説明

硫黄含有接合物の製造法

【課題】硫黄含有セグメント同士を、容易に短時間に接合でき、接合時の発熱手段の再利用を可能にした、実質的に一体化した耐酸性及び遮水性等に優れた硫黄含有接合物の製造法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造法は、接合面を有する硫黄含有セグメントを複数準備する工程(A)と、該セグメントの接合面を密着固定する工程(B-1)又は該接合面を離隔して固定する工程(B-2)と、密着させた接合面の外縁部を加熱溶融する工程(C-1)又は離隔して固定した各接合面の外縁部を加熱溶融する工程(C-2)及び外縁が加熱溶融された状態の各接合面を密着する工程(C-3)と、加熱溶融した外縁部をならす工程(D)と、加熱溶融部を冷却固化する工程(E)とを含み、工程(C-1)又は(C-2)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル、床材、各種壁、漁礁等の土木又は建設用資材等に利用可能な硫黄含有セグメントを接合した硫黄含有接合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートに代わる土木、建設資材として、耐酸性、機械的強度、遮水性等に優れる硫黄含有資材が多数提案され、利用されはじめている。
このような硫黄含有資材は、該資材中の硫黄又は改質硫黄の溶融温度が通常120℃以上であるため、120〜160℃程度に保持した溶融硫黄含有物を、所定の型枠に流し込み成型固化させることにより製造されている。
しかし、硫黄含有資材が、大型である場合や連続する場合等にはその製造を1つの型枠で行うことが極めて困難であるため、そのような硫黄含有資材を製造する場合には、成型された複数の硫黄含有セグメントを所望形態にするために接合する必要がある。
【0003】
従来、硫黄含有資材の接合方法としては、例えば、接合するための硫黄固化成型体パネルを離隔して固定し、該パネル間の隙間に溶融硫黄含有資材を流し込んで固化させることによりこれらのパネルを接合する方法(特許文献1参照)や、接合するための端部に凹部を設けた硫黄固化成型体パネルを、該凹部同士で接合用の硫黄含有棒と電熱ヒーターとを挟み込むように密着させ、該電熱ヒーターに通電させることによって硫黄棒と硫黄固化成型体パネルの両方を融解させた後に固化してこれらパネルを接合する方法(特許文献2参照)が知られている。
しかし、特許文献1に記載された方法は、冷えた硫黄固化成型体パネルの隙間に、熱い溶融硫黄含有資材を流し込んで接触させるため、流し込んだ溶融硫黄含有資材が固化した場合であっても該固化物は硫黄固化成型体パネルに単に接して固化しているに過ぎず、該パネルと一体化しない。従って、例えば、高い耐酸性と遮水性が要求される下水道関連用途に使用する場合には、該パネル接合部から酸性汚水がパネル裏面に染み出す可能性があり、このような方法を採用することはできない。
一方、特許文献2に記載された方法は、電熱ヒーターを硫黄固化成型体及び硫黄棒に接触させて溶融させる方法を採用するが、硫黄は熱伝導度が非常に小さいため、電熱ヒーターのような線接触による加熱では溶融に長時間を要し、工程が非常に煩雑になり易い。そこで、該時間を短縮するために電熱ヒーターの温度を相当に上昇させる方法も考えられるが、このような高温にした場合には硫黄又は改質硫黄の性質が変化し、所望の強度等が得られない恐れがある。
更に、このような電熱ヒーターは、硫黄棒や当該パネルに接触させて溶融させるために、溶融時にも溶融硫黄と接触している必要があり、その後の固化に際しては該硫黄固化物中に使用した電熱ヒーターを埋入させた状態で留めなければならず再使用ができない。加えて、電熱ヒーターを網目状にした場合等においては、該網目状の電熱ヒーターが埋入した状態となり遮水性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2004−160694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硫黄含有セグメント同士を、容易にしかも短時間に接合することができ、接合する際に硫黄含有セグメントを溶融するための発熱手段の再利用を可能にした、実質的に一体化した耐酸性及び遮水性等に優れた硫黄含有接合物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、複数の硫黄含有セグメントを接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、接合するための接合面を有する硫黄含有セグメントを複数準備する工程(A)と、複数の硫黄含有セグメントの接合面を密着固定する工程(B-1)と、前記密着させた接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-1)と、加熱溶融した外縁部をならす工程(D)と、加熱溶融部を冷却固化する工程(E)とを含み、前記工程(C-1)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うことを特徴とする硫黄含有接合物の製造法(以下、第1の製造法という)が提供される。
また本発明によれば、複数の硫黄含有セグメントを接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、前記工程(A)と、複数の硫黄含有セグメントの接合面を離隔して固定する工程(B-2)と、前記離隔して固定した各接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-2)と、外縁が加熱溶融された状態の各接合面を密着する工程(C-3)と、前記工程(D)と、前記工程(E)とを含み、前記工程(C-2)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うことを特徴とする硫黄含有接合物の製造法(以下、第2の製造法という)が提供される。
尚、前記第1の製造法及び第2の製造法をまとめて本発明の製造法ということがある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造法は、前記工程を採用し、特に工程(C-1)又は工程(C-2)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うので、硫黄含有セグメント同士を、容易にしかも短時間に接合することができ、当該発熱手段を硫黄含有セグメントに接触させる必要が無いので再利用が可能であって、所望の接合部を連続的に接合することができる。従って、得られる硫黄含有接合物は、実質的に一体化され、硫黄含有資材としての優れた耐酸性及び遮水性等が維持され、特にこれらの性能が要望される下水道用途等の資材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造法では、まず、接合するための接合面を有する硫黄含有セグメントを複数準備する工程(A)を行う。
前記硫黄含有セグメントは、本発明の目的物である硫黄含有接合物を構成する単位であって、例えば、溶融硫黄及び/又は溶融改質硫黄と、骨材とを含む混練物を所望形態の型枠内に流し込んで成型することにより調製することができる。
硫黄含有セグメントの形態は、目的とする硫黄含有接合物の用途等に応じて適宜決定することができる。該用途としては特に限定されないが、例えば、パネル、床材、魚礁、各種ブロック、土木用又は建設用の各種壁等が挙げられ、特に、耐酸性、遮水性要求が高い下水道施設における下水道と接触する各種用途が挙げられる。
前記硫黄含有セグメントは、好ましくは小ガス炎着火試験によって検定される非危険物であることを充足するように、特定割合の骨材と、改質硫黄からなる硫黄材料とを含むものが好ましい。
前記改質硫黄は、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等を硫黄変性剤により重合したものであって、硫黄と硫黄変性剤との反応物であることが好ましい。
【0008】
硫黄変性剤としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、テトラハイドロインデン(THI)、若しくはDCPDと、シクロペンタジエンのオリゴマー(2〜5量体混合物)、ジペンテン、ビニルトルエン、ジシクロペンテン等のオレフィン化合物類の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。
前記DCPDとしては、DCPDの単体の他に、シクロペンタジエンの2〜5量体を主体に構成される混合物を用いることもできる。該混合物としては、DCPDの含有量が70質量%以上、好ましくは85質量%以上のものが挙げられ、また、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くを使用することができる。
前記THIとしては、THIの単体の他に、THIと、DCPDの単体、シクロペンタジエンとブタンジエンとの重合物、及びシクロペンタジエンの2〜5量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物を用いることもできる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。該混合物としては、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やエチルノルボルネンの製造プラントから排出される副生成油の多くが使用できる。
【0009】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄変性剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄変性剤の使用割合は、硫黄と硫黄変性剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に、1.0〜20質量%の割合が好ましい。
前記溶融混合は、例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサー等を用いて行うことができる。
【0010】
前記硫黄含有セグメントにおいて、前記改質硫黄の含有割合は、後述する骨材100質量部に対して、通常15〜400質量部、好ましくは20〜300質量部である。15質量部未満では、骨材との均一混練が十分でなく、400質量部を超えると、改質硫黄と骨材とが分離して均一な材料が得られ難いおそれがある。
【0011】
前記骨材は特に限定されないが、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属製造時に生成する副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末やこれらと同等の有害物質を含有しない無機系、有機系等の微粉末も使用可能である。これらの微粉末の中でも、粒経分布の調整が容易で均一なものを大量に入手しやすい点で、また下水道用途においてカルシウム含有量が少ない点で、石炭灰、硅砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末及び電気集塵灰からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。
また、微粉末として産業廃棄物を使用した場合でも、前述の硫黄材料により無害化することが可能である。
【0012】
前記骨材としては、通常、粒径5mm以下、好ましくは1mm以下の細骨材を含むことが好ましいが、その用途に応じて適宜選択することができる。
前記硫黄含有セグメントには、前記改質硫黄や細骨材の他に、例えば、軽石、ビニロン繊維、パーライト等の軽量骨材、各種粗骨材、繊維質充填材、繊維状粒子、薄片状粒子等を含有させることができる。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物等が挙げられる。
繊維質充填材の繊維径は、材質により異なるが通常5μm〜1mmが好ましい。繊維形態は、短繊維、連続繊維のいずれでも良いが、短繊維の場合の繊維長は2〜30mmの均一分散が容易な長さが好ましい。連続繊維としては、骨材が通過できるような隙間を空けた格子状であれば良く、織構造又は不織布構造のいずれでも良い。
繊維状粒子としては、平均長さ1mm以下のウォラスナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。
薄片状粒子としては、平均粒度1mm以下のマイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
前記硫黄含有セグメントには、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、上記以外にも必要に応じて他の成分が配合されていても良い。
【0013】
前記硫黄含有セグメントの調製は、公知の方法等に準じて行なうことができる。硫黄含有セグメントの形態は、前述のとおりその用途等に応じて適宜決定することができるが、各セグメントを接合するための接合面を含む少なくとも端部形状を、各セグメントの接合面を密着した際に、該接合面の外縁の一部が低部に位置する溝が形成されるように成型されていても良い。該溝の形状は特に限定されないが、例えば、U字状、V字状、コの字状等が挙げられる。前記セグメントの端部形状をこのような溝を形成しうる形状とすることにより、後述する発熱手段として熱風吹きつけ手段を採用した場合、該溝に沿って熱風が流れ、加熱溶融する箇所の次に加熱溶融する箇所を有効に予熱し、加熱溶融時間を短縮することができる。
【0014】
本発明の第1の製造法では、次に、前記準備した複数の硫黄含有セグメントの接合面を密着固定する工程(B-1)を行い、一方、第2の製造法では、前記準備した複数の硫黄含有セグメントの接合面を離隔して固定する工程(B-2)を行う。
工程(B-2)において各セグメントの接合面の離隔幅は、後述する加熱溶融後に容易に接合面を密着し得る幅であれば良く、また溝形成不用にするために、通常1〜10mm程度である。
【0015】
本発明の第1の製造法では、次に、前記密着させた接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-1)を行い、一方、第2の製造法では、前記離隔して固定した各接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-2)と、外縁が加熱溶融された状態の各接合面を密着する工程(C-3)とを連続的に行う。
工程(C-1)及び工程(C-2)における加熱溶融は、溶融した硫黄又は改質硫黄が発熱手段に付着することを防止し、更には加熱溶融を短時間で効率良く行うために、前記外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行う必要がある。
このような発熱手段としては、例えば、ドライヤーのような熱風吹きつけ手段を有する発熱器等が挙げられ、特に、加熱効率に優れ、取扱いが容易な熱風吹きつけ手段を有する発熱器の使用が好ましい。
これら発熱手段は、加熱溶融する箇所の表面温度が前記セグメントの硫黄及び/又は改質硫黄の融点以上となる発熱手段であれば良く、通常は該表面温度が120〜180℃程度になる発熱手段を用いることができる。
この発熱手段による加熱溶融は、加熱溶融状態を目視しながら行うことができるので、その加熱時間及び加熱溶融箇所と発熱手段との距離を適宜決定しながら実施することができる。
【0016】
工程(C-1)及び(C-2)において加熱溶融箇所は、接合面の外縁の少なくとも一部を含み、且つセグメント同士を一体に接合しうる箇所であれば良く、例えば、表面、裏面及び側面を有するパネル状のセグメントであって側面を接合面とした場合、該接合面の外縁同士が接している表面又は裏面の少なくとも一方の面の外縁に沿った箇所を加熱溶融することが好ましい。この際、工程(C-2)においては、各セグメントが離隔して固定されているので、加熱溶融される外縁に加えて該外縁近傍の接合面も効率良く加熱溶融される。一方、工程(C-1)においては、密着された接合面の一部も加熱溶融されるように、加熱溶融時間等を調整することが好ましい。
工程(C-1)の加熱溶融において、前述の接合面を密着させることで溝が形成される硫黄含有セグメントを使用し、更に、発熱手段として前述の熱風吹きつけ手段を有する発熱器を用いる場合には、例えば、セグメントの外縁の一部箇所を前記発熱器で加熱溶融すると、該外縁が溝の低部に位置するので、発熱器から吹きつけられる熱風の一部は、溝に沿って逐次加熱溶融すべき箇所に流れ、予熱することができる。従って、次の加熱溶融時の時間を短縮することができる。
【0017】
工程(C-1)又は工程(C-2)の加熱溶融を、前述の熱風吹きつけ手段を有する発熱器を用いて行う場合には、該熱風が所望箇所に吹きつけられるように熱風吹き付け方向制御ガイドを用いて行うこともできる。このようなガイドは、後述する実施例等に使用するガイド等を用いることができ、セグメント側に設置しても、またアダプターとして発熱器側に設置してもよい。このようなガイドを設置することにより熱風を所望の箇所に集中させることができる。
本発明の第2の製造法において行う前記工程(C-3)は、工程(C-2)の加熱溶融した外縁が溶融状態の間に各接合面を密着することができれば良い。
【0018】
本発明の製造法では、上記工程(C-1)又は(C-2)と(C-3)を行った加熱溶融した外縁部をならす工程(D)を行う。
工程(D)は、接合面が密着されている状態であれば、例えば、工程(C-1)を行った場合、加熱溶融した箇所から逐次工程(D)を行うこともできる。
工程(D)は、加熱溶融箇所を平坦又は均一にならすことが可能な、例えば、へら、電気コテ等を用いて行うことができる。
【0019】
本発明の製造法では、最終に前記工程(D)でならした加熱溶融部を冷却固化する工程(E)を行うことにより所望の接合物を得ることができる。
工程(E)は、通常、自然冷却、即ち放置することにより行うことができるが、強制的に冷却することも可能である。
【0020】
本発明の製造法では、上記必須の工程以外に、加熱溶融時間を更に短縮等するために、工程(C-1)又は工程(C-2)における加熱溶融を行なう前に、少なくとも該加熱溶融箇所を予熱する工程を行うこともできる。
該予熱工程は、例えば、セグメントの所望箇所が加熱溶融しない温度で上述の外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うこともできる他、セグメントが溶融しないので該セグメントに接触させて加熱する面状のセラミックヒーターや、また前記溝の形状に合わせた面接触するセラミックヒーター等を用いて行うことができる。
予熱温度は、通常110℃以下で行うことができる。
更に、本発明の製造法において、前記加熱溶融に際して溶融物のタレ等が生じるおそれがある場合には、加熱溶融後、冷却固化するにあたって、該加熱溶融箇所をアルミ平板等により被覆してタレを抑制することも可能である。
【実施例】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施例を更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
実施例1
溶融改質硫黄24質量部、石炭灰11.8質量部、3号硅砂32質量部、7号硅砂31.7質量部及びビニロン繊維0.5質量部を混練して、型枠に打設し、厚さ2.5cm程度の長方形の硫黄固化成型体パネルを2枚作製した。
このパネル2枚を横に並べ、端部の接合面を密着して付き合わせて固定した。
次に、図1(A)に示されるように、パネル(10,11)の接合面の外縁部12を、300℃の熱風を発生するドライヤー式熱風発生器13を用いて、外縁部表面が120〜180℃になるように離隔して加熱溶融させた。この際、加熱溶融させた外縁部の長さは30cmであった。加熱溶融後、図1(B)に示すように加熱溶融部が盛り上がったので、ヘラ14を用いてならし、それぞれのパネルの溶融部分を完全に一体化させ、そのまま放置冷却して図1(C)に示すように固化させた。熱風による加熱から固化までに要した時間は約6分間であった。
次に、接合されたパネルを切断し、その断面を観察したところ、溶融させた部分(表層から約1cm程度)は完全に一体化していることがわかった。
【0022】
実施例2
図2に示すように、ヘラ14の代わりに、加熱面が110〜180℃の範囲に設定された電気コテ24を用いた以外は実施例1と同様の方法でパネルの接合を行った。その結果、電気コテ24によるならしの仕上り感が実施例1よりきれいであった以外は実施例1と同様にパネルを一体化させることができた。尚、図2において図1と同じ部材については同一番号を付している。
【0023】
実施例3
実施例1と同組成の混練物を、図3に示すように、パネル(30,31)の接合面を密着した際に、該接合面の外縁部32が低部に位置するコの字状の溝35が端部に形成されるように設計された型枠に打設し、厚さ2.5cm程度の端部形状が図示するような長方形の硫黄固化成型体パネルを2枚作製した。
このパネル2枚を横に並べ、端部の接合面を密着して付き合わせて固定した。
次に、図3(A)に示されるように、パネル(30,31)の接合面の外縁部32を含む溝35周辺を、300℃の熱風を発生するドライヤー式熱風発生器33を用いて、外縁部表面が120〜180℃になるように離隔して加熱溶融させた。この際、熱風の多くが溝35に沿って流れ、次の加熱溶融箇所を予熱する状態であった。加熱溶融させた外縁部及び溝の長さは30cmであった。加熱溶融後、図3(B)に示すように加熱溶融部を、ヘラ34を用いてならし、それぞれのパネルの溶融部分を完全に一体化させ、そのまま図3(C)に示すように放置冷却して固化させた。熱風による加熱から固化までに要した時間は4分間以内であった。このように実施例1よりも短時間でこれらの工程が終了したのは、前記熱風による予熱の他、溝35の作成によって熱風との接触面積が大きくなり、加熱効率が更に向上したためと考えられる。
次に、接合されたパネルを切断し、その断面を観察したところ、溶融させた部分は完全に一体化していることがわかった。
【0024】
実施例4
実施例3において、ドライヤー式熱風発生器33による加熱溶融前に、図4に示す溝35の形状に沿ったセラミックヒーター44を用いて約100℃程度で予熱を行った以外は実施例3と同様にパネルの接合を行った。その結果、熱風による加熱から固化までに要した時間は実施例3よりも更に短縮された。
【0025】
実施例5
実施例1と同様の方法で2枚の硫黄固化成型体パネル(60,61)を作製し、これら2枚のパネル(50,51)を2mm程度の隙間が開くように、図5に示すとおり横に並べて固定した。
次に、図5(A)に示されるように、パネル(50,51)の隙間の空いた接合面の外縁部(52a,52b)を、300℃の熱風を発生するドライヤー式熱風発生器53を用いて、外縁部表面が120〜180℃になるように離隔して加熱溶融させた。続いて該隙間を埋めるようにパネル(50,51)を密着させ、図5(B)に示すように加熱溶融部の盛り上がりをヘラ54を用いて隙間に押し込んでならし、それぞれのパネルの溶融部分を完全に一体化させ、図5(C)に示すようにそのまま放置冷却して固化させた。この際、加熱溶融させた外縁部の長さは30cmであった。熱風による加熱から固化までに要した時間は約4分間であった。
得られた接合部の表面は深さ5mm程度窪んでしまったが、接合されたパネルを切断し、その断面を観察したところ、表面から裏面までの全ての部分が一体化していることがわかった。
【0026】
実施例6
実施例1と同組成の混練物を、図6(A)に示すように、パネル(60,61)の接合面を密着した際に、該接合面の外縁部62が低部に位置するコの字状の溝65及び該溝65の両側に熱風吹き付け方向制御ガイドを移動させるための溝(66a,66b)が端部側に形成されるように設計された型枠に打設し、厚さ2.5cm程度の端部形状が図6(A)示するような長方形の硫黄固化成型体パネルを2枚作製した。
このパネル2枚を横に並べ、図6(A)に示すように端部の接合面を密着して付き合わせて固定した。
次に、図6(A)に示されるように、パネル(60,61)の接合面の外縁部62を含む溝65周辺を、熱風吹き付け方向制御ガイド付きアダプター67を接続した300℃の熱風を発生するドライヤー式熱風発生器63を用いて、外縁部表面が120〜180℃になるように離隔して加熱溶融させ、該アダプター67を溝(66a,66b)に沿って少しずつ移動させながら加熱溶融させた。この際、熱風は、熱風吹き付け方向制御ガイドに沿って所望の外縁部表面及び溝65内に吹き付けられた後、その多くが溝65に沿って流れ、次の加熱溶融箇所を予熱する状態であった。加熱溶融させた外縁部及び溝65の長さは30cmであった。加熱溶融された箇所は、前記アダプター67の移動により熱風吹き付け方向制御ガイドがヘラ代わりに図6(B)に示すように随時加熱溶融箇所をならし、それぞれのパネルの溶融部分を完全に一体化させていった。最終的に加熱溶融した後に図6(C)に示すようにそのまま放置冷却して固化させた。熱風による加熱から固化までに要した時間は3分以内であった。
このように実施例1及び実施例3よりも短時間でこれらの工程が終了したのは、前記熱風による予熱の他、溝65の作製によって熱風との接触面積が大きくなり、更に、アダプター67によって熱風の通り道が遮蔽されて加熱効率が向上したためと考えられる。
次に、接合されたパネルを切断し、その断面を観察したところ、溶融させた部分は完全に一体化していることがわかった。
【0027】
実施例7
接合面を密着させた熱風を吹き付ける外縁部に、図7に示すようにL型アルミニウム板からなる熱風吹き付け方向制御ガイド(77a,77b)を設けてパネルの接合を行った以外は実施例1と同様の方法で硫黄固化成型体パネル接合物を作製した。
この際、熱風による加熱溶融は、ガイド(77a,77b)が遮蔽となり、熱風が所望の加熱溶融させる部分のみにあたるようになったため、加熱効率が良くなった。熱風による加熱から固化までに要した時間は約4分間であった。尚、図7において図1と同じ部材については同一番号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1における硫黄固化成型体パネル接合物の製造工程を説明するための概略工程図である。
【図2】実施例2における硫黄固化成型体パネル接合物の製造工程を説明するための概略工程図である。
【図3】実施例3における硫黄固化成型体パネル接合物の製造工程を説明するための概略工程図である。
【図4】実施例3の製造工程に予熱工程を追加した実施例4における該予熱工程を説明するための概略図である。
【図5】実施例5における硫黄固化成型体パネル接合物の製造工程を説明するための概略工程図である。
【図6】実施例6における硫黄固化成型体パネル接合物の製造工程を説明するための概略工程図である。
【図7】実施例1の製造工程において加熱溶融を熱風吹き付け方向制御ガイドを用いて行った実施例7における該加熱溶融工程を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0029】
10,11,30,31,50,51,60,61:硫黄固化成形体パネル
12,32,52a,52b,62:外縁部
13,33,53,63:ドライヤー式熱風発生器
44:セラミックヒーター
14,34,54:ヘラ
24:電気コテ
35,65,66a,66b:溝
67:アダプター
77a,77b:熱風吹き付け方向制御ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硫黄含有セグメントを接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、
接合するための接合面を有する硫黄含有セグメントを複数準備する工程(A)と、
複数の硫黄含有セグメントの接合面を密着固定する工程(B-1)と、
前記密着させた接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-1)と、
加熱溶融した外縁部をならす工程(D)と、
加熱溶融部を冷却固化する工程(E)とを含み、
前記工程(C-1)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うことを特徴とする硫黄含有接合物の製造法。
【請求項2】
複数の硫黄含有セグメントを接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、
接合するための接合面を有する硫黄含有セグメントを複数準備する工程(A)と、
複数の硫黄含有セグメントの接合面を離隔して固定する工程(B-2)と、
前記離隔して固定した各接合面の外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(C-2)と、
外縁が加熱溶融された状態の各接合面を密着する工程(C-3)と、
加熱溶融した外縁部をならす工程(D)と、
加熱溶融部を冷却固化する工程(E)とを含み、
前記工程(C-2)における加熱溶融を、外縁部から離隔して熱する発熱手段を用いて行うことを特徴とする硫黄含有接合物の製造法。
【請求項3】
複数の硫黄含有セグメントの接合面を含む少なくとも端部形状が、各セグメントの接合面を密着した際に、該接合面の外縁の一部が低部に位置する溝が形成されるように成形されていることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
前記外縁部から離隔して熱する発熱手段が、熱風吹付け手段である請求項1〜3のいずれか1項記載の製造法。
【請求項5】
工程(C-1)又は(C-2)の加熱溶融を、熱風が所望箇所に吹き付けられるように熱風吹付け方向制御ガイドを設けて行うことを特徴とする請求項4記載の製造法。
【請求項6】
工程(C-1)又は(C-2)の加熱溶融を行なう前に、少なくとも該加熱溶融箇所を予熱する工程を更に含む請求項1〜5のいずれか1項記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−212800(P2006−212800A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25055(P2005−25055)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】