説明

硬化剤組成物、絶縁接着層用樹脂組成物及び硬化剤組成物の製造方法

【課題】保存安定性に優れ、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能な硬化剤組成物、該硬化剤組成物を用いた絶縁接着層用樹脂組成物、並びに、硬化剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともビニルアルコール構造単位、ビニルアセタール構造単位、アクリル酸メチル構造単位、及びビニルアミン構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、有機溶剤を含有する硬化剤組成物。ビニルアルコール構造単位の含有量が30モル%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能な硬化剤組成物に関する。また、本発明は、該硬化剤組成物を用いた絶縁接着層用樹脂組成物、並びに、硬化剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化、軽量化が急速に進むのに伴って電子部品の搭載密度も高くなり、それに用いられる各種電子部品、材料に要求される特性も多様化してきている。このような中で特にプリント配線板は、配線占有面積が小型、高密度になり多層配線板化(ビルドアップ配線板)、フレキシブル配線板化(FPC)等の要求も益々高まってきている。これらの配線板は、製造工程において種々の接着剤あるいは接着フィルムを用いており、汎用的に接着剤として使用される樹脂には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が主に挙げられる。しかしながら、近年のプリント配線板における高機能化においては、これらの樹脂はいずれも耐熱性、電気絶縁性等の特性を満足させるのに不充分となりつつある。
【0003】
また、特にフレキシブルプリント基板用途では柔軟性が必須となっていることから、例えば、特許文献1には、エポキシ系接着剤の柔軟性(可撓性)及び接着性を高めるために、カルボキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム等のゴム成分を添加する方法が開示されている。
しかしながら、ゴム成分を適当な粒子径で、再現性よく分散させることは極めて困難であり、弾性体の粒子径が大きいと耐熱性と電気特性(特にマイグレーション特性)が大きく悪化してしまうという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、エポキシ樹脂に柔軟性付与剤としてのブチラール樹脂及び硬化剤を添加した接着剤組成物が開示されている。
しかしながら、エポキシ樹脂を硬化するために使用する硬化剤と、ブチラール樹脂とは相溶性が悪いため、硬化後に相分離してしまい、ブチラール樹脂が有する柔軟性や靭性が充分に発揮されなかったり、耐熱性に劣ったりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−199627号公報
【特許文献2】特開2003−27028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、保存安定性に優れ、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能な硬化剤組成物、該硬化剤組成物を用いた絶縁接着層用樹脂組成物、並びに、硬化剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、有機溶剤を含有する硬化剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0009】
本発明者らは、所定の構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有する組成物をエポキシ基含有化合物の硬化剤として用いた場合、保存安定性に優れるだけでなく、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の硬化剤組成物は、変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも上記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、このような構造単位を有することで、エポキシ基含有化合物の硬化剤として使用した場合に、耐熱性、柔軟性及び靱性の高い絶縁接着層を形成することが可能となる。また、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、連鎖移動剤を含まないため、電気特性(電気絶縁性)に優れた絶縁接着層を形成することが可能となる。
【0011】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい上限は40モル%である。より好ましい上限は30モル%である。30モル%を超えると、吸湿しやすくなるため、保存安定性が悪くなることがある。
【0012】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量の好ましい下限は35モル%、好ましい上限は80モル%である。上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量が35モル%未満であると溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがあり、80モル%を超えると残存水酸基量が少なくなって得られる変性ポリビニルアセタールの強度が低下することがある。
なお、本明細書においてアセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0013】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル単位の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は25モル%である。上記範囲を超えると、原料のポリビニルアルコールの溶解性が低下し、アセタール化反応が困難となる。
【0014】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位は架橋性を有しており、エポキシ基含有化合物と共架橋させることが可能となる。このため、エポキシ基含有化合物の硬化剤として使用した場合、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能となる。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は25モル%である。上記一般式(4)で表される構造単位の含有量が0.1モル%未満であると、エポキシ基含有化合物との架橋構造が形成されることによる効果が充分に得られず、靱性の低下を招くことがあり、25モル%を超えると、エポキシ基含有化合物との反応性が高くなりすぎ、保存安定性や柔軟性が低下することがある。
【0016】
本発明の硬化剤組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、上記変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。なかでも、溶解性やエポキシ基含有化合物との相溶性の理由から、ケトン系溶剤及び/又はエステル系溶剤が好ましい。
【0017】
本発明の硬化剤組成物には、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シリカ等の充填剤等を適宜添加してもよく、場合によってアクリル樹脂等の他樹脂を少量添加してもよい。
【0018】
本発明の硬化剤組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、酢酸ビニルとN−ビニルアミドとからなる共重合体をケン化することで変性ポリビニルアルコールを作製する工程、上記変性ポリビニルアルコールをアセタール化する工程、及び、有機溶剤を添加する工程を有する方法によって製造することができる。
なお、未変性のポリビニルアルコールをアセタール化した後、アミド基を付加させる方法を用いてもよい。
【0019】
上記変性ポリビニルアルコールを作製する工程では、酢酸ビニルとN−ビニルアミドとからなる共重合体をケン化する。上記ケン化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酢酸ビニルとN−ビニルアミドとからなる共重合体をメタノールに溶解した溶液中に強アルカリを添加する方法等が挙げられる。
【0020】
次いで、上記変性ポリビニルアルコールをアセタール化する工程を行う。
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0021】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0022】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。
【0023】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0024】
また、有機溶剤を添加する工程についても従来公知の方法を用いることができる。なお、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。
【0025】
本発明の硬化剤組成物に、エポキシ基含有化合物を添加することで、絶縁接着層用樹脂組成物とすることができる。このような絶縁接着層用樹脂組成物もまた本発明の1つである。
【0026】
上記エポキシ基含有化合物としては特に限定されないが、一分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。また、上記エポキシ基含有化合物は、例えば、シリコーン骨格、ウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリアミド骨格等を有していてもよい。
【0027】
上記エポキシ基含有化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及び、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等のグリシジエルエーテル型エポキシ樹脂や、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ基含有化合物を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記エポキシ基含有化合物のエポキシ当量の好ましい下限は90、好ましい上限は250である。上記エポキシ基含有化合物のエポキシ当量が90未満もしくは250を超えると、硬化の際に、反応性が悪くなる恐れがある。
【0029】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂とエポキシ基含有化合物との重量比については、エポキシ基含有化合物100重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂を5〜50重量部含有することが好ましい。上記範囲外であると、反応性に劣ったり、安定性に欠けたりすることがある。
特に、エポキシ当量が90〜250のエポキシ基含有化合物を用いる場合は、このような範囲とすることが好ましい。
【0030】
本発明の絶縁接着層用樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記変性ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、エポキシ基含有化合物及び必要に応じて添加する各種添加剤をポットミル、ホモジナイザー、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0031】
本発明の絶縁接着層用樹脂組成物を用いて、フレキシブル印刷配線用基板を製造することができる。
具体的には、例えば、本発明の絶縁接着層用樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)等の離型フィルム等に塗工した後、溶剤を除去、乾燥して、半硬化状態とし、金属箔と重ね合わせ、熱プレス等で熱圧着させる方法等によって製造することができる。
なお、金属箔は電気絶縁性フィルムの片面又は両面に設けて使用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、保存安定性に優れ、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能な硬化剤組成物、該硬化剤組成物を用いた絶縁接着層用樹脂組成物、並びに、硬化剤組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
(変性ポリビニルアセタール樹脂Aの作製)
酢酸ビニル1000重量部、N−ビニルアミド13重量部、及び、重合触媒として、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1フェニルエタン)7重量部とをメタノール中で共重合させることで、共重合体を作製した。得られた共重合体中から未反応のモノマーを除去し、未反応モノマーのない共重合体を得た。得られた共重合体の固形分が50重量%になるようにメタノールに追加して溶解し、水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液を酢酸ビニル単位に対して2ミリモル%仕込み、ケン化を実施後、乾燥を行い、ケン化度99%、上記一般式(4)で表される構造単位含有量が14モル%の変性ポリビニルアルコールを得た。
得られた変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、冷却し、70%硝酸80重量部とブチルアルデヒド24重量部、アセトアルデヒド26重量部を添加し、樹脂を析出させ反応させた。反応後、蒸留水にて洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂Aを得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂Aの残存水酸基量は20モル%、ブチラール単位(R:プロピル基)含有量は27モル%、アセタール単位(R:メチル基)含有量は38モル%、残存アセチル基量は1モル%、上記一般式(4)で表される構造単位含有量は14モル%であった。
【0035】
(硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂A30重量部に、メチルエチルケトン170重量部に加え、攪拌溶解することにより、硬化剤組成物を作製した。
そして、得られた硬化剤組成物と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部とを混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0036】
(実施例2)
(変性ポリビニルアセタール樹脂Bの作製)
実施例1で得られた変性ポリビニルアルコール50重量部と、重合度300、ケン化度80モル%のポリビニルアルコール50重量部とを1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、冷却し、70%硝酸80重量部とアセトアルデヒド33重量部を添加し、樹脂を析出させ反応させた。反応後、蒸留水にて洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂Bを得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂Bの残存水酸基量は22モル%、アセタール単位(R:メチル基)含有量は61モル%、残存アセチル基量は10モル%、上記一般式(4)で表される構造単位含有量は7モル%であった。
【0037】
(硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂Bを用いた以外は実施例1と同様にして硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物を作製した。
【0038】
(実施例3)
(変性ポリビニルアセタール樹脂Cの作製)
実施例1で得られた変性ポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、冷却し、70%硝酸85重量部とブチルアルデヒド18重量部、アセトアルデヒド24重量部を添加し、樹脂を析出させ反応させた。反応後、蒸留水にて洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂Cを得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂Cの残存水酸基量は24モル%、ブチラール単位(R:プロピル基)含有量は20モル%、アセタール単位(R:メチル基)含有量は41モル%、残存アセチル基量は1モル%、上記一般式(4)で表される構造単位含有量は14モル%であった。
【0039】
(硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂C30重量部に、メチルエチルケトン90重量部に加え、攪拌溶解することにより、硬化剤組成物を作製した。
そして、得られた硬化剤組成物と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部とを混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0040】
(実施例4)
(変性ポリビニルアセタール樹脂Dの作製)
実施例1で得られた変性ポリビニルアルコール30重量部と、重合度300、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール70重量部とを1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、冷却し、70%硝酸90重量部とブチルアルデヒド10重量部、アセトアルデヒド36重量部を添加し、樹脂を析出させ反応させた。反応後、蒸留水にて洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂Dを得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂Dの残存水酸基量は22モル%、ブチラール単位(R:プロピル基)含有量は10モル%、アセタール単位(R:メチル基)含有量は62モル%、残存アセチル基量は2モル%、上記一般式(4)で表される構造単位含有量は4モル%であった。
【0041】
(硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂D30重量部に、メチルエチルケトン70重量部に加え、攪拌溶解することにより、硬化剤組成物を作製した。
そして、得られた硬化剤組成物と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部とを混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0042】
(比較例1)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度99%のポリビニルアルコール100重量部を1200重量部の蒸留水に加温溶解した後、冷却し、70%硝酸70重量部とブチルアルデヒド42重量部、アセトアルデヒド11重量部を添加し、樹脂を析出させ反応させた。反応後、蒸留水にて洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は32モル%、ブチラール単位(R:プロピル基)含有量は52モル%、アセタール単位(R:メチル基)含有量は15モル%、残存アセチル基量は1モル%であった。
【0043】
(硬化剤組成物及び絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂30重量部に、メチルエチルケトン170重量部及びメタキシリレンジアミン19重量部に加え、攪拌溶解することにより、硬化剤組成物を作製した。
そして、得られた硬化剤組成物と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部と混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0044】
(比較例2)
(絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部と、アクリロニトリルブタジエンゴム(JSR社製、Nipol1041) 30重量部とをメチルエチルケトン45重量部に溶解させ、得られた溶液にメタキシリレンジアミン19重量部を添加して、混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0045】
(比較例3)
(絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部と、カルボキシル基変性ブタジエンゴム(JSR社製、D601) 30重量部とをメチルエチルケトン10重量部に溶解させ、得られた溶液にメタキシリレンジアミン19重量部を添加して、混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較例4)
(絶縁接着層用樹脂組成物の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、828)100重量部にメタキシリレンジアミン19重量部を添加して、混合することにより絶縁接着層用樹脂組成物を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
(評価)
(1)相溶性
得られた絶縁接着層用樹脂組成物をPETからなる離型フィルム上に塗工し、50℃で2時間乾燥して厚さ30μmのシートを作製した。作製したシートについて、目視にて下記の基準で透明性を評価した。
【0049】
○(相溶):透明である。
△(非相溶):半透明である。
×(非相溶):白濁している。
【0050】
(2)柔軟性、強度
「(1)相溶性」で作製したシートをPETからなる離型フィルムから剥離し、5cm×2cmにカットした試料の引張伸度及び弾性率を引張試験機で測定した(速度:50mm/min)。得られた弾性率について以下の基準で評価した。
【0051】
[引張伸度]
○:引張伸度が30%以上。
×:引張伸度が30%未満。
[弾性率]
○:弾性率が1000MPa以上。
×:弾性率が1000MPa未満。
【0052】
(3)熱変形性
「(1)相溶性」で作製したシートをPETからなる離型フィルムから剥離し、5cm×5cmの大きさにカットした試料を10枚積層し、プレス機を用いて100℃、10kgf、1分間、積層体を熱圧着後、150℃、20kgfで10分間、熱プレスした。熱プレス後の試料の大きさを測定し、下記式で計算を行い、熱変形率を評価した。
熱変化率=([X方向変化率]+[Y方向変化率])/2
なお、X方向変化率及びY方向変化率は、以下の式から求めた。
X方向変化率=[プレス後の試料のX方向長さ(cm)]/[元試料のX方向長さ(5cm)]
Y方向変化率=[プレス後の試料のY方向長さ(cm)]/[元試料のY方向長さ(5cm)]

【0053】
○:熱変形率が1倍以下。
△:熱変形率が1倍を超え、1.3倍未満。
×:熱変形率が1.3倍以上。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、保存安定性に優れ、耐熱性、柔軟性、靱性及び電気特性の高い絶縁接着層を形成することが可能な硬化剤組成物、該硬化剤組成物を用いた絶縁接着層用樹脂組成物、並びに、硬化剤組成物の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、有機溶剤を含有することを特徴とする硬化剤組成物。
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【請求項2】
一般式(1)で表される構造単位の含有量が30モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
請求項1記載の硬化剤組成物、及び、エポキシ基含有化合物を含有することを特徴とする絶縁接着層用樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ基含有化合物は、エポキシ当量が90〜250であることを特徴とする請求項3記載の絶縁接着層用樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ基含有化合物100重量部に対して、変性ポリビニルアセタール樹脂を5〜50重量部含有することを特徴とする請求項3又は4記載の絶縁接着層用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2記載の硬化剤組成物を製造する方法であって、
酢酸ビニルとN−ビニルアミドとからなる共重合体をケン化することで変性ポリビニルアルコールを作製する工程、
前記変性ポリビニルアルコールをアセタール化する工程、及び、
有機溶剤を添加する工程を有する
ことを特徴とする硬化剤組成物の製造方法。


【公開番号】特開2013−72027(P2013−72027A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212983(P2011−212983)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】