硬さ試験機、及び硬さ試験方法
【課題】エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を正確且つ簡易に抽出することが可能な硬さ試験機、及び硬さ試験方法を提供する。
【解決手段】試料S表面の画像データを取得する撮像制御手段と、取得された画像データを2値化した画像データからくぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、抽出可能である場合は2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、抽出不可能である場合は画像データの曲率画像データを求めて2値化した後、曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、距離変換が行われた画像データを利用して圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、抽出された閉領域に基づいてくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて試料Sの硬さを算出する硬さ算出手段と、を備える。
【解決手段】試料S表面の画像データを取得する撮像制御手段と、取得された画像データを2値化した画像データからくぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、抽出可能である場合は2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、抽出不可能である場合は画像データの曲率画像データを求めて2値化した後、曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、距離変換が行われた画像データを利用して圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、抽出された閉領域に基づいてくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて試料Sの硬さを算出する硬さ算出手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機、及び硬さ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビッカース硬さ試験法、ヌープ硬さ試験法など、平面形状が多角形の圧子を試料の表面に押し付け、試料表面に生じる多角形のくぼみの対角線長さより硬度を測定する押し込み式の硬さ試験法はよく知られており、これは金属材料の機械的性質の評価に多く用いられている。
【0003】
周知のように、ビッカース硬さ試験法は、ダイヤモンド正四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる正四角錘形状のくぼみの二つの対角線長さの平均値と圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものであり、ヌープ硬さ試験法は、ダイヤモンド長四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる長四角錘形状のくぼみの長い方の対角線長さと圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものである。
【0004】
ところで、金属材料の硬さ試験と組織観察は同時に行われることが多い。一般に、周知の硬さ試験機では、金属材料の硬さ試験を行う際、撮像手段により得られた試料表面の撮影画像に対して、輝度値が所定の値を下回ったか否かにより2値化処理を実行し、試料表面に形成されたくぼみ領域を抽出する処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、組織観察のために試料表面に食刻(エッチング)処理を施して試験を行う場合においては、撮影画像の輝度分布が複雑なものとなり、試料表面に形成されたくぼみを認識することが困難であるため、くぼみの領域を正確に抽出することができなかった。
【0005】
そこで、上記課題を解決するものとして、くぼみを形成する前後の試料表面を撮像し、くぼみ形成前の撮影画像とくぼみ形成後の撮影画像の差分によりくぼみ領域を抽出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4029832号公報
【特許文献2】特許第3557765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2記載の技術では、試料表面の撮影画像を2枚取得する必要があるため、処理が煩雑であるという問題がある。また、撮像手段の位置がずれること等によりくぼみを形成する前後で撮影位置が少しでも異なる場合、適切な差分画像を得ることができず、くぼみの領域を正確に抽出することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を正確且つ簡易に抽出することが可能な硬さ試験機、及び硬さ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、
前記くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、
を備え、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記試料の表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の硬さ試験機において、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記取得された試料の表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、前記シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、前記試料の表面の画像データに対してシェーディング補正を施すことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機において、
表示手段を制御して前記硬さ算出手段により算出された試料の硬さを表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出工程と、
前記くぼみ頂点抽出工程で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、
を含み、
前記くぼみ領域抽出工程は、前記2値化された画像データに基づいて、前記くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験方法である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、を備えることを特徴とする硬さ試験方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エッチング処理を施した試料のように、2値化された画像データからくぼみ候補領域を抽出不可能である場合であっても、画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求めて2値化することで、圧子の形状に応じた閉領域を抽出することができるので、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を抽出することができる。また、試料の表面の画像データを2枚取得する必要がないので、撮影位置のずれに伴う不都合を防止することができることとなって、くぼみ領域を正確に抽出することができる。さらに、試料の表面の画像データを2枚取得する必要がないので、くぼみ領域の抽出処理を簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
【図3】本発明に係る硬さ試験機の硬さ測定部を示す模式図である。
【図4】本発明に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る硬さ試験機のくぼみ形成後の動作を示すフローチャートである。
【図6】エッチング処理が施された試料Sの表面の撮影画像の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る硬さ試験機のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る硬さ試験機の曲率画像を用いた2値化処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の処理中で求められた曲率画像の一例を示す図である。
【図10】図9の曲率画像を2値化した画像の一例を示す図である。
【図11】図10の2値化画像を修正した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0019】
硬さ試験機100は、例えば、圧子14aの平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機であり、図1及び図2に示すように、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニタ8等を備えている。
【0020】
試験機本体10は、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5等を備えている。
【0021】
硬さ測定部1は、図3に示すように、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子14aを備える圧子軸14と対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16等により構成されている。
【0022】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものであり、照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0023】
CCDカメラ12は、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、当該試料Sの表面や圧子14aにより試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得し、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバ17を介して、制御部6に出力する。
これにより、CCDカメラ12は、撮像手段として機能する。
【0024】
圧子軸14は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により、試料台2に載置された試料Sに向け移動され、先端部に備えた圧子14aを試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。
【0025】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであり、ターレット16の下面に複数保持されており、ターレット16の回転により試料Sの上方に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
【0026】
ターレット16は、下面に圧子軸14と複数の対物レンズ15を取り付け、Z軸方向を中心に回転することにより、当該圧子軸14と複数の対物レンズ15の中の何れか一つを切り替えて試料Sの上方に配置可能なように構成されている。つまり、圧子軸14を試料Sの上方に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成し、対物レンズ15を試料Sの上方に配置することで、当該形成されたくぼみを観察することが可能となる。
【0027】
試料台2は、上面に載置される試料Sを試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子14aの移動方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸,Y軸方向)に移動させる。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させ、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を上下方向に移動させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
【0028】
操作部7は、キーボード71、マウス72等により構成されており、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を実行させる。そして、操作部7により所定の入力操作がなされると、その入力操作に応じた所定の操作信号が制御部6に出力される。
【0029】
具体的には、操作部7は、上記キーボード71やマウス72等を介して、くぼみの合焦位置を決定する条件をユーザに選択させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、試料台2(昇降機構部5及びAFステージ4)の移動する範囲(試料台2と対物レンズ15との間の相対距離の範囲)を指定させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、当該硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力させることができる。そして、入力された試験条件値は制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
また、操作部7は、ユーザに、くぼみの合焦位置の決定を手動で行う手動モード、あるいは自動で行う自動モードの何れかを選択させることができる。
【0030】
モニタ8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されており、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、CCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
これにより、モニタ8は、表示手段として機能する。
【0031】
制御部6は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、記憶部63等を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0032】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
【0033】
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0034】
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。より具体的には、記憶部63は、例えば、XYステージ制御プログラム、自動合焦プログラム、くぼみ形成プログラム、撮像制御プログラム、くぼみ領域抽出プログラム、くぼみ頂点抽出プログラム、硬さ算出プログラム、表示制御プログラム等を格納している。
【0035】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100の動作について説明する。
まず、CPU61は、記憶部63内に格納されたXYステージ制御プログラムを実行することにより、試料Sの表面の所定領域がCCDカメラ12の真下に位置するようにXYステージ3を移動させる。
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された自動合焦プログラムを実行することにより、硬さ測定部1のCCDカメラ12によって得られる画像データに基づいて、AFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する自動合焦を行う。
そして、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ形成プログラムを実行することにより、圧子14aを所定の試験力で試料Sの表面に押し付けてくぼみを形成する。
【0036】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100のくぼみ形成後の動作について、図5、図7、及び図8のフローチャートを参照して説明する。この処理は、CPU61が記憶部63に格納されている各種プログラムを実行することにより実現される。なお、本実施形態では、試料Sの表面にエッチング処理が施されている場合を例示して説明する。
【0037】
まず、CPU61は、記憶部63内に格納された撮像制御プログラムを実行することにより、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS1:撮像制御工程)。本実施形態では、試料Sの表面にエッチング処理が施されているので、図6に示すように、くぼみ領域と背景とが判別しづらい画像データが取得される。
【0038】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ領域抽出プログラムを実行することにより、ステップS1で取得された試料Sの表面の画像データに基づいて、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域を抽出する処理を行う(ステップS2:くぼみ領域抽出工程)。
【0039】
具体的には、図7に示すように、まず、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定する(ステップS21)。ここで、シェーディング補正とは、光学系や撮像系の特性による輝度ムラに対して、一様な明るさの画像になるように補正する処理のことである。ステップS21の判定は、例えば、画像データの四隅の小領域の輝度値の変動に基づいて、小領域ごとの輝度値に所定値以上のバラツキがみられるか否かを判定することにより行われる。シェーディング補正を施す必要があると判定した場合(ステップS21:YES)は、試料Sの表面の画像データに対してシェーディング補正を施した後(ステップS22)、ステップS23へと移行する。一方、シェーディング補正を施す必要がないと判定した場合(ステップS21:NO)は、シェーディング補正を施すことなく、ステップS23へと移行する。
【0040】
次に、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データ又はステップS22でシェーディング補正が施された試料Sの表面の画像データに対して、濃淡値を用いた2値化処理を行う(ステップS23)。具体的には、白黒濃淡画像である原画像(試料Sの表面の画像)の画像データを白と黒の2階調に変換する。即ち、CPU61は、例えば、各画素の輝度値(明るさ)が所定の閾値を上回っていれば黒、下回っていれば白に置き換える。これにより、試料Sの表面の画像データは、2値化の黒部分が原画像に対してより黒く、2値化の白部分が原画像に対してより白く表示されることとなる。例えば、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域は、背景画素に比べて輝度値が低く、白画素で表示されることとなる。なお、ステップS23で2値化された画像データは、記憶部63に記憶される。
そして、CPU61は、ステップS23で2値化された画像データのコピーデータを生成し、当該2値化画像データのコピーデータを用いて2値化画像データの縮小処理及び膨張処理を行う。さらに、CPU61は、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行う。なお、縮小処理及び膨張処理、並びに距離変換については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができる。
【0041】
次に、CPU61は、ステップS23で距離変換が行われた2値化画像データ又は後述する図8のステップS264で距離変換が行われた2値化画像データを利用して、圧子14aの形状に応じた閉領域の抽出処理を行う(ステップS24)。なお、具体的な抽出処理については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、CPU61は、ステップS24で行われた抽出処理により閉領域が抽出されたか否かを判定する(ステップS25)。即ち、CPU61は、2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域としての閉領域を抽出可能であるか否かを判定する。ここで、くぼみ候補領域とは、試料Sの表面に形成されたくぼみ領域の候補となる領域のことである。ステップS25の判定は、具体的には、記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶されたか否かを判定することにより行われる。記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶された、即ち、閉領域が抽出されたと判定した場合(ステップS25:YES)は、当該くぼみ領域抽出処理を終了し、図5のステップS3へと移行する。一方、記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶されていない、即ち、閉領域が抽出されていないと判定した場合(ステップS25:NO)は、曲率画像を用いた2値化処理を行う(ステップS26)。
【0043】
具体的には、図8に示すように、まず、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出する(ステップS261)。ここで、ガウシアンフィルタ処理とは、ノイズの低減を目的として、注目画素に近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようにガウス分布の関数を用いてレートを計算することにより、画像の輝度値を平滑化するための処理のことである。ここで、微分後の値Aは、ガウシアンフィルタをG、試料Sの表面の画像データをIとすると、次の数1により表される。
【数1】
【0044】
次に、CPU61は、ステップS261で算出された微分値Aを利用して画素毎にヘッセ行列式Hを計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求める(ステップS262)。ここで、ヘッセ行列式Hは、次の数2により表される。
【数2】
ステップS262の処理により、例えば、図9に示すような曲率画像データを得ることができる。
【0045】
次に、CPU61は、ステップS262で求められた曲率画像データを2値化する(ステップS263)。具体的には、白黒濃淡画像である曲率画像データを白と黒の2階調に変換する。即ち、CPU61は、例えば、各画素の画素値(曲率の絶対値の大きさ)が所定の閾値を上回っていれば黒、下回っていれば白に置き換える。これにより、曲率画像データは、濃淡値の変動が大きい所は黒く、濃淡値の変動が小さい所は白く表示されることとなる。例えば、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域は、背景画素に比べて曲率が小さいため、図10に示すように、白画素で表示されることとなる。
【0046】
次に、CPU61は、ステップS263で2値化された画像データに対して修正処理を施す(ステップS264)。ここで、修正処理とは、ステップS263で曲率画像データを2値化した際、図10に示すように、くぼみ領域に相当する曲率が小さい画素(白画素)が離散してしまうことがあるため、これらが閉領域を形成するように画像データを修正する処理のことである。具体的には、まず、くぼみ領域のうち圧子14aの頂点及び稜線に相当する位置が照明により高輝度となることを利用して、画像の中心付近に形成されるハイライト領域E1(圧子14aの頂点位置に相当)を抽出し、ハイライト領域E1とこれに隣接する連結白画素を含む包絡矩形E2を求めたうえで、包絡矩形E2を上下左右に四分割して各象限の白画素の数をカウントする。次に、4象限のうち白画素数が最大の象限と白画素数が最小の象限を除いた2つの象限の白画素数の平均を算出し、求められた白画素数と圧子14aの形状から推定されるくぼみ領域の面積とに基づいて閉領域を形成するように画像データを修正する。ステップS264の処理により、例えば、図11に示すような修正画像を得ることができる。なお、ステップS264で修正された2値化画像データは、記憶部63に記憶される。
そして、CPU61は、図7のステップS23と同様、2値化された画像データのコピーデータを生成し、当該2値化画像データのコピーデータを用いて2値化画像データの縮小処理及び膨張処理を行った後、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行う。画像データの距離変換が行われた後、当該曲率画像を用いた2値化処理を終了し、図7のステップS24へと移行する。
【0047】
次に、図5に示すように、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ頂点抽出プログラムを実行することにより、ステップS2のくぼみ領域抽出処理で抽出された閉領域の輪郭に基づいて、くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出する処理を行う(ステップS3:くぼみ頂点抽出工程)。なお、具体的な抽出処理については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された硬さ算出プログラムを実行することにより、ステップS3で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、試料Sの硬さを算出する(ステップS4:硬さ算出工程)。具体的には、ステップS3で抽出されたくぼみ計測用の頂点の座標位置を参照してくぼみの対角線長さを計測し、当該計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。
【0049】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された表示制御プログラムを実行することにより、モニタ8を制御してステップS4で算出された試料Sの硬さ値を表示させる(ステップS5:表示制御工程)。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、当該試料Sの表面の画像データを取得する撮像制御手段(CPU61)と、撮像制御手段により取得された試料Sの表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段(CPU61)と、くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段(CPU61)と、くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、試料Sの硬さを算出する硬さ算出手段(CPU61)と、を備え、くぼみ領域抽出手段は、2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、試料Sの表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行う。
このため、エッチング処理を施した試料Sのように、2値化された画像データからくぼみ候補領域を抽出不可能である場合であっても、画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求めて2値化することで、圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出することができるので、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を抽出することができる。また、試料Sの表面の画像データを2枚取得する必要がないので、撮影位置のずれに伴う不都合を防止することができることとなって、くぼみ領域を正確に抽出することができる。さらに、試料Sの表面の画像データを2枚取得する必要がないので、くぼみ領域の抽出処理を簡易なものとすることができる。
【0051】
特に、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、くぼみ領域抽出手段は、試料Sの表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めるので、精度が高く信頼性のある試験結果を得ることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、くぼみ領域抽出手段は、取得された試料Sの表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、試料Sの表面の画像データに対してシェーディング補正を施すので、取得された試料Sの表面の画像データに、光学系や撮像系の特性による輝度ムラが生じている場合であっても、自動的にシェーディング補正が施されることとなって、試験結果に対する輝度ムラの影響を排除することができる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0054】
例えば、上記では、試料Sの表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該曲率画像データを2値化することで、曲率が所定値(閾値)よりも小さい平坦部がくぼみ領域として抽出されるようにしている。このとき、上記実施形態では、ステップ264の修正処理や、縮小処理及び拡張処理を施すことによって、曲率が所定値よりも小さい領域が圧子の形状に応じた閉領域となるようにくぼみ領域を補正したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の従来公知の補正処理を用いて、くぼみ領域を補正するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、モニタ8を制御して図5のステップS4(硬さ算出工程)で算出された試料Sの硬さ値を表示させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、音声を出力可能なスピーカ等を設けるようにし、算出された試料Sの硬さ値を音声出力させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、図7のステップS23で2値化された画像データ及び図8のステップS264で修正された2値化画像データを記憶部63に記憶させるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、RAM62に記憶させるようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、硬さ試験機100として圧子14aの平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、ビッカース硬さ試験機同様に圧子の平面形状が矩形状に形成されたヌープ硬さ試験機や、圧子の形状が球形状に形成されたブリネル硬さ試験機に適用することも可能である。
【0058】
その他、硬さ試験機100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 硬さ試験機
10 試験機本体
1 硬さ測定部
11 照明装置
12 CCDカメラ(撮像手段)
14 圧子軸
14a 圧子
15 対物レンズ
16 ターレット
17 フレームグラバ
2 試料台
3 XYステージ
4 AFステージ
5 昇降機構部
6 制御部
61 CPU(撮像制御手段、くぼみ領域抽出手段、くぼみ頂点抽出手段、硬さ算出手段、表示制御手段)
62 RAM
63 記憶部
7 操作部
8 モニタ(表示手段)
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機、及び硬さ試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビッカース硬さ試験法、ヌープ硬さ試験法など、平面形状が多角形の圧子を試料の表面に押し付け、試料表面に生じる多角形のくぼみの対角線長さより硬度を測定する押し込み式の硬さ試験法はよく知られており、これは金属材料の機械的性質の評価に多く用いられている。
【0003】
周知のように、ビッカース硬さ試験法は、ダイヤモンド正四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる正四角錘形状のくぼみの二つの対角線長さの平均値と圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものであり、ヌープ硬さ試験法は、ダイヤモンド長四角錘による圧子を使用し、試料表面に生じる長四角錘形状のくぼみの長い方の対角線長さと圧子の試料に対する押し付け荷重との関係において硬度を示すものである。
【0004】
ところで、金属材料の硬さ試験と組織観察は同時に行われることが多い。一般に、周知の硬さ試験機では、金属材料の硬さ試験を行う際、撮像手段により得られた試料表面の撮影画像に対して、輝度値が所定の値を下回ったか否かにより2値化処理を実行し、試料表面に形成されたくぼみ領域を抽出する処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、組織観察のために試料表面に食刻(エッチング)処理を施して試験を行う場合においては、撮影画像の輝度分布が複雑なものとなり、試料表面に形成されたくぼみを認識することが困難であるため、くぼみの領域を正確に抽出することができなかった。
【0005】
そこで、上記課題を解決するものとして、くぼみを形成する前後の試料表面を撮像し、くぼみ形成前の撮影画像とくぼみ形成後の撮影画像の差分によりくぼみ領域を抽出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4029832号公報
【特許文献2】特許第3557765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2記載の技術では、試料表面の撮影画像を2枚取得する必要があるため、処理が煩雑であるという問題がある。また、撮像手段の位置がずれること等によりくぼみを形成する前後で撮影位置が少しでも異なる場合、適切な差分画像を得ることができず、くぼみの領域を正確に抽出することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を正確且つ簡易に抽出することが可能な硬さ試験機、及び硬さ試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、
前記くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、
を備え、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記試料の表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の硬さ試験機において、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記取得された試料の表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、前記シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、前記試料の表面の画像データに対してシェーディング補正を施すことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機において、
表示手段を制御して前記硬さ算出手段により算出された試料の硬さを表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出工程と、
前記くぼみ頂点抽出工程で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、
を含み、
前記くぼみ領域抽出工程は、前記2値化された画像データに基づいて、前記くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験方法である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、を備えることを特徴とする硬さ試験方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エッチング処理を施した試料のように、2値化された画像データからくぼみ候補領域を抽出不可能である場合であっても、画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求めて2値化することで、圧子の形状に応じた閉領域を抽出することができるので、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を抽出することができる。また、試料の表面の画像データを2枚取得する必要がないので、撮影位置のずれに伴う不都合を防止することができることとなって、くぼみ領域を正確に抽出することができる。さらに、試料の表面の画像データを2枚取得する必要がないので、くぼみ領域の抽出処理を簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
【図3】本発明に係る硬さ試験機の硬さ測定部を示す模式図である。
【図4】本発明に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る硬さ試験機のくぼみ形成後の動作を示すフローチャートである。
【図6】エッチング処理が施された試料Sの表面の撮影画像の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る硬さ試験機のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る硬さ試験機の曲率画像を用いた2値化処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の処理中で求められた曲率画像の一例を示す図である。
【図10】図9の曲率画像を2値化した画像の一例を示す図である。
【図11】図10の2値化画像を修正した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0019】
硬さ試験機100は、例えば、圧子14aの平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機であり、図1及び図2に示すように、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニタ8等を備えている。
【0020】
試験機本体10は、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5等を備えている。
【0021】
硬さ測定部1は、図3に示すように、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子14aを備える圧子軸14と対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16等により構成されている。
【0022】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものであり、照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0023】
CCDカメラ12は、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、当該試料Sの表面や圧子14aにより試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得し、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバ17を介して、制御部6に出力する。
これにより、CCDカメラ12は、撮像手段として機能する。
【0024】
圧子軸14は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により、試料台2に載置された試料Sに向け移動され、先端部に備えた圧子14aを試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。
【0025】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであり、ターレット16の下面に複数保持されており、ターレット16の回転により試料Sの上方に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
【0026】
ターレット16は、下面に圧子軸14と複数の対物レンズ15を取り付け、Z軸方向を中心に回転することにより、当該圧子軸14と複数の対物レンズ15の中の何れか一つを切り替えて試料Sの上方に配置可能なように構成されている。つまり、圧子軸14を試料Sの上方に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成し、対物レンズ15を試料Sの上方に配置することで、当該形成されたくぼみを観察することが可能となる。
【0027】
試料台2は、上面に載置される試料Sを試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子14aの移動方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸,Y軸方向)に移動させる。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させ、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を上下方向に移動させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
【0028】
操作部7は、キーボード71、マウス72等により構成されており、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を実行させる。そして、操作部7により所定の入力操作がなされると、その入力操作に応じた所定の操作信号が制御部6に出力される。
【0029】
具体的には、操作部7は、上記キーボード71やマウス72等を介して、くぼみの合焦位置を決定する条件をユーザに選択させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、試料台2(昇降機構部5及びAFステージ4)の移動する範囲(試料台2と対物レンズ15との間の相対距離の範囲)を指定させることができる。
また、操作部7は、ユーザに、当該硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力させることができる。そして、入力された試験条件値は制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
また、操作部7は、ユーザに、くぼみの合焦位置の決定を手動で行う手動モード、あるいは自動で行う自動モードの何れかを選択させることができる。
【0030】
モニタ8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されており、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、CCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
これにより、モニタ8は、表示手段として機能する。
【0031】
制御部6は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、記憶部63等を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0032】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
【0033】
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0034】
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。より具体的には、記憶部63は、例えば、XYステージ制御プログラム、自動合焦プログラム、くぼみ形成プログラム、撮像制御プログラム、くぼみ領域抽出プログラム、くぼみ頂点抽出プログラム、硬さ算出プログラム、表示制御プログラム等を格納している。
【0035】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100の動作について説明する。
まず、CPU61は、記憶部63内に格納されたXYステージ制御プログラムを実行することにより、試料Sの表面の所定領域がCCDカメラ12の真下に位置するようにXYステージ3を移動させる。
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された自動合焦プログラムを実行することにより、硬さ測定部1のCCDカメラ12によって得られる画像データに基づいて、AFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する自動合焦を行う。
そして、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ形成プログラムを実行することにより、圧子14aを所定の試験力で試料Sの表面に押し付けてくぼみを形成する。
【0036】
次に、本実施形態に係る硬さ試験機100のくぼみ形成後の動作について、図5、図7、及び図8のフローチャートを参照して説明する。この処理は、CPU61が記憶部63に格納されている各種プログラムを実行することにより実現される。なお、本実施形態では、試料Sの表面にエッチング処理が施されている場合を例示して説明する。
【0037】
まず、CPU61は、記憶部63内に格納された撮像制御プログラムを実行することにより、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、試料Sの表面の画像データを取得する(ステップS1:撮像制御工程)。本実施形態では、試料Sの表面にエッチング処理が施されているので、図6に示すように、くぼみ領域と背景とが判別しづらい画像データが取得される。
【0038】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ領域抽出プログラムを実行することにより、ステップS1で取得された試料Sの表面の画像データに基づいて、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域を抽出する処理を行う(ステップS2:くぼみ領域抽出工程)。
【0039】
具体的には、図7に示すように、まず、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定する(ステップS21)。ここで、シェーディング補正とは、光学系や撮像系の特性による輝度ムラに対して、一様な明るさの画像になるように補正する処理のことである。ステップS21の判定は、例えば、画像データの四隅の小領域の輝度値の変動に基づいて、小領域ごとの輝度値に所定値以上のバラツキがみられるか否かを判定することにより行われる。シェーディング補正を施す必要があると判定した場合(ステップS21:YES)は、試料Sの表面の画像データに対してシェーディング補正を施した後(ステップS22)、ステップS23へと移行する。一方、シェーディング補正を施す必要がないと判定した場合(ステップS21:NO)は、シェーディング補正を施すことなく、ステップS23へと移行する。
【0040】
次に、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データ又はステップS22でシェーディング補正が施された試料Sの表面の画像データに対して、濃淡値を用いた2値化処理を行う(ステップS23)。具体的には、白黒濃淡画像である原画像(試料Sの表面の画像)の画像データを白と黒の2階調に変換する。即ち、CPU61は、例えば、各画素の輝度値(明るさ)が所定の閾値を上回っていれば黒、下回っていれば白に置き換える。これにより、試料Sの表面の画像データは、2値化の黒部分が原画像に対してより黒く、2値化の白部分が原画像に対してより白く表示されることとなる。例えば、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域は、背景画素に比べて輝度値が低く、白画素で表示されることとなる。なお、ステップS23で2値化された画像データは、記憶部63に記憶される。
そして、CPU61は、ステップS23で2値化された画像データのコピーデータを生成し、当該2値化画像データのコピーデータを用いて2値化画像データの縮小処理及び膨張処理を行う。さらに、CPU61は、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行う。なお、縮小処理及び膨張処理、並びに距離変換については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができる。
【0041】
次に、CPU61は、ステップS23で距離変換が行われた2値化画像データ又は後述する図8のステップS264で距離変換が行われた2値化画像データを利用して、圧子14aの形状に応じた閉領域の抽出処理を行う(ステップS24)。なお、具体的な抽出処理については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、CPU61は、ステップS24で行われた抽出処理により閉領域が抽出されたか否かを判定する(ステップS25)。即ち、CPU61は、2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域としての閉領域を抽出可能であるか否かを判定する。ここで、くぼみ候補領域とは、試料Sの表面に形成されたくぼみ領域の候補となる領域のことである。ステップS25の判定は、具体的には、記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶されたか否かを判定することにより行われる。記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶された、即ち、閉領域が抽出されたと判定した場合(ステップS25:YES)は、当該くぼみ領域抽出処理を終了し、図5のステップS3へと移行する。一方、記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶されていない、即ち、閉領域が抽出されていないと判定した場合(ステップS25:NO)は、曲率画像を用いた2値化処理を行う(ステップS26)。
【0043】
具体的には、図8に示すように、まず、CPU61は、図5のステップS1で取得された試料Sの表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出する(ステップS261)。ここで、ガウシアンフィルタ処理とは、ノイズの低減を目的として、注目画素に近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようにガウス分布の関数を用いてレートを計算することにより、画像の輝度値を平滑化するための処理のことである。ここで、微分後の値Aは、ガウシアンフィルタをG、試料Sの表面の画像データをIとすると、次の数1により表される。
【数1】
【0044】
次に、CPU61は、ステップS261で算出された微分値Aを利用して画素毎にヘッセ行列式Hを計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求める(ステップS262)。ここで、ヘッセ行列式Hは、次の数2により表される。
【数2】
ステップS262の処理により、例えば、図9に示すような曲率画像データを得ることができる。
【0045】
次に、CPU61は、ステップS262で求められた曲率画像データを2値化する(ステップS263)。具体的には、白黒濃淡画像である曲率画像データを白と黒の2階調に変換する。即ち、CPU61は、例えば、各画素の画素値(曲率の絶対値の大きさ)が所定の閾値を上回っていれば黒、下回っていれば白に置き換える。これにより、曲率画像データは、濃淡値の変動が大きい所は黒く、濃淡値の変動が小さい所は白く表示されることとなる。例えば、試料Sの表面に形成されたくぼみの領域は、背景画素に比べて曲率が小さいため、図10に示すように、白画素で表示されることとなる。
【0046】
次に、CPU61は、ステップS263で2値化された画像データに対して修正処理を施す(ステップS264)。ここで、修正処理とは、ステップS263で曲率画像データを2値化した際、図10に示すように、くぼみ領域に相当する曲率が小さい画素(白画素)が離散してしまうことがあるため、これらが閉領域を形成するように画像データを修正する処理のことである。具体的には、まず、くぼみ領域のうち圧子14aの頂点及び稜線に相当する位置が照明により高輝度となることを利用して、画像の中心付近に形成されるハイライト領域E1(圧子14aの頂点位置に相当)を抽出し、ハイライト領域E1とこれに隣接する連結白画素を含む包絡矩形E2を求めたうえで、包絡矩形E2を上下左右に四分割して各象限の白画素の数をカウントする。次に、4象限のうち白画素数が最大の象限と白画素数が最小の象限を除いた2つの象限の白画素数の平均を算出し、求められた白画素数と圧子14aの形状から推定されるくぼみ領域の面積とに基づいて閉領域を形成するように画像データを修正する。ステップS264の処理により、例えば、図11に示すような修正画像を得ることができる。なお、ステップS264で修正された2値化画像データは、記憶部63に記憶される。
そして、CPU61は、図7のステップS23と同様、2値化された画像データのコピーデータを生成し、当該2値化画像データのコピーデータを用いて2値化画像データの縮小処理及び膨張処理を行った後、縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行う。画像データの距離変換が行われた後、当該曲率画像を用いた2値化処理を終了し、図7のステップS24へと移行する。
【0047】
次に、図5に示すように、CPU61は、記憶部63内に格納されたくぼみ頂点抽出プログラムを実行することにより、ステップS2のくぼみ領域抽出処理で抽出された閉領域の輪郭に基づいて、くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出する処理を行う(ステップS3:くぼみ頂点抽出工程)。なお、具体的な抽出処理については、従来公知の技術や、本出願人による特願2011−201305において提案されている技術を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された硬さ算出プログラムを実行することにより、ステップS3で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、試料Sの硬さを算出する(ステップS4:硬さ算出工程)。具体的には、ステップS3で抽出されたくぼみ計測用の頂点の座標位置を参照してくぼみの対角線長さを計測し、当該計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。
【0049】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された表示制御プログラムを実行することにより、モニタ8を制御してステップS4で算出された試料Sの硬さ値を表示させる(ステップS5:表示制御工程)。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、CCDカメラ12を制御して試料Sの表面を撮像させ、当該試料Sの表面の画像データを取得する撮像制御手段(CPU61)と、撮像制御手段により取得された試料Sの表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段(CPU61)と、くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段(CPU61)と、くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、試料Sの硬さを算出する硬さ算出手段(CPU61)と、を備え、くぼみ領域抽出手段は、2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、試料Sの表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行う。
このため、エッチング処理を施した試料Sのように、2値化された画像データからくぼみ候補領域を抽出不可能である場合であっても、画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求めて2値化することで、圧子14aの形状に応じた閉領域を抽出することができるので、エッチング処理を施した試料に対しても、くぼみ領域を抽出することができる。また、試料Sの表面の画像データを2枚取得する必要がないので、撮影位置のずれに伴う不都合を防止することができることとなって、くぼみ領域を正確に抽出することができる。さらに、試料Sの表面の画像データを2枚取得する必要がないので、くぼみ領域の抽出処理を簡易なものとすることができる。
【0051】
特に、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、くぼみ領域抽出手段は、試料Sの表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めるので、精度が高く信頼性のある試験結果を得ることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る硬さ試験機100によれば、くぼみ領域抽出手段は、取得された試料Sの表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、試料Sの表面の画像データに対してシェーディング補正を施すので、取得された試料Sの表面の画像データに、光学系や撮像系の特性による輝度ムラが生じている場合であっても、自動的にシェーディング補正が施されることとなって、試験結果に対する輝度ムラの影響を排除することができる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0054】
例えば、上記では、試料Sの表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該曲率画像データを2値化することで、曲率が所定値(閾値)よりも小さい平坦部がくぼみ領域として抽出されるようにしている。このとき、上記実施形態では、ステップ264の修正処理や、縮小処理及び拡張処理を施すことによって、曲率が所定値よりも小さい領域が圧子の形状に応じた閉領域となるようにくぼみ領域を補正したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の従来公知の補正処理を用いて、くぼみ領域を補正するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、モニタ8を制御して図5のステップS4(硬さ算出工程)で算出された試料Sの硬さ値を表示させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、音声を出力可能なスピーカ等を設けるようにし、算出された試料Sの硬さ値を音声出力させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、図7のステップS23で2値化された画像データ及び図8のステップS264で修正された2値化画像データを記憶部63に記憶させるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、RAM62に記憶させるようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、硬さ試験機100として圧子14aの平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、ビッカース硬さ試験機同様に圧子の平面形状が矩形状に形成されたヌープ硬さ試験機や、圧子の形状が球形状に形成されたブリネル硬さ試験機に適用することも可能である。
【0058】
その他、硬さ試験機100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 硬さ試験機
10 試験機本体
1 硬さ測定部
11 照明装置
12 CCDカメラ(撮像手段)
14 圧子軸
14a 圧子
15 対物レンズ
16 ターレット
17 フレームグラバ
2 試料台
3 XYステージ
4 AFステージ
5 昇降機構部
6 制御部
61 CPU(撮像制御手段、くぼみ領域抽出手段、くぼみ頂点抽出手段、硬さ算出手段、表示制御手段)
62 RAM
63 記憶部
7 操作部
8 モニタ(表示手段)
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、
前記くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、
を備え、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記くぼみ領域抽出手段は、前記試料の表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めることを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記くぼみ領域抽出手段は、前記取得された試料の表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、前記シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、前記試料の表面の画像データに対してシェーディング補正を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
表示手段を制御して前記硬さ算出手段により算出された試料の硬さを表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機。
【請求項5】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備えることを特徴とする硬さ試験機。
【請求項6】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出工程と、
前記くぼみ頂点抽出工程で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、
を含み、
前記くぼみ領域抽出工程は、前記2値化された画像データに基づいて、前記くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験方法。
【請求項7】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、を備えることを特徴とする硬さ試験方法。
【請求項1】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出手段と、
前記くぼみ頂点抽出手段により抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、
を備え、
前記くぼみ領域抽出手段は、前記2値化された画像データに基づいて、くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記くぼみ領域抽出手段は、前記試料の表面の画像データの輝度値に対してガウシアンフィルタ処理を施した後、その微分値を算出し、当該算出された微分値を利用して画素毎にヘッセ行列式を計算し、その絶対値を画素値とする曲率画像データを求めることを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記くぼみ領域抽出手段は、前記取得された試料の表面の画像データを参照して、シェーディング補正を施す必要があるか否かを判定し、前記シェーディング補正を施す必要があると判定した場合に、前記試料の表面の画像データに対してシェーディング補正を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
表示手段を制御して前記硬さ算出手段により算出された試料の硬さを表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機。
【請求項5】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御手段と、
前記撮像制御手段により取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出手段と、
前記くぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備えることを特徴とする硬さ試験機。
【請求項6】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された試料の表面の画像データを2値化し、当該2値化された画像データに縮小処理及び膨張処理を行い、当該縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行い、当該距離変換が行われた画像データを利用して前記圧子の形状に応じた閉領域を抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出された閉領域に基づいて、前記くぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出するくぼみ頂点抽出工程と、
前記くぼみ頂点抽出工程で抽出されたくぼみ計測用の頂点に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、
を含み、
前記くぼみ領域抽出工程は、前記2値化された画像データに基づいて、前記くぼみ候補領域を抽出可能であるか否かを判定し、前記くぼみ候補領域を抽出不可能であると判定した場合に、前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを2値化し、当該2値化された曲率画像データに縮小処理及び膨張処理を行うことを特徴とする硬さ試験方法。
【請求項7】
試料台に載置された試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機の硬さ試験方法において、
撮像手段を制御して前記試料の表面を撮像させ、当該試料の表面の画像データを取得する撮像制御工程と、
前記撮像制御工程で取得された前記試料の表面の画像データの輝度値に基づいて曲率画像データを求め、当該求められた曲率画像データを参照して、曲率が所定値よりも小さい平坦部をくぼみ領域として抽出するくぼみ領域抽出工程と、
前記くぼみ領域抽出工程で抽出されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出工程と、を備えることを特徴とする硬さ試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2013−104864(P2013−104864A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251247(P2011−251247)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
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