子を形成する方法により、粒子径とポア径との間の望ましい関係をもたらすことができる。電極の構造的一体性を維持しながら、異方的な力の適用に対しても得られた電極が抗することができるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整できる。
また、電極内の機械的安定性を維持しながら、支持材料に対する硫黄の適切な比が得られるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/または該ポア内の粒子の大きさを選択することもできる。本発明者らは、意外にも、ある種の材料(例えば、ニッケル等の金属)を含む多孔質支持構造体を用いると、比較的大きな電池特性の向上が得られることも見出した。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内に硫黄粒子を形成する方法により、粒子径とポア径との間の望ましい関係をもたらすことができる。電極の構造的一体性を維持しながら、異方的な力の適用に対しても得られた電極が抗することができるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2009年8月28日に出願され、名称が「硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池」である米国仮出願第61/237,903号に対して優先権を主張するものであり、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、電気化学電池に関し、より詳しくは、硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池を含むシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な電気化学電池は、電気化学反応に参加するカソードとアノードとを含んでいる。一般に、電気化学反応は電解質により促進され、該電解質は、自由なイオンを含み、かつ導電媒体として作用することができる。電極活物質と電解質との間の接触量を増加させることにより(例えば、多孔質電極を用いることにより)、電気化学電池の特性を向上させることができ、それにより、電池内の電気化学反応速度を増加させることができる。さらに、電極のバルク内部の導電性を高く維持することにより(例えば、電極活物質とそれを付着させる基材との間)、電気化学電池の特性を向上させることができる。したがって、電極内部の導電性を増加させるとともに、電極活物質と電解質との間の接触量を増加させるシステムおよび方法は有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気化学電池に関し、より詳しくは、硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池を含むシステムおよび方法に関する。本発明の主題は、場合により、相関する製品、特定の問題に対する代替解決案、および/または、1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある観点では電極が記載されている。いくつかの態様では、電極は、多孔質支持構造体を有し、該多孔質支持構造体は、複数のポアと、該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を含んでもよく、該複数の粒子の各粒子は、最大断面寸法を有し、該複数の粒子の各粒子は、粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子体積のそれぞれの合計で規定される全粒子体積を有し、および該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの最大断面寸法を有する粒子で占められている。
【0006】
電極は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を含んでもよく、該複数の粒子は、一体として粒状物質の全量を規定し、粒状物質の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの最大断面寸法を有する粒子で構成されている。
【0007】
いくつかの形態では、電極は、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該複数のポアの各ポアは、ポア体積を有し、および該複数のポアは、各ポア体積のそれぞれの合計で規定される全ポア体積を有し、および全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで占められている。
【0008】
電極は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該多孔質支持構造体の該複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、および全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで占められている。
【0009】
場合により、電極は、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該電極を有する電気化学電池は、最初の充放電サイクルの後の少なくとも1回の充放電サイクルで、電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、利用率100%は電極中のグラム硫黄当たり1672mAhに相当する。
【0010】
別の態様として、電気化学電池に用いる電極の製造方法を記述する。該方法は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体を用意すること、ここで、該多孔質支持構造体の該複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、かつ該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで規定され、および硫黄を含有する電極活物質を該多孔質支持構造体のポア内に付着させることを含んでもよい。
【0011】
場合により、金属製多孔質支持構造体、ポリマー製多孔質支持構造体、またはセラミック製多孔質支持構造体を用いてもよい。
【0012】
本発明のいろいろな非限定の実施形態についての以下の詳細な説明を添付図とともに検討することにより、本発明の他の利点および新規な特徴が明らかになるであろう。本明細書と出典明示により組み入れられた文書が相反するおよび/または矛盾する開示内容を含む場合には、本明細書が優先される。もし出典明示により組み入れられた2つのまたはそれ以上の文書が互いに相反するおよび/または矛盾する開示内容を含む場合には、後の有効日を有する文書が優先される。本明細書に開示された全ての特許および特許出願は、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の非限定の態様は、添付図を参照しながら例として記載されるものであり、該添付図は模式的なものであり、正確な縮尺率で描くことを意図したものではない。該添付図において、図示された同じまたは実質的に同じ要素は一つの数字で通常示される。
見易くするため、すべての図ですべての要素が標識される訳ではなく、また当業者が本発明を理解する上で図示が不要である場合には、本発明の各実施形態のすべての要素が図示されるものでもない。
【図1】図1は、典型的な電気化学電池の模式図である。
【図2】図2は、別の実施形態に基づく電気化学電池の模式図である。
【図3】図3は、典型的な電気化学電池の模式図である。
【図4A】図4Aは、典型的な電極の走査型電子顕微鏡写真(SEMs)である。
【図4B】図4Bは、典型的な電極の走査型電子顕微鏡写真(SEMs)である。
【図5A】図5Aは、ある一連の態様における、充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図5B】図5Bは、図5Aの一連の態様における、Cレートに対する容量のプロットである。
【図6A】図6Aは、ある一連の態様における硫黄−炭素複合体の二次電子像である。
【図6B】図6Bは、図6Aの複合体のX線スペクトル像である。
【図6C】図6Cは、図6Aの複合体のX線スペクトル像である。
【図6D】図6Dは、硫黄−炭素複合体の断面の二次電子像である。
【図6E】図6Eは、図6Dの複合体のX線スペクトル像である。
【図6F】図6Fは、図6Dの複合体のX線スペクトル像である。
【図7】図7は、ある一連の態様における、充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図8A】図8Aは、ある一連の態様における、電極の二次電子像である。
【図8B】図8Bは、図8Aの一連の態様における、電極の二次電子像である。
【図9A】図9Aは、ある一連の態様における、複合カソード中の硫黄の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9B】図9Bは、図9Aの一連の態様における、複合カソード中の炭素の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9C】図9Cは、図9Aの一連の態様における、複合カソード中のアルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9D】図9Dは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中の硫黄の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9E】図9Eは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中の炭素の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9F】図9Fは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中のアルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図10】図10は、典型的な電気化学電池の充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図11】図11は、ある一連の態様における、Cレートに対する容量比率の例示的なプロットである。
【図12】図12は、ある一連の態様における、印加圧力に対するカソードの厚さのプロットである。
【図13】図13は、いくつかの態様における、サイクル数に対する比放電容量の例示的なプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、硫黄含有多孔質構造体の電気化学電池での使用に関する。その材料は、例えば、電気化学電池の中に一つまたは複数の電極を形成する場合に有用である。例えば、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、電極の使用を含んでもよく、該電極は、導電性の多孔質支持構造体と、該支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む複数の粒子(例えば、活性種として)を含む。本発明者らは、意外にも、いくつかの実施形態において、電池の望ましい運転が可能なように電極の導電性と構造的一体性を十分に高いレベルに維持しながら、電解質と硫黄との間の接触が促進されるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整できることを見出した。また、電極内における機械的安定性を維持しながら、支持材料に対する硫黄の適切な比率を達成できるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを選択することができる。本発明者らは、意外にも、特定の材料(例えばニッケル等の金属)を含む多孔質支持構造体を使用すると、電池特性が顕著に増加することも見出した。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポアの中に電極活物質(例えば硫黄を含む)を含む粒子を作製する方法は、粒子の大きさとポアの大きさとの間に所望の関係をもたらす。電極の構造完全性を維持しながら、異方的な力の適用にも耐えうるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整することもできる。
【0015】
本明細書に記載されたシステムおよび方法の開発において、発明者らは、硫黄含有電極の製造に関係する複数の課題を明らかにした。最初に、硫黄の導電率はかなり低く(例えば、元素硫黄の場合で5.0×10−14Scm−1)、電極の導電性を抑制し、その結果電池特性を抑制する。また、微粒子硫黄は、厚みが均一で高表面積の電極を製造するのに有用ではあるが、従来の機械的粉砕では製造するのが困難である。それは、粒子が速やかに再凝集するからである。さらに、高表面積炭素は、比較的高い比容量とサイクル寿命を与えるが、従来のスラリーは取扱が難しい。それは、高表面積炭素は高い吸収スティフネス(absorption stiffness)を有しているので、固形分量の比較的低いスラリーを与えるからである。最後に、硫黄含有電極材料の従来のスラリー処理では、スラリー成分の再分布が起こり、その結果、カソード内の空孔が不均一となり、アノード利用率が減少する。本発明者らは、支持材料の空孔内部に硫黄含有粒子を配置することにより、これらの従来の問題点を克服して、比較的均一な空孔率、粒子径および成分分布を有する電極を製造できることを意外にも見出した。
【0016】
本明細書に記載された多孔質構造体は、広い様々な装置用の電気化学電池として用いることができ、該装置には、例えば、電気自動車、負荷平準化装置(例えば、太陽または風力を利用するエネルギープラットフォーム)、携帯電子装置等がある。いくつかのケースでは、本明細書に記載された多孔質構造体は、リチウム硫黄(L−S)電池等の二次電池(すなわち、再充電可能な電池)の電極として特に有用である。
【0017】
ある態様として、電気化学電池に用いる電極が記載されている。該電極は、複数のポアを有する多孔質構造体を含んでもよい。本明細書で用いる「ポア」は、ASTM規格試験D4284−07を用いて測定したポアを指し、溝、空隙または通路を一般的に指し、該ポアはその少なくとも一部が媒体によって囲まれた部分であって、媒体内に残った状態で連続するループがポアの周囲に作られるようにポアは形成されている。一般的に、材料の内部のポアであって該材料によって完全に囲まれているポア(したがって、該材料の外からは近づくことができないものであり、例えば独立気泡)は、本発明のコンテキストにおいてはポアとは見なされない。物品が粒子に塊を含む場合、ポアは、粒子間ポア(すなわち、一緒に充填された時に粒子間にできるポアであり、例えば隙間)と、粒子内ポア(すなわち、個々の粒子に覆われて存在するポア)の両方を含むと理解されるべきである。ポアは、いろいろな適切な断面積形状を有してもよく、例えば、円状、楕円状、多角形状(例えば、矩形、三角形等)、不定形等である。
【0018】
多孔質構造体は、いろいろな適切な形状を含んでもよい。いくつかの例では、多孔質構造体は、分離粒子の多孔質集合体を含み、該集合体の中の粒子は多孔質または非多孔質である。例えば、多孔質粒子または非多孔質粒子をバインダーとともに混合して多孔質集合体を形成することにより、多孔質支持構造体を形成してもよい。本明細書に記載した本発明の電極を形成するため、電極活物質を粒子間の隙間の中および/または粒子内のポアの中に配置してもよい。
【0019】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、「多孔質連続」構造体であってもよい。本明細書で用いる多孔質連続構造体は、その中にポアを含む連続した固体構造体を指し、該構造体はポアを規定する固体領域間に比較的つながった表面を有している。多孔質連続構造体の例には、例えば、その体積内にポアを含む一つの材料(例えば、多孔質炭素粒子、発泡金属体等)が含まれる。当業者は、多孔質連続構造体と、例えば、多孔質連続構造体ではなく分離粒子の多孔質集合体である構造体(分離粒子間の隙間および/または他の空隙がポアと見なされるもの)とを、例えば、その2つの構造体のSEM画像を比較することによって区別することができるであろう。
【0020】
多孔質支持構造体は、いろいろな適切な形状または大きさを有していてもよい。例えば、支持構造体は、いろいろな適切な最大断面寸法(例えば、約10mmより小さく、約1mmより小さく、約500ミクロンより小さい等)を有する多孔質のつながった粒子でもよい。いくつかの場合、多孔質支持構造体(多孔質連続またはそうでないもの)は、比較的大きな最大断面寸法を有してもよい(例えば、少なくとも約500ミクロン、少なくとも約1mm、少なくとも約10mm、少なくとも約10cm、約1mmと約50cmの間、約10mmと約50cmの間、または約10mmと約10cmの間)。いくつかの態様では、電極内の多孔質支持構造体の最大断面寸法は、多孔質連続構造体を用いて形成された電極の最大断面寸法の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%である。
【0021】
いくつかの態様では、支持構造体は、他の2つの構造体に比べて比較的薄い寸法を有する物品、例えばフィルムでもよい。例えば、支持構造体は、厚さが約1mmより薄く、約500ミクロンより薄く、約100ミクロンより薄く、約1ミクロンと約5mmの間、約1ミクロンと約1mmの間、約10ミクロンと約5mmの間、または約10ミクロンと約1mmの間であり、幅および/または長さが少なくとも約100倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約10,000倍大きい。本明細書では、物品(例えば多孔質支持構造体)の「最大断面寸法」とは、物品の2つの対向する境界の間の測定される最大の距離を指す。本明細書に記載された多孔質支持構造体は、いろいろな適切な形状をとってもよい。例えば、支持構造体は、球状、筒状、またはプリズム状(三角プリズム、矩形プリズム等)であってもよい。いくつかの場合、支持構造体の形態は、例えば電気化学電池に用いる電極の中に支持構造体が比較的容易に組み込めるように選択してもよい。例えば、支持構造体は、その上に電気化学電池の別の部材(例えば、電解質、別の電極等)を形成できるように薄いフィルムからなるものであってもよい。
【0022】
いくつかの場合、多孔質粒子を多孔質連続構造体として用いてもよい。そのいくつかの態様として、材料(例えば、電極活物質)を粒子のポアないに堆積させ、その粒子を電極を形成するのに用いてもよい。例えば、自身のポア内に電極活物質を含む多孔質粒子を一体となるように結合させ(例えば、バインダーまたは他の添加材を用いて)、複合電極を形成してもよい。そのような複合電極を形成するための例示的な方法が、例えば、2006年1月13日に出願された「新規な複合電極、新規な複合電極を有する電気化学電池、およびその作製方法」と題する米国特許出願公開第2006/0115579号明細書に記載されており、出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0023】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、比較的大きな大きさの多孔質連続構造体からなるものであってもよく、該多孔質連続構造体は、上述の多孔質粒子とは異なり、電極として使えるように一定の大きさに作られかつ賦形されている。その構造体は、例えば、金属(例えば金属発泡体)、セラミックス、およびポリマー等のいろいろな材料で作製してもよい。その材料の例は、以下により詳細に記載されている。いくつかの態様では、電極内の多孔質連続構造体の最大断面寸法は、多孔質連続構造体を用いて形成された電極の最大断面寸法の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%としてもよい。
【0024】
いくつかの態様では、そのような比較的大きな多孔質連続構造体を用いると、電極内に含まれるバインダーをほとんど不要あるいは全く不要とすることができる。それは、微小粒子を一体的に保持して多孔質支持構造体を形成するのに、バインダーが不要だからである。いくつかの態様では、電極は、約20重量%より少ない、約10重量%より少ない、約5重量%より少ない、約2重量%より少ない、約1重量%より少ない、または約0.1重量%より少ないバインダーを含んでもよい。このコンテキストにおいて、「バインダー」は、電極活物質ではなく、かつ電極に導電性経路を付与することが含まれない材料を指している。例えば、カソード内の内部結合を促進するために電極はバインダーを含んでもよい。
【0025】
多孔質支持構造体は、いろいろな適切な材料を含んでもよい。いくつかの態様では、電極内の導電体として多孔質支持構造体を用いてもよい(例えば、電解質に接近可能な導電性材料)。したがって、多孔質支持構造体は、導電性材料を含んでもよい。例えば、使用に適した多孔質支持構造体の例としては、限定されるものではないが、金属(例えば、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、または他の適切な金属、またはそれら純粋金属または合金の組み合わせ)、カーボン(例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、中空カーボンチューブ、グラフェン、カーボンフィラメント等)、導電性ポリマー、または他の適切な導電性材料が含まれる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体の大部分は導電性材料で形成してもよい。いくつかの場合では、多孔質支持構造体は、導電性材料で少なくとも一部が被覆された(例えば、溶液を用いた堆積、蒸着、または他の適切な技術を用いて)非導電性材料からなるものであってもよい。いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、ガラス(例えば、二酸化ケイ素、非晶質シリカ等)、セラミック(例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化バナジウム、および以下に記載する他のもの)、半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等)、非導電性ポリマー等からなるものであってもよい。
【0026】
多孔質支持構造体は、電気化学電池の特性を促進するように選択された大きさ分布を有するポアを含んでもよい。いくつかの場合、多孔質支持構造体は、サブナノメータおよびシングルナノメータの大きさのポアよりも大きなポアを含んでもよく、それらは非常に小さいので、例えば毛細管力により電極のポアの中に、電解質(例えば液体電解質)が入ることはない。さらに、いくつかの場合、ポアはミリメータの大きさのポアよりも小さくてもよく、該ミリメータの大きさのポアは大きすぎて電極を機械的に不安定にするからである。いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、複数のポアを含み、該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは、個々のポア体積のそれぞれの合計で規定される全ポア体積を有している。いくつかの態様では、全ポア体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアで占められている。いくつかの態様では、全ポア体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約20ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の断面直径を有するポアで占められている。いくつかの場合について、別の方法で示すと、多孔質支持構造体の複数のポアは、全ポア体積も一緒に規定し、全ポア体積の少なくとも約50%(または少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または実質的にすべて)が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間(または約0.1ミクロンと約20ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間)の断面直径を有するポアにより規定される。
【0027】
いくつかの態様では、複数のポアが指定された範囲の平均断面直径を有する、多孔質材料を用いることが有益である。例えば、いくつかの場合、多孔質支持材料は、複数のポアの平均断面直径が約0.1ミクロンと約10ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間にある複数のポアを含んでもよい。
【0028】
以下に説明するように、本明細書に記載されたポア分布は、いくつかの場合、異方的な力(例えば、約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間、または以下に説明される範囲のいずれかに力を限定する)を電気化学電池に加えている間に達成できる。負荷が加わった状態でも、自身の多孔度を維持することのできる材料(例えば、金属、セラミック、ポリマー等)から多孔質支持構造体を作製することにより、これは達成可能である。加えられた負荷の下で変形に耐えうる材料から電極を作製することにより、加圧下でも電極はその浸透性を維持することができ、および本明細書に記載されているように、カソードは高いレート特性(rate capabilities)を維持することができる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体(および多孔質支持構造体から製造して得られた電極)の降伏強度は、少なくとも約200ニュートン/cm2、少なくとも約350ニュートン/cm2、または少なくとも約500ニュートン/cm2でもよい。その構造体の作製方法は、以下に詳細に記載されている。
【0029】
本明細書で用いられている、ポアの「断面直径」はASTM規格試験D4284−07を用いて測定された断面直径を意味している。断面直径は、ポアの断面の最小直径を意味している。複数のポアの「平均断面直径」は、該複数のポアの断面直径の数平均を意味している。
【0030】
当業者は、ASTM規格D4284−92に記載されている水銀圧入式ポロシメトリーを用いて、多孔質構造体内部のポアの断面直径の分布と平均断面直径を計算でき、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。例えば、ASTM規格D4284−92に記載されている方法は、ポアの直径に対して累積圧入ポア体積がプロットされたポアサイズ分布を作成するのに用いることができる。所定のポア直径の範囲で、ポアに占有されている、サンプル中の全ポア体積の割合を計算するために、(1)曲線より下で、x軸の所定範囲に亘る部分の面積を計算する、(2)工程(1)で計算された面積を曲線より下の全領域の面積で割る、および(3)100%をかける。必要に応じて、ASTM標準D4284−92を用いて正確に測定されたポアサイズの範囲外であるポアサイズを物品が含み場合には、BET表面分析を用いて、ポロシメトリー測定を補完してもよく、該BET表面分析は、例えば、S.ブラナウアー、P.H.エメット、およびE.テラーらのJ.Am.Chem.Soc.,1938,60,309に記載されており、出典明示によりその内容はすべて本明細書の一部となる。
【0031】
いくつかの態様では、多孔質材料は、比較的均一な断面直径を有するポアを含んでもよい。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、ポア材料のバルク全体に亘り、比較的一貫した構造的安定性を維持する上にその均一性は有用である場合がある。また、ポアサイズを比較的狭い範囲内に制御する能力は、多孔質材料の構造的安定性を保つために十分に小さなポアを維持した状態で、流体の浸透(例えば、電解質の浸透)が可能な大きな多数のポアを組み入れることを可能とする。いくつかの態様では、多孔質材料内部のポアの断面直径の分布は、標準偏差が、複数のポアの平均断面直径の、約50%より小さく、約25%より小さく、約10%より小さく、約5%より小さく、約2%より小さく、または約1%より小さい。標準偏差(小文字のσ)は通常の意味であり、以下の式から計算できる。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Diはポアiの断面直径であり、Davgは複数のポアの断面直径の平均値であり、nはポアの数である。上記の標準偏差と平均断面直径との間の比較率は、標準偏差を平均で割り、そして100%を掛けて得られる。
【0034】
本明細書に記載された電極は、多孔質支持構造体のポア内に実質的に含まれる材料を含むこともできる。ポア内に「実質的に含まれる」と言われる材料は、ポアの外側境界線により規定される架空体積の内部に少なくとも一部が存在する材料である。例えば、ポア内に実質的に含まれる材料は、ポア内に完全に含まれてもよく、あるいはポア内にその体積の一部のみが含まれてもよいが、該材料の大部分は、全体では、ポア群の中に含まれている。ある一連の態様では、材料(例えば、硫黄含有材料)が用意され、該材料の少なくとも30質量%は、多孔質支持構造体のポア内に含まれる。別の態様では、該材料の少なくとも50質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、または95質量%は、支持構造体のポア内に含まれている。
【0035】
支持構造体内の材料は、いくつかの場合、実質的に固体または多孔質である粒子を含むことができる。いくつかの態様では、ポア内に実質的に含まれる材料は、バラバラの粒子または凝集粒子を含んでもよい。いくつかの態様では、該材料は、支持構造体内のポアの少なくとも一部の上の膜(実質的に固体または多孔質)を含んでもよい。いくつかの態様では、該材料がポアの一部の形状および/または大きさを持つように、該材料が、支持構造体内のポアの少なくとも一部を実質的に満たしてもよい。
【0036】
支持構造体内の材料は、いくつかの場合、電極活物質を含んでもよい。本明細書で用いられている「電極活物質」という用語は、電極に付随する電気化学的活性種を意味している。例えば、カソード活物質は、カソードに付随する電気化学的活性種を意味するのに対し、アノード活物質は、アノードに付随する電気化学的活性種を意味する。
【0037】
いくつかの態様では、本発明の電極は、多孔質支持体のポア内に存在する電極活物質を含む比較的多い量の材料を含んでもよい。例えば、いくつかの態様では、電極(例えばmカソード)は、本明細書に記載された電気活性な硫黄含有材料等の電極活物質を、少なくとも約20重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約65重量%、または少なくとも約75重量%を含んでもよい。
【0038】
多孔質支持構造体のポア内の材料は、いろいろな組成物を含んでもよい。いくつかの態様では、ポア内の材料は硫黄を含んでもよい。例えば、ポア内の材料は、電気活性硫黄含有材料を含むことができる。本明細書の用いられる「電気活性硫黄含有材料」は、硫黄元素をいろいろな形態で含む電気活性材料であって、その電気化学的活性には硫黄原子または硫黄成分の酸化または還元が含まれる。例えば、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素(例えば、Sg)を含んでもよい。別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素と硫黄含有ポリマーの混合物を含む。したがって、適切な電気活性硫黄含有材料は、限定されるものではないが、硫黄元素、有機または無機のスルフィドまたはポリスルフィド(例えば、アルカリ金属の)、および硫黄原子と炭素原子を含む有機材料であって、ポリマーでもポリマーでなくてもよいもの、を含んでもよい。適切な有機材料は、限定されるものではないが、ヘテロ原子、導電性ポリマーセグメント、複合体、および導電性ポリマーをさらに含む有機材料を含む。
【0039】
いくつかの態様では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料は、少なくとも約40重量%の硫黄を含む。いくつかの場合、電気活性硫黄含有材料は、硫黄を、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約90重量%含む。
【0040】
硫黄含有ポリマーの例には、Skotheimらの米国特許第5,601,947号および5,690,702号、Skotheimらの米国特許第5,529,860号および6,117,590号、2001年3月13日に発行された共通の譲受人であるGorovenkoらの米国特許第6,201,100号、およびPCT国際公開第WO99/33130に記載されたものが含まれる。ポリスルフィド結合を含む他の適切な電気活性硫黄含有材料は、Skotheimらの米国特許第5,441,831号、Perichaudらの米国特許第4,664,991号、Naoiらの米国特許5,723,230号、5,783,330、5,792,575号および5,882,819号に記載されている。電気活性硫黄含有材料のさらなる例には、例えば、Armandらの米国特許第4,739,018号、De Jongheらの米国特許第4,833,048号および4,917,974号、Viscoらの米国特許第5,162,175号および5,516,598号、およびOyamaらの米国特許第5,324,599号に記載されたジスルフィド基を含む材料が含まれる。
【0041】
硫黄は、活性な電極種として主に記載されているが、本明細書で硫黄が活性電極種として記載されている箇所ではすべて、適切な電極活性種を用いてもよいことは理解されるべきである。当業者はこのことを理解でき、かつその用途のために種を選択することができる(例えば、以下に記載されたリストから)。
【0042】
ポア内の材料が粒子(例えば、電極活物質粒子)を含む態様では、該粒子は、いろいろな適切な形状をとることができる。例えば、いくつかの態様では、粒子は実質的に球状である。いくつかの場合では、粒子は、該粒子が占有するポアの形状と同様である(例えば、筒状、角柱状等)。
【0043】
多孔質支持構造体のポア内の粒子(例えば、電極活物質粒子)の大きさは、電気化学電池の特性を促進するように選択できる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の複数の粒子の各粒子は、粒子体積を有し、および複数の粒子は、個々の粒子の体積の合計で規定される全粒子体積を有している。また、いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の複数の粒子の各粒子は、最大断面寸法を有している。いくつかの例では、多孔質支持構造体のポア内の全粒子体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の全粒子体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている。別の表現によれば、いくつかの態様では、複数の粒子が、粒子状材料の全量をまとめて規定し、該粒子状材料の全量の少なくとも約50%(または少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべて)が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間(または約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間)の最大断面寸法を有する粒子から成る。
【0044】
本明細書で用いられている、粒子の「最大断面寸法」は、1個の粒子の対向する境界線の間の最大距離で、測定できるものを意味している。複数の粒子の「平均最大断面寸法」は、複数の粒子の最大断面寸法の数平均を意味する。
【0045】
当業者は、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を解析することにより、粒子の最大断面寸法を測定することができる。凝集粒子を含むいくつかの態様では、最大断面寸法を決定する時は、粒子を別々に検討すべきである。測定は、凝集粒子の各粒子の間に架空境界線を設定し、その境界線を設定することにより得られる仮想の個々の粒子の最大断面寸法を測定することにより行うことができる。当業者であれば、SEM解析を用いて、最大断面寸法と粒子体積の分布を決定できる。当業者であれば、ASTM規格試験D4284−07(必要に応じてBET表面分析も用いる)に基づく水銀圧入ポロシメトリーを用いて、粒子がポア内に配置される前と後のポア内の体積を測定することにより、ポア内の粒子の全粒子体積を測定できる。支持構造体のポアの内側の材料自身が多孔質である場合、水銀圧入ポロシメトリー測定(必要に応じてBET表面分析も用いる)を、SEM顕微鏡写真の視覚分析により補完して、ポア内の材料(例えば、粒子)により占有されている体積を決定してもよい。
【0046】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料粒子(例えば、電極活物質)は、指定された範囲内の平均最大断面寸法を有してもよい。例えば、いくつかの場合、多孔質支持構造体内の材料粒子(例えば、電極活物質)は、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の平均最大断面寸法を持つことができる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料粒子の平均最大断面寸法の、多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する比率は、約0.001:1と約1:1の間、約0.01:1と約1:1、または約0.1:1の間とすることができる。
【0047】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の粒子は、比較的均一な最大断面寸法を持つことができる。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、その均一性は、電極活物質粒子を含む電極の表面に沿って比較的一貫した特性を発揮される上で有用な場合がある。いくつかの態様では、多孔質材料内のポアの断面寸法の分布は、複数のポアの平均断面直径の約50%より小さく、約25%より小さく、約10%より小さく、約5%より小さく、約2%より小さく、または約1%より小さい。標準偏差(小文字σ)は、通常の意味であり、前述のように、平均に対するパーセントとして計算し、表現することができる。
【0048】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の材料(例えば、粒子)は、ポア体積の比較的大きなパーセントを占めてもよい。例えば、いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料(例えば、電極活物質を含む粒子)は、多孔質支持構造体の利用可能な体積の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、またはそれをこえるパーセントを占めることができる。本明細書で用いられている「利用可能なポア体積」は、ポアの上記の定義と矛盾するものではなく、ポア物品を形成する材料により完全に囲まれているポア体積に対する、多孔質物品の周囲の外部環境に曝されているポア体積のパーセントを意味する。ポア内の材料により占有されている体積は、ポア内の材料(例えば、粒子)の外側の境界を囲む架空の体積を含み、ポア内の材料自身が多孔質である場合には、材料(例えば、粒子)の空隙体積を含む。当業者であれば、例えば、必要に応じてBET表面分析も用いて、ASTM規格試験D4284−07に基づく水銀圧入ポロシメトリーを用いて、利用可能なポア体積のパーセントを計算することができる。粒子に占有されている多孔質物品内の利用可能なポア体積のパーセントは、ポア内に粒子を配置する前と後で水銀圧入ポロシメトリー測定を行うことで(必要に応じてBET表面分析も用い)、計算できる。多孔質支持構造体のポアの内側の材料自身が多孔質である場合、水銀圧入ポロシメトリー測定(必要に応じてBET表面分析も用い)を、SEM顕微鏡写真の視覚分析で補完することにより、ポア内の材料(例えば、粒子)により占有されている体積を決定してもよい。
【0049】
多孔質支持構造体を含む電極は、いくつかの例では、比較的高いパーセントの電極活物質を含んでもよい。いくつかの態様では、多孔質支持構造体を含む電極は、例えば、活物質を、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、またはそれを越えるパーセント含んでもよい。電極内の電極活物質の量を計算するために、電極活性種の重量のみが計算されていることが理解されなくてはならない。例えば、ポリスルフィドまたは硫黄を含む有機材料等の電気活性硫黄含有材料の場合、電極内の電極活物質の硫黄含量を決定するに際しては、電気活性硫黄含有材料の硫黄含量のみが計算されている。いくつかの態様では、多孔質支持構造体を含む電極は、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、またはそれを越える硫黄を含むことができる。
【0050】
本明細書に記載された電極では、電極活物質と支持材料とは適切な重量比を有する(例えば、硫黄対炭素の適切な比)。例えば、いくつかの態様では、電極は、硫黄対炭素の重量比として、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1である重量比を有する。いくつかの態様では、電極は、硫黄対炭素の重量比として、約6:1より小さく、約5:1より小さく、約4:1より小さく、約3:1より小さく、約2:1より小さく、または約1:1より小さい重量比を有する。
【0051】
いくつかの例では、電極活物質(例えば、カソード中の硫黄)の濃度は、1つまたは複数の電極表面全体にわたり、または電極の断面全体にわたり同じである。いくつかの態様では、電極(例えば、カソード)の表面積の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%は、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散している均一な領域を形成している。いくつかの態様では、電極(例えば、カソード)の厚さに対して実質的に垂直な断面の表面積の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%は、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散している均一な領域を形成している。
【0052】
この文脈においては、「電極の表面」は、電極の幾何学的な表面を意味し、当業者であれば、それが、電極の外側境界線で規定される表面、例えば、マクロな測定手段(例えば、定規)では測定できるが、内表面(例えば、発泡体等の多孔質材料のポア内の領域、またはメッシュの中には含まれるが外側境界線を規定しないメッシュ繊維の表面積)は含まない。さらに、「電極の断面」は、解析した部分を露出させるために、電極を切断することにより(実際に、または理論的に)、観察できる概ね平面を規定している。断面を観察するために電極が切断された後、「電極断面の表面」は、露出した幾何学的表面に対応する。別の表現で定義すると、「電極の表面」と「電極断面の表面」は、それぞれ、電極の幾何学的表面と、電極断面の幾何学的表面を意味する。
【0053】
いくつかの態様では、均一領域(前の段落に記載されている)の約10%、約5%、約2%、または約1%を覆う連続領域が電極活物質(例えば、硫黄)の平均濃度を含む時には、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散されており、該電極活物質の平均濃度は、均一領域全体における電極活物質(例えば、硫黄)の平均濃度に対して約25%より小さい、約10%より小さい、約5%より小さい、約2%より小さい、または約1%より小さい範囲で変動する。この文脈において、電極活物質の「平均濃度」は、電極に対して実質的に垂直な角度から電極を見た時に、電極活物質により占有される電極の表面積(例えば、露出した表面積、電極断面の表面積)のパーセントを意味している。
【0054】
当業者であれば、例えば、電極の表面または断面のX線スペクトル画像を解析することにより、電極表面内または電極断面内の平均電極活物質濃度や、濃度の分散を計算することができる。例えば、当業者は、図E6A〜E6Cに示す画像のような電極の表面または断面のX線スペクトル画像(例えば、断面を作るために、電極を物理的に輪切りにすることにより)を得ることができる。その画像の中の所定領域における平均硫黄濃度を計算するために、当業者は、その領域の硫黄に対応する色により占有された画像のパーセントを決定することができる。副領域内の平均濃度が、大きな領域内の平均濃度に対してX%を越えて変化するかどうかを決定するために、当業者は以下の式を用いるであろう。
【0055】
【数2】
【0056】
ここで、CLは、大きな領域内の平均濃度(パーセントで表される)、Csubは副領域内の平均濃度(パーセントで表される)である。具体例として、副領域内の電極活物質の平均濃度が12%であり、大きな領域内の電極活物質の平均濃度が20%である場合、分散は40%となる。
【0057】
別の表現で定義すると、いくつかの態様では、電極表面積または電極断面積の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%)が、硫黄が実質的に均一に分散している第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有している。いくつかの例では、電極表面(または電極断面)の第1の連続領域の約10%(または約5%、約2%、または約1%)を覆う連続領域は、第2の硫黄平均濃度を含んでおり、該第2の硫黄平均濃度は、第1の連続領域全体における第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より少ない(または約10%より少ない、約5%より少ない、約2%より少ない、または約1%より少ない)範囲で変動する。
【0058】
別の観点として、電気化学電池に用いる電極の作製方法が記載されている。該方法は、いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内に物質(例えば、粒子)を実質的に付着させることを含んでもよい。多孔質支持構造体のポアの中に付着した材料は、電極活物質、例えば、硫黄を含むことができる。多孔質支持構造体および材料は、本明細書に記載されている特性(例えば、材質、大きさ、多孔度等)を持つことができる。
【0059】
多孔質支持構造体(および得られる電極)は、いろいろな方法を用いて作製することができる。例えば、いくつかの態様では、粒子を流体の中に懸濁させ、次いで該流体を除去して(例えば、熱乾燥、真空乾燥、濾過等により)、粒子が互いに付着した多孔質支持構造体を作製することができる。前述のように、いくつかの例では、バインダーを用いて粒子を付着させ、バインダー複合多孔質支持構造体を作製できる。
【0060】
いくつかの態様では、粒子が変化して多孔質支持構造体(例えば、多孔質連続構造体)を形成するまで、材料の個々の粒子を加熱することにより作製することができる。いくつかの態様では、粒子(例えば、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子等)を、粒子間に隙間が存在する状態で、粒子同士が互いに接触するように配置することができる。次に、粒子を焼結して融着構造体を形成するが、該融着構造体では、粒子間の隙間が焼結構造体のポアを構成する。本明細書で用いられている「焼結」は、この技術における通常の意味であり、粒子が互いに付着するまで粒子の融点より低い温度で粒子を加熱することにより、粒子から物を作製する方法を意味するのに用いられている。最終構造体の全多孔度、ポアの大きさ、および他の特性は、適切な粒子の大きさと形状を選択し、焼結に先立って所望の充填密度を持つように成形し、および適切な焼結条件(例えば、加熱時間、温度等)を選択することにより調整できる。
【0061】
いくつかの例では、互いに接触するように配置された粒子(例えば、ポリマー粒子、金属粒子、ガラス粒子、セラミック粒子等)を、粒子が溶融して多孔質の連続構造体を形成するように加熱することができる。最初の構造体の隙間が、そのいくつかの態様では、多孔質連続構造体のポアを形成することができる。最終構造体の全多孔度、ポアの大きさ、および他の特性は、適切な粒子の大きさと形状を選択し、焼結に先立って所望の充填密度を持つように成形し、および適切な焼結条件(例えば、加熱時間、温度等)を選択することにより調整できる。
【0062】
いくつかの態様では、溶融または焼結に先立って、粒子を制御可能に配置できる。例えば、粒子を用いて多孔質層を形成するいくつかの例では、基材に対して比較的均等におよび比較的平らに粒子を配置することは有益である。例えば、揮発性の溶媒(例えば、室温で)に粒子を懸濁させ、その上に多孔質構造体を形成する基材の上にその溶媒を注ぐことにより、これが達成できる。粒子溶媒を堆積させた後、揮発性溶媒を蒸発させると、その後には、粒子の比較的規則正しい配列が残る。
【0063】
本明細書に記載された焼結および/または溶融プロセスを、いくつかの例では、制御された雰囲気下で行うことができる。例えば、いくつかの例では、溶融または焼結を行う体積を比較的不活性なガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)で満たすことができる。いくつかの例では、実質的に酸素が存在しない条件で溶融および/または焼結を行うことができ、それにより、多孔質支持構造体を作製するために用いられる材料の酸化および/または燃焼を減らし、またはなくすことができる。いくつかの態様では、還元雰囲気(例えば、バランスガスに窒素および/またはアルゴンを用いたフォーミングガス、水素等)を用いて、焼結物品および/または溶融物品の最終酸素含量を減らすことができる。
【0064】
焼結温度および/または溶融温度は、多孔質支持構造体を形成するのに用いる材料に応じて選択することができる。例えば、粒子を溶融させて多孔質支持構造体を形成する場合、加熱温度は、粒子を構成する材料の溶融温度より高い温度を選択することができる。当業者は、焼結される材料の種類に基づいて、適切な焼結温度を選択することができる。例えば、ニッケルの適切な焼結温度は、約700℃と約950℃の間である。
【0065】
前述のように、多孔質支持構造体を形成するのに用いる粒子の大きさおよび形状を、所望の多孔度を得るために選択することができる。いくつかの態様では、粒子は、実質的に球状であるが、他の断面形状(例えば、楕円、多角形(長方形、三角形、正方形等)、不定形等)を持った粒子を用いることもできる。いくつかの態様では、粒子は比較的小さい(例えば、粉末状)。例えば、いくつかの例では、粒子の少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的に全部が、約0.5ミクロンと約20ミクロンの間または約3ミクロンと約5ミクロンの間の最大断面寸法を有している。その粒子サイズは、本願の他の箇所に記載されている有利な多孔度を持った多孔質支持構造体の製造に役立つ。
【0066】
いくつかの態様では、第1の材料を第2の材料と組み合わせ、および混合物から1つの材料を除去して支持構造体のポアを形成することにより、多孔質支持構造体を作製できる。混合物から材料の1つを除去すると、その後に空隙が残り、その空隙が最終的には多孔質支持構造体のポアを形成する。いくつかの例では、混合物中の1つまたは複数の材料が除去されている間、除去されない材料の構造は実質的に保持可能である。例えば、いくつかの例では、支持構造体材料(例えば、溶融可能な、金属、セラミック、ガラス、ポリマー等)または支持構造体材料の前駆体(例えば、多孔質支持構造体を作製するために、例えば反応(例えば、重合、沈殿等)により変換可能である)を、複数の鋳型体と混合することができる。支持構造体材料または前駆体の中で相互接続されたネットワークを形成するように、鋳型体を配置することができる。鋳型体を支持構造体材料内に配置した後、それらを支持構造体材料から除去することができ、それによりその後にポアが残る。鋳型体を除去する前および/または鋳型体が除去される間に支持構造体材料を硬化させることができる。本明細書で用いられている用語「硬化した」は、材料の粘度を実質的に増加させるプロセスを意味し、材料を固化させることに必ずしも限定されない(一連の態様では、多孔質支持構造体を固体に変換させることにより硬化させているが)。材料は、例えば、液相をゲル化させることにより硬化させることができる。いくつかの例では、材料は、重合により硬化させることができる(例えば、赤外線誘発重合または紫外線誘発重合)。いくつかの例では、硬化させた材料に相変化を経験させてもよい(例えば、その融点より低い温度またはそのガラス転移温度よりも低い温度に温度を下げることにより)。溶液から溶媒を除去することにより、例えば、溶媒相を蒸発させることにより材料を硬化させてもよく、それにより後には固相材料が残る。
【0067】
鋳型体には、適切な相を用いることができる。いくつかの例では、鋳型体に固体粒子を用いることができる。例えば、鋳型体は、シリカ粒子を含んでもよく、シリカ粒子は、例えば、フッ化水素酸を用いることで、多孔質構造体から溶出させることができる。別の例として、鋳型体は重炭酸アンモニウムを含んでもよく、重炭酸アンモニウムは水に溶解させて除去することができる。いくつかの態様では、鋳型体は、流体(例えば、液体および/または気体)の泡を含んでもよい。
【0068】
鋳型体は、限定されるものではないが、球、立方体、ピラミッド、またはこれらおよび/または他の形状の混合物を含む、適切な形状、規則的または不規則的な形状をとることもできる。鋳型体は、それぞれ適切な大きさのものが作製されてもよい。いくつかの態様では、鋳型体は、多孔質支持構造体内の所望のポアの大きさと概ね等しい平均最大断面寸法を持ってもよい。
【0069】
具体例として、金属多孔質支持構造体は、金属射出成形を用いて作製することができる。一例として、金属粒子、バインダー、および鋳型体の「未加工物」を射出成形により適切な構造体(例えば、比較的薄いシート)に成形できる。未加工物を加熱すると、バインダーと鋳型体が燃焼しきる間、金属粒子は溶融されまたは一体的に焼結され、後に一連のポアが残る。
【0070】
鋳型法を用いて多孔質セラミック構造体を製造することもできる。例えば、いくつかの例では、ポリアフロン(polyaphron)溶液(すなわち、2液発泡体)の中にセラミック粒子と鋳型体を含有させることにより、セラミック発泡体を製造できる。得られた混合物は、ゾルゲル溶液の中で用いることができ、例えば、適切な界面活性剤を用いることにより該混合物は、安定なエマルションを形成することができる。ゲルが一旦硬化すると、鋳型体は熱処理により除去することができる。ポリアフロンの大きさは、2液発泡体中の界面活性剤の種類と量を変化させることにより調整することができる。
【0071】
鋳型法は、多孔質ポリマー構造体を製造することにも用いることができる。例えば、モノマー溶液の中に、複数の固体粒子を分散させることができる。モノマーが重合してポリマーを形成した後、固体粒子を混合物から選択的に除去することにより、残ったポリマー構造体の中に一連のポアができる。
【0072】
本明細書に記載された多孔質支持構造体を製造するのに用いられる別の方法は、3D印刷を含むものである。3D印刷は当業者には公知であり、連続層を形成することにより3次元の物品を作製するものであり、各層の上に付着させることにより最終物品を形成させるプロセスを意味する。3D印刷には、金属、ポリマー、セラミックおよびその他を含むいろいろな材料を用いることができる。
【0073】
多孔質支持構造体を作製するために、いろいろな材料(例えば、粒子状、融解状、または本明細書で説明されている他の形態)を用いることができる。多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するのに用いる材料は、いくつかの態様では、金属または合金を含むことができる。限定されるものではないが、適切な材料には、ニッケル、銅、マグネシウム、アルミニウム、チタン、スカンジウム、および合金および/またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの態様では、粒子を作製するのに用いる金属または合金は、密度が約9g/cm3より小さく、または4.5g/cm3より小さい。
【0074】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するのにポリマー材料を用いることができる。限定されるものではないが、多孔質支持構造体の作製に用いるのに適したポリマーには、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(ノボラック/レゾルシノール)、リチウムポリスチレンスルホン酸(LiPSS)、エポキシ、UHMWPE、PTFE、PVDF、PTFE/ビニル共重合体、上記ポリマーおよびその他のポリマーの共重合体/ブロック共重合体が含まれる。いくつかの態様では、2種のポリマーをその特有の機能により用いることができる(例えば、接着性についてはPVA、および剛直性についてはLiPSSであり、あるいは剛直性についてはレゾルシノールであり、および可撓性/タフネスについてはエラストマーである)。多孔質支持構造体を作製するのに用いる材料は、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)PEDOT、ポリ(メチレンジオキシチオフェン)PMDOT、他のチオフェン、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy)等から1つまたは複数の導電性ポリマーを含んでもよい。当業者であれば、導電性ポリマーシステムの対イオンを選択することができ、該対イオンは、PEDOT、他の公知の導電性ポリマー、および上記のポリマーの共重合体およびブロック共重合体に対するPSS等のいろいろな化学種の中から選択することができる。
【0075】
いくつかの例では、多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するために、セラミック材料を用いてもよい。限定されるわけではないが、適切なセラミックには、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、インジウム、およびそれらの合金の酸化物、窒化物、および/または酸窒化物が含まれる。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、上記の酸化物、窒化物、および/または酸窒化物のいずれかであって、導電性等の所望の特性を付与するためにドープされたものも含まれ、そのドープされた材料の具体例としては、インジウムがドープされた酸化スズ、およびアルミニウムがドープされた酸化亜鉛が含まれる。多孔質支持構造体を作製するのに用いられる材料は、いくつかの態様ではガラスを含んでもよい(例えば、石英、非晶質シリカ、カルコゲナイド、および/または他の導電性ガラス)。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、上記の材料のいずれかのエーロゲルおよび/またはキセロゲルを含むことができる。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、ガラス質セラミックを含むことができる。
【0076】
多孔質支持構造体の大部分が実質的に非導電性である材料から製造されているようないくつかの態様では、導電性を付与するために、支持構造体のポア内に導電性材料を付着させることができる。例えば、多孔質支持構造体の大部分がセラミック(例えば、ガラス)または非導電性ポリマーを含む場合、支持構造体のポアの中に金属を付着させることができる。導電性材料は、例えば、電気化学的堆積、化学蒸着、または物理蒸着を用いて付着させることができる。いくつかの例では、導電性材料を付着させた後で、多孔質支持構造体のポアの中に電極活物質を付着させることができる。導電性を付与するために多孔質支持構造体のポアの中に配置するのに適した材料には、限定されるものではないが、カーボンや、ニッケル、銅等の金属、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0077】
いくつかの態様では、1つまたは複数の導電性材料を多孔質支持構造体材料の大部分に混ぜることにより、多孔質支持構造体の大部分を導電性にすることができる。例えば、カーボン(例えば、カーボンブラック、グラファイトまたはグラフェン、炭素繊維等)、金属粒子、または他の導電性材料を、溶融物(例えば、非導電性ポリマーの溶融物、ガラス溶融物等)の中に混ぜてもよく、該溶融物は、ポリマー状多孔質支持構造体を作製するのに用いられ、該多孔質支持構造体に導電性を付与する。溶融物が硬化した後、導電性材料を、多孔質支持構造体の大部分に含有させることができる。
【0078】
多孔質支持構造体を構造的に補強する材料を多孔質支持構造体の大部分に混ぜることにより、多孔質支持構造体の機械的特性も向上させることができる。例えば、炭素繊維および/または粒子状フィラーを溶融物(例えば、金属溶融物、ガラス溶融物、ポリマー溶融物等)の中に混ぜると、該溶融物は硬化して多孔質支持構造体を形成する。いくつかの例では、炭素繊維および/または粒子状フィラーを、多孔質支持構造体を作製する溶液の中に混ぜてもよい(例えば、多孔質支持構造体がポリマーを含むようないくつかの例において)。
【0079】
いくつかの態様では、例えば、多孔質支持構造体の表面へ材料の付着を促進するために、材料を付着させるに先だって、多孔質支持構造体の表面または内部を活性化または修飾してもよい。多孔質材料を反応性または非反応性のガスまたは蒸気に晒すことにより、多孔質支持構造体を活性化または修飾することができる。いくつかの態様では、活性化工程または修飾工程は、高い温度(例えば、少なくとも約50℃、少なくとも約100℃、少なくとも約250℃、少なくとも約500℃、少なくとも約750℃、またはそれより高温)および/または大気圧より低い圧力(例えば、約760トールより低く、約250トールより低く、約100トールより低く、約10トールより低く、約1トールより低く、約0.1トールより低く、約0.01トールより低く、またはそれよりも低い圧力)で実施できる。
【0080】
電極活物質(例えば、電極活物質を含む粒子、膜、または他の形態)を、いろいろな方法を用いて多孔質支持構造体内に付着させてもよい。いくつかの態様では、粒子状前駆体(例えば、前駆体塩、元素硫黄等の元素状前駆材料)を溶媒に懸濁または溶解させ、次いで多孔質支持構造体を懸濁液または溶液に晒す(例えば、多孔質支持構造体を溶液に浸漬する、多孔質支持構造体のポアの中に溶媒を吹き付ける等))ことにより、電極活物質を付着させることができる。粒子前駆体は、支持構造体のポアの中で続いて粒子を形成する。例えば、いくつかの例では、支持構造体のポアの中で、前駆体は結晶を形成する。その技術に用いてもよい適切な溶媒または懸濁液媒体は、水系液体、非水系液体、およびそれらの混合物を含む。適切な溶媒または懸濁液媒体の例は、限定されるものではないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびそれらの混合物を含む。もちろん、他の適切な溶媒または懸濁液媒体も必要に応じて用いることができる。
【0081】
いくつかの例では、材料の融点または沸点よりも高い温度に加熱することにより(必要に応じて、例えば蒸発を促進するために、周囲の圧力を調整して)電極活物質を支持構造体のポアの中に付着させることもできる。次いで、粒子状の付着物または他の固体が形成されるように、支持材料のポアの中に加熱された材料を流し込みあるいは気化させてもよい。具体的には、硫黄が材料のポアの中に流れ込むように(例えば、昇華、液流により)、元素硫黄粉末を多孔質支持構造体の隣に配置し、硫黄の融点以上の温度に加熱する。次いで複合体を冷却して硫黄をポア内に付着させる。
【0082】
いくつかの態様では、電気化学的堆積、化学蒸着、または物理蒸着により、支持構造体のポア内に電極活物質を付着させることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン等の金属は、多孔質支持構造体のポア内に電気化学的に付着させることができる。あるいは、それらの金属は、例えば、電子線蒸着等の物理蒸着技術を用いて付着させてもよい。
【0083】
いくつかの態様では、電極活物質に加えて触媒を支持構造体のポア内に付着させてもよい(電極活物質の付着の前またはその間)。いくつかの例では、触媒は、電極活物質の電気化学的変換を触媒する(例えば、硫黄からLi2Sへの変換および/またはLi2Sから硫黄への変換)。適切な触媒には、例えば、コバルトフタロシアニン、遷移金属塩、錯体、および酸化物(例えば、Mg0.6Ni0.4O)が含まれる。
【0084】
本明細書に記載された電極は、1つまたは複数の優れた特性を有する。いくつかの態様では、電極は比較的高い多孔度を示す。いくつかの例では、電極の多孔度は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%である。その多孔度(および本明細書に記載されたいずれかのポア分布)は、いくつかの例では、異方的な力(約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間の圧力、または以下に記載された範囲のいずれかで規定される)が電気化学電池に加えられている間でも、達成される。本明細書で用いられているように、電極(例えば、カソード)のパーセント多孔度は、電極の空隙体積を電極の外側の境界性より内側の体積で割ったもので定義され、パーセントで表現される。「空隙体積」は、電極活物質(例えば、硫黄)、導電材料(例えば、カーボン、金属等)、バインダー、または構造を支える他の材料により占有されていない電極の部分を意味するものとして用いられている。電極の中の空隙は、電極材料の凝集体の隙間だけでなく、電極内のポアを含んでもよい。空隙体積は、電解質、ガス、または他の非電極材料に占有されてもよい。いくつかの態様では、電極の空隙体積は、電極内の電極活物質(例えば、硫黄)のグラム当たり、少なくとも約1cm3、少なくとも約2cm3、少なくとも約4cm3、または少なくとも約8cm3でもよい。
【0085】
いくつかの態様では、電極は、比較的大きな、電解質が利用可能な導電材面積を含むことができる。本明細書で用いる「電解質が利用可能な導電材面積」は、電解質が接触することのできる、電極内の導電材の全表面積を意味するものとして用いられている。例えば、電解質が利用可能な導電材面積は、電極のポア内の導電材表面積、電極の外表面の導電材表面積を含んでもよい。いくつかの例では、電解質が利用可能な導電材面積は、バインダーまたは他の材料によっては妨害されない。さらに、いくつかの態様では、電解質が利用可能な導電材面積は、ポア内に存在し、表面張力の効果により電解質の流れを制限する導電材部分を含まない。いくつかの例では、電極は、電解質が利用可能な導電材面積(例えば、電解質が利用可能なカーボン面積、電解質が利用可能な金属面積)を、電極の電極活物質(例えば、硫黄)のグラム当たり、少なくとも約1m2、少なくとも約5m2、少なくとも約10m2、少なくとも約20m2、少なくとも約50m2、少なくとも約100m2、含んでもよい。上記の比較的大きな、電解質が利用可能な導電材面積は、いくつかの例では、異方的な力(約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間の圧力、または以下に記載された範囲のいずれかで規定される)が電気化学電池に加えられている間でも、達成される。
【0086】
本明細書に記載された電極は、広くいろいろな範囲の電気化学装置に用いることが可能であり、その装置の1例が、図で示すことだけを目的として、図1に示されている。電気化学電池の一般的な態様は、カソード、アノード、およびカソードとアノードとを電気化学的に連絡する電解質を含むことができる。いくつかの例では、電池は、容器構造体を含んでもよい。いくつかの例では、電解質がアノードとカソードの間に積層構造で配置されるように、部材を組み立ててもよい。図1は、本発明の1つの電気化学電池を示している。示された態様では、電池10は、実質的に平面である基材20の上に形成されるカソード30を含んでいる。図1では、カソードと基材は、平面形状を持つように図示されているが、後で詳細に説明するように、他の態様では、非平面形状を持ってもよい。上記のように、カソードおよび/またはアノードは、その中に電極活物質が含まれる多孔質支持構造体を含むことができる。例えば、リチウムー硫黄電池では、その中に電気活性硫黄含有材料が含まれている多孔質支持構造体を含むことができる。
【0087】
カソードは、いろいろなカソード活物質を含んでもよい。例えば、カソードは硫黄含有材料を含んでもよく、硫黄はカソード活物質である。他のカソード活物質の例は、以下により詳しく記載されている。いくつかの態様では、カソード30は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面32)を含んでいる。本明細書で用いている用語「活性表面」は、そこで電解質と物理的に接触し、およびそこで電気化学的反応が起きる、電極の表面を説明するために用いられている。
【0088】
電解質40(例えば、多孔質のセパレータ材料を含む)は、カソード30に隣接して形成することができる。いくつかの態様では、電解質40は、多孔質セパレータに組み入れてもよいあるいは組み入れない、非固体電解質を含んでもよい。本明細書で用いられている用語「非固体」は、静的なせん断応力には耐えることができない材料を意味し、せん断応力が加わった場合には、非固体は、継続的で永久的な変形を受ける。非固体の例には、例えば、液体、変形可能ゲル等が含まれる。
【0089】
本明細書に記載された電気化学電池は、いくつかの態様では、カソード活物質の質量またはアノード活物質の質量に対して比較的低質量の電解質を用いてもよい。例えば、いくつかの例では、電気化学電池において、カソード活物質(例えば、硫黄)またはアノード活物質に対する電解質の質量比は、約6:1より小さく、約5:1より小さく、約4:1より小さく、約3:1より小さく、または約2:1より小さい。
【0090】
アノード層50は電解質40に隣接して形成することができ、カソード30と電気的に接続している。アノードは、いろいろなアノード活物質を含んでもよい。例えば、アノードはリチウム含有材料を含んでもよく、リチウムはアノード活物質である。他のアノード活物質の例は、以下により詳しく記載されている。いくつかの態様では、アノード50は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面52)を含んでいる。アノード50は、カソード30の上に配置された電解質層の上、例えば電解質40の上に配置されてもよい。もちろん、部材の配置は変更されてもよく、例えば、アノード層または電解質層が基材の上に最初に形成されるように層の配置を変更する別の態様もあることは理解されるべきである。
【0091】
いくつかの態様では、電池は、容器構造体56も含んでもよい。さらに、電池は、必要に応じて追加の層(不図示)を含んでもよく、該追加の層は、例えば、電解質から電気活性材料(例えば、電極)を保護する多層構造として存在してもよく、その詳細は、2006年4月6日に出願された、Affinitoらの名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気電池」である米国特許出願第11/400,781号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。さらに、非平面配置、図示されたものとは大きさの異なる材料に基づく配置、およびその他の別の配置は、本発明については有用である。もちろん、典型的な電気化学電池は、集電体、外部電気回路、保護構造体等も含む。当業者は、図および本明細書の記載において示された一般的な模式配置を利用した多くの配置について熟知している。
【0092】
図1は、積層構造で配置された電気化学電池を示しているが、本発明の原則を利用することにより、いろいろな構造において、いろいろな電気化学電池の構成を組み立てることができることは理解されるべきである。例えば、図2は、円筒として構成した電気化学電池の断面図を示している。図2の態様では、電池100は、電極130、電解質140、および電極150を含んでいる。いくつかの態様では、電極130がアノードを含み、電極150がカソードを含んでもよく、あるいは別の態様では、その順番を逆にしてもよい。必要に応じて、電池は、固体または中空であるコア170を含んでもよく、あるいは溝または溝群を含んでもよい。電池100は、活性表面132と152も含む。必要に応じて、いくつかの態様では、電池は容器構造体156を含んでもよい。図2に示すように、電極130はコア170の上に形成され、電解質140は電極130の上に形成され、電極150は電解質140の上に形成されている。しかしながら、いくつかの態様では、電極130はコア170に最も近く、電解質140は電極130に最も近く、および/または電極150は電解質140に最も近く、必要に応じて部材間に1つまたは複数の介在部を含んでもよい。ある一連の態様では、電極130は少なくとも部分的にコア170を囲んでもよく、電解質140は少なくとも部分的に電極130を囲んでもよく、および/または電極150は少なくとも部分的に電解質140を囲んでもよい。本明細書で用いているように、もし第2の部分だけを通って第1の部分の周囲に閉じたループが引けるのであれば、第1の部分は第2の部分によって「少なくとも部分的に囲まれており」、第2の部分によって第1の部分が必ず完全に包みこまれることを意味しない。
【0093】
別の一連の態様では、図3に示すように、電気化学電池は、卷回された積層体の形状である。図3に示された電池200は、アノード230とカソード250を分離する電解質240を含んでいる。図3の電気化学電池は、矢印260に平行に3回卷回された面を含む電解質を含んでいる。別の態様では、電気化学電池は、矢印260に平行な何回か卷回された面を含む電解質を含んでいる。必要に応じて、電池は、いくつかの態様では、容器構造体256を含んでもよい。図1から3に示す形状に加えて、本明細書に記載された電気化学電池は、限定されるものではないが、角柱(例えば、三角柱、四角柱等)、「スイスロール」、非平面積層体等を含む別の形状であってもよい。追加の構造は、2006年4月6日に出願された、Affinitoらの名称が「再充電可能なリチウム電池を含む、水系および非水系電気化学電池における電極保護」である米国特許出願第11/400,025号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0094】
本明細書に記載された電極を用いる電気化学電池は、優れた特性を達成することができる。いくつかの態様では、電気化学電池は、高い電極活性種利用率を示す。本明細書で用いる「利用率」は、電池の中の電極活物質(例えば、カソード活物質としての硫黄)が、反応して所望の反応生成物を形成するまでの範囲を意味し、それにより電気化学特性(放電容量で測定される)が向上する。例えば、電池の中のすべての硫黄が、所望の反応生成物に完全に変換された時(例えば、硫黄が活性カソード物質の場合のS2−)、電気化学電池は、電池のすべての硫黄を100%利用したと言い、電池の中の全硫黄の理論放電容量としては、1672mAh/gが得られる。「硫黄」が典型的な電極活物質として用いられている場合(例えば、カソード活物質)であればどこでも、使用に適した他の電極活物質は本発明で置き換えることができる。電極活物質の理論容量は次の式で計算することができる。
【0095】
【数3】
【0096】
ここで、
Q=理論容量、Ah/g(アンペア アワー パー グラム)
n=所望の電気化学反応に含まれる電子の数
F=96485C/等量
M=電極活物質の分子量、グラム
3600=1時間の秒数
当業者は活物質の理論容量を計算し、その値を特定の材料の実験活物質容量値と比較し、実験容量値が、理論容量値の少なくともかなりのパーセント(例えば、60%)、またはそれを超えるかどうかを決定することができる。例えば、元素硫黄(S)がカソード活物質として用いられ、S2−が所望の反応生成物である場合、理論容量は1672mAh/gである。すなわち、電池の中に全硫黄として1672mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は100%であり、電池の中に全硫黄として1504.8mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は90%であり、電池の中に全硫黄として1003.2mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は60%であり、電池の中に全硫黄として836mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は50%であると、言える。
【0097】
いくつかの態様では、カソードとアノードにより囲まれている電池の領域の中の硫黄(または他の活物質)の量(「利用可能な」硫黄)を、電池の中の全硫黄の量よりも少なくすることが可能である。いくつかの例では、アノードとカソードにより囲まれた領域と、カソードとアノードで囲まれていない領域の両方に電解質を配置してもよい。例えば、加圧下での放電/充電サイクル時に、アノードとカソードに囲まれた領域にある未反応種を、拡散または電解質の移動のいずれかにより、運び出すことが可能である。この「利用可能」電極活物質に基づいて表される利用率は、カソードとアノードの間に囲まれた領域の電極活物質を所望の反応生成物(例えば、硫黄が活性カソード物質の場合のS2−)へと変換することを促進する、カソード構造体の能力の基準である。例えば、カソードとアノードの間に囲まれた領域の利用可能なすべての硫黄を、所望の反応生成物へと完全に変換させた場合、電池は利用可能な硫黄の100%利用したと言われ、利用可能な硫黄を1672mAh/g生成させる。
【0098】
いくつかの態様では、アノードとカソードで囲まれた領域の間にすべての電解質を配置するか、囲まれた領域からその外側への未反応種の移動を完全になくすかのいずれの方法で電気化学電池を設計することができる。その態様では、利用可能な硫黄のmAh/gとして表された利用率は、電池の全硫黄のmAh/gとして表された利用率と同じである。
【0099】
電極活物質(例えば、硫黄)利用率は、他の事柄の中で、電池に適用された放電電流とともに変化する。いくつかの態様では、低放電率での電極活物質利用率は、高放電率での電極活物質利用率より高いほうがよい。いくつかの態様では、電池は、少なくとも1回の充放電サイクルで電池の全活物質(例えば、硫黄)の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約92%を利用することができる。いくつかの態様では、電池は、少なくとも1回の充放電サイクルで利用可能な電極活物質(例えば、硫黄)の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約92%を利用することができる。
【0100】
いくつかの例では、本明細書に記載された電気化学電池の利用率は、比較的多い充放電サイクル数において比較的高くてもよい。本明細書で用いている「充放電サイクル」は、電池が0%から100%の充電状態(SOC)へと充電され、100%から0%SOCへと放電することを意味している。いくつかの態様では、電気化学電池は、少なくとも最初の充放電サイクル、およびその最初の充放電サイクルに続く少なくとも約1、2、10、20、30、50、75、100、125または135の充放電サイクルを通して、硫黄(例えば、電池の全硫黄、利用可能な硫黄)または別の電極活物質の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%を利用することができる。ある態様では、本発明の電気化学電池は、少なくとも約100mA/g硫黄(例えば、放電電流が、100〜200mA/g、200〜300mA/g、300〜400mA/g、400〜500mA/g、または100〜500mA/g)のかなり高い放電電流で放電した場合、最初の充放電サイクルに続いて少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも75回、少なくとも100回、少なくとも125回、または少なくとも135回、充放電を繰り返すことができ、その時、各サイクルでの硫黄利用率(1672mAh/g硫黄(例えば、電池の全硫黄、利用可能硫黄)に対するサイクルの放電段階での出力の比として測定する)または他の電極活物質の利用率が、少なくとも約40〜50%、少なくとも約50〜60%、少なくとも約40〜60%、少なくとも約40〜80%、少なくとも約60〜70%、少なくとも約70%、少なくとも約70〜80%、少なくとも約80%、少なくとも約80〜90%、または少なくとも約90%である。
【0101】
本明細書に記載された電気化学電池のいくつかは、比較的多い充放電サイクル数でも容量を維持している。例えば、いくつかの例では、最初の充放電サイクルに続く、少なくとも約2回、少なくとも約10回、少なくとも約20回、少なくとも約30回、少なくとも約50回、少なくとも約75回、少なくとも約100回、少なくとも約125回、または少なくとも約135回のサイクルを通して、電気化学電池の容量の減少は、1回の充放電サイクル当たり、約0.2%より小さい。
【0102】
いくつかの態様では、本明細書に記載された電気化学電池は、電池の繰り返しサイクル後でも、比較的高い容量を示す。例えば、いくつかの態様では、電池に対して交互に充電と放電を3回行った後、電池は、3回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。いくつかの例では、電池に対して交互に充電と放電を10回行った後、電池は、10回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。さらに別の例では、電池に対して交互に充電と放電を25回行った後、電池は、25回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。
【0103】
いくつかの態様では、本明細書に記載された電気化学電池は、サイクル数が多くても、比較的高い充電効率を達成できる。本明細書で用いているように、N回目の「充電効率」は、(N+1)回目の放電容量をN回目(Nは整数)の充電容量で割ることにより計算でき、パーセントで表される。いくつかの例では、最初のサイクルの、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または少なくとも約99.9%の充電効率を達成できる。いくつかの態様では、最初の充放電サイクルに続く、10回目、20回目、30回目、50回目、75回目、100回目、125回目、または135回目のサイクルにおいて、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または少なくとも約99.9%の充電効率を達成できる。
【0104】
本明細書に記載された電気化学電池は、いくつかの例では、比較的高い放電電流密度で運転できる。本明細書で用いている「放電電流密度」は、電極間に流れる放電電流を意味し、該放電電流を、電流が流れる電極の面積であって、電流の向きに対して垂直な部分を測定して得られる面積で割ることにより得られる。放電電流密度を得る目的のためには、電極の面積は、電極の全露出面積を含まず、むしろ、電流の向きに対して垂直な電極表面に沿って引かれた架空の平面を意味する。いくつかの態様では、カソード表面に対し、少なくとも約0.1mA/cm2、少なくとも約0.2mA/cm2、少なくとも約0.4mA/cm2、またはそれよりも大きな放電電流密度で電気化学電池を運転できる。本明細書に記載された電池は、いくつかの例では、活物質の単位質量当たりの放電電流が高い値でも運転してもよい。例えば、電極の活物質(例えば、カソードの硫黄)の単位グラム当たりの放電電流は、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500mA、またはそれより高い値でもよい。
【0105】
いくつかの態様では、装置の特性を向上させるために力を加えることのできる電気化学装置を含んでもよい。例えば、力は、電極の導電材(例えば、カソードのカーボン)間の導電性を向上させる。いくつかの例では、電気化学電池に力を加えると、1つまたは複数の電極の1つまたは複数の表面のでこぼこの量を減らすことができ、それにより、電池のサイクル寿命と特性を向上させることができる。異方的な力が電気化学電池に加えられている間(例えば、電池の充電および/または放電の間)、電極特性(例えば、多孔度、ポアサイズ分布等)および/または上記の特性計量学が、単独にあるいはそれぞれを組み合わせることにより達成できる。異方的な力の強度は、以下に説明する範囲のいずれかに含まれる。
【0106】
いくつかの態様では、装置の特性を向上させるために力を加えることができる。いくつかの態様では、力は、アノードの活性面に対して垂直な成分を含む異方的な力を含んでいる。平面の場合、力は、該力が適用される点において表面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を含んでもよい。例えば、図1を参照すると、力は、矢印60の方向に加えられている。矢印60は、アノード50の活性面52に垂直な力の成分を示している。曲面の場合、例えば、凹面または凸面の場合、力は、該力が適用される点において曲面に接する平面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を含んでもよい。図2に示す円筒状の電池を参照すると、電池の外表面に対して、力が、例えば、矢印180の方向に加えられる。いくつかの態様では、アノードの活性面に対して垂直な成分を含む異方的な力が、電気化学電池の充電および/または放電時に、少なくとも1回の一定時間に加えられる。いくつかの態様では、1回の一定時間を超えて連続して、あるいは多数回の一定時間を継続的および/または周期的に変化させて力を加えてもよい。いくつかの例では、1つまたは複数の所定位置に、必要に応じてアノードの活性表面全面に分散させた位置に異方的な力を加えてもよい。いくつかの態様では、アノードの活性表面全面に均一に異方的な力を加える。
【0107】
「異方的な力」は通常の意味であり、すべての方向に対して均等でない力を意味している。すべての方向に均等な力とは、例えば、流体または材料内の、流体または材料の内圧であり、例えば、物体の内部ガス圧である。すべての方向に対して均等でない力の例には、特定の方向に向けられた力が含まれ、例えば、テーブル上の物品による力であって、その物品の重力によりテーブルに加えられる力である。異方的な力の別の例には、物品の周囲に配置されたバンドによる力も含まれる。例えば、物品が包装される時には、物品の周囲にはゴムバンドまたは引き締めネジからの力が加わる。しかしながら、バンドと接触していない物品の外表面のいずれに対しても、バンドは直接力を加えることはない。さらに、第2の軸よりも第1の軸に沿ってバンドが大きく引っ張られた時、第2の軸に平行な方向よりも第1軸に平行な方向に対して大きな力をバンドは加えることができる。
【0108】
表面に対して「垂直な成分」を持つ力は、例えばアノードの活性面の場合、当業者が理解するであろう通常の意味であり、例えば、表面に対して実質的に垂直な方向に、少なくとも一部が加えられる力を含んでいる。例えば、テーブル上に物品が載せられている水平テーブルであって、重力のみの影響を受ける場合、その物品は、テーブルの表面に実質的に完全に垂直な力を加える。もし物品が、水平なテーブル表面を横切って横方向に移動させられたとしても、水平表面に対して完全に垂直ではないが、テーブル表面に対して垂直な成分を含む力をテーブルに対して加えている。当業者は、これらの事項に関する他の例についても、特に本書類の記載の範囲で適用できるよう理解できる。
【0109】
いくつかの態様では、電気化学電池の断面を規定する平面内のすべての方向で力の強さが実質的に均等であるように異方的な力を加えることができるが、平面外の方向の力の強さは、平面内の力の強さと実質的に同じではない。例えば、図2を参照すると、電池の中心軸の方向(点190で示され、断面模式図の表面の中および外側に延在する)に電池を向けるように力(例えば、力180)を加えるために、電池100の外側に円筒状バンドを配置してもよい。いくつかの態様では、電池の中心軸方向に向けられる力の強さは、平面外の方向(例えば、中心軸190に平行)に加えられる力の強さとは異なる(例えば、より大きい)。
【0110】
ある一連の態様では、本発明の電池が組み立てられ、使用のために配置されるが、電池の充電および/または放電の間、少なくとも1回の一定時間の間、アノードの活性面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を加える。当業者であれば、この意味を理解するであろう。その方法では、電池は容器の一部として作製されてもよく、該容器は、電池を組み立てる間または組み立てた後に適用される、あるいは電池自身の1つまたは複数の部分の膨張および/または収縮の結果として電池の使用時に適用される「負荷」としてその力を加える。
【0111】
適用される力の強さは、いくつかの態様では、電気化学電池の特性を向上させるのに十分な大きさである。アノードの活性表面と異方的な力は、いくつかの例では、一緒に選択されるが、それは異方的な力が充電と放電を通してアノードの活性表面の表面形態に影響を与えて、アノードの活性表面の増加を抑制するからであり、異方的な力が存在しない以外は実質的に同じ条件下では、充電と放電のサイクルを通してアノードの活性表面は大きく増加する。この文脈において、「実質的に同じ条件」とは、力の適用および/または力の強さ以外は同様または同じ条件を意味している。例えば、それ以外は同じ条件とは、電池は同じであるが、対象電池に異方的な力を加えられるように電池が組み立てられていないこと(例えば、ブラケットまたは他の接続部品により)を意味している。
【0112】
本明細書に記載されている効果を達成するために、電極材料または電極構造体および異方的な力を、当業者は一緒に選択できる。例えば、電極が比較的柔らかい場合、活性なアノード表面に垂直な力の成分は、小さくなるように選択してもよい。電極がより硬い場合には、活性なアノード表面に垂直な力の成分は、大きい方がよい。当業者は、公知または予測可能な特性を持つ、電極の材料、合金、混合物等を容易に選択することができ、あるいはそれらの表面の硬さまたは柔らかさを容易に試験することができ、そして本明細書に記載されている目的を達成するために適切な力を加えることができるように電池の組み立て技術および電池の構成を容易に選択することができる。電池のサイクルがない場合(電池のサイクリング時の選択される組み合わせの予測のため)、あるいは電池のサイクリングを行って選択についての結果を観察する場合において、表面に対する力の形態的効果を決定するために、簡単な試験を行うことができ、例えば、一連の活物質を配置し、各活物質の活性表面に対して一連の垂直な力(または垂直成分)を加えることができる。
【0113】
いくつかの態様では、電池の充電時および/または放電時の少なくとも1回の一定時間の間、異方的な力がない場合の表面積の増加に比べて、アノード活性表面の表面積の増加を抑制できる程度まで、アノードの活性表面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を加える。アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、例えば、少なくとも約4.9、少なくとも約9.8、少なくとも約24.5、少なくとも約49、少なくとも約78、少なくとも約98、少なくとも約117.6、少なくとも約147、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、または少なくとも約250N/cm2の圧力を持ってもよい。いくつかの態様では、アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、例えば、少なくとも約250より小さい、少なくとも約225より小さい、少なくとも約196より小さい、少なくとも約147より小さい、少なくとも約117.6より小さい、少なくとも約98より小さい、少なくとも約49より小さい、少なくとも約24.5より小さい、少なくとも約9.8N/cm2より小さい圧力を持ってもよい。いくつかの例では、アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、圧力が、約4.9〜約147N/cm2、約49〜約117.6N/cm2、約68.6〜約98N/cm2、約78〜約108N/cm2、約4.9〜約250N/cm2、約49〜約250N/cm2、約80〜約250N/cm2、約90〜約250N/cm2、または約100〜約250N/cm2である。本明細書では、力と圧力は、それぞれNとN/cm2で記載されているが、力と圧力は、それぞれ、kgfとkgf/cm2で表現してもよい。当業者は、kgf系の単位に馴染んでいるので、1kgfが約9.8Nに相当することは理解するであろう。
【0114】
いくつかの態様では、外から圧力を加えることにより(いくつかの態様では、単軸)、サイクリング時に(例えば、リチウムの場合、リチウムのコケのようなまたは粗い表面が減少または抑制される)、電極層の表面を向上させることができる。いくつかの態様では、外から加える力は、電極材料層を形成する材料の降伏応力よりも大きくなるように選択される。例えば、リチウムを含む電極材料の場合、電池に外からの異方的な力を加えてもよく、該力は、少なくとも約8kgf/cm2、少なくとも約9kgf/cm2、または少なくとも約10kgf/cm2の圧力を規定する成分を持っている。そのため、この値よりも大きな圧力(例えば、単軸圧力)では、こけのようなLi、または表面粗さが減少または抑制される。リチウムの表面粗さは、それに圧力を加えている表面に似てもよい。したがって、外からの圧力が、少なくとも約8kgf/cm2、少なくとも約9kgf/cm2、または少なくとも約10kgf/cm2の下でサイクリングを行うと、圧力を加えている表面が平坦であると、リチウムの表面もサイクリングとともに、より平坦になる。本明細書に記載されているように、アノードとカソードの間に配置される材料を適切に選択することにより、圧力を加える表面を改質することができる。例えば、いくつかの例では、圧力を加えながら、本明細書に記載されている非導電性材料層を用いることにより、リチウム表面の平坦性(または他の活性電極材料の表面)を増加させることができる。
【0115】
いくつかの例では、電池に加えられた1つまたは複数の力は、アノードの活性表面に対して垂直でない成分を含んでいる。例えば、図1では、力60はアノード活性表面52に対して垂直ではなく、力60は成分64を含み、それはアノード活性表面52に対して実質的に平行である。さらに、力66はアノード活性表面52に対して実質的に平行であり、いくつかの例では、電池に加えられる。ある一連の態様では、アノード活性表面に垂直な方向に加えられたすべての異方的な力の成分の合計は、アノード活性表面に対して垂直でない方向の成分の合計よりも大きい。いくつかの態様では、アノード活性表面に垂直な方向に加えられたすべての異方的な力の成分の合計は、アノード活性表面に平行な方向の成分の合計よりも、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%大きい。
【0116】
いくつかの態様では、カソードとアノードは降伏応力を有し、カソードとアノードの一方の有効降伏応力は、他方の降伏応力よりも大きく、アノードの活性表面とアノードの活性表面の一方の表面に垂直に加えられた異方的な力が、カソードとアノードの一方の表面形態に影響を与える。いくつかの態様では、活性アノード表面に垂直な異方的な力の成分は、アノード材料の降伏応力の約20%と約200%の間、アノード材料の降伏応力の約50%と約120%の間、アノード材料の降伏応力の約80%と約120%の間、アノード材料の降伏応力の約80%と約100%の間、アノード材料の降伏応力の約100%と約300%の間、アノード材料の降伏応力の約100%と約200%の間、またはアノード材料の降伏応力の約100%と約120%の間である。
【0117】
本明細書に記載された異方的な力を、公知の方法を用いて加えてもよい。いくつかの態様では、圧縮ばねを用いて力を加えてよい。力は他の手段を用いて加えてもよく(容器構造体の内側または外側のいずれか)、限定されるものではないが、該他の手段には、中でも、皿バネ、機械バネ、空気力装置および/または錘が含まれる。いくつかの例では、電池は、容器構造体の中に挿入される前に予め圧縮されてもよく、そして容器構造体に挿入されると、それらは膨張し電池に対して正味の力を発生させる。その力を加える適切な方法については、2008年8月5日に出願されたScordilis−Kelleyらの名称が「電気化学電池における力の適用」である米国仮出願第61/086,329号、および2009年8月4日に出願されたScordilis−Kelleyらの名称が「電気化学電池における力の適用」である米国特許出願第12/535,328号に詳しく記載されている。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に記載の力の適用により、電気化学電池内のアノード活物質(例えば、リチウム)および/または電解質の使用量を、力を加えない以外は実質的に同じ電池に使用されている量に比べて、より少なくすることができる。本明細書に記載の力を加えない電池では、活性アノード材料(例えば、金属リチウム)が、いくつかの例では、電池の充電―放電サイクルの間にアノード上に不均一に再堆積し、粗い表面を形成する。いくつかの例では、これにより、アノード金属が関係する1つまたは複数の好ましくない反応の割合が増加する。これらの好ましくない反応は、多数の充放電サイクルの後、追加の活性アノード材料が使い尽くされることがなく、電池が残りの活物質で機能するように、自己阻害を固定化および/または開始する。本明細書に記載の力を加えない電池では、アノード活物質の大部分の量が使用され、電池特性が低下した後にのみ、この「安定化」の状態にたびたび至る。したがって、本明細書に記載された力が適用されないいくつかの例では、電池特性を維持するために、活物質が消耗した時、その損失を補うために、電池の中に比較的大量のアノード活物質および/または電解質が組み入れられた。
【0119】
したがって、本明細書に記載された力を適用することは、活物質の消耗を低減および/または防止し、大量のアノード活物質および/または電解質の電気化学電池内への包含を不要にできる。例えば、電池を使用する前、あるいは電池の耐用期間の早い時期に(例えば、充電―放電サイクルが5回より少ない)力を加えると、電池の充電または放電に伴う活物質の消耗がほとんどあるいは実質的に発生しない。電池の充電―放電時の活物質の損失を補うことの必要性を低減および/または抑制するために、比較的少量のアノード活物質を用いて本明細書に記載された電池と装置を作製できる。いくつかの態様では、本発明は、その耐用期間において5回より少ない回数の充電と放電がされた電気化学電池を含み、該電池は、アノード、カソード、および電解質を含み、該アノードは電池の1回の完全放電サイクルでイオン化できるアノード活物質の5倍を超えないアノード量を含む。いくつかの例では、アノードは、電池の1回の完全放電サイクルでイオン化できるリチウムの量の4倍、3倍、2倍、または1.5倍を超えないリチウム量を含む。
【0120】
いくつかの例では、本明細書に記載された装置は、電気化学電池を含み、該電池は、アノード活物質、カソード活物質、および電解質を含み、アノード中のアノード活物質量のカソード中のカソード活物質量に対する比率が、モル比で約5:1より小さく、約3:1より小さく、約2:1より小さく、または約1.5:1より小さい。例えば、電池は、アノード活物質としてリチウム、カソード活物質として硫黄を含み、Li:Sのモル比が、約5:1より小さく、約2:1より小さく、または約1.5:1より小さい。いくつかの態様では、アノード活物質(例えば、リチウム)のカソード活物質に対する比率が重量比で、約2:1より小さく、約1.5:1より小さく、約1.25:1より小さく、または約1.1:1より小さい。例えば、電池は、アノード活物質としてリチウム、カソード活物質として硫黄を含んでもよく、Li:Sの比率は、重量比で、約2:1より小さく、約1.5:1より小さく、約1.25:1より小さく、または約1.1:1より小さい。
【0121】
活物質および/または電解質材料の量を少なくできると、電気化学電池またはその一部の厚みを減らすことが好適に可能となる。いくつかの態様では、アノード層と電解質層の最大厚さは合わせて約500ミクロンである。いくつかの例では、アノード層および電解質層の最大厚さは合わせて約400ミクロン、約300ミクロン、約200ミクロン、約100ミクロン、約50ミクロン、またはいくつかの例では約20ミクロンである。
【0122】
本明細書に記載されたアノードは、いろいろな電気活性材料を含んでもよい。本明細書に記載された電気化学電池のアノードのアノード活物質としての使用に適した電気活性材料には、限定されるものではないが、リチウム箔、導電性基材の上に付着させたリチウム、およびリチウム合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−スズ合金)が含まれる。これらは好ましい負極材料であるが、集電体には別の電池材料を用いることもできる。いくつかの態様では、アノードは、1つまたは複数のバインダー材料を含んでもよい(例えば、ポリマー)。
【0123】
いくつかの態様では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、50重量%を越えるリチウムを含んでいる。いくつかの例では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、75重量%を越えるリチウムを含んでいる。さらに別の態様では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、90重量%を越えるリチウムを含んでいる。
【0124】
正極および/または負極は、適切な電解質と好ましく相互作用する1つまたは複数の層を必要に応じて含んでいてもよく、それらの層については、2009年5月26日に出願された、Mikhaylikらの名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0125】
電気化学電池または二次電池に用いられる電解質は、イオンの貯蔵と移動のための媒体として機能し、特別の場合には固体電解質またはゲル電解質であり、これらの材料は、アノードとカソードとの間のセパレータとしてもさらに機能する。アノードとカソードの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の移動を促進する限り、該材料には、イオンを貯蔵および移動させることのできる、いろいろな液体、固体、またはゲルを用いることができる。電解質は非電子伝導性であり、アノードとカソードの間の短絡を防止する。いくつかの態様では、電解質は非固体電解質を含んでもよい。
【0126】
いくつかの態様では、電解質は、作製プロセスのいずれかの時点で添加可能な流体を含んでいる。いくつかの例では、カソードとアノードを用意し、アノードの活性面に対して垂直な異方的な力成分を加え、次に電解質がカソードおよびアノードと電気化学的に連絡できるように流体電解質を添加することにより、電気化学電池が作製されてもよい。別の例では、異方的な力成分を加える時よりも前あるいは後に、流体電解質を電気化学電池に添加してもよく、その後、電解質はカソードおよびアノードと電気化学的に連絡できる。
【0127】
電解質は、イオン導電性を付与する1つまたは複数の電解質塩と、1つまたは複数の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を含むことができる。適切な非水系電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1つまたは複数の材料を含む有機電解質を含んでもよい。リチウム電池用の非水系電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Dornineyによる「リチウムバッテリー、新素材、開発および展望」の第4章、137〜165頁に記載されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Alamgirらによる「リチウムバッテリー、新素材、開発および展望」の第3章、93〜136頁に記載されている。本明細書に記載されたバッテリーに使用される混成(Heterogeneous)電解質組成物は、2009年5月26日に出願されたMikhaylikらの名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0128】
有用な非水系液体電解質溶媒の例には、限定されるものではないが、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前述の溶媒の置換体、およびそれらの混合物が含まれる。前述の溶媒のフッ素化誘導体も液体電解質溶媒として有用である。
【0129】
ある例では、水系溶媒をリチウム電池の電解質として用いることができる。水系溶媒は、水を含み、水はイオン性塩等の他の成分を含むこともできる。ある態様では、電解質は、電解質中の水素イオン濃度を減らすために、水酸化リチウム、または電解質を塩基性にする他の成分を含むこともできる。
【0130】
液体電解質溶媒は、ゲルポリマー電解質、すなわち半固体ネットワークを形成する1つまたは複数のポリマーを含む電解質のための可塑剤としても有用である。有用なゲルポリマー電解質の例は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ化膜(ナフィオン樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの共重合体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物、および必要に応じて1つまたは複数の可塑剤からなる群から選択される1つまたは複数のポリマーを含むゲルポリマー電解質を含んでいる。ある態様では、ゲルポリマー電解質は、体積%で、混成電解質を10〜20%、20〜40%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、または90〜95%含む。
【0131】
ある態様では、1つまたは複数の固体ポリマーが、電解質を形成するために用いられる。有用な固体ポリマー電解質の例には、限定されるものではないが、ポリエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物からな
【0132】
電解質溶媒、ゲル化剤、電解質を作製するための公知のポリマーに加えて、電解質は、イオン導電性を増加させるために、公知の1つまたは複数の電解質塩をさらに含んでもよい。
【0133】
本発明の電解質に用いるイオン性電解質塩の例には、限定されるものではないが、LiSCN,LiBr,LiI,LiClO4,LiAsF6,LiSO3CF3,LiSO3CH3,LiBF4,LiB(Ph)4,LiPF6,LiC(SO2CF3)3,およびLiN(SO2CF3)2が含まれる。有用な他の電解質塩には、ポリスルフィド、および有機イオン性ポリスルフィド(LiSxR)nが含まれ、ここでxは1〜20の整数、nは1〜3の整数、Rは有機基で、Leeらの米国特許第5,538,812号に記載されているものである。
【0134】
いくつかの態様では、電気化学電池は、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータをさらに含んでもよい。セパレータは、固体の非導電性または絶縁性の材料であり、アノードとカソードを互いに分離または絶縁して短絡を防止するとともに、アノードとカソードの間のイオンの移動を可能にする。いくつかの態様では、多孔質セパレータは、電解質に対して透過性を有する。
【0135】
セパレータのポアは、電解質により一部または大部分が満たされていてもよい。セパレータは、多孔質の自立フィルムとして供給されてもよく、該フィルムは電池作製時にアノードとカソードの間に挿入される。あるいは、例えば、CarlsonらのPCT国際公開第WO99/33125号およびBagleyらの米国特許第5,194,341号に記載されているように、セパレータ層が1つの電極の表面に直接適用されてもよい。
【0136】
種々のセパレータ材料が公知である。適切な固体多孔質セパレータ材料の例には、限定されるものではないが、例えばポリエチレン(例えば、東燃化学製の登録商標セテラ(SETELA)やポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラスファイバーろ紙、およびセラミック材料が含まれる。例えば、いくつかの態様では、セパレータはマイクロポーラスポリエチレンフィルムを含む。本発明での使用に適したセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、マイクロポーラスなキセロゲル、例えば、マイクロポーラス疑似ベーマイト層を含み、共同譲受人であるCarlsonらの米国特許第6,153,337号および第6,306,545号に記載されているように、それは自立フィルムとしてまたは電極の1つに直接コーティングすることにより得られる。固体電解質およびゲル電解質は、電解質機能だけでなく、セパレータとして機能してもよい。
【0137】
以下の文献は、あらゆる目的で出典明示によりすべてその内容が本明細書に組み入れられる:2009年8月28日に出願され、名称が「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」である米国特許仮出願第61/237,903号;2001年5月23日に出願され、名称が「電気化学電池用リチウムアノード」である米国特許第7,247,408号;1996年3月19日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,648,187号;1997年7月7日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,961,672号;1997年5月21日に出願され、名称が「新規複合カソード、新規複合カソードを含む電気化学電池、およびその作製方法」である米国特許第5,919,587号;2006年4月6日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/400,781号で、名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気二次電池」である米国特許出願公開第2007−0221265号;2008年7月29日に出願され、名称が「リチウム二次電池の膨張抑制」である国際特許出願第PCT/US2008/009158号;2009年5月26日に出願され、名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号;2008年10月23日に出願され、名称が「二次電池電極用プライマー」である国際特許出願第PCT/US2008/012042号;2008年2月8日に出願され、名称が「エネルギー貯蔵装置用保護回路」である米国特許出願第12/069,335号;2006年4月6日に出願され、名称が「再充電可能なリチウム二次電池を含む、水系および非水系電気化学電池における電極保護」である米国特許出願第11/400,025号;2007年6月22日に出願され、名称が「リチウム合金/硫黄二次電池」である米国特許出願第11/821,576号;2005年4月20日に出願され、名称が「リチウム硫黄再充電可能二次電池残量ゲージシステムおよび方法」である米国特許出願第11/111,262号;2007年3月23日に出願され、名称が「重合性モノマーと非重合性キャリア溶媒/塩混合物/溶液の共フラッシュ蒸留」である米国特許出願第11/728,197号;2008年9月19日に出願され、名称が「リチウム二次電池用添加物および関連する方法」である国際特許出願第PCT/US2008/010894号;2009年1月8日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2009/000090号で、名称が「多孔質電極および関連する方法」である;
2009年8月4日に出願され、名称が「電気化学電池における力の適用」である米国特許出願第12/535,328号;2010年3月19日に出願され、名称が「リチウム二次電池用カソード」である米国特許出願第12/727,862号;2009年5月22日に出願され、名称が「密封サンプルホルダーおよび制御された雰囲気環境下での微量分析の実施方法」である米国特許出願第12,471,095号;本件と同日に出願された米国特許出願で、名称が「電気化学電池の剥離システム」(該出願は、2009年8月24日に出願され、米国仮出願番号が第61/236,322号であり、名称「電気化学電池の剥離システム」に対して優先権を主張する);本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池の分離」である米国特許仮出願;本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池」である米国特許出願;本件と同日に出願された3件の米国出願で、名称が「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」である米国特許出願。
【実施例】
【0138】
以下の実施例は、本発明のある態様を示すことを目的とするものではあり、限定するものと解釈されるべきではなく、および本発明の全範囲を例示するものでもない。
【0139】
実施例1.
本実施例は、硫黄含有粒子が付着している多孔質支持構造体を含むカソードの作製および試験について記載している。100gの元素硫黄(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)を、冷却管を取り付けた丸底フラスコの中のトルエン(アルドリッチ社製)1200mLの中に溶解した。100gのプリンテックス(Printex)(登録商標)XE−2(オハイオ州アークロンのデグサ社から入手できるカーボン顔料)導電性カーボン(表面積800〜1000m2/g、吸収スティフネス350〜410mLジブチルフタレート(DBP)/100gXE−2)を溶液に添加した。溶液はカーボンにより速やかに吸収された。2,3時間攪拌した後、溶液を室温まで冷却した。硫黄のトルエンに対する溶解性な低い(84mM)。冷却後、硫黄はカーボンポアの中に結晶化し、過剰のトルエンは濾別した。
【0140】
その硫黄含有材料を乾燥し、重量比1:1であるイソプロパノールと水の混合物に溶解させたポリビニルアルコールバインダー(セラニーズ社のセルボル425)の適当量と混合した。そのカソードスラリーを、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材(オールホイル(ALL Foils)社製 厚さ7μm)の上に塗布した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約110ミクロンであった。得られたカソードは、塗布が容易で、図4Aに示すように、粒子状硫黄が均一に分散し、均一な多孔度を有していた。
【0141】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil)、ノースカロライナ州、キングズマウンテン、ケメタールフット(Chemetall−Foote)社製)をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、(リチウムイミドはミネソタ州、セントポール、3M社から入手できる)、硝酸リチウム 3.8部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)、硝酸グアニジン 1部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9μmのセテラ(日本、東京の東燃化学社から、またはニューヨーク州、ピッツフォード、モービル化学社フィルム部門から入手できる)を含む多孔質セパレータをアノードとカソードの間に配置した。アノード、カソード、セパレータ、および電解質を積層して、6×(カソード/セパレータ/アノード)の層状構造体とし、2枚の平行板の間に挟んで、196N/cm2(約20kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質がセパレータとカソードの空隙を埋めて電極面積が100cm2の角柱状電池を作製した。封止後、電池を24時間保存した。充電−放電サイクルを、それぞれ40mAと25mAで行った。放電時のカットオフ電圧は1.7V、充電時のカットオフ電圧は2.5Vであった。図5Aは、サイクル数に対する複合電極(星印で示す)の比放電容量のプロットを含んでいる。図5Bは、Cレートに対する、最初の最大値に対するパーセントで表された電池の容量(星印で示す)のプロットを含んでいる。多数回サイクルを繰り返しても、比放電容量は、比較的高い値を維持していた。さらに、比較的高いCレートでも、電池は比較的高い容量を維持していた。
【0142】
比較例1.
本比較例は、硫黄とカーボンの機械的混合物を含むカソードの作製と試験について記載している。第1の試みは、混合物中のカーボン−硫黄比が1:1を含んでいる。しかし、1:1混合物は、コーター上に有効に付着しなかった。次の実験は、元素硫黄(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社製) 55部、導電性カーボン顔料プリンテックス(登録商標)XE−2 40部、およびポリビニルアルコールバインダー5部を含む混合物から、カソードを調製した。この混合物を、重量比1:1のイソポロパノールと水の混合物の中に溶解した。その溶液を、厚さ7ミクロンの、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材の上に塗布した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約90ミクロンであった。得られたカソードは、図4Bに示すように、大きな硫黄粒子とカーボン凝集体が存在して不均一であった。
【0143】
実施例1に記載された方法に基づき、試験のために、カソードを含む電気化学電池を組み立てた。図5Aは、サイクル数に対する、機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の比放電容量のプロットを含んでいる。図5Bは、Cレートに対する、最初の最大値に対するパーセントで表された、機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の容量のプロットを含んでいる。機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の比容量は、試験サイクル数の範囲で比較的低かった。さらに、機械的に混合されたカソードを含む電池は、高いCレートでは容量が大きく低下した。
【0144】
実施例2.
本実施例は、導電性カーボンを含む多孔質支持材料の中に硫黄を付着させるための熱的プロセス方式の使用について記載している。以下の導電性カーボンが試験された:プリンテックスXE−2、バルカン(Vulcan)XC72R(テキサス州、タンパ、カボット社)、およびSAB(テキサス州、ウッドランド、シュブロン フィリップスから以前は入手できたシャウィニガンアセチレンブラック)。硫黄と混合する前に、減圧にした丸底フラスコの中で300〜450℃で5〜6時間、導電性カーボンを加熱した。硫黄粉末(マサチューセッツ州、ワードヒル、アルファエイサー社)と導電性カーボンは、不活性アルゴン雰囲気下で一緒に混合した。
【0145】
その混合物を、真空下、硫黄の融点を超える160℃で5〜6時間加熱し、黄色の低粘度の、S8を含む流体を得た。硫黄の融点を超えて混合物を加熱することにより、カーボン粒子のポアの中に、溶媒を用いることなく液体硫黄を付着させることができた。次に温度を250〜300℃に上げ、減圧下で4〜6時間加熱して、吸着した硫黄を重合させた。さらに、加熱は、均一な表面分布の生成に寄与した。重合工程後、複合体を速やかに冷却して、ポリマー状の硫黄およびカーボンを含む複合体を得た。
【0146】
硫黄充填カーボン複合体は、利用可能なポア体積といろいろな種類のカーボンを用いて作製したカーボンの表面積とに応じて、6:1〜1:1の範囲のS:C比で作製した。図6Aは、硫黄−カーボン複合体粒子も外表面の二次電子線像を含んでいる。図6B〜6Cは、図6Aに示す複合粒子の外表面上の(B)硫黄と(C)カーボンの分布の概要を示すX線スペクトル像である。図6Bから6Cの画像は、硫黄とカーボンが、複合体粒子の外側表面全体に均一に分布していることを示している。図6Dは、硫黄−カーボン複合体粒子の内表面の二次電子像を含んでいる。図6E〜6Fは、図6Dに示す複合粒子の内表面上の(E)硫黄と(F)カーボンの分布の概要を示すX線スペクトル像である。図6E〜6Fの画像は、硫黄とカーボンが、複合体粒子の内側表面全体に均一に分布していることを示している。
【0147】
硫黄−カーボン複合体を適当量のポリビニルアルコールまたはゼラチンB(ワイオミング州ミルウォーキーのシグマアルドリッチケミカル社製)と混合し、重量比で1:1のイソプロパノールと水の混合物に溶解させた。カソードスラリーを、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材(厚さ7ミクロン)の上に、実施例1に記載したと同様の方法で塗布した。
【0148】
得られた複合カソード材料は、比較的、高密度、均一な多孔度、および均一な硫黄分布を有していた。硫黄−カーボン複合体は、延在し、清浄な硫黄−カーボン界面を有しており、該界面は構造と伝導性を促進させる上に有効である。さらに、本プロセスは、廃棄物をほとんど発生させず、機械的粉砕も不要であった。さらに、いずれかのプロセス工程で、熱−真空活性化時の種々のガスまたは蒸気により、カーボンと複合体は容易に改質することができ、機能化(例えば、金属、酸化物粉末、硫化物粉末、ナノチューブ、ポリマー巨大分子等による)のための適応性のある手段を提供する。複合体カソードは、比較的容易に塗布でき、サイクリング時には、比較的に安定で組成的に均一であった。
【0149】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil))をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、硝酸リチウム 3.8部、硝酸グアニジン 1部および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。
【0150】
上記の部材を組み立てて、カソード/セパレータ/アノードの層状構造体とし、2つの電池(bicell)を作製するために半分に折り曲げた。2つの電池を、約0.4gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、圧力を加えることなく電池を試験した。図7は、サイクル数に対する、複合体カソードを含む電池の比放電容量(星印で示す)のプロットを含んでいる。複合体カソードを含む電池は、機械的に混合されたカソードを含む電池と比べ、比較的高い放電容量を示した。
【0151】
比較例2.
本比較例は、硫黄とカーボンが1:1の比率の機械的混合物を含むカソードの作製と試験について記載している。比較例1で認められたように、1:1のカーボン−硫黄配合物は、コーター上で製造するのは非常に困難であった。本比較例では、ハンドドローダウンコーティングを用いた。この方法で作製された電極は、実施例2に記載された複合構造体の場合と比べて、2桁を越えて強度が低かった。さらに、ハンドドローダウンコーティングは塗布するのがより困難であり、実施例2に記載された複合体に比べて、サイクル時における組成の不安定性が比較的大きかった。
【0152】
図8Aと8Bは、それぞれ、未使用の複合体カソード(実施例2に記載)と機械的に混合されたカソードの二次電子像であり、それぞれS:XE2の比率が84:16である。図9A〜9Cは、複合体カソード(実施例2)中の(A)硫黄、(B)カーボン、および(C)アルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像を含んでいる。さらに、図9D〜9Fは、機械的に混合されたカソード中の(A)硫黄、(B)カーボン、および(C)アルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像を含んでいる。機械的に混合されたカソードと比較して、複合体カソードでは全3元素が比較的均一に分布している。さらに、実施例2に記載された複合体カソードの領域構造体は発達しなかった。複合体カソード中の亀裂の厚さは、機械的に混合されたカソードの亀裂の2分の1であり、複合体カソードの亀裂密度は、機械的に混合されたカソードの場合に比べて非常に低かった。
【0153】
実施例2に記載された方法に基づき、試験のために、機械的に混合されたカソードを含む電気化学電池を組み立てた。図7は、サイクル数に対する、機械的に混合されたカソードを含む電池の比放電容量(四角で示す)のプロットを含んでいる。機械的に混合されたカソードを含む電池は、複合体カソードを含む電池と比べて比較的低い放電容量を示した。
【0154】
実施例3.
本実施例は、ニッケル発泡体を用いて作製されたカソードの作製および試験について記載している。ニッケル発泡体(ノバメット(Novamet)により供給されたインコフォーム(incofoam)、450ミクロンポア、密度320g/cm2)のポアに、元素硫黄 75部、プリンテックスXE−2 20部、グラファイト粉末(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社製) 4部、およびポリビニルアルコール(セラニーズ社のセルボル425) 1部を重量比1:1のイソプロパノールと水の混合物に溶解させた混合物を充填することによりカソードを作製した。混合物を添加すると、直径が10ミクロンより小さいポアがニッケル発泡体のポアの中に形成され、そこに硫黄が付着した。
【0155】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil))をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 14部、硝酸リチウム 4部を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9ミクロンのSETELA多孔質セパレータも用いた。
【0156】
上記の部材を組み立てて、カソード/セパレータ/アノードの層状構造体とし、2つの電池(bicell)を作製するために半分に折り曲げた。2つの電池を、約0.4gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、一方の半分の電池は圧力を加えることなく試験し、他方の半分の電池は2枚の平行板の間に挟んで98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質は、セパレータとカソードの空隙領域を満たし、約33cm2の電極面積を有する新しい電池を得た。放電−充電サイクルは、それぞれ、13.7mAと7.8mAで行った。放電カットオフ電圧は1.7Vで、充電カットオフ電圧は2.5Vとした。図10は、本実施例で作製したカソードを含む電気化学電池の充電−放電サイクル数に対する比放電容量のプロットを含んでいる。ニッケル発泡体電極は、40回目の充電−放電サイクルを越えた後でも、比較的高い放電容量を維持し続けた。98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を電池に加えることにより、約30回のサイクルを越えてもより一貫したサイクル特性が得られた。ニッケル発泡体の使用と加圧が、特性の低下を抑制し、サイクル寿命を延ばした。さらに、ニッケル発泡体電池の場合、分極率の増加が非常に遅くなり、特に加圧した場合に非常に遅くなった。
【0157】
比較例3.
本比較例では、元素硫黄 75部、プリンテックスXE−2 20部、グラファイト粉末 4部、およびポリビニルアルコール 1部を、イソプロパノールと水の重量比1:1の混合物に溶解した混合物を、厚さ7ミクロンの導電性カーボン被覆アルミ箔基材の上に塗布することにより作製した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約90ミクロンであった。実施例3の説明に基づき、電池の組み立てと試験を行った。サイクリングの結果を図10にまとめた。アルミ箔基材の上に付着させたカソードを含む電池は、ニッケル発泡体カソードを含む電池に比べて、比較的低い比放電容量を示した。
【0158】
実施例4.
本実施例は、焼結ニッケルカソードを含む電気化学電池の作製と試験について記載している。焼結ニッケルカソードを含む電池は、インコ繊維状ニッケル粉末タイプ255(インコスペシャルプロダクト)を用いて作製した。ニッケル粒子の見かけ密度は0.5〜0.65g/cm3であった。さらに、粒子の直径は、約1ミクロン〜約100ミクロンの間で、メジアン径が約20ミクロンであった。ニッケル粉を、比較的揮発し易い溶媒であるアセトンに分散させ、粉末と懸濁流体を激しく混合してスラリーを調製した。スラリーをルツボの中に注ぎ、ルツボの底面全体に均一かつ平坦にニッケル粉末が分散するようにスラリーを滑らかにした。次いで、揮発性の懸濁液流体を、室温で蒸発させると、後には、ニッケル粒子の比較的規則正しい配列が残った。
【0159】
この時点で、ニッケル粉末を焼結する準備が整った。焼結プロセスは、95%窒素と5%水素を含む還元雰囲気で行った。5℃/分の速度で800℃まで昇温し、10分保持してニッケル粉末を焼結し、発熱体を止めることにより炉の温度を下げ試料を冷却した。最終焼結構造体の厚さは、約250ミクロン、約15ミクロンを中心とするポアサイズ分布を有していた。
【0160】
次に、硫黄をニッケル多孔質支持構造体に添加した。硫黄を組み入れるために、オイルバスを用意し、85℃に加熱した。硫黄を浸したトルエンを含むビーカーを、そのバスの中に入れ、平衡状態に至らしめた。飽和溶液において、ビーカー中で第2層として固体状態で少量の硫黄が存在している状態を保つために、必要に応じて硫黄をトルエンに添加した。ビーカーの中のトルエンの体積を常にほぼ同じに保つために、必要に応じてトルエンを添加した。かなりの量の試薬(硫黄またはトルエン)を添加する度に、システムを平衡状態に至らしめた。ニッケル電極を、硫黄で飽和させてトルエン溶液に浸漬し、アルゴン流で乾燥させた。一群のすべての電極を浸漬した後、それらの電極を真空オーブン中、80℃で数時間焼いた(1時間から一晩中、14時間まで、3〜4時間が最も一般的、オーブンを開けた時に、トルエン臭がしない状態である限り大きな影響はない。)。それらの電極を秤量し、浸漬前の重量と比較して、存在する硫黄の量を決定した。硫黄の量が所望の量よりも少ない場合には、浸漬を繰り返した。硫黄の量が、電極の所望量を超えていた場合には、電極を速やかに純粋トルエン中に浸漬し、次いで前述の手順に従い焼いた。すべての電極に、1.5〜2mgS8/cm2を担持させた。最終構造体の多孔度は、一端硫黄を溶解させたニッケルを実質的に同じであった。
【0161】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。アノードは、厚さが26ミクロンの真空蒸着リチウムフィルムを含んでいた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、硝酸リチウム 4部を含んでいた。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。16ミクロンのSETELA多孔質セパレータも用いた。上記の部材を、片面アノード/セパレータ/2×(両面カソード/セパレータ/2×背中合わせのアノード/セパレータ)/両面カソード/セパレータ/片面アノードの層状構造体に組み立てた。この平坦な電池を、約0.62gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、電池を2枚の平行板の間に挟んで98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質は、セパレータとカソードの空隙領域を満たし、約99.441cm2の電極面積を有する新しい平坦電池を得た。放電−充電サイクルは、それぞれ、40mAと25mAで行った。放電カットオフ電圧は1.7Vで、充電カットオフ電圧は2.5Vとした。
【0162】
図11は、Cレートに対する試験電池のパーセント容量のプロットを含んでいる。電池は、標準レート試験が終了する15枚目の放電まで正常に充放電サイクルが可能であった。
【0163】
比較のため、マイルストーンカソードを用いて電気化学電池を作製した。カソードが、硫黄/XE−2/バルカンXC72R/PVOHの混合物の比率が55/20/20/4であるカソードを含んでいた以外は、比較例1に記載された方法と実質的に同じ方法でマイルストーンカソードを作製した。図11に示すように、焼結ニッケルカソードを含む電池は、マイルストーンカソードを用いた電池に比べ、高いレートにおいて高いパーセント容量を示した。
【0164】
実施例5.
本実施例は、ポリマー状多孔質支持構造体を用いて作製されたカソードを含む電気化学電池の作製および試験について記載している。ポリマー状多孔質支持構造体は、ポリビニルアルコール(PVA)溶液と発泡剤として重炭酸アンモニウムを組み合わせて製造した。バルカン カーボン、TIMCAL Ks6グラファイト、およびカーボンファイバーをPVA溶液に添加し、導電性を増加させるとともに、PVAマトリックスの機械的特性を向上させるための補強材として作用させた。
【0165】
重炭酸アンモニウムをアトライターミルで予め粉砕して、粒子径を1〜2ミクロンの範囲に小さくした。イソプロピルアルコール(IPA)をこの粉砕のキャリア溶媒として用い、粉砕した重炭酸アンモニウムから減圧濾過した。IPAの最終量を除去するために、開放ナベの中で重炭酸アンモニウムを一晩乾燥させた。この一晩の乾燥の間に、重炭酸アンモニウムの約20%が昇華により失われた。
【0166】
最終的なスラリーを調製するため、バルカンXC72Rカーボンとティムカル(Timcal)KS6グラファイト(直径6ミクロンの小板)を、溶媒が水、IPA、および2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(ドワノール:ダウケミカル社製)であるPVOHの可溶性バインダー溶液とともに粉砕した。この粉砕された溶液をVKC2と呼ぶ。
【0167】
第2の粉砕工程では、VKC2溶液を、アトライターミル中で、ポリグラフ(Polygraff)PR−24カーボンファイバー(パイログラフ プロダクト社製、直径8ミクロン、長さ100〜150ミクロン)と少量の水を加えて20分間粉砕した。水は、発泡プライマーのアルミ基材(実施例1に記載されたアルミ箔基材と同じタイプ)に対する接着性を向上させるために添加した。次いで予め粉砕した重炭酸アンモニウムを、最初のプライマー固体の1部(重量)に対して重炭酸アンモニウムを8部の比率で添加した。次いでこの最終混合物を、アトライターミルから取り出す前に10分間粉砕した。
【0168】
重炭酸アンモニウムにより形成された最終的なポアサイズをさらに小さくするために、VKC2/ファイバー/重炭酸アンモニウムの混合物を、マイクロフルイダイザーに通した。単一の400ミクロンチャンバーを用い、排出圧は5kpsiとした。
【0169】
調製したのと同じ日に、スロットダイを用いてアルミ基材の上にスラリーを塗布した。塗膜を、4領域、空気対流オーブン(ウィスコンシン州、デペール、メグテックシステム社製)で乾燥させた。各領域の温度を25℃と約85℃との間に調整し、最終カソード構造体中にポアを形成させるとともに、流延スラリーの脆性/接着性を調整した。
【0170】
乾燥させた、圧縮前の多孔質ポリマーマトリックスの厚さは、約216.7ミクロンであった。約98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えると、ポリマーマトリックスの厚さは約112.1ミクロンであった。ポリマーマトリックスの重量は約1.064mg/cm2であった。空隙を利用可能なジブチルフタレート(DBP)は、大量のDBPを含むバッグの中に秤量した試料を入れて試料を飽和させ、得られた飽和試料を再秤量することにより測定した。DBPの利用可能な空隙は片面当たり約0.0038cm3/cm2であり、これは1.85mgS8/cm2に必要な0.0015cm3/cm2に比べて非常に大きな値であった。
【0171】
ポリマーマトリックスのBET表面積測定によれば、利用可能な表面積は、約39m2/gであった。
【0172】
図12は、加えた圧力(kgf/cm2、約9.8を掛けることによりN/cm2に変換できる)に対するポリマーマトリックスの厚さのプロットを含んでいる。3個の試料を試験した。試料当たり4サイクル全体で、加える力を0から20kgf/cm2に増加させた(図12で#1、#2、#3および#4と表示している)。力を加えた時、試料の厚さを測定した。最初のサイクルの後、各試料の厚さは、最初の厚さの約45%までしか戻らなかった。試料に力を加えた時、発泡体のDBP取り込み量は、最初の圧縮の前と後では大きく変化しなかった。この実施例のデータは、最初の圧縮の後で取得された。
【0173】
導電性ポリマーマトリックスを作製した後、硫黄を飽和させたトルエンのホットバスの中にポリマーマトリックスを浸漬することにより、硫黄を添加した。
【0174】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil)、ノースカロライナ州、キングズマウンテン、ケメタールフット社製)をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、(リチウムイミドはミネソタ州、セントポール、3M社から入手できる)、硝酸リチウム 3.8部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)、硝酸グアニジン 1部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9μmのセテラ(日本、東京の東燃化学社から、またはニューヨーク州、ピッツフォード、モービル化学社フィルム部門から入手できる)を含む多孔質セパレータをアノードとカソードの間に配置した。両面を有するカソードを、セパレータとアノード箔で包み、箔パウチの中に配置した。次いで箔パウチの中に、0.42gの液体電解質を添加した。液体電解質がセパレータとカソードの空隙を埋めて電極面積が31.8cm2の角柱状電池を作製した。封止後、電池を24時間保存した。
電池を試験する前に、2枚の平行板の間に挟んで、98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力で圧縮した。充電−放電サイクルを、それぞれ13.7mAと7.8mAで行った。放電時のカットオフ電圧は1.7V、充電時のカットオフ電圧は2.5Vであった。電気化学電池を10kgf/cm2(約98N/cm2)の力で圧縮した。
図13は、充電/放電サイクルに対する電池の比放電容量のプロットを含んでいる。電池は、20回のサイクルを通して同程度の特性を保持していた。
【0175】
本明細書には本発明の複数の態様が記載および図示されているが、当業者は、本明細書に記載されている機能を実施でき、および/または結果および/または1つまたは複数の利点を得ることのできるいろいろな他の手段および/または構造を容易に予想でき、およびそのような変形例および/または改良例は本発明の範囲に含まれるものである。さらに一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されているすべてのパラメータ、大きさ、材料、および配置が例示であり、実際のパラメータ、大きさ、材料および/または配置は、本発明の教示が用いられる特定の用途または用途群に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、通常の実験により、本明細書に記載された特定の態様についての多くの等価物を認識でき、あるいは確認できる。したがって、前述の態様は単に例として提示されたものであり、添付の請求の範囲およびそれの等価物の範囲内であれば、特に記載されおよび請求されたものと別のやり方で本発明を実施してもよい。本発明は、本明細書に記載された、それぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関するものである。また、2つまたはそれを超える、それらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、もしそれらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0176】
本明細書で定義され使用されているすべての定義は、辞書の定義、出典明示により本明細書の一部となった文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優先することが理解されるべきである。
【0177】
本書類の明細書および請求の範囲で使用されている不定冠詞の「1つ」および「1つ」は、それと異なると指摘されない限りは、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0178】
本書類の明細書と請求の範囲で使用されている「および/または」という句は、結合した要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきであり、すなわち、ある例では複数の要素が結合して存在し、別の例では複数の要素が分離して存在する。「および/または」で羅列された複数の要素も同様に解釈されるべきであり、すなわち、結合した要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。特に認定された要素に関係するかまたは関係しないかにより、「および/または」の句で特に認定された要素以外の要素も必要に応じて存在してもよい。したがって、限定されない例として、「「含む」のような限定のない表現と一緒に用いられる場合、「Aおよび/またはB」への言及は、ある態様では、Aのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、別の態様では、Bのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、さらに別の態様では、AとBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を意味する。
【0179】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、「または」は、先に定義された「および/または」と同じ意味を有している。例えば、リストの中の用語を分ける時、「または」あるいは「および/または」は、包含的なものと理解されるべきであり、すなわち、多数の要素または要素のリストの少なくとも1つを含むだけでなく、複数も含み、および必要に応じてリストにない追加の要素を含む。反対であると明確に指摘された用語のみ、例えば、「1つのみ」または「厳密に1つの」または、クレームに用いられる場合、「のみから成る」は、多数の要素または要素のリストの中の厳密に1つの要素が含まれることを意味する。一般に、本書類で用いられる「または」の用語は、「いずれか」、「1つの」、「1つのみ」または「厳密に1つの」等の包含的な用語が先立つ場合、包含的な選択(例えば、1つまたは別のもので両方ではない)を意味するものとだけ解釈されるべきである。「実質的に・・から成る」がクレームで用いられる場合、特許法の分野で用いられる通常の意味を有する。
【0180】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、1つまたは複数の要素のリストに関して「少なくとも1つ」の句は、要素のリスト中のいずれか1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであり、要素のリストの中に特に挙げられた各要素およびすべての要素の少なくとも1つを含むことは必ずしも必要ではなく、要素のリストの中の要素の組み合わせを排除するものでもない。この定義では、特に認定されたそれら要素に関係するかあるいは関係しないかに応じて、「少なくとも1つの」の句が言及する要素の中で特に認定された要素以外にも要素が必要に応じて存在することを許容するものである。したがって、限定されるものではないが、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、ある態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含むがBは含まない(および必要に応じてB以外の要素を含む)ことを意味し、また別の態様では、少なくとも1つ、Bを含み、必要に応じて1つより多く含むがAは含まない(および必要に応じてA以外の要素を含む)ことを意味し、さらに別の態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含み、その場合Bを含み(および必要に応じて他の要素を含む)ことを意味する、等である。
【0181】
それと異なると明確に指摘されない限りは、本書類において請求された方法は、1つより多い工程または処置を含み、該方法の工程または処置の順番は、記載されている工程または処置の順番には特に限定されない、と理解されるべきである。
【0182】
上記の明細書だけでなく、特許請求の範囲において、「有する」、「含む」「保持する」、「持つ」、「含有する」、「包含する」、「保有する」、「構成される」等のすべての移行句は、非限定的であると理解されるべきであり、すなわち、含むことを意味するがそれに限定されない。「から成る」および「実質的に・・から成る」の移行句だけは、米国特許庁特許審査便覧2111.3節に規定されているように、それぞれ限定的または半限定的な移行句である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2009年8月28日に出願され、名称が「硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池」である米国仮出願第61/237,903号に対して優先権を主張するものであり、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、電気化学電池に関し、より詳しくは、硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池を含むシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な電気化学電池は、電気化学反応に参加するカソードとアノードとを含んでいる。一般に、電気化学反応は電解質により促進され、該電解質は、自由なイオンを含み、かつ導電媒体として作用することができる。電極活物質と電解質との間の接触量を増加させることにより(例えば、多孔質電極を用いることにより)、電気化学電池の特性を向上させることができ、それにより、電池内の電気化学反応速度を増加させることができる。さらに、電極のバルク内部の導電性を高く維持することにより(例えば、電極活物質とそれを付着させる基材との間)、電気化学電池の特性を向上させることができる。したがって、電極内部の導電性を増加させるとともに、電極活物質と電解質との間の接触量を増加させるシステムおよび方法は有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気化学電池に関し、より詳しくは、硫黄含有多孔質構造体を有する電気化学電池を含むシステムおよび方法に関する。本発明の主題は、場合により、相関する製品、特定の問題に対する代替解決案、および/または、1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある観点では電極が記載されている。いくつかの態様では、電極は、多孔質支持構造体を有し、該多孔質支持構造体は、複数のポアと、該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を含んでもよく、該複数の粒子の各粒子は、最大断面寸法を有し、該複数の粒子の各粒子は、粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子体積のそれぞれの合計で規定される全粒子体積を有し、および該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの最大断面寸法を有する粒子で占められている。
【0006】
電極は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を含んでもよく、該複数の粒子は、一体として粒状物質の全量を規定し、粒状物質の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの最大断面寸法を有する粒子で構成されている。
【0007】
いくつかの形態では、電極は、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該複数のポアの各ポアは、ポア体積を有し、および該複数のポアは、各ポア体積のそれぞれの合計で規定される全ポア体積を有し、および全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで占められている。
【0008】
電極は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該多孔質支持構造体の該複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、および全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで占められている。
【0009】
場合により、電極は、複数のポアを有する多孔質支持構造体、および該多孔質支持構造体のポア内部に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含んでもよく、該電極を有する電気化学電池は、最初の充放電サイクルの後の少なくとも1回の充放電サイクルで、電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、利用率100%は電極中のグラム硫黄当たり1672mAhに相当する。
【0010】
別の態様として、電気化学電池に用いる電極の製造方法を記述する。該方法は、場合により、複数のポアを有する多孔質支持構造体を用意すること、ここで、該多孔質支持構造体の該複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、かつ該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンから約10ミクロンの断面直径を有するポアで規定され、および硫黄を含有する電極活物質を該多孔質支持構造体のポア内に付着させることを含んでもよい。
【0011】
場合により、金属製多孔質支持構造体、ポリマー製多孔質支持構造体、またはセラミック製多孔質支持構造体を用いてもよい。
【0012】
本発明のいろいろな非限定の実施形態についての以下の詳細な説明を添付図とともに検討することにより、本発明の他の利点および新規な特徴が明らかになるであろう。本明細書と出典明示により組み入れられた文書が相反するおよび/または矛盾する開示内容を含む場合には、本明細書が優先される。もし出典明示により組み入れられた2つのまたはそれ以上の文書が互いに相反するおよび/または矛盾する開示内容を含む場合には、後の有効日を有する文書が優先される。本明細書に開示された全ての特許および特許出願は、そのすべての開示内容はあらゆる目的で出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の非限定の態様は、添付図を参照しながら例として記載されるものであり、該添付図は模式的なものであり、正確な縮尺率で描くことを意図したものではない。該添付図において、図示された同じまたは実質的に同じ要素は一つの数字で通常示される。
見易くするため、すべての図ですべての要素が標識される訳ではなく、また当業者が本発明を理解する上で図示が不要である場合には、本発明の各実施形態のすべての要素が図示されるものでもない。
【図1】図1は、典型的な電気化学電池の模式図である。
【図2】図2は、別の実施形態に基づく電気化学電池の模式図である。
【図3】図3は、典型的な電気化学電池の模式図である。
【図4A】図4Aは、典型的な電極の走査型電子顕微鏡写真(SEMs)である。
【図4B】図4Bは、典型的な電極の走査型電子顕微鏡写真(SEMs)である。
【図5A】図5Aは、ある一連の態様における、充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図5B】図5Bは、図5Aの一連の態様における、Cレートに対する容量のプロットである。
【図6A】図6Aは、ある一連の態様における硫黄−炭素複合体の二次電子像である。
【図6B】図6Bは、図6Aの複合体のX線スペクトル像である。
【図6C】図6Cは、図6Aの複合体のX線スペクトル像である。
【図6D】図6Dは、硫黄−炭素複合体の断面の二次電子像である。
【図6E】図6Eは、図6Dの複合体のX線スペクトル像である。
【図6F】図6Fは、図6Dの複合体のX線スペクトル像である。
【図7】図7は、ある一連の態様における、充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図8A】図8Aは、ある一連の態様における、電極の二次電子像である。
【図8B】図8Bは、図8Aの一連の態様における、電極の二次電子像である。
【図9A】図9Aは、ある一連の態様における、複合カソード中の硫黄の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9B】図9Bは、図9Aの一連の態様における、複合カソード中の炭素の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9C】図9Cは、図9Aの一連の態様における、複合カソード中のアルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9D】図9Dは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中の硫黄の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9E】図9Eは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中の炭素の分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図9F】図9Fは、図9Aの一連の態様における、機械的混合によるカソード中のアルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像である。
【図10】図10は、典型的な電気化学電池の充放電サイクル数に対する比放電容量のプロットである。
【図11】図11は、ある一連の態様における、Cレートに対する容量比率の例示的なプロットである。
【図12】図12は、ある一連の態様における、印加圧力に対するカソードの厚さのプロットである。
【図13】図13は、いくつかの態様における、サイクル数に対する比放電容量の例示的なプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、硫黄含有多孔質構造体の電気化学電池での使用に関する。その材料は、例えば、電気化学電池の中に一つまたは複数の電極を形成する場合に有用である。例えば、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、電極の使用を含んでもよく、該電極は、導電性の多孔質支持構造体と、該支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む複数の粒子(例えば、活性種として)を含む。本発明者らは、意外にも、いくつかの実施形態において、電池の望ましい運転が可能なように電極の導電性と構造的一体性を十分に高いレベルに維持しながら、電解質と硫黄との間の接触が促進されるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整できることを見出した。また、電極内における機械的安定性を維持しながら、支持材料に対する硫黄の適切な比率を達成できるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを選択することができる。本発明者らは、意外にも、特定の材料(例えばニッケル等の金属)を含む多孔質支持構造体を使用すると、電池特性が顕著に増加することも見出した。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポアの中に電極活物質(例えば硫黄を含む)を含む粒子を作製する方法は、粒子の大きさとポアの大きさとの間に所望の関係をもたらす。電極の構造完全性を維持しながら、異方的な力の適用にも耐えうるように、多孔質支持構造体内のポアの大きさおよび/またはポア内の粒子の大きさを調整することもできる。
【0015】
本明細書に記載されたシステムおよび方法の開発において、発明者らは、硫黄含有電極の製造に関係する複数の課題を明らかにした。最初に、硫黄の導電率はかなり低く(例えば、元素硫黄の場合で5.0×10−14Scm−1)、電極の導電性を抑制し、その結果電池特性を抑制する。また、微粒子硫黄は、厚みが均一で高表面積の電極を製造するのに有用ではあるが、従来の機械的粉砕では製造するのが困難である。それは、粒子が速やかに再凝集するからである。さらに、高表面積炭素は、比較的高い比容量とサイクル寿命を与えるが、従来のスラリーは取扱が難しい。それは、高表面積炭素は高い吸収スティフネス(absorption stiffness)を有しているので、固形分量の比較的低いスラリーを与えるからである。最後に、硫黄含有電極材料の従来のスラリー処理では、スラリー成分の再分布が起こり、その結果、カソード内の空孔が不均一となり、アノード利用率が減少する。本発明者らは、支持材料の空孔内部に硫黄含有粒子を配置することにより、これらの従来の問題点を克服して、比較的均一な空孔率、粒子径および成分分布を有する電極を製造できることを意外にも見出した。
【0016】
本明細書に記載された多孔質構造体は、広い様々な装置用の電気化学電池として用いることができ、該装置には、例えば、電気自動車、負荷平準化装置(例えば、太陽または風力を利用するエネルギープラットフォーム)、携帯電子装置等がある。いくつかのケースでは、本明細書に記載された多孔質構造体は、リチウム硫黄(L−S)電池等の二次電池(すなわち、再充電可能な電池)の電極として特に有用である。
【0017】
ある態様として、電気化学電池に用いる電極が記載されている。該電極は、複数のポアを有する多孔質構造体を含んでもよい。本明細書で用いる「ポア」は、ASTM規格試験D4284−07を用いて測定したポアを指し、溝、空隙または通路を一般的に指し、該ポアはその少なくとも一部が媒体によって囲まれた部分であって、媒体内に残った状態で連続するループがポアの周囲に作られるようにポアは形成されている。一般的に、材料の内部のポアであって該材料によって完全に囲まれているポア(したがって、該材料の外からは近づくことができないものであり、例えば独立気泡)は、本発明のコンテキストにおいてはポアとは見なされない。物品が粒子に塊を含む場合、ポアは、粒子間ポア(すなわち、一緒に充填された時に粒子間にできるポアであり、例えば隙間)と、粒子内ポア(すなわち、個々の粒子に覆われて存在するポア)の両方を含むと理解されるべきである。ポアは、いろいろな適切な断面積形状を有してもよく、例えば、円状、楕円状、多角形状(例えば、矩形、三角形等)、不定形等である。
【0018】
多孔質構造体は、いろいろな適切な形状を含んでもよい。いくつかの例では、多孔質構造体は、分離粒子の多孔質集合体を含み、該集合体の中の粒子は多孔質または非多孔質である。例えば、多孔質粒子または非多孔質粒子をバインダーとともに混合して多孔質集合体を形成することにより、多孔質支持構造体を形成してもよい。本明細書に記載した本発明の電極を形成するため、電極活物質を粒子間の隙間の中および/または粒子内のポアの中に配置してもよい。
【0019】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、「多孔質連続」構造体であってもよい。本明細書で用いる多孔質連続構造体は、その中にポアを含む連続した固体構造体を指し、該構造体はポアを規定する固体領域間に比較的つながった表面を有している。多孔質連続構造体の例には、例えば、その体積内にポアを含む一つの材料(例えば、多孔質炭素粒子、発泡金属体等)が含まれる。当業者は、多孔質連続構造体と、例えば、多孔質連続構造体ではなく分離粒子の多孔質集合体である構造体(分離粒子間の隙間および/または他の空隙がポアと見なされるもの)とを、例えば、その2つの構造体のSEM画像を比較することによって区別することができるであろう。
【0020】
多孔質支持構造体は、いろいろな適切な形状または大きさを有していてもよい。例えば、支持構造体は、いろいろな適切な最大断面寸法(例えば、約10mmより小さく、約1mmより小さく、約500ミクロンより小さい等)を有する多孔質のつながった粒子でもよい。いくつかの場合、多孔質支持構造体(多孔質連続またはそうでないもの)は、比較的大きな最大断面寸法を有してもよい(例えば、少なくとも約500ミクロン、少なくとも約1mm、少なくとも約10mm、少なくとも約10cm、約1mmと約50cmの間、約10mmと約50cmの間、または約10mmと約10cmの間)。いくつかの態様では、電極内の多孔質支持構造体の最大断面寸法は、多孔質連続構造体を用いて形成された電極の最大断面寸法の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%である。
【0021】
いくつかの態様では、支持構造体は、他の2つの構造体に比べて比較的薄い寸法を有する物品、例えばフィルムでもよい。例えば、支持構造体は、厚さが約1mmより薄く、約500ミクロンより薄く、約100ミクロンより薄く、約1ミクロンと約5mmの間、約1ミクロンと約1mmの間、約10ミクロンと約5mmの間、または約10ミクロンと約1mmの間であり、幅および/または長さが少なくとも約100倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約10,000倍大きい。本明細書では、物品(例えば多孔質支持構造体)の「最大断面寸法」とは、物品の2つの対向する境界の間の測定される最大の距離を指す。本明細書に記載された多孔質支持構造体は、いろいろな適切な形状をとってもよい。例えば、支持構造体は、球状、筒状、またはプリズム状(三角プリズム、矩形プリズム等)であってもよい。いくつかの場合、支持構造体の形態は、例えば電気化学電池に用いる電極の中に支持構造体が比較的容易に組み込めるように選択してもよい。例えば、支持構造体は、その上に電気化学電池の別の部材(例えば、電解質、別の電極等)を形成できるように薄いフィルムからなるものであってもよい。
【0022】
いくつかの場合、多孔質粒子を多孔質連続構造体として用いてもよい。そのいくつかの態様として、材料(例えば、電極活物質)を粒子のポアないに堆積させ、その粒子を電極を形成するのに用いてもよい。例えば、自身のポア内に電極活物質を含む多孔質粒子を一体となるように結合させ(例えば、バインダーまたは他の添加材を用いて)、複合電極を形成してもよい。そのような複合電極を形成するための例示的な方法が、例えば、2006年1月13日に出願された「新規な複合電極、新規な複合電極を有する電気化学電池、およびその作製方法」と題する米国特許出願公開第2006/0115579号明細書に記載されており、出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0023】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、比較的大きな大きさの多孔質連続構造体からなるものであってもよく、該多孔質連続構造体は、上述の多孔質粒子とは異なり、電極として使えるように一定の大きさに作られかつ賦形されている。その構造体は、例えば、金属(例えば金属発泡体)、セラミックス、およびポリマー等のいろいろな材料で作製してもよい。その材料の例は、以下により詳細に記載されている。いくつかの態様では、電極内の多孔質連続構造体の最大断面寸法は、多孔質連続構造体を用いて形成された電極の最大断面寸法の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%としてもよい。
【0024】
いくつかの態様では、そのような比較的大きな多孔質連続構造体を用いると、電極内に含まれるバインダーをほとんど不要あるいは全く不要とすることができる。それは、微小粒子を一体的に保持して多孔質支持構造体を形成するのに、バインダーが不要だからである。いくつかの態様では、電極は、約20重量%より少ない、約10重量%より少ない、約5重量%より少ない、約2重量%より少ない、約1重量%より少ない、または約0.1重量%より少ないバインダーを含んでもよい。このコンテキストにおいて、「バインダー」は、電極活物質ではなく、かつ電極に導電性経路を付与することが含まれない材料を指している。例えば、カソード内の内部結合を促進するために電極はバインダーを含んでもよい。
【0025】
多孔質支持構造体は、いろいろな適切な材料を含んでもよい。いくつかの態様では、電極内の導電体として多孔質支持構造体を用いてもよい(例えば、電解質に接近可能な導電性材料)。したがって、多孔質支持構造体は、導電性材料を含んでもよい。例えば、使用に適した多孔質支持構造体の例としては、限定されるものではないが、金属(例えば、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、または他の適切な金属、またはそれら純粋金属または合金の組み合わせ)、カーボン(例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、中空カーボンチューブ、グラフェン、カーボンフィラメント等)、導電性ポリマー、または他の適切な導電性材料が含まれる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体の大部分は導電性材料で形成してもよい。いくつかの場合では、多孔質支持構造体は、導電性材料で少なくとも一部が被覆された(例えば、溶液を用いた堆積、蒸着、または他の適切な技術を用いて)非導電性材料からなるものであってもよい。いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、ガラス(例えば、二酸化ケイ素、非晶質シリカ等)、セラミック(例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化バナジウム、および以下に記載する他のもの)、半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等)、非導電性ポリマー等からなるものであってもよい。
【0026】
多孔質支持構造体は、電気化学電池の特性を促進するように選択された大きさ分布を有するポアを含んでもよい。いくつかの場合、多孔質支持構造体は、サブナノメータおよびシングルナノメータの大きさのポアよりも大きなポアを含んでもよく、それらは非常に小さいので、例えば毛細管力により電極のポアの中に、電解質(例えば液体電解質)が入ることはない。さらに、いくつかの場合、ポアはミリメータの大きさのポアよりも小さくてもよく、該ミリメータの大きさのポアは大きすぎて電極を機械的に不安定にするからである。いくつかの態様では、多孔質支持構造体は、複数のポアを含み、該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは、個々のポア体積のそれぞれの合計で規定される全ポア体積を有している。いくつかの態様では、全ポア体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアで占められている。いくつかの態様では、全ポア体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約20ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の断面直径を有するポアで占められている。いくつかの場合について、別の方法で示すと、多孔質支持構造体の複数のポアは、全ポア体積も一緒に規定し、全ポア体積の少なくとも約50%(または少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または実質的にすべて)が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間(または約0.1ミクロンと約20ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間)の断面直径を有するポアにより規定される。
【0027】
いくつかの態様では、複数のポアが指定された範囲の平均断面直径を有する、多孔質材料を用いることが有益である。例えば、いくつかの場合、多孔質支持材料は、複数のポアの平均断面直径が約0.1ミクロンと約10ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間にある複数のポアを含んでもよい。
【0028】
以下に説明するように、本明細書に記載されたポア分布は、いくつかの場合、異方的な力(例えば、約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間、または以下に説明される範囲のいずれかに力を限定する)を電気化学電池に加えている間に達成できる。負荷が加わった状態でも、自身の多孔度を維持することのできる材料(例えば、金属、セラミック、ポリマー等)から多孔質支持構造体を作製することにより、これは達成可能である。加えられた負荷の下で変形に耐えうる材料から電極を作製することにより、加圧下でも電極はその浸透性を維持することができ、および本明細書に記載されているように、カソードは高いレート特性(rate capabilities)を維持することができる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体(および多孔質支持構造体から製造して得られた電極)の降伏強度は、少なくとも約200ニュートン/cm2、少なくとも約350ニュートン/cm2、または少なくとも約500ニュートン/cm2でもよい。その構造体の作製方法は、以下に詳細に記載されている。
【0029】
本明細書で用いられている、ポアの「断面直径」はASTM規格試験D4284−07を用いて測定された断面直径を意味している。断面直径は、ポアの断面の最小直径を意味している。複数のポアの「平均断面直径」は、該複数のポアの断面直径の数平均を意味している。
【0030】
当業者は、ASTM規格D4284−92に記載されている水銀圧入式ポロシメトリーを用いて、多孔質構造体内部のポアの断面直径の分布と平均断面直径を計算でき、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。例えば、ASTM規格D4284−92に記載されている方法は、ポアの直径に対して累積圧入ポア体積がプロットされたポアサイズ分布を作成するのに用いることができる。所定のポア直径の範囲で、ポアに占有されている、サンプル中の全ポア体積の割合を計算するために、(1)曲線より下で、x軸の所定範囲に亘る部分の面積を計算する、(2)工程(1)で計算された面積を曲線より下の全領域の面積で割る、および(3)100%をかける。必要に応じて、ASTM標準D4284−92を用いて正確に測定されたポアサイズの範囲外であるポアサイズを物品が含み場合には、BET表面分析を用いて、ポロシメトリー測定を補完してもよく、該BET表面分析は、例えば、S.ブラナウアー、P.H.エメット、およびE.テラーらのJ.Am.Chem.Soc.,1938,60,309に記載されており、出典明示によりその内容はすべて本明細書の一部となる。
【0031】
いくつかの態様では、多孔質材料は、比較的均一な断面直径を有するポアを含んでもよい。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、ポア材料のバルク全体に亘り、比較的一貫した構造的安定性を維持する上にその均一性は有用である場合がある。また、ポアサイズを比較的狭い範囲内に制御する能力は、多孔質材料の構造的安定性を保つために十分に小さなポアを維持した状態で、流体の浸透(例えば、電解質の浸透)が可能な大きな多数のポアを組み入れることを可能とする。いくつかの態様では、多孔質材料内部のポアの断面直径の分布は、標準偏差が、複数のポアの平均断面直径の、約50%より小さく、約25%より小さく、約10%より小さく、約5%より小さく、約2%より小さく、または約1%より小さい。標準偏差(小文字のσ)は通常の意味であり、以下の式から計算できる。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Diはポアiの断面直径であり、Davgは複数のポアの断面直径の平均値であり、nはポアの数である。上記の標準偏差と平均断面直径との間の比較率は、標準偏差を平均で割り、そして100%を掛けて得られる。
【0034】
本明細書に記載された電極は、多孔質支持構造体のポア内に実質的に含まれる材料を含むこともできる。ポア内に「実質的に含まれる」と言われる材料は、ポアの外側境界線により規定される架空体積の内部に少なくとも一部が存在する材料である。例えば、ポア内に実質的に含まれる材料は、ポア内に完全に含まれてもよく、あるいはポア内にその体積の一部のみが含まれてもよいが、該材料の大部分は、全体では、ポア群の中に含まれている。ある一連の態様では、材料(例えば、硫黄含有材料)が用意され、該材料の少なくとも30質量%は、多孔質支持構造体のポア内に含まれる。別の態様では、該材料の少なくとも50質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、または95質量%は、支持構造体のポア内に含まれている。
【0035】
支持構造体内の材料は、いくつかの場合、実質的に固体または多孔質である粒子を含むことができる。いくつかの態様では、ポア内に実質的に含まれる材料は、バラバラの粒子または凝集粒子を含んでもよい。いくつかの態様では、該材料は、支持構造体内のポアの少なくとも一部の上の膜(実質的に固体または多孔質)を含んでもよい。いくつかの態様では、該材料がポアの一部の形状および/または大きさを持つように、該材料が、支持構造体内のポアの少なくとも一部を実質的に満たしてもよい。
【0036】
支持構造体内の材料は、いくつかの場合、電極活物質を含んでもよい。本明細書で用いられている「電極活物質」という用語は、電極に付随する電気化学的活性種を意味している。例えば、カソード活物質は、カソードに付随する電気化学的活性種を意味するのに対し、アノード活物質は、アノードに付随する電気化学的活性種を意味する。
【0037】
いくつかの態様では、本発明の電極は、多孔質支持体のポア内に存在する電極活物質を含む比較的多い量の材料を含んでもよい。例えば、いくつかの態様では、電極(例えばmカソード)は、本明細書に記載された電気活性な硫黄含有材料等の電極活物質を、少なくとも約20重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約65重量%、または少なくとも約75重量%を含んでもよい。
【0038】
多孔質支持構造体のポア内の材料は、いろいろな組成物を含んでもよい。いくつかの態様では、ポア内の材料は硫黄を含んでもよい。例えば、ポア内の材料は、電気活性硫黄含有材料を含むことができる。本明細書の用いられる「電気活性硫黄含有材料」は、硫黄元素をいろいろな形態で含む電気活性材料であって、その電気化学的活性には硫黄原子または硫黄成分の酸化または還元が含まれる。例えば、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素(例えば、Sg)を含んでもよい。別の態様では、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素と硫黄含有ポリマーの混合物を含む。したがって、適切な電気活性硫黄含有材料は、限定されるものではないが、硫黄元素、有機または無機のスルフィドまたはポリスルフィド(例えば、アルカリ金属の)、および硫黄原子と炭素原子を含む有機材料であって、ポリマーでもポリマーでなくてもよいもの、を含んでもよい。適切な有機材料は、限定されるものではないが、ヘテロ原子、導電性ポリマーセグメント、複合体、および導電性ポリマーをさらに含む有機材料を含む。
【0039】
いくつかの態様では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料は、少なくとも約40重量%の硫黄を含む。いくつかの場合、電気活性硫黄含有材料は、硫黄を、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約90重量%含む。
【0040】
硫黄含有ポリマーの例には、Skotheimらの米国特許第5,601,947号および5,690,702号、Skotheimらの米国特許第5,529,860号および6,117,590号、2001年3月13日に発行された共通の譲受人であるGorovenkoらの米国特許第6,201,100号、およびPCT国際公開第WO99/33130に記載されたものが含まれる。ポリスルフィド結合を含む他の適切な電気活性硫黄含有材料は、Skotheimらの米国特許第5,441,831号、Perichaudらの米国特許第4,664,991号、Naoiらの米国特許5,723,230号、5,783,330、5,792,575号および5,882,819号に記載されている。電気活性硫黄含有材料のさらなる例には、例えば、Armandらの米国特許第4,739,018号、De Jongheらの米国特許第4,833,048号および4,917,974号、Viscoらの米国特許第5,162,175号および5,516,598号、およびOyamaらの米国特許第5,324,599号に記載されたジスルフィド基を含む材料が含まれる。
【0041】
硫黄は、活性な電極種として主に記載されているが、本明細書で硫黄が活性電極種として記載されている箇所ではすべて、適切な電極活性種を用いてもよいことは理解されるべきである。当業者はこのことを理解でき、かつその用途のために種を選択することができる(例えば、以下に記載されたリストから)。
【0042】
ポア内の材料が粒子(例えば、電極活物質粒子)を含む態様では、該粒子は、いろいろな適切な形状をとることができる。例えば、いくつかの態様では、粒子は実質的に球状である。いくつかの場合では、粒子は、該粒子が占有するポアの形状と同様である(例えば、筒状、角柱状等)。
【0043】
多孔質支持構造体のポア内の粒子(例えば、電極活物質粒子)の大きさは、電気化学電池の特性を促進するように選択できる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の複数の粒子の各粒子は、粒子体積を有し、および複数の粒子は、個々の粒子の体積の合計で規定される全粒子体積を有している。また、いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の複数の粒子の各粒子は、最大断面寸法を有している。いくつかの例では、多孔質支持構造体のポア内の全粒子体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている。いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の全粒子体積の、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべてが、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている。別の表現によれば、いくつかの態様では、複数の粒子が、粒子状材料の全量をまとめて規定し、該粒子状材料の全量の少なくとも約50%(または少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的にすべて)が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間(または約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間)の最大断面寸法を有する粒子から成る。
【0044】
本明細書で用いられている、粒子の「最大断面寸法」は、1個の粒子の対向する境界線の間の最大距離で、測定できるものを意味している。複数の粒子の「平均最大断面寸法」は、複数の粒子の最大断面寸法の数平均を意味する。
【0045】
当業者は、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を解析することにより、粒子の最大断面寸法を測定することができる。凝集粒子を含むいくつかの態様では、最大断面寸法を決定する時は、粒子を別々に検討すべきである。測定は、凝集粒子の各粒子の間に架空境界線を設定し、その境界線を設定することにより得られる仮想の個々の粒子の最大断面寸法を測定することにより行うことができる。当業者であれば、SEM解析を用いて、最大断面寸法と粒子体積の分布を決定できる。当業者であれば、ASTM規格試験D4284−07(必要に応じてBET表面分析も用いる)に基づく水銀圧入ポロシメトリーを用いて、粒子がポア内に配置される前と後のポア内の体積を測定することにより、ポア内の粒子の全粒子体積を測定できる。支持構造体のポアの内側の材料自身が多孔質である場合、水銀圧入ポロシメトリー測定(必要に応じてBET表面分析も用いる)を、SEM顕微鏡写真の視覚分析により補完して、ポア内の材料(例えば、粒子)により占有されている体積を決定してもよい。
【0046】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料粒子(例えば、電極活物質)は、指定された範囲内の平均最大断面寸法を有してもよい。例えば、いくつかの場合、多孔質支持構造体内の材料粒子(例えば、電極活物質)は、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間、約1ミクロンと約10ミクロンの間、または約1ミクロンと約3ミクロンの間の平均最大断面寸法を持つことができる。いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料粒子の平均最大断面寸法の、多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する比率は、約0.001:1と約1:1の間、約0.01:1と約1:1、または約0.1:1の間とすることができる。
【0047】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の粒子は、比較的均一な最大断面寸法を持つことができる。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、その均一性は、電極活物質粒子を含む電極の表面に沿って比較的一貫した特性を発揮される上で有用な場合がある。いくつかの態様では、多孔質材料内のポアの断面寸法の分布は、複数のポアの平均断面直径の約50%より小さく、約25%より小さく、約10%より小さく、約5%より小さく、約2%より小さく、または約1%より小さい。標準偏差(小文字σ)は、通常の意味であり、前述のように、平均に対するパーセントとして計算し、表現することができる。
【0048】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内の材料(例えば、粒子)は、ポア体積の比較的大きなパーセントを占めてもよい。例えば、いくつかの態様では、多孔質支持構造体内の材料(例えば、電極活物質を含む粒子)は、多孔質支持構造体の利用可能な体積の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、またはそれをこえるパーセントを占めることができる。本明細書で用いられている「利用可能なポア体積」は、ポアの上記の定義と矛盾するものではなく、ポア物品を形成する材料により完全に囲まれているポア体積に対する、多孔質物品の周囲の外部環境に曝されているポア体積のパーセントを意味する。ポア内の材料により占有されている体積は、ポア内の材料(例えば、粒子)の外側の境界を囲む架空の体積を含み、ポア内の材料自身が多孔質である場合には、材料(例えば、粒子)の空隙体積を含む。当業者であれば、例えば、必要に応じてBET表面分析も用いて、ASTM規格試験D4284−07に基づく水銀圧入ポロシメトリーを用いて、利用可能なポア体積のパーセントを計算することができる。粒子に占有されている多孔質物品内の利用可能なポア体積のパーセントは、ポア内に粒子を配置する前と後で水銀圧入ポロシメトリー測定を行うことで(必要に応じてBET表面分析も用い)、計算できる。多孔質支持構造体のポアの内側の材料自身が多孔質である場合、水銀圧入ポロシメトリー測定(必要に応じてBET表面分析も用い)を、SEM顕微鏡写真の視覚分析で補完することにより、ポア内の材料(例えば、粒子)により占有されている体積を決定してもよい。
【0049】
多孔質支持構造体を含む電極は、いくつかの例では、比較的高いパーセントの電極活物質を含んでもよい。いくつかの態様では、多孔質支持構造体を含む電極は、例えば、活物質を、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、またはそれを越えるパーセント含んでもよい。電極内の電極活物質の量を計算するために、電極活性種の重量のみが計算されていることが理解されなくてはならない。例えば、ポリスルフィドまたは硫黄を含む有機材料等の電気活性硫黄含有材料の場合、電極内の電極活物質の硫黄含量を決定するに際しては、電気活性硫黄含有材料の硫黄含量のみが計算されている。いくつかの態様では、多孔質支持構造体を含む電極は、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、またはそれを越える硫黄を含むことができる。
【0050】
本明細書に記載された電極では、電極活物質と支持材料とは適切な重量比を有する(例えば、硫黄対炭素の適切な比)。例えば、いくつかの態様では、電極は、硫黄対炭素の重量比として、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、または少なくとも約6:1である重量比を有する。いくつかの態様では、電極は、硫黄対炭素の重量比として、約6:1より小さく、約5:1より小さく、約4:1より小さく、約3:1より小さく、約2:1より小さく、または約1:1より小さい重量比を有する。
【0051】
いくつかの例では、電極活物質(例えば、カソード中の硫黄)の濃度は、1つまたは複数の電極表面全体にわたり、または電極の断面全体にわたり同じである。いくつかの態様では、電極(例えば、カソード)の表面積の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%は、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散している均一な領域を形成している。いくつかの態様では、電極(例えば、カソード)の厚さに対して実質的に垂直な断面の表面積の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%は、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散している均一な領域を形成している。
【0052】
この文脈においては、「電極の表面」は、電極の幾何学的な表面を意味し、当業者であれば、それが、電極の外側境界線で規定される表面、例えば、マクロな測定手段(例えば、定規)では測定できるが、内表面(例えば、発泡体等の多孔質材料のポア内の領域、またはメッシュの中には含まれるが外側境界線を規定しないメッシュ繊維の表面積)は含まない。さらに、「電極の断面」は、解析した部分を露出させるために、電極を切断することにより(実際に、または理論的に)、観察できる概ね平面を規定している。断面を観察するために電極が切断された後、「電極断面の表面」は、露出した幾何学的表面に対応する。別の表現で定義すると、「電極の表面」と「電極断面の表面」は、それぞれ、電極の幾何学的表面と、電極断面の幾何学的表面を意味する。
【0053】
いくつかの態様では、均一領域(前の段落に記載されている)の約10%、約5%、約2%、または約1%を覆う連続領域が電極活物質(例えば、硫黄)の平均濃度を含む時には、電極活物質(例えば、硫黄)が均一に分散されており、該電極活物質の平均濃度は、均一領域全体における電極活物質(例えば、硫黄)の平均濃度に対して約25%より小さい、約10%より小さい、約5%より小さい、約2%より小さい、または約1%より小さい範囲で変動する。この文脈において、電極活物質の「平均濃度」は、電極に対して実質的に垂直な角度から電極を見た時に、電極活物質により占有される電極の表面積(例えば、露出した表面積、電極断面の表面積)のパーセントを意味している。
【0054】
当業者であれば、例えば、電極の表面または断面のX線スペクトル画像を解析することにより、電極表面内または電極断面内の平均電極活物質濃度や、濃度の分散を計算することができる。例えば、当業者は、図E6A〜E6Cに示す画像のような電極の表面または断面のX線スペクトル画像(例えば、断面を作るために、電極を物理的に輪切りにすることにより)を得ることができる。その画像の中の所定領域における平均硫黄濃度を計算するために、当業者は、その領域の硫黄に対応する色により占有された画像のパーセントを決定することができる。副領域内の平均濃度が、大きな領域内の平均濃度に対してX%を越えて変化するかどうかを決定するために、当業者は以下の式を用いるであろう。
【0055】
【数2】
【0056】
ここで、CLは、大きな領域内の平均濃度(パーセントで表される)、Csubは副領域内の平均濃度(パーセントで表される)である。具体例として、副領域内の電極活物質の平均濃度が12%であり、大きな領域内の電極活物質の平均濃度が20%である場合、分散は40%となる。
【0057】
別の表現で定義すると、いくつかの態様では、電極表面積または電極断面積の少なくとも約50%(または少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%)が、硫黄が実質的に均一に分散している第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有している。いくつかの例では、電極表面(または電極断面)の第1の連続領域の約10%(または約5%、約2%、または約1%)を覆う連続領域は、第2の硫黄平均濃度を含んでおり、該第2の硫黄平均濃度は、第1の連続領域全体における第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より少ない(または約10%より少ない、約5%より少ない、約2%より少ない、または約1%より少ない)範囲で変動する。
【0058】
別の観点として、電気化学電池に用いる電極の作製方法が記載されている。該方法は、いくつかの態様では、多孔質支持構造体のポア内に物質(例えば、粒子)を実質的に付着させることを含んでもよい。多孔質支持構造体のポアの中に付着した材料は、電極活物質、例えば、硫黄を含むことができる。多孔質支持構造体および材料は、本明細書に記載されている特性(例えば、材質、大きさ、多孔度等)を持つことができる。
【0059】
多孔質支持構造体(および得られる電極)は、いろいろな方法を用いて作製することができる。例えば、いくつかの態様では、粒子を流体の中に懸濁させ、次いで該流体を除去して(例えば、熱乾燥、真空乾燥、濾過等により)、粒子が互いに付着した多孔質支持構造体を作製することができる。前述のように、いくつかの例では、バインダーを用いて粒子を付着させ、バインダー複合多孔質支持構造体を作製できる。
【0060】
いくつかの態様では、粒子が変化して多孔質支持構造体(例えば、多孔質連続構造体)を形成するまで、材料の個々の粒子を加熱することにより作製することができる。いくつかの態様では、粒子(例えば、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子等)を、粒子間に隙間が存在する状態で、粒子同士が互いに接触するように配置することができる。次に、粒子を焼結して融着構造体を形成するが、該融着構造体では、粒子間の隙間が焼結構造体のポアを構成する。本明細書で用いられている「焼結」は、この技術における通常の意味であり、粒子が互いに付着するまで粒子の融点より低い温度で粒子を加熱することにより、粒子から物を作製する方法を意味するのに用いられている。最終構造体の全多孔度、ポアの大きさ、および他の特性は、適切な粒子の大きさと形状を選択し、焼結に先立って所望の充填密度を持つように成形し、および適切な焼結条件(例えば、加熱時間、温度等)を選択することにより調整できる。
【0061】
いくつかの例では、互いに接触するように配置された粒子(例えば、ポリマー粒子、金属粒子、ガラス粒子、セラミック粒子等)を、粒子が溶融して多孔質の連続構造体を形成するように加熱することができる。最初の構造体の隙間が、そのいくつかの態様では、多孔質連続構造体のポアを形成することができる。最終構造体の全多孔度、ポアの大きさ、および他の特性は、適切な粒子の大きさと形状を選択し、焼結に先立って所望の充填密度を持つように成形し、および適切な焼結条件(例えば、加熱時間、温度等)を選択することにより調整できる。
【0062】
いくつかの態様では、溶融または焼結に先立って、粒子を制御可能に配置できる。例えば、粒子を用いて多孔質層を形成するいくつかの例では、基材に対して比較的均等におよび比較的平らに粒子を配置することは有益である。例えば、揮発性の溶媒(例えば、室温で)に粒子を懸濁させ、その上に多孔質構造体を形成する基材の上にその溶媒を注ぐことにより、これが達成できる。粒子溶媒を堆積させた後、揮発性溶媒を蒸発させると、その後には、粒子の比較的規則正しい配列が残る。
【0063】
本明細書に記載された焼結および/または溶融プロセスを、いくつかの例では、制御された雰囲気下で行うことができる。例えば、いくつかの例では、溶融または焼結を行う体積を比較的不活性なガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)で満たすことができる。いくつかの例では、実質的に酸素が存在しない条件で溶融および/または焼結を行うことができ、それにより、多孔質支持構造体を作製するために用いられる材料の酸化および/または燃焼を減らし、またはなくすことができる。いくつかの態様では、還元雰囲気(例えば、バランスガスに窒素および/またはアルゴンを用いたフォーミングガス、水素等)を用いて、焼結物品および/または溶融物品の最終酸素含量を減らすことができる。
【0064】
焼結温度および/または溶融温度は、多孔質支持構造体を形成するのに用いる材料に応じて選択することができる。例えば、粒子を溶融させて多孔質支持構造体を形成する場合、加熱温度は、粒子を構成する材料の溶融温度より高い温度を選択することができる。当業者は、焼結される材料の種類に基づいて、適切な焼結温度を選択することができる。例えば、ニッケルの適切な焼結温度は、約700℃と約950℃の間である。
【0065】
前述のように、多孔質支持構造体を形成するのに用いる粒子の大きさおよび形状を、所望の多孔度を得るために選択することができる。いくつかの態様では、粒子は、実質的に球状であるが、他の断面形状(例えば、楕円、多角形(長方形、三角形、正方形等)、不定形等)を持った粒子を用いることもできる。いくつかの態様では、粒子は比較的小さい(例えば、粉末状)。例えば、いくつかの例では、粒子の少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または実質的に全部が、約0.5ミクロンと約20ミクロンの間または約3ミクロンと約5ミクロンの間の最大断面寸法を有している。その粒子サイズは、本願の他の箇所に記載されている有利な多孔度を持った多孔質支持構造体の製造に役立つ。
【0066】
いくつかの態様では、第1の材料を第2の材料と組み合わせ、および混合物から1つの材料を除去して支持構造体のポアを形成することにより、多孔質支持構造体を作製できる。混合物から材料の1つを除去すると、その後に空隙が残り、その空隙が最終的には多孔質支持構造体のポアを形成する。いくつかの例では、混合物中の1つまたは複数の材料が除去されている間、除去されない材料の構造は実質的に保持可能である。例えば、いくつかの例では、支持構造体材料(例えば、溶融可能な、金属、セラミック、ガラス、ポリマー等)または支持構造体材料の前駆体(例えば、多孔質支持構造体を作製するために、例えば反応(例えば、重合、沈殿等)により変換可能である)を、複数の鋳型体と混合することができる。支持構造体材料または前駆体の中で相互接続されたネットワークを形成するように、鋳型体を配置することができる。鋳型体を支持構造体材料内に配置した後、それらを支持構造体材料から除去することができ、それによりその後にポアが残る。鋳型体を除去する前および/または鋳型体が除去される間に支持構造体材料を硬化させることができる。本明細書で用いられている用語「硬化した」は、材料の粘度を実質的に増加させるプロセスを意味し、材料を固化させることに必ずしも限定されない(一連の態様では、多孔質支持構造体を固体に変換させることにより硬化させているが)。材料は、例えば、液相をゲル化させることにより硬化させることができる。いくつかの例では、材料は、重合により硬化させることができる(例えば、赤外線誘発重合または紫外線誘発重合)。いくつかの例では、硬化させた材料に相変化を経験させてもよい(例えば、その融点より低い温度またはそのガラス転移温度よりも低い温度に温度を下げることにより)。溶液から溶媒を除去することにより、例えば、溶媒相を蒸発させることにより材料を硬化させてもよく、それにより後には固相材料が残る。
【0067】
鋳型体には、適切な相を用いることができる。いくつかの例では、鋳型体に固体粒子を用いることができる。例えば、鋳型体は、シリカ粒子を含んでもよく、シリカ粒子は、例えば、フッ化水素酸を用いることで、多孔質構造体から溶出させることができる。別の例として、鋳型体は重炭酸アンモニウムを含んでもよく、重炭酸アンモニウムは水に溶解させて除去することができる。いくつかの態様では、鋳型体は、流体(例えば、液体および/または気体)の泡を含んでもよい。
【0068】
鋳型体は、限定されるものではないが、球、立方体、ピラミッド、またはこれらおよび/または他の形状の混合物を含む、適切な形状、規則的または不規則的な形状をとることもできる。鋳型体は、それぞれ適切な大きさのものが作製されてもよい。いくつかの態様では、鋳型体は、多孔質支持構造体内の所望のポアの大きさと概ね等しい平均最大断面寸法を持ってもよい。
【0069】
具体例として、金属多孔質支持構造体は、金属射出成形を用いて作製することができる。一例として、金属粒子、バインダー、および鋳型体の「未加工物」を射出成形により適切な構造体(例えば、比較的薄いシート)に成形できる。未加工物を加熱すると、バインダーと鋳型体が燃焼しきる間、金属粒子は溶融されまたは一体的に焼結され、後に一連のポアが残る。
【0070】
鋳型法を用いて多孔質セラミック構造体を製造することもできる。例えば、いくつかの例では、ポリアフロン(polyaphron)溶液(すなわち、2液発泡体)の中にセラミック粒子と鋳型体を含有させることにより、セラミック発泡体を製造できる。得られた混合物は、ゾルゲル溶液の中で用いることができ、例えば、適切な界面活性剤を用いることにより該混合物は、安定なエマルションを形成することができる。ゲルが一旦硬化すると、鋳型体は熱処理により除去することができる。ポリアフロンの大きさは、2液発泡体中の界面活性剤の種類と量を変化させることにより調整することができる。
【0071】
鋳型法は、多孔質ポリマー構造体を製造することにも用いることができる。例えば、モノマー溶液の中に、複数の固体粒子を分散させることができる。モノマーが重合してポリマーを形成した後、固体粒子を混合物から選択的に除去することにより、残ったポリマー構造体の中に一連のポアができる。
【0072】
本明細書に記載された多孔質支持構造体を製造するのに用いられる別の方法は、3D印刷を含むものである。3D印刷は当業者には公知であり、連続層を形成することにより3次元の物品を作製するものであり、各層の上に付着させることにより最終物品を形成させるプロセスを意味する。3D印刷には、金属、ポリマー、セラミックおよびその他を含むいろいろな材料を用いることができる。
【0073】
多孔質支持構造体を作製するために、いろいろな材料(例えば、粒子状、融解状、または本明細書で説明されている他の形態)を用いることができる。多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するのに用いる材料は、いくつかの態様では、金属または合金を含むことができる。限定されるものではないが、適切な材料には、ニッケル、銅、マグネシウム、アルミニウム、チタン、スカンジウム、および合金および/またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの態様では、粒子を作製するのに用いる金属または合金は、密度が約9g/cm3より小さく、または4.5g/cm3より小さい。
【0074】
いくつかの態様では、多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するのにポリマー材料を用いることができる。限定されるものではないが、多孔質支持構造体の作製に用いるのに適したポリマーには、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(ノボラック/レゾルシノール)、リチウムポリスチレンスルホン酸(LiPSS)、エポキシ、UHMWPE、PTFE、PVDF、PTFE/ビニル共重合体、上記ポリマーおよびその他のポリマーの共重合体/ブロック共重合体が含まれる。いくつかの態様では、2種のポリマーをその特有の機能により用いることができる(例えば、接着性についてはPVA、および剛直性についてはLiPSSであり、あるいは剛直性についてはレゾルシノールであり、および可撓性/タフネスについてはエラストマーである)。多孔質支持構造体を作製するのに用いる材料は、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)PEDOT、ポリ(メチレンジオキシチオフェン)PMDOT、他のチオフェン、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy)等から1つまたは複数の導電性ポリマーを含んでもよい。当業者であれば、導電性ポリマーシステムの対イオンを選択することができ、該対イオンは、PEDOT、他の公知の導電性ポリマー、および上記のポリマーの共重合体およびブロック共重合体に対するPSS等のいろいろな化学種の中から選択することができる。
【0075】
いくつかの例では、多孔質支持構造体のすべてまたは一部を作製するために、セラミック材料を用いてもよい。限定されるわけではないが、適切なセラミックには、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、インジウム、およびそれらの合金の酸化物、窒化物、および/または酸窒化物が含まれる。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、上記の酸化物、窒化物、および/または酸窒化物のいずれかであって、導電性等の所望の特性を付与するためにドープされたものも含まれ、そのドープされた材料の具体例としては、インジウムがドープされた酸化スズ、およびアルミニウムがドープされた酸化亜鉛が含まれる。多孔質支持構造体を作製するのに用いられる材料は、いくつかの態様ではガラスを含んでもよい(例えば、石英、非晶質シリカ、カルコゲナイド、および/または他の導電性ガラス)。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、上記の材料のいずれかのエーロゲルおよび/またはキセロゲルを含むことができる。いくつかの例では、多孔質支持構造体は、ガラス質セラミックを含むことができる。
【0076】
多孔質支持構造体の大部分が実質的に非導電性である材料から製造されているようないくつかの態様では、導電性を付与するために、支持構造体のポア内に導電性材料を付着させることができる。例えば、多孔質支持構造体の大部分がセラミック(例えば、ガラス)または非導電性ポリマーを含む場合、支持構造体のポアの中に金属を付着させることができる。導電性材料は、例えば、電気化学的堆積、化学蒸着、または物理蒸着を用いて付着させることができる。いくつかの例では、導電性材料を付着させた後で、多孔質支持構造体のポアの中に電極活物質を付着させることができる。導電性を付与するために多孔質支持構造体のポアの中に配置するのに適した材料には、限定されるものではないが、カーボンや、ニッケル、銅等の金属、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0077】
いくつかの態様では、1つまたは複数の導電性材料を多孔質支持構造体材料の大部分に混ぜることにより、多孔質支持構造体の大部分を導電性にすることができる。例えば、カーボン(例えば、カーボンブラック、グラファイトまたはグラフェン、炭素繊維等)、金属粒子、または他の導電性材料を、溶融物(例えば、非導電性ポリマーの溶融物、ガラス溶融物等)の中に混ぜてもよく、該溶融物は、ポリマー状多孔質支持構造体を作製するのに用いられ、該多孔質支持構造体に導電性を付与する。溶融物が硬化した後、導電性材料を、多孔質支持構造体の大部分に含有させることができる。
【0078】
多孔質支持構造体を構造的に補強する材料を多孔質支持構造体の大部分に混ぜることにより、多孔質支持構造体の機械的特性も向上させることができる。例えば、炭素繊維および/または粒子状フィラーを溶融物(例えば、金属溶融物、ガラス溶融物、ポリマー溶融物等)の中に混ぜると、該溶融物は硬化して多孔質支持構造体を形成する。いくつかの例では、炭素繊維および/または粒子状フィラーを、多孔質支持構造体を作製する溶液の中に混ぜてもよい(例えば、多孔質支持構造体がポリマーを含むようないくつかの例において)。
【0079】
いくつかの態様では、例えば、多孔質支持構造体の表面へ材料の付着を促進するために、材料を付着させるに先だって、多孔質支持構造体の表面または内部を活性化または修飾してもよい。多孔質材料を反応性または非反応性のガスまたは蒸気に晒すことにより、多孔質支持構造体を活性化または修飾することができる。いくつかの態様では、活性化工程または修飾工程は、高い温度(例えば、少なくとも約50℃、少なくとも約100℃、少なくとも約250℃、少なくとも約500℃、少なくとも約750℃、またはそれより高温)および/または大気圧より低い圧力(例えば、約760トールより低く、約250トールより低く、約100トールより低く、約10トールより低く、約1トールより低く、約0.1トールより低く、約0.01トールより低く、またはそれよりも低い圧力)で実施できる。
【0080】
電極活物質(例えば、電極活物質を含む粒子、膜、または他の形態)を、いろいろな方法を用いて多孔質支持構造体内に付着させてもよい。いくつかの態様では、粒子状前駆体(例えば、前駆体塩、元素硫黄等の元素状前駆材料)を溶媒に懸濁または溶解させ、次いで多孔質支持構造体を懸濁液または溶液に晒す(例えば、多孔質支持構造体を溶液に浸漬する、多孔質支持構造体のポアの中に溶媒を吹き付ける等))ことにより、電極活物質を付着させることができる。粒子前駆体は、支持構造体のポアの中で続いて粒子を形成する。例えば、いくつかの例では、支持構造体のポアの中で、前駆体は結晶を形成する。その技術に用いてもよい適切な溶媒または懸濁液媒体は、水系液体、非水系液体、およびそれらの混合物を含む。適切な溶媒または懸濁液媒体の例は、限定されるものではないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびそれらの混合物を含む。もちろん、他の適切な溶媒または懸濁液媒体も必要に応じて用いることができる。
【0081】
いくつかの例では、材料の融点または沸点よりも高い温度に加熱することにより(必要に応じて、例えば蒸発を促進するために、周囲の圧力を調整して)電極活物質を支持構造体のポアの中に付着させることもできる。次いで、粒子状の付着物または他の固体が形成されるように、支持材料のポアの中に加熱された材料を流し込みあるいは気化させてもよい。具体的には、硫黄が材料のポアの中に流れ込むように(例えば、昇華、液流により)、元素硫黄粉末を多孔質支持構造体の隣に配置し、硫黄の融点以上の温度に加熱する。次いで複合体を冷却して硫黄をポア内に付着させる。
【0082】
いくつかの態様では、電気化学的堆積、化学蒸着、または物理蒸着により、支持構造体のポア内に電極活物質を付着させることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン等の金属は、多孔質支持構造体のポア内に電気化学的に付着させることができる。あるいは、それらの金属は、例えば、電子線蒸着等の物理蒸着技術を用いて付着させてもよい。
【0083】
いくつかの態様では、電極活物質に加えて触媒を支持構造体のポア内に付着させてもよい(電極活物質の付着の前またはその間)。いくつかの例では、触媒は、電極活物質の電気化学的変換を触媒する(例えば、硫黄からLi2Sへの変換および/またはLi2Sから硫黄への変換)。適切な触媒には、例えば、コバルトフタロシアニン、遷移金属塩、錯体、および酸化物(例えば、Mg0.6Ni0.4O)が含まれる。
【0084】
本明細書に記載された電極は、1つまたは複数の優れた特性を有する。いくつかの態様では、電極は比較的高い多孔度を示す。いくつかの例では、電極の多孔度は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%である。その多孔度(および本明細書に記載されたいずれかのポア分布)は、いくつかの例では、異方的な力(約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間の圧力、または以下に記載された範囲のいずれかで規定される)が電気化学電池に加えられている間でも、達成される。本明細書で用いられているように、電極(例えば、カソード)のパーセント多孔度は、電極の空隙体積を電極の外側の境界性より内側の体積で割ったもので定義され、パーセントで表現される。「空隙体積」は、電極活物質(例えば、硫黄)、導電材料(例えば、カーボン、金属等)、バインダー、または構造を支える他の材料により占有されていない電極の部分を意味するものとして用いられている。電極の中の空隙は、電極材料の凝集体の隙間だけでなく、電極内のポアを含んでもよい。空隙体積は、電解質、ガス、または他の非電極材料に占有されてもよい。いくつかの態様では、電極の空隙体積は、電極内の電極活物質(例えば、硫黄)のグラム当たり、少なくとも約1cm3、少なくとも約2cm3、少なくとも約4cm3、または少なくとも約8cm3でもよい。
【0085】
いくつかの態様では、電極は、比較的大きな、電解質が利用可能な導電材面積を含むことができる。本明細書で用いる「電解質が利用可能な導電材面積」は、電解質が接触することのできる、電極内の導電材の全表面積を意味するものとして用いられている。例えば、電解質が利用可能な導電材面積は、電極のポア内の導電材表面積、電極の外表面の導電材表面積を含んでもよい。いくつかの例では、電解質が利用可能な導電材面積は、バインダーまたは他の材料によっては妨害されない。さらに、いくつかの態様では、電解質が利用可能な導電材面積は、ポア内に存在し、表面張力の効果により電解質の流れを制限する導電材部分を含まない。いくつかの例では、電極は、電解質が利用可能な導電材面積(例えば、電解質が利用可能なカーボン面積、電解質が利用可能な金属面積)を、電極の電極活物質(例えば、硫黄)のグラム当たり、少なくとも約1m2、少なくとも約5m2、少なくとも約10m2、少なくとも約20m2、少なくとも約50m2、少なくとも約100m2、含んでもよい。上記の比較的大きな、電解質が利用可能な導電材面積は、いくつかの例では、異方的な力(約4.9ニュートン/cm2と約198ニュートン/cm2の間の圧力、または以下に記載された範囲のいずれかで規定される)が電気化学電池に加えられている間でも、達成される。
【0086】
本明細書に記載された電極は、広くいろいろな範囲の電気化学装置に用いることが可能であり、その装置の1例が、図で示すことだけを目的として、図1に示されている。電気化学電池の一般的な態様は、カソード、アノード、およびカソードとアノードとを電気化学的に連絡する電解質を含むことができる。いくつかの例では、電池は、容器構造体を含んでもよい。いくつかの例では、電解質がアノードとカソードの間に積層構造で配置されるように、部材を組み立ててもよい。図1は、本発明の1つの電気化学電池を示している。示された態様では、電池10は、実質的に平面である基材20の上に形成されるカソード30を含んでいる。図1では、カソードと基材は、平面形状を持つように図示されているが、後で詳細に説明するように、他の態様では、非平面形状を持ってもよい。上記のように、カソードおよび/またはアノードは、その中に電極活物質が含まれる多孔質支持構造体を含むことができる。例えば、リチウムー硫黄電池では、その中に電気活性硫黄含有材料が含まれている多孔質支持構造体を含むことができる。
【0087】
カソードは、いろいろなカソード活物質を含んでもよい。例えば、カソードは硫黄含有材料を含んでもよく、硫黄はカソード活物質である。他のカソード活物質の例は、以下により詳しく記載されている。いくつかの態様では、カソード30は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面32)を含んでいる。本明細書で用いている用語「活性表面」は、そこで電解質と物理的に接触し、およびそこで電気化学的反応が起きる、電極の表面を説明するために用いられている。
【0088】
電解質40(例えば、多孔質のセパレータ材料を含む)は、カソード30に隣接して形成することができる。いくつかの態様では、電解質40は、多孔質セパレータに組み入れてもよいあるいは組み入れない、非固体電解質を含んでもよい。本明細書で用いられている用語「非固体」は、静的なせん断応力には耐えることができない材料を意味し、せん断応力が加わった場合には、非固体は、継続的で永久的な変形を受ける。非固体の例には、例えば、液体、変形可能ゲル等が含まれる。
【0089】
本明細書に記載された電気化学電池は、いくつかの態様では、カソード活物質の質量またはアノード活物質の質量に対して比較的低質量の電解質を用いてもよい。例えば、いくつかの例では、電気化学電池において、カソード活物質(例えば、硫黄)またはアノード活物質に対する電解質の質量比は、約6:1より小さく、約5:1より小さく、約4:1より小さく、約3:1より小さく、または約2:1より小さい。
【0090】
アノード層50は電解質40に隣接して形成することができ、カソード30と電気的に接続している。アノードは、いろいろなアノード活物質を含んでもよい。例えば、アノードはリチウム含有材料を含んでもよく、リチウムはアノード活物質である。他のアノード活物質の例は、以下により詳しく記載されている。いくつかの態様では、アノード50は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面52)を含んでいる。アノード50は、カソード30の上に配置された電解質層の上、例えば電解質40の上に配置されてもよい。もちろん、部材の配置は変更されてもよく、例えば、アノード層または電解質層が基材の上に最初に形成されるように層の配置を変更する別の態様もあることは理解されるべきである。
【0091】
いくつかの態様では、電池は、容器構造体56も含んでもよい。さらに、電池は、必要に応じて追加の層(不図示)を含んでもよく、該追加の層は、例えば、電解質から電気活性材料(例えば、電極)を保護する多層構造として存在してもよく、その詳細は、2006年4月6日に出願された、Affinitoらの名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気電池」である米国特許出願第11/400,781号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。さらに、非平面配置、図示されたものとは大きさの異なる材料に基づく配置、およびその他の別の配置は、本発明については有用である。もちろん、典型的な電気化学電池は、集電体、外部電気回路、保護構造体等も含む。当業者は、図および本明細書の記載において示された一般的な模式配置を利用した多くの配置について熟知している。
【0092】
図1は、積層構造で配置された電気化学電池を示しているが、本発明の原則を利用することにより、いろいろな構造において、いろいろな電気化学電池の構成を組み立てることができることは理解されるべきである。例えば、図2は、円筒として構成した電気化学電池の断面図を示している。図2の態様では、電池100は、電極130、電解質140、および電極150を含んでいる。いくつかの態様では、電極130がアノードを含み、電極150がカソードを含んでもよく、あるいは別の態様では、その順番を逆にしてもよい。必要に応じて、電池は、固体または中空であるコア170を含んでもよく、あるいは溝または溝群を含んでもよい。電池100は、活性表面132と152も含む。必要に応じて、いくつかの態様では、電池は容器構造体156を含んでもよい。図2に示すように、電極130はコア170の上に形成され、電解質140は電極130の上に形成され、電極150は電解質140の上に形成されている。しかしながら、いくつかの態様では、電極130はコア170に最も近く、電解質140は電極130に最も近く、および/または電極150は電解質140に最も近く、必要に応じて部材間に1つまたは複数の介在部を含んでもよい。ある一連の態様では、電極130は少なくとも部分的にコア170を囲んでもよく、電解質140は少なくとも部分的に電極130を囲んでもよく、および/または電極150は少なくとも部分的に電解質140を囲んでもよい。本明細書で用いているように、もし第2の部分だけを通って第1の部分の周囲に閉じたループが引けるのであれば、第1の部分は第2の部分によって「少なくとも部分的に囲まれており」、第2の部分によって第1の部分が必ず完全に包みこまれることを意味しない。
【0093】
別の一連の態様では、図3に示すように、電気化学電池は、卷回された積層体の形状である。図3に示された電池200は、アノード230とカソード250を分離する電解質240を含んでいる。図3の電気化学電池は、矢印260に平行に3回卷回された面を含む電解質を含んでいる。別の態様では、電気化学電池は、矢印260に平行な何回か卷回された面を含む電解質を含んでいる。必要に応じて、電池は、いくつかの態様では、容器構造体256を含んでもよい。図1から3に示す形状に加えて、本明細書に記載された電気化学電池は、限定されるものではないが、角柱(例えば、三角柱、四角柱等)、「スイスロール」、非平面積層体等を含む別の形状であってもよい。追加の構造は、2006年4月6日に出願された、Affinitoらの名称が「再充電可能なリチウム電池を含む、水系および非水系電気化学電池における電極保護」である米国特許出願第11/400,025号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0094】
本明細書に記載された電極を用いる電気化学電池は、優れた特性を達成することができる。いくつかの態様では、電気化学電池は、高い電極活性種利用率を示す。本明細書で用いる「利用率」は、電池の中の電極活物質(例えば、カソード活物質としての硫黄)が、反応して所望の反応生成物を形成するまでの範囲を意味し、それにより電気化学特性(放電容量で測定される)が向上する。例えば、電池の中のすべての硫黄が、所望の反応生成物に完全に変換された時(例えば、硫黄が活性カソード物質の場合のS2−)、電気化学電池は、電池のすべての硫黄を100%利用したと言い、電池の中の全硫黄の理論放電容量としては、1672mAh/gが得られる。「硫黄」が典型的な電極活物質として用いられている場合(例えば、カソード活物質)であればどこでも、使用に適した他の電極活物質は本発明で置き換えることができる。電極活物質の理論容量は次の式で計算することができる。
【0095】
【数3】
【0096】
ここで、
Q=理論容量、Ah/g(アンペア アワー パー グラム)
n=所望の電気化学反応に含まれる電子の数
F=96485C/等量
M=電極活物質の分子量、グラム
3600=1時間の秒数
当業者は活物質の理論容量を計算し、その値を特定の材料の実験活物質容量値と比較し、実験容量値が、理論容量値の少なくともかなりのパーセント(例えば、60%)、またはそれを超えるかどうかを決定することができる。例えば、元素硫黄(S)がカソード活物質として用いられ、S2−が所望の反応生成物である場合、理論容量は1672mAh/gである。すなわち、電池の中に全硫黄として1672mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は100%であり、電池の中に全硫黄として1504.8mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は90%であり、電池の中に全硫黄として1003.2mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は60%であり、電池の中に全硫黄として836mAh/gを生成させた場合、電池の全硫黄の利用率は50%であると、言える。
【0097】
いくつかの態様では、カソードとアノードにより囲まれている電池の領域の中の硫黄(または他の活物質)の量(「利用可能な」硫黄)を、電池の中の全硫黄の量よりも少なくすることが可能である。いくつかの例では、アノードとカソードにより囲まれた領域と、カソードとアノードで囲まれていない領域の両方に電解質を配置してもよい。例えば、加圧下での放電/充電サイクル時に、アノードとカソードに囲まれた領域にある未反応種を、拡散または電解質の移動のいずれかにより、運び出すことが可能である。この「利用可能」電極活物質に基づいて表される利用率は、カソードとアノードの間に囲まれた領域の電極活物質を所望の反応生成物(例えば、硫黄が活性カソード物質の場合のS2−)へと変換することを促進する、カソード構造体の能力の基準である。例えば、カソードとアノードの間に囲まれた領域の利用可能なすべての硫黄を、所望の反応生成物へと完全に変換させた場合、電池は利用可能な硫黄の100%利用したと言われ、利用可能な硫黄を1672mAh/g生成させる。
【0098】
いくつかの態様では、アノードとカソードで囲まれた領域の間にすべての電解質を配置するか、囲まれた領域からその外側への未反応種の移動を完全になくすかのいずれの方法で電気化学電池を設計することができる。その態様では、利用可能な硫黄のmAh/gとして表された利用率は、電池の全硫黄のmAh/gとして表された利用率と同じである。
【0099】
電極活物質(例えば、硫黄)利用率は、他の事柄の中で、電池に適用された放電電流とともに変化する。いくつかの態様では、低放電率での電極活物質利用率は、高放電率での電極活物質利用率より高いほうがよい。いくつかの態様では、電池は、少なくとも1回の充放電サイクルで電池の全活物質(例えば、硫黄)の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約92%を利用することができる。いくつかの態様では、電池は、少なくとも1回の充放電サイクルで利用可能な電極活物質(例えば、硫黄)の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約92%を利用することができる。
【0100】
いくつかの例では、本明細書に記載された電気化学電池の利用率は、比較的多い充放電サイクル数において比較的高くてもよい。本明細書で用いている「充放電サイクル」は、電池が0%から100%の充電状態(SOC)へと充電され、100%から0%SOCへと放電することを意味している。いくつかの態様では、電気化学電池は、少なくとも最初の充放電サイクル、およびその最初の充放電サイクルに続く少なくとも約1、2、10、20、30、50、75、100、125または135の充放電サイクルを通して、硫黄(例えば、電池の全硫黄、利用可能な硫黄)または別の電極活物質の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%を利用することができる。ある態様では、本発明の電気化学電池は、少なくとも約100mA/g硫黄(例えば、放電電流が、100〜200mA/g、200〜300mA/g、300〜400mA/g、400〜500mA/g、または100〜500mA/g)のかなり高い放電電流で放電した場合、最初の充放電サイクルに続いて少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも75回、少なくとも100回、少なくとも125回、または少なくとも135回、充放電を繰り返すことができ、その時、各サイクルでの硫黄利用率(1672mAh/g硫黄(例えば、電池の全硫黄、利用可能硫黄)に対するサイクルの放電段階での出力の比として測定する)または他の電極活物質の利用率が、少なくとも約40〜50%、少なくとも約50〜60%、少なくとも約40〜60%、少なくとも約40〜80%、少なくとも約60〜70%、少なくとも約70%、少なくとも約70〜80%、少なくとも約80%、少なくとも約80〜90%、または少なくとも約90%である。
【0101】
本明細書に記載された電気化学電池のいくつかは、比較的多い充放電サイクル数でも容量を維持している。例えば、いくつかの例では、最初の充放電サイクルに続く、少なくとも約2回、少なくとも約10回、少なくとも約20回、少なくとも約30回、少なくとも約50回、少なくとも約75回、少なくとも約100回、少なくとも約125回、または少なくとも約135回のサイクルを通して、電気化学電池の容量の減少は、1回の充放電サイクル当たり、約0.2%より小さい。
【0102】
いくつかの態様では、本明細書に記載された電気化学電池は、電池の繰り返しサイクル後でも、比較的高い容量を示す。例えば、いくつかの態様では、電池に対して交互に充電と放電を3回行った後、電池は、3回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。いくつかの例では、電池に対して交互に充電と放電を10回行った後、電池は、10回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。さらに別の例では、電池に対して交互に充電と放電を25回行った後、電池は、25回目のサイクル終了時、電池の最初の容量の、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を示す。
【0103】
いくつかの態様では、本明細書に記載された電気化学電池は、サイクル数が多くても、比較的高い充電効率を達成できる。本明細書で用いているように、N回目の「充電効率」は、(N+1)回目の放電容量をN回目(Nは整数)の充電容量で割ることにより計算でき、パーセントで表される。いくつかの例では、最初のサイクルの、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または少なくとも約99.9%の充電効率を達成できる。いくつかの態様では、最初の充放電サイクルに続く、10回目、20回目、30回目、50回目、75回目、100回目、125回目、または135回目のサイクルにおいて、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または少なくとも約99.9%の充電効率を達成できる。
【0104】
本明細書に記載された電気化学電池は、いくつかの例では、比較的高い放電電流密度で運転できる。本明細書で用いている「放電電流密度」は、電極間に流れる放電電流を意味し、該放電電流を、電流が流れる電極の面積であって、電流の向きに対して垂直な部分を測定して得られる面積で割ることにより得られる。放電電流密度を得る目的のためには、電極の面積は、電極の全露出面積を含まず、むしろ、電流の向きに対して垂直な電極表面に沿って引かれた架空の平面を意味する。いくつかの態様では、カソード表面に対し、少なくとも約0.1mA/cm2、少なくとも約0.2mA/cm2、少なくとも約0.4mA/cm2、またはそれよりも大きな放電電流密度で電気化学電池を運転できる。本明細書に記載された電池は、いくつかの例では、活物質の単位質量当たりの放電電流が高い値でも運転してもよい。例えば、電極の活物質(例えば、カソードの硫黄)の単位グラム当たりの放電電流は、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500mA、またはそれより高い値でもよい。
【0105】
いくつかの態様では、装置の特性を向上させるために力を加えることのできる電気化学装置を含んでもよい。例えば、力は、電極の導電材(例えば、カソードのカーボン)間の導電性を向上させる。いくつかの例では、電気化学電池に力を加えると、1つまたは複数の電極の1つまたは複数の表面のでこぼこの量を減らすことができ、それにより、電池のサイクル寿命と特性を向上させることができる。異方的な力が電気化学電池に加えられている間(例えば、電池の充電および/または放電の間)、電極特性(例えば、多孔度、ポアサイズ分布等)および/または上記の特性計量学が、単独にあるいはそれぞれを組み合わせることにより達成できる。異方的な力の強度は、以下に説明する範囲のいずれかに含まれる。
【0106】
いくつかの態様では、装置の特性を向上させるために力を加えることができる。いくつかの態様では、力は、アノードの活性面に対して垂直な成分を含む異方的な力を含んでいる。平面の場合、力は、該力が適用される点において表面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を含んでもよい。例えば、図1を参照すると、力は、矢印60の方向に加えられている。矢印60は、アノード50の活性面52に垂直な力の成分を示している。曲面の場合、例えば、凹面または凸面の場合、力は、該力が適用される点において曲面に接する平面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を含んでもよい。図2に示す円筒状の電池を参照すると、電池の外表面に対して、力が、例えば、矢印180の方向に加えられる。いくつかの態様では、アノードの活性面に対して垂直な成分を含む異方的な力が、電気化学電池の充電および/または放電時に、少なくとも1回の一定時間に加えられる。いくつかの態様では、1回の一定時間を超えて連続して、あるいは多数回の一定時間を継続的および/または周期的に変化させて力を加えてもよい。いくつかの例では、1つまたは複数の所定位置に、必要に応じてアノードの活性表面全面に分散させた位置に異方的な力を加えてもよい。いくつかの態様では、アノードの活性表面全面に均一に異方的な力を加える。
【0107】
「異方的な力」は通常の意味であり、すべての方向に対して均等でない力を意味している。すべての方向に均等な力とは、例えば、流体または材料内の、流体または材料の内圧であり、例えば、物体の内部ガス圧である。すべての方向に対して均等でない力の例には、特定の方向に向けられた力が含まれ、例えば、テーブル上の物品による力であって、その物品の重力によりテーブルに加えられる力である。異方的な力の別の例には、物品の周囲に配置されたバンドによる力も含まれる。例えば、物品が包装される時には、物品の周囲にはゴムバンドまたは引き締めネジからの力が加わる。しかしながら、バンドと接触していない物品の外表面のいずれに対しても、バンドは直接力を加えることはない。さらに、第2の軸よりも第1の軸に沿ってバンドが大きく引っ張られた時、第2の軸に平行な方向よりも第1軸に平行な方向に対して大きな力をバンドは加えることができる。
【0108】
表面に対して「垂直な成分」を持つ力は、例えばアノードの活性面の場合、当業者が理解するであろう通常の意味であり、例えば、表面に対して実質的に垂直な方向に、少なくとも一部が加えられる力を含んでいる。例えば、テーブル上に物品が載せられている水平テーブルであって、重力のみの影響を受ける場合、その物品は、テーブルの表面に実質的に完全に垂直な力を加える。もし物品が、水平なテーブル表面を横切って横方向に移動させられたとしても、水平表面に対して完全に垂直ではないが、テーブル表面に対して垂直な成分を含む力をテーブルに対して加えている。当業者は、これらの事項に関する他の例についても、特に本書類の記載の範囲で適用できるよう理解できる。
【0109】
いくつかの態様では、電気化学電池の断面を規定する平面内のすべての方向で力の強さが実質的に均等であるように異方的な力を加えることができるが、平面外の方向の力の強さは、平面内の力の強さと実質的に同じではない。例えば、図2を参照すると、電池の中心軸の方向(点190で示され、断面模式図の表面の中および外側に延在する)に電池を向けるように力(例えば、力180)を加えるために、電池100の外側に円筒状バンドを配置してもよい。いくつかの態様では、電池の中心軸方向に向けられる力の強さは、平面外の方向(例えば、中心軸190に平行)に加えられる力の強さとは異なる(例えば、より大きい)。
【0110】
ある一連の態様では、本発明の電池が組み立てられ、使用のために配置されるが、電池の充電および/または放電の間、少なくとも1回の一定時間の間、アノードの活性面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を加える。当業者であれば、この意味を理解するであろう。その方法では、電池は容器の一部として作製されてもよく、該容器は、電池を組み立てる間または組み立てた後に適用される、あるいは電池自身の1つまたは複数の部分の膨張および/または収縮の結果として電池の使用時に適用される「負荷」としてその力を加える。
【0111】
適用される力の強さは、いくつかの態様では、電気化学電池の特性を向上させるのに十分な大きさである。アノードの活性表面と異方的な力は、いくつかの例では、一緒に選択されるが、それは異方的な力が充電と放電を通してアノードの活性表面の表面形態に影響を与えて、アノードの活性表面の増加を抑制するからであり、異方的な力が存在しない以外は実質的に同じ条件下では、充電と放電のサイクルを通してアノードの活性表面は大きく増加する。この文脈において、「実質的に同じ条件」とは、力の適用および/または力の強さ以外は同様または同じ条件を意味している。例えば、それ以外は同じ条件とは、電池は同じであるが、対象電池に異方的な力を加えられるように電池が組み立てられていないこと(例えば、ブラケットまたは他の接続部品により)を意味している。
【0112】
本明細書に記載されている効果を達成するために、電極材料または電極構造体および異方的な力を、当業者は一緒に選択できる。例えば、電極が比較的柔らかい場合、活性なアノード表面に垂直な力の成分は、小さくなるように選択してもよい。電極がより硬い場合には、活性なアノード表面に垂直な力の成分は、大きい方がよい。当業者は、公知または予測可能な特性を持つ、電極の材料、合金、混合物等を容易に選択することができ、あるいはそれらの表面の硬さまたは柔らかさを容易に試験することができ、そして本明細書に記載されている目的を達成するために適切な力を加えることができるように電池の組み立て技術および電池の構成を容易に選択することができる。電池のサイクルがない場合(電池のサイクリング時の選択される組み合わせの予測のため)、あるいは電池のサイクリングを行って選択についての結果を観察する場合において、表面に対する力の形態的効果を決定するために、簡単な試験を行うことができ、例えば、一連の活物質を配置し、各活物質の活性表面に対して一連の垂直な力(または垂直成分)を加えることができる。
【0113】
いくつかの態様では、電池の充電時および/または放電時の少なくとも1回の一定時間の間、異方的な力がない場合の表面積の増加に比べて、アノード活性表面の表面積の増加を抑制できる程度まで、アノードの活性表面に対して垂直な成分を持つ異方的な力を加える。アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、例えば、少なくとも約4.9、少なくとも約9.8、少なくとも約24.5、少なくとも約49、少なくとも約78、少なくとも約98、少なくとも約117.6、少なくとも約147、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、または少なくとも約250N/cm2の圧力を持ってもよい。いくつかの態様では、アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、例えば、少なくとも約250より小さい、少なくとも約225より小さい、少なくとも約196より小さい、少なくとも約147より小さい、少なくとも約117.6より小さい、少なくとも約98より小さい、少なくとも約49より小さい、少なくとも約24.5より小さい、少なくとも約9.8N/cm2より小さい圧力を持ってもよい。いくつかの例では、アノード活性表面に垂直な異方的な力の成分は、圧力が、約4.9〜約147N/cm2、約49〜約117.6N/cm2、約68.6〜約98N/cm2、約78〜約108N/cm2、約4.9〜約250N/cm2、約49〜約250N/cm2、約80〜約250N/cm2、約90〜約250N/cm2、または約100〜約250N/cm2である。本明細書では、力と圧力は、それぞれNとN/cm2で記載されているが、力と圧力は、それぞれ、kgfとkgf/cm2で表現してもよい。当業者は、kgf系の単位に馴染んでいるので、1kgfが約9.8Nに相当することは理解するであろう。
【0114】
いくつかの態様では、外から圧力を加えることにより(いくつかの態様では、単軸)、サイクリング時に(例えば、リチウムの場合、リチウムのコケのようなまたは粗い表面が減少または抑制される)、電極層の表面を向上させることができる。いくつかの態様では、外から加える力は、電極材料層を形成する材料の降伏応力よりも大きくなるように選択される。例えば、リチウムを含む電極材料の場合、電池に外からの異方的な力を加えてもよく、該力は、少なくとも約8kgf/cm2、少なくとも約9kgf/cm2、または少なくとも約10kgf/cm2の圧力を規定する成分を持っている。そのため、この値よりも大きな圧力(例えば、単軸圧力)では、こけのようなLi、または表面粗さが減少または抑制される。リチウムの表面粗さは、それに圧力を加えている表面に似てもよい。したがって、外からの圧力が、少なくとも約8kgf/cm2、少なくとも約9kgf/cm2、または少なくとも約10kgf/cm2の下でサイクリングを行うと、圧力を加えている表面が平坦であると、リチウムの表面もサイクリングとともに、より平坦になる。本明細書に記載されているように、アノードとカソードの間に配置される材料を適切に選択することにより、圧力を加える表面を改質することができる。例えば、いくつかの例では、圧力を加えながら、本明細書に記載されている非導電性材料層を用いることにより、リチウム表面の平坦性(または他の活性電極材料の表面)を増加させることができる。
【0115】
いくつかの例では、電池に加えられた1つまたは複数の力は、アノードの活性表面に対して垂直でない成分を含んでいる。例えば、図1では、力60はアノード活性表面52に対して垂直ではなく、力60は成分64を含み、それはアノード活性表面52に対して実質的に平行である。さらに、力66はアノード活性表面52に対して実質的に平行であり、いくつかの例では、電池に加えられる。ある一連の態様では、アノード活性表面に垂直な方向に加えられたすべての異方的な力の成分の合計は、アノード活性表面に対して垂直でない方向の成分の合計よりも大きい。いくつかの態様では、アノード活性表面に垂直な方向に加えられたすべての異方的な力の成分の合計は、アノード活性表面に平行な方向の成分の合計よりも、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%大きい。
【0116】
いくつかの態様では、カソードとアノードは降伏応力を有し、カソードとアノードの一方の有効降伏応力は、他方の降伏応力よりも大きく、アノードの活性表面とアノードの活性表面の一方の表面に垂直に加えられた異方的な力が、カソードとアノードの一方の表面形態に影響を与える。いくつかの態様では、活性アノード表面に垂直な異方的な力の成分は、アノード材料の降伏応力の約20%と約200%の間、アノード材料の降伏応力の約50%と約120%の間、アノード材料の降伏応力の約80%と約120%の間、アノード材料の降伏応力の約80%と約100%の間、アノード材料の降伏応力の約100%と約300%の間、アノード材料の降伏応力の約100%と約200%の間、またはアノード材料の降伏応力の約100%と約120%の間である。
【0117】
本明細書に記載された異方的な力を、公知の方法を用いて加えてもよい。いくつかの態様では、圧縮ばねを用いて力を加えてよい。力は他の手段を用いて加えてもよく(容器構造体の内側または外側のいずれか)、限定されるものではないが、該他の手段には、中でも、皿バネ、機械バネ、空気力装置および/または錘が含まれる。いくつかの例では、電池は、容器構造体の中に挿入される前に予め圧縮されてもよく、そして容器構造体に挿入されると、それらは膨張し電池に対して正味の力を発生させる。その力を加える適切な方法については、2008年8月5日に出願されたScordilis−Kelleyらの名称が「電気化学電池における力の適用」である米国仮出願第61/086,329号、および2009年8月4日に出願されたScordilis−Kelleyらの名称が「電気化学電池における力の適用」である米国特許出願第12/535,328号に詳しく記載されている。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に記載の力の適用により、電気化学電池内のアノード活物質(例えば、リチウム)および/または電解質の使用量を、力を加えない以外は実質的に同じ電池に使用されている量に比べて、より少なくすることができる。本明細書に記載の力を加えない電池では、活性アノード材料(例えば、金属リチウム)が、いくつかの例では、電池の充電―放電サイクルの間にアノード上に不均一に再堆積し、粗い表面を形成する。いくつかの例では、これにより、アノード金属が関係する1つまたは複数の好ましくない反応の割合が増加する。これらの好ましくない反応は、多数の充放電サイクルの後、追加の活性アノード材料が使い尽くされることがなく、電池が残りの活物質で機能するように、自己阻害を固定化および/または開始する。本明細書に記載の力を加えない電池では、アノード活物質の大部分の量が使用され、電池特性が低下した後にのみ、この「安定化」の状態にたびたび至る。したがって、本明細書に記載された力が適用されないいくつかの例では、電池特性を維持するために、活物質が消耗した時、その損失を補うために、電池の中に比較的大量のアノード活物質および/または電解質が組み入れられた。
【0119】
したがって、本明細書に記載された力を適用することは、活物質の消耗を低減および/または防止し、大量のアノード活物質および/または電解質の電気化学電池内への包含を不要にできる。例えば、電池を使用する前、あるいは電池の耐用期間の早い時期に(例えば、充電―放電サイクルが5回より少ない)力を加えると、電池の充電または放電に伴う活物質の消耗がほとんどあるいは実質的に発生しない。電池の充電―放電時の活物質の損失を補うことの必要性を低減および/または抑制するために、比較的少量のアノード活物質を用いて本明細書に記載された電池と装置を作製できる。いくつかの態様では、本発明は、その耐用期間において5回より少ない回数の充電と放電がされた電気化学電池を含み、該電池は、アノード、カソード、および電解質を含み、該アノードは電池の1回の完全放電サイクルでイオン化できるアノード活物質の5倍を超えないアノード量を含む。いくつかの例では、アノードは、電池の1回の完全放電サイクルでイオン化できるリチウムの量の4倍、3倍、2倍、または1.5倍を超えないリチウム量を含む。
【0120】
いくつかの例では、本明細書に記載された装置は、電気化学電池を含み、該電池は、アノード活物質、カソード活物質、および電解質を含み、アノード中のアノード活物質量のカソード中のカソード活物質量に対する比率が、モル比で約5:1より小さく、約3:1より小さく、約2:1より小さく、または約1.5:1より小さい。例えば、電池は、アノード活物質としてリチウム、カソード活物質として硫黄を含み、Li:Sのモル比が、約5:1より小さく、約2:1より小さく、または約1.5:1より小さい。いくつかの態様では、アノード活物質(例えば、リチウム)のカソード活物質に対する比率が重量比で、約2:1より小さく、約1.5:1より小さく、約1.25:1より小さく、または約1.1:1より小さい。例えば、電池は、アノード活物質としてリチウム、カソード活物質として硫黄を含んでもよく、Li:Sの比率は、重量比で、約2:1より小さく、約1.5:1より小さく、約1.25:1より小さく、または約1.1:1より小さい。
【0121】
活物質および/または電解質材料の量を少なくできると、電気化学電池またはその一部の厚みを減らすことが好適に可能となる。いくつかの態様では、アノード層と電解質層の最大厚さは合わせて約500ミクロンである。いくつかの例では、アノード層および電解質層の最大厚さは合わせて約400ミクロン、約300ミクロン、約200ミクロン、約100ミクロン、約50ミクロン、またはいくつかの例では約20ミクロンである。
【0122】
本明細書に記載されたアノードは、いろいろな電気活性材料を含んでもよい。本明細書に記載された電気化学電池のアノードのアノード活物質としての使用に適した電気活性材料には、限定されるものではないが、リチウム箔、導電性基材の上に付着させたリチウム、およびリチウム合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−スズ合金)が含まれる。これらは好ましい負極材料であるが、集電体には別の電池材料を用いることもできる。いくつかの態様では、アノードは、1つまたは複数のバインダー材料を含んでもよい(例えば、ポリマー)。
【0123】
いくつかの態様では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、50重量%を越えるリチウムを含んでいる。いくつかの例では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、75重量%を越えるリチウムを含んでいる。さらに別の態様では、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料が、90重量%を越えるリチウムを含んでいる。
【0124】
正極および/または負極は、適切な電解質と好ましく相互作用する1つまたは複数の層を必要に応じて含んでいてもよく、それらの層については、2009年5月26日に出願された、Mikhaylikらの名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0125】
電気化学電池または二次電池に用いられる電解質は、イオンの貯蔵と移動のための媒体として機能し、特別の場合には固体電解質またはゲル電解質であり、これらの材料は、アノードとカソードとの間のセパレータとしてもさらに機能する。アノードとカソードの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の移動を促進する限り、該材料には、イオンを貯蔵および移動させることのできる、いろいろな液体、固体、またはゲルを用いることができる。電解質は非電子伝導性であり、アノードとカソードの間の短絡を防止する。いくつかの態様では、電解質は非固体電解質を含んでもよい。
【0126】
いくつかの態様では、電解質は、作製プロセスのいずれかの時点で添加可能な流体を含んでいる。いくつかの例では、カソードとアノードを用意し、アノードの活性面に対して垂直な異方的な力成分を加え、次に電解質がカソードおよびアノードと電気化学的に連絡できるように流体電解質を添加することにより、電気化学電池が作製されてもよい。別の例では、異方的な力成分を加える時よりも前あるいは後に、流体電解質を電気化学電池に添加してもよく、その後、電解質はカソードおよびアノードと電気化学的に連絡できる。
【0127】
電解質は、イオン導電性を付与する1つまたは複数の電解質塩と、1つまたは複数の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を含むことができる。適切な非水系電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1つまたは複数の材料を含む有機電解質を含んでもよい。リチウム電池用の非水系電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Dornineyによる「リチウムバッテリー、新素材、開発および展望」の第4章、137〜165頁に記載されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、アムステルダムのエルゼビアから1994年に発行された、Alamgirらによる「リチウムバッテリー、新素材、開発および展望」の第3章、93〜136頁に記載されている。本明細書に記載されたバッテリーに使用される混成(Heterogeneous)電解質組成物は、2009年5月26日に出願されたMikhaylikらの名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号に記載されており、出典明示によりそのすべての内容は本明細書の一部となる。
【0128】
有用な非水系液体電解質溶媒の例には、限定されるものではないが、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前述の溶媒の置換体、およびそれらの混合物が含まれる。前述の溶媒のフッ素化誘導体も液体電解質溶媒として有用である。
【0129】
ある例では、水系溶媒をリチウム電池の電解質として用いることができる。水系溶媒は、水を含み、水はイオン性塩等の他の成分を含むこともできる。ある態様では、電解質は、電解質中の水素イオン濃度を減らすために、水酸化リチウム、または電解質を塩基性にする他の成分を含むこともできる。
【0130】
液体電解質溶媒は、ゲルポリマー電解質、すなわち半固体ネットワークを形成する1つまたは複数のポリマーを含む電解質のための可塑剤としても有用である。有用なゲルポリマー電解質の例は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ化膜(ナフィオン樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの共重合体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物、および必要に応じて1つまたは複数の可塑剤からなる群から選択される1つまたは複数のポリマーを含むゲルポリマー電解質を含んでいる。ある態様では、ゲルポリマー電解質は、体積%で、混成電解質を10〜20%、20〜40%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、または90〜95%含む。
【0131】
ある態様では、1つまたは複数の固体ポリマーが、電解質を形成するために用いられる。有用な固体ポリマー電解質の例には、限定されるものではないが、ポリエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、前述のポリマーの誘導体、前述のポリマーの架橋構造体およびネットワーク構造体、および前述のポリマーの混合物からな
【0132】
電解質溶媒、ゲル化剤、電解質を作製するための公知のポリマーに加えて、電解質は、イオン導電性を増加させるために、公知の1つまたは複数の電解質塩をさらに含んでもよい。
【0133】
本発明の電解質に用いるイオン性電解質塩の例には、限定されるものではないが、LiSCN,LiBr,LiI,LiClO4,LiAsF6,LiSO3CF3,LiSO3CH3,LiBF4,LiB(Ph)4,LiPF6,LiC(SO2CF3)3,およびLiN(SO2CF3)2が含まれる。有用な他の電解質塩には、ポリスルフィド、および有機イオン性ポリスルフィド(LiSxR)nが含まれ、ここでxは1〜20の整数、nは1〜3の整数、Rは有機基で、Leeらの米国特許第5,538,812号に記載されているものである。
【0134】
いくつかの態様では、電気化学電池は、カソードとアノードとの間に挿入されたセパレータをさらに含んでもよい。セパレータは、固体の非導電性または絶縁性の材料であり、アノードとカソードを互いに分離または絶縁して短絡を防止するとともに、アノードとカソードの間のイオンの移動を可能にする。いくつかの態様では、多孔質セパレータは、電解質に対して透過性を有する。
【0135】
セパレータのポアは、電解質により一部または大部分が満たされていてもよい。セパレータは、多孔質の自立フィルムとして供給されてもよく、該フィルムは電池作製時にアノードとカソードの間に挿入される。あるいは、例えば、CarlsonらのPCT国際公開第WO99/33125号およびBagleyらの米国特許第5,194,341号に記載されているように、セパレータ層が1つの電極の表面に直接適用されてもよい。
【0136】
種々のセパレータ材料が公知である。適切な固体多孔質セパレータ材料の例には、限定されるものではないが、例えばポリエチレン(例えば、東燃化学製の登録商標セテラ(SETELA)やポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラスファイバーろ紙、およびセラミック材料が含まれる。例えば、いくつかの態様では、セパレータはマイクロポーラスポリエチレンフィルムを含む。本発明での使用に適したセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、マイクロポーラスなキセロゲル、例えば、マイクロポーラス疑似ベーマイト層を含み、共同譲受人であるCarlsonらの米国特許第6,153,337号および第6,306,545号に記載されているように、それは自立フィルムとしてまたは電極の1つに直接コーティングすることにより得られる。固体電解質およびゲル電解質は、電解質機能だけでなく、セパレータとして機能してもよい。
【0137】
以下の文献は、あらゆる目的で出典明示によりすべてその内容が本明細書に組み入れられる:2009年8月28日に出願され、名称が「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」である米国特許仮出願第61/237,903号;2001年5月23日に出願され、名称が「電気化学電池用リチウムアノード」である米国特許第7,247,408号;1996年3月19日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,648,187号;1997年7月7日に出願され、名称が「リチウム−ポリマー二次電池用安定化アノード」である米国特許第5,961,672号;1997年5月21日に出願され、名称が「新規複合カソード、新規複合カソードを含む電気化学電池、およびその作製方法」である米国特許第5,919,587号;2006年4月6日に出願され、出願番号が米国特許出願第11/400,781号で、名称が「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気二次電池」である米国特許出願公開第2007−0221265号;2008年7月29日に出願され、名称が「リチウム二次電池の膨張抑制」である国際特許出願第PCT/US2008/009158号;2009年5月26日に出願され、名称が「電解質の分離」である米国特許出願第12/312,764号;2008年10月23日に出願され、名称が「二次電池電極用プライマー」である国際特許出願第PCT/US2008/012042号;2008年2月8日に出願され、名称が「エネルギー貯蔵装置用保護回路」である米国特許出願第12/069,335号;2006年4月6日に出願され、名称が「再充電可能なリチウム二次電池を含む、水系および非水系電気化学電池における電極保護」である米国特許出願第11/400,025号;2007年6月22日に出願され、名称が「リチウム合金/硫黄二次電池」である米国特許出願第11/821,576号;2005年4月20日に出願され、名称が「リチウム硫黄再充電可能二次電池残量ゲージシステムおよび方法」である米国特許出願第11/111,262号;2007年3月23日に出願され、名称が「重合性モノマーと非重合性キャリア溶媒/塩混合物/溶液の共フラッシュ蒸留」である米国特許出願第11/728,197号;2008年9月19日に出願され、名称が「リチウム二次電池用添加物および関連する方法」である国際特許出願第PCT/US2008/010894号;2009年1月8日に出願され、出願番号が国際特許出願第PCT/US2009/000090号で、名称が「多孔質電極および関連する方法」である;
2009年8月4日に出願され、名称が「電気化学電池における力の適用」である米国特許出願第12/535,328号;2010年3月19日に出願され、名称が「リチウム二次電池用カソード」である米国特許出願第12/727,862号;2009年5月22日に出願され、名称が「密封サンプルホルダーおよび制御された雰囲気環境下での微量分析の実施方法」である米国特許出願第12,471,095号;本件と同日に出願された米国特許出願で、名称が「電気化学電池の剥離システム」(該出願は、2009年8月24日に出願され、米国仮出願番号が第61/236,322号であり、名称「電気化学電池の剥離システム」に対して優先権を主張する);本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池の分離」である米国特許仮出願;本件と同日に出願され、名称が「電気化学電池」である米国特許出願;本件と同日に出願された3件の米国出願で、名称が「硫黄含有多孔質構造体を含む電気化学電池」である米国特許出願。
【実施例】
【0138】
以下の実施例は、本発明のある態様を示すことを目的とするものではあり、限定するものと解釈されるべきではなく、および本発明の全範囲を例示するものでもない。
【0139】
実施例1.
本実施例は、硫黄含有粒子が付着している多孔質支持構造体を含むカソードの作製および試験について記載している。100gの元素硫黄(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)を、冷却管を取り付けた丸底フラスコの中のトルエン(アルドリッチ社製)1200mLの中に溶解した。100gのプリンテックス(Printex)(登録商標)XE−2(オハイオ州アークロンのデグサ社から入手できるカーボン顔料)導電性カーボン(表面積800〜1000m2/g、吸収スティフネス350〜410mLジブチルフタレート(DBP)/100gXE−2)を溶液に添加した。溶液はカーボンにより速やかに吸収された。2,3時間攪拌した後、溶液を室温まで冷却した。硫黄のトルエンに対する溶解性な低い(84mM)。冷却後、硫黄はカーボンポアの中に結晶化し、過剰のトルエンは濾別した。
【0140】
その硫黄含有材料を乾燥し、重量比1:1であるイソプロパノールと水の混合物に溶解させたポリビニルアルコールバインダー(セラニーズ社のセルボル425)の適当量と混合した。そのカソードスラリーを、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材(オールホイル(ALL Foils)社製 厚さ7μm)の上に塗布した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約110ミクロンであった。得られたカソードは、塗布が容易で、図4Aに示すように、粒子状硫黄が均一に分散し、均一な多孔度を有していた。
【0141】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil)、ノースカロライナ州、キングズマウンテン、ケメタールフット(Chemetall−Foote)社製)をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、(リチウムイミドはミネソタ州、セントポール、3M社から入手できる)、硝酸リチウム 3.8部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)、硝酸グアニジン 1部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9μmのセテラ(日本、東京の東燃化学社から、またはニューヨーク州、ピッツフォード、モービル化学社フィルム部門から入手できる)を含む多孔質セパレータをアノードとカソードの間に配置した。アノード、カソード、セパレータ、および電解質を積層して、6×(カソード/セパレータ/アノード)の層状構造体とし、2枚の平行板の間に挟んで、196N/cm2(約20kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質がセパレータとカソードの空隙を埋めて電極面積が100cm2の角柱状電池を作製した。封止後、電池を24時間保存した。充電−放電サイクルを、それぞれ40mAと25mAで行った。放電時のカットオフ電圧は1.7V、充電時のカットオフ電圧は2.5Vであった。図5Aは、サイクル数に対する複合電極(星印で示す)の比放電容量のプロットを含んでいる。図5Bは、Cレートに対する、最初の最大値に対するパーセントで表された電池の容量(星印で示す)のプロットを含んでいる。多数回サイクルを繰り返しても、比放電容量は、比較的高い値を維持していた。さらに、比較的高いCレートでも、電池は比較的高い容量を維持していた。
【0142】
比較例1.
本比較例は、硫黄とカーボンの機械的混合物を含むカソードの作製と試験について記載している。第1の試みは、混合物中のカーボン−硫黄比が1:1を含んでいる。しかし、1:1混合物は、コーター上に有効に付着しなかった。次の実験は、元素硫黄(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社製) 55部、導電性カーボン顔料プリンテックス(登録商標)XE−2 40部、およびポリビニルアルコールバインダー5部を含む混合物から、カソードを調製した。この混合物を、重量比1:1のイソポロパノールと水の混合物の中に溶解した。その溶液を、厚さ7ミクロンの、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材の上に塗布した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約90ミクロンであった。得られたカソードは、図4Bに示すように、大きな硫黄粒子とカーボン凝集体が存在して不均一であった。
【0143】
実施例1に記載された方法に基づき、試験のために、カソードを含む電気化学電池を組み立てた。図5Aは、サイクル数に対する、機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の比放電容量のプロットを含んでいる。図5Bは、Cレートに対する、最初の最大値に対するパーセントで表された、機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の容量のプロットを含んでいる。機械的に混合されたカソード(菱形で示す)を含む電池の比容量は、試験サイクル数の範囲で比較的低かった。さらに、機械的に混合されたカソードを含む電池は、高いCレートでは容量が大きく低下した。
【0144】
実施例2.
本実施例は、導電性カーボンを含む多孔質支持材料の中に硫黄を付着させるための熱的プロセス方式の使用について記載している。以下の導電性カーボンが試験された:プリンテックスXE−2、バルカン(Vulcan)XC72R(テキサス州、タンパ、カボット社)、およびSAB(テキサス州、ウッドランド、シュブロン フィリップスから以前は入手できたシャウィニガンアセチレンブラック)。硫黄と混合する前に、減圧にした丸底フラスコの中で300〜450℃で5〜6時間、導電性カーボンを加熱した。硫黄粉末(マサチューセッツ州、ワードヒル、アルファエイサー社)と導電性カーボンは、不活性アルゴン雰囲気下で一緒に混合した。
【0145】
その混合物を、真空下、硫黄の融点を超える160℃で5〜6時間加熱し、黄色の低粘度の、S8を含む流体を得た。硫黄の融点を超えて混合物を加熱することにより、カーボン粒子のポアの中に、溶媒を用いることなく液体硫黄を付着させることができた。次に温度を250〜300℃に上げ、減圧下で4〜6時間加熱して、吸着した硫黄を重合させた。さらに、加熱は、均一な表面分布の生成に寄与した。重合工程後、複合体を速やかに冷却して、ポリマー状の硫黄およびカーボンを含む複合体を得た。
【0146】
硫黄充填カーボン複合体は、利用可能なポア体積といろいろな種類のカーボンを用いて作製したカーボンの表面積とに応じて、6:1〜1:1の範囲のS:C比で作製した。図6Aは、硫黄−カーボン複合体粒子も外表面の二次電子線像を含んでいる。図6B〜6Cは、図6Aに示す複合粒子の外表面上の(B)硫黄と(C)カーボンの分布の概要を示すX線スペクトル像である。図6Bから6Cの画像は、硫黄とカーボンが、複合体粒子の外側表面全体に均一に分布していることを示している。図6Dは、硫黄−カーボン複合体粒子の内表面の二次電子像を含んでいる。図6E〜6Fは、図6Dに示す複合粒子の内表面上の(E)硫黄と(F)カーボンの分布の概要を示すX線スペクトル像である。図6E〜6Fの画像は、硫黄とカーボンが、複合体粒子の内側表面全体に均一に分布していることを示している。
【0147】
硫黄−カーボン複合体を適当量のポリビニルアルコールまたはゼラチンB(ワイオミング州ミルウォーキーのシグマアルドリッチケミカル社製)と混合し、重量比で1:1のイソプロパノールと水の混合物に溶解させた。カソードスラリーを、導電性カーボンで被覆されたアルミ箔基材(厚さ7ミクロン)の上に、実施例1に記載したと同様の方法で塗布した。
【0148】
得られた複合カソード材料は、比較的、高密度、均一な多孔度、および均一な硫黄分布を有していた。硫黄−カーボン複合体は、延在し、清浄な硫黄−カーボン界面を有しており、該界面は構造と伝導性を促進させる上に有効である。さらに、本プロセスは、廃棄物をほとんど発生させず、機械的粉砕も不要であった。さらに、いずれかのプロセス工程で、熱−真空活性化時の種々のガスまたは蒸気により、カーボンと複合体は容易に改質することができ、機能化(例えば、金属、酸化物粉末、硫化物粉末、ナノチューブ、ポリマー巨大分子等による)のための適応性のある手段を提供する。複合体カソードは、比較的容易に塗布でき、サイクリング時には、比較的に安定で組成的に均一であった。
【0149】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil))をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、硝酸リチウム 3.8部、硝酸グアニジン 1部および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。
【0150】
上記の部材を組み立てて、カソード/セパレータ/アノードの層状構造体とし、2つの電池(bicell)を作製するために半分に折り曲げた。2つの電池を、約0.4gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、圧力を加えることなく電池を試験した。図7は、サイクル数に対する、複合体カソードを含む電池の比放電容量(星印で示す)のプロットを含んでいる。複合体カソードを含む電池は、機械的に混合されたカソードを含む電池と比べ、比較的高い放電容量を示した。
【0151】
比較例2.
本比較例は、硫黄とカーボンが1:1の比率の機械的混合物を含むカソードの作製と試験について記載している。比較例1で認められたように、1:1のカーボン−硫黄配合物は、コーター上で製造するのは非常に困難であった。本比較例では、ハンドドローダウンコーティングを用いた。この方法で作製された電極は、実施例2に記載された複合構造体の場合と比べて、2桁を越えて強度が低かった。さらに、ハンドドローダウンコーティングは塗布するのがより困難であり、実施例2に記載された複合体に比べて、サイクル時における組成の不安定性が比較的大きかった。
【0152】
図8Aと8Bは、それぞれ、未使用の複合体カソード(実施例2に記載)と機械的に混合されたカソードの二次電子像であり、それぞれS:XE2の比率が84:16である。図9A〜9Cは、複合体カソード(実施例2)中の(A)硫黄、(B)カーボン、および(C)アルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像を含んでいる。さらに、図9D〜9Fは、機械的に混合されたカソード中の(A)硫黄、(B)カーボン、および(C)アルミニウムの分布の概要を示すX線スペクトル像を含んでいる。機械的に混合されたカソードと比較して、複合体カソードでは全3元素が比較的均一に分布している。さらに、実施例2に記載された複合体カソードの領域構造体は発達しなかった。複合体カソード中の亀裂の厚さは、機械的に混合されたカソードの亀裂の2分の1であり、複合体カソードの亀裂密度は、機械的に混合されたカソードの場合に比べて非常に低かった。
【0153】
実施例2に記載された方法に基づき、試験のために、機械的に混合されたカソードを含む電気化学電池を組み立てた。図7は、サイクル数に対する、機械的に混合されたカソードを含む電池の比放電容量(四角で示す)のプロットを含んでいる。機械的に混合されたカソードを含む電池は、複合体カソードを含む電池と比べて比較的低い放電容量を示した。
【0154】
実施例3.
本実施例は、ニッケル発泡体を用いて作製されたカソードの作製および試験について記載している。ニッケル発泡体(ノバメット(Novamet)により供給されたインコフォーム(incofoam)、450ミクロンポア、密度320g/cm2)のポアに、元素硫黄 75部、プリンテックスXE−2 20部、グラファイト粉末(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社製) 4部、およびポリビニルアルコール(セラニーズ社のセルボル425) 1部を重量比1:1のイソプロパノールと水の混合物に溶解させた混合物を充填することによりカソードを作製した。混合物を添加すると、直径が10ミクロンより小さいポアがニッケル発泡体のポアの中に形成され、そこに硫黄が付着した。
【0155】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil))をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 14部、硝酸リチウム 4部を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9ミクロンのSETELA多孔質セパレータも用いた。
【0156】
上記の部材を組み立てて、カソード/セパレータ/アノードの層状構造体とし、2つの電池(bicell)を作製するために半分に折り曲げた。2つの電池を、約0.4gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、一方の半分の電池は圧力を加えることなく試験し、他方の半分の電池は2枚の平行板の間に挟んで98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質は、セパレータとカソードの空隙領域を満たし、約33cm2の電極面積を有する新しい電池を得た。放電−充電サイクルは、それぞれ、13.7mAと7.8mAで行った。放電カットオフ電圧は1.7Vで、充電カットオフ電圧は2.5Vとした。図10は、本実施例で作製したカソードを含む電気化学電池の充電−放電サイクル数に対する比放電容量のプロットを含んでいる。ニッケル発泡体電極は、40回目の充電−放電サイクルを越えた後でも、比較的高い放電容量を維持し続けた。98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を電池に加えることにより、約30回のサイクルを越えてもより一貫したサイクル特性が得られた。ニッケル発泡体の使用と加圧が、特性の低下を抑制し、サイクル寿命を延ばした。さらに、ニッケル発泡体電池の場合、分極率の増加が非常に遅くなり、特に加圧した場合に非常に遅くなった。
【0157】
比較例3.
本比較例では、元素硫黄 75部、プリンテックスXE−2 20部、グラファイト粉末 4部、およびポリビニルアルコール 1部を、イソプロパノールと水の重量比1:1の混合物に溶解した混合物を、厚さ7ミクロンの導電性カーボン被覆アルミ箔基材の上に塗布することにより作製した。乾燥後、塗布されたカソード活性層の厚さは約90ミクロンであった。実施例3の説明に基づき、電池の組み立てと試験を行った。サイクリングの結果を図10にまとめた。アルミ箔基材の上に付着させたカソードを含む電池は、ニッケル発泡体カソードを含む電池に比べて、比較的低い比放電容量を示した。
【0158】
実施例4.
本実施例は、焼結ニッケルカソードを含む電気化学電池の作製と試験について記載している。焼結ニッケルカソードを含む電池は、インコ繊維状ニッケル粉末タイプ255(インコスペシャルプロダクト)を用いて作製した。ニッケル粒子の見かけ密度は0.5〜0.65g/cm3であった。さらに、粒子の直径は、約1ミクロン〜約100ミクロンの間で、メジアン径が約20ミクロンであった。ニッケル粉を、比較的揮発し易い溶媒であるアセトンに分散させ、粉末と懸濁流体を激しく混合してスラリーを調製した。スラリーをルツボの中に注ぎ、ルツボの底面全体に均一かつ平坦にニッケル粉末が分散するようにスラリーを滑らかにした。次いで、揮発性の懸濁液流体を、室温で蒸発させると、後には、ニッケル粒子の比較的規則正しい配列が残った。
【0159】
この時点で、ニッケル粉末を焼結する準備が整った。焼結プロセスは、95%窒素と5%水素を含む還元雰囲気で行った。5℃/分の速度で800℃まで昇温し、10分保持してニッケル粉末を焼結し、発熱体を止めることにより炉の温度を下げ試料を冷却した。最終焼結構造体の厚さは、約250ミクロン、約15ミクロンを中心とするポアサイズ分布を有していた。
【0160】
次に、硫黄をニッケル多孔質支持構造体に添加した。硫黄を組み入れるために、オイルバスを用意し、85℃に加熱した。硫黄を浸したトルエンを含むビーカーを、そのバスの中に入れ、平衡状態に至らしめた。飽和溶液において、ビーカー中で第2層として固体状態で少量の硫黄が存在している状態を保つために、必要に応じて硫黄をトルエンに添加した。ビーカーの中のトルエンの体積を常にほぼ同じに保つために、必要に応じてトルエンを添加した。かなりの量の試薬(硫黄またはトルエン)を添加する度に、システムを平衡状態に至らしめた。ニッケル電極を、硫黄で飽和させてトルエン溶液に浸漬し、アルゴン流で乾燥させた。一群のすべての電極を浸漬した後、それらの電極を真空オーブン中、80℃で数時間焼いた(1時間から一晩中、14時間まで、3〜4時間が最も一般的、オーブンを開けた時に、トルエン臭がしない状態である限り大きな影響はない。)。それらの電極を秤量し、浸漬前の重量と比較して、存在する硫黄の量を決定した。硫黄の量が所望の量よりも少ない場合には、浸漬を繰り返した。硫黄の量が、電極の所望量を超えていた場合には、電極を速やかに純粋トルエン中に浸漬し、次いで前述の手順に従い焼いた。すべての電極に、1.5〜2mgS8/cm2を担持させた。最終構造体の多孔度は、一端硫黄を溶解させたニッケルを実質的に同じであった。
【0161】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。アノードは、厚さが26ミクロンの真空蒸着リチウムフィルムを含んでいた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、硝酸リチウム 4部を含んでいた。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。16ミクロンのSETELA多孔質セパレータも用いた。上記の部材を、片面アノード/セパレータ/2×(両面カソード/セパレータ/2×背中合わせのアノード/セパレータ)/両面カソード/セパレータ/片面アノードの層状構造体に組み立てた。この平坦な電池を、約0.62gの液体電解質を含む箔パウチの中に配置した。24時間放置し、電池を2枚の平行板の間に挟んで98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えた。液体電解質は、セパレータとカソードの空隙領域を満たし、約99.441cm2の電極面積を有する新しい平坦電池を得た。放電−充電サイクルは、それぞれ、40mAと25mAで行った。放電カットオフ電圧は1.7Vで、充電カットオフ電圧は2.5Vとした。
【0162】
図11は、Cレートに対する試験電池のパーセント容量のプロットを含んでいる。電池は、標準レート試験が終了する15枚目の放電まで正常に充放電サイクルが可能であった。
【0163】
比較のため、マイルストーンカソードを用いて電気化学電池を作製した。カソードが、硫黄/XE−2/バルカンXC72R/PVOHの混合物の比率が55/20/20/4であるカソードを含んでいた以外は、比較例1に記載された方法と実質的に同じ方法でマイルストーンカソードを作製した。図11に示すように、焼結ニッケルカソードを含む電池は、マイルストーンカソードを用いた電池に比べ、高いレートにおいて高いパーセント容量を示した。
【0164】
実施例5.
本実施例は、ポリマー状多孔質支持構造体を用いて作製されたカソードを含む電気化学電池の作製および試験について記載している。ポリマー状多孔質支持構造体は、ポリビニルアルコール(PVA)溶液と発泡剤として重炭酸アンモニウムを組み合わせて製造した。バルカン カーボン、TIMCAL Ks6グラファイト、およびカーボンファイバーをPVA溶液に添加し、導電性を増加させるとともに、PVAマトリックスの機械的特性を向上させるための補強材として作用させた。
【0165】
重炭酸アンモニウムをアトライターミルで予め粉砕して、粒子径を1〜2ミクロンの範囲に小さくした。イソプロピルアルコール(IPA)をこの粉砕のキャリア溶媒として用い、粉砕した重炭酸アンモニウムから減圧濾過した。IPAの最終量を除去するために、開放ナベの中で重炭酸アンモニウムを一晩乾燥させた。この一晩の乾燥の間に、重炭酸アンモニウムの約20%が昇華により失われた。
【0166】
最終的なスラリーを調製するため、バルカンXC72Rカーボンとティムカル(Timcal)KS6グラファイト(直径6ミクロンの小板)を、溶媒が水、IPA、および2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(ドワノール:ダウケミカル社製)であるPVOHの可溶性バインダー溶液とともに粉砕した。この粉砕された溶液をVKC2と呼ぶ。
【0167】
第2の粉砕工程では、VKC2溶液を、アトライターミル中で、ポリグラフ(Polygraff)PR−24カーボンファイバー(パイログラフ プロダクト社製、直径8ミクロン、長さ100〜150ミクロン)と少量の水を加えて20分間粉砕した。水は、発泡プライマーのアルミ基材(実施例1に記載されたアルミ箔基材と同じタイプ)に対する接着性を向上させるために添加した。次いで予め粉砕した重炭酸アンモニウムを、最初のプライマー固体の1部(重量)に対して重炭酸アンモニウムを8部の比率で添加した。次いでこの最終混合物を、アトライターミルから取り出す前に10分間粉砕した。
【0168】
重炭酸アンモニウムにより形成された最終的なポアサイズをさらに小さくするために、VKC2/ファイバー/重炭酸アンモニウムの混合物を、マイクロフルイダイザーに通した。単一の400ミクロンチャンバーを用い、排出圧は5kpsiとした。
【0169】
調製したのと同じ日に、スロットダイを用いてアルミ基材の上にスラリーを塗布した。塗膜を、4領域、空気対流オーブン(ウィスコンシン州、デペール、メグテックシステム社製)で乾燥させた。各領域の温度を25℃と約85℃との間に調整し、最終カソード構造体中にポアを形成させるとともに、流延スラリーの脆性/接着性を調整した。
【0170】
乾燥させた、圧縮前の多孔質ポリマーマトリックスの厚さは、約216.7ミクロンであった。約98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力を加えると、ポリマーマトリックスの厚さは約112.1ミクロンであった。ポリマーマトリックスの重量は約1.064mg/cm2であった。空隙を利用可能なジブチルフタレート(DBP)は、大量のDBPを含むバッグの中に秤量した試料を入れて試料を飽和させ、得られた飽和試料を再秤量することにより測定した。DBPの利用可能な空隙は片面当たり約0.0038cm3/cm2であり、これは1.85mgS8/cm2に必要な0.0015cm3/cm2に比べて非常に大きな値であった。
【0171】
ポリマーマトリックスのBET表面積測定によれば、利用可能な表面積は、約39m2/gであった。
【0172】
図12は、加えた圧力(kgf/cm2、約9.8を掛けることによりN/cm2に変換できる)に対するポリマーマトリックスの厚さのプロットを含んでいる。3個の試料を試験した。試料当たり4サイクル全体で、加える力を0から20kgf/cm2に増加させた(図12で#1、#2、#3および#4と表示している)。力を加えた時、試料の厚さを測定した。最初のサイクルの後、各試料の厚さは、最初の厚さの約45%までしか戻らなかった。試料に力を加えた時、発泡体のDBP取り込み量は、最初の圧縮の前と後では大きく変化しなかった。この実施例のデータは、最初の圧縮の後で取得された。
【0173】
導電性ポリマーマトリックスを作製した後、硫黄を飽和させたトルエンのホットバスの中にポリマーマトリックスを浸漬することにより、硫黄を添加した。
【0174】
カソードを含む電気化学電池を試験のために組み立てた。金属リチウム(>99.99%Li、厚さ2ミル(mil)、ノースカロライナ州、キングズマウンテン、ケメタールフット社製)をアノードに用いた。電解質は、1,3−ジオキソランとジメトキシエタンの重量比1:1の混合物の中に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 8部、(リチウムイミドはミネソタ州、セントポール、3M社から入手できる)、硝酸リチウム 3.8部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)、硝酸グアニジン 1部(ワイオミング州ミルウォーキーのアルドリッチケミカル社から入手できる)および硝酸ピリジン 0.4部(ピリジンと硝酸から社内で合成)を含んでいる。得られた電解質の水含有量は50ppmより少なかった。9μmのセテラ(日本、東京の東燃化学社から、またはニューヨーク州、ピッツフォード、モービル化学社フィルム部門から入手できる)を含む多孔質セパレータをアノードとカソードの間に配置した。両面を有するカソードを、セパレータとアノード箔で包み、箔パウチの中に配置した。次いで箔パウチの中に、0.42gの液体電解質を添加した。液体電解質がセパレータとカソードの空隙を埋めて電極面積が31.8cm2の角柱状電池を作製した。封止後、電池を24時間保存した。
電池を試験する前に、2枚の平行板の間に挟んで、98N/cm2(約10kgf/cm2)の圧力で圧縮した。充電−放電サイクルを、それぞれ13.7mAと7.8mAで行った。放電時のカットオフ電圧は1.7V、充電時のカットオフ電圧は2.5Vであった。電気化学電池を10kgf/cm2(約98N/cm2)の力で圧縮した。
図13は、充電/放電サイクルに対する電池の比放電容量のプロットを含んでいる。電池は、20回のサイクルを通して同程度の特性を保持していた。
【0175】
本明細書には本発明の複数の態様が記載および図示されているが、当業者は、本明細書に記載されている機能を実施でき、および/または結果および/または1つまたは複数の利点を得ることのできるいろいろな他の手段および/または構造を容易に予想でき、およびそのような変形例および/または改良例は本発明の範囲に含まれるものである。さらに一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されているすべてのパラメータ、大きさ、材料、および配置が例示であり、実際のパラメータ、大きさ、材料および/または配置は、本発明の教示が用いられる特定の用途または用途群に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、通常の実験により、本明細書に記載された特定の態様についての多くの等価物を認識でき、あるいは確認できる。したがって、前述の態様は単に例として提示されたものであり、添付の請求の範囲およびそれの等価物の範囲内であれば、特に記載されおよび請求されたものと別のやり方で本発明を実施してもよい。本発明は、本明細書に記載された、それぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関するものである。また、2つまたはそれを超える、それらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、もしそれらの特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0176】
本明細書で定義され使用されているすべての定義は、辞書の定義、出典明示により本明細書の一部となった文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優先することが理解されるべきである。
【0177】
本書類の明細書および請求の範囲で使用されている不定冠詞の「1つ」および「1つ」は、それと異なると指摘されない限りは、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0178】
本書類の明細書と請求の範囲で使用されている「および/または」という句は、結合した要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきであり、すなわち、ある例では複数の要素が結合して存在し、別の例では複数の要素が分離して存在する。「および/または」で羅列された複数の要素も同様に解釈されるべきであり、すなわち、結合した要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。特に認定された要素に関係するかまたは関係しないかにより、「および/または」の句で特に認定された要素以外の要素も必要に応じて存在してもよい。したがって、限定されない例として、「「含む」のような限定のない表現と一緒に用いられる場合、「Aおよび/またはB」への言及は、ある態様では、Aのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、別の態様では、Bのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を意味し、さらに別の態様では、AとBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を意味する。
【0179】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、「または」は、先に定義された「および/または」と同じ意味を有している。例えば、リストの中の用語を分ける時、「または」あるいは「および/または」は、包含的なものと理解されるべきであり、すなわち、多数の要素または要素のリストの少なくとも1つを含むだけでなく、複数も含み、および必要に応じてリストにない追加の要素を含む。反対であると明確に指摘された用語のみ、例えば、「1つのみ」または「厳密に1つの」または、クレームに用いられる場合、「のみから成る」は、多数の要素または要素のリストの中の厳密に1つの要素が含まれることを意味する。一般に、本書類で用いられる「または」の用語は、「いずれか」、「1つの」、「1つのみ」または「厳密に1つの」等の包含的な用語が先立つ場合、包含的な選択(例えば、1つまたは別のもので両方ではない)を意味するものとだけ解釈されるべきである。「実質的に・・から成る」がクレームで用いられる場合、特許法の分野で用いられる通常の意味を有する。
【0180】
本書類の明細書と特許請求の範囲で使用されている、1つまたは複数の要素のリストに関して「少なくとも1つ」の句は、要素のリスト中のいずれか1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであり、要素のリストの中に特に挙げられた各要素およびすべての要素の少なくとも1つを含むことは必ずしも必要ではなく、要素のリストの中の要素の組み合わせを排除するものでもない。この定義では、特に認定されたそれら要素に関係するかあるいは関係しないかに応じて、「少なくとも1つの」の句が言及する要素の中で特に認定された要素以外にも要素が必要に応じて存在することを許容するものである。したがって、限定されるものではないが、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、ある態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含むがBは含まない(および必要に応じてB以外の要素を含む)ことを意味し、また別の態様では、少なくとも1つ、Bを含み、必要に応じて1つより多く含むがAは含まない(および必要に応じてA以外の要素を含む)ことを意味し、さらに別の態様では、少なくとも1つ、Aを含み、必要に応じて1つより多く含み、その場合Bを含み(および必要に応じて他の要素を含む)ことを意味する、等である。
【0181】
それと異なると明確に指摘されない限りは、本書類において請求された方法は、1つより多い工程または処置を含み、該方法の工程または処置の順番は、記載されている工程または処置の順番には特に限定されない、と理解されるべきである。
【0182】
上記の明細書だけでなく、特許請求の範囲において、「有する」、「含む」「保持する」、「持つ」、「含有する」、「包含する」、「保有する」、「構成される」等のすべての移行句は、非限定的であると理解されるべきであり、すなわち、含むことを意味するがそれに限定されない。「から成る」および「実質的に・・から成る」の移行句だけは、米国特許庁特許審査便覧2111.3節に規定されているように、それぞれ限定的または半限定的な移行句である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子が粒子体積を有し、該複数の粒子が各粒子の粒子体積の合計で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項2】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子が粒子状物質の全量を規定し、
該粒子状物質の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項3】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアがポア体積を有し、該複数のポアが各ポアのポア体積の合計で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有するポアにより規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項4】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該多孔質支持構造体の複数のポアが一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面寸法を有するポアにより規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項5】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極を含む電気化学電池が、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、電気化学電池用電極。
【請求項6】
上記の粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい、請求項1から5のいずか一つに記載の電極。
【請求項7】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい、請求項1から6のいずれか一つに記載の電極。
【請求項8】
上記多孔質支持構造体が、導電性材料を含む請求項1から7のいずれか一つに記載の電極。
【請求項9】
上記多孔質支持構造体の上に導電性材料が付着している請求項1から8のいずれか一つに記載の電極。
【請求項10】
上記多孔質支持構造体が、カーボン、金属、ポリマー、セラミック、および半導体の少なくとも1種を含んでいる請求項1から9のいずれか一つに記載の電極。
【請求項11】
上記多孔質支持構造体がカーボンを含んでいる請求項1から10のいずれか一つに記載の電極。
【請求項12】
上記多孔質支持構造体が金属を含んでいる請求項1から11のいずれか一つに記載の電極。
【請求項13】
上記多孔質支持構造体が二酸化ケイ素を含んでいる請求項1から12のいずれか一つに記載の電極。
【請求項14】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項1から13のいずれか一つに記載の電極。
【請求項15】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項1から14のいずれか一つに記載の電極。
【請求項16】
上記の電極が、少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項1から15のいずれか一つに記載の電極。
【請求項17】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項1から16のいずれか一つに記載の電極。
【請求項18】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項1から17のいずれか一つに記載の電極。
【請求項19】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項1から18のいずれか一つに記載の電極。
【請求項20】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項1から19のいずれか一つに記載の電極。
【請求項21】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項1から20のいずれか一つに記載の電極。
【請求項22】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項1から21のいずれか一つに記載の電極。
【請求項23】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項1から22のいずれか一つに記載の電極。
【請求項24】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項1から23のいずれか一つに記載の電極。
【請求項25】
上記の電極が表面を有し、
上記の電極の表面の面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記の電極の表面の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から24のいずれか一つに記載の電極。
【請求項26】
上記の電極が表面を有し、
上記の電極の表面の面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記の電極の表面の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から25のいずれか一つに記載の電極。
【請求項27】
電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から26のいずれか一つに記載の電極。
【請求項28】
電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記断面の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から27のいずれか一つに記載の電極。
【請求項29】
上記の全粒子体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項1から28のいずれか一つに記載の電極。
【請求項30】
上記の全粒子体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項1から29のいずれか一つに記載の電極。
【請求項31】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項1から30のいずれか一つに記載の電極。
【請求項32】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項1から31のいずれか一つに記載の電極。
【請求項33】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項1から32のいずれか一つに記載の電極。
【請求項34】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項1から33のいずれか一つに記載の電極。
【請求項35】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該金属製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該金属製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項36】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項37】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項38】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項39】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該金属製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項40】
上記金属製多孔質支持構造体が、ニッケル、銅、マグネシウム、アルミニウム、チタン、およびスカンジウムの少なくとも1種を含んでいる請求項35〜39のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項41】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項35〜40のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項42】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項35〜41のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項43】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項35〜42のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項44】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項35〜43のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項45】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項35〜44のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項46】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項35〜45のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項47】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項35〜46のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項48】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項35〜47のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項49】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項35〜48のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項50】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項35〜49のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項51】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項35〜50のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項52】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項35〜51のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項53】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項35〜52のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項54】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜53のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項55】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜54のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項56】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜55のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項57】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項35〜56のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項58】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項35〜57のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項59】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項35〜58のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項60】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項35〜59のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項61】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項35〜60のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項62】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項35〜61のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項63】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々の金属粒子を用意し、該金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項35〜62のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項64】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を接着することを含む請求項35〜63のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項65】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を焼結させることを含む請求項35〜64のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項66】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を溶融させることを含む請求項35〜65のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項67】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去して金属製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項35〜66のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項68】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成された金属製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項35〜67のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項69】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いて金属製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項35〜68のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項70】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該セラミック製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該セラミック製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項71】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項72】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項73】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項74】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該セラミック製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項75】
上記セラミック製多孔質支持構造体が、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、および/またはインジウムの酸化物、窒化物、および/または酸窒化物の少なくとも1種を含んでいる請求項70〜74のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項76】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項70〜75のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項77】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項70〜76のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項78】
上記多孔質支持構造体が、導電性セラミックを含んでいる請求項70〜77のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項79】
上記多孔質支持構造体が、セラミック材料に加えて導電性材料を含んでいる請求項70〜78のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項80】
上記多孔質支持構造体が、セラミック材料のバルクに埋め込まれた導電性材料を含んでいる請求項70〜79のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項81】
導電性材料が上記多孔質支持構造体内に付着している請求項70〜80のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項82】
導電性材料がカーボンおよび金属の少なくとも1種を含んでいる請求項70〜81のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項83】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項70〜82のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項84】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項70〜83のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項85】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項70〜84のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項86】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項70〜85のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項87】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項70〜86のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項88】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項70〜87のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項89】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項70〜88のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項90】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項70〜89のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項91】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項70〜90のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項92】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項70〜91のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項93】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項70〜92のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項94】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜93のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項95】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜94のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項96】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜95のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項97】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項70〜96のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項98】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項70〜97のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項99】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項70〜98のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項100】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項70〜99のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項101】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項70〜100のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項102】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項70〜101のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項103】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々のセラミック粒子を用意し、該セラミック粒子を処理してセラミック製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項70〜102のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項104】
上記のセラミック粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を接着することを含む請求項70〜103のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項105】
上記の金属粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を焼結させることを含む請求項70〜104のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項106】
上記のセラミック粒子を処理してセラミック製多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を溶融させることを含む請求項70〜105のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項107】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去してセラミック製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項70〜106のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項108】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成されたセラミック製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項70〜107のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項109】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いてセラミック製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項70〜108のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項110】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該ポリマー製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該ポリマー製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項111】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項112】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項113】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項114】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該ポリマー製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項115】
上記ポリマー製多孔質支持構造体が、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(ノボラック/レゾルシノール)、リチウムポリスチレンスルホン酸(LiPSS)、エポキシ、UHMWPE、PTFE、PVDF、PTFE/ビニル共重合体、上記ポリマーおよびその他のポリマーの共重合体/ブロック共重合体の少なくとも1種を含んでいる請求項110〜114のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項116】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項110〜115のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項117】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項110〜116のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項118】
上記多孔質支持構造体が、導電性ポリマーを含んでいる請求項110〜117のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項119】
上記多孔質支持構造体が、ポリマー材料に加えて導電性材料を含んでいる請求項110〜118のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項120】
上記多孔質支持構造体が、ポリマー材料のバルクに埋め込まれた導電性材料を含んでいる請求項110〜119のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項121】
導電性材料が上記多孔質支持構造体内に付着している請求項110〜120のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項122】
導電性材料がカーボンおよび金属の少なくとも1種を含んでいる請求項110〜121のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項123】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項110〜122のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項124】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項110〜123のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項125】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項110〜124のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項126】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項110〜125のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項127】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項110〜126のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項128】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項110〜127のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項129】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項110〜128のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項130】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項110〜129のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項131】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項110〜130のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項132】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項110〜131のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項133】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項110〜132のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項134】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜133のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項135】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜134のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項136】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜135のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項137】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項110〜136のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項138】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項110〜137のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項139】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項110〜138のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項140】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項110〜139のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項141】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項110〜140のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項142】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項110〜141のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項143】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々のポリマー粒子を用意し、該ポリマー粒子を処理してポリマー製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項110〜142のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項144】
上記のポリマー粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を接着することを含む請求項110〜143のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項145】
上記のポリマー粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を焼結させることを含む請求項110〜144のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項146】
上記のポリマー粒子を処理してポリマー製多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を溶融させることを含む請求項110〜145のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項147】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去してポリマー製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項110〜146のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項148】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成されたポリマー製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項110〜147のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項149】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いてポリマー製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項110〜148のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項1】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子が粒子体積を有し、該複数の粒子が各粒子の粒子体積の合計で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項2】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子が粒子状物質の全量を規定し、
該粒子状物質の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項3】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアがポア体積を有し、該複数のポアが各ポアのポア体積の合計で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有するポアにより規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項4】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該多孔質支持構造体の複数のポアが一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面寸法を有するポアにより規定されている、電気化学電池用電極。
【請求項5】
複数のポアを含む多孔質支持構造体と、
該多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極を含む電気化学電池が、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、電気化学電池用電極。
【請求項6】
上記の粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい、請求項1から5のいずか一つに記載の電極。
【請求項7】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい、請求項1から6のいずれか一つに記載の電極。
【請求項8】
上記多孔質支持構造体が、導電性材料を含む請求項1から7のいずれか一つに記載の電極。
【請求項9】
上記多孔質支持構造体の上に導電性材料が付着している請求項1から8のいずれか一つに記載の電極。
【請求項10】
上記多孔質支持構造体が、カーボン、金属、ポリマー、セラミック、および半導体の少なくとも1種を含んでいる請求項1から9のいずれか一つに記載の電極。
【請求項11】
上記多孔質支持構造体がカーボンを含んでいる請求項1から10のいずれか一つに記載の電極。
【請求項12】
上記多孔質支持構造体が金属を含んでいる請求項1から11のいずれか一つに記載の電極。
【請求項13】
上記多孔質支持構造体が二酸化ケイ素を含んでいる請求項1から12のいずれか一つに記載の電極。
【請求項14】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項1から13のいずれか一つに記載の電極。
【請求項15】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項1から14のいずれか一つに記載の電極。
【請求項16】
上記の電極が、少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項1から15のいずれか一つに記載の電極。
【請求項17】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項1から16のいずれか一つに記載の電極。
【請求項18】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項1から17のいずれか一つに記載の電極。
【請求項19】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項1から18のいずれか一つに記載の電極。
【請求項20】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項1から19のいずれか一つに記載の電極。
【請求項21】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項1から20のいずれか一つに記載の電極。
【請求項22】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項1から21のいずれか一つに記載の電極。
【請求項23】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項1から22のいずれか一つに記載の電極。
【請求項24】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項1から23のいずれか一つに記載の電極。
【請求項25】
上記の電極が表面を有し、
上記の電極の表面の面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記の電極の表面の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から24のいずれか一つに記載の電極。
【請求項26】
上記の電極が表面を有し、
上記の電極の表面の面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記の電極の表面の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から25のいずれか一つに記載の電極。
【請求項27】
電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から26のいずれか一つに記載の電極。
【請求項28】
電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記断面の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項1から27のいずれか一つに記載の電極。
【請求項29】
上記の全粒子体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項1から28のいずれか一つに記載の電極。
【請求項30】
上記の全粒子体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項1から29のいずれか一つに記載の電極。
【請求項31】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項1から30のいずれか一つに記載の電極。
【請求項32】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項1から31のいずれか一つに記載の電極。
【請求項33】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項1から32のいずれか一つに記載の電極。
【請求項34】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項1から33のいずれか一つに記載の電極。
【請求項35】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該金属製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該金属製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項36】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項37】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項38】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項39】
複数のポアを含む金属製多孔質支持構造体と、
該金属製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該金属製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項40】
上記金属製多孔質支持構造体が、ニッケル、銅、マグネシウム、アルミニウム、チタン、およびスカンジウムの少なくとも1種を含んでいる請求項35〜39のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項41】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項35〜40のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項42】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項35〜41のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項43】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項35〜42のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項44】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項35〜43のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項45】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項35〜44のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項46】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項35〜45のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項47】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項35〜46のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項48】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項35〜47のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項49】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項35〜48のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項50】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項35〜49のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項51】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項35〜50のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項52】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項35〜51のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項53】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項35〜52のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項54】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜53のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項55】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜54のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項56】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項35〜55のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項57】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項35〜56のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項58】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項35〜57のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項59】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項35〜58のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項60】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項35〜59のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項61】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項35〜60のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項62】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項35〜61のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項63】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々の金属粒子を用意し、該金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項35〜62のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項64】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を接着することを含む請求項35〜63のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項65】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を焼結させることを含む請求項35〜64のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項66】
上記の金属粒子を処理して金属製多孔質支持構造体を形成することが、金属粒子を溶融させることを含む請求項35〜65のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項67】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去して金属製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項35〜66のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項68】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成された金属製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項35〜67のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項69】
金属製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いて金属製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項35〜68のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項70】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該セラミック製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該セラミック製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項71】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項72】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項73】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項74】
複数のポアを含むセラミック製多孔質支持構造体と、
該セラミック製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該セラミック製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項75】
上記セラミック製多孔質支持構造体が、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウム、および/またはインジウムの酸化物、窒化物、および/または酸窒化物の少なくとも1種を含んでいる請求項70〜74のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項76】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項70〜75のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項77】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項70〜76のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項78】
上記多孔質支持構造体が、導電性セラミックを含んでいる請求項70〜77のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項79】
上記多孔質支持構造体が、セラミック材料に加えて導電性材料を含んでいる請求項70〜78のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項80】
上記多孔質支持構造体が、セラミック材料のバルクに埋め込まれた導電性材料を含んでいる請求項70〜79のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項81】
導電性材料が上記多孔質支持構造体内に付着している請求項70〜80のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項82】
導電性材料がカーボンおよび金属の少なくとも1種を含んでいる請求項70〜81のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項83】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項70〜82のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項84】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項70〜83のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項85】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項70〜84のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項86】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項70〜85のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項87】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項70〜86のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項88】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項70〜87のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項89】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項70〜88のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項90】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項70〜89のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項91】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項70〜90のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項92】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項70〜91のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項93】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項70〜92のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項94】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜93のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項95】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜94のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項96】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項70〜95のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項97】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項70〜96のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項98】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項70〜97のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項99】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項70〜98のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項100】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項70〜99のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項101】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項70〜100のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項102】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項70〜101のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項103】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々のセラミック粒子を用意し、該セラミック粒子を処理してセラミック製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項70〜102のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項104】
上記のセラミック粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を接着することを含む請求項70〜103のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項105】
上記の金属粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を焼結させることを含む請求項70〜104のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項106】
上記のセラミック粒子を処理してセラミック製多孔質支持構造体を形成することが、セラミック粒子を溶融させることを含む請求項70〜105のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項107】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去してセラミック製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項70〜106のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項108】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成されたセラミック製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項70〜107のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項109】
セラミック製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いてセラミック製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項70〜108のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項110】
電気化学電池に用いる電極の製造方法であって、
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程と、
硫黄を含む電極活物質を該ポリマー製多孔質支持構造体内に付着させる工程を含み、
該ポリマー製多孔質支持構造体の複数のポアは、一体として全ポア体積を規定し、および該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより規定されている、該製造方法。
【請求項111】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子の各粒子が最大断面寸法を有し、
該複数の粒子の各粒子は粒子体積を有し、該複数の粒子は各粒子の粒子体積の全体で規定される全粒子体積を有し、および
該全粒子体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項112】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を含む複数の粒子を有し、
該複数の粒子は一体として粒子状材料の全量を規定し、および
該粒子状材料の全量の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子から成る、電気化学電池用電極。
【請求項113】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、
該複数のポアの各ポアはポア体積を有し、該複数のポアは各ポアのポア体積の全体で規定される全ポア体積を有し、および
該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項114】
複数のポアを含むポリマー製多孔質支持構造体と、
該ポリマー製多孔質支持構造体のポア内に実質的に含有される硫黄を含む電極活物質を有し、該ポリマー製多孔質支持構造体の複数のポアは一体として全ポア体積を規定し、該全ポア体積の少なくとも約50%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている、電気化学電池用電極。
【請求項115】
上記ポリマー製多孔質支持構造体が、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(ノボラック/レゾルシノール)、リチウムポリスチレンスルホン酸(LiPSS)、エポキシ、UHMWPE、PTFE、PVDF、PTFE/ビニル共重合体、上記ポリマーおよびその他のポリマーの共重合体/ブロック共重合体の少なくとも1種を含んでいる請求項110〜114のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項116】
硫黄を含む電極活物質を含む粒子の最大断面寸法の標準偏差が約50%より小さい請求項110〜115のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項117】
上記のポアの断面直径の標準偏差が約50%より小さい請求項110〜116のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項118】
上記多孔質支持構造体が、導電性ポリマーを含んでいる請求項110〜117のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項119】
上記多孔質支持構造体が、ポリマー材料に加えて導電性材料を含んでいる請求項110〜118のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項120】
上記多孔質支持構造体が、ポリマー材料のバルクに埋め込まれた導電性材料を含んでいる請求項110〜119のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項121】
導電性材料が上記多孔質支持構造体内に付着している請求項110〜120のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項122】
導電性材料がカーボンおよび金属の少なくとも1種を含んでいる請求項110〜121のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項123】
上記の硫黄が、元素硫黄、ポリマー状硫黄、無機スルフィド、無機ポリスルフィド、有機スルフィド、有機ポリスルフィド、および有機硫黄化合物のいずれか一つを含んでいる請求項110〜122のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項124】
上記の硫黄が元素硫黄を含んでいる請求項110〜123のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項125】
上記の電極が少なくとも約20重量%の硫黄を含んでいる請求項110〜124のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項126】
上記電極活物質が、上記多孔質支持構造体の利用可能なポア体積の少なくとも約10%を占有している請求項110〜125のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項127】
上記の電極が、硫黄の単位グラム当たり少なくとも約1cm3の空隙体積を有している請求項110〜126のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項128】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項110〜127のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項129】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、該電池中の全硫黄の少なくとも約65%を利用することができ、100%利用率が電極中の硫黄の単位グラム当たり1672mAhである、請求項110〜128のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項130】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも1回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項110〜129のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項131】
上記の電極を含む電気化学電池が、最初の充電および放電のサイクルに続く少なくとも10回の充電および放電のサイクルにおいて、電極中の硫黄の単位グラム当たり少なくとも約100mAの電流密度を達成することが可能である、請求項110〜130のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項132】
上記多孔質支持構造体が、多孔質連続構造体を含んでいる請求項110〜131のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項133】
上記の電極内の上記多孔質連続構造体の最大断面寸法が、上記の電極の最大断面寸法の少なくとも約50%である請求項110〜132のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項134】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、
上記外表面積の上記均一領域の少なくとも約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜133のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項135】
上記の電極が外表面積を有し、
上記外表面積の少なくとも約50%が、硫黄が実質的に均一に分布した第1の連続領域を規定し、該第1の領域は第1の硫黄平均濃度を有し、および
上記外表面積の第1の連続領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記第1の連続領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜134のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項136】
上記の電極が厚さと、該厚さに実質的に垂直な断面を有し、
上記断面の少なくとも約50%が、第1の硫黄平均濃度を有する均一領域を規定し、および
上記断面の均一領域の約10%に及ぶ連続領域が、第2の硫黄平均濃度を有し、該第2の硫黄平均濃度は、上記均一領域全体の第1の硫黄平均濃度に対して、約25%より小さい範囲で変化する、請求項110〜135のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項137】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項110〜136のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項138】
硫黄含有電極活物質を含む粒子により占有された全体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の最大断面寸法を有する粒子により占有されている請求項110〜137のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項139】
上記の全ポア体積の少なくとも約70%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項110〜138のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項140】
上記の全ポア体積の少なくとも約80%が、約0.1ミクロンと約10ミクロンの間の断面直径を有するポアにより占有されている請求項110〜139のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項141】
上記の電極が、約20重量%より少ないバインダーを含んでいる請求項110〜140のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項142】
上記多孔質支持構造体内のポアの平均断面直径に対する上記多孔質支持構造体内の粒子材料の平均最大断面寸法の比率が、約0.001:1と約1:1の間である請求項110〜141のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項143】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、複数の個々のポリマー粒子を用意し、該ポリマー粒子を処理してポリマー製多孔質支持構造体を形成することを含む請求項110〜142のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項144】
上記のポリマー粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を接着することを含む請求項110〜143のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項145】
上記のポリマー粒子を処理して多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を焼結させることを含む請求項110〜144のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項146】
上記のポリマー粒子を処理してポリマー製多孔質支持構造体を形成することが、ポリマー粒子を溶融させることを含む請求項110〜145のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項147】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、第1の材料と第2の材料を組み合わせ、その組み合わせたものから一方の材料を除去してポリマー製多孔質支持構造体のポアを形成することを含む請求項110〜146のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項148】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、予め形成されたポリマー製多孔質支持構造体を用意することを含む請求項110〜147のいずれか一つに記載の電極または方法。
【請求項149】
ポリマー製多孔質支持構造体を用意する工程が、3D印刷法を用いてポリマー製多孔質支持構造体を作製することを含む請求項110〜148のいずれか一つに記載の電極または方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−503439(P2013−503439A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526723(P2012−526723)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/002329
【国際公開番号】WO2011/031297
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(500287732)シオン・パワー・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/002329
【国際公開番号】WO2011/031297
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(500287732)シオン・パワー・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】
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