説明

硬化剤組成物およびその製造方法。

【課題】毒性物質、アレルギー誘因物質、外因性内分泌撹乱化学物質等を含有しない、人体に安全な新規な構造の塗料用硬化剤およびその製造方法を提供。
【解決手段】炭素数5〜8の直鎖ジカルボン酸と炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有するアルコールとからのジエステル(A)と、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有するジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を、(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させてなる、1分子あたりの平均官能基数が4よりも大でかつ8よりも小である硬化剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毒性物質、アレルギー誘因物質、外因性内分泌撹乱化学物質等を含有しない、人体に安全な新規な構造の塗料用硬化剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料業界にとって有機溶剤の揮散による地球環境汚染を回避することができる塗料の開発は現在の最重要課題である。環境汚染の少ない塗料としては粉体塗料がまず挙げられる。しかし従来粉体塗料用硬化剤として多用されてきたTGIC(トリグリシジルイソシアヌレート)はかぶれなどの皮膚刺激性、毒性の問題があり、エポキシ樹脂では微量に含有されるビスフェノールAが外因性内分泌撹乱化学物質(俗称:環境ホルモン)である疑いが持たれており、又ブロックイソシアネートは硬化時に脱離するブロック剤がVOCとなり焼付炉や環境を汚染する、という問題点がある。そのためそれら毒性の問題が少なくかつ硬化時の揮散物が水である2-ヒドロキシアルキルアミド型の硬化剤が広く用いられて来ている。
カルボキシ基含有ポリエステルに硬化剤として2−ヒドロキシアルキルアミドを用いた熱硬化性塗料は公知である(特許文献1)また、この組み合わせを用いて、主にポリエステル粉体塗料として多くの発明がなされている(特許文献2〜6)
【特許文献1】:特開昭51−17970号公報
【特許文献2】:特許2594346号公報
【特許文献3】:特表平8-512077号公報
【特許文献4】:特開昭63−090580号公報
【特許文献5】:特開平04−247058号公報
【特許文献6】:特開2000−038372号公報
【0003】
特許文献1は溶液型塗料に関する特許であり、実施例中にはトリメリット酸と2−メチルアミノエタノールとの反応物(トリアミド)が記載されているが、それは粘調液体であった。2−ヒドロキシアルキルアミドを側鎖にもつモノマーを共重合してなる自己硬化性アクリル樹脂による粉体塗料の例が開示されているが、2-ヒドロキシアルキルアミド型の硬化剤をカルボン酸基含有樹脂と組み合わせた粉体塗料実施例はない。また特許文献2〜6の実施例を見ると2-ヒドロキシアルキルアミド型の硬化剤はBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドの構造となっている。これは2−ヒドロキシアルキルアミド化合物の中でも対称構造を持つBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドが、結晶性が高く常温で固体であるため、従来粉体塗料の硬化剤として多用されてきたTGIC(トリグリシジルイソシアヌレート)に代わる、無毒で人体に安全な硬化剤として利用できるためである。
【0004】
現在主に使用されているBis−ジヒドロキシアルキルアミドはアジピン酸の両端にジアルカノールアミンが縮合した構造の4官能型のものである。例として、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド(商品名:PrimidXL552;CAS 6334−25−4)やN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジパミド(商品名:PrimidQM1260;CAS 57843−53−5)が挙げられる(いずれもEMS社製)。これらのアルキル鎖の両端にジヒドロキシアルキルアミンが縮合したBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミド構造を持つ硬化剤(以下、その商標名から「プリミド」硬化剤と呼称することがある)は結晶性が高く粉体塗料用途に非常に適しており、また低温硬化性もあり(160℃で30分間焼付けで硬化)良好な塗膜性能を示す。しかしこれら従来用いられてきたBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミド型の「プリミド」硬化剤は吸湿性が非常に高く、そのためか硬化塗膜が高湿度環境に長期に渡り晒された場合にハガレが生じることがあるなど、耐湿負荷後の下地付着性が不足するという問題点があった。そのため、より硬化性が高くまた疎水性がより高い2-ヒドロキシアルキルアミド型の硬化剤が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は人体に安全であり、粉体塗料の硬化剤として用いた時に硬化性が高くまた硬化後の塗膜が耐湿負荷後の下地付着性が優れたものとなる硬化剤組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは鋭意研究の結果、疎水性の高い原料からなり、直鎖ジカルボン酸ジエステルと、ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミンの配合比をアミン不足として合成する事により得られる1分子あたりの官能基数が4よりも大きい2−ヒドロキシアルキルアミド型硬化剤組成物が硬化性が高くまた硬化後の塗膜が耐湿負荷後の下地付着性が優れたものとなることを見出し、また該硬化剤組成物は直鎖ジカルボン酸ジエステルと、ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミンのアミド化反応を一定の条件下で行う事により製造出来る事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下に示す硬化剤組成物およびその製造方法に関する。
1.一般式(I)で表される直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、一般式(II)で表されるジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させてなる、1分子あたりの平均官能基数が4よりも大でかつ8よりも小である硬化剤組成物。
【0008】
【化1】

(式中Rはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、nは5〜8の整数である。)
【0009】
【化2】

(式中R及びRは同一であっても異なっていてもよい水素原子または炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
2.ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)が一般式(II)においてR及びRが同一である対称構造のジアルカノールアミンである項1に記載の硬化剤組成物。
3.20℃における水溶解度が0〜50g/100gHOである項1または2に記載の硬化剤組成物。
4.一般式(I)で表される直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、一般式(II)で表されるジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させ、1分子あたりの平均官能基数が4よりも大かつ8よりも小とすることを特徴とする硬化剤組成物の製造方法。
【0010】
【化3】

(式中Rはそれぞれ同一又は異なって炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、nは5〜8の整数である。)
【0011】
【化4】

(式中R及びRは同一であっても異なっていてもよい水素原子または炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
5.アミド化反応温度が60〜120℃である項4に記載の硬化剤組成物の製造方法。
6.項1〜3のいずれか1項に記載の硬化剤組成物とポリカルボン酸樹脂を含む粉体塗料組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化剤組成物は原料として疎水性の高い物質を用い、直鎖ジカルボン酸ジエステルと、ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミンを、直鎖ジカルボン酸ジエステルのエステル基の総モル数に対するジ(2−ヒドロキシアルキル)アミンのアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させてなる、1分子あたりの官能基数が4よりも大きい硬化剤組成物である。1分子あたりの官能基数を4よりも大きくする事により従来市販されていた2−ヒドロキシアルキルアミド型硬化剤が持っていた硬化後の塗膜の耐湿負荷後の下地付着性が不足する問題点を解決できる。また本発明の硬化剤組成物の製造方法においてはエネルギー消費が殆んど無い熟成工程を採用して目的とする組成物を得る事が出来るので省エネルギーの面からもすぐれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは対策として硬化剤自体の疎水性を上げることを考え、まず、原料として用いるジカルボン酸ジエステルを幹部のメチレン鎖長が4であるアジピン酸ジエステルからそれよりもメチレン鎖長の長いジカルボン酸ジエステルに置き換える事を試みたが、充分な疎水性を得るためにはメチレン鎖長を9〜10(ノナンジカルボン酸〜ドデカン二酸)以上のものにする必要があり、この場合硬化剤は常温で液状となり粉体塗料に用いる事は出来なかった。
【0014】
又上述の「プリミド」硬化剤は4官能硬化剤であるが、官能基数を増やし架橋密度を上げれば耐湿性を改良出来るとも本発明者らは考え、多官能化を試みた。まずジエタノールアミンとジエチレントリアミンを併用し、ジカルボン酸ジエステル3分子をジエチレントリアミンに縮合させたトリアミドの末端カルボン酸エステルに夫々ジエタノールアミンが縮合したTris−ジヒドロキシアルキルアミドの合成を試みたが、合成途中で結晶化してしまい目的とする物質を製造する事は出来なかった。
【0015】
またトリカルボン酸エステルを用いた合成も試みたが酸が密集した構造であるクエン酸トリブチルをジエタノールアミンと反応させた場合は2つの酸エステルとアミンの縮合反応は進行するが3つめの酸エステルとの縮合反応は立体障害が生じるためか進行せずTris−ジヒドロキシアルキルアミドは合成できなかった。一方カルボン酸エステルが互いに離れた位置にあるポリカルボン酸エステルとジエタノールアミンとの反応を試みたが途中生成した2−ヒドロキシエチルアミドのヒドロキシ基と未反応の酸エステル基とのエステル交換反応が起こり系が増粘してしまいこれも合成が出来なかった。
【0016】
本発明者らは以上の経過をふまえ、鋭意研究を重ねた結果、アジピン酸よりも疎水性が高い、幹部のメチレン鎖長が5〜8の脂肪族ジカルボン酸エステルとジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミンを原料として用い、かつエステル基の総モル数に対するアミノ基の総モル数の割合を特定の範囲で仕込み反応させることにより合成された(2−ヒドロキシアルキル)アミドが適度な結晶性があるので常温で固体であり、かつ疎水性がありかつ官能基数が多く硬化性にすぐれるので粉体塗料用硬化剤としての適性があり、また硬化塗膜の耐湿負荷後の下地付着性が優れたものとなる事を見出し本発明を完成するに到った。
【0017】
以下に本発明の硬化剤組成物、その製造方法およびそれを用いた粉体塗料組成物について説明する。
【0018】
本発明の硬化剤組成物は平均官能基数が1分子あたり4個よりも大きく8個以下である。従来からの市販硬化剤(「プリミド」)と本発明の硬化剤組成物は、原料として直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)及びジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を用いる点では共通である。従来の硬化剤の合成方法でもカルボン酸(エステル)とアミンを等モル量ではない仕込み比で合成する方法はあったが、それらは目的とする物質はBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドであった(注1)。本発明の硬化性組成物は製造時にアミンの量をカルボン酸の化学当量よりも少なく仕込み穏やかに反応させる事により平均官能基数が多く、即ち硬化性がより高く、直鎖ジカルボン酸ジエステルの幹部のメチレン鎖長が5〜8である事による疎水性との相乗効果により硬化後の塗膜の耐湿負荷後の下地付着性に優れる硬化剤組成物を得る事が可能となった。
【0019】
注1:例えば特許文献4(実施例G)、特許文献5(実施例1、3)、特許文献6(請求項1)はアミン過剰で仕込み従来型の4官能硬化剤が合成された後にも未反応の余剰アミンを除去する方法である。
【0020】
平均官能基数について
まず始めに硬化剤組成物の平均官能基数の計算方法と製造上の問題点について述べる。
【0021】
硬化剤の製造に当たり初期仕込みとして(A)直鎖ジカルボン酸ジエステルをaモルと(B)ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミンをbモル仕込むとする。このとき(A)によるカルボン酸エステルの化学当量は2a、(B)によるアミンの化学当量はb、ヒドロキシル基の化学当量は2bである。このときアミンの化学当量はカルボン酸エステルの化学当量に等しい(従来技術)かそれよりも少ない(本発明)ので、2a≧bである。
【0022】
実際の反応はまず(A)のカルボン酸エステルと(B)のアミンの活性水素(アミノ基およびヒドロキシル基)の間の縮合反応が先行する。つまりカルボン酸エステルとアミノ基の反応によるアミド化反応と、カルボン酸エステルとヒドロキシル基との間のエステル交換反応である。また縮合物は分子内のアミド−エステル転移反応が起こる。アミンとしてジエタノールアミンを用いた場合のアミド−エステル転移反応を式IIIに示す。
【0023】
【化5】

(III)
(ここでRは直鎖カルボン酸残基を示す。)
この平衡はアミド側が安定であるので通常は縮合物はアミド構造が優位となる。この段階を段階1とする。計算上の簡単のため仮に(A)のカルボン酸エステルと(B)のアミンの縮合では生成物は全てアミドとなると仮定する。
【0024】
段階1でアミド化反応が完了した時点での系の状態を記述する。このときアミンは全て消費されてしまうのでアミンの残量は0モル、カルボン酸エステルはbモルがアミンとの反応で消費されるので残量は(2a−b)モル、そしてヒドロキシル基は反応していないので2bモルがそのまま残存している。また系中の分子数は(B)のアミンが全量(A)に結合しているのでaモルである。
【0025】
段階2として残存しているカルボン酸エステルと段階1で生成した2−ヒドロキシアルキルアミドのヒドロキシル基とのエステル交換縮合反応が起こる。この段階2により残存しているカルボン酸エステルは全量消費され目的とする硬化剤が得られた状態を記述する。このときヒドロキシル基は(2a−b)モルがカルボン酸エステルとの反応により消費されるので残量は2b−(2a−b)即ち(3b−2a)モルである。そして系中の分子数は2×(2a−b)モルの分子が反応により結合し(2a−b)モルの分子となるので、差し引きa−(2a−b)即ち(b−a)モルである。
【0026】
つまり平均官能基数は残存するヒドロキシル基のモル数を分子数で割ったものであるので式IVで表される。

平均官能基数(モル/分子)=(3b−2a)/(b−a) (IV)

実際の製造工程では(A)と(B)の分子間の縮合反応であるアミド化反応とエステル交換反応は分子内アミド/エステル転移反応(アミド優位)を伴いながら進行し、同時に、生成したジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドのヒドロキシル基と未反応のジカルボン酸エステルとの縮合反応も起こる。後者の反応において官能基数が2よりも大であるアミド化物(Bis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドなど)とジカルボン酸エステルが反応して3次元網目をつくり系がゲル化してしまうことも起こる。従来の技術はアミンの配合量を等量以上にすることや生成したBis−ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミドの溶解性、結晶性を利用して反応系から単離することによりこの不都合な反応(ゲル化)を回避していた。
【0027】
本発明の硬化性組成物は仕込み配合のエステル基のモル数/アミノ基のモル数が0.60〜0.95でありカルボン酸過剰で合成するが、穏やかな反応条件、例えば反応温度が60〜120℃で系のゲル化を回避しながら反応を進める。そのため本発明の方法では分子内アミド−エステル互変異性体のうちエステル構造体が少量残る。反応式IIIからも明らかなようにエステル構造体は2級アミンによるアミン価をもっており、残留アミン濃度(アミン価から判明)はエステル構造となる事により2−ヒドロキシアルキルアミド構造が減少してしまった濃度と等しい。
【0028】
そのため実際の硬化剤組成物の平均官能基数は式IVから算出される値をアミン価により補正した値となる。計算例は実施例に記載する。
【0029】
表1に従来の(プリミド)硬化剤の製造条件と本発明の製造条件で得られる硬化剤組成物の式IVから算出した平均官能基数を比較して示す。(本発明の実際の硬化剤組成物は残存アミン価がある場合計算値よりも小さい値となる。)
表1

【0030】
水溶解度について
水溶解度は物質の水との親和力の指標である。本発明の硬化剤組成物疎水性の幹部を持つ事及びは水溶解度が従来の「プリミド」硬化剤よりも低い事が特徴である。一般にアミド化合物は水素結合により水との親和力が高く、例えば代表的な「プリミド」硬化剤であるN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド(商品名:PrimidXL552)は20℃において100gの水に対して80g以上溶解する。硬化塗膜の耐湿負荷後の下地付着性が不足する原因として硬化剤の水溶解性の影響が大きい。硬化塗膜の耐湿負荷後の下地付着性を改善するためには硬化剤組成物の水溶解性が0〜50g/100gH0の範囲にあることが好ましい。
【0031】
硬化剤組成物の原料について
本発明の硬化剤組成物は直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を出発原料とするものである。
【0032】
直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)
本発明の(A)成分は下記化学式Iに構造を示す直鎖脂肪族ジカルボン酸のジエステルである。
【0033】
【化6】

(I)
(式中R1は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、nは5〜8の整数である。)
かかる化合物としては、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチル、ジペンチルエステル化合物などが挙げられる。これらのうちで特にセバシン酸ジエステル化合物が製造された硬化剤の疎水性を高くする観点から好ましく、両末端の脂肪族炭化水素基Rについては製造時の容易性からメチル基またはエチル基であるのが好ましく特にメチル基が好ましい。また、化合物(A)として1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)
本発明の(B)成分はジ−(2−ヒドロキシアルキルアミン)であり、その構造を下記化学式IIに示す。
【0035】
【化7】

(II)
(式中R及びRは同じであっても異なっていてもよい水素原子または炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
かかる物質としてはジ−2−ヒドロキシエチルアミン(ジエタノールアミン)、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルアミン(ジイソプロパノールアミン)、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシブチルアミン、ジ−2−ヒドロキシブチルアミン(ジ−2―ブタノールアミン)などのジアルカノール型の2級アミンが挙げられる。中でも2つの2−ヒドロキシアルキル基が互いに同じものである、対称構造を持つジアルカノールアミンが好ましい。特にジエタノールアミンもしくはジイソプロパノールアミンである事が好ましい。また、ジ−2−ヒドロキシアルキルアミン(B)として1種のみを用いてもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0036】
硬化剤組成物の製造(アミド化反応)
直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を反応させて目的とする硬化剤組成物を製造する。このとき(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の仕込み割合を1.0又はそれよりも大(化学量論的にアミノ基が過剰)にすると、従来から知られたBis−ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミド構造を持つ4官能の硬化剤(「プリミド」硬化剤)を得る事が出来る。しかし本発明では(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95、好ましくは0.75〜0.92、より好ましくは0.80〜0.90の化学量論的にアミノ基不足とすることで、アミド化反応と同時に一部のβ-ヒドロキシル基とエステル基のエステル交換反応を進行させて、従来用いられてきた4官能硬化剤よりも官能数の多い多官能硬化剤を製造する。
このとき一般式(I)で表される化合物(A)の幹部分のアルキル基の長さ(硬さ)とジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)の構造、仕込み量によって製造できる多官能硬化剤の融点が変動して常温で液状〜固体状のものが得られる。そのうち粉体塗料用硬化剤として常温固体のものを得る組み合わせとしては、(A)のアルキレン基が短く(例えば一般式(I)においてn=5:ピメリン酸誘導体)、かつ(B)が対称構造であるジアルカノールアミン、特にジエタノールアミンの場合には(A)に対する(B)の仕込み量が0.60程度であっても固体物が製造できる。一方(A)のアルキル基が長く(例えば一般式(I)においてn=8:セバシン酸誘導体)、かつ(B)が非対称構造のジ−アルカノールアミン(例えばN−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシブチルアミン)の場合には(A)に対する(B)の仕込み量がたとえ1.0であっても常温で固体の物は製造できない。一般的に目的とする粉体塗料用硬化剤を製造するには、直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)の幹部分がn=7または8のものと組み合わせる場合には、ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)は対称構造を持つジアルカノールアミンであることが好ましく、ジエタノールアミンであることが特に好ましい。
(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95、好ましくは0.75〜0.92、より好ましくは0.80〜0.90とする事によって目的とする常温で固体である粉体塗料用硬化剤を製造する事が出来る。
【0037】
本発明の硬化剤組成物は原料(A)と(B)を混合し加熱する事により(A)のエステル基と(B)のアミノ基をエステル−アミド交換させることにより製造される。これは例えば特開昭51−017970号公報にも記載された公知の工程である。この反応は無溶剤で行ってもよく、両原料をよく溶解する溶媒中で行ってもよいが、粉体塗料に用いる無溶剤硬化剤組成物を得るためには無溶剤で行うほうが好ましい。またこのときアミド化反応の触媒を加えてもよい。用いられる触媒はアミド化を促進するものであれば種類を問わないが、塩基性物質が好ましく、そのようなものとして金属アルコラート、例えばナトリウムメチラートが例として挙げられる。
【0038】
このとき反応は平衡反応であるのでアミド化を進めるためにアミド化時に生成するアルコールを系外に除く事により反応を進める。このとき化学式(I)に示した直鎖ジカルボン酸ジエステルの末端の炭化水素基が相当するアルコールとして除去されるが反応温度が高いと下式IIIに示した脱離物を伴わないアミド−エステル交換反応がエステル側に寄り、生成物の2−ヒドロキシアルキルアミド構造のヒドロキシル官能基ヒドロキシル官能基が消費され硬化性が損なわれてしまう。(2−ヒドロキシアルキルアミン構造のヒドロキシル官能基は200℃を下回るような低温条件ではカルボン酸と反応しない。)そのため穏やかに反応を進行させることが重要で、反応温度は60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0039】
【化8】

(III)
この平衡はアミド側が優勢であるので反応物を溶融状態または固体単離してから固層で熟成する事によりアミド構造体を選択的に得る事が出来る。
【0040】
直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、ジ−(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)とのアミド生成反応及び式IIIに示すアミド−エステル交換反応はアミン価により追跡できる。
【0041】
また反応時に系に加えた触媒は式IIIの平衡反応の触媒としても作用し、得られた硬化剤組成物を粉体塗料に用いた場合、焼付け硬化を行うときに触媒が残存していると式IIIの平衡をエステル側に戻し結果として硬化性を低下させる作用を示す事がある。そのため本製造方法ではまず(A)と(B)によるアミド−エステル交換反応が所望の反応率まで達したとアミン価測定により確認できた時点で触媒を除去または失活させる工程を入れることが好ましい。ここで反応率は任意に設定できるが、一般的には85%以上である事が好ましく、90%以上であることがより好ましい。また触媒を除去する方法は特に限らないが例えば反応混合物を溶剤または水により洗浄する方法や限外ろ過による方法などがある。同様に触媒を失活させる方法も用いる触媒に応じて選ぶ事が出来るが例えば金属アルコラートを用いた場合などはブレンステット酸により中和する方法が簡便である。この場合系のアミン価の測定は加えた触媒量/中和に用いた酸の量により補正される。なお、本発明の系は出発物質としてアミンに対してカルボン酸エステルを過剰に配合しているのでアミン価が下がり易い(反応が早い)ことも利点の一つである。
【0042】
アミン価測定により所望の反応率に達した事を確認した後、系は冷却され粘調な溶融状態もしくは固体状態となる。このとき式IIIに示した平衡反応はアミド側が優勢であるので徐々に系は目的とするアミド構造の硬化剤の濃度が高くなってくる。この平衡の移動は非常にゆっくりと進む熟成反応であるので熟成工程として反応容器中で熟成を進める事が硬化剤組成物の汚染や水の吸着等を防止するために好ましい。ここでのアミド/エステルの比率は核磁気共鳴分光法や赤外分光法により追跡する事ができる。但し実用上はアミド構造が対称性があるため結晶性により硬質な固体となるので、系がその後の加工、即ち粉体塗料として用いるための微粒化・粉末化が可能な程度の硬さになった時点で次工程に移ってもよい。
【0043】
微粒化・粉末化は例えばハンマーミル等の衝撃型粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等によって粉砕するなどの公知の方法で行う事ができる。
【0044】
本発明の製造方法により製造された硬化化剤組成物は粉末化された後でも熟成がすすみアミド構造の比率が同じか又は徐々に増加する。そのため貯蔵によっても硬化性が低下しない事が特徴である.
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0046】
実施例1
1000mL四つ口フラスコにジエタノールアミン359.6g(3.42モル)、セバシン酸ジメチル414.5g(1.80モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液7.0g(0.036モル)を仕込み、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。白色懸濁液が無色透明液へ変化した後、温度を70℃まで下げ1.5時間撹拌した後、50mmHgまで減圧し脱メタノールを行ないながら70℃で4時間撹拌した。次いで酢酸2.2g(0.036モル)を加え触媒を失活させた後15分撹拌した。フラスコの内容物を冷却することで、残存アミン濃度が0.16ミリモル/g(アミン価=9.0)の白色固体状硬化剤組成物を得た。この白色固体状硬化剤組成物を密封容器に入れ室温で3週間密封貯蔵した後の残存アミン濃度は0.09ミリモル/g(アミン価=5.0)であった。貯蔵後の硬化剤組成物の外観性状に変化は無かった。またその水溶解性は製造直後で12g/100gHO、貯蔵後で10g/100gHOであった。本硬化剤組成物の式IVに従い計算した平均官能基数は4.11であるが、式IIIのアミド−エステル交換反応により2−ヒドロキシアルキルアミド構造の一部はエステル構造となり、その分のヒドロキシル官能基は硬化反応に寄与できない。2−ヒドロキシアルキルアミド構造の減少量、即ち平均官能基数の低下分は残存しているアミンの量から計算することができる。
【0047】
本実施例の場合硬化剤組成物は359.6(ジエタノールアミン)+414.5(セバシン酸ジメチル)−115.3(3.6モルのメタノールが脱離する)=658.8g生成する。3週間貯蔵後のアミン濃度0.09ミリモル/gから計算すると658.8×0.09/1000=0.059モルのエステル構造が存在している。そしてエステル構造1つ当たりで硬化性のある2−ヒドロキシアルキルアミド構造のヒドロキシル官能基が2つ減少する。式IVの誘導過程で述べたとおりこの仕込み配合で生成した硬化剤組成物の分子数は3.42−1.80=1.62モルであるので、硬化剤組成物1分子当たりでは平均して0.059/1.62=0.0364個のエステル構造があり、そのため0.0364×2=0.073個の官能基(2−ヒドロキシアルキルアミド構造のヒドロキシル官能基)が減少している。よって本硬化剤の平均官能基数は4.11−0.07=4.04(個/1分子)となる。
【0048】
比較例1
1000mL四つ口フラスコにジエタノールアミン378.5g(3.60モル)、セバシン酸ジメチル414.5g(1.80モル)及び触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液7.0g(0.036モル)を仕込み、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。白色懸濁液が無色透明液へ変化した後、温度を70℃まで下げ1.5時間撹拌した。次いで酢酸2.2g(0.036モル)を加え触媒を失活させた後15分撹拌した。フラスコの内容物をアルミニウム皿に移し真空オーブンを用い50mmHgで減圧乾燥することで、残存アミン濃度が0.21ミリモル/g(アミン価=11.8)の白色固体状硬化剤組成物を得た。この白色固体状硬化剤組成物を密封容器に入れ室温で3週間密封貯蔵した後の残存アミン濃度は0.13ミリモル/g(アミン価=7.3)であった。貯蔵後の硬化剤組成物の外観性状に変化は無かった。またその水溶解性は製造直後で11g/100gHO、貯蔵後で10g/100gHOであった。本硬化剤組成物の式IVに従い計算した平均官能基数は4.00である。また上記実施例1と同様にして残存アミン量から補正した貯蔵3週間後の平均官能基数は3.90個である。
【0049】
実施例2〜8及び比較例2〜4
以下に実質的な製造条件は上記と同様に行い、原料(A)としてアジピン酸ジメチル(一般式(I)におけるn=4)、ピメリン酸ジメチル(n=5)、スベリン酸ジメチル(n=6)、セバシン酸ジメチル(炭素数n=8)、ウンデカン二酸ジメチル(n=9)を用いて(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を表2に示す割合で実施例2〜8及び比較例2〜4を製造した。なお表中には式IVを用いて原料(A)と(B)の初期配合モル数から計算した平均官能基数、及び3週間貯蔵後の残存アミン量から補正した平均官能基数も記入した。
【0050】
表2

【0051】
残存アミン濃度(ミリモル/g):塩酸を用いた滴定法により決定した。
【0052】
硬化剤の評価結果
上記で得た硬化剤組成物の水溶解性及びタック性評価結果を表3に示す。
表3

【0053】
水溶解性:容量200mlのガラス製ビーカーに20℃の純水100gを入れ、静かに撹拌しながら硬化剤を少量ずつ加えていった。不溶物が出るまでに加える事が出来た硬化剤の重量(g)を表に示した。尚同一条件下で、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミドは80g入れても水溶液は透明であった。
【0054】
硬化剤の不粘着性:合成してから3週間貯蔵後の少量の硬化剤粉末を時計皿に取り、人差し指を押し付けべたつき度合いを評価した
○:さらさらしていて全く指につかない
△:指を押し付けると少量指につくがすぐとれる。
×:ベタベタしていて指に粘着する。
【0055】
粉体塗料の製造例1
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名CRYLCOAT4642−3、酸価33mgKOH/g、ガラス転移点温度62℃)94.4部、上記実施例1で得られた硬化剤組成物5.6部、JR605(テイカ株式会社製、酸化チタン)45.0部、硫酸バリウム100(堺化学工業社製,沈降性硫酸バリウム)10.0部、ニカライトXK−81(日本カーバイド工業社製、表面調整剤)1.0部、ベンゾイン0.5部を混合し、エクストルーダによって溶融混練し、冷却後、アトマイザーによって微粉砕し、150メッシュ篩で濾過してポリエステル樹脂粉体塗料1を製造した。
【0056】
粉体塗料の製造例2〜13
ポリエステル樹脂と硬化剤の種類、配合量を表3に従う以外は上記粉体塗料の製造例1と同様にし粉体塗料2〜13を製造した。なお13に用いた硬化剤はPrimidXL552(商品名、EMS社製、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジパミド)である。なお、粉体塗料の製造例1〜13において、ポリエステル樹脂のカルボキシル基と硬化剤組成物のヒドロキシ基が等量となるように配合した。
【0057】
表4

【0058】
実施例及び比較例
上記粉体塗料の製造例に従い製造した粉体塗料の耐ブロッキング性及び硬化塗膜の性能を評価した。硬化塗膜の性能評価に用いた試験塗板は上記した粉体塗料をSPCC−SD PB−3118リン酸亜鉛処理鋼板(0.8×70×150mm)に硬化膜厚が60〜80μmになるように静電粉体塗装し、160℃で30分間加熱して作成した。得られたそれぞれの試験塗板について種々の性能試験を行なった。結果を表5に示す。
表5

【0059】
塗料の耐ブロッキング性:ポリカップに入れた粉体塗料を40℃×10日間放置後、ポリカップから取り出して塗料の状態を目視及び指触で観察した。
○:貯蔵前と変化なくサラサラとした粉末状。
△:サラサラ感はなく一見固まっているように見えるが、指でさわると
容易に崩れ、直ぐに貯蔵前の状態に戻る。
×:固まりがほぐれず粉体塗料として使用できない。
【0060】
塗膜外観:塗膜の外観を目視で評価した。
○:平滑性・ツヤ感が良好な塗膜である。
×:ガタガタ・ザラザラ・ツヤビケなど塗膜外観が劣る。
【0061】
光沢:JIS K−5600−4−7に従い硬化塗膜の60度鏡面光沢度を測
定した。
【0062】
鉛筆硬度:JIS K−5600−5−4に記載の鉛筆硬度試験に基づいて行った。(破れ法)。
【0063】
初期付着:JIS K−5600−5−6に従い、塗膜にカッターを用いて素地まで達する切り込みを1mmの間隔を空けて縦横各6本入れ、24mm巾のセロハンテープによる碁盤目付着試験を行った。
◎:全く剥がれない。
○:剥がれが観測されるが、剥離面積が5%よりも小である。
△:剥がれが観測されるが、剥離面積が5〜15%である。
×:剥がれが観測されるが、剥離面積が15%よりも大である。
【0064】
耐湿二次付着:試験片を50℃、98〜100%RHの耐湿性試験箱の中に500時間置いた後とり出し、室温にて2時間放置した後、付着性を評価した。付着性の評価方法は初期付着性と同じ。
◎:全く剥がれない。
○:剥がれが観測されるが、剥離面積が5%よりも小である。
△:剥がれが観測されるが、剥離面積が5〜15%である。
×:剥がれが観測されるが、剥離面積が15%よりも大である。
本発明の硬化剤組成物は水溶解性が低くべたつきが無いため粉体塗料として好適に利用する事が出来る。本発明の硬化剤組成物を用いた粉体塗料は硬化性が高くまた硬化後の塗膜の耐湿負荷後の下地付着性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1で得られた硬化剤組成物のH−NMRチャートを表す図である。
【図2】実施例2で得られた硬化剤組成物のH−NMRチャートを表す図である。
【0066】
H−NMRはサンプル濃度0.5重量%の重水溶液で測定したものである。チャートの横軸は化学シフトの値(単位:PPM)縦軸は共鳴スペクトルの強度(単位:無名数)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、一般式(II)で表されるジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させてなる、1分子あたりの平均官能基数が4よりも大でかつ8よりも小である硬化剤組成物。
【化1】

(式中Rはそれぞれ同一又は異なって炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、nは5〜8の整数である。)
【化2】

(式中R及びRは同一であっても異なっていてもよい水素原子または炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
ジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)が一般式(II)においてR及びRが同一である対称構造のジアルカノールアミンである請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
20℃における水溶解度が0〜50g/100gHOである請求項1または2に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
一般式(I)で表される直鎖ジカルボン酸ジエステル(A)と、一般式(II)で表されるジ(2−ヒドロキシアルキル)アミン(B)を(A)のエステル基の総モル数に対する(B)のアミノ基の総モル数の割合を0.60〜0.95にてアミド化反応させ、1分子あたりの平均官能基数が4よりも大でかつ8よりも小とすることを特徴とする硬化剤組成物の製造方法。
【化3】

(式中Rはそれぞれ同一又は異なって炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、nは5〜8の整数である。)
【化4】

(式中R及びRは同一であっても異なっていてもよい水素原子または炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
【請求項5】
アミド化反応温度が60〜120℃である請求項4に記載の硬化剤組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化剤組成物とポリカルボン酸樹脂を含む粉体塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−255197(P2008−255197A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97797(P2007−97797)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】