説明

硬化型塗料用組成物及びそれを用いたプラスチック成型体の製造方法

【課題】金属蒸着膜を含む多層塗膜での塗膜クラックや剥離を解消し、耐衝撃性、金属蒸着膜への付着性に優れた硬化型塗料用組成物を提供する。
【解決手段】金属蒸着されたプラスチック成型体の中塗り塗料に使用される硬化型塗料用組成物であって、
(a)窒素含有重合性単量体、(b)水酸基含有重合性単量体及び(c)カルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分を共重合して得られるアクリル樹脂共重合体(A)、
ポリエステルポリオール(B)、
ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)
を含む硬化型塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着されたプラスチック成型体の中塗り塗料に使用される硬化型塗料用組成物と、プラスチック成型体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ABS、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂およびこれらのポロマーアロイなどから製造された合成樹脂成型品は軽量で機械特性に優れることから家電、化粧品容器、自動車、通信機器等の多種多様な用途に用いられている。しかしながら、合成樹脂成形品の表面は、そのままの状態では硬い物質が衝突した際に容易に傷が付き、その商品価値が損なわれるという大きな欠点が挙げられる。そこで、合成樹脂成形品の表面保護と意匠性付与のために、各種コーティング剤をコーティングする塗装法が、検討されてきた。特に、優れた耐磨耗性、塗装工程の省エネルギー、生産性向上などの理由から、紫外線や電子線等を照射することによって硬化するエネルギー線硬化型のコーティング剤が挙げられる。
【0003】
近年では用途や意匠性の多様化に伴い、合成樹脂成形品表面にアルミニウムやスズといった金属を真空蒸着した成形品が通信機器、自動車等の部品に使用されてきた。この様な場合、アルミニウム、スズ等の金属を直接合成樹脂成形品に真空蒸着すると、成形品の凹凸が金属蒸着面でもそのまま見られ、蒸着膜表面の光輝度感が損なわれ、その商品価値を下げる要因となってしまう。
【0004】
そこで、アクリル樹脂と2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに光重合開始剤を含有することを特徴とする金属蒸着用エネルギー線硬化型アンダーコートの塗装方法(例えば、特許文献1)や、アクリル樹脂とリン酸系(メタ)アクリレート化合物と3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とを含んでなる金属蒸着用エネルギー線硬化型トップコートの塗装法(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、家電、携帯電話等の通信機器等の用途では塗膜表面の耐磨耗性が必要であることから、これらの方法では塗膜中に未架橋のアクリル樹脂を含んでいるため塗膜の耐磨耗性は十分ではなかった。そこで、上記トップコート上に更に耐磨耗性に優れるエネルギー線硬化型塗膜を塗布する多層塗膜が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−347175号公報
【特許文献2】特開2002−194013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの多層塗膜では表面の耐磨耗性には優れるものの、中塗り層(上記トップコートに相当)がエネルギー線硬化型塗膜を含んでいることから、硬い物質が衝突した場合に塗膜全体が衝撃を吸収できないため、塗膜のクラックや剥離が生じやすいといった問題点があった。
本発明の目的は、前記の問題点である多層塗膜での塗膜クラックや剥離を解消し、耐衝撃性、金属蒸着膜への付着性に優れた硬化型塗料用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)に関する。
(1) 金属蒸着されたプラスチック成型体の中塗り塗料に使用される硬化型塗料用組成物であって、
(a)窒素含有重合性単量体、(b)水酸基含有重合性単量体及び(c)カルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分を共重合して得られるアクリル樹脂共重合体(A)、
ポリエステルポリオール(B)、
ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)
を含む硬化型塗料用組成物。
【0008】
(2) 前記(A)、(B)、(C)成分の配合比率が、(A)、(B)、(C)成分の総量100重量%に対してアクリル樹脂共重合体(A)が40〜92重量%、ポリエステルポリオール(B)が3〜30重量%、ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)が5〜30重量%の範囲である上記(1)記載の硬化型塗料用組成物。
【0009】
(3) 前記(a)、(b)、(c)の配合比率が、重合性単量体成分の総量100重量%に対して窒素含有重合性単量体(a)が1〜20重量%、水酸基含有重合性単量体(b)が2〜30重量%、カルボキシル基含有重合性単量体(c)が0.1〜10重量%の範囲である上記(1)又は(2)記載の硬化型塗料用組成物。
【0010】
(4) ポリエステルポリオール(B)が、芳香族多価カルボン酸及び脂肪族多価カルボン酸の少なくとも一方と多価アルコールとを、当量比でカルボン酸/アルコール=1/1〜1/3の割合で反応させて得られる重量平均分子量が2,000〜30,000のポリエステルポリオールである上記(1)乃至(3)の何れか記載の硬化型塗料用組成物。
【0011】
(5) (i)プラスチック基材上に下塗り塗膜を形成する工程、(ii)下塗り塗膜上に金属蒸着膜を形成する工程、(iii)金属蒸着膜上に上記(1)乃至(4)の何れかに記載の硬化型塗料用組成物から得られる中塗り塗料を塗布し熱乾燥により中塗り塗膜を形成する工程、(iv)中塗り塗膜上に上塗り塗膜を形成する工程を含むプラスチック成型体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多層塗膜での耐衝撃性、金属蒸着膜上での付着性に優れ、更には耐湿性、塗膜硬度、耐溶剤性の優れた塗膜を形成することのできる、金属蒸着されたプラスチック成型体の中塗り塗料に使用される硬化型塗料用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いられるアクリル樹脂共重合体(A)の重合性単量体成分として用いられる窒素含有重合性単量体(a)は、各種の単量体がいずれも使用可能であり、なかでもアルコキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、その代表的なものとしては、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0014】
次に水酸基含有重合性単量体(b)は、水酸基と不飽和二重結合を有する重合性単量体であり、例えば、アクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、それらのラクトン変性物等が挙げられる。
アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、例えばアルキル基の炭素数が1〜6のアクリル酸ヒドロキシルが挙げられ、その具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。メタクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、例えばアルキル基の炭素数が1〜6のメタクリル酸ヒドロキシルアルキルが挙げられ、その具体例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0015】
また、前記アクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルのラクトン変性物の具体例としては、ラクトン変性アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
次にカルボキシル基含有重合性単量体(c)は、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、それらの酸無水物が好ましいものとして挙げられる。不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、前記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。前記成分は、1種又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
アクリル樹脂共重合体(A)の共重合に用いられる重合性単量体成分は、基本的には上記単量体(a)、(b)、(c)を必須成分として含み、後述の方法によって共重合させてアクリル樹脂共重合体(A)とする。アクリル樹脂共重合体(A)の重合性単量体成分には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の重合性単量体(d)を含んでもかまわない。
【0018】
このようなその他の重合性単量体(d)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有重合性単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有重合性単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族基含有重合性単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリルなどの重合性シアン化合物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。またその他の重合性単量体(d)として用いる芳香族基含有重合性単量体は、得られる共重合体に耐水性、耐薬品性を与える上で重要な役割を示すが、過剰に配合すると耐候性、耐衝撃性に悪影響を与えるのでその他の重合性単量体(d)中70重量%以下が好ましく、さらに好ましくは50重量%以下とするのがよい。
【0019】
窒素含有重合性単量体(a)は、重合性単量体成分中の1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。1重量%未満であると金属面及び金属蒸着面に対する付着性が劣る原因となる傾向があり、逆に20重量%を超えた場合は、アルコキシ基の自己縮合が促進され樹脂粘度の上昇若しくは樹脂のゲル化を起こすことがある。
【0020】
水酸基含有重合性単量体(b)は、重合性単量体成分中の2〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。2重量%未満であると得られる樹脂組成物とイソシアネートとの架橋が低く、耐溶剤性、塗膜硬度、耐水性が劣る原因となる傾向があり、逆に30重量%を超えた場合は、重合時の不安定さを誘起したり、架橋後塗膜の柔軟性が低下し、耐衝撃性が低下したりする傾向がある。
【0021】
カルボキシル基含有重合性単量体(c)は、重合性単量体成分中の0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましい。0.1重量%未満の場合は、本発明で用いられるイソシアネートの内部触媒として有用な効果が得られず、耐溶剤性、塗膜硬度、耐水性が劣る原因となることがあり、逆に10重量%を超えた場合、重合時の窒素含有単量体のアルコキシ基の自己縮合が促進され樹脂粘度の上昇若しくは樹脂のゲル化を起こすことがある。
【0022】
前記その他の重合性単量体(d)は、これを用いて形成した共重合体から得られる塗料用組成物が、重合性単量体(a)、(b)及び(c)を用いることによって得られる本発明の本質的特徴を失うことがない範囲で使用するのが好ましく、重合性単量体全量に対し40〜96.9重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0023】
次に本発明に用いられるアクリル樹脂共重合体(A)の製造法について説明する。アクリル樹脂共重合体(A)は、上記窒素含有重合性単量体(a)、水酸基含有重合性単量体(b)、カルボキシル基含有重合性単量体(c)及び所望によりその他の重合性単量体(d)を配合してなる重合性単量体成分を重合させることにより得られる。重合方法としては、通常のラジカル重合方法を利用することができ、特にその方法が制限されるものではない。
【0024】
前記ラジカル重合方法においては、有機溶剤の存在下で溶液重合をすることができ、この場合に使用できる有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどの酢酸エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノールなどの脂肪族アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;などが挙げることができ、これらの有機溶剤は単独又は混合溶剤として使用される。
【0025】
また、前記ラジカル重合法において、重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾビス系化合物等を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジシクロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、2−ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられ、アゾ系化合物としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾジイソブチレート、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(1フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニル)、2,2′−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
この重合開始剤の使用量は、好ましくは全重合性単量体成分に対して好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%であり、反応条件は50〜200℃で1〜10時間加熱させることが好ましい。前記重合開始剤は、重合温度で、目的とする分子量及び分子量分布を得るため、また重合を完結させるため、すなわち残存単量体を減少させるために用いられる。重合に際して、前記各重合性単量体成分は、予め混合物とした上で反応系に添加してもよいし、別に反応系に添加してもよく、また、この混合物を分割して反応系に添加してもよい。また、重合反応を行う際に、分子量を調整する目的で連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤が用いられる。
【0027】
また、アクリル樹脂共重合体(A)は、重量平均分子量が2,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。分子量が2,000未満では、後述配合で得られる被覆物の塗膜の衝撃性、耐水性が劣る傾向にある。また、100,000を超えた場合には、得られた塗膜の平滑性が劣り、金属蒸着による塗膜の光輝感が低下する傾向にある。
【0028】
なお、本発明において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを利用し、標準ポリスチレンの検量線を使用して算出したものである。
【0029】
また、得られるアクリル樹脂共重合体(A)は、ガラス転位温度が−20℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、20℃〜70℃がより好ましい。ガラス転位温度が−20℃未満では、後述配合で得られる塗膜が柔らかすぎて、塗膜硬度、耐溶剤性が劣る傾向にあり、更には、本発明の塗膜上に塗装される上塗りクリア塗料が本発明の塗膜を浸食し、塗膜外観が損なわれる場合がある。また、100℃を超えた場合には、得られた塗膜の柔軟性が低下し、耐衝撃性が低下する傾向があるので好ましくない。本発明においてガラス転移温度は以下の条件によって求める値とする。
熱機械分析装置(セイコー電子(株)製 5200型 TMA)で測定した。
測定モード:エクステンション
測定スパン:10mm
荷重:10g(98mN)
昇温速度:5℃/min
雰囲気:空気
また、得られるアクリル樹脂共重合体(A)の水酸基価としては、10〜130mgKOH/gの範囲にすることが好ましい。さらに、酸価は1〜30の範囲にすることが好ましい。
【0030】
アクリル樹脂共重合体(A)成分に、ポリエステルポリオール(B)成分、ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)成分を配合した硬化型塗料用組成物を調製し、(C)成分により架橋させることによって耐衝撃性、チッピング性、金属表面及び金属蒸着面に対する付着性、耐水性、塗膜硬度、耐溶剤性に優れた皮膜が形成される。
【0031】
本発明に用いられるポリエステルポリオール(B)の製造に用いられる多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等、あるいは、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上のカルボン酸又はこれらの低級アルキルエステル、酸無水物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。好ましくは芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸が用いられる。配合量は全酸成分に対して前者100〜30モル%、好ましくは100〜40モル%、後者0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%の割合で使用される。脂肪族ジカルボン酸成分が70モル%を超えると耐水性、耐汚染性が低下する傾向がある。
【0032】
本発明に用いられるポリエステルポリオール(B)の製造に用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールあるいは水添ビスフェノールA及びビスフェノールAのエチレンオキサイド、又はプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等があり、これらの1種以上を用いることができる。
【0033】
本発明に用いられるポリエステルポリオール(B)の製造は、まず上記の芳香族及び/又は脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールを好ましくは、前者/後者=1/1〜1/3(当量比)の割合で反応させる。必要に応じて、三酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、N−ブチルチタネート、トリブチル錫チタネート等の触媒の存在下に200〜300℃にてエステル化又はエステル交換を行うことによりポリエステルポリオールとなる。こうして得られたポリエステルポリオールは重量平均分子量2,000〜30,000のものが好ましい。2,000未満では、十分な可とう性が得られにくく、30,000を超えると塗装固形分が低下し、実用性に劣る傾向にある。
【0034】
本発明に用いられる架橋剤(C)として用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;上記ジイソシアネート類を付加させたビュレット体やイソシアヌレート体等のイソシアネート基を2個以上有する化合物;上記ジイソシアネート類と低分子ポリオール類、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、1,2−ヒドロキシステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストリール、ダイマージオール等との反応により生成され、2個以上のイソシアネート基の残存する化合物等がある。
【0035】
また、ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式又芳香族アルキルモノアルコールがブロッキング剤として用いられても良い。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、クロロエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、デシルアルコールおよびラウリルアルコール等の低級脂肪族アルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
他のブロッキング剤としては、ジエチルエタノールアミンのような第3ヒドロキシルアミン類、メチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムのようなオキシム類を用いても良い。架橋剤としては、アミノ樹脂をポリイソシアネートと併用しても構わない。アミノ樹脂としては、樹脂形態は溶剤型、水溶性型いずれでも良い。例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、イソブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、イソブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用できる。
【0037】
ポリイソシアネートの使用量は特に限定されないが、好ましくはアクリル樹脂共重合体(A)のヒドロキシル基/イソシアナート基当量比で1/1〜5/1とするのが好ましい。
【0038】
本発明におけるポリイソシアネートとしては、市販品としてスミジュールN3300(登録商標、ヘキサメチレンジイソシアネート;住化バイエルウレタン製)が挙げられる。
【0039】
本発明の硬化型塗料用組成物におけるアクリル樹脂共重合体(A)の配合量としては40〜92重量%の範囲で使用することが好ましい。40重量%未満では、窒素含有重合性単量体が少なくなるため、金属蒸着膜への付着性が劣る傾向にあり、また、得られた塗膜が脆弱な塗膜であるため塗膜硬度、耐湿性が劣る傾向にある。逆に、92重量%を超えた場合は、架橋に必要な架橋剤(C)配合量が少なくなってしまい、十分な架橋が得られず耐衝撃性、塗膜硬度が劣る傾向がある。
【0040】
本発明の硬化型塗料用組成物におけるポリエステルポリオール(B)の配合量としては3〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。3重量%未満では、得られる被覆物の柔軟性が不足し、十分な耐衝撃性が得られない傾向がある。逆に30重量%を超えた場合は、得られた被覆物の塗膜が柔らかくなるため、耐溶剤性、塗膜硬度、耐水性に劣る原因となる傾向がある。
【0041】
本発明の硬化型塗料用組成物におけるポリイソシアネートからなる架橋剤(C)の配合量としては5〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。5重量%未満では、アクリル樹脂共重合体(A)との架橋が不十分となり、耐衝撃性、耐溶剤性が劣る原因となる傾向がある。逆に30重量%を超えた場合は、架橋後塗膜の柔軟性が低下し、耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0042】
上記(A)、(B)、(C)成分を混合してなるワニス状の本発明の塗料用組成物を、そのまま金属蒸着膜を含む多層膜の中塗り塗料等として使用しても良いが、他に、反応を促進させるための硬化触媒、有機溶剤及び/又は水などの溶媒、レベリング剤、消泡剤、分散剤、可塑剤、安定剤などの各種塗料用添加剤を適宜添加して使用しても良い。
【0043】
本発明の硬化型塗料用樹脂組成物は、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料等を含有させて塗料として用いてもよい。無機顔料としては、例えば、チタン白、カーボンブラック等が挙げられ、有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられ、体質顔料としては炭酸カルシウム,硫酸バリウム、タルク等が挙げられる。これらの無機顔料、有機顔料、体質顔料等を含有させる方法としては、例えば、通常の顔料分散方法を利用することができる。また、本発明の硬化型塗料用樹脂組成物に顔料を加えずにそのままクリア中塗り塗料として用いることも可能である。
【0044】
また、本発明の硬化型塗料用樹脂組成物においては、必要に応じて各添加剤、例えば、アルミペースト、可塑剤、塗膜強化用樹脂、顔料分散剤、顔料沈降防止剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、樹脂ビーズ、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、防錆剤、消泡剤、造膜助剤、硬化促進剤等を塗料化の際又は塗料化後に添加することも可能である。
【0045】
本発明の硬化型塗料用樹脂組成物においては、通常のワニス塗装方法に従い、各種基材や物品の表面等の塗装に供することができる。特に、プラスチック基材等の表面に形成された金属蒸着膜の上に、この硬化型塗料用樹脂組成物を中塗り塗料として塗布した後、乾燥により硬化させて、金属蒸着用中塗り塗膜を得ることができる。
【0046】
すなわち、本発明のプラスチック成型体の製造方法は、
(i)プラスチック基材上に下塗り塗膜を形成する工程、
(ii)下塗り塗膜上に金属蒸着膜を形成する工程、
(iii)金属蒸着膜上に上記硬化型塗料用組成物から得られる中塗り塗料を塗布し、熱乾燥により中塗り塗膜を形成する工程、
(iv)中塗り塗膜上に上塗り塗膜を形成する工程を含む。
【0047】
プラスチック基材は、ABS、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂およびこれらのポロマーアロイなどから製造された合成樹脂成型品が挙げられる。
【0048】
下塗り塗膜及び上塗り塗膜用の塗料は、それぞれ従来公知の塗料を使用することができ、特に限定されない。蒸着する金属は、アルミニウム、スズが挙げられる。
下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料の塗装に際しては、例えば、エアスプレ−塗装機、エアレススプレ−塗装機、静電塗装機、ロールコーター塗装機、浸漬、ハケ等を用いて塗装することができる。
【0049】
中塗り塗膜の乾燥後の膜厚は、特に限定されないが、15μm程度が好ましい。塗膜の硬化は、乾燥、特にプラスチック基材に影響しない程度の温度の熱風乾燥が好ましく、例えば70℃の場合20分間程度で充分である。
【実施例】
【0050】
次に本発明を実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「部」は重量部を表す。
【0051】
アクリル樹脂共重合体(A−1〜A−5)製造例1〜5
攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び温度計のついたフラスコに酢酸ブチル50部、ノルマルブタノール3部を仕込み、窒素気流下で100℃に昇温し、表1に示す単量体(a)、(b)、(c)、(d)および重合開始剤の混合液を2時間かけて滴下し、その後同温度で1時間保温した。続いて、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.2部、酢酸ブチル15部の混合液を1時間かけて滴下し、更に100℃で2時間保持した。その後冷却し、加熱残分が約50%になるように酢酸ブチルで調整し、アクリル樹脂共重合体(A−1、A−2、A−3、A−4、A−5)を得た。
【0052】
アクリル樹脂共重合体(A−6〜A−8)製造例6〜8
ノルマルブタノールを使用せず、フラスコ内の仕込みが酢酸ブチル50部のみである以外は上記製造例1〜5と同様にして、アクリル樹脂共重合体(A−6、A−7、A−8)を得た。
A−1〜A−8の、酸価、水酸基価、ガラス転移温度及び重量平均分子量を測定した値を表1、2に併記する。
【0053】
【表1】

NBMA :N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド
HEMA : メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
プラクセルFM3 :ラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル ダイセル化学(株)製
MAA : メタクリル酸
St : スチレン
MMA : メタクリル酸メチル
BA : アクリル酸ブチル
AIBN : 2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
PB−O : ジ−t−ブチルパーオキサイド
【0054】
【表2】

NBMA :N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド
HEMA : メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
プラクセルFM3 :ラクトン変性メタクリル酸2−ヒドロキシエチル ダイセル化学(株)製
MAA : メタクリル酸
St : スチレン
MMA : メタクリル酸メチル
BA : アクリル酸ブチル
AIBN : 2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
PB−O : ジ−t−ブチルパーオキサイド
【0055】
製造例9(ポリエステルポリオール(B)の製造)
アジピン酸54重量部、イソフタル酸54重量部、メチルペンタンジオール145重量部、トリブチル錫チタネート0.2重量部(固形分に対して0.0008%)を不活性ガス存在下、220℃でエステル化反応に付し、生成する水を除去し、酸価1.0まで進めた。冷却後ブチルセロソルブで希釈し、重量平均分子量9000のポリエステルポリオール(B)を得た。(加熱残分90.2%、ガードナー法による粘度T、酸価0.5)
【0056】
中塗り塗料の調製(実施例1〜7、比較例1〜4)
前記製造例1〜9で得られた(A−1)〜(A−8)及び(B)を使用して以下のようにクリア中塗り塗料を調製した。
実施例1としては前記製造例1で得られたアクリル樹脂共重合体(A−1)180部(固形分50重量%)、前記製造例9で得られた低分子量ポリエステルポリオール(B)11.1部(固形分90重量%)、ポリイソシアネート(C)23.4部(登録商標 スミジュールN3300 住化バイエルウレタン製)を混合して硬化型塗料用樹脂組成物を得て、シンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/シクロヘキサノン/メチルイソブチルケトン=40/30/20/10の容量比で混合した溶液)を用い、イワタカップで11〜12秒/20℃になるように希釈して中塗り塗料とした。
【0057】
実施例2〜実施例7、比較例1〜4については(A)、(B)、(C)成分を表3、4に示す配合比とした以外は実施例1と同様にして、クリア中塗り塗料を調製した。
【0058】
中塗り塗料の調製(比較例5)
従来のエネルギー線硬化型樹脂とアクリル樹脂とを含む中塗り塗料を、表5に示す組成で調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
(下塗り塗料配合)
塗膜評価に使用する下塗り塗料としては、ウレタンアクリレート(商品名ヒタロイド7903−3、日立化成工業(株)製、固形分50重量%)、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184、チバ・スペシャリティーケミカル社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、アクリル樹脂(商品名ヒタロイド3204EB−1、日立化成工業(株)製、固形分45重量%)を混合して分散させ、シンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/シクロヘキサノン/メチルイソブチルケトン=40/30/20/10の容量比で混合した溶液)を用い、岩田カップで11秒/20℃になるように希釈して塗料とした。
【0063】
(上塗り塗料配合)
塗膜評価に使用する上塗り塗料としては、ウレタンアクリレート(商品名ヒタロイド7903−3、日立化成工業(株)製、固形分50重量%)、アクリルアクリレート(商品名ヒタロイド7975、日立化成工業(株)製、固形分32重量%)、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184、チバ・スペシャリティーケミカル社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)を混合して分散させ、シンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/シクロヘキサノン/メチルイソブチルケトン=40/30/20/10の容量比で混合した溶液)を用い、岩田カップで11秒/20℃になるように希釈して塗料とした。
【0064】
(多層塗膜板試験片の作製)
以下の手順で、下塗り塗膜、金属蒸着膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる、金属蒸着板を基材とする多層塗膜板試験片を作製した。
ポリカーボネート板上に前記で得られた下塗り塗料をスプレー塗装にて乾燥膜厚が15μmになるように塗布し、70℃に加温した熱風乾燥機内で5分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた6m/分の速度で移動するコンベアに載せ、紫外線を照射して金属蒸着用下塗り塗膜を得た。
得られた下塗り塗膜の上にスズを用いて金属蒸着を行い、厚さ80nmの蒸着膜を得た。
【0065】
蒸着膜の上に中塗り塗料をスプレー塗装にて乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、比較例5の中塗り塗料を塗布した試験片以外は、70℃に加温した熱風乾燥機内で20分乾燥させて金属蒸着用中塗り塗膜を得た。比較例5の中塗り塗料を塗布した試験片は、70℃に加温した熱風乾燥機内で5分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた6m/分の速度で移動するコンベアに載せ、紫外線を照射して金属蒸着用中塗り塗膜を得た。
更には、それらの中塗り塗膜上に前記で得られた上塗り塗料をスプレー塗装にて乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、70℃に加温した熱風乾燥機内で5分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた6m/分の速度で移動するコンベアに載せ、紫外線を照射して金属蒸着用上塗り塗膜を得た。
【0066】
(塗膜評価方法)
上記で得られた多層塗膜板試験片について、下記方法に従い、耐衝撃性、耐温水性、耐食性、付着性、耐候性を調べ、評価結果を表6、7に示した。
【0067】
<耐衝撃性>
作製した多層塗膜板試験片を用い、20℃において撃芯:1/2インチ、重り300gの条件にてデュポン衝撃試験を行った。異なる高さから重りを落とし、塗膜の割れが生じない所を合格とし、割れが生じた高さを不合格とした。
○:30cmから重りを落として、塗膜の割れが生じない。
△:20cmから重りを落として、塗膜の割れが生じない。
×:20cmから重りを落として、塗膜の割れが生じる。
【0068】
<塗膜外観>
作製した多層塗膜板試験片の表面を観察し、変色及びブリスタ(膜フクレ)が生じていないものを○とし、変色及びブリスタの少なくとも一方が発生しているものを×とした。
○:塗膜に変色及びブリスタが生じない
△:塗膜の部分的に変色及びブリスタが見られる
×:塗膜全体に変色及びブリスタが見られる
【0069】
<耐湿性>
作製した多層塗膜板試験片を、湿度95%以上の恒温槽内に放置し、50℃で4日間放置した。その後、上記塗膜外観評価と同様に塗膜を観察し、評価した。
【0070】
<付着性>
作製した多層塗膜板試験片を用い、JIS−K5400碁盤目剥離試験方法に従って以下のように評価した。試験片上にナイフで2mm間隔で縦横各10本の線を引いて50個の碁盤目を作製し、その上にセロファンテープを接着させた後テープを剥がし、塗膜が全く欠けずに残存する碁盤目の数を測定し下記基準で評価した。
また、上記耐湿試験終了後の試験片を用いて同様に評価した。
50/50 : ○ 密着性が良好
49〜25/50 : △ 密着性がやや劣る
24/50以下 : × 密着性が著しく劣る
【0071】
<鉛筆硬度>
作製した多層塗膜板試験片の塗膜表面をJIS K−5400の鉛筆引っかき試験方法に従い評価し、塗膜のキズが目視で認められない鉛筆の硬度記号で結果を示した。
【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
本発明の硬化型塗料組成物は、金属蒸着用中塗り硬化型塗料用として好適であり、本発明で得られたアクリル樹脂共重合体(A)にポリエステルポリオール(B)、ポイソシアネート(C)を組み合わせた塗料は、金属蒸着膜に対する付着性、耐衝撃性、耐湿性に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属蒸着されたプラスチック成型体の中塗り塗料に使用される硬化型塗料用組成物であって、
(a)窒素含有重合性単量体、(b)水酸基含有重合性単量体及び(c)カルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分を共重合して得られるアクリル樹脂共重合体(A)、
ポリエステルポリオール(B)、
ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)
を含む硬化型塗料用組成物。
【請求項2】
前記(A)、(B)、(C)成分の配合比率が、(A)、(B)、(C)成分の総量100重量%に対してアクリル樹脂共重合体(A)が40〜92重量%、ポリエステルポリオール(B)が3〜30重量%、ポリイソシアネートからなる架橋剤(C)が5〜30重量%の範囲である請求項1記載の硬化型塗料用組成物。
【請求項3】
前記(a)、(b)、(c)の配合比率が、重合性単量体成分の総量100重量%に対して窒素含有重合性単量体(a)が1〜20重量%、水酸基含有重合性単量体(b)が2〜30重量%、カルボキシル基含有重合性単量体(c)が0.1〜10重量%の範囲である請求項1又は2記載の硬化型塗料用組成物。
【請求項4】
ポリエステルポリオール(B)が、芳香族多価カルボン酸及び脂肪族多価カルボン酸の少なくとも一方と多価アルコールとを、当量比でカルボン酸/アルコール=1/1〜1/3の割合で反応させて得られる重量平均分子量が2,000〜30,000のポリエステルポリオールである請求項1乃至3の何れか記載の硬化型塗料用組成物。
【請求項5】
(i)プラスチック基材上に下塗り塗膜を形成する工程、(ii)下塗りの塗膜上に金属蒸着膜を形成する工程、(iii)金属蒸着膜上に請求項1乃至4の何れかに記載の硬化型塗料用組成物から得られる中塗り塗料を塗布し熱乾燥により中塗り塗膜を形成する工程、(iv)中塗り塗膜上に上塗り塗膜を形成する工程を含むプラスチック成型体の製造方法。

【公開番号】特開2012−72320(P2012−72320A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219627(P2010−219627)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】