説明

硬さ試験機、及び、インプリント装置

【課題】簡単な構造で押し付け力の調整性能に優れる硬さ試験機を提供する。
【解決手段】硬さ試験機1は、凹部空間102aが形成される第1の部材102と、凹部空間102aに収容される試料台11と、凹部空間102aを覆う撓み板12と、第1の部材102とともに撓み板12を挟持し、撓み板12に接する空間101aが形成される第2の部材101と、撓み板12の撓みに応じて試料台11上の試料Sに押し込まれる圧子13と、撓み板12によって閉じられた凹部空間102aを減圧するための排気系14と、排気系14によって減圧された凹部空間102aの圧力を測定する真空計15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御型の硬さ試験機、及び、圧力制御型の硬さ試験機に適用される技術が転用されたインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば材料の強さを比較するために硬さ試験が用いられる。また、例えば、材料片又は打抜き部品の機械的性質が期待値の範囲に収まるか否かを推定する際にも硬さ試験が用いられる。なお、材料の硬さは、一定の負荷に対する材料表面の変形量によって定義される。
【0003】
硬さ試験では、材料の負荷に対する変形量を見るために形状の規定された圧子(押し込み片)が用いられる。具体的には、圧子が一定の時間、一定の負荷で材料の表面に押し込まれる。そして、圧子が取り除かれた後に、材料表面についた圧痕(押し込み片による傷痕)の寸法測定から材料の硬さが決定される。
【0004】
このような硬さ試験に用いられる試験機(硬さ試験機)としては、従来、錘の調整により荷重を制御するものがある(例えば特許文献1参照)。また、他の従来の硬さ試験機としては、電磁誘導によって発生する力の調整により荷重を制御するもの(例えば特許文献2参照)や、バネ及び圧電素子を用いて荷重を制御するもの(例えば特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−226883号公報
【特許文献2】特開2004−226360号公報
【特許文献3】特開2002−188983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の荷重制御方式の硬さ試験機では負荷できる荷重の範囲や精度が制限され易い。また、近年では、薄膜や材料の極表面層の機械的性質を知るために、極低荷重での測定が行えるナノインデンテーション試験機が開発されているが、これらは極低荷重を精密に制御するために、制御装置が大型化し、更に価格が高騰する傾向にある。
【0007】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、簡単な構造で押し付け力の調整性能に優れる硬さ試験機を提供することである。また、本発明の他の目的は、前述した硬さ試験機を転用して、微細加工用として好適なインプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の硬さ試験機は、凹部空間が形成される第1の部材と、前記凹部空間に収容される試料台と、前記凹部空間を覆う撓み板と、前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持し、前記撓み板に接する空間が形成される第2の部材と、前記撓み板の撓みに応じて前記試料台上の試料に押し込まれる圧子と、前記撓み板によって閉じられた前記凹部空間を減圧するための排気系と、前記排気系によって減圧された前記凹部空間の圧力を測定する真空計と、を備える構成(第1の構成)とされる。
【0009】
本構成によれば、撓み板の上下に加わる圧力差で撓み板を撓ませ、その撓みを利用して硬さ試験を行える。本構成では、圧子を試料に押し込む押し付け力について広い調整範囲が期待でき、更に、押し付け力の細かい制御が期待できる。また、試料を真空状態の空間に入れて硬さ試験が実施されるために、汚染を嫌う材料の硬さ試験に好適である。
【0010】
上記第1の構成の硬さ試験機において、前記第2の部材に形成される前記空間は、前記第2の部材が前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持した状態で大気に開放される構成(第2の構成)としてもよい。本構成では、大気圧と密閉された凹部空間の圧力との差によって撓み板を撓ませることができ、圧子を試料に押し込む押し付け力について広い調整範囲(0〜大気圧)が期待できる。また、本構成は大気圧を利用する構成であるために、硬さ試験機の構造を簡単とできる。
【0011】
上記第1の構成の硬さ試験機において、前記第2の部材に形成される前記空間は、前記第2の部材が前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持した状態で圧力制御可能に設けられる構成(第3の構成)としてもよい。本構成では、上述の大気圧を利用する構成(第2の構成)に比べて、圧子を試料に押し込む押し付け力について更に広い調整範囲を得ることが可能である。また、大気圧(変動する)を利用する場合に比べて安定した圧力を得られるために、正確な力の制御が可能となる。
【0012】
上記第1から第3のいずれかの構成の硬さ試験機において、前記試料台は高さ調整可能に設けられる構成(第4の構成)とするのが好ましい。これにより、サイズの異なる様々な試料に対応し易い。
【0013】
上記第1から第4のいずれかの構成の硬さ試験機において、前記排気系には、粗引き用のポンプと、ターボ分子ポンプが含まれる構成(第5の構成)とするのが好ましい。ターボ分子ポンプを用いることにより高真空状態を実現できるために、本構成により、圧子を試料に押し込む押し付け力の調整範囲を広くできる。低真空用のポンプである粗引き用のポンプとしては、例えば油を使用しないドライポンプや、油を使用するロータリポンプが挙げられる。ただし、試料が収容されるチャンバー(凹部空間)の汚染を避けられるために、粗引き用のポンプとしてはドライポンプがより好ましい。
【0014】
上記第1から第5のいずれかの構成の硬さ試験機において、前記真空計として電離真空計が利用される構成(第6の構成)とすることができる。この構成は、微小な力の調整を行いたい場合に好ましい構成である。電離真空計は、真空の計測法がイオンを数える方式であるために、圧子を試料に押し込む押し付け力について、原理的には原子レベルの極めて小さな力の調整とできる。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明のインプリント装置は、上記第1から第6のいずれかの構成の硬さ試験機における前記圧子を、凹凸パターンが形成された型部材に置き換えて得られ、前記撓み板の撓みに応じて前記試料台上の試料に前記型部材を押し付けて、前記試料に前記凹凸パターンを転写する構成とされる。
【0016】
本構成によれば、型部材を試料に押し付ける力について、真空計の精度に応じた力で制御でき、原理的には原子レベルでの力の制御も可能になる。このために、本構成のインプリント装置は、半導体製造用の微細加工装置として好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な構造で押し付け力の調整性能に優れる硬さ試験機を提供できる。また、本発明によれば、半導体製造用の微細加工装置として好適なインプリント装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の硬さ試験機の構成を示す模式図
【図2】本実施形態の硬さ試験機が備える真空容器の構成を説明するための図
【図3】本実施形態の硬さ試験機を用いて硬さ試験を行う際のフローを示すフローチャート
【図4】本実施形態の硬さ試験機において、凹部空間が減圧された場合の撓み板の様子を示す模式図
【図5】本実施形態の硬さ試験機の変形例を示す模式図
【図6】本実施形態のインプリント装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された硬さ試験機及びインプリント装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態はあくまでも例示であり、本発明はここで示す実施形態に限定されるものではない。
【0020】
(硬さ試験機)
図1は、本実施形態の硬さ試験機1の構成を示す模式図である。図1に示すように、硬さ試験機1は、真空容器10と、試料台11と、撓み板12と、圧子13と、真空排気系14を構成する真空ポンプ141と、真空計15と、を備える構成となっている。この硬さ試験機1は、大気圧と試料Sが収容される密閉空間の圧力と差(圧力差)による撓み板12の撓みを利用して、試料Sに圧子13を押し込むための押し付け力を得る構成となっている。
【0021】
図1に示すように、真空容器10は、上部材101と下部材102との独立した2つのパーツからなっている。この真空容器10の材質は、強度が強く、耐食性が高いものが好ましい。このような観点から、真空容器10の材質としては、例えばステンレス鋼が好ましく、本実施形態ではSUS304が使用されている。なお、上部材101は本発明の第2の部材の一例であり、下部材102は本発明の第1の部材の一例である。
【0022】
図2は、本実施形態の硬さ試験機1が備える真空容器10の構成を説明するための図で、図2(a)は真空容器10の上部材101の構成を説明するための図、図2(b)は真空容器10の下部材102の構成を説明するための図である。なお、図2(a)において、上段は真空容器10の上部材101を上から見た概略平面図で、下段は上段のA−A位置における概略断面図である。また、図2(b)において、上段は真空容器10の下部材102を上から見た概略平面図で、下段は上段のB−B位置における概略断面図である。
【0023】
図2(a)に示すように、真空容器10を構成する上部材101は略円柱状部材である。この上部材101の中心側には、平面視略円形状の貫通孔101aが形成されている。この貫通孔101aは、本発明における、第2の部材に形成される撓み板に接する空間の一例である。また、この上部材101には、上部材101と下部材102とをネジ留めできるようにネジ孔101bが4つ形成されている。また、この上部材101の裏面側には、リング状のシール部材(図示せず)が嵌め込めるように、リング状の溝101cが形成されている。
【0024】
図2(b)に示すように、真空容器10を構成する下部材102も略円柱状部材となっており、その円形部分の直径は上部材101と略同一となっている。この下部材102の中心側には、平面視略円形状の凹部空間102aが形成されている。この凹部空間102aの直径は上部材101に形成される貫通孔101aの直径と略同一である。そして、上部材101と下部材102とが合わせられた状態で、貫通孔101aの内側面と凹部空間102aの内側面とは略面一となるように構成されている。
【0025】
また、この下部材102には、上部材101とネジ留めするためのネジ孔102bが4つ形成されている。また、この下部材102の表面側には、リング状のシール部材(図示せず)が嵌め込めるようにリング状の溝102cが形成されている。また、下部材102の凹部空間102aの底面には、真空排気系14を構成する排気用開口102dと、真空計15と凹部空間102aとを繋ぐための真空計用開口102eと、が形成されている。排気用開口102dは、凹部空間102aの下部側に設けられて真空排気系14を構成する断面視略L字状の排気用通路102fと繋がる。また、真空計用開口102eは、凹部空間102aの下部側に設けられて真空計15との接続を行うための断面視略L字状の真空計用通路102gと繋がる。
【0026】
ここで、図1に戻って説明する。試料台11は、凹部空間102aに出し入れ可能に設けられる。また、試料台11は、それに載せられる試料Sの高さを調整できるように高さ調整機構を備える。高さ調整機構は、公知の機構を利用すればよく、その構成は特に限定されるものではない。
【0027】
撓み板12は、下部材102に形成される凹部空間102aを覆うように配置される。そして、この撓み板12は、上部材101と下部材102とによって挟持される。上述のように上部材101には貫通孔101aが形成されているために、上部材101と下部材102とによって挟持された状態で、撓み板12は大気に開放されることになる。この撓み板12は、真空容器10同様に強度が強く、耐食性が高い材質で形成するのが好ましい。このような観点から、撓み板12は、例えばステンレス鋼で形成するのが好ましく、本実施形態では撓み板12はSUS303で形成されている。
【0028】
撓み板12の面方向のサイズは、真空容器10の上部材101と下部材102との間に配置された状態で、撓み板12が下部材102に形成される凹部空間102aを密閉できるサイズとすればよい。また、撓み板12は、大気圧と密閉された凹部空間102aの圧力との差によって敏感に撓み量が変化するように厚さを薄くする必要があり、本実施形態では0.3mm程度としている。なお、この撓み板12の厚さは一例であり、硬さ試験機1の使用目的等に応じて適宜変更して良いのは当然である。
【0029】
圧子13は、撓み板12に固着されており、撓み板12の撓みに応じて試料台11上の試料Sに押し込まれ、試料Sに圧痕(窪み)を形成する。この圧子13は、試料Sよりも硬度が高い材質で形成する必要があり、例えばダイヤモンドを用いて形成される。また、この圧子13の形状は、例えばビッカース硬さ試験用の正四角錐や、ナノインデンテーション試験用の正三角錐等、試験目的に応じて適宜変更してよい。
【0030】
真空排気系14は、真空容器10の下部材102の凹部空間102aに形成される排気用開口102dと、下部材102の内部に形成されて排気用開口102dに連通する排気用通路102fと、排気用通路102fと真空ポンプ141とを接続する中空の接続部材142と、真空ポンプ141と、で構成される。接続部材142は例えば金属パイプとされる。なお、この真空排気系14は本発明の排気系の一例である。
【0031】
真空ポンプ141の種類は、硬さ試験で必要となる試験力によって適宜選択すればよい。真空ポンプ141として、例えば粗引き用のポンプとターボ分子ポンプとがセットとなったポンプが選択されることにより、撓み板12によって閉じられた(密閉された)凹部空間102aを高真空状態(例えば10−7〜10−8Pa程度)にすることが可能になる。そして、これにより、圧子13を試料Sに押し付けるための力を発生する圧力差(大気圧と密閉された凹部空間102aの圧力との差)について、非常に広い範囲(ゼロ〜大気圧)で制御することが可能になる。低真空用のポンプである粗引き用のポンプとしては、例えば油を使用しないドライポンプや、油を使用するロータリポンプ等が挙げられる。ただし、凹部空間102aの汚染を避けられるために、粗引き用のポンプとしてはドライポンプがより好ましい。
【0032】
なお、圧子13を試料Sに押し付ける押し付け力は、大気圧を受ける撓み板12の面積を調整することによっても調整可能である。このため、真空ポンプ141によって高真空状態が得られない場合でも、大気圧を受ける撓み板12の面積の調整により所望の押し付け力を得ることが可能である。
【0033】
真空計15は、撓み板12によって閉じられて密閉された凹部空間102aの圧力を測定するために設けられる。真空計15は、凹部空間102aの底面に設けられる真空計用開口102eと、下部材102の内部に設けられる真空計用通路102gと、中空の接続部材151(例えば金属パイプ)とを介して凹部空間102aに繋がる(連通する)。
【0034】
真空計15の種類は、凹部空間102aを真空にするために設けられる真空ポンプ141の能力に応じて適宜決定すればよい。真空ポンプ141に例えばターボ分子ポンプが含まれ、凹部空間102aを高真空状態にできる場合には、真空計15として電離真空計を利用することにより微小な力の調整が可能になる。電離真空計は電離したイオンを数える方式を採用するために、電離真空計の使用により、原理的には原子レベルでの力の制御が可能となる。すなわち、電離真空計の使用により、非常に微小な力の制御が可能となり、薄膜や材料の極表面層の機械的な性質の評価が行い易くなる。
【0035】
次に、以上のように構成される硬さ試験機1を用いて硬さ試験を行う手順について説明する。図3は、本実施形態の硬さ試験機1を用いて硬さ試験を行う際のフローを示すフローチャートである。
【0036】
硬さ試験を行う場合、まず、試料Sを試料台11に載置する。そして、圧子13の試料Sへの押し込みが狙いの試験力で行えるように、試料台11の高さ調整を行う(ステップS1)。次に、試料Sが載置された試料台11を、真空容器10の下部材102の凹部空間102aの所定位置に載置する(ステップS2)。
【0037】
凹部空間102a内に試料Sが載せられた試料台11を設置すると、撓み板12を上部材101と下部材102とで挟むように配置し、上部材101と下部材102とをビスで固定する(ステップS3)。これにより、撓み板12が凹部空間102aを覆った状態で固定されることになる。なお、上部材101と下部材102とを固定するに際して、上部材101の下面に形成れる溝101c、及び、下部材102の表面に形成される溝102cに、それぞれリング状のシール部材を事前に嵌め込んでおく。シール部材は、撓み板12で覆われた凹部空間102aの密閉性を向上するために配置される。
【0038】
次に、真空容器10の下部材102に真空ポンプ141及び真空計15を接続し、真空ポンプ141を用いて凹部空間102a内を減圧する(ステップS4)。この減圧により、図4に示すように、貫通孔101aを介して大気と接する撓み板12は、大気圧と凹部空間102aの圧力との差圧により下方に撓むことになる。なお、図4は、本実施形態の硬さ試験機1において、凹部空間102aが減圧された場合の撓み板12の様子を示す模式図である。
【0039】
ステップS4における減圧は、真空計15を見ながら、狙いの圧力となるまで実行する。ここで言う狙いの圧力は、硬さ試験を行うために必要な試験力が得られる圧力である。なお、真空ポンプ141の駆動制御は、真空計15からの情報を受け取るマイコンを使用して自動で行われるように構成してもよいし、作業者が手動で行う構成としても構わない。
【0040】
試料Sに所定の時間、所定の負荷が加えられると、凹部空間102a内の圧力を大気圧と同レベルに戻す動作を実行する。その後、真空容器10の上部材101と下部材102とを分離して、試料Sを取り出す(ステップS5)。取り出された試料Sは、必要に応じて洗浄が行われ、圧子13が試料Sに押し込まれることによって形成された圧痕の観察が行われる(ステップS6)。この観察は、例えば光学顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope)等を用いて行われる。そして、圧痕の所定箇所の寸法測定を行い、所定の計算式により試料Sの硬さ(例えばナノインデンテーション法による薄膜や材料表面の硬さや、ビッカース硬さ等)を求める。
【0041】
以上のように、本実施形態の硬さ試験機1によれば、圧子13を試料Sに押し付ける押し付け力について、広い調整範囲を得ることが可能である。また、圧子13を試料Sに押し付ける押し付け力について、単純な構造ながら細かい制御が可能である。そして、本実施形態の硬さ試験機1は構造が単純なために小型化及び低コスト化が図り易い。また、本実施形態の硬さ試験機1は、硬さ試験1を行う際に真空状態を使用するので、汚染を嫌う材料の硬さ試験を行うのに好適である。
【0042】
以下、本実施形態の硬さ試験機1の変形例について、図5を参照しながら説明する。なお、変形例の硬さ試験機1´に関する説明においては、上述した本実施形態の構成と異なる点に重点をおき、上述した本実施形態の構成と重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
変形例の硬さ試験機1´は、上部材101に形成される撓み板12に接する空間101aが、貫通孔によって構成されていない。そして、上部材101が下部材102とともに撓み板12を挟持した状態で、空間101aは圧力制御可能に設けられる構成となっている。この点で、上述した本実施形態の硬さ試験機1とは異なる構成となっている。
【0044】
そして、上部材101に形成される空間101aは、この空間101aの上壁に形成される圧力制御用開口101dと、この圧力制御用開口101dに繋がるとともに上部材101に形成される圧力制御用通路101fと、圧力制御用通路101fに繋がる接続パイプ17とを介して、圧力制御部16に繋がっている。圧力制御部16は、圧力調整用の調整弁や加圧機構等を含み、上部材101の空間101aの圧力を制御できるようになっている。
【0045】
また、変形例の硬さ試験機1´は、この圧力制御を行う上で必要となる、上部材101に形成される空間101aの圧力を測定する圧力計18も有する。圧力計18は、例えば図5に示すように、空間101aの上壁に形成される圧力計用開口101eと、この圧力計用開口101eに繋がるとともに上部材101に形成される圧力計用通路101gと、圧力計用通路101gに繋がる接続パイプ19とを介して、空間101aに繋がる構成とできる。なお、圧力制御部16の操作は手動で行う構成であってもよいが、圧力計18からの情報を得られるマイコンを有する構成として、自動で操作されるようにしてもよい。
【0046】
以上のように構成される変形例の硬さ試験機1´では、大気との差圧を利用して撓み板12を撓ませる構成(上述した本実施形態の硬さ試験機1)に比べて、圧子13を試料Sに押し込む押し付け力について広い調整範囲を得ることが可能になる。また、大気圧を利用する場合には大気圧の変動の影響を受けるが、変形例の硬さ試験機1´では、この大気圧の変動の影響を受けない。このために、変形例1の硬さ試験機1では、大気圧を利用する場合に比べて安定した圧力を得られ、正確な力の制御が可能になる。
【0047】
(インプリント装置)
図6は、本実施形態のインプリント装置2の構成を示す模式図である。図6に示すインプリント装置2は、上述した本実施形態の硬さ試験機1における圧子13の部分を凹凸パターンが形成された型部材(マスク)20に変更したものである。圧子13が型部材20に変更された点を除いては、インプリント装置2の構成は硬さ試験機1と同様であり、この同様の部分については説明を省略する。
【0048】
インプリント装置2では、型部材20に形成される凹凸パターンを試料S(基板)に転写する際の力の制御が、真空圧を制御することによって行われる。このインプリント装置2においても、例えば、真空ポンプ141にターボ分子ポンプが含まれる構成とし、真空計15として電離真空計を用いる構成を採用することができる。
【0049】
上述のように、電離真空計を用いると、原理的には原子レベルの極めて小さな力のコントロールが可能になる。このために、インプリント装置2によって、型部材20に形成される非常に微細な構造を試料Sに転写することができる。すなわち、インプリント装置2は半導体製造時の微細加工に好適である。なお、インプリント装置1の変形例として、変形例の硬さ試験機1´における圧子13を凹凸パターンが形成された型部材に変更した構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の硬さ試験機は、薄膜や材料の極表面層の機械的性質を評価する試験機として好適である。また、本発明のインプリント装置は半導体製造時の微細加工装置として好適である。
【符号の説明】
【0051】
1 、1´ 硬さ試験機
2 インプリント装置
10 真空容器
11 試料台
12 撓み板
13 圧子
14 排気系
15 真空計
20 型部材
101 上部材(第2の部材)
101a 貫通孔(第2の部材に形成される撓み板に接する空間)
102 下部材(第1の部材)
102a 凹部空間
102d 排気用開口(排気系の一部)
102f 排気用通路(排気系の一部)
142 接続部材(排気系の一部)
141 真空ポンプ(排気系の一部)
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部空間が形成される第1の部材と、
前記凹部空間に収容される試料台と、
前記凹部空間を覆う撓み板と、
前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持し、前記撓み板に接する空間が形成される第2の部材と、
前記撓み板の撓みに応じて前記試料台上の試料に押し込まれる圧子と、
前記撓み板によって閉じられた前記凹部空間を減圧するための排気系と、
前記排気系によって減圧された前記凹部空間の圧力を測定する真空計と、
を備える、硬さ試験機。
【請求項2】
前記第2の部材に形成される前記空間は、前記第2の部材が前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持した状態で大気に開放される、請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記第2の部材に形成される前記空間は、前記第2の部材が前記第1の部材とともに前記撓み板を挟持した状態で圧力制御可能に設けられる、請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
前記試料台は高さ調整可能に設けられる、請求項1から3のいずれかに記載の硬さ試験機。
【請求項5】
前記排気系には、粗引き用のポンプとターボ分子ポンプとが含まれる、請求項1から4のいずれかに記載の硬さ試験機。
【請求項6】
前記真空計として電離真空計が利用される、請求項1から5のいずれかに記載の硬さ試験機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の硬さ試験機における前記圧子を、凹凸パターンが形成された型部材に置き換えて得られ、
前記撓み板の撓みに応じて前記試料台上の試料に前記型部材を押し付けて、前記試料に前記凹凸パターンを転写する、インプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220346(P2012−220346A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86631(P2011−86631)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 独立行政法人国立高等専門学校機構により平成23年11月11日に発行された第17回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム 要約集
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)