説明

硫黄種制御堆積法

本発明は、周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート及びチオインデートから成るグループから選択される三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の硫化物化合物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法である。 この方法は、基板上で含硫黄の薄膜組成物を形成するための前記所定の組成の硫化物を含む少なくとも一つのソース材料を揮発させるステップと、前記少なくとも一つのソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種が前記基板上に衝突することを同時に防止するステップとを備えている。 当該方法は、高い誘電係数を有する厚膜誘電体層を用いているフルカラーACエレクトロルミネッセンスディスプレイ用の発光体材料の輝度及び発光スペクトラムを改良するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数元素の薄膜組成物を堆積するための方法に関する。
より具体的には、本発明は、発光体組成物(phosphor composition)を堆積するための方法であって、堆積された発光体組成物内に含有される硫黄量を制御する方法に関する。
この方法は特に、IIA族及びIIB族元素のチオアルミ酸塩(thioaluminate)、チオガレート(thiogallate)若しくはチオアルミ酸塩を有する発光体組成物を堆積するのに好適であって、(複数の)ソース材料は、堆積された発光膜を有する少なくともいくつかの元素を含有する硫化物を含んでいる。
この方法は更に、高い誘電係数を有する厚膜誘電体層を用いているフルカラーACエレクトロルミネッセンスディスプレイ用の発光体を堆積するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に例示されている厚膜誘電体構造は典型的にはセラミック基板上に形成されており、絶縁破壊に対する優れた抵抗力を有すると共に、ガラス基板上に形成される薄膜エレクトロルミネッセンスディスプレイ(TFEL:thin film electroluminescent)と比べて動作電圧を低減させる。
セラミック基板上に形成される際に、厚膜誘電体構造は、ガラス基板上に形成されるTFELデバイスよりも、高いプロセス温度に耐える。
高温に対する許容範囲が増加すると、発光膜の焼なましをより高温で行うことが可能となり、明度が向上される。
しかしながら得られる明度が改善されるとしても、デバイスの発光効率の更なる増大により、全体的なエネルギー効率の改善及び消費電力の低減を可能とすることが要請されている。
【0003】
本出願人は既に、厚膜誘電体を備えたエレクトロルミネッセンスデバイスに使用される発光体の堆積方法を種々開発している。
例えば、特許文献2(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)は、三元元素、四元元素若しくは類似の発光体組成物を、好適には電子ビームで気化させる堆積方法を開示しており、当該組成物の構成要素は異なるソース上に配置されている。
当該組成物は特に、IIA族及びIIB族元素のチオアルミ酸塩、チオガレート若しくはチオインデート(thioindates)であって、そのような化合物を形成する硫化物は異なるソース上に配置されている。
特許文献3(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)は、デュアル・ソースの電子ビーム堆積を使用したデュアル・ソースの発光体堆積方法を開示している。
第1のソース及び第2のソースの種々の化合物は、要求される発光体組成を有するために要求される割合とされている。
堆積された発光体は好適には、青色を発光するユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩(barium thioaluminate)である。
特許文献4(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)は、制御された組成の多元素発光膜を堆積するためのシングル・ソースのスパッタリング方法を開示している。
この方法では、発光体の所望の膜組成とは異なる組成を有する単一の高密度ターゲットの形態を為すソース材料が用いられている。
プロセスのターゲット組成における重い化学元素に対する軽い化学元素の濃度は、堆積膜における所望の濃度よりも高濃度とされている。
【特許文献1】米国特許第5,432,015号明細書
【特許文献2】国際公開第02/051960号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/023957号パンフレット
【特許文献4】国際公開第02/097155号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/70917号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,589,674号明細書
【特許文献7】米国特許第6,771,019号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許出願には、所望の発光体と、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイに使用するために該発光体を堆積する方法とが開示されている。
しかしながら、発光体組成物の輝度と発光効率とを更に改良するための新しい方法を提供することが常に要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスデバイスのための多元素の薄膜組成物を堆積する方法に関する。
この方法においては、薄膜組成物を堆積する際、堆積チャンバ内で硫黄量が制御される。
このようにして、堆積基板上に衝突する硫黄量、ひいては薄膜内に組み込まれる硫黄量が制御される。
とりわけ本発明の方法は、周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート若しくはチオインデートから成るグループから好適には選択される三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の含硫黄化合物を堆積するのに有用である。
本発明の方法によって堆積された発光体は、従来技術の方法で堆積された発光体に比べて、改善された輝度と発光効率とを示す。
【0006】
この方法においては、堆積される発光体の組成物を構成する1以上のソース材料が、例えば低圧の物理気相堆積法によって適宜の基板上に堆積される。
ソース材料の相対的な揮発化(volatization)は、堆積基板上での金属種の所望の比率を得るように制御される。
堆積基板上であらゆる過度の含硫黄種が堆積され、ひいては堆積された発光体組成物に組み込まれることを除去、防止及び/または最小化するために、吸着材料若しくは濃縮材料(gettering or condensing material)がソース材料に実質的に隣接して設けられる。
この方法は、吸着材料若しくは濃縮材料から濃縮された含硫黄種が再度蒸発しないように、十分に低い温度で実行される。
【0007】
吸着材料若しくは濃縮材料は、あらゆる過度の含硫黄種を効果的に吸収若しくは濃縮するために十分な表面領域に亘って設けられる。
そのような過度の量とは、薄膜発光体組成物の所望の組成を提供するために要求される量を超過する量として定義付けられる。
この点は、当業者であれば直ちに理解されるであろう。
発光体組成物内に堆積された過度の量の硫黄は、堆積された発光体組成物の明度に有害となる場合がある。
【0008】
本発明の一の態様によれば、周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート及びチオインデートから成るグループから選択される三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の硫化物化合物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法であって、
− 基板上で含硫黄の薄膜組成物を形成するための前記所定の組成を形成する硫化物を含む少なくとも一つのソース材料を揮発させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種が前記基板上に衝突することを最小化させるステップと、
を備えていることを特徴とする方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート及びチオインデートから成るグループから選択される三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の硫化物化合物を含む所定の組成の発光体薄膜を基板上に堆積する方法であって、
− 基板上で含硫黄の薄膜組成物を形成するための前記所定の組成を形成する硫化物を含む少なくとも一つのソース材料を揮発させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種が前記基板上に衝突することを同時に最小化させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料からの蒸発物から生じる酸素及び/または水を濃縮若しくは除去するステップと、
を備えていることを特徴とする方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様は、三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の組成物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法であって、
(i) 前記所定の組成の構成要素を含む1の硫化物のペレットをソース材料として提供し、前記ペレットに前記所定の組成のための添加物を追加的に含有させるステップと、
(ii) 電子ビームで前記ペレットを蒸発させることにより、前記所定の組成の基板上への気相堆積を実効させるステップと、
(iii) 前記ペレットからの硫化物の蒸発速度をモニターするステップと、
(iv) 前記ペレットから揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種を同時に除去し、前記過度の量が前記基板上に衝突することを阻止するステップと、
を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の実施形態においては、堆積された薄膜組成物は、ユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩またはユーロピウムで活性化されたカルシウムチオアルミ酸塩の発光体組成物を含有する発光体である。
【0012】
好適な実施形態においては、堆積チャンバ内で(複数の)ソース材料から生成されたあらゆる過度の量の含硫黄種は、(複数の)ソース材料に実質的に隣接して設けられた吸着材料若しくは濃縮材料によってチャンバから除去され、この(複数の)ソース材料の揮発により生成されたあらゆる過度の量の含硫黄種を吸収若しくは濃縮する。
このことは、濃縮された含硫黄種の再蒸発を防止するような十分に低い温度で行われる。
再蒸発を防止する温度は、当業者に公知の通り、問題とする種についての温度の関数としての平衡蒸気圧を調べ、平衡蒸気圧が堆積プロセスのベース圧力よりも低くなるような温度よりも低い温度を選択することによって確立される。
一般的に含硫黄種については、液体窒素の沸点である77K度近くの温度とすることが便利である。
前記吸着材料若しくは濃縮材料は、当業者に理解される通り、あらゆる過度の量の含硫黄種を効果的に濃縮/吸収するように十分な表面積を有している。
【0013】
本発明の更なる実施形態においては、(a)例えばSOのような酸素も含有する場合があるあらゆる過度の含硫黄種を最小化すると共に、(b)(複数の)ソース材料から放射された蒸発物の束(flux of evaporant)から生じた酸素分子及び/または水を濃縮若しくは除去して、これが堆積チャンバ内の堆積基板上に衝突することを防止するために、1以上の物質を更に有することができる。
硫化物の蒸発源が、硫酸塩若しくは亜硫酸塩の化合物及び水のような酸素耐性を有する不純物を含有していると、酸素はこれら蒸発源から生じる場合がある。
そのような物質は、本堆積方法で使用される(複数の)ソース材料に実質的に隣接して設けられることが好ましい。
【0014】
本発明の更に別な実施形態においては、硫黄(好適には原子硫黄)の揮発源は、堆積された発光膜における所望量に対する硫黄の不足を補うために堆積チャンバ内に設けられる。
硫黄の揮発源は、硫黄が堆積基板上に均一に衝突するようにチャンバ内に向けて注入される。
【0015】
本発明の別の態様は、三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の組成物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法であって、
(i) 第1のソース材料として少なくとも1つの硫化物のペレットを提供すると共に、第2のソース材料として少なくとも1つの硫化物のペレットを提供し、前記第1のソース材料の硫化物と第2のソース材料の硫化物とを異なるものとし、前記硫化物を前記組成物の構成要素と為し、前記第1のソース材料及び前記第2のソース材料の少なくとも1つのペレットに、前記組成物のための添加物を追加的に含有させるステップと、
(ii) 別個の電子ビームで前記第1のソース材料及び前記第2のソース材料の前記ペレットを同時に蒸発させることにより、前記基板上への前記組成の気相堆積を実効させるステップと、
(iii) 前記第1のソース材料及び前記第2のソース材料からの硫化物の蒸発速度を独立してモニターするステップと、
(iv) 前記第1のソース材料及び前記第2のソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種を除去し、前記過度の量が前記基板上に衝突することを阻止するステップと、
を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な記述から明らかとなるであろう。
しかしながら、当業者であれば、この詳細な記述から本発明の精神及び技術的な範囲内で種々の改変が可能であることが明らかであり、かかる詳細な記述及び特定の実施例は、本発明の実施形態を示す一方で単なる例示に過ぎないことは認識されてしかるべきである。
【0017】
本発明は、単なる例示であって本発明の意図する技術的範囲を限定するものではない以下の詳細な説明と添付図面とから、より完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、薄膜組成物及び特に三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の含硫黄化合物を堆積する方法である。
この方法にあっては、堆積基板上、ひいては堆積された発光体組成物内へ堆積される硫黄量は、気相堆積雰囲気内における含硫黄種の量によって制御される。
このような含硫黄種の量の制御は、ソース若しくは複数のソースから堆積雰囲気内へ揮発されるあらゆる過度の含硫黄種を吸収若しくは濃縮することによって達成され、これにより硫黄が、堆積基板へ過度に衝突し、ひいては堆積された発光体組成物中に組み込まれることを防止する。
【0019】
本発明の気相堆積方法は特に、基板上に発光体組成物を堆積するのに好適であって、発光体組成物は、所望の硫黄を含有するよう制御された周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート若しくはチオインデートから成るグループから選択される。
本発明の方法を使用して、高い明度且つ有用な発光色を備えた発光体が得られる。
【0020】
本発明の気相堆積方法は、単一のソース材料若しくは代替的に複数のソース材料によって実効されるものであって、選択された当該単一のソース若しくは複数のソースは、活性種を含んで基板上で所定の組成を形成する。
本発明では種々の気相堆積方法を用いることができ、具体的にはスパッタリング、電子ビーム堆積あるいは熱堆積が含まれるが、これらに限定されるものではない。
好適な方法は電子ビーム堆積である。
使用される(複数の)ソース材料から基板上へ堆積され、発光体組成物を形成する構成要素を堆積する際の時間的な変動は、本出願人による特許文献2(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)で教示されているように、(複数の)ソース材料からの同時の気相堆積を実効あらしめるようにモニター及び制御される。
本発明の堆積方法においては、堆積基板上における硫黄の入射束(flux of sulfur incident)が、発光膜内で所望の硫黄含有量を得られるように制御される。
【0021】
硫黄の堆積の束(sulfur deposition flux)は、堆積チャンバ内の硫黄の分圧によって制御される。
しかしながら、この制御をうまく行うためには、プロセス雰囲気を有する含硫黄種は、蒸気分子あたり平均して一定の数の硫黄分子を含有していなければならない。
もし含硫黄種が変動する硫黄原子数を含んでいると、チャンバ内の硫黄の質量密度は硫黄の分圧に対して一定の関係を生じず、このため、異なる数の硫黄原子を有する分子の相対存在量(relative abundance)に従って硫黄の堆積速度は変動するであろう。
【0022】
もし硫黄分子が堆積チャンバ内で別の場所で発生した蒸気を含んでいると、堆積チャンバ内の硫黄の分圧を制御することも困難である。
例えば、蒸気の分子が約500℃未満の温度であるチャンバ壁上で濃縮された硫黄元素から生じるならば、蒸発された硫黄は主に、S、S若しくはSのような硫黄原子環を有するであろう。
図1は、温度の関数としての硫黄蒸気圧に寄与する硫黄種の平衡存在量(equilibrium abundance)を示している。
もし蒸気分子が硫化水素であれば、硫黄原子は1つだけ含まれている。
もし硫黄が、硫化物のソース材料を電子ビーム加熱して生じるものであれば、含硫黄種は、硫化物のソース材料の硫黄原子から、Sの分子若しくは分子クラスタまでの範囲の種を含有する場合がある。
従って、堆積チャンバ内の硫黄の質量密度は、これらの種の混合度に依存して、与えられた硫黄種の分圧で8倍まで変動し得る。
もし酸素、水若しくは二硫化水素のような他の蒸気種が存在するならば、蒸発された硫黄の質量密度の制御は一層困難となるであろう。
【0023】
本発明は、堆積基板上に衝突し、ひいては堆積された発光体組成物中に堆積される硫黄蒸気の質量移送(mass transport)を制御することにより、堆積された発光膜の硫黄含有量を制御する機構を提供して前述の制約を解消するものである。
この制御によって、堆積基板上に衝突するために生ぜられた硫黄を含有する蒸気の分子種は、分子あたり平均して実質的に時間変動しない数の硫黄原子を有することが保証される。
更には、堆積プロセスの際の硫黄の分圧は、堆積膜内の所望の硫黄含有量に相応する値に制御される。
本発明で使用される硫黄分圧の適切な範囲は、硫化物膜を堆積するために、電子ビーム堆積、熱堆積若しくはスパッタリング技術及び1以上のソース材料を更に使用した従来技術で知られている範囲に相応するものである。
例えば、もし電子ビーム堆積が本発明の堆積方法として使用されるならば、硫黄は、1×10−5トールから1×10−4トールの分圧範囲での硫化水素として提供され得る。
【0024】
含硫黄種の時間不変混合度は、硫化物分子、硫化物分子クラスタ、硫黄分子、硫黄原子あるいは硫化水素を含む場合がある。
好適には、混合物を構成する硫黄種分子の率、とりわけ高分子量の率は最小に維持される。
本発明の方法によって、堆積の際に濃度が時間変動するあらゆる過度の硫黄種分子は濃縮若しくは吸収され、従って、かかる硫黄種が堆積基板上に衝突せず、堆積された発光体組成物中に組み込まれないように、堆積雰囲気中から除去される。
これは上述したように、堆積雰囲気圧力を低く維持することによって実効され、これにより含硫黄蒸気種の平均自由工程は十分に長くなると共に、堆積雰囲気内で種々の含硫黄種が相互に衝突して、異なる数の硫黄原子を含有する種の個数分布が時間的に変化する可能性が実質的に無くなる。
【0025】
基板上に堆積される硫黄含有量の制御は、あらゆる過度の含硫黄種を吸収若しくは濃縮し、ひいては堆積雰囲気中から除去する1以上の材料を使用することによって実効される。
そのような(複数の)材料は、ここでは吸着材料若しくは濃縮材料と称することとし、当業者に知られている硫黄種を吸収若しくは濃縮するあらゆる材料として定義付けられるものであり、全体的な効果として、過度の硫黄種を堆積雰囲気から除去すると共に、過度の硫黄種が堆積基板上に衝突することを防止する。
そのような材料には、堆積雰囲気中で、濃縮された硫黄種の蒸気圧が所望の硫黄種の作動圧よりも実質的に下回るような十分に低い温度で硫黄種を選択的に吸着するゲッター(getters)、冷却トラップ(cold traps)若しくは冷却フィンガー(cold fingers)が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
冷却トラップの一例としては、内部で液体窒素が十分な流速を生じると共に硫黄種を適切に濃縮するのに十分な表面積を有する管が挙げられる。
本発明の方法で使用する吸着剤の一例としては、チタンスポンジが挙げられる。
過度の硫黄種を、堆積基板に衝突する前に吸収及び/または濃縮するためには、吸着材料若しくは濃縮材料の位置決めが重要である。
吸着材料若しくは濃縮材料の好適な位置は、種の主要ソース、すなわち堆積のために使用される1以上の硫化物ソース材料に実質的に隣接する位置である。
【0026】
本発明の更なる実施形態においては、硫化物ソース内の不純物から生じる二酸化硫黄、酸素分子、及び/または水を除去するために、金属硫酸塩若しくは金属亜硫酸塩のような1以上の追加的な物質を使用することができ、これにより堆積チャンバ内の酸素分圧が許容限度内に維持される。
そのような物質は換言すると、使用される(複数の)ソース材料から揮発されるかもしれない例えばSOのような酸素も含有する過度の含硫黄種を最小化する。
この実施例においてSOは、液体窒素の冷却トラップを用いて濃縮することができる。
当業者であれば理解されるように、許容される圧力範囲は、堆積膜の酸素若しくは水の含有量を所望の含有量と比較して測定することにより、定常試験的に決定される。
酸素を名目上含有しない膜については、酸素分圧は、堆積及び含硫黄種の導入の前の堆積環境に対するベース圧力よりも低い値に維持される。
含硫黄種が酸素を含有しないことは保証されなければならない。
堆積チャンバ内で水が揮発して存在する本発明のこの実施形態においては、当業者に公知のモレキュラーシーブ(molecular sieve)の如き水吸着材料を、硫化物ソース内の不純物若しくは堆積チャンバ壁から生じる水を除去するために用いることができる。
当業者であれば理解されるように、そのような水吸着材料は、材料の上の残留水の蒸気圧が十分に低くなるように選択される。
【0027】
本発明の方法は、あらゆる過度の含硫黄種が堆積基板上に衝突し、ひいては堆積される発光体組成物中に組み込まれるのを制御するために使用される。
しかしながら、所望の輝度と発光効率とを有するためには堆積される発光体組成物が十分な硫黄を含有していることを保証することが依然として重要である。
堆積された膜に硫黄が不足しないよう保証する目的のために、硫化物の化合物を含む1以上のソースに追加される硫黄ソースとしては、硫化水素が適切である。
堆積チャンバ内に導入される前に硫化水素が硫黄原子と水素原子とに分解され、発光膜が堆積されるときには表面に水素原子が存在しないようにされることが好ましい。
水素原子は非常に反応性が高くて結晶格子内を移動しやすく、このため発光膜及びその下の基板の特性に悪影響を及ぼす場合がある。
硫化水素の注入速度を、発光膜の硫黄含有量を所望の値に調節するために変更しても構わない。
堆積温度、堆積圧力、堆積速度及び堆積雰囲気の組成は、従来技術に示されているように、所望の発光膜組成物を達成するために調整され得る。
【0028】
本発明は、含硫黄種を組み込んだ厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスデバイスの断面を表す図2に示されている実施形態によって更に説明される。
全体として参照符号10が付されている当該デバイスは、基板12を備えており、この基板12上には列電極(row electrode)14が設けられている。
厚膜誘電体16上には薄膜誘電体18が設けられている。
薄膜誘電体18は、該薄膜誘電体18上に設けられ、参照符号20、22及び24が付された3つのピクセルカラム(pixel columns)と共に示されている。
これらピクセルカラムは、三原色すなわち赤、緑、青を提供するための含硫黄発光体を含んでいる。
ピクセルカラム20は、薄膜誘電体18と接触して設けられている赤色発光体26を有している。
別の薄膜誘電体28が赤色発光体26上に設けられており、カラム電極(column electrode)30が薄膜誘電体28上に設けられている。
同様にしてピクセルカラムは緑色発光体32を有しており、この緑色発光体32上には薄膜誘電体34とカラム電極36とが設けられている。
ピクセルカラム24は薄膜誘電体18上に青色発光体38を有しており、この青色発光体38上には薄膜誘電体40とカラム電極42とが設けられている。
【0029】
本発明の方法の一の実施形態においては、希土類で活性化されたチオアルミ酸塩を含む薄膜発光体を堆積し、高いエネルギー効率及び高い明度が達成されている。
この方法は、三元元素化合物若しくは四元元素化合物の形で発光体を堆積し、3つ、4つ若しくはそれ以上の構成元素の制御された比率を精密な許容範囲内に維持し、これにより、最良の発光体性能を発揮すると共に発光体材料が1以上の結晶相を形成する可能性を低減するために使用することができる。
この方法は更に、酸素のような不純物の濃度が最小に維持されることを保証するものである。
【0030】
本発明の方法は、例えば本出願人による特許文献1(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に教示されているように、厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイに組み込まれる上記した発光体組成物の範囲を有する薄膜発光体にも適用可能である。
1以上の硫化物含有材料を含むこれらの発光体組成物に対しては種々のソース材料を用いることができることが理解されるであろう。
これら発光体組成物は、種々の添加物とりわけユーロピウム及びセリウムを用いて活性化され得る。
【0031】
堆積された発光体の化学量論組成は、本出願人による特許文献2(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に開示されているように制御され得る。
異なる化学的組成を有する2以上の堆積のソース材料を、複数のソースについて互いに独立してソースの堆積速度を測定する堆積速度測定システム、及び測定された堆積速度に相応して相対的な堆積速度を制御するフィードバックシステムと共に使用することにより、堆積の際の化学量論の制御が実効される。
【0032】
上記開示により本発明を概説しているが、以下の特定の実施例を参照することにより、更に完全な理解が得られるであろう。
これらの実施例は、単に説明を目的とするものであり、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
目的に適うものであれば状況に応じて変形及び均等物との置換が企図される。
本明細書には特定の用語が用いられているけれども、かかる用語は説明的な意図で使用しているものであって、限定目的で使用しているものではない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
厚膜誘電体性エレクトロルミネッセンスデバイスを、ユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩の薄膜発光層を組み込んで構成した。
厚膜基板は5cm×5cmで厚さが0.1cmのアルミナ基板である。
この基板上には金電極が堆積され、次いで高誘電率を有する厚膜の誘電体層が、2000年5月12日に出願された本出願人による同時係属の特許文献5(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に例示されている方法に従って堆積された。
本出願人により2001年1月17日に出願された同時係属の特許文献6(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されているゾル・ゲル技術(sol gel technique)を使用して、100nm〜200nmのチタン酸バリウムの薄膜誘電体層を厚膜誘電体層の上に堆積した。
【0034】
本出願人による特許文献2(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)の方法に従って、バリウムに関して3原子%のユーロピウムで活性化された600nmの厚さのバリウム・マグネシウムチオアルミ酸塩(barium magnesium thioaluminate)を、チタン酸バリウム層の上へ電子ビーム堆積により形成した。
【0035】
この実施例については、発光体の堆積に際して硫黄種の混合度を制御しなかった。
堆積の次に、堆積された発光体に700℃〜750℃のピーク温度で約1分間、ベルト炉内の窒素雰囲気中での焼きなましを施した。
次に50nmの厚さの窒化アルミニウム層を発光層上にスパッタリングによって堆積し、その後、本出願人による特許文献6(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)の方法に従って、インジウムスズ酸化物の導体膜を堆積した。
完成されたデバイスを、インジウムスズ酸化物の堆積後、試験前に、約550℃の空気中で焼きなましを施し、次いで約550℃の窒素雰囲気下で焼きなましを施した。
【0036】
当該デバイスは、パルス幅30nsで光学的な閾値電圧よりも振幅で60V高くした240Hzの交流の方形波状の電圧波形を印加して試験に供された。
図3は、デバイスに対する印加電圧の関数としての輝度を示すものである。
データから理解されるように、閾値電圧である160Vよりも60V高い電圧での輝度は、約65カンデラ/mであった。
【0037】
第2の発光膜が、同じ堆積作業の際に前記テストデバイスに隣接するシリコンウェハ上に堆積され、X線回折(XRD:x-ray diffraction)によって分析された。
この第2の発光膜には、過度の硫黄が膜内若しくは膜上に存在していることを示す斜方晶系構造を有する硫黄とバリウムチオアルミ酸塩の相とが存在していた。
このことは、もし揮発種が硫黄分子若しくは硫黄分子クラスタであるならば、予想よりも多い量の硫黄が硫黄ソースから揮発したことを示すものであった。
余分な硫黄の幾分かは、堆積チャンバ壁上で濃縮され、壁部温度のバラツキによって再蒸発され、これにより堆積された発光膜と共に堆積基板上に衝突して濃縮された硫黄元素の形を為していた。
【0038】
(実施例2)
発光体の堆積に用いられる硫化バリウムのソースに隣接して冷却トラップを組み込んだ以外は実施例1のデバイスと同様なデバイスを作製した。
この冷却トラップは、過度の硫黄、酸素及びその他の揮発不純物を濃縮するために使用される。
図3は、このデバイスに対する印加電圧の関数としての輝度を示すものである。
データから理解されるように、閾値電圧である160Vよりも60V高い電圧での輝度は約240カンデラ/mであり、実施例1の輝度の3倍以上であった。
【0039】
テストサンプルに隣接しているシリコンウェハ上に堆積された発光膜を、XRDを用いて分析した。
分析結果は硫黄元素の存在を全く示さなかった。
この実施例は、膜内に過度の硫黄が組み込まれることを防止すると共にデバイス性能の改良を実現するという本発明の利益を示すものである。
【0040】
(実施例3)
図2に全体的に示されるタイプの厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを製造した。
この厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイは、日本国東京所在のAsahi Glass株式会社から入手した5cm×5cm×厚さ1.8mmのPD200ガラス基板上に、200nmの厚さの窒化アルミニウムのバリア層を堆積することにより作成した。
この被覆した基板上に、日本国東京所在のTanaka Kikinzoku International社のTR1207金含有ペーストを印刷し加熱することによって、0.8μmの厚さの金電極被膜を形成した。
次に、本出願人により2002年12月21日に出願された米国特許出願第60/341,790号明細書(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載の汎用の方法を用いて、この金の下部電極上に複合厚膜誘電体層を形成したが、以下で説明するように、プロセスに特定の改変を加えた。
【0041】
この複合厚膜誘電体層は以下のプロセスで、アルミナがコーティングされたガラス上に形成された。
PMN粉体の混合物を使用して、この構造用の厚膜ペーストを準備した。
このPMN粉体は、一方が、0.45μmについてはd50、0.63μmについてはd90の粒子サイズ分布であり、他方は、0.36μmについてはd50、0.63μmについてはd90の粒子サイズ分布であった。
各粉体は、遊星ボールミル内でそれぞれ2時間及び16時間粉砕することによって準備した。
次いで、これらの粉体を重量比1.14:1で混合し、これらを使用して厚膜ペーストを調製した。
約5μmの厚さの第1厚膜誘電体層を基板上に印刷し、圧縮により密度を高め、約700℃〜約720℃の範囲で約18分間加熱した。
【0042】
複合厚膜誘電体層を形成する第2ステップとして、0.5μmの厚さのPZT層を堆積して、約700℃で約7分間加熱した。
この堆積は、本出願人により2000年3月31日に出願された特許文献7(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載のMODプロセスを用いて行った。
このMOD溶液は、粘度が約9〜約15センチポアズの範囲に入るように調整された。
【0043】
複合厚膜誘電体層を形成する第3ステップとして、やはり約5μmの厚さの第2のPMN厚膜誘電体層を堆積させ、密度を高め、加熱した。
第4ステップとして、第2ステップの場合と同じプロセスを用いて、約1.6μmの厚さの第2のPZT層を形成した。
第5ステップとして、約0.5μmの厚さの第3のPZT層を堆積させることによって複合誘電体層を完成させた。
これには、この最上部のPZT層の厚さを約1μmに増加させるのに利用したのと同じプロセスを利用した。
最終ステップとして、本出願人により2001年1月17日に出願された同時係属の特許文献6(引用により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されているように、150nmの厚さのチタン酸バリウム層を厚膜誘電体層の上に堆積した。
【0044】
0.5μmの厚さのユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩の発光層を、実施例2に記載した方法を使用してチタン酸バリウム層の上に電子ビーム堆積した。
電子ビーム堆積装置は4つの電子ビーム源を備えており、それらのうち2つはユーロピウムがドープされた硫化バリウムを有しており、残りの2つはソース材料としての硫化アルミニウムを有していた。
堆積装置は、図4のチャンバの平面図に示されているように、電子銃及びチャンバ下部に配置されたソースを備えて設けられた。
ポンピング部をチャンバの一方の側に接続し、硫化水素の噴霧器をチャンバの反対側に設けた。
堆積プロセスの際に内部を液体窒素が流れる管を、極低温の濃縮表面として機能するように前記ポンピング部と同じ側に設けた。
この濃縮表面は、ソースの上ではあるがポンピング部の下方に位置させた。
これらの特徴は図4に示されている。
2セットのソースを、(やはり図4に示されるように)チャンバを2つの略等しい容積に仕切る壁によって分離したが、2つの半体の間で蒸気の流れが許容されるように開口部を形成した。
チャンバ半体の各々に、1つの硫化バリウムのソースと1つの硫化アルミニウムのソースとを収容させた。
堆積基板を、チャンバの双方の半体周りで回転可能として堆積プロセスの際に2セットのソースから入射する蒸気に交互に露出されるように、チャンバ上部の回転台上に載置した。
【0045】
発光体を堆積した後、ディスプレイを完成させるために、50nmの厚さの窒化アルミニウムの上部誘電体層とインジウムスズ酸化物を含む透明電極とを、実施例1と同様に発光層上に堆積し、そしてディスプレイを雰囲気環境から保護するためにシールした。
【0046】
完成された厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイを、実施例1において定めたテスト条件を用いてテストした。
輝度対印加電圧のデータを図5に示す。
閾値電圧よりも60V高い電圧での輝度は、約600カンデラ/mであったと共に高度の均一性を有していた。
これは、極低温の濃縮器を使用しないで堆積された発光体を有する同様のデバイスよりも実質的に高い値であった。
このデバイスについてのCIE座標は、x=0.135及びy=0.099であり、青色を発光するには最適であった。
【0047】
(実施例4)
実施例3と同様なデバイスを作製したが、発光層は、濃縮表面に最も近い2つのソースのみを使用して堆積された。
また発光体は幾分かのマグネシウムを含有しており、バリウムに対するマグネシウムの原子比率は0.02〜0.04であった。
このデバイスについての輝度対電圧のデータを図6に示す。
閾値電圧である180Vよりも60V高い電圧での輝度は約830カンデラ/mであった。
このデバイスについては、実施例3のデバイスよりも硫黄種及び他の不純物種の濃縮が効率的に行われたものである。
これは濃縮表面が、実施例3のように半分だけでなく全ての電子ビームソースに接近していたからである。
理論に結びつかないものではあるが、このデバイスの輝度が改善されたのは、所望しない種の濃縮がより効率的に行われた結果によるものである。
【0048】
(実施例5)
実施例4と同様なデバイスを作製したが、発光層は、濃縮表面から最も遠い2つのソースのみを使用して堆積され、この結果、所望しない種の濃縮は低い効率で行われた。
このデバイスについての輝度データを図6に示す。
閾値電圧である150Vよりも60V高い電圧での輝度は約380カンデラ/mであり、効率的な濃縮を行った実施例4の輝度の半分未満であり、中間的な濃縮効率で作製された実施例3の輝度の約65%であった。
この結果から、濃縮効率とデバイスの輝度との相関関係が更に裏付けられた。
【0049】
本発明の好適な実施形態が本明細書に詳細に説明されているけれども、当業者が、本発明の精神、または添付クレームの技術的範囲を逸脱することなくこれら実施形態に種々の変形を為し得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】硫黄の蒸気圧に貢献する硫黄種と温度との関係を示す図である。
【図2】厚膜誘電体層と発光体組成物とを有しているエレクトロルミネッセンスデバイスの断面を示す概略図である。
【図3】従来技術の方法によって作成されたユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩の発光体を有する厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイと、本発明の方法によって作成された類似のデバイスとを、明度と印加電圧との関係について比較したグラフを示す図である。
【図4】本発明による発光体堆積チャンバの平面図である。
【図5】本発明の方法によって堆積されたユーロピウムで活性化されたバリウム・マグネシウムチオアルミ酸塩の発光体を有する厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの明度と印加電圧との関係を示す図である。
【図6】発光体堆積の際の効率を低下させる濃縮材料を使用して堆積されたユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩の発光体を有する厚膜誘電性エレクトロルミネッセンスディスプレイの明度と印加電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 デバイス
12 基板
14 列電極
16 厚膜誘電体
18,28,34,40 薄膜誘電体
20,22,24 ピクセルカラム
26 赤色発光体
30,36,42 カラム電極
32 緑色発光体
38 青色発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート及びチオインデートから成るグループから選択される三元元素、四元元素若しくは多元(元素)の硫化物化合物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法であって、
− 基板上で含硫黄の薄膜組成物を形成するための前記所定の組成を形成する硫化物を含む少なくとも一つのソース材料を揮発させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種が前記基板上に衝突することを最小化させるステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記過度の含硫黄種が前記基板上に衝突することを最小化させるために、吸着材料若しくは濃縮材料を設けるステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料を、前記少なくとも一つのソースに実質的に隣接して設けるステップを備えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料を、ゲッター、冷却トラップ及び冷却フィンガーから成るグループから選択するステップを備えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料が、分子あたり平均して実質的に時間変動しない数の硫黄原子を有するように、硫黄を前記堆積基板上で衝突させるステップを備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記揮発を、低い硫黄分圧を有する雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
揮発を、電子ビーム堆積、熱堆積及びスパッタリングから成るグループから選択される方法によって実効させるステップを備えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法を電子ビーム堆積とするステップを備えていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
揮発を、前記吸着材料若しくは濃縮材料からの含硫黄種の再蒸発を防止する温度で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つのソース材料からのあらゆる蒸発物から生じる二酸化硫黄、酸素分子、及び/または水を除去するために、1以上の物質を追加的に含むステップを備えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の物質が、酸素を除去するステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上の物質を、液体窒素の冷却トラップとするステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の物質が、水を除去するステップを備えていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上の物質を、モレキュラーシーブとするステップを備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の組成を、ユーロピウムで活性化されたバリウムチオアルミ酸塩及びユーロピウムで活性化されたカルシウムチオアルミ酸塩から成るグループから選択される発光体組成物とするステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つのソース材料の揮発速度をモニター及び制御するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
2つのソース材料を存在させるステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
3つのソース材料を存在させるステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
揮発を、硫化水素、硫黄原子及び二原子硫黄から成るグループから選択される反応種の雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記種を硫化水素とするステップを備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
周期律表のIIA族及びIIB族からの少なくとも一つの元素であるチオアルミ酸塩、チオガレート及びチオインデートから成るグループから選択される三元元素、四元元素若しくは多元の硫化物化合物を含む所定の組成の発光体薄膜を基板上に堆積する方法であって、
− 基板上で含硫黄の薄膜組成物を形成するための前記所定の組成を形成する硫化物を含む少なくとも一つのソース材料を揮発させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料から揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種が前記基板上に衝突することを同時に最小化させるステップと、
− 前記少なくとも一つのソース材料からの蒸発物から生じる酸素及び/または水を濃縮若しくは除去するステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記過度の含硫黄種を最小化させるために、吸着材料若しくは濃縮材料を設けるステップを備えていることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記吸着材料若しくは濃縮材料を、前記少なくとも一つのソースに実質的に隣接して設けるステップを備えていることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記吸着材料若しくは濃縮材料を、ゲッター、冷却トラップ及び冷却フィンガーから成るグループから選択するステップを備えていることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つのソース材料からのあらゆる蒸発物から生じる酸素及び/または水を濃縮若しくは除去するために、1以上の物質を追加的に含むステップを備えていることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つのソース材料からの揮発を、電子ビーム堆積、熱堆積及びスパッタリングから成るグループから選択される方法によって実効させるステップを備えていることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記方法を、低い硫黄分圧を有する雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法を、前記吸着材料若しくは濃縮材料からの含硫黄種の再蒸発を防止する温度で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法を、硫化水素、硫黄原子及び二原子硫黄から成るグループから選択される反応性硫黄種の雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記種を硫化水素とするステップを備えていることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
三元元素、四元元素若しくは多元の組成物を含む所定の組成の薄膜を基板上に堆積する方法であって、
(i) 前記所定の組成の構成要素を含む1の硫化物のペレットをソース材料として提供し、前記ペレットに前記所定の組成のための添加物を追加的に含有させるステップと、
(ii) 電子ビームで前記ペレットを蒸発させることにより、前記所定の組成の基板上への気相堆積を実効させるステップと、
(iii) 前記ペレットからの硫化物の蒸発速度をモニターするステップと、
(iv) 前記ペレットから揮発されるあらゆる過度の量の含硫黄種を同時に除去し、前記過度の量が前記基板上に衝突することを阻止するステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記ステップ(i)において、
少なくとも1つの硫化物を備えた第2のペレットを第2のソース材料として提供し、前記第2のソース材料の硫化物を前記第1のソース材料の硫化物に対して異ならせ、前記硫化物を前記組成物の構成要素と為し、前記第1のソース材料の前記第1のペレット及び前記第2のソース材料の前記第2のペレットの少なくとも1つに、前記組成物のための添加物を追加的に含有させるステップを備えていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
あらゆる過度の量の硫黄種を除去するために、吸着材料若しくは濃縮材料を設けるステップを備えていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記吸着材料若しくは濃縮材料を、前記第1及び第2のソースと前記第2のソース材料とに実質的に隣接して設けるステップを備えていることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記吸着材料若しくは濃縮材料を、ゲッター、冷却トラップ及び冷却フィンガーから成るグループから選択するステップを備えていることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも一つのソース材料からのあらゆる蒸発物から生じる酸素及び/または水を濃縮若しくは除去するために、1以上の物質を追加的に含むステップを備えていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ソース材料の揮発を、電子ビーム堆積、熱堆積及びスパッタリングから成るグループから選択される方法によって実効させるステップを備えていることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記方法を、低い硫黄分圧を有する雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法を、前記吸着材料若しくは濃縮材料からの含硫黄種の再蒸発を防止する温度で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法を、硫化水素、硫黄原子及び二原子硫黄から成るグループから選択される反応性硫黄種の雰囲気内で実行するステップを備えていることを特徴とする請求項39に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2006−516663(P2006−516663A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501395(P2006−501395)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000097
【国際公開番号】WO2004/067676
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505089913)アイファイアー・テクノロジー・コープ (18)
【Fターム(参考)】