説明

硫黄回収設備

【課題】 硫黄含有ガスから硫黄を高い効率で回収することができ、全体の構成機器が少なく設備コストが低く、トラブルや必要なメンテナンスが少なく、高い稼働率で安定して作動できる硫黄回収設備を提供する。
【解決手段】 高濃度のSO2ガスを含む高SO2ガスを還元し、クラウス反応をさせて硫黄ガスを含む硫黄含有ガスを生成し、この硫黄含有ガスから固体硫黄を回収する硫黄回収設備であって、冷却水噴霧装置13を備え硫黄含有ガスを硫黄の融点以下まで冷却する硫黄固化装置12と、固化した固体硫黄を分離・回収する固体硫黄分離装置14(例えばバグフィルタ等集塵器)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高SO2ガスから硫黄を回収する硫黄回収設備に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭、石油を原料とする発電設備やガス化設備では、高濃度(例えば4〜20%)のSO2ガスを含む排ガスが発生する。そのため、かかる排ガス(以下、高SO2ガスと略称する)を処理するために、図2に例示する硫黄回収設備が従来から用いられている。
【0003】この硫黄回収設備は、SO2還元器1、クラウス反応器2、硫黄洗浄器3、硫黄コンデンサ4、ミスト除去器5、硫黄タンク6等からなる。SO2還元器1は、800〜900℃の高温において高SO2ガスを石炭と反応させて全量をH2Sに変換する。この反応は、反応式(1)で示される。
SO2+1.5C+H2O→H2S+1.5CO2...(1)
【0004】クラウス反応器2は200〜250℃の温度において触媒(例えばTiO2)を用いてH2SとSO2を反応させ硫黄ガスSを生成する。この反応は、反応式(2)で示される。
2H2S+SO2→3S+2H2O...(2)
【0005】硫黄洗浄器3、硫黄コンデンサ4、ミスト除去器5及び硫黄タンク6は、ガス状の硫黄を液体状態で回収する硫黄凝縮装置であり、硫黄洗浄器3において不純物(塩素、アンモニア等)を硫黄の液滴と直接接触させて除去し、硫黄コンデンサ4で硫黄ガスを硫黄の固化温度(約119℃)よりわずかに高い温度(例えば約130℃)まで冷却して硫黄ガスを凝縮させて液として硫黄タンク6に回収し、更にガスに同伴されるヒューム状の硫黄(液)をミスト除去器(エリミネータ)で回収するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した液体状態の硫黄を回収する硫黄凝縮装置では、硫黄コンデンサ及びミスト除去器による硫黄ガスの回収効率が低い問題点があった。すなわち、硫黄コンデンサ4による冷却速度が早すぎると硫黄のフォグ(霧状のミストを含む)が生成され、この捕集が難しく回収率が大幅に低下する。また、硫黄の固化温度(約119℃)以下まで冷却すると、固形分が大量に発生し、ミスト除去器の詰まりを引き起こす。そのため、硫黄コンデンサは、例えば高さが10m以上の細い冷却管を多数内蔵する大型の熱交換器となり、装置が非常に大型であり、製造コストが高いばかりでなく、硫黄含有ガスの温度制御が複雑となる問題点があった。
【0007】また図2に示した単段の設備では回収率が低いため、図3に例示するように、実際の設備では硫黄洗浄器3、硫黄コンデンサ4、及びミスト除去器5からなるシステムを2段(又は3段以上)にする必要がある。更にその場合に、クラウス反応器2や熱交換器を複数設置する必要もあり、全体の構成機器が多く、設備コストが高く、かつトラブルや故障が発生しやすい問題点があった。また、ミスト除去器が粘性の高い液体硫黄によって詰まりやすいため、そのメンテナンスに時間と労力を要し、稼働率が低下する問題点があった。
【0008】本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、硫黄含有ガスから硫黄を高い効率で回収することができ、全体の構成機器が少なく設備コストが低く、トラブルや必要なメンテナンスが少なく、高い稼働率で安定して作動できる硫黄回収設備を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、高濃度のSO2ガスを含む高SO2ガスを還元し、クラウス反応をさせて硫黄ガスを含む硫黄含有ガスを生成し、この硫黄含有ガスから固体硫黄を回収する硫黄回収設備であって、硫黄含有ガスを硫黄の融点以下まで冷却する硫黄固化装置(12)と、固化した固体硫黄を分離・回収する固体硫黄分離装置(14)と、を備えたことを特徴とする硫黄回収設備が提供される。
【0010】本発明の好ましい実施形態によれば、前記硫黄固化装置(12)は、冷却水噴霧装置(13)を備え、冷却水を硫黄含有ガス中に直接噴霧して硫黄含有ガスを119℃以下に冷却するようになっており、前記固体硫黄分離装置(14)は、フィルタ(15)を備え、これにより固体硫黄を分離・回収するようになっている。
【0011】上記本発明の構成によれば、硫黄固化装置(12)により、クラウス反応器から排出された蒸気状(気体)の硫黄含有ガス中に、調湿用の冷却水を注入・噴霧し、このガスを119℃(硫黄の融点)以下に冷却して硫黄蒸気を固体硫黄とし、次いで固体硫黄分離装置(14)(例えばバグフィルタ等集塵器)でこの固体硫黄を分離・回収することができる。
【0012】従って、硫黄固化装置(12)により冷却水を硫黄含有ガス中に直接噴霧することにより、大型の硫黄コンデンサを用いることなく小型かつシンプルな設備で、確実に硫黄含有ガスを冷却して固体硫黄にすることができる。また、単にガス温度を急冷すればよいため、複雑な温度制御が不要となる。更に、119℃以下まで冷却することにより硫黄のフォグの発生を抑えられるので、バグフィルタ等の集塵器により固形分(固体硫黄)を高い回収率で回収できる。また、このバグフィルタ等の集塵器は、従来から発電設備で多用されており、トラブルや必要なメンテナンスが少なく、高い稼働率で安定して作動できる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による硫黄回収設備の全体構成図である。この図に示すように、本発明の硫黄回収設備10は、図2に示した従来の硫黄回収設備と同様に、SO2還元器1及びクラウス反応器2を備え、SO2還元器1において、高濃度のSO2ガスを含むガス(高SO2ガス)を石炭と反応させて全量をH2Sに変換し、次いで、クラウス反応器2において触媒を用いてH2SとSO2を反応させ硫黄ガスSを生成するようになっている。
【0014】本発明の硫黄回収設備10は、更に、硫黄固化装置12と固体硫黄分離装置14を備える。
【0015】硫黄固化装置12は、冷却水噴霧装置13を備え、冷却水を調湿水として硫黄含有ガス中に直接噴霧して硫黄含有ガスを119℃以下に冷却するようになっている。調湿水の流量は、硫黄含有ガスを119℃以下に冷却できる限りで少量に調節し、水分が全量気化して水蒸気となるように設定するのがよい。この構成により、硫黄含有ガスを硫黄の融点以下まで冷却して全量を固体硫黄にすると共に、水分を全量ガス化して、固体硫黄分離装置14における固体硫黄の回収効率を高めることができる。
【0016】固体硫黄分離装置14は、例えばバグフィルタ等の集塵器であり、フィルタ15を備え、これにより固体硫黄を分離・回収するようになっている。なお、硫黄固化装置12と固体硫黄分離装置14で回収した固体硫黄は、固体硫黄タンク16に回収し、硫酸、肥料の原料、パルプ工場における蒸解液、その他に再利用される。
【0017】上記したように、本発明の硫黄回収設備は、硫黄を従来のように液体状態で回収するのではなく、固体状態で回収する点で大きく相違する。すなわち、本発明の構成によれば、硫黄固化装置12により、クラウス反応器から排出された蒸気状(気体)の硫黄含有ガス中に、調湿用の冷却水を注入・噴霧し、このガスを119℃(硫黄の融点)以下に冷却して硫黄蒸気を固体硫黄とし、次いで固体硫黄分離装置(14)(例えばバグフィルタ等集塵器)でこの固体硫黄を分離・回収することができる。
【0018】従って、硫黄固化装置12により冷却水を硫黄含有ガス中に直接噴霧することにより、大型の硫黄コンデンサを用いることなく小型かつシンプルな設備で、確実に硫黄含有ガスを冷却して固体硫黄にすることができる。また、単にガス温度を急冷すればよいため、複雑な温度制御が不要となる。更に、119℃以下まで冷却することにより硫黄のフォグの発生を抑えられるので、バグフィルタ等の集塵器により固形分(固体硫黄)を高い回収率で回収できる。また、このバグフィルタ等の集塵器は、従来から発電設備で多用されており、トラブルや必要なメンテナンスが少なく、高い稼働率で安定して作動できる。
【0019】なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0020】
【発明の効果】上述したように、本発明の硫黄回収設備は、硫黄含有ガスから硫黄を高い効率で回収することができ、全体の構成機器が少なく設備コストが低く、トラブルや必要なメンテナンスが少なく、高い稼働率で安定して作動できる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による硫黄回収設備の全体構成図である。
【図2】従来の硫黄回収設備の全体構成図である。
【図3】図2の硫黄回収設備の硫黄凝縮装置の具体例である。
【符号の説明】
1 SO2還元器
2 クラウス反応器
3 硫黄洗浄器
4 コンデンサ
5 ミスト除去器
6 硫黄タンク
10 硫黄回収設備
12 硫黄固化装置
13 冷却水噴霧装置
14 固体硫黄分離装置
15 フィルター(バグフィルター)
16 固体硫黄タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高濃度のSO2ガスを含む高SO2ガスを還元し、クラウス反応をさせて硫黄ガスを含む硫黄含有ガスを生成し、この硫黄含有ガスから固体硫黄を回収する硫黄回収設備であって、硫黄含有ガスを硫黄の融点以下まで冷却する硫黄固化装置(12)と、固化した固体硫黄を分離・回収する固体硫黄分離装置(14)と、を備えたことを特徴とする硫黄回収設備。
【請求項2】 前記硫黄固化装置(12)は、冷却水噴霧装置(13)を備え、冷却水を硫黄含有ガス中に直接噴霧して硫黄含有ガスを119℃以下に冷却するようになっており、前記固体硫黄分離装置(14)は、フィルタ(15)を備え、これにより固体硫黄を分離・回収するようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載の硫黄回収設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−122602(P2001−122602A)
【公開日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−301731
【出願日】平成11年10月22日(1999.10.22)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)