説明

硬い金属イオンのアフィニティークロマトグラフィーを用いた、ペプチド精製

【課題】新規な固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーシステムの提供。
【解決手段】金属イオン配位性の環状配位子基を少なくとも1つ含む官能基によって官能化されたポリマー基体であって、前記配位子基は環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つはこれに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基を含むポリマー基体は、(Ca2+、Mg2+またはFe3+といった)低い毒性の「硬い(hard)」金属イオンと組み合わせた使用であって、適切に「タグ付加された」ポリペプチドの固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)による分離/精製における使用によく適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なかでも、ペプチド、特に組み換えタンパク質といったポリペプチドの、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーを用いた単離および精製の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトまたは動物における治療的な使用を意図した、オリゴペプチドおよびポリペプチド、特にタンパク質を含んだ、組み換え(一般に設計された)ペプチドの作製の重要な側面は、問題のペプチドを十分に高い精製度で精製を行うことであり、つまり目的とするタンパク質に、特に、(a)作製過程(典型的に、適当な微生物の選択株または遺伝子改変株を用いた、発酵過程または同様な過程)において生じるあらゆる外来のタンパク質、および(b)作製過程の間に導入されてしまう望ましくない金属イオン(特に重金属イオン)の混入が本質的に完全に生じないことである。
【0003】
固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、金属イオンに対する多くのバイオポリマーが示すアフィニティの違いを利用した、多用途な分離方法である。この技術は、表面をあらかじめ化学的に多座配位子で修飾した固体支持マトリックスに、適当な金属イオンをキレートさせることを含む。この結果生じた固定化金属イオンキレート化複合体は、相互作用するタンパク質中に表在する1以上の電子供与基を配位させる能力を有する(Sulkowski, E., Trends in Biotechnology, 3 (1985) 1-6; Porath, J., Carlsson, I., Olsson, I. and Belfrage, G., Nature, 258 (1975) 598-599; Kagedal, L., in "Protein Purification" (Ed., J. C. Janson, and L. Ryden), VCH Publishers (1989) pp. 227-251; Zachariou, M. and Hearn, M. T. W., Biochemistry, 35 (1996) 202-211)。そして、分離選択性は、固定化金属イオンと様々な吸着タンパク質との間の熱力学的安定性の違いに基づいて達成される。吸着複合体の安定性が低いタンパク質は早く溶出される一方、より安定な複合体をつくるタンパク質は遅く溶出される。平衡結合定数の違いが大きい程、すなわち、それぞれのタンパク質/固定化金属イオン配位複合体の解離定数(KD)の違いが大きいほど、得られる分解能は高くなる。従って、アミノ酸組成、特定のアミノ酸残基の表面分布、ならびにタンパク質の高次構造全てが、特定のIMACシステムに対するタンパク質のアフィニティを決定する重要な役割を担う。結果として、電荷、分子サイズおよびアミノ酸組成の面で非常に似た特徴を有していても、立体構造が異なるタンパク質は、分離することができる。
【0004】
過去20年にわたる、IMACの使用に関するほとんどの研究は、Cu2+、Zn2+およびNi2+といった、境界硬さ(borderline hardness)の第1系列遷移金属イオンを応用することを中心題目としていた(下を参照)。これらの金属イオンは、例えば、芳香族アミンおよび脂肪酸アミンの両方、ならびにカルボキシル官能基に対して、5から10の間を示すlogβ値といったような、中間の金属イオン安定度定数を示している(Wong, J. W., Albright, R. L. and Wang, N. H. L., Separation and Purification Methods, 20 (1991) 49-57; Zachariou, M., Traverso, I.., Spiccia, L. and Hearn, M.T.W., Journal of Physical Chemistry, 100 (1996) 12680-12690)。M2+イオンとのこれらの結合能を示す、多数の非拘束性の三座配位キレートが、支持材料に化学的に固定され得る。対応するlogβ値の大きさに関し限定され、および結果として相対的に選択能が低いにも関わらず、イミノ二酢酸(IDA)といった非拘束性のキレート化化合物は、そのようなIMAC研究において今まで用いられてきた主なタイプのキレート配位子である(例えば、Kagedal, L., in "Protein Purification" (Eds. J. C. Janson and L. Ryden), VCH Publishers (1989) pp 227-251を参照)。固定化M2+-IDAに基づくIMACシステムの使用を例証した応用は、固定化Cu2+-IDAを用いた発芽コムギからのα-アミラーゼの精製 (Zawistowska, U., Sangster, K., Zawistowski, J., Langstaff, J. and Friessen, A. D., Cereal Chemistry, 65 (1988) 5413-5418);および、ヒト血漿からの、固定化Zn2+-IDAを用いた、ヒト凝固因子VII(Weeransinghe, K. M., Scully, M. F. and Kadder, V. V., Biochimica Biophysica Acta, 839 (1985) 57-65)およびα1-チオールタンパク質分解酵素(Otsuka, S. and Yamanaka, T. (Eds), "Metalloproteins -Chemical Properties and Biological Effects" in "Bioactive Molecules", Kodansha Ltd, Tokyo (1988), pp 18-45)の精製が含まれる。IDAに基づくIMAC法の拡張使用、つまり、固定化Ni2+-ニトリロ三酢酸(Ni2+-NTA)を用いた組み換えタンパク質の精製(Hochuli, E., Bannwarth, W., Doebeli, H. and Stuber, D., Bio/Technology, 6 (1988) 1321-1324)(NTAはIDAの構造的相同体)は、ポリヒスチジンペプチド、特に6xHisに相当するポリヌクレオチド配列の遺伝子レベルでの組み込みに依拠している。前記ヒスチジンペプチドは、タンパク質に対し、固定化Ni2+-NTAキレート複合体への結合のための高いアフィニティを付与し、前記タンパク質がこのIMAC収着剤に選択的に保持されるようにする。本出願において、「吸着剤(sorbent)」および「吸収剤(adsorbent)」という用語は、時には、金属イオンがそこに結合していない機能的なポリマー基体を示すよう用いられるものの、金属イオンが配位結合した官能化されたポリマー基体(配位子がそこに固定化されたポリマー基体)を示すために主に使用される。
【0005】
IDAおよびNTAに基づくIMACシステムの応用についての上記記述からわかるように、IMACシステムにおける、タンパク質結合の選択性を変更する代替手段は、キレート化配位子の構造の多様性によって行われる。しかしながら、近年、少数の新しいIMACキレート化配位子が導入された。これらには、下記に基づくシステムが含まれる:即ち、二座配位のキレーターである、アミノヒドロキサム酸(AHM)および8-ヒドロキシキノリン(8-HQ)( Zachariou, M., Traverso, I., Spiccia, L. and Hearn, M.T.W., Journal of Physical Chemistry, 100 (1996) 12680-12690);Ca2+に対してIDAよりも高いアフィニティをもつカルボキシメチルアスパラギン酸(CM-ASP)( Porath, J., Trends in Analytical Chemistry, 7 (1988), 254-256; Mantovaara, T., Pertofz, H. and Porath, J., Biotechnology Applied Biochemistry, 11 (1989), 564-569);リン酸基の関与により、Fe3+、Al3+、Ca2+およびYb3+といった「硬い(hard)」金属イオンをキレートできるオルト-ホスホセリン(OPS)( Zachariou, M., Traverso, I. and Hearn, M. T. W., Journal of Chromatography, 646 (1993), 107-115);および他の三座配位子、例えば(2-ピリジルメチル)アミノアセテート(CPMA)、ジピコリルアミン(DPA)およびシス-またはトランス-カルボキシメチル-プロリン(Chaouk, H., Middleton S., Jackson W.R. and Hearn, M.T.W., International Journal of BioChromatography, 2 (1997) 153-190; Chaouk, H. and Hearn, M.T.W., Journal of Biochemical and Biophysical Research Methods, 39 (1999) 161-177);四座配位子、例えば四座配位の性質のために、IDAよりもM2+イオンへのアフィニティが高く、IDA型三座配位子と比較して1つの配位部位の喪失のために低いタンパク質結合定数を示す、ニトリロ三酢酸(NTA)( Hochuli, E., Bannwarth, W., Dobeli, H., Gentz, R. and Stuber, D. Bio/Technology, 6 (1988) 1321-1325);および、五座配位子、例えば五つのドナー原子を介して金属イオンを配位する(すなわち、TEPAの場合は一級アミン基の2つの窒素原子および二級アミン基の3つの窒素原子、TEDの場合は二級アミン基の2つの窒素原子および3つのカルボン酸基からの3つの酸素原子)、トリエチレンホスホルアミド(TEPA)( Hidaka Y., Park, H. and Inouye, M., FEBS Letters, 400 (1997) 238-242)またはN,N,N’-トリス(カルボキシメチル)エチレン-ジアミン(TED)( Porath, J., Protein Expression & Purification, 3 (1992) 263-281)である。
【0006】
固定化金属イオンイミノ二酢酸キレート(im-Mn+-IDA)システムを用いて、相対的に穏やかな溶出条件にてクロマトグラフィーの工程を行った場合に、金属イオンの有意な漏出が観察された(Oswald, T., Hornbostel, G., Rinas, U. and Anspach, F.B., Biotechnology Applied Biochemistry, 25 (1997) 109-115; Kagedal, L. in Protein Purification (eds. J.C. Janson and L Ryden) VCH Publishers, New York (1989), pp 227-251)。このように、選択性の修飾の問題に加えて、新たなクラスのキレート化配位子の開発に対するさらなる意欲が、今まで用いられてきたIDAに基づくおよびNTAに基づくシステムと比較して金属イオンの安定度定数の有意な増加を成し遂げるために必要となっている(Zachariou, M., Traverso, I., Spiccia, L. and Hearn, M.T.W., Analytical Chemistry, 69 (1996) 813-822)。
【0007】
WO 03/042249号は、特に、金属イオンに配位するN、OおよびSから独立に選択される、少なくとも3つのドナー原子を有する、1以上の金属イオン配位性の環状配位子基を含む官能基を含んだ、官能化されたポリマー基体に関する。空の配位部位を保持しながらこれらのドナー原子と配位結合を形成する1以上の金属イオンのためのマトリックスとして用いるとき、これらの官能化されたポリマー基体は、問題の金属イオンの空いた配位部位と配位結合を形成しうる1以上の適切に配置されたアミノ酸残基を組み込んだ、付加的なオリゴペプチド配列(「タグ」)でタグを付されたタンパク質またはポリペプチドの形の融合タンパク質への結合において、著しく高い強度および/または選択性を示す。そのようなマトリックスに対しての融合タンパク質の結合が、無関係のタンパク質の結合と比較して、一般的に有意に大きい強度および/または選択性を示すことにより、融合タンパク質および1以上の無関係のタンパク質を含む混合物から、融合タンパク質を分離および単離することが促進された。WO 03/042249号にて開示された、好ましい官能性(金属イオン配位性)ポリマー基体は、それぞれの金属イオン配位性の環状基における金属イオン配位性ドナー原子が、環内における3つの窒素ドナー原子からなる官能基を用いており、それらは、Cu2+およびNi2+といった、「硬さ(hardness)」または「軟らかさ(softness)」(下を参照)に関する境界の特質をもつ特定の金属イオンのためのマトリックスとしての使用に特によく適している。(Ca2+、Mg2+、Mn2+およびFe3+といった)「硬い(hard)」金属イオン、または(Zn2+といった)「境界」硬さ(“borderline” hardness)に関するスケールの「硬い」端(“hard” end)にある金属イオンのためのマトリックスとしてよく適した官能化されたポリマー基体については、WO 03/042249号において十分には示されていない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的のひとつは、生物分子に存在する硬い(hard)ドナー原子[特に、カルボキシ基(AspもしくはGluのアミノ酸残基にあるような)および/またはリン酸基の酸素原子]との相互作用によって機能する、(Ca2+、Mg2+、Mn2+およびFe3+といった)「硬い(hard)」金属イオンおよび(Zn2+といった)「境界」硬さ(“borderline” hardness)に関するスケールの「硬い」端(“hard” end)にある金属イオンに基づく新規のIMACシステムを提供することであった。これらの新規なIMACに基づくシステムの重要な性質は、それらが、配位的(電子供与体/電子受容体)および静電気的(イオン交換)プロセスの組み合わせに基づいて、標的分子との相互作用の混合した様式を同時に達成しうることである。その結果、これらの新規なIMACに基づくシステムは、固有の相互作用の混合した様式を通して仲介される選択性にて機能でき、それゆえタンパク質精製における新たな可能性の機会を提供することができる。
【0009】
それゆえ本発明のひとつの側面は、金属イオン配位性の環状配位子基を少なくとも1つ含む官能基によって官能化されたポリマー基体であって、前記配位子基は環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つはこれに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基を含むポリマー基体に関する。本発明の第二の側面は、官能基の少なくとも1つの環状配位子基に配位する金属イオンをさらに含んだ、先のタイプの官能化されたポリマー基体に関する。本発明の別の側面は、そのような官能化されたポリマー基体の作成の方法を含む。
【0010】
本発明のさらに重要な側面は:
本発明に関する融合タンパク質に「タグ」として組み込まれるのによく適したオリゴペプチド;
少なくともひとつのそのようなオリゴペプチドに対して、アミノ末端もしくはカルボキシ末端もしくはその両方で、または代わりに関心あるタンパク質の内部のアミノ酸配列の位置で融合した関心あるタンパク質を含む、問題のタイプの融合タンパク質;
ベクターといった、そのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの構築物;
そのようなポリヌクレオチドの構築物を含む宿主細胞;
問題のタイプの融合タンパク質を製作する方法であって、先のタイプの宿主細胞が、融合タンパク質が発現し、および融合タンパク質が培地から回収される条件下で、成長培地にて培養される方法;および、
関心あるタンパク質を精製する方法であって、野生型タンパク質、またはそのような融合タンパク質(関心あるタンパク質を含む)ならびにその他のタンパク質(無関係のタンパク質)を含んだタンパク質サンプルを、本発明による官能化されたポリマー基体または本発明による金属イオンを含んだ官能化されたポリマー基体と接触させる精製の方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0011】
すでに上述したとおり、本発明による第一の側面は、金属イオン配位性の環状配位子基を少なくとも1つ含む官能基によって官能化されたポリマー基体であって、前記配位子基は環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つはこれに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基を含むポリマー基体に関する。
【0012】
本発明における有用なポリマー基体は、水に可溶性のポリマーおよび実質的に水に不溶性のポリマーの両方を含み、非常に幅広い重合性の材料から選択されてよい。この例としては、以下のものである:
多糖体およびその誘導体であり、アガロース、デキストラン、セルロース、ヘミセルロース、デンプン、キシラン等、およびこれらの多糖体の誘導体を含むもの。適した多糖体誘導体は、一般に、問題の多糖体のヒドロキシ基がある比率で誘導体化され、エーテル(例えば、メチルエーテルといった、低級アルキルエーテル)またはエステル(例えば、アセテート、プロピオネート等といった、低級カルボン酸エステル)が形成される誘導体、ならびに出発原料の多糖体またはその誘導体が、適切な架橋試薬による処理によって架橋された材料を含む。
【0013】
一般的に言って、実質的に水に不溶性のポリマーを基にした、本発明による官能化されたポリマー基体は、例えば、クロマトグラフィーカラムに詰める方法、培地に直接導入する(バッチ式)方法等によく適しており、本発明によるこの種の応用に特によく適す多糖体は、アガロース、デキストランおよびその誘導体、市販され容易に使用できる様々な適した種類を含む。このため、例えば、様々なアガロース製品が、Amersham Pharmacia Biotech(スウェーデン、ウプサラ)により生産され、セファロース(商標)という名で市販されており;利用可能な等級には、セファロース(商標) 2B、4Bおよび6Bを含む。これらの様々な等級のアガロースの架橋化誘導体(セファロース(商標)を2,3-ジブロモプロパノールと共に架橋して作製)もまた、同社より購入可能であり、それぞれ、セファロース(商標) CL-2B、CL-4BおよびCL-6B、セファロース(商標) 4および6 Fast Flow、セファロース(商標) 6MB、およびセファロース(商標) 6および12として市販されている。
【0014】
本発明による使用に適す、多くのデキストランベースまたはデキストラン-アガロース複合性材料もまた、Amersham Pharmacia Biotechから、セファデックス(商標)、スーパーデックス(商標)(例えばスーパーデックス(商標) 30、75および200)およびセファクリル(商標)という名で市販されており使用できる。セファデックス(商標)シリーズの製品は、エピクロロヒドリンと共にデキストランを架橋することにより作製され、以下の等級が使用可能である:セファデックス(商標) G-10、G-15、G25、G-50、G-75、G-100、G-150およびG-200。Gの数字が大きいほど、架橋の度合いは減少する。セファクリル(商標)シリーズの製品は、N,N’-メチレン-ビスアクリルアミドとともにアリル-デキストランを架橋することにより作製され、セファクリル(商標) S-100、S-200、S-300、S-400、S-500およびS-1000が含まれ;先の六つの製品は、孔の大きさおよび粒子の大きさの分布の幅に関してことなっている。スーパーデックス(商標) シリーズの製品は、様々な組成物のアガロース誘導体とともにアリル-デキストランの架橋によって作製される。
【0015】
ポリアルキレングリコールおよびその誘導体であり、特に、ポリエチレングリコール(PEG)、すなわち一般式HOCH2(CH2OCH2)nCH2OHまたはH(OCH2CH2)nOHをもち、典型的に平均分子量が200から6000の間にある、エチレングリコールの縮合ポリマーを含むもの。多くのPEG’s(平均分子量がそれぞれ400、600、1500、4000および6000であるPEG’sを含む)が、様々な購入元から様々な名称(例えば、Macrogol(商標)、PEG(商標)、Carbowax(商標)、Nycoline(商標)、Pluracol E(商標)、Poly-G(商標)、Polyglycol E(商標)、Solbase(商標))で販売され利用可能である。PEG’sは一般に水に可溶性でまたは混和でき、ならびにエタノールおよび、芳香族炭化水素を含む、多くのその他の有機溶媒にも可溶性でありまたは混和できる。一般式H(OC3H6)nOHをもつ、類似性ポリプロピレングリコールという、水に可溶性の低分子量のメンバーもまた、本発明に関連がある。ポリアルキレングリコールといった関連する誘導体は、例えば、末端のヒドロキシ基が、メチルエーテル基といった、低級アルキルエーテル基に転換された誘導体のように、部分的にエーテル化された誘導体を含む。
【0016】
そのようなポリマーは、容易に支持材料に固定化され、それによりその後活性化され、官能化され、本発明による方法によって、大環状金属イオン結合性キレート化配位子で誘導体化され得る基体が作製される。
【0017】
ポリビニルアルコールを含む、ポリビニルポリマー[すなわち、様々な分子量の画分のポリ酢酸ビニルの加水分解(「加アルコール分解」)によって、典型的に塩基または酸加水分解によって普通に作製される、ヒドロキシルポリマー]、およびその誘導体。「加アルコール分解」の度合いは、実質的な完成に移るためにポリ酢酸ビニル内の酢酸エステル基の加水分解を行うことで、または望んだ加アルコール分解の度合いでそれを停止することで、変更されてかまわない。ポリビニルアルコールは、四つの分子量の幅の異なるものが普通に購入して使用可能である。すなわち、約250,000-300,000(超高粘度と名付けられる)、約170,000-約220,000(高粘度と名付けられる)、約120,000-150,000(中間粘度と名付けられる)および約25,000-約35,000(低粘度と名付けられる)がある。一般に、ポリビニルアルコールの分子量が低い程、その水の感受性または水への溶解の容易さは高くなるが;しかしながら、加アルコール分解の度合いはまた、ポリビニルアルコールの水への溶解およびその他の特性に関して役目を果たす。上にて概略した分類内の全てのポリビニルアルコールは、本発明であり、または本発明に関連し、例えば、メチルエーテル誘導体といったような、そのエーテル誘導体である。
【0018】
その他の関心あるポリビニルポリマー材料は、中圧および低圧液体クロマトグラフィーのために設計された多孔性、半剛性の球状ゲル粒子のToyopearl(商標) HWシリーズといった材料を含む。そのような材料は、活性化および官能化/誘導体化することで、本発明に関連したIMAC収着剤の作製のためのその他の選択肢を提供する。(Tosoh Corp 日本、山口、およびその他の供給者から入手できる)Toyopearl(商標) HWゲルは、もっぱらC、HおよびO原子を含む親水性ビニルポリマーから合成される。利用可能な等級(粒子および細孔サイズについて異なる)は、Toyopearl(商標) HW-40、HW-40C、HW-40F、HW-40S、HW-50、HW-50F、HW-50S、HW-55、HW-55F、HW-55S、HW-65F、HW-65SおよびHW-75Fを含む。
【0019】
ポリアクリルアミドおよびその誘導体であって、Ultrogel(商標) AcAゲル(ビーズ状の複合性ポリアクリルアミド-アガロースゲル、例えばAmersham Pharmacia Biotechから購入可能)といった、ポリアクリルアミドおよびアガロースに基づく複合性材料を含んだもの。Ultrogel(商標) AcAゲルシリーズは、AcA 22、AcA 34、AcA 44およびAcA 54を含み、この番号はアクリルアミドおよびアガロースのパーセンテージを指し、すなわちAcA 22は2%アクリルアミドと2%アガロースを含んでいる。これらの支持材料のヒドロキシル基の活性化は、IMAC収着剤の作製の方法を提供する。
【0020】
表面-修飾シリカであって、LiChroSpher(商標) Diol (E. Merck、ドイツ、ダルムシュタット)、Toyosoda(商標) TSKSW3000 (Tosoh Corp.、日本、山口)といった、グリシジルプロポキシ-修飾多孔性シリカ;(適切な触媒の存在下で)アミノプロピルジエトキシシランと適切な孔サイズおよび適切な平均直径をもつシリカの反応によって作製される、アミノ-プロピル-修飾シリカ;および(適切な触媒の存在下で)メルカプトプロピルジエトキシシランと適切な孔サイズおよび適切な平均直径をもつシリカの反応によって作製される、メルカプトプロピルシリカを含むもの。あるいは、適切な孔サイズと適切な平均直径をもつデキストラン修飾またはブタジエン-ビニルコポリマー修飾シリカが、クロマトグラフ支持材料として使用可能である。それぞれの新規なIMAC収着剤をつくるための、そういった誘導体化および続く修飾に適した、「はだかの」多孔性シリカが、E. Merck(ドイツ、ダルムシュタット)、Tosoh Corporation(日本、山口)、Eka-Nobel AB(スウェーデン、イェーテボリ)およびGrace Davison GmbH(ドイツ、ウォルムス)といった、様々な供給者から容易に入手することが可能である。
【0021】
表面-修飾金属酸化物であって、グリシジルプロポキシ-修飾多孔性ジルコニア、チタニアまたはアルミナ、ならびに第2の金属酸化物をそれぞれの金属酸化物に「塗った(doped)」その修飾体/変異体;(適切な触媒の存在下で)アミノプロピルジエトキシシランと適切な孔サイズおよび適切な平均直径をもつジルコニア、チタニアまたはアルミナの反応によって作製される、アミノ-プロピル-修飾ジルコニア、チタニアまたはアルミナ;および(適切な触媒の存在下で)メルカプトプロピルジエトキシシランと適切な孔サイズおよび適切な平均直径をもつジルコニア、チタニアまたはアルミナの反応によって作製される、メルカプトプロピル修飾ジルコニア、チタニアまたはアルミナを含むもの。あるいは、適切な孔サイズと適切な平均直径をもつデキストラン修飾またはブタジエン-ビニルコポリマー修飾ジルコニア、チタニアまたはアルミナが、クロマトグラフ支持材料として使用可能である。それぞれの新規なIMAC収着剤をつくるための、そういった誘導体化および続く修飾に適した、「はだかの」多孔性ジルコニア、チタニアまたはアルミナが、YMC Co. Ltd.(日本、京都)、Grace GmbH(ドイツ、ウォルムス)およびBioSepra Corp.(フランス、パリ)といった、様々な供給者から容易に入手することが可能である。
【0022】
本発明によく適したポリマー基体は、例えば上に概要を述べたものから選択される材料のような、アガロース、デキストランおよびその誘導体を含む。
【0023】
本発明の一側面において、本発明による官能化されたポリマー基体内の金属イオン配位性の環状配位子基は、トリアザシクロアルカンおよびトリアザシクロアルケン、およびテトラアザシクロアルカンおよびテトラアザシクロアルケンから選択されるヘテロ環を由来とする。そのような官能化されたポリマー基体の中で、特によく適した金属イオン配位性の環状配位子基は、以下の中から選択されるヘテロ環を由来とする:
1,4,7-トリアザシクロノナン;
1,4,7-トリアザシクロデカン;
1,4,8-トリアザシクロウンデカン;
1,5,9-トリアザシクロドデカン;
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン;
1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン;
1,4,7,11-テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン;および
1,5,9,13-テトラアザシクロヘキサデカン。
【0024】
本発明のこの先の側面に関して、トリもしくはテトラアザシクロアルカン、またはトリもしくはテトラアザシクロアルケンのタイプの上述した金属イオン配位性の環状配位子基のひとつの、1以上の-CH2-基または-CH2=基(および/または、ある場合は、環状-NH-基)内の水素原子は、任意に置換される低級アルキル基および任意に置換されるアリール基から選択される置換基で任意に置換されてよく;トリもしくはテトラアザシクロアルカン、またはトリもしくはテトラアザシクロアルケンのタイプの金属イオン配位性配位子基内の、特に、環状-CH2-基または-CH=基内の水素原子を置換するのに適した任意な置換基のさらなる例は、任意に置換される低級アルコキシ基を含む。問題の低級アルキル基、低級アルコキシ基またはアリール基の任意な置換基は、1以上の0またはSドナー原子といった、1以上の金属イオン配位性ドナー原子を任意に含んでよい。
【0025】
本発明において用いられる「低級アルキル」という用語は、1から6の炭素原子を有す、あらゆる直線状(直鎖)、分枝鎖または環状アルキル基を指すよう意図される。直鎖アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルであり;分枝鎖アルキル基の例は、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチルおよびイソヘキシルがあり;環状アルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルがある。一般に、1から3の炭素原子を有す、直鎖または分枝鎖低級アルキル基(すなわちメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル)は、本発明によく適すだろう。本発明における低級アルキル基の適した任意の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシおよび任意に置換されるアリールを含む。
【0026】
本発明において用いられる「低級アルコキシ」という用語は、1から6の炭素原子を有す、何れかの直鎖、分枝鎖または環状アルコキシ基を指すよう意図される。直鎖アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシおよびヘキソキシがあり;分枝鎖アルコキシ基の例は、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペントキシおよびイソヘキソキシがあり;環状アルコキシ基の例は、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシがある。一般に、1から3の炭素原子を有す直鎖または分枝鎖低級アルコキシ基(すなわち、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ)は、本発明によく適すだろう。
【0027】
本文章において、「アリール」という用語は、何れかの芳香族基を指すよう意図され、炭素環および複素環芳香族基の両方を含む。それらの例は、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、インドリル、キノリニル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チエニル、フラニルまたはオキサジアゾリルである。本発明におけるアリール基の適した任意な置換基は、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、低級アルキルおよび低級アルコキシを含む。
【0028】
「ハロゲン」という用語は、Cl、F、BrまたはIを指す。
【0029】
金属イオン配位性の環状配位子基の、少なくとも1つの環内N原子に共有結合した、任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基に関して、それぞれカルボキシメチル(-CH2COOH)およびホスホノメチル[-CH2PO(OH)2]が非常に適すことが証明された。上記の、トリアゾシクロアルカンまたはトリアゾシクロアルケン型の金属イオン配位性の環状配位子基に関して、3つの環内N原子の少なくとも2つ(すなわち2つまたは3つ)が、そこに共有結合する形で任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基(例えば、カルボキシメチル基またはホスホノメチル基)を有すことは、有利であると考えられる。上記のテトラアゾシクロアルカンまたはテトラアゾシクロアルケン型の金属イオン配位基の場合、四つの環内N原子の少なくとも2つ(すなわち2つ、3つまたは四つ)が、そこに共有結合する形で任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基(例えば、カルボキシメチル基またはホスホノメチル基)を有すことは、有利であると考えられる。
【0030】
そのような任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基における低級アルキル部位の適した任意の置換基(すなわち、カルボキシメチルまたはホスホノメチル基の-CH2-部位の任意の置換基)には、任意に置換されるアリール、すなわちアリール(例えばフェニル)および置換されるアリール[例えば、フェニル環の低級アルキル基が、カルボキシ基またはホスホノ基を有す炭素原子に対して何れかの位置(すなわち2、3、または4位)に存在する、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、シクロプロピルフェニル、シクロブチルフェニル、シクロペンチルフェニルまたはシクロヘキシルフェニルといった、(低級アルキル)フェニル]を含む。
【0031】
本発明による官能化されたポリマー基体における官能基は、ポリマー基体にリンカーまたはスペーサー基Xによって共有結合され、前記基Xが金属イオン配位性の環状配位子基の環内窒素原子に結合していることは、一般的に有利なことである。リンカーまたはスペーサー基Xは、何れかの適したタイプのリンカーまたはスペーサーであってよいが、典型的に、一方で、ポリマー基体における適切な反応性の官能基、および他方で、金属イオン配位性の環状配位子基の適切な反応性の官能基(この場合、環内の置換されるアミノ基(-NH-))との反応によってできる、二官能有機化合物(例えば、カルボキシル、チオール、アミノプロピル、ハロゲンおよびエポキシといった基から選択される少なくとも2つの反応性の官能基を有す有機化合物)由来であってかまわないものであるだろう。本発明の文脈において一般的に非常に有用な、リンカーまたはスペーサー基Xのタイプは、ハロゲン末端と、例えば、問題のポリマー基体表面のヒドロキシル基との反応、およびその後のそのエポキシ基と環状配位子基の置換されたアミノ基との反応による、エピクロロヒドリン由来となり得るものである。
【0032】
本発明による官能化されたポリマー基体の特に有用な実施態様において、リンカーまたはスペーサー基Xは、エピクロロヒドリンとアガロースまたはアガロース誘導体の形態のポリマー基体の反応、そして続く、その反応生成物と、Xに結合する、金属イオン配位性の環状配位子基の環状-NH-基との反応によってできる、エピクロロヒドリン由来の基である。
【0033】
本出願の開示によって明らかなように、目的のタンパク質(関心あるタンパク質)の単離および精製のための、本発明において使用される材料(官能化されたポリマー基体)の重要な特徴は、官能基における環状配位子基と配位結合し、および、同様に、オリゴペプチド「タグ」が関心あるタンパク質のアミノ酸配列に結合した融合タンパク質のオリゴペプチド「タグ」部分のアミノ酸配列におけるドナー原子を配位させ、および適切に選択的に結合し得る、金属イオンが材料中に存在することである。本発明のさらなる面は、それゆえ、官能基中の少なくとも1つの環状配位子基が、それを配位させる金属イオンを有する、上記の官能化されたポリマー基体に関する。本出願に開示されおよび記述される官能化されたポリマー基体は、特定の二価(2+に帯電)または三価(3+に帯電)の金属イオン、特にCa2+, Mg2+, Zn2+およびFe3+の中から選択される金属イオンに特によく適す。本出願にて提供される実施例にて説明されるように(下記参照)、Ca2+はこの点において多用途の金属イオンである。
【0034】
すでに簡単に記述したように、本発明のさらなる側面は、本発明による官能化されたポリマー基体の作製方法であって:
第一および第二の官能基を有する二官能試薬の第一の官能基との間で第一の反応を行うことができる反応性官能基を有するポリマー基体を選択する段階であって、ここにおいて、問題の前記第一の反応は、前記ポリマー基体と前記二官能試薬との間における共有結合の形成をもたらす反応であり、得られた共有結合した試薬の前記第二の官能基は、続いて、少なくとも1つの金属イオン配位性環状配位子基を含む化学種に存在する反応性の環内-NH-基と第二の反応を起こすことができ、前記金属イオン配位性環状配位子基は、前記環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、少なくとも1つの問題の前記窒素原子は、そこに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基またはホスホノ(低級アルキル)基を有し、前記第二の反応は、問題の前記化学種と前記共有結合した試薬との間における共有結合の形成をもたらす反応である段階;
前記ポリマー基体と前記二官能試薬とを反応させる段階;および
前記生成した共有結合した試薬と問題の前記化学種とを反応させる段階
を含んで成る方法に関する。
【0035】
本発明による先の方法に関して、使用されるポリマー基体、およびこの方法にて使用される反応性の化学種の金属イオン配位性の環状配位子基は、本発明による官能化されたポリマー基体と関連してすでに上にて論じられたもののなから選択されてよい。使用される二官能試薬は、典型的に二官能有機化合物であって、例えば、カルボキシル、チオール、アミノプロピル、ハロゲンおよびエポキシといった基から選択される少なくとも2つの反応性官能基を有す有機化合物であるだろう。エピクロロヒドリンは、表在のヒドロキシル基を有す、多糖体およびその誘導体を含む、多くのタイプのポリマー基体のための二官能試薬として特に有用である。
【0036】
本発明による官能化されたポリマー基体に関して上の検討から明らかなように、金属イオン配位性の環状配位子基を含む反応性の化学種は、上述したタイプの1つの官能基(生成される官能化されたポリマー基体生成物)を生じさせる、適したものであるだろう。このように、本発明の方法における使用のための適した反応性の化学種は、反応性環状-NH-基を有し、およびトリアゾシクロアルカンおよびトリアゾシクロアルケンまたはテトラアゾシクロアルカンおよびテトラアゾシクロアルケンから選択される複素環由来である、1以上の金属イオン配位性の環状配位子基を含む化学種を含み、例えば、反応性環状-NH-基を有し、および以下から選択される複素環由来である1以上の金属イオン配位性の環状配位子基を含む化学種を含む:
1,4,7-トリアザシクロノナン;
1,4,7-トリアザシクロデカン;
1,4,8-トリアザシクロウンデカン;
1,5,9-トリアザシクロドデカン;
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン;
1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン;
1,4,7,11-テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン;および
1,5,9,13-テトラアザシクロヘキサデカン。
【0037】
金属イオン配位性の環状配位子基の少なくとも1つの環内N原子に共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基またはホスホノ(低級アルキル)基に関する、(本発明の官能化されたポリマー基体に関する)上記の考慮は、同様に本発明による上述の方法に適応される。従って、カルボキシメチル(-CH2COOH)およびホスホノメチル[-CH2PO(OH)2]は、それぞれ任意に置換されるカルボキシ(低級あるきる)基およびホスホノ(低級アルキル)基として非常に適している。
【0038】
前述の検討から明らかであるように、アガロースおよび(上記したようなセファロース(商標)製品といったような)アガロース誘導体は、本発明による上述の方法に関してポリマー基体としてよく適している。よく適した二官能試薬は、エピクロロヒドリンであり、ポリマー基体とエピクロロヒドリンの反応において。反応混合物中の、水素化ホウ素ナトリウムといった、還元剤のさらなる取り込みは、これと関連して有利であってかまわない。
【0039】
本発明の範囲は、官能化されたポリマー基体の作製のための上述した方法によって取得されたまたは取得することができる官能化されたポリマー基体をさらに包含する。
【0040】
加えて、本発明の範囲はまた、本発明に一致した、および少なくとも1つの金属イオン配位性の環状基を配位した金属イオンをさらに含む官能化されたポリマー基体の作製の方法であって、本発明による官能化されたポリマー基体に、問題の金属イオン(例えば、すでに上述した金属イオンの1つ)の無機塩[例えば、硝酸塩、ハロゲン化物塩(フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩もしくはヨウ化物塩)、硫酸塩、塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩もしくはリン酸塩]または有機塩[例えば、(ギ酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩もしくは安息香酸塩といった)カルボン酸塩、テトラフェニルホウ酸塩またはスルホン酸塩]の水溶液を接触させることを含む方法を包含する。そのような方法にて取得されたまたは取得することができる金属イオン配位性官能化されたポリマー基体はまた、本発明の範囲内である。
【0041】
硬い(hard)金属イオン(および境界硬さ(borderline hardness)の金属イオン)に対し、強いアフィニティーをもつ金属イオン配位性(キレート化)配位子の選択および作製:本発明に関連して定義される官能化されたポリマー基体の重要で価値ある応用は、タンパク質の精製におけるその実施態様を含む金属イオンの使用であって、問題のタンパク質は、関心あるタンパク質がアミノ末端またはカルボキシ末端にて、本発明によるAspを含むオリゴペプチドといった、オリゴペプチド「タグ」に融合された、融合タンパク質という形態をとる。加えて、アミノ末端またはカルボキシ末端にそれぞれ、本発明によるAspを含むオリゴペプチドといった、オリゴペプチド「タグ」が結合した、2分子の関心あるタンパク質もしくはポリペプチド、またはかわりに2つの異なる関心あるタンパク質もしくはポリペプチドを同時に融合させることで、2分子の関心あるタンパク質またはポリペプチドが連結し、オリゴペプチド「タグ」がエンドの位置(すなわち内部の位置)に位置した、新たな融合タンパク質の構造を生み出される。
【0042】
全てのキレート化配位子が、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に適した配位子としての要求を満たすわけではない。キレート化配位子は2つの目的を担っている:(a)金属イオンを固体支持体に固定し、および(b)金属アフィニティー結合を調節し、これにより吸着中心(adsorption centre)の強度およびアフィニティ特異性を調節する1。好ましくは、キレート化配位子は、金属イオンとともに安定な複合体を形成し、それによりいかなる金属イオンも、これらの分子の吸着および脱着の際に、溶媒相へ放出されず、または生物分子に移行されない状態にあるべきである。同時にまた、少なくとも1つ、好ましくは2以上の、タンパク質が結合可能な金属イオンの配位サイト(coordination sites)を残すべきである。
【化1】

【0043】
大環状分子サイクレン(cyclen)およびtacnが基礎となり、およびカルボキシメチルまたはホスホノメチルのペンダントアーム(pendant arms)を含む六つの配位子を、公表されている方法2-4に基づいて合成した。これらの配位子は、1,4,7-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO3A)、1,7,-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO2P)、1,4,7-トリス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO3P)、1-(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(T1A)、1,4-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(T2A)および1,4-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン(T2P)である。模式図1に示されるように、二級アミン基が活性化ゲル(ポリマー基体)への結合を可能とし、IMAC支持体(官能化されたポリマー基体)を作り出す。Burai5らによってDO2P(log KCa(II)L=12.8)について、およびChang5aによってDO3A(log KCa(II)L=10.72)について報告される、Ca2+-複合体に相当する安定度定数は相対的に高く、そのような配位子はそれゆえに、タンパク質精製において金属イオンの「漏出」を最小化し、配位子からタンパク質への金属イオンの移行を最小化するために、問題のタイプのIMACシステムにおいて使用されるのが好ましい。そのうえ、カルシウムの最大配位数が10であることが報告されているため、配位サイト(coordination sites)がタンパク質結合に使用可能であろう。
【0044】
3つの大環状分子DO2P、DO3AおよびDO3P(模式図2参照)を、文献の方法2-4にて作製しNMRおよび質量分析(MS)にて特性決定した。DO3AおよびDO3Pの作製は高収量にて達成され、大きな量(例えば、グラムの量またはそれ以上)で得るための反応のスケールアップに成功した。得られたNMRおよびMSのデータ、ならびに得られた収量は、これまでに報告されたもの2-4に非常に類似していた。
【化2】

【0045】
DO2Pの合成には、収量と効率の増加のためにいくらかの最適化が必要であった。数グラムの量のスケールアップは達成できなかった。得られた収量およびNMRデータは、文献に記載のものと同等であった5,6。DO2P配位子の適した結晶をX線分析のために得たものの、大環状環の大きな障害が結晶構造の満足な精製を妨げた。しかしながら、これにより、大環状環によって定められる平面と同じ側に位置する両ホスホノメチルアームの存在を確認できた。遊離配位子DO3Pの結晶が得られ、構造がX線結晶学によって確認された。配位子DO3PのORTEPプロットおよび空間充填モデルを、それぞれ以下の模式図3aおよび3bにしめした:
【化3】

【化4】

【0046】
上述したタイプのトリアザシクロアルカンおよびテトラアザシクロアルカンの中で、サイクレン(cyclen)が購入でき、一方tacnおよびサイクラム(cyclam)は合成した。Tacnの場合、多段階合成を、選択的に保護されたポリアミンおよびジオールの環化に基づく、Ruchman-Atkins1による十分確立された方法にて行った。その合成は高収量および高精製度にて達成された。次の段階は、カルボキシメチルまたはホスホノメチルサイドアームを含む誘導体化された大環状分子の合成に関する(tacnに関して、以下の模式図4に例を示した):
【化5】

【0047】
これらの先のtacn由来配位子は、IMACシステムにおいてFe3+の錯体化に適していると期待されるが、それはFe3+の最大配位数が6だからである。誘導体化されていない二級アミン(-NH-)は、クロマトグラフの支持マトリックス(ポリマー基体)への固定のために使用され、配位子が、(固定化Tacn2AおよびTacn2Pの場合に)Fe3+配位圏において最大で5つのサイトを占めるため、タンパク質結合に適した配位サイトがまだ少なくとも1つ存在するであろう。
【0048】
対応するテトラアザ配位子サイクラム(cyclam)は、サイクレン(cyclen)の作製のためのParker8によって記述された方法に基づいて合成した。サイクラム(cyclam)合成の最初の前駆物質(N,N’,N’’,N’’’-テトラトシル-1,5,8,12-テトラアザドデカン)は2つの異なる方法7,8を用いて合成した。両方法から、NMRスペクトルおよび融点が同一の生成物が得られた。その構造はまた質量分析によっても確認した。それぞれ、2または3のカルボキシメチルおよび2または3のホスホノメチルアームを含むサイクラム(cyclam)由来の大環状分子(模式図5)は、tacnおよびサイクレン(cyclen)分子にて記述されたのと類似した方法にて合成でき、上にて詳細を記述したようにカルボキシメチルおよびホスホノメチルペンダントアームを有すtacnおよびサイクレン(cyclen)の12員環類似体として機能できる。
【化6】

【0049】
Tacn環と比較して大きな環のサイズのために、誘導体化されたサイクラム(cyclam)配位子は、カルシウムまたはマグネシウムといった、より大きな金属イオンの錯体化においても使用することができる。
【0050】
ポリマー基体(マトリックス)への配位子の固定化(共有結合)および固定化配位子への金属イオンの固定化:本発明に関するIMACでは、特定の金属-結合サイトを含むタンパク質を捕捉するために、クロマトグラフィーマトリックスまたは支持体に結合したキレート化配位子が金属イオンに結合(配位)して作られる、固定化金属複合体を使用する。これらのタンパク質の吸着は、固定化金属イオンとタンパク質表面の電子供与基との間の配位相互作用を基にしている。本発明によるIMAC収着剤の作製において、固定化金属複合体の生成は典型的にいくつかの段階を含む。典型的手順において、キレート化配位子は、例えばエピクロロヒドリンまたは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(ビスオキシラン)といった二官能価試薬を用いて前もって活性化されているクロマトグラフィーマトリックス(ポリマー基体)に最初に結合される。第2段階は、標準的に問題の金属イオンの塩(例えば塩化物または硝酸塩)の水溶液で処理することで、金属イオンを固定化キレート化配位子に錯体化する工程を含む。その結果できる金属キレート複合体は、液体移動相に溶解したタンパク質分子と相互作用することができる。つまり、タンパク質表面に位置するアミノ酸残基の電子供与基(例えばヒスチジン残基のイミダゾール基)が、弱く配位されている溶媒の配位子(例えばH2O)と交換され、固定化金属イオンと配位結合を形成する。最後に、結合したタンパク質の溶出が、移動相のpHを下げることによって、または代わりに、金属イオンの配位サイトの前記タンパク質を交換する競合的配位子を用いることで、行われる。
【0051】
IMACの分離の選択性は、金属イオン、キレート化配位子および/または溶媒条件の選択、または標的タンパク質の修飾によって、調節することができる。
【0052】
以下に、配位子DO3AおよびDO3P(上記参照)に関して、および本発明に関する基体としてよく適した、購入可能なアガロース誘導体、セファロース(商標) 6FFという形態としてのポリマー基体に関して、固定化の方法を記述する。それぞれの問題の配位子は、固体支持マトリックスへの結合のための遊離アミン基を含むよう設計されている。生成される固定化(im)配位子(im-DO3P、im-DO3A)は、カルシウムイオンへの結合能について検査した。
【0053】
〈セファロース(商標) 6FFへの配位子の固定化〉
大環状分子は、以前に記述された標準エポキシ-活性化方法にて、セファロース(商標)に固定化してよい。最初の段階は、塩基性条件下、エピクロロヒドリンにてセファロース(商標)ゲル(ポリマー基体)を処理し、エポキシ活性化ゲルを作製することを含む。そして配位子の結合が、配位子の環内の求核性の二級アミン基とエポキシ-活性化ゲルの求電子性のエポキシドの表面基との反応によって成される。模式図6(下記)に示すように、エポキシ基との反応によって、タンパク質と相互作用するために、固定化配位子が立体配置的にさらに自由となることに寄与するスペーサー基が導入される。配位子が、システム中において唯一のN含有成分であるため、マトリックスにおける固定化配位子の量は、窒素分析によって計算することができる。以下の表1に示されるように、最も高い表面被覆度(配位子密度)は、サイクレン(cyclen)単独の固定によって得られる。実験を最後まで行った場合、DO3A配位子は、妥当なレベルで固定される(最適で約300 μmol/g乾燥ゲル)が、DO3P配位子は同程度に固定化されない。これは、DO3Pの配位子の固定化より前に、エポキシ-活性化ゲルを長く保管したためであるかもしれない。あるいは、その低い配位子被覆度は、配位子の大きな立体的容積が、相互作用可能な全てのエポキシ基の接近を妨害したためかもしれない。そのうえ、DO3P配位子のホスホノ基は、固定化の際に用いられるpH(pH 12)では、DO3A配位子のカルボキシ基より負に帯電しており、このため静電反発力の効果が固定化の被覆を阻害したのかもしれない。
【化7】

【表1】

【0054】
〈金属イオンの固定〉
金属イオンの固定化は、ゲルを相当する金属イオンの塩化物の溶液にて、1時間、室温にてインキュベートすることによって成される。im-配位子のペンダントアームの酸性基の完全な脱プロトン化を確実にするため、(ヒドロキソまたはオキソ種の形成を防ぐため、Fe3+の場合を除いて)金属イオン溶液のpHはpH10まで上げた。金属イオンの結合の量は原子吸光分光分(AAS)分析法にて検出され、以下の表2に要約した。例証した方法を用いて、ゲル(im-DO3A、im-DO3P)とCaCl2溶液(pH10)を室温で1時間インキュベートすることにより、Ca2+イオンの固定化を行った。
【表2】

【0055】
これらの結果は、ほとんどの場合において金属と配位子の結合の化学量論比は1:1であることを示している。DO3Pの場合、ゲルによるZn2+およびFe3+の取り込みは約2:1であるが、T1A(すなわちTacn1A)およびT2A(すなわちTacn2A)の場合では、Ca2+と配位子の化学量論比は約1:2であった。
【0056】
固定化された硬い(hard)金属イオン(または境界硬さ(borderline hardness)の金属イオン)に結合するためのペプチドタグの配列の設計:金属イオンに関して本明細書にて用いる「硬い(hard)」、「硬さ(hardness)」および「軟らかい(soft)」という用語の意味は、R.G. Pearson(例えば、S.F.A. Kettle, Coordination Chemistry, Thomas Nelson and Sons Ltd., 1969, pp. 48-49を参照) に従うものであることが、ここで記述されるべきである。スケールの一端における、「硬い(hard)」金属イオンは配位子への結合に関してプロトンに匹敵し、小さく、および容易にゆがめられまたは除かれるような価電子殻の電子を欠くものであり;硬い(hard)金属イオンには、例えば、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Cr3+、La3+およびFe3+が含まれる。スケールのもう一端における、「軟らかい(soft)」金属イオンは、大きく、電荷が小さく、または容易にゆがめられまたは除かれるような価電子殻の電子を有し;軟らかい金属イオンには、例えば、Cu+、Ag+およびCd2+が含まれる。その特徴から、硬い(hard)もの軟らかい(soft)ものの間の境界に位置づけられる金属イオン、すなわち「境界硬さ(borderline hardness)」の金属イオンには、例えば、Zn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+およびCu2+が含まれる。
【0057】
硬い(hard)金属イオンは、硬い(hard)ルイス塩基に対して最も強いアフィニティを有す。同様に、タンパク質内のカルボキシ基を含むアミノ酸残基(Asp、Glu)は、Ca2+といった硬い(hard)金属イオンに強く結合することができる。組み換えタンパク質と硬い(hard)金属イオンとの特異的相互作用を得るために、特異的な融合タグが必要とされる。このような硬い(hard)金属イオンに結合するタグは、好ましくは、遺伝学的組み換え技術を用いてタンパク質に導入可能な、短いペプチドタグである。例えば、Ca2+特異的結合タグを設計するために、天然のCa2+結合タンパク質が、Ca2+結合に関与するアミノ酸配列の分析に供された。これらの配列は高いアフィニティにてCa2+に結合し、それ自体がタグの設計の基礎を提供する可能性を有している。そのようなタンパク質の例は、カルシウム結合タンパク質カルモジュリン(CaM)、トロポニンC (TnC)、および)パルブアルブミン(Parv)である。これら全てのタンパク質が高いアフィニティにてCa2+に結合する13
CaM: 四つの結合部位 log Ks = 6
TnC: 四つの結合部位 log Ks = 7
Parv: 四つの結合部位 log Ks = 9
【化8】

【0058】
模式図7は四つのカルシウム結合部位を有すカルモジュリンの構造を示す。一般的に、四つの結合部位のうち2つがCa2+に対して低いアフィニティをもち、残りの2つの部位がCa2+に対してわずかに高いアフィニティをもつ。
【0059】
構造的研究から、この分子が、長く露出したα-ヘリックスによって連結した2つの球状の末端を有す、「ダンベル」型であることがわかった。それぞれの末端が2つのCa2+結合部位を有し、それぞれ、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基(下記表3にて、太字で示した)がカルシウムと静電/配位結合する12のアミノ酸残基からなるループを形成する。前記分子のカルボキシ末端部分(ドメインIII、IV)の2つのCa2+結合部位は、アミノ末端(ドメインI、II)との同部位と比べて、カルシウムに対し10倍高いアフィニティを有す。四つのカルシウム結合ドメインを、それらの配列と共に表3に示した:
【表3】

【0060】
これらの配列(表3)に基づいて、潜在的に異なるアフィニティでCa2+に結合する、8つのペプチド配列(模式図8)を設計した。ペプチド1-3では、Ca2+結合に関与する五つのアミノ酸残基(模式図8にて太字で示した)の部位がある。(im-配位子からのCa2+の消失を抑えるため)Ca2+に対するタグのアフィニティは、配位子に対するCa2+のアフィニティより低くい必要があることを考慮して、より短いタグ(タグ4-タグ6)も、タグに対するCa2+の結合アフィニティを減らすために設計した。
【化9】

【0061】
上記のタグ配列に加えて、本発明はまた、そのような配列の変種(variant)をも包含し、そのような変種では、1以上のアミノ酸残基(例えば、1つのアミノ酸)が、異なるアミノ酸残基で、特に、置き換えられるアミノ酸残基と同様な化学的機能を示す1つまたは複数のアミノ酸残基で置き換えられる(すなわち置換される)。この内容において、「同様な化学的機能」とは、置き換えられるアミノ酸残基およびそれと置き換わるアミノ酸残基が、極性に関して、分極率に関して、酸性および塩基性置換基の数に関しておよび/または構造的類似性もしくは相同性に関して、密接な関係があることを指すよう意図される。このため、模式図8(上記)に示されるタグ配列の中で強調されていないアミノ酸残基(すなわち太字でない残基)に関して、例えば以下の置き換えに当てられるであろう:
Ala (A)残基(非極性残基)をGly (G)残基(同様に非極性)で置き換え、またはその逆の置き換え;
Phe (F)残基(フェニル環を含む)をTyr (Y)残基(フェニル環に4-ヒドロキシ基をもつことでPheと異なる)で置き換え、またはその逆の置き換え;
「非分極性(nonpolarizable)」のVal (V)、Leu (L)またはIle (I)残基を、それらの残基間内で置き換え、またはその他のPro (P)またはMet (M)といった「非分極性(nonpolarizable)」の残基で置き換え。
【0062】
模式図8(上記)に示されるタグ配列の中で強調されている残基(太字で示される)に関して、例えば以下の置き換えに当てられるであろう:
Asp (D)残基(「酸性」残基)をGlu (E)残基(同様に「酸性」)で置き換え、またはその逆の置き換え;
Asn (N)残基をGln (Q)残基で置き換え。
【0063】
模式図8に示された1以上のアミノ酸配列、および/またはそのような配列の1以上の置換変種(substitution variants)を含むオリゴペプチドはまた、本発明の一側面を構成する。そのようなオリゴペプチドにおいて、問題の「タグ」配列(またはその置換変種)は同一または異なっていてかまわないことが理解されるであろう。
【0064】
ペプチド(オリゴペプチド)「タグ」は、上に示された1以上のアミノ酸配列、または上述のその置換変種に加えて、オリゴペプチド「タグ」のCまたはN末端(例えば、模式図8に示される8つの配列(タグ1-タグ8)の1つのCまたはN末端)に連結する、2から6またはそれ以上の付加的アミノ酸残基を含んでかまわない。
【0065】
好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法に基づく、周知の分子生物学的手法および技術を用いることで、本発明によるオリゴペプチド「タグ」の関心あるタンパク質への導入を、アミノ末端、カルボキシル末端または内部(エンド)の位置に起こすことができる。その結果、C末端にオリゴペプチド「タグ」を導入することで、記述されるIMAC法を、提示される大環状のキレート化配位子システムを用いて行うことが可能となる。そのうえ、本発明によるオリゴペプチド「タグ」(例えば上記模式図8に示したなかのひとつ)が、同時に、関心あるタンパク質もしくはポリペプチド2分子に対して、または代わりに2つの異なる関心あるタンパク質もしくはポリペプチドに対して、それぞれアミノまたはカルボキシ末端にて、融合でき、それによって、オリゴペプチド「タグ」がエンドの位置(すなわち内部の位置)に位置し、2分子の関心あるタンパク質またはポリペプチドが連結する、新たな融合タンパク質の構造を形成される。
【0066】
タグ配列を含むペプチドの合成:本発明に関するIMACシステムにおける使用のための先のタグ配列の適合性の試験のために、タグ1-タグ8の配列を有すペプチドはそれぞれ、Fmocに基づく固相ペプチド合成法(Fmoc-based solid-phase peptide synthesis)によって合成される。この方法は、側鎖が保護され、およびN末端がFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)で保護されるLアミノ酸の、不溶性ポリマー支持体への連続的付加に基づく。N末端保護基の除去の後、次のFmoc保護アミノ酸が、カップリング試薬(HOBt、HBTU、DIPEA)の付加とともに加えられる。脱保護およびカップリング段階が、最終的な粗製ペプチドが得られるまで繰り返される。標準的なTFA切断法が、樹脂から生成物を切断するために、および粗製ペプチドから側鎖の保護基を取り除くために用いられてかまわない。粗製ペプチドは、例えばアセトニトリルの濃度の増加による勾配溶出を用いる、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製された。
【0067】
本発明のさらに別の側面は、以下を含む:
SEQ. IDs Nos. 1-8と関連して上にて言及されたオリゴペプチド中の、またはそのようなオリゴペプチドの置換変種(substitution variants)に関して上で言及されたオリゴペプチド中の、少なくとも1つのオリゴペプチドに、アミノ末端またはカルボキシ末端で融合される関心あるタンパク質を含む融合タンパク質であるポリペプチド;すでに論じた(上記参照)ように、問題の種の融合タンパク質は、2分子の関心あるタンパク質もしくはポリペプチド、または代わりに2つの異なる関心あるタンパク質もしくはポリペプチドが、同時に、それぞれアミノまたはカルボキシ末端にて、ひとつのおよび同じオリゴペプチド(すなわちオリゴペプチド「タグ」)、好ましくは本発明によるオリゴペプチドに結合し、オリゴペプチド(すなわち「タグ」)がエンドの位置(すなわち内部の位置)に位置し、2分子の関心あるタンパク質またはポリペプチドを連結している状態にある、融合タンパク質を含む;この種の融合タンパク質において、オリゴペプチド「タグ」のアミノ酸配列は、好ましくは、1以上の酵素的または化学的切断部位に隣接してかまわない;
そのようなポリペプチドをコードする、ベクターといった、ポリヌクレオチド構築物;
そのようなポリヌクレオチド構築物を含む宿主細胞(例えばEscherichia coliといった原核生物)を、適切な培地で、ポリペプチドの発現ができる条件下で培養し、培養培地からポリペプチドを回収することによって得られる、ポリペプチド;
そのようなポリヌクレオチド構築物を含む、例えば原核生物細胞(例えばEscherichia coli株)の宿主細胞;および
問題のタイプのポリペプチドを作製する方法であって、問題のタイプの宿主細胞を、適切な培地で、ポリペプチドの発現ができる条件下で培養し、培養培地からポリペプチドを回収することを含む方法;
本発明のまた別の側面は、関心あるタンパク質の精製のための方法であって、以下の段階を含む方法である:
タンパク質サンプルであって、関心あるタンパク質と、そのアミノ末端またはカルボキシ末端に融合した本発明に係る少なくとも1つのオリゴペプチド(すなわちオリゴペプチド「タグ」)とを含む融合タンパク質(すなわち、すでに論じたとおりオリゴペプチド(すなわち「タグ」)がエンドの位置に位置する融合タンパク質を含む、すでに上述したタイプの1つの融合タンパク質)であるポリペプチド、並びに、その他の(無関係の)タンパク質を含むタンパク質サンプルと、
本発明に係る金属イオンを含む官能化されたポリマー基体とを、
前記ポリペプチド(融合タンパク質)が前記金属イオンを含む官能化されたポリマー基体と結合し、それらの複合体を形成する条件下にて接触させること;
緩衝溶液にてその複合体を洗浄し、前記その他の(無関係の)タンパク質を除去すること;および
洗浄した複合体から結合したポリペプチドを溶出すること。
【0068】
先の方法は、オリゴペプチド(「タグ」)を、例えば化学的手段または例えばエンドペプチダーゼもしくはエキソペプチダーゼといった酵素的手段によって、関心あるポリペプチドまたはタンパク質から切断する段階をさらに含んでもよい。
【0069】
本発明はまた、先の方法によって得られるまたは得られうる精製タンパク質を包含する。
【0070】
アフィニティタグを伴う標的タンパク質の発現:組み換えDNA技術を、続く精製に用いるために、融合タグをタンパク質に導入するために用いることができる。アフィニティタグは、金属イオンに強い結合アフィニティを有すアミノ酸配列をコードするDNAの短い断片である。これらのタグ(c-DNA)は標的組み換えタンパク質のc-DNAに、NまたはC末端にて、連結されている(繋げられている)。生成されたタグ付加の融合タンパク質は、発現(産生)させることができ、および引き続いて、結合したタグが選択的にまたは特異的に固定化金属イオンに結合するため、IMACシステムを用いて、粗製の細胞抽出物から精製することができる。融合タンパク質の溶出は、連続的に減少するpHの勾配を用いることで達成できる。あるいは、EDTAといったキレート化試薬を、タンパク質の溶出のために移動相に加えることができる。必要ならば、アフィニティタグは、化学的または酵素的方法によって、標的タンパク質(精製後)から取り除くことができる。
【0071】
本発明に関して考えられる精製の方法論に関連するポリペプチドまたはタンパク質(関心あるポリペプチドまたはタンパク質)は、以下を含む:ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む、成長ホルモンといった哺乳類のタンパク質;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VII因子(第VIIa因子を含む)、第VIII因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子といった凝固因子;プロテインCといった抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;ウロキナーゼまたは組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA)といったプラスミノゲン活性化因子;ボンバジーン;トロンビン;腫瘍壊死因子-αおよび-β;エンケファリナーゼ;ランテス(活性化によって制御される、正常なT細胞によって発現および分泌される因子(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted));ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(macrophage inflammatory protein)(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンといった、血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNA分解酵素;アクチビン(例として、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンDおよびアクチビンE);インヒビン(例として、インヒビンAまたはインヒビンB);血管内皮細胞増殖因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子に対する受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(bone-derived neurotrophic factor)(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5もしくはNT-6)、またはNGF-βといった神経成長因子といった、神経栄養因子;血小板由来成長因子(PDGF);aFGFおよびbFGFといった、線維芽細胞成長因子;上皮細胞成長因子(EGF);TGF-α、およびTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4および/またはTGF-β5を含むTGF-βといったトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳のIGF-I);インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19またはCD20といったCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導性因子(osteoinductive factors);免疫毒素;骨形成タンパク質1-7(BMP 1-7);インターフェロン-α、-βまたは-γといった、インターフェロン;例として、M-CSF、GM-CSFまたはG-CSFといった、コロニー刺激因子(CSFs);例として、IL-1からIL-12といったインターロイキン(ILs);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;膜表面タンパク質;分解促進因子(DAF);例として、エイズの包膜の一部といったウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;および上に列挙した何れかのポリペプチドまたはタンパク質の生物学的に活性な断片または変種。
【0072】
本出願で用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、5’から3’末端方向に読まれるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドはRNAおよびDNAを含み、天然の原料から単離されてよく、in vitroで合成されてよく、または天然のおよび合成の分子の組み合わせにて作製されてよい。ヌクレオチド分子の長さは、ヌクレオチド(「nt」と略される)または塩基対(「bp」と略される)という用語によって、表される。「ヌクレオチド」という用語は、その脈絡から許される場合に、一本鎖および二本鎖の両分子に対して用いる。前記用語が二本鎖の分子に適用されるとき、全長を指すために用いられ、および「塩基対」という用語と同義であると理解されるだろう。二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖は長さがわずかに異なってもかまわず、およびその末端は酵素的切断の結果不安定であってもかまわないことが当業者に認識されるだろう;このため、二重鎖ポリヌクレオチド分子の全てのヌクレオチドが、対になっていなくてもかまわない。そのような対になっていない末端は、一般に20ntの長さを上回らない。
【0073】
本出願にて用いられる「宿主細胞」という用語は、異種性のDNAを発現し得る、雑種細胞を含む、何れかの細胞を意味する。典型的な宿主細胞は、細菌の細胞、昆虫の細胞、酵母の細胞、およびヒトの細胞を含みBHK、CHO、HEK、およびCOS細胞といった哺乳類の細胞が含まれるが、以上のものに限定されない。
【0074】
本出願で用いられる「ベクター」という用語は、宿主細胞内で増幅可能な何れかの核酸の実体を意味する。このため、前記ベクターは、自律的にベクターを複製してもかまわず、すなわち染色体外の実体として存在するベクターであってかまわず、その複製は染色体の複製と独立し、例としてはプラスミドが挙げられる。あるいは、前記ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その組み込まれた染色体と共に複製されるものであってよい。ベクターの選択は、しばしばそれを導入する宿主細胞に依存するだろう。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスまたはコスミドベクターを含むが、これらに限定されない。ベクターは普通、複製起点および少なくとも1つの選択遺伝子(selectable gene)を含む。前記選択遺伝子とは、すなわち、直ちに検出可能である産物、またはその存在が細胞の生育に必要である産物をコードする遺伝子である。
【0075】
本明細書において、アミノ酸残基はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature (CBN)によって認められた略号を用いて表される。アミノ酸に関して、以下の略号によって表されるものは、天然のL型である。そのうえ、ペプチドのアミノ酸配列の左および右端は、それぞれ、明記がない限り、N末端およびC末端である。
【表4】

【0076】
請求項と共に本明細書にて用いられる酵素の分類は、the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular BiologyのRecommendations (1992)に従っており、この分類の最新版(追加を含む)は、ワールドワイドウェブ上にて利用できる(http://www.chem.qmw.ac.uk/iubmb/enzyme/)。
【実施例】
【0077】
〈略語〉
APS 過硫酸アンモニウム
BES N, N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸
CAPS 3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸
CHES 2-(シクロヘキシルアミノ)-エタンスルホン酸
サイクラム(Cyclam) 1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン
サイクレン(Cyclen) 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
Da ダルトン
DIPEA 1,3-ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DO3A 1,4,7-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
DO2P 1,7,-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
DO3P 1,4,7-トリス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン
EDT 1,2-エタンジチオール
GST グルタチオンS-転移酵素
HBTU O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロフォスフェート
HEPES 4-(2-ヒドロキシエチル) ピペラジン-1-エタンスルホン酸
HOBt N-(ヒドロキシベンゾトリアゾール)
IMAC 固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー
Im 固定化
im-Ca2+ 固定化カルシウムイオン
im-Fe3+ 固定化三価鉄イオン
im-Mn+ 固定化金属イオン
im-Ca2+-DO3A DO3AおよびCa2+イオン由来の固定化金属イオン複合体
im-Ca2+-DO3P DO3PおよびCa2+イオン由来の固定化金属イオン複合体
IPTG イソプロピル-β-D-チオガラクトシド
MES 2-(N-モルフォリノ)-エタンスルホン酸
MOPS 3-(N-モルフォリノ)-プロパンスルホン酸
PAGE ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PBS リン酸緩衝食塩水
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
Tacn1AまたはT1A 1-(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン
Tacn2AまたはT2A 1,4-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン
Tacn2PまたはT2P 1,4-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン
Tacn 1,4,7-トリアザシクロノナン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン
TFA トリフルオロ酢酸
〈金属イオン配位性配位子〉
{1,7-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO2P)の合成}
DO2Pの多段階合成を、以前報告された方法5,6によって行った。
【0078】
1,7-ビス(ベンジルオキシカルボニルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(I)
サイクレン(cyclen)(0.5g)をH2O(20ml)に溶解し、6M HClを加えてpHを3.0に調整し、その後ジオキサン(15ml)を加えた。クロロギ酸ベンジルをジオキサン(10ml)に溶解し、その溶液を、2M NaOH(約20ml)を加えてpHを2-3に維持しつつ、前記混合物にシリンジを通して添加した。16時間後添加が完了し、その溶媒を減圧下において蒸発させた。得られた白色固体残留物をジエチルエーテルで抽出し、透明な油状物質を得た。
【0079】
収量:0.7g:1.57mmol, 54%
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ(ppm) 2.80 (br m, NCH2, 8H), 3.42 (br m, NCH2, 8H), 5.15 (s, OCH2, 4H), 7.34 (m, C6H5, 10H)。
【0080】
1,7-ビス(ベンジルオキシカルボニルメチル)-4,10-ビス(ジエトキシホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(II)
Buraiらによる文献5に記述されるとおり、I(0.7g)に対してトリエチルホスファイト(0.63g、20%過剰)を加え、混合物を氷上で0℃まで冷却した。パラホルムアルデヒド(0.1g、10%過剰)を、30分間かけてゆっくりと添加し、その混合物を室温まで温めた。室温で2日間攪拌し、その後40℃で1日攪拌して、透明な黄色油状物質を得た後、40-50℃にて高い減圧状態を数時間維持して揮発性の不純物を除去した。生成した透明な油状物質を、さらなる精製を行わず、次の合成段階に用いた。
【0081】
収量:0.5g, 0.67mmol, 43%
31P-NMR (CDCl3/H3PO4): δ(ppm) 26.62
1H-NMR (CDCl3): δ(ppm): 7.30 (m, 芳香族のプロトン, 10 H); 5.13 (s, ベンジル基のプロトン, 4H); 4.05 (m POCH2CH3, 8H); 3.4 (br, CONCH2CH2NCH2P, 8H); 2.85 (br, CONCH2CH2NCH2P, and NCH2P, 12H); 1.30 (t, POCH2CH3, 12H)。
【0082】
1,7,-ビス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO2P)(III)
粗製の油状物質(II)を5M HCl (50ml)に溶解し、24時間還流した。室温まで冷却した後、その混合物をジエチルエーテルで抽出し、ジエチルエーテルを減圧下にて蒸発させた。固体残留物を無水エタノール(25 ml)に溶解し、ジエチルエーテル(25ml)を加えた。白色沈殿物が直ちに形成され、その沈殿物をろ過紙減圧下にて乾燥させた。
【0083】
収量:0.1g, 0.28mmol, 42%
融点:285-290℃
31P-NMR: δ(ppm) 22.26
分析C10H26N4O6P2 ・ 1.65H2O ・ 1HClの計測: C, 28.17; H, 7.25; N 12.57; found: C, 28.17; H, 7.16; N, 13.14
1H-NMR (D2O, pH〜 2.0):δ(ppm) 2.91 3.0, 3.3 (br, 環のプロトン, 16H), 2.90 (d, NCH2P, 4H)
結晶解析:
DO2PをEtOH/H2O溶液から再結晶し、ジエチルエーテルを添加した。X線結晶解析に適した結晶を、4℃にて静置し二週間かけて形成させた。結晶のパラメータを表Iに示した:
【表5】

【0084】
{1,4,7-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO3A)の合成}
公表されている方法3,9に従って、合成を4段階にて行った(模式図A)。1,4,7,10-テトラアザトリシクロトリデカン(1)を、Atkinsらの方法9に従って作製し、段階2-4はDischinoらの方法3によって行った。
【化10】

【0085】
1,4,7,10-テトラアザトリシクロトリデカン(1)
サイクレン(Cyclen)(5g、29mmol)を、トルエン(50ml)に溶解し、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(3.45g、29mmol)を添加した。その混合物を80℃で一晩攪拌し、その後トルエンを減圧下にて除去した。粗製の油状物質を、高い減圧状態にて蒸留し、精製した。
【0086】
収量:4g, 22.03mmol, 76%
1H-NMR (CDCl3): δ(ppm) 1.66 (s, N-H, 1H); 2.88 (s, CH2- CH2, 16H); 4.44 (s, C-H, 1H)。
【0087】
1-ホルミル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(2)
1,4,7,10-テトラアザトリシクロトリデカン(1; 4g, 22.03mmol)を4℃まで冷却し、EtOH/H2O溶液(50ml、-20℃まで冷却)を加えた。その反応混合物を室温にてゆっくりと温め、12時間窒素下にて攪拌した。その反応混合物を真空中で濃縮し、アセトニトリル(50ml)に溶解し、さらに濃縮した。この工程を3回繰り返し、残っているH2Oを除去した。淡黄色油状物質を、減圧下室温で一晩乾燥させ、白色含水固体を得た。
【0088】
収量:3.95g, 19.8mmol, 90%
1H-NMR (D2O): δ(ppm) 2.5-2.8 (m, CH2, 12H); 3.55 (m, CH2, 4H); 8.15(s, CHO, 1H)。
【0089】
1,4,7-トリス(エトキシカルボニルメチル)-10-ホルミル-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン(3)
DMF(20ml、4℃に冷却)に3.95g(19.8mmol)の2を加えた溶液を窒素下で攪拌し、tert-ブチルブロモアセテート(15.43g、79.1mmol)を、30分間かけて加えた。反応混合物の温度を、さらに35分間、30℃に維持した。水(80ml)に溶解させた無水炭酸ナトリウム(8.4g、80mmol)を、上記の反応混合物に加え、30分間攪拌した。トルエン(20ml)の添加の後、混合物をさらに4時間攪拌した。この混合物を、次に、分液ロートに移し、相を分離した。トルエン相を、1M Na2CO3 (50ml)で3回抽出した後、0.8M HCl (1x25ml)にて抽出し、最後にH2O (25ml)にて抽出した。水相をまとめ、pHをNa2CO3を用いて9.4に調整した。これらのまとめた相を次に、ジクロロメタン(DCM; 50ml)にて2度抽出し、このDMC相をまとめ、Na2CO3にて乾燥させた。有機相を真空中にて濃縮し、粘性の淡黄色油状物質として3を得た。
【0090】
収量: 9.32g, 17.2mmol, 87%
1H-NMR (CDCl3): δ(ppm) 1.45 (s, CH3, 27H); 2.68-3.0 (m, CH2, 12H); 3.2-3.6 (m, CH2, 10H); 8.05(s, CHO, 1H)。
【0091】
1,4,7-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン DO3A (4)
2g (3.7mmol)の3を、5M HCl (100 ml)に加え、その溶液を窒素下で6時間加熱して還流した。反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、水(50ml)を加え、混合物を再度減圧して濃縮した。この工程を3回繰り返し、残っているHClを除去した。生成された透明な油状物質を、次にH2O (50ml)に溶解し、高い減圧下(凍結乾燥)で溶媒を除去し、淡黄色の生成物を得た。
【0092】
収量: 1.27g, 3.58mmol, 97%
13C-NMR (D2O): δ(ppm) 41.3, 46.7, 48.3, 51.1, 52.1, 53.58, 167.6, 173.4
1H-NMR (D2O): δ(ppm) 2.9-3.3 (br, 環のプロトン, 16H), 3.6 (s, CH2COOH, 6H)
質量分析[(ESI) m/z]:calcd for DO3A: 346; found: 347 (M+H+), 345 (M-H-).
{1,4,7-トリス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DO3P)の合成}
DO3Pは、以下(模式図B)の文献による方法によって作製した:
【化11】

【0093】
1,4,7,10-テトラアザトリシクロトリデカン(1)および1-ホルミル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(2)を、DO3Aの合成のために上述した方法にそって作製した。
【0094】
1,4,7-トリス(ホスホノメチル)-1,4,7,10-tテトラアザシクロドデカン(DO3P) (6)
1-ホルミル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(2g, 10mmol)およびトリエチルホスフェート(6g, 36.1mmol, 20%過剰)を、丸底フラスコに移し、そのフラスコをアイスバスに浸けた。パラホルムアルデヒド(1g, 33mmol, 10%過剰)を、30分間かけて少量ずつ添加した。その混合物を室温まで温め、室温にて2日間攪拌し、さらに1日40-50℃で攪拌した。透明な混合物を50℃で数時間高い減圧下に置いて、揮発性の不純物を取り除いた。その結果できる粗製のホスホン酸エステル(5)を、さらなる精製を行わず、加水分解した。それを5M HCl (200 ml)に溶解し、混合物を二日間還流した。塩酸をロータリーエバポレーターで除去し、透明な油状物質を得た。それを(100 ml)の水に溶解し、溶媒を減圧下にて除去した。この手順をさらに二回繰り返した。最後に、その油状物質を水(925 ml)に溶解し、エタノール(10 ml)を加えた。生成物が白色固体として沈殿し、それをろ過して、水(3x20 ml)で洗浄し風乾した。粗製の生成物を熱湯から再結晶し、微細な白色の結晶性固体として6を得て、それを減圧下にて質量が一定になるまで乾燥した。
【0095】
収量: 4g, 8.6mmol, 86%
1H-NMR(D2O, NH3, pH 10): δ(ppm) 2.8 (d, CH2PO(OH)2, 4H,), 3.15 (br, 環のプロトン, 14 H), 3.4 (br s, CH2NHCH2, 4H)
質量分析[(ESI) m/z]: calcd for DO3P: 454; found: 455 (M+H+)。
【0096】
{1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン(サイクラム(Cyclam))の合成}
N,N’,N’’,N’’’-テトラトシル-1,5,8,12-テトラアザシクロドデカン
方法A:
1,5,8,12-テトラアザシクロドデカン(10g, 57.4mmol)を蒸留水(70 ml)に溶解し、水酸化ナトリウム(9.2g, 229.5mmol)を攪拌しながら、温度が40℃以上にならないようにしながら、ゆっくりと加えた。混合物を、次に15℃まで冷却し、ジエチルエーテル(70ml)で希釈した。そしてトシルクロリド(43.75g, 229.5mmol)を、温度が15℃に維持されるようしつつ、少量ずつ加えた。その溶液を氷上でさらに一時間攪拌した後、室温で一晩静置した。その結果できる白色の沈殿物をろ過し、水で洗浄し80℃で2時間乾燥した。そして粗製の生成物を加熱したメタノール中で一時間攪拌し、ろ過し、減圧して乾燥した。
【0097】
収量: 35.4g, 44.8mmol, 78%
1H-NMR(d6 アセトン): δ(ppm) 7.73 (8H, ベンジル基のプロトン), 7.4 (8H, ベンジル基のプロトン), 3.18 (8H, CH2), 2.95 (4H, CH2) 2.42 (12H), 1.78 (4H)
融点: 125-128℃.19,20
方法B:
1,5,8,12テトラアザシクロドデカン(5g, 28.7mmol)およびK2CO3 (8g)を水(100ml)に溶解し、80℃に加熱した。トシルクロリド(24.6g, 129.15mmol)を3時間かけて少量ずつ加えた。その混合物を、一晩加熱して攪拌した。その結果できる透明の溶液を室温まで冷却することで、沈殿物が形成された。その白色固体をろ過し、それぞれ、水、メタノールおよびジエチルエーテルによる三度の洗浄を行い、その後減圧して乾燥させ、白色粉末を得た。
【0098】
収量: 17g, 21.5mmol, 75%
1H-NMR(d6 アセトン): δ(ppm) 7.73 (8H, ベンジル基のプロトン), 7.4 (8H, ベンジル基のプロトン), 3.18 (8H, CH2), 2.95 (4H, CH2) 2.42 (12H), 1.78 (4H)
融点: 125-128℃.19,20
質量分析[(ESI) m/z]: calcd for C36H46N4O8S4: 790; found: 791 (M+H+)。
【0099】
〈セファロース(商標) 6FFへの配位子の固定化〉
{エポキシ活性化セファロース 6FFの作製}
セファロース(商標) 6FF(500g)を水で広く洗浄し、吸引乾燥させ、丸底フラスコに移した。NaBH4 (1.88mg/ml)を含んだ2M NaOH (500ml)を加え、懸濁液を2時間室温で攪拌した。そしてエピクロロヒドリン(300ml)を加え、その懸濁液を5日間攪拌した。その結果できる、エポキシ活性化ゲルを吸引ろ過にて収集し、水(5x500ml)にて十分洗浄し、20%エタノールで4℃にて、配位子の固定に用いるまで保存した。
【0100】
{DO3Aの固定化}
0.2 M DO3Aの溶液(20 ml)を作製し、2M NaOHにてpHを12に調整した。このDO3A溶液を吸引乾燥したエポキシ活性化セファロース(商標) 6FF(20g)に加え、反応混合物を4日間室温にて振盪した。その結果できる固定化DO3Aゲル(im-DO3A)をろ過し、水(5x50 ml)にて広く洗浄し、20%エタノールで4℃にて保存した。
【0101】
{DO3Pの固定化}
DO3Pは水に不溶のため、水(10 ml)にDO3Pを加えた懸濁液を作製し、2M NaOHにてpHを12に調整した。このようにpHを上げることで、DO3Pは溶解したようであった。これによりできた溶液を最終的に液量が20mlになるように希釈し、吸引乾燥したエポキシ活性化セファロース(商標)(20g)を加えた。この懸濁液を4時間室温にてインキュベートした。この後、固定化DO3Pゲル(im-DO3P)を吸引ろ過にて収集し、5x50mlの水にて洗浄した。このゲルを20%エタノールで4℃にて保存した。
【0102】
{官能化セファロース吸着剤の窒素分析}
固定化配位子ゲル(im-DO3A, im-DO3P)を、窒素含量を分析して、配位子の固定化の程度を決定した。それぞれのゲルにおいて、約10g(湿重量)のゲルを、ろ過によって収集し、および真空中にて重量一定になるまで凍結乾燥した。乾燥した吸着剤を正確に重量測定し、窒素含量を、Dairy Technical Services Ltd.(オーストラリア、メルボルン)に依頼して分析した。
【0103】
{固定化キレート化配位子への、カルシウムイオンおよびその他の金属イオンの固定化}
吸引乾燥した固定化配位子ゲル(10g湿重量)に、0.1M CaCl2 (または0.1 Mのその他の金属の塩化物)溶液を加え、その後、pHを2M NaOHにて10に調整し、全液量を50mlに増やした。その混合物を室温にて1時間振盪してインキュベートした。そのゲルを次にろ過により回収し、水(5x50 ml)にて洗浄した。約1g(湿重量)のゲルを真空中にて凍結乾燥し、正確に重量を測定し、5M HCl (20 ml)中にて2時間50℃で消化した。その溶液をH2Oで正確に50mlになるよう希釈し、Ca2+ (またはその他の金属イオン)含量を、Varian AA-1475原子吸光分光器を用い、金属特異的波長および使用範囲(例えば、Ca2+イオンでは422.7nmの波長にて、1から4ppmの使用範囲)で、原子吸光分光分析法(AAS)にて測定した。
【0104】
〈タグ配列に対応したペプチドの合成〉
{固相ペプチドの合成}
模式図7(上記参照)に示した配列をもつ八つのペプチドを、PS3 Protein Technologies Automated Peptide Synthesiser(Rainin Instrument Co.アメリカ、MA、ウォバーン)を用いて合成した。樹脂(0.2mmol)(あらかじめ、最初のアミノ酸と結合させてある)を、特別に設計された反応性導管に充填し、DMF (10 ml)と混合して室温で1時間膨潤させた。2倍の過剰量のFmoc保護したLアミノ酸(0.4 mmol)、HOBtおよびHBTUを、ペプチド合成器の個々の回転台のバイアル瓶に量り入れた。それぞれのペプチドにおいて、1アミノ酸(AA)あたりの合成サイクルは以下のとおりである:
I 脱保護(20%ピペリジンを含む8 ml DMF): 2x 5 min
II 樹脂の洗浄(10 ml DMF): 6 x 30 sec
III AA/activantの溶解(7%v/v DIPEAを含む8 ml DMF): 1 x 30 sec
IV AAカップリング(HOBt, HBTU, DIPEA): 1 x 60 min
V 樹脂の洗浄(10 ml DMF): 6 x 30 sec
VI Iに戻り、次のアミノ酸とカップリング。
【0105】
合成完了後、樹脂/ペプチド生成物を、DMFとともに可塑性シンター(plastic sinter)に移し、メタノール(2x10 ml)およびジエチルエーテル(10 ml)にて洗浄した。粗製の樹脂/ペプチド生成物を乾燥器にて一晩乾燥させた。
【0106】
{樹脂からのペプチドの切断}
乾燥した樹脂/ペプチド生成物を、50 ml容量の丸底フラスコに移しアイスバスにて冷却した。あらかじめ作製し、冷却しておいた切断試薬混合物(フェノール/TFA/EDT/チオアニソール/水 - 下記参照)を、前記樹脂/ペプチド生成物に加え、その混合物を室温で2時間攪拌した。混合物を次にろ過し、そのフィルターをTFAにて洗浄し、ろ液と洗浄した液をまとめて、減圧下にて濃縮した。そして冷却したジエチルエーテルを激しく振盪しながら混合物に加えた。沈殿したペプチドをろ過し、50%アセトニトリル/水に再溶解し、一晩凍結乾燥して、綿毛状の白色の粗製生成物を得た。
【0107】
切断混合物: 0.375g フェノール
0.25ml 脱イオン水
0.125ml EDT
0.25ml チオアニソール
5.00ml TFA
その結果は、以下の表IIに要約される:
【表6】

【0108】
{粗製ペプチドの精製}
分取および分析逆相HPLC(RP-HPLC)を、Waters Associates (アメリカ、MA、ミルフォード)液体クロマトグラフィーシステムにて行った。前記システムは、2つのModel 600溶媒輸送ポンプ、レオダイン注入器、WISP Model 712 auto-sampler、および自動化勾配調節器を含む。検出は、Waters Millennium softwareコンピューターに繋がった、Model 486可変波長UV検出器を用いて行った。ペプチドは、分取RP-HPLCで、バッファーA(0.1% TFA)からバッファーB [90% (v/v) アセトニトリル/水, 0.1% TFA]への異なる溶出勾配(表III、下記)にて、流速6ml/minで1時間かけて精製し、TOSOH (日本、東京)のTSK-ODS-120T C-18 (300 x 21.55 mm)カラムを用いて230nmの波長にて検出した。RP-HPLCの分取用の運転から得た画分を、Pharmacia Biotech AB (スウェーデン、ウプサラ)のPharmacia (Frac-100)画分収集器で収集し、一晩凍結乾燥した。収集した画分の精製度は、TOSOH (日本、東京)のTSK-ODS-120T C-18(150 x 4.6 mm)カラムを用いた分析RP-HPLCを、バッファーB(0 - 85%)の溶出勾配にて、流速1ml/minで25分間行い、214 nmで検出した。
【表7】

【0109】
得られた精製ペプチドは、より長いアセトニトリル勾配を用いた分析RP-HPLCによってさらに分析し、分子量を質量分析によって確認した。表IVにてみられるように、ペプチド1、2、3G、4、5および6G全てが、計算される質量に対応するスペクトルをもつ。ペプチド3Rおよび6Rは、欠失した生成物を含むと考えられ、ペプチド6Rはメチオニンが消えており、ペプチド3Rはアルギニンが欠失している。全長のペプチドから欠失した生成物を分離するため、溶出勾配の最適化が必要であり、それによって勾配の長さがかなり増加している。
【0110】
{エレクトロスプレーイオン化質量分析}
ペプチドの分子量(MW)を、エレクトロスプレー源のMicromass platform (II)四重極型MSおよびMasslynx NT version 3.2 software(Micromass、イギリス、チェシャー州)を用いた、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)にて検出した。ペプチドを、50% (v/v) アセトニトリル/水と3% (v/v)ギ酸の1:1混合液に溶解した。スキャンの範囲は、0-2000 m/zであり、サンプルは、手動の注入器にて10μl/minの割合で注入した。
【表8】

【0111】
〈アフィニティタグを伴う標的タンパク質(グルタチオンS転移酵素、GST)の発現〉
{発現}
GST-タグ融合タンパク質の発現を、組み換えGST-タグプラスミド(タグ1から6、タグ付加していないGSTおよびベクターのみ)を含むE. coliのBL21宿主細胞の単一のコロニーを、10mlの2xYT培地(16g/lのトリプトン、10 g/lのイースト・エクストラクト、5 g/l NaCl、100μ/mlのアンピシリンを添加)に直接接種することで、異なるスケールで行った。培養液を、37℃で激しく振盪しながら一晩培養した。これらの培養液のそれぞれ10mlの分量を、500mlの2xYT培地を含む無菌の2L容バッフル付フラスコに入れ、600 nmにおける吸収(A600)が0.5-1.0に達するまで37℃で振盪培養した。終濃度1 mMになるようIPTGを添加し、培養を28℃にてさらに3時間続けた。培養液を遠心分離用容器に移し、7700xg、4℃で10分間遠心し、細胞を沈殿させた。上清を捨て、細胞のペレットを、1x PBS、5mM EDTAおよび1mM PMSFを含むライセートバッファーに再懸濁した。溶液を、30mlの全量となるよう調整し、ニワトリ卵白リゾチーム溶液を加えた(50 mg/ml、全容量の1/100)。氷上で10分間溶液をインキュベーションした後、MgCl2 (2M、全容量の1/1000)およびDNA分解酵素-I (10mg/ml、全容量の1/1000)の溶液を加え、その溶液を再度20分間氷上でインキュベートした。最後に、懸濁した細胞を、氷上での超音波処理にて破砕した。個々の超音波処理において、30秒間の破砕と30秒間の休止を3回行った。
【0112】
ライセートを、SS34ローターで13000xg、4℃で20分間遠心して、細胞の細片から分離した。その上清を精製のために保持した。
【0113】
{SDS-PAGEによる分析}
分画したサンプル(SM)およびクロマトグラフィーの溶出サンプル[フロースルー(FT)、洗浄液(W2)および溶出液(E)]のそれぞれの一定分量(32μl)をチューブに移し、5xサンプルバッファー(8μl)(下記参照)を加えた。これらのサンプルを、90℃で90秒間加熱し、それぞれの25μlを15% SDS-ポリアクリルアミドゲルのそれぞれのウェルに、ピペットを用いて導入した。SDS-ポリアクリルアミドゲルは、4 %の濃縮ゲルを伴う15%アクリルアミドゲル(1mm厚)であり、以下のように作製した:
分離ゲル 濃縮ゲル
アクリルアミド/ビスアクリルアミド溶液(30%/0.8%) 10 ml 0.88 ml
1.5M Tris-Cl pH 8.8 5 ml -
0.5M Tris-Cl pH 6.8 - 1.66 ml
10% SDS 0.2 ml 66μl
H2O 4.7 ml 4.0 ml
10% APS 100μl 33.4 μl
TEMED 14μl 7 μl
サンプルバッファー:
5xサンプルバッファーは以下から成る:
1.5M Tris-Cl pH 8.8 1.5 ml
グリセロール 2.5 ml
SDS 0.5 g
ブロモフェノールブルー 2 mg
ベータメルカプトエタノール 1.0 ml
水 最終的に液量を5.0 mlにする
SDS-ポリアクリルアミドゲルは、Tank Running Buffer (0.025M Tris, 0.192M グリシン, 0.1% SDS, pH 8.3)中で、Hoeffer Mini VE Vertical Electrophoresis Systemを用いて、ゲル一枚当たり20 mAの定電流で、色素の前線が分離ゲルの下端に到達するまで泳動した。
【0114】
{染色}
銀染色:
ゲルは、以下に記述するSwainおよびRoss17の銀染色法を用いて染色した:
銀染色プロトコール(ゲル一枚に対して)
(段階) (試薬) (量) (時間min)
1.固定 40%エタノール 80ml 10
10%酢酸 20ml
水 100ml
2.すすぎ 水 200ml 10
3.固定/増感 グルタルアルデヒド 200μl 5
ホルムアルデヒド 54μl
エタノール 80ml
水 120ml
4.すすぎ 40%エタノール 200ml 20
5.すすぎ 水 200ml 20
6.増感 チオ硫酸ナトリウム 0.05g 1
水 250ml
7.すすぎ 水 200ml 1
8.すすぎ 水 200ml 1
9.銀 硝酸銀 0.2g 20
水 200ml
10.すすぎ 水 200ml 1
11.現像 炭酸ナトリウム 10g
ホルムアルデヒド 160μl
水 400ml
12.停止 5%酢酸
クマシーブルー染色:
ゲルを、クマシー染料を用いて一晩染色した。この染料は、ゲルを完全に青く染色する。次の日、ゲルを脱色し、これによりタンパク質のバンドのみに青色が保持される。
【0115】
(染色) (急速脱色)
クマシー 2.5g メタノール 300ml
メタノール 450ml 水 600ml
水 450ml 酢酸 100ml
酢酸 100ml
{結果}
タグを、組み換えDNA技術によってタンパク質GSTに導入した。GSTは、購入して利用でき、発現が容易であり、特徴が十分わかっており、およびグルタチオンセファロース(商標) 4Bを用いて細胞ライセートから容易に精製できるため、モデルタンパク質としても用いた。タグ付加GSTタンパク質分子の発現は、宿主の細菌細胞(Escherichia coli BL21)を用いて行われる。これらの細胞は、IPTGにより、タグ付加GSTタンパク質の発現が誘導された。宿主細胞の夾雑タンパク質から首尾よく精製されたタグ付加GSTタンパク質はSDS-PAGEにて分析した。以下の模式図9でみることができるように、出発材料(SM)およびフロースルー(FT)は、様々なサイズの宿主の夾雑タンパク質を多く含む。精製し溶出した画分(E)では、それぞれのタグ付加GSTにおいて、理論的なサイズ(〜26kDa)に相当するバンドがみられ、溶出されたタンパク質が相対的に純粋であることがわかる。タグ1-GST、タグ2-GST、タグ4-GSTおよびタグ6-GSTでは、主なバンドの下により小さいバンドがあり、これは宿主細胞のプロテアーゼの作用によって形成された、切断されたタグ付加GSTに対応しているのかもしれない。
【化12】

【0116】
ベクターを用いた、宿主細胞のIMACゲルへのアフィニティに関するSDS-PAGE分析から、タグ付加GSTタンパク質と共精製され得る、存在量の低い宿主タンパク質は、ほとんどない、または全くないことが確認された。精製したタンパク質は、発現されるサイズの比較のために、一枚のゲルにて泳動した。期待されたとおり、タグ1-3(長いタグ、模式図9参照)は、タグ4-6よりわずかに長く、タグ2、4および6では、多少のマイナーな夾雑/切断産物(模式図10)が存在した:
【化13】

【0117】
MALDI-TOF質量分析によってこれらのタグ付加タンパク質についてさらに特性を調べた結果、全てが期待される分子量を有する全長のタンパク質を発現していることがわかった(表V)。タグ2、4および6-GSTにてみられた夾雑物は、GSTタンパク質からタグが完全に切断されたものに相当する。これらの切断された産物が全産物の10%より低い存在量であり、im-Mn+ゲル(2+または3+金属イオン、例えばCa2+)に結合することもできないであろうことを考慮すると、これらのタンパク質サンプルはさらに、続くCa2+ (またはその他の金属イオン)結合の分析に用いることが可能である。
【表9】

【0118】
[参考文献]
(1) Porath, J. Prot. Expr. Purif., 1992, 3, 263-281.
(2) Kovacs, Z., Sherry, A.D.J. J.Chem.Soc., Chem.Commun., 1995, 185.
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(20) Parker, D. Macrocycle Synthesis, a Practical Approach. Oxford: Oxford University Press; 1996.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン配位性の環状配位子基を少なくとも1つ含む官能基によって官能化されたポリマー基体であって、前記配位子基は環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つはこれに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基を含むポリマー基体。
【請求項2】
前記ポリマーが実質的に水に不溶性である、請求項1に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項3】
前記ポリマーが:多糖およびその誘導体;ポリアルキレングリコールおよびその誘導体;ポリビニルアルコールおよびその誘導体;ポリアクリルアミド;表面の修飾を行ったシリカ;および表面の修飾を行った金属酸化物から成る群から選択される、請求項1または2に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項4】
前記ポリマーが:アガロースおよびその誘導体;デキストランおよびその誘導体;およびセルロースおよびその誘導体から成る群から選択される、請求項1から3の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項5】
前記金属イオン配位性の環状配位子基が以下の中から選択される複素環から誘導される、請求項1から4の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体:
トリアザシクロアルカンおよびトリアザシクロアルケン;並びに
テトラアザシクロアルカンおよびテトラアザシクロアルケン。
【請求項6】
前記金属イオン配位性の環状配位子基が以下の中から選択される複素環から誘導される、請求項5に記載の官能化されたポリマー基体:
1,4,7−トリアザシクロノナン;
1,4,7−トリアザシクロデカン;
1,4,8−トリアザシクロウンデカン;
1,5,9−トリアザシクロドデカン;
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン;
1,4,7,11−テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン。
【請求項7】
前記任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基がカルボキシメチルである、請求項1から7の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項8】
前記任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基がホスホノメチルである、請求項1から7の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項9】
前記官能基が前記ポリマー基体に対しリンカーまたはスペーサー基Xによって共有結合しており、前記基Xが前記金属イオン配位性の環状配位子基の環内の窒素原子に結合している、請求項1から8の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項10】
前記ポリマー基体がアガロースであり、および前記リンカーまたはスペーサー基Xが、エピクロロヒドリンとアガロースの反応、およびその反応生成物と前記金属イオン配位性の環状配位子基の環内の−NH−基との後続の反応によって生成される、エピクロロヒドリンを由来とする基である請求項9に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項11】
前記官能基内の少なくとも1つの前記環状基に配位する金属イオンをさらに含む、請求項1から10の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項12】
前記配位する金属イオンが二価または三価の金属イオンである、請求項11に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項13】
前記金属イオンがCa2+、Mg2+、Zn2+およびFe3+から成る群から選択される、請求項12に記載の官能化されたポリマー基体。
【請求項14】
請求項1に記載の官能化されたポリマー基体を作製する方法であって:
第一および第二の官能基を有する二官能試薬の第一の官能基との間で第一の反応を行うことができる反応性官能基を有するポリマー基体を選択する段階であって、
ここにおいて、
前記第一の反応は、前記ポリマー基体と前記二官能試薬との間における共有結合の形成をもたらす反応であり、
得られた共有結合した試薬の前記第二の官能基は、続いて、少なくとも1つの金属イオン配位性の環状配位子基を含む化学種に存在する反応性の環内−NH−基と第二の反応を起こすことができ、前記金属イオン配位性の環状配位子基は、前記環状基の環内に少なくとも3つの窒素のドナー原子を含み、少なくとも1つの前記窒素原子は、そこに共有結合した任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基または任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基を有し、
前記第二の反応は、前記化学種と前記共有結合した試薬との間における共有結合の形成をもたらす反応である段階;
前記ポリマー基体と前記二官能試薬とを反応させる段階;および
前記生成した共有結合した試薬と前記化学種とを反応させる段階
を含んで成る方法。
【請求項15】
前記ポリマーが実質的に水に不溶性である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが:多糖体およびその誘導体;ポリアルキレングリコールおよびその誘導体;ポリビニルアルコールおよびその誘導体;ポリアクリルアミド;表面の修飾を行ったシリカ;および表面の修飾を行った金属酸化物から成る群から選択される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが:アガロースおよびその誘導体;デキストランおよびその誘導体;およびセルロースおよびその誘導体から成る群から選択される、請求項14から16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記金属イオン配位性の環状配位子基が以下の中から選択される複素環から誘導される、請求項14から17の何れか1項に記載の方法:
トリアザシクロアルカンおよびトリアザシクロアルケン;並びに
テトラアザシクロアルカンおよびテトラアザシクロアルケン。
【請求項19】
前記金属イオン配位性の環状配位子基が以下の中から選択される複素環から誘導される、請求項14から18の何れか1項に記載の方法:
1,4,7−トリアザシクロノナン;
1,4,7−トリアザシクロデカン;
1,4,8−トリアザシクロウンデカン;
1,5,9−トリアザシクロドデカン;
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン;
1,4,7,10−テトラアザシクロトリデカン;
1,4,7,11−テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン;
1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン;および
1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン。
【請求項20】
前記任意に置換されるカルボキシ(低級アルキル)基がカルボキシメチルである、請求項14から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記任意に置換されるホスホノ(低級アルキル)基がホスホノメチルである、請求項14から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー基体がアガロースであり、および前記二官能試薬がエピクロロヒドリンである、請求項14から21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー基体と前記二官能試薬の反応の時に、還元剤を反応混合物に取り込む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項14から24の何れか1項に記載の方法によって得られる官能化されたポリマー基体。
【請求項26】
請求項1から10または25の何れか1項に記載の官能性ポリマー基に、さらに前記環状基の少なくとも1つに配位した金属イオンが含まれる官能化されたポリマー基体を作製する方法であって、請求項1から10または25の何れか1項に記載の官能化されたポリマー基体と、前記金属イオンの無機塩または有機塩の水溶液とを接触させることを含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法によって得られる、金属イオンを含んだ官能化されたポリマー基体。
【請求項28】
MDADGNGTIDFAEF (SEQ.ID No.1)
MDIDGDGHINYEEF (SEQ.ID No.2)
MDVDGSGTIGSSEL (SEQ.ID No.3)
MDVDRSGTIGSSEL (SEQ.ID No.4)
MDADGN (SEQ.ID No.5)
MDIDGD (SEQ.ID No.6)
MDVDGS (SEQ.ID No.7)
MDVDRS (SEQ.ID No.8)
および、これら配列中から選択される配列における1以上のアミノ酸残基が、そのアミノ酸残基と化学的に同等な官能性のアミノ酸残基で置き換えられた前記配列の変種
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むオリゴペプチド。
【請求項29】
前記配列群の中から選択される配列におけるAla(A)残基がGly(G)残基で置き換えられた、またはそれと逆に置き換えられた;
前記配列群の中から選択される配列におけるPhe(F)残基がTyr(Y)残基で置き換えられた、またはそれと逆に置き換えられた;
前記配列群の中から選択される配列におけるVal(V)、Leu(L)またはIle(I)残基が、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)およびMet(M)の中から選択される異なるアミノ酸残基で置き換えられた;
前記配列群の中から選択される配列におけるAsp(D)残基がGlu(E)残基で置き換えられた、またはそれと逆に置き換えられた;および/または
前記配列群の中から選択される配列におけるAsn(D)残基がGln(Q)残基で置き換えられた、
請求項28に記載のオリゴペプチド。
【請求項30】
請求項28または29に記載のオリゴペプチドの少なくとも1つに、アミノ末端またはカルボキシ末端で融合した、関心あるタンパク質分子を含む融合タンパク質であるポリペプチド。
【請求項31】
前記オリゴペプチドのアミノ酸配列のアミノ末端およびカルボキシ末端が、それぞれ関心あるタンパク質分子に融合している、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記オリゴペプチドのアミノ酸配列が、酵素的および化学的切断サイトから成る群から選択される切断サイトに隣接している、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記2つの関心あるタンパク質分子が同じタンパク質の分子である、請求項31または32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記2つの関心あるタンパク質分子が異なる、請求項31または32に記載のポリペプチド。
【請求項35】
請求項29から34の何れか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物を含む宿主細胞を、適した成長培地において前記ポリペプチドを発現しうる条件下で培養し、および前記ポリペプチドを培養培地から回収することで得られうるポリペプチド。
【請求項36】
前記宿主細胞がEscherichia coliの株である、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
請求項29から34の何れか1項に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド構築物。
【請求項38】
ベクターである、請求項37に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項39】
請求項37または38に記載のポリヌクレオチド構築物を含む宿主細胞。
【請求項40】
Escherichia coli株である請求項39に記載の宿主細胞。
【請求項41】
請求項39または40にて定義された宿主細胞を、適した成長培地において前記ポリペプチドを発現しうる条件下で培養し、および前記ポリペプチドを培養培地から回収することを含む請求項29から36の何れか1項に記載のポリペプチドを作製する方法。
【請求項42】
関心あるタンパク質を精製するための方法であって、以下の段階を含む方法:
前記関心あるタンパク質を含む請求項30から36の何れか1項に記載のポリペプチドとともにその他のタンパク質を含むタンパク質サンプルと、請求項11から13および27の何れか1項に記載の金属イオンを含む官能化されたポリマー基体とを、前記ポリペプチドが前記金属イオンを含む官能化されたポリマー基体と結合し、それらの複合体を形成する条件下にて接触させること;
緩衝溶液にてその複合体を洗浄し、前記その他のタンパク質を除去すること;および
洗浄した複合体から結合したポリペプチドを溶出すること。
【請求項43】
さらに前記オリゴペプチドが前記ポリペプチドから切断される段階を含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記オリゴペプチドが酵素的手段によって前記ポリペプチドから切断される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
エンドペプチダーゼまたはエキソペプチダーゼが前記ポリペプチドから前記オリゴペプチドを切断するために用いられる請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項42から45の何れか1項に記載の方法によって得られうる精製されたタンパク質。

【公開番号】特開2011−254823(P2011−254823A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−158195(P2011−158195)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2007−515950(P2007−515950)の分割
【原出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【出願人】(594202523)モナシュ ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】