硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法
【課題】鉄筋コンクリート構造物の維持管理における塩化物イオン濃度の測定には、コンクリートコアやドリル削孔粉を用いたJIS規格やコンクリート工学協会規格があるが、いずれも試験室内で高額な分析機器を用いる方法で、試料が多数だと多大の時間と費用がかかる。補修工事では工事発注後に補修範囲や深さを調査して決定する場合も多く、工期内に業務を完了するためにも塩化物イオン濃度の迅速測定が必要で、塩化物イオン濃度の手軽かつ迅速な測定方法が望まれている。
【解決手段】本発明に係る硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させる。上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定する。
【解決手段】本発明に係る硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させる。上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設されたコンクリート構造物の維持管理や補修工事の実施に際してコンクリート中の塩素イオン濃度の把握が必要な場合がある。従来コアやドリル粉を採取し、この試料を持ち帰り試験室内において実施する塩化物イオン濃度測定方法が用いられてきている。
【0003】
硬化コンクリート中の塩分を測定する方法としては、日本コンクリート工学協会(JCI)に準拠した塩分量測定方法(JCI-SC4およびJCI-SC5)およびこれらの規格をもとに制定されたJIS A1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」に示されているコンクリート中の塩化物イオン全量を測定する方法がある(以下まとめて全塩分量測定方法と呼ぶ)。
【0004】
JCI-SC4の場合、JCI-SC8に従って採取したコンクリート試料(コンクリートコア)を切断、粉砕し、JIS Z8801に規定される標準ふるい(149μm)を全通させ、それに硝酸(2N)を加え溶液のpHを3以下とし、加熱煮沸させ、この溶液を塩化物イオン選択性の電極を用いた電位差滴定法、クロム酸銀−吸光光度法、あるいは硝酸銀滴定法によって定量する。
【0005】
JIS A1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」の場合、試料は、コンクリートコアおよびドリルによって採取された粉末試料を用いる。これらの試料を切断(コンクリートコアの場合)、粉砕し、JIS Z8801に規定される標準ふるい(149μm)を全通させたものに硝酸(2mol/L)を加え溶液のpHを3以下とし、加熱煮沸させ、この溶液を塩化物イオン選択性の電極を用いた電位差滴定法、チオシアン酸水銀(II)吸光光度法、硝酸銀滴定法あるいはイオンクロマト法によって定量する。
【0006】
従来の全塩分量測定方法は、現場で採取したコンクリートコアもしくはドリルによって採取した粉末試料を試験室に持ち帰り、試料調製(乾燥・微粉砕)後に、前述のいずれかの方法で塩分分析を行うものである。分析操作はいずれの方法も分析設備の完備した分析室で実施されることから、試料の持ち帰りの時間、試料調製(乾燥・微粉砕)の時間および分析操作の時間の合わさったものとなる。
【0007】
簡易塩分測定法としては、特開2001−343307号公報(特許文献1)に、試験用器に硬化コンクリートを削孔した削孔粉と抽出水を加え、攪拌、静置したのち上澄み水の塩分を測定する塩分簡易測定法において、予め、抽出水温度と抽出時間の設定条件下で塩分量簡易測定法と塩分量詳細測定法による結果の回帰式を求めておき、塩分量簡易測定結果に前記回帰式の係数を乗ずることにより塩分量を測定する方法が示されている。
【0008】
さらに、特開2004−219150号公報(特許文献2)に、試料容器内に硬化コンクリートを削孔した削孔粉と抽出水を加え、その混合溶液中に二酸化炭素ガスを充填、発泡させた後、上澄み水の塩分量を測定する塩分量簡易測定法であって、特許文献1に記載の条件下で測定する方法が述べられている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−343307号公報
【特許文献2】特開2004−219150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全塩分量測定方法によると、コンクリートコアを切断したのち粉砕して粉体試料とし、その後に分析する必要があること、ドリルによって採取した粉末試料の場合でも細かく粉砕する必要があること、粉砕、分析の操作は分析設備等の完備した分析室で実施する必要があり、試験機関の数が限られていることなどから、特に試料数が多い場合、現場での試料採取から分析結果が得られるまでに相当の時間を要するとともに費用も多額になるなどの問題点があった。
【0011】
予め抽出水温度や溶出時間の設定を実施する特許文献1や2の方法では、コンクリートの配合ごとに事前に係数を求める必要があることや、短時間で分析可能と表現しているが30分以上、標準的には60分の溶出を必要としている。文献2の炭酸ガスを用いる方法についても、比較対象のデータ(20℃、62分攪拌)に対応するデータと推測され、迅速に結果が得られるとは言い難い。また、確認しているデータは、コンクリート中の塩化物イオン含有量にして2kg/m3程度までの範囲である。
【0012】
以上のように、従来の方法では、事前に可溶性塩化物含有量と全塩分量測定法の関係を温度条件や溶出時間を変化させて得ておく煩雑な過程が必要であり、1試料の測定時間も60分程度必要であるという欠点があった。
【0013】
本発明は従来の方法と同程度の精度を持つ分析結果を現場事務所や試料採取現場において簡便かつ迅速に得ることができる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1)本発明に係る第一の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させる。その上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポータブル塩分計を用いて測定する。
【0015】
この発明は、すでに試料採取で実施されることが多くなってきているドリル粉を用いる手法であるが、ドリル粉の粉砕過程を省略する方法である。粉末は粉砕せずそのまま使用され、測定は現場においてなされるので、迅速かつ短時間で済む。80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間おくことにより塩素イオンが効率よく溶出するので、その上澄み水を採取して測定すればよい。更に全塩分量測定方法に示された硝酸により溶解した場合と相関性のよい分析値を得ることができる。
【0016】
(請求項2)本発明に係る第二の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間塩素イオンを溶出させる。その上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定する。
【0017】
この方法も前記第一の方法と同様に、ドリル粉の粉砕過程を省略する方法である。粉末は粉砕せずそのまま使用され、測定は現場においてなされるので、迅速かつ短時間で済む。常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間おくことにより、塩素イオンが効率よく溶出する。その上澄み水を採取測定することは第一の方法と同じである。蒸留水は常温なので、取り扱いが容易かつ安全で、必要な場所において随時加熱して使用できる。
【0018】
(請求項3)請求項1又は2に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法において、該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分であってもよい。
こうすると、塩素イオンの溶出時間をかなり短縮でき、従って、測定時間の短縮が可能となる。
【0019】
(請求項4)請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法において、該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加してもよい。
こうすると、炭酸塩は溶解することにより溶液中にCO32-が存在することになるので、炭酸ガスを吹き込む場合に比べて極めて速やかに反応に関与できる状態となる。
【0020】
(請求項5)請求項4の方法で塩素イオンを溶出させる際に、炭酸塩試薬として炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを適量加えてもよい。この方法はJIS A 1154の全塩化物イオン含有量に相当する塩分の測定を可能にする方法である。コンクリート中の塩素イオンの一部はセメントの水和物の一部と結合してフリーデル氏塩として固定されているとされ、また、この化合物はコンクリートの中性化により分解されて塩素イオンは可溶化し移動すると言われている。このような現象は空気中の炭酸ガスが作用し徐々に進む反応である。
従って、こうすると、塩素イオンの溶出を促進させることができる。
【0021】
JIS A 1154の方法は、セメント水和物を硝酸で溶かし出し、コンクリート中の塩分総量を測定しようとするものである。自然の現象を幾分か促進するために溶出時に炭酸ガスを吹き込み長時間かけて分解が可能であるとする方法も特許文献2に開示されているが、迅速な測定には至らない。
【0022】
(請求項6)請求項1または請求項2で示した方法により塩化物イオン濃度を測定し、全塩化物イオン濃度を推定する際に精度を向上するために必要な情報を得るようにしてもよい。
こうすると、中性化していると判定した場合、測定値をそのまま全塩化物イオン濃度と判断できるようになる。なお、塩化物イオン濃度を測定するに際し、あわせて上澄み液のpHをポータブルpHメータあるいはpH試験紙により測定し、またはpH試薬により確認するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
(請求項1)本発明にかかる第一の測定方法によれば、硬化コンクリート中の塩化物イオン含有量を試料採取箇所に至近の場所で、かつ迅速に、しかも塩分量詳細測定方法と相関性のよい精度で塩化物イオン含有量を測定でき、必要経費を大幅に削減することができる。
【0024】
(請求項2)本発明にかかる第二の測定方法によれば、第一の測定方法に対し、常温蒸留水を使用するので、取り扱いが容易かつ安全で、必要な場所において随時加熱して使用できる。
【0025】
請求項3によれば、該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分なので、溶出時間をかなり短縮でき、従って、測定時間の短縮が可能となる。
【0026】
請求項4によれば、該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加するので、炭酸塩は溶解して溶液中にCO32-が存在することになり、炭酸ガスを吹き込む場合に比べて極めて速やかに反応に関与できる状態となせ、全塩分量測定方法に示された硝酸により溶解した場合と同等の分析値を得ることができる。
【0027】
請求項5によれば、塩素イオンを溶出させる際に、炭酸塩試薬として炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを適量加えるようにしたので、塩素イオンの溶出を促進させることができる。
【0028】
請求項6によれば、塩素イオンの測定に加え、溶出溶液の中性化の確認をするので、中性化していると判定したときは測定値をそのまま全塩化物イオン濃度と判断できる。なお、塩化物イオン濃度を測定するに際し、あわせて上澄み液のpHをポータブルpHメータあるいはpH試験紙により測定し、またはpH試薬により確認するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法のフローを示す図である。
【図2】ドリル粉の粉砕を実施した場合としない場合の塩素イオンの溶出に対する加熱蒸留水の温度影響を示す図である。
【図3】電量滴定式塩分計の測定精度裏付けのグラフである。
【図4】本発明による測定値がJIS A 1154法やJCI-SC4の50℃温水抽出による可溶性塩化物イオン含有量の中間値が得られることを示すグラフである。
【図5】本発明による測定値とJIS A 1154法による測定値間の相関図である。
【図6】JIS A 1154法による測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明による可溶性塩化物イオン含有量の測定結果を示すグラフである。
【図8】コンクリート構造物中の鉄筋に錆が発生する可能性が高くなる量とされる1.2〜2.4kg/m3までの範囲であれば、本発明の方法により得られる結果に0.2kg/m3を加えた値が全塩化物量測定法による値と判定してもよいことを裏付けるグラフである。
【図9】試料10gにNaHCO3を1g添加したものに常温及び加熱蒸留水を添加したものと、無添加のものに加熱蒸留水を加えたものの5,10,20分後に測定した結果を示す図である。
【図10】試料10gに加熱蒸留水のみを添加して溶出した場合と、NaHCO3やNa2CO3を1g添加した後、加熱蒸留水を添加して溶出させた場合の結果を示す図である。
【図11】試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温蒸留水を添加して溶出させた試料の塩素イオン濃度を測定した結果を示す図である。
【図12】海岸のコンクリート構造物の10箇所の5深度から採取したドリル粉50試料を用いた分析結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
本発明による測定方法を、図1に示した手順に従って行った。海岸部に建設された橋脚3本の海側と陸側の6箇所において、表面から2cmごとに採取したドリル粉を用いて現場事務所で測定を実施し、同一試料を試験室でJIS A 1154により測定した結果と比較した。
【0031】
これらの6孔から採取したドリル粉をビニール袋中で均一に混合する。現場で使いやすいポリプロピレン広ロビン中にドリル粉を10g分取する。続いて、電気ポット等に90℃以上で保温しておいた加熱蒸留水を計量カップ等に分取し、速やかに広ロビンに50g程度注ぎ、電子天秤で質量を計量し添加物を記録する。蓋を閉じ、1分間に1回程度の割合で振って懸濁状態とし、10分間程度の短時間で溶出させる。溶液の上澄み液を採取し、可搬式の電量滴定式の塩分計を用いて塩素イオン濃度を測定し、コンクリート中の塩化物イオン含有量を算出した。使用する機材は汎用的機材であるため、現場事務所でも測定可能である。
【0032】
塩素イオンの溶出に加熱蒸留水を用いることにより、図2に示すように、ドリル粉の粉砕を省略しても粉砕した場合と同等の測定値が得られることを確認している。
【0033】
溶出に要する時間も図1の手順で行われたとおり、10分で十分である。
【0034】
塩素イオンを含む上澄み水中の塩素イオン濃度の測定に用いる電量滴定式塩分計の測定値は、JIS A 1154に示された測定法のうち電位差滴定法と同様であることも、図3の通り確認できている。なお、測定器は電量滴定式でなくとも前記JIS A 1154に示された方法と同等の性能であることが確認されたものであればよい。
【0035】
本方法による測定値は、図4の通りJIS A1154あるいはJCI-SC4の50℃温水抽出による可溶性塩化物イオン含有量の中間の値が得られる。また、本方法による測定値とJIS A 1154の全塩化物イオン含有量には、図5に示すとおり、強い相関がある。この関係を求めておくことにより、推定した全塩化物イオン含有量による判定も可能となる。
【0036】
なお、図6と図7のP106海側のデータを比較するとわかるように、この試料の測定値に差がない。この部分は中性化していることがわかっている。精度よく推定するためには中性化の有無を知る必要がある。この方法としては、pH試験器により測定する方法と、pH試薬等を添加して発色により確認する方法がある。
【0037】
また、図8で示すように、塩素イオンの浸入によりコンクリート中の鉄筋に錆が発生する可能性が高くなる量とされる1.2〜2.4kg/m3までの範囲であれば、この方法により得られる結果に0.2kg/m3を加えた値が、全塩化物量測定法による値と推定しても良いと考えられる結果が得られる。測定作業も、36試料の測定を2名の測定者で、5時間程度で完了することができた。これを外部の試験機関に送付して測定を依頼すると、2週間から1ヶ月を要する場合が多い。また、費用も1/2程度で実施できると考えられる。このように、結果がでるまでの時間の及び経費を飛躍的に低減することができる。
【実施例2】
【0038】
試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温20℃およびそれぞれ温度の異なる50℃と80℃以上の加熱蒸留水を50g加えて混合したもの、及びNaHCO3を添加せず80℃以上の加熱蒸留水のみ加えたものの5,10,20分後に測定した結果は、図9に示すとおりである。10分程度の短時間でJIS法による測定値と同等の測定値を得るためには、添加する加熱蒸留水温度を80℃以上にする必要があることが判る。また、10分後と20分後の測定結果はいずれの場合も同様の結果になっており、測定までの時間を10分以上に設定すれば、より安定した計測結果を得ることができる。
【0039】
更に、試料10gに加熱蒸留水のみを添加して溶出した場合と、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを1g添加した後に加熱蒸留水を添加して溶出した場合の結果を、加熱蒸留水のみを添加して測定した結果と共に示したのが図10である。●で示した加熱蒸留水のみを加えた場合に比較し、○,△で示した炭酸塩を添加した分析値は、全塩化物量測定
法による結果に近づくことがわかる。
以上の結果から、本方法により全塩化物量測定法による場合と同等の結果を簡便かつ迅速に得ることができる。
【0040】
このように、酸による溶解をせずに、また10分程度の短時間でJIS法の全塩分量測定方法相当の測定値を得るためには、炭酸塩を試料10gに対して1g以上添加すること、且つ80℃以上の加熱蒸留水を添加して溶出することによってのみ可能となる。
【実施例3】
【0041】
試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温蒸留水を添加して溶出させた試料の塩素イオン濃度を測定した。その測定後に容器ごと加熱してから塩素イオン濃度を測定した。その結果は図11に示すとおりで、短時間でJIS法による全塩分量測定方法相当の値を得るには、常温蒸留水を80℃以上に加熱して反応させる必要があることが判る。
【0042】
この場合も、実施例2の場合と同様、酸による溶解をせずにまた10分程度の短時間でJIS法の全塩分量測定方法相当の測定値を得るためには、炭酸塩を試料10gに対して1g以上添加すること、且つ蒸留水を添加して80℃以上に加熱することが必要となる。
【実施例4】
【0043】
図12は、海岸のコンクリート構造物の10箇所の5深度から採取したドリル粉50試料を用いた分析結果で、迅速法Aは請求項1に示した方法で、迅速法Bは請求項1の方法に請求項4の炭酸塩をドリル粉10gあたり2g添加して、それぞれ測定した。炭酸塩を添加して塩素イオンを溶出させることにより、JIS法の全塩化物イオン濃度と同等の値が得られることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設されたコンクリート構造物の維持管理や補修工事の実施に際してコンクリート中の塩素イオン濃度の把握が必要な場合がある。従来コアやドリル粉を採取し、この試料を持ち帰り試験室内において実施する塩化物イオン濃度測定方法が用いられてきている。
【0003】
硬化コンクリート中の塩分を測定する方法としては、日本コンクリート工学協会(JCI)に準拠した塩分量測定方法(JCI-SC4およびJCI-SC5)およびこれらの規格をもとに制定されたJIS A1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」に示されているコンクリート中の塩化物イオン全量を測定する方法がある(以下まとめて全塩分量測定方法と呼ぶ)。
【0004】
JCI-SC4の場合、JCI-SC8に従って採取したコンクリート試料(コンクリートコア)を切断、粉砕し、JIS Z8801に規定される標準ふるい(149μm)を全通させ、それに硝酸(2N)を加え溶液のpHを3以下とし、加熱煮沸させ、この溶液を塩化物イオン選択性の電極を用いた電位差滴定法、クロム酸銀−吸光光度法、あるいは硝酸銀滴定法によって定量する。
【0005】
JIS A1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」の場合、試料は、コンクリートコアおよびドリルによって採取された粉末試料を用いる。これらの試料を切断(コンクリートコアの場合)、粉砕し、JIS Z8801に規定される標準ふるい(149μm)を全通させたものに硝酸(2mol/L)を加え溶液のpHを3以下とし、加熱煮沸させ、この溶液を塩化物イオン選択性の電極を用いた電位差滴定法、チオシアン酸水銀(II)吸光光度法、硝酸銀滴定法あるいはイオンクロマト法によって定量する。
【0006】
従来の全塩分量測定方法は、現場で採取したコンクリートコアもしくはドリルによって採取した粉末試料を試験室に持ち帰り、試料調製(乾燥・微粉砕)後に、前述のいずれかの方法で塩分分析を行うものである。分析操作はいずれの方法も分析設備の完備した分析室で実施されることから、試料の持ち帰りの時間、試料調製(乾燥・微粉砕)の時間および分析操作の時間の合わさったものとなる。
【0007】
簡易塩分測定法としては、特開2001−343307号公報(特許文献1)に、試験用器に硬化コンクリートを削孔した削孔粉と抽出水を加え、攪拌、静置したのち上澄み水の塩分を測定する塩分簡易測定法において、予め、抽出水温度と抽出時間の設定条件下で塩分量簡易測定法と塩分量詳細測定法による結果の回帰式を求めておき、塩分量簡易測定結果に前記回帰式の係数を乗ずることにより塩分量を測定する方法が示されている。
【0008】
さらに、特開2004−219150号公報(特許文献2)に、試料容器内に硬化コンクリートを削孔した削孔粉と抽出水を加え、その混合溶液中に二酸化炭素ガスを充填、発泡させた後、上澄み水の塩分量を測定する塩分量簡易測定法であって、特許文献1に記載の条件下で測定する方法が述べられている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−343307号公報
【特許文献2】特開2004−219150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全塩分量測定方法によると、コンクリートコアを切断したのち粉砕して粉体試料とし、その後に分析する必要があること、ドリルによって採取した粉末試料の場合でも細かく粉砕する必要があること、粉砕、分析の操作は分析設備等の完備した分析室で実施する必要があり、試験機関の数が限られていることなどから、特に試料数が多い場合、現場での試料採取から分析結果が得られるまでに相当の時間を要するとともに費用も多額になるなどの問題点があった。
【0011】
予め抽出水温度や溶出時間の設定を実施する特許文献1や2の方法では、コンクリートの配合ごとに事前に係数を求める必要があることや、短時間で分析可能と表現しているが30分以上、標準的には60分の溶出を必要としている。文献2の炭酸ガスを用いる方法についても、比較対象のデータ(20℃、62分攪拌)に対応するデータと推測され、迅速に結果が得られるとは言い難い。また、確認しているデータは、コンクリート中の塩化物イオン含有量にして2kg/m3程度までの範囲である。
【0012】
以上のように、従来の方法では、事前に可溶性塩化物含有量と全塩分量測定法の関係を温度条件や溶出時間を変化させて得ておく煩雑な過程が必要であり、1試料の測定時間も60分程度必要であるという欠点があった。
【0013】
本発明は従来の方法と同程度の精度を持つ分析結果を現場事務所や試料採取現場において簡便かつ迅速に得ることができる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1)本発明に係る第一の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させる。その上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポータブル塩分計を用いて測定する。
【0015】
この発明は、すでに試料採取で実施されることが多くなってきているドリル粉を用いる手法であるが、ドリル粉の粉砕過程を省略する方法である。粉末は粉砕せずそのまま使用され、測定は現場においてなされるので、迅速かつ短時間で済む。80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間おくことにより塩素イオンが効率よく溶出するので、その上澄み水を採取して測定すればよい。更に全塩分量測定方法に示された硝酸により溶解した場合と相関性のよい分析値を得ることができる。
【0016】
(請求項2)本発明に係る第二の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法は、硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とする。その一定量を計り取り、常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間塩素イオンを溶出させる。その上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定する。
【0017】
この方法も前記第一の方法と同様に、ドリル粉の粉砕過程を省略する方法である。粉末は粉砕せずそのまま使用され、測定は現場においてなされるので、迅速かつ短時間で済む。常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間おくことにより、塩素イオンが効率よく溶出する。その上澄み水を採取測定することは第一の方法と同じである。蒸留水は常温なので、取り扱いが容易かつ安全で、必要な場所において随時加熱して使用できる。
【0018】
(請求項3)請求項1又は2に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法において、該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分であってもよい。
こうすると、塩素イオンの溶出時間をかなり短縮でき、従って、測定時間の短縮が可能となる。
【0019】
(請求項4)請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法において、該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加してもよい。
こうすると、炭酸塩は溶解することにより溶液中にCO32-が存在することになるので、炭酸ガスを吹き込む場合に比べて極めて速やかに反応に関与できる状態となる。
【0020】
(請求項5)請求項4の方法で塩素イオンを溶出させる際に、炭酸塩試薬として炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを適量加えてもよい。この方法はJIS A 1154の全塩化物イオン含有量に相当する塩分の測定を可能にする方法である。コンクリート中の塩素イオンの一部はセメントの水和物の一部と結合してフリーデル氏塩として固定されているとされ、また、この化合物はコンクリートの中性化により分解されて塩素イオンは可溶化し移動すると言われている。このような現象は空気中の炭酸ガスが作用し徐々に進む反応である。
従って、こうすると、塩素イオンの溶出を促進させることができる。
【0021】
JIS A 1154の方法は、セメント水和物を硝酸で溶かし出し、コンクリート中の塩分総量を測定しようとするものである。自然の現象を幾分か促進するために溶出時に炭酸ガスを吹き込み長時間かけて分解が可能であるとする方法も特許文献2に開示されているが、迅速な測定には至らない。
【0022】
(請求項6)請求項1または請求項2で示した方法により塩化物イオン濃度を測定し、全塩化物イオン濃度を推定する際に精度を向上するために必要な情報を得るようにしてもよい。
こうすると、中性化していると判定した場合、測定値をそのまま全塩化物イオン濃度と判断できるようになる。なお、塩化物イオン濃度を測定するに際し、あわせて上澄み液のpHをポータブルpHメータあるいはpH試験紙により測定し、またはpH試薬により確認するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
(請求項1)本発明にかかる第一の測定方法によれば、硬化コンクリート中の塩化物イオン含有量を試料採取箇所に至近の場所で、かつ迅速に、しかも塩分量詳細測定方法と相関性のよい精度で塩化物イオン含有量を測定でき、必要経費を大幅に削減することができる。
【0024】
(請求項2)本発明にかかる第二の測定方法によれば、第一の測定方法に対し、常温蒸留水を使用するので、取り扱いが容易かつ安全で、必要な場所において随時加熱して使用できる。
【0025】
請求項3によれば、該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分なので、溶出時間をかなり短縮でき、従って、測定時間の短縮が可能となる。
【0026】
請求項4によれば、該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加するので、炭酸塩は溶解して溶液中にCO32-が存在することになり、炭酸ガスを吹き込む場合に比べて極めて速やかに反応に関与できる状態となせ、全塩分量測定方法に示された硝酸により溶解した場合と同等の分析値を得ることができる。
【0027】
請求項5によれば、塩素イオンを溶出させる際に、炭酸塩試薬として炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを適量加えるようにしたので、塩素イオンの溶出を促進させることができる。
【0028】
請求項6によれば、塩素イオンの測定に加え、溶出溶液の中性化の確認をするので、中性化していると判定したときは測定値をそのまま全塩化物イオン濃度と判断できる。なお、塩化物イオン濃度を測定するに際し、あわせて上澄み液のpHをポータブルpHメータあるいはpH試験紙により測定し、またはpH試薬により確認するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法のフローを示す図である。
【図2】ドリル粉の粉砕を実施した場合としない場合の塩素イオンの溶出に対する加熱蒸留水の温度影響を示す図である。
【図3】電量滴定式塩分計の測定精度裏付けのグラフである。
【図4】本発明による測定値がJIS A 1154法やJCI-SC4の50℃温水抽出による可溶性塩化物イオン含有量の中間値が得られることを示すグラフである。
【図5】本発明による測定値とJIS A 1154法による測定値間の相関図である。
【図6】JIS A 1154法による測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明による可溶性塩化物イオン含有量の測定結果を示すグラフである。
【図8】コンクリート構造物中の鉄筋に錆が発生する可能性が高くなる量とされる1.2〜2.4kg/m3までの範囲であれば、本発明の方法により得られる結果に0.2kg/m3を加えた値が全塩化物量測定法による値と判定してもよいことを裏付けるグラフである。
【図9】試料10gにNaHCO3を1g添加したものに常温及び加熱蒸留水を添加したものと、無添加のものに加熱蒸留水を加えたものの5,10,20分後に測定した結果を示す図である。
【図10】試料10gに加熱蒸留水のみを添加して溶出した場合と、NaHCO3やNa2CO3を1g添加した後、加熱蒸留水を添加して溶出させた場合の結果を示す図である。
【図11】試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温蒸留水を添加して溶出させた試料の塩素イオン濃度を測定した結果を示す図である。
【図12】海岸のコンクリート構造物の10箇所の5深度から採取したドリル粉50試料を用いた分析結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
本発明による測定方法を、図1に示した手順に従って行った。海岸部に建設された橋脚3本の海側と陸側の6箇所において、表面から2cmごとに採取したドリル粉を用いて現場事務所で測定を実施し、同一試料を試験室でJIS A 1154により測定した結果と比較した。
【0031】
これらの6孔から採取したドリル粉をビニール袋中で均一に混合する。現場で使いやすいポリプロピレン広ロビン中にドリル粉を10g分取する。続いて、電気ポット等に90℃以上で保温しておいた加熱蒸留水を計量カップ等に分取し、速やかに広ロビンに50g程度注ぎ、電子天秤で質量を計量し添加物を記録する。蓋を閉じ、1分間に1回程度の割合で振って懸濁状態とし、10分間程度の短時間で溶出させる。溶液の上澄み液を採取し、可搬式の電量滴定式の塩分計を用いて塩素イオン濃度を測定し、コンクリート中の塩化物イオン含有量を算出した。使用する機材は汎用的機材であるため、現場事務所でも測定可能である。
【0032】
塩素イオンの溶出に加熱蒸留水を用いることにより、図2に示すように、ドリル粉の粉砕を省略しても粉砕した場合と同等の測定値が得られることを確認している。
【0033】
溶出に要する時間も図1の手順で行われたとおり、10分で十分である。
【0034】
塩素イオンを含む上澄み水中の塩素イオン濃度の測定に用いる電量滴定式塩分計の測定値は、JIS A 1154に示された測定法のうち電位差滴定法と同様であることも、図3の通り確認できている。なお、測定器は電量滴定式でなくとも前記JIS A 1154に示された方法と同等の性能であることが確認されたものであればよい。
【0035】
本方法による測定値は、図4の通りJIS A1154あるいはJCI-SC4の50℃温水抽出による可溶性塩化物イオン含有量の中間の値が得られる。また、本方法による測定値とJIS A 1154の全塩化物イオン含有量には、図5に示すとおり、強い相関がある。この関係を求めておくことにより、推定した全塩化物イオン含有量による判定も可能となる。
【0036】
なお、図6と図7のP106海側のデータを比較するとわかるように、この試料の測定値に差がない。この部分は中性化していることがわかっている。精度よく推定するためには中性化の有無を知る必要がある。この方法としては、pH試験器により測定する方法と、pH試薬等を添加して発色により確認する方法がある。
【0037】
また、図8で示すように、塩素イオンの浸入によりコンクリート中の鉄筋に錆が発生する可能性が高くなる量とされる1.2〜2.4kg/m3までの範囲であれば、この方法により得られる結果に0.2kg/m3を加えた値が、全塩化物量測定法による値と推定しても良いと考えられる結果が得られる。測定作業も、36試料の測定を2名の測定者で、5時間程度で完了することができた。これを外部の試験機関に送付して測定を依頼すると、2週間から1ヶ月を要する場合が多い。また、費用も1/2程度で実施できると考えられる。このように、結果がでるまでの時間の及び経費を飛躍的に低減することができる。
【実施例2】
【0038】
試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温20℃およびそれぞれ温度の異なる50℃と80℃以上の加熱蒸留水を50g加えて混合したもの、及びNaHCO3を添加せず80℃以上の加熱蒸留水のみ加えたものの5,10,20分後に測定した結果は、図9に示すとおりである。10分程度の短時間でJIS法による測定値と同等の測定値を得るためには、添加する加熱蒸留水温度を80℃以上にする必要があることが判る。また、10分後と20分後の測定結果はいずれの場合も同様の結果になっており、測定までの時間を10分以上に設定すれば、より安定した計測結果を得ることができる。
【0039】
更に、試料10gに加熱蒸留水のみを添加して溶出した場合と、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを1g添加した後に加熱蒸留水を添加して溶出した場合の結果を、加熱蒸留水のみを添加して測定した結果と共に示したのが図10である。●で示した加熱蒸留水のみを加えた場合に比較し、○,△で示した炭酸塩を添加した分析値は、全塩化物量測定
法による結果に近づくことがわかる。
以上の結果から、本方法により全塩化物量測定法による場合と同等の結果を簡便かつ迅速に得ることができる。
【0040】
このように、酸による溶解をせずに、また10分程度の短時間でJIS法の全塩分量測定方法相当の測定値を得るためには、炭酸塩を試料10gに対して1g以上添加すること、且つ80℃以上の加熱蒸留水を添加して溶出することによってのみ可能となる。
【実施例3】
【0041】
試料10gにNaHCO3を1g添加した後、常温蒸留水を添加して溶出させた試料の塩素イオン濃度を測定した。その測定後に容器ごと加熱してから塩素イオン濃度を測定した。その結果は図11に示すとおりで、短時間でJIS法による全塩分量測定方法相当の値を得るには、常温蒸留水を80℃以上に加熱して反応させる必要があることが判る。
【0042】
この場合も、実施例2の場合と同様、酸による溶解をせずにまた10分程度の短時間でJIS法の全塩分量測定方法相当の測定値を得るためには、炭酸塩を試料10gに対して1g以上添加すること、且つ蒸留水を添加して80℃以上に加熱することが必要となる。
【実施例4】
【0043】
図12は、海岸のコンクリート構造物の10箇所の5深度から採取したドリル粉50試料を用いた分析結果で、迅速法Aは請求項1に示した方法で、迅速法Bは請求項1の方法に請求項4の炭酸塩をドリル粉10gあたり2g添加して、それぞれ測定した。炭酸塩を添加して塩素イオンを溶出させることにより、JIS法の全塩化物イオン濃度と同等の値が得られることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とし、その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させ、上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定することを特徴とする硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項2】
硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とし、その一定量を計り取り、常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間塩素イオンを溶出させ、上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定することを特徴とする硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項3】
該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分である請求項1又は2に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項4】
該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加する請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法。
【請求項5】
該炭酸塩試薬は炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである請求項4に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法。
【請求項6】
塩素イオン濃度測定に加え、溶出溶液のpH測定あるいはpH試薬を添加して中性化の確認を実施する請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項1】
硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とし、その一定量を計り取り、80℃以上の加熱蒸留水を一定量添加して一定時間塩素イオンを溶出させ、上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定することを特徴とする硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項2】
硬化コンクリートからドリルによって採取した粉末をそのまま均一に混合して試料とし、その一定量を計り取り、常温蒸留水を一定量添加し、80℃以上に加熱して一定時間塩素イオンを溶出させ、上澄み水を採取してJIS A 1154に示された電量滴定法と同等の精度を有する電量滴定式等のポ−タブル塩分計を用いて測定することを特徴とする硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項3】
該塩素イオンを溶出させる一定時間は10分〜20分である請求項1又は2に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【請求項4】
該試料に炭酸塩試薬を、該試料10gに対し0.5g〜2g添加する請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法。
【請求項5】
該炭酸塩試薬は炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである請求項4に記載の硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度迅速測定方法。
【請求項6】
塩素イオン濃度測定に加え、溶出溶液のpH測定あるいはpH試薬を添加して中性化の確認を実施する請求項1〜3の一つの項に記載の硬化コンクリート中の塩素イオン濃度迅速測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−158437(P2011−158437A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22630(P2010−22630)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
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